説明

光学的に保炎および逆火を検出すること

【課題】光学的に保炎および逆火を検出するシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】複数の燃焼ゾーンを有する燃焼室140を画定する燃焼器筐体170と、燃焼器筐体170上に配置されて燃焼室140と光学的に連通する複数の火炎検出器180とを備え、前記複数の火炎検出器180がそれぞれ、前記複数の燃焼ゾーンのうちの1つまたは複数内の保炎状態および逆火状態の少なくとも1つに関係する光学特性を検出するように構成させている燃焼器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する主題は、ガスタービンに関し、より詳細には、光学的に保炎および逆火を検出することに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンでは、燃焼ゾーン(主燃焼ゾーン)の上流に位置する予混合ゾーン内で燃料と空気の予混合を提供するように構成された1つまたは複数の燃料ノズルを有する1つまたは複数の燃焼器内で、圧縮機によって生成された圧縮空気とともに燃料を燃焼させる。その燃料/空気を予混合する通路内で保炎または逆火が発生するとすぐに、燃焼器に損傷が発生する可能性がある。燃焼器の所望の動作中、予混合された燃料と空気は、燃料/空気を予混合する通路を下って燃焼ゾーン内で燃焼する。保炎または逆火中は、予混合通路内の燃料と空気の混合物が燃焼する。一般に、逆火状態は、火炎が主燃焼ゾーンから上流に進んで予混合ゾーンへ入ると発生する。これは、燃焼反応を持続させるものではない。その結果、燃焼システムに重大な損傷が発生する可能性があり、場合によっては、システムの破局的な誤動作およびそれに付随する相当な経済的損失をもたらす恐れがある。
【0003】
熱電対および光ファイバなどのイオン感知検出器および他の装置を使用して逆火を検出することがよく知られている。しかし、これらの検出器は、火炎の存在を検出するだけであり、燃焼システム内の火炎のタイプを区別しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5544478号公報
【特許文献2】米国特許第5857320号公報
【特許文献3】米国特許第6071114号公報
【特許文献4】米国特許第6599028号公報
【特許文献5】米国特許第6784430号公報
【特許文献6】米国特許第6818897号公報
【特許文献7】米国特許第7112796号公報
【特許文献8】米国特許第7285433号公報
【特許文献9】米国特許出願第20070012965号公報
【特許文献10】米国特許出願第20070119147号公報
【特許文献11】米国特許出願第20080016877号公報
【特許文献12】米国特許出願第20080083228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、火炎タイプを区別して保炎または逆火事象を阻止するように構成された火炎検出システムを有する燃焼器を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、燃焼器が提供される。この燃焼器は、燃焼ゾーンを有する燃焼室を画定する燃焼器筐体と、燃焼器筐体上に配置されて燃焼室と光学的に連通する火炎検出器とを含む。火炎検出器は、燃焼ゾーンのうちの1つまたは複数に関係する光学特性を検出するように構成されている。
【0007】
本発明の別の態様によれば、ガスタービンが提供される。このガスタービンは、周囲空気を圧縮するように構成された圧縮機を含む。このガスタービンは、圧縮機と流動的に連通する燃焼器をさらに含み、この燃焼器は、圧縮機アセンブリから圧縮空気を受け取るように、そして燃料流を燃焼させて燃焼器出口ガス流を生成するように構成されている。この燃焼器は、燃焼ゾーンを有する燃焼室を画定する燃焼器筐体と、燃焼器筐体上に配置されて燃焼室と光学的に連通する火炎検出器とを含む。火炎検出器は、燃焼ゾーンのうちの1つまたは複数に関係する光学特性を検出するように構成されている。
【0008】
本発明のさらに別の態様によれば、燃焼器を動作させる方法が提供される。この方法は、燃料および空気を予混合装置内に導入するステップと、ガス状予混合物を形成するステップと、ガス状予混合物を燃焼室内で燃焼させ、それによって火炎タイプを生成するステップとを含む。この方法は、火炎タイプを監視して燃焼室内の保炎の存在を判断するステップをさらに含む。
【0009】
上記その他の利点および特徴は、図面と併せて以下の説明を見れば、より明らかになるであろう。
【0010】
本発明と見なされる主題について詳細に指摘し、本明細書の終わりの特許請求の範囲において明確に特許請求する。本発明の上記その他の特徴および利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を見れば、明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】例示的な実施形態によるガスタービンシステムの図である。
【図2】例示的な実施形態による図1のガスタービンシステム内で使用される予混合装置を有する燃焼器の図である。
【図3】例示的な実施形態によるガスタービン100の図である。
【図4】火炎検出器180の相対スペクトル感度と火炎タイプの波長の関係を示すグラフである。
【図5】火炎検出器180の相対スペクトル感度と火炎タイプの波長の関係を示すグラフである。
【図6】例示的な実施形態による燃焼器を動作させる方法の流れ図である。
【図7】図3の燃焼剤カンの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明では、本発明の実施形態について、利点および特徴とともに、例として図面を参照して説明する。
【0013】
例示的な実施形態では、本明細書に記載のシステムおよび方法は、ガスタービン燃焼器内の保炎/逆火を検出してエンジン機器の損傷を抑制し、またいかなる手法の場合でも、保炎事象を能動的に阻止する。光学的な火炎検出は、乾式低NOx(DLN)ユニット内で、紫外輝線に応答する検出器を使用して実施される。より最近利用されているSiC固体火炎検出器の応答度包絡線は、約200nmから430nmの波長に対する放出感度を含む。これは、約250nmを下回るさらに短い波長領域のみに応答するガイガミュラー計数管とは対照的である。約300nmの最も強い放出は、燃焼工程の直接生成物である励起されたOH分子によって生成される。SiCフォトダイオードの応答特性のため、この検出器は、燃焼器の高温の壁の黒体放射、すなわち煤煙からの350から450nmの放射に対してあまり感度が高くない。煤煙からの過度の放射は、燃焼前に空気と燃料を予混合したことから生じる火炎(予混合された火炎)とは対照的に、拡散火炎を示す。輝線の光学的な検出が示すような燃焼が発生すると、ガスタービンは引き続き、期待される最適の動作状態で動作する。予混合された火炎は、入口温度(firing temperature)を下げることができるので望ましく、たとえば、DLN燃焼器を使用して、雰囲気中への望ましくない放出を低減させるのに望ましい。煤煙輝線の光学的な検出が示すような保炎/逆火事象が発生した場合、火炎検出システムは、燃焼器内への燃料の流れを低減しまたはなくすなどの対策を講じて、ガスタービンの損傷を防止することができる。したがって、燃料ノズル内の保炎/逆火事象中は、熱煤煙放出または他のより濃い火炎種からのさらなる光電子放出が測定される。現在の火炎検出器は、拡散火炎を検出するのに十分な広さの感度曲線を有するが、燃焼(たとえば、OH帯域放出)と煤煙放出の存在を別々に検出できる2色または多色検出システムでは、火炎タイプの区別が可能になるであろう。さらなる例示的な実施形態では、本明細書に記載の火炎検出器は、燃料ノズルからの熱放出を検出することができる。熱放出は、燃料ノズル内で予期されるはずの温度より温度が高いことを示すので、燃料ノズルからの熱放出を監視することによって、システムは、燃料ノズル内に火炎が存在するかどうかを判断することができる。たとえば、保炎/逆火を示す熱放出は、スワラ(swirler vanes)、バーナチューブ、または燃料ノズルもしくは他の下流の構成要素の拡散チップで測定することができる。したがって、1つまたは複数の色検出器を使用して、保炎/逆火事象からの光電子放出の増大を燃焼器内で測定し、燃料ノズル内で保炎/逆火が発生しているかどうかを判断する。燃料ノズル構成要素からの熱放出の増大を使用して、燃料ノズル内の保炎を検出することができる。
【0014】
本明細書で詳細に論じるように、例示的な実施形態は、ガスタービン内で使用される燃焼器などの燃焼器内で保炎/逆火の増大を検出するように機能する。特に、例示的な実施形態は、ガスタービン燃焼室内の保炎/逆火を検出するように、そして適切な対策を講じてガスタービンの損傷を防止するように構成された火炎検出システムおよび方法を含む。次に図面に移ってまず図1を参照すると、燃焼器12を有するガスタービン10を示す。ガスタービン10は、周囲空気16を圧縮するように構成された圧縮機14を含む。燃焼器12は、圧縮機14と流動的に連通しており、圧縮機14から圧縮空気18を受け取るように、そして燃料流20を燃焼させて燃焼器出口ガス流22を生成するように構成される。さらに、ガスタービン10は、燃焼器12の下流に位置するタービン24を含む。タービン24は、燃焼器出口ガス流22を膨張させて発電機26などの外部負荷を駆動するように構成される。図示の実施形態では、圧縮機14は、タービン24によって生成された動力によって、シャフト28を介して駆動される。燃焼器12は、ガスタービン燃焼室内の保炎/逆火を検出するように、そして適切な対策を講じてガスタービン10の損傷を防止するように構成された火炎検出装置を使用する。
【0015】
図2は、例示的な実施形態による図1のガスタービンシステム10内で使用される火炎検出装置60を有する燃焼器12の例示的な構成40の図である。図示のように、燃焼器40は、燃料20と空気18を混合してガス状予混合物44を形成するように構成された予混合装置42を含む。さらに、燃焼器40は、予混合燃料44を燃焼させて燃焼器出口ガス流22を形成するように構成された燃焼室46を含む。さらに、燃焼器出口ガス流22は、外部負荷26(図1参照)を駆動するためのタービン24(図1参照)など、下流工程48へ向けられる。予混合装置42は、燃料20および/または空気18に旋回運動を提供して燃料20と空気18の混合を容易にするように構成された複数のスワラ50をさらに含むことができる。例示的な実施形態では、燃焼器40は、火炎検出装置60をさらに含む。火炎検出装置60は、予混合装置42と燃焼室46のいずれかまたは両方と結合させて連通させることができる。火炎検出装置60が、燃焼室内で特定の光学特性を有する火炎に基づいて煤煙の発生および拡散火炎を検出するように構成されるとき、この火炎検出装置は、燃焼室46と結合されて光学的に連通することが理解される。しかし、火炎検出装置60が、燃料ノズルの金具表面からの熱放出を検出するように構成される場合、火炎検出装置60は、検出中の燃料ノズル金具近傍で、予混合物装置と結合されて光学的に連通する。燃焼器40は、火炎検出部60に結合された制御ユニット65をさらに含むことができる。制御ユニット65は、燃焼室46内に存在する火炎タイプに対応する信号を火炎検出部から受け取るように構成される。制御ユニット65はさらに、空気18および燃料20の供給源と連通する。本明細書でさらに説明するように、燃焼室46内に保炎/逆火が存在することを示す信号を受け取った場合、制御ユニット65は、適切な対策を講じてガスタービンの損傷を軽減することができる。制御ユニット65が講じることができる適切な対策には、保炎/逆火を低減しまたはなくすために、燃焼室への燃料および空気の流れを停止すること、または空気および燃料の流れをある程度変更することが含まれる。
【0016】
図3は、例示的な実施形態による複数の火炎検出器180を含むガスタービン100の一例を図によって示す。ガスタービンの例は、ガスタービンの燃焼室140と結合されて光学的に連通し、また燃焼室140内のいくつかの火炎タイプの波長を検出するように構成された火炎検出器を示す。
【0017】
図1と同様に、ガスタービン100は、周囲空気を圧縮するように構成された圧縮機110を含む。1つまたは複数の燃焼剤カン120が、ディフューザ150を介して圧縮機110と流動的に連通する。燃焼剤カン120は、圧縮機110から圧縮空気115を受け取るように、そして燃料ノズル160からの燃料流を燃焼させて燃焼器出口ガス流165を生成するように構成される。燃焼器出口ガス流165は、燃焼室140を通ってタービン130へ進む。タービン130は、燃焼器出口ガス流165を膨張させて外部負荷を駆動するように構成される。燃焼剤カン120は外側筐体170を含み、外側筐体170は、筐体170に取り付けられた一連の火炎検出器180を含む。火炎検出器180は、燃焼室140および燃焼器出口ガス流165と結合されて光学的に連通する。
【0018】
例示的な実施形態では、一連の火炎検出器180はそれぞれ、特定の波長を検出するように構成される。したがって、燃焼剤カン120は、複数の波長の光電子放出を検出するように構成された複数の火炎検出器を含む。たとえば、図示のように、燃焼剤カン120はそれぞれ、3つの火炎検出器180を含むことができる。1つの検出器は、炭化水素火炎の波長(約306nm)の最も近くでピークに達するスペクトル感度を含む。第2の検出器は、拡散からの煤煙の波長(約380nm)の最も近くでピークに達するスペクトル感度を含むことができる。第3の検出器は、CO−O再結合反応からの望ましくない燃焼ゾーンにおける予混合された燃料および予混合されていない燃料からの煤煙の波長(約400nm)の最も近くでピークに達するスペクトル感度を含むことができる。しかし、拡散からの煤煙の波長と望ましくない予混合物の燃焼からの煤煙の波長はどちらも互いに比較的近接しているので、どちらのタイプの煤煙を生成する保炎/逆火事象に対しても、350nmから450nmのおおよその領域内でピークに達するスペクトル感度を有する単一の検出器を実施できることが理解される。したがって、一連の火炎検出器180はそれぞれ、異なる波長でピークに達するスペクトル感度を含むことができる。
【0019】
火炎検出器180は、複数の火炎タイプの複数の波長を検出して火炎タイプを区別するように構成されるように、様々な方法で構成できることが理解される。光学的検出器(たとえば、フォトダイオード)のスペクトル感度は、主に、光学的検出器内で使用される材料のバンドギャップ電圧によって決定されることがよく知られている。SiCのバンドギャップ電圧は3.1ボルトであり、スペクトル感度は約270nmでピークに達し、また波長限界は約400nmである。現在、ガスタービンの燃焼室内の火炎を検出するには、SiC検出器が使用されている。
【0020】
図4は、火炎放出の相対スペクトル特性と様々な火炎タイプの波長の関係を示すグラフ400を示す。SiC応答度曲線410を示す。また、予期されるOH−放出スペクトルピークが約306nmである予混合された炭化水素火炎の放出特性曲線420を示す。現在、炭化水素火炎を検出するにはSiC検出器が実施される。SiC検出器は、この火炎を適切に検出する。しかし、相対スペクトル感度は、306nmで最大の約70%であることが理解される。現在のシステムでは、簡単な炭化水素火炎検出の場合、70%の相対スペクトル感度は許容される。図4はさらに、典型的な予混合された燃焼器火炎温度に基づいて、拡散火炎によって生成された煤煙に対する光学スペクトル放出曲線430と、予混合された燃料が燃焼室140(図3参照)内で燃焼することによって生じる煤煙に対するスペクトル曲線440とを示す。スペクトル強度と特性波長の関係は、局所的な火炎温度に応じて変化しかつ変動することが理解される。したがって、図4の例に記載のスペクトル特性は例示的なものであり、他の例示的な実施形態では他のスペクトル特性も企図される。現在実施されているSiC検出器は、380nmから400nmの波長に対してより低いスペクトル応答度を有し、これらの波長は、前述のように、それぞれ拡散煤煙および予混合煤煙の火炎発光強度に関連することがさらに理解される。例示的な実施形態では、検出器180のうちの第1の検出器は、炭化水素火炎の波長のスペクトルピーク(約306nm)でまたはその付近で発生するスペクトル感度を含むことができ、また燃焼室140に結合させることができる。検出器180のうちの第2の検出器は、拡散煤煙による火炎の波長のピーク(約380nm)でまたはその付近で発生するスペクトル感度を含むことができる。検出器180のうちの第3の検出器は、予混合煤煙による火炎の波長のピーク(約400nm)でまたはその付近で発生するスペクトル感度を含むことができる。上記で論じたように、拡散煤煙火炎および予混合煤煙火炎による放出スペクトルは比較的近接しているので、2つの煤煙火炎の平均ピークでまたはその付近で発生するスペクトルピークを有する単一の検出器を実施することができる。煤煙火炎のスペクトルピークの波長はどちらも、炭化水素火炎のピーク波長より長いので、既存の検出器または変更された検出器を使用して、炭化水素火炎を煤煙火炎と十分に区別できることが理解される。例示的な実施形態では、検出器180の材料は、スペクトルピークがそれぞれの火炎タイプのスペクトルピークの最も近くで発生するように、(たとえば、材料のドーピングを介してバンドギャップ電圧を調整することによって)製作することができる。さらに、材料は、波長の上限および下限をスペクトルピークにより近付けるようにさらに製作することができ、これにより、それぞれの火炎タイプの波長のスペクトルピークでピークを狭くすることができる。SiC検出器の変更は、SiC検出器のスペクトルピークを306nmにより近付けて炭化水素火炎のスペクトルピークにより良好に対応するように、(たとえば、ドーピングを介して)さらに変更できることが理解される。
【0021】
図5は、火炎検出器180の相対スペクトル感度と本明細書に記載の目標を実現する波長の関係を示すグラフ500を示す。グラフ500では、炭化水素火炎におけるOHのスペクトルピーク(たとえば、306nm)に重複するスペクトル応答度を有するように変更されたSiC火炎検出器180の第1の検出器スペクトル感度を、曲線510で示す。さらに、第2の検出器スペクトル感度曲線550は、曲線530および540(それぞれ約380nmおよび400nm)で示す拡散煤煙と予混合煤煙のうちの一方または両方の熱放出スペクトルピークに対応するスペクトルピークを有するように構成された火炎検出器180に対応する。この例では、感度曲線510の下限は約250nmであり、上限は約360nmである。感度曲線550の下限は約340nmからであり、上限は約450nmからである。それぞれの検出器感度曲線510、550の幅はどちらも、約100nmである。下限および上限ならびに幅は、それぞれ個々の火炎タイプに対して、火炎検出器180のスペクトル感度の重複がほとんどまたは全くないことを説明するために示す。したがって、炭化水素火炎を検出するように構成された検出器は、煤煙火炎に対するスペクトル領域ではほとんどまたは全く応答しない。同様に、煤煙火炎を検出するように構成された検出器は、炭化水素火炎に対するスペクトル領域ではほとんどまたは全く応答しない。前述の上限および下限ならびに幅は例示のみを目的とすること、そして他の例示的な実施形態では他の下限および上限ならびに幅も企図されることが理解される。
【0022】
例示的な実施形態では、火炎検出器180は、下限は炭化水素火炎に対するスペクトルピークを下回り、上限は煤煙火炎に対するスペクトルピークを上回る、単一の材料タイプのものとすることができる。このようにして、単一の検出器タイプを実施して、両方の火炎タイプを検出することができる。個々の火炎検出器は、炭化水素火炎に対して使用される火炎検出器が煤煙火炎に対する波長をフィルタリングでき、また煤煙火炎に対する火炎検出器が炭化水素火炎に対する波長をフィルタリングできるような光学フィルタをさらに含むことができる。たとえば、第1の検出器の応答度(510)は、SiCフォトダイオードチップ上に、またはSiCフォトダイオードパッケージの光学窓上に層として、光学帯域フィルタを配置することによって実現することができる。SiCを使用する利点は、約380nmを上回る波長にはもとから比較的反応しないので、フィルタを設計しかつ実施するのが比較的容易であることである。応答度550を有する検出器に対する1つの選択肢は、紫および近紫外領域におけるその感度を増大させるために燐光体で覆われたシリコンフォトダイオードであろう。しかし残念なことに、シリコンフォトダイオードの応答度は、赤外領域(1000nm)と同程度のより低い波長まで延び、したがって黒体および可視放射で容易に反応しなくなる可能性がある。したがって、応答度550を実現するのに必要な帯域フィルタは、設計しかつ製作するのが困難であろう。代替方法は、CCD分光計に接続された光ファイバを使用することであろう。この装置は、250から450nmの放出スペクトル全体を走査し、また信号処理ソフトウェアプログラミングにより、前述の2つのスペクトル領域間の信号強度を高速にかつ継続的に走査することが可能になるであろう。
【0023】
例示的な実施形態では、制御ユニット65は、複数の検出器(たとえば、火炎検出器180)からの信号感度を検出し、また投票アルゴリズムを実施して、保炎/逆火状態に応答して制御ユニット65が講じる対策のタイプを決定することができる。たとえば、3つの検出器180のうちの2つが、逆火状態が存在すると判断した場合、制御ユニット65は、燃焼剤カン120への燃料を遮断または低減させることができる。同様に、1つの火炎検出器180だけが逆火を検出した場合、制御ユニット65は、火炎検出器180が別の読取りを行うまで燃料の継続を決定することができる。さらに、火炎検出器180に対応する筐体内に複数の検出器素子を入れることができる。複数の検出器素子は、燃焼剤カン120内で検出された信号を集約するように多重化することができる。このようにして、集約信号を実施して、投票アルゴリズムの結果を決定することができる。
【0024】
図6は、例示的な実施形態による燃焼器を動作させる方法の流れ図を示す。ブロック705で、燃料ノズル(たとえば、図3の160)が予混合装置(たとえば、図2の42)内へ燃料を導入し、また圧縮機(たとえば、図3の110)が予混合装置内へ空気を導入する。ブロック710で、予混合装置は、ガス状予混合物を形成する。ブロック715で、燃焼器(たとえば、図3の燃焼剤カン120)が、燃焼室(たとえば、図3の140)内で予混合物を燃焼させる。ブロック720で、燃焼室内の火炎タイプが監視される。ブロック725で、火炎検出器は、燃焼室内の火炎タイプのスペクトルピークを監視することができる。火炎検出器が、煤煙火炎に対応するスペクトルピークを検出した場合、ブロック730で、制御装置は、予混合装置内への燃料の流れを変更し、または本明細書に記載の他の適切な対策を講じることができる。火炎検出器が、煤煙火炎に対応するスペクトルピークを検出しない場合、または単に通常の炭化水素火炎を検出した場合、ブロック705で処理を継続することができる。
【0025】
燃焼剤カン120の燃焼室140内で保炎/逆火を検出する例示的な実施形態について説明した。本明細書に記載のように、例示的な実施形態を実施して、燃料ノズル160からの熱放出を検出することもできる。熱放出は、燃料ノズル160内で予期されるはずの温度より温度が高いことを示すので、燃料ノズル160からの熱放出を監視することによって、システムは、燃料ノズル160内に火炎が存在するかどうかを判断することができる。たとえば、保炎/逆火を示す熱放出は、スワラ、バーナチューブ、または燃料ノズル160もしくは他の下流の構成要素の拡散チップで測定することができる。したがって、1つまたは複数の色検出器(たとえば、火炎検出器180)を使用して、保炎/逆火事象からの光電子放出の増大を燃焼剤カン120内で測定し、燃料ノズル160内で保炎/逆火が発生しているかどうかを判断する。燃料ノズル160の構成要素からの熱放出の増大を使用して、燃料ノズル160内の保炎を検出することができる。一例では、燃焼は、燃料ノズル160の内部で発生することがある。その結果、燃料ノズル構成要素から煤煙の熱光学放射または熱放出が生じることがあり、これらが高温の火炎にさらされると、予期しない熱放出を放射するであろう。例示的な実施形態では、燃料ノズル160からの熱放出を検出するために、火炎検出器180を、前述のように燃料ノズル160に隣接するように向けることができる。次いで制御ユニット65(図2参照)は、火炎検出器180からの信号を受け取って適切な対策を講じることができる。たとえば、制御ユニット65は、三角測量を実施して平らな位置を検出し、根本的な原因を診断するのを助けることができる。図7は、図3の燃焼剤カンの正面図を示す。火炎検出器180は、燃料ノズル160または燃料ノズル回路に隣接するように向ける。予混合された回路からの燃料を完全にまたは部分的に、別の燃料回路の方へ、拡散火炎回路などの排出されたまたは使用されていない燃料回路の方へ向け直すことができる。さらに、火炎検出器180は、各火炎検出器180が燃料ノズル160のうちの1つと見通し線を共用するように、間隔をおいて配置される。したがって、保炎/逆火事象が存在することを火炎検出器のうちの2つが示した場合、制御ユニット65には、どの燃料ノズル160が影響を受けたかがわかる。このようにして、制御装置は選択的に、ある影響を受けた燃料ノズル160への燃料を低減させ、または燃料を遮断することができる。制御ユニット65が単一の燃料ノズル160だけに作用するとき、燃焼剤カン120の破損を最小にすることができることが理解される。したがって、影響を受けた燃料ノズル160には、次に予定されている停止中に補修を行うことができる。三角測量は、保炎/逆火事象中に燃料ノズル160からの熱放出を検出するために火炎検出器180をどのように実施できるのかを示す一例にすぎないことが理解される。他の例示的な実施形態では、他の検出を実施することも企図される。
【0026】
本発明について、限られた数の実施形態だけに関連して詳細に説明したが、本発明は、そのような開示する実施形態に限定されるものではないことが容易に理解されよう。むしろ、本発明を修正して、これまで説明していないが本発明の精神および範囲に対応する任意の数の変形形態、改変形態、置換え、または同等の構成を組み込むことができる。さらに、本発明の様々な実施形態について説明したが、本発明の態様は記載の実施形態の一部のみを含みうることを理解されたい。したがって、本発明は、上記の説明に限定されると見なすべきではなく、添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0027】
10 ガスタービン、ガスタービンシステム
12 燃焼器
14 圧縮機
16 周囲空気
18 圧縮空気、空気
20 燃料流、燃料
22 燃焼器出口ガス流
24 タービン
26 発電機、外部負荷
28 シャフト
40 燃焼器
42 予混合装置
44 ガス状予混合物、予混合燃料
46 燃焼室
48 下流工程
50 スワラ
60 火炎検出装置、火炎検出部
65 制御ユニット
100 ガスタービン
110 圧縮機
115 圧縮空気
120 燃焼剤カン
130 タービン
140 燃焼室
150 ディフューザ
160 燃料ノズル
165 燃焼器出口ガス流
170 外側筐体
180 火炎検出器
400 グラフ
410 SiC応答度曲線
420 放出特性曲線
430 光学スペクトル放出曲線
440 スペクトル曲線
500 グラフ
510 曲線、検出器感度曲線
520 検出器スペクトル感度曲線
530 曲線
540 曲線
550 検出器スペクトル感度曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃焼ゾーンを有する燃焼室(46、140)を画定する燃焼器筐体(170)と、
前記燃焼器筐体(170)上に配置されて前記燃焼室(46、140)と光学的に連通する複数の火炎検出器(180)とを備え、
前記複数の火炎検出器(180)がそれぞれ、前記複数の燃焼ゾーンのうちの1つまたは複数内の保炎状態および逆火状態の少なくとも1つに関係する光学特性を検出するように構成されている、燃焼器(12、40)。
【請求項2】
前記光学特性が火炎タイプの波長である、請求項1記載の燃焼器(12、40)。
【請求項3】
前記火炎タイプが炭化水素火炎である、請求項2記載の燃焼器(12、40)。
【請求項4】
前記火炎タイプが煤煙火炎である、請求項2記載の燃焼器(12、40)。
【請求項5】
前記複数の火炎検出器(180)のうちの1つが、炭化水素火炎のスペクトル感度ピーク近傍のスペクトル感度ピークを含む、請求項1記載の燃焼器(12、40)。
【請求項6】
前記複数の火炎検出器(180)のうちの別の1つが、煤煙火炎のスペクトル感度ピーク近傍のスペクトル感度ピークを含む、請求項5記載の燃焼器(12、40)。
【請求項7】
前記複数の火炎検出器(180)が、複数の火炎タイプを検出するように構成されている、請求項1記載の燃焼器(12、40)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−164296(P2010−164296A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1627(P2010−1627)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】