説明

光学的情報読取装置及び光学的情報読取方法

【課題】 照度むらの補正処理が必要に応じて自動的に施され、不必要な補正処理がなされるのを防ぎ、ひいては利便性の向上に寄与する。
【解決手段】 読取対象を撮像して画像信号を生成する撮像部101と、撮像部101による撮像の際に読取対象に照明光を当てる照明部102と、読取対象に照明光が当たることによって画像信号に現れるむらを補正するための補正処理を画像信号に対して実行する補正部106と、補正処理が施された画像信号に基づいて、読取対象に含まれる情報コードを復号する復号部107と、周囲の照度を検出する照度検出部103と、照度検出部103の検出結果に基づいて、補正部106において補正処理を実行するか否かを決定する補正処理実行有無決定部104と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばQRコードなどの2次元コードを光学的に読み取る光学的情報読取装置及び光学的情報読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、倉庫で在庫管理データの収集や、店頭に陳列された商品データの収集、宅配システムの出荷・集荷データの入力等において、バーコードスキャナ機能を有するハンディターミナルが利用されている。ハンディターミナルは、特定の用途に応じて予めプログラミングされたアプリケーションを動作可能とするものであり、このプログラミング作業は、ハンディターミナルとは別に、テキストエディタやデバッグツールが充実し、メモリ資源の豊富なパーソナルコンピュータ上で行われる場合が多い。例えば、ハンディターミナルのアプリケーションを記述するソースプログラムは、C言語などの構造化プログラミング言語やJavaScriptなどのスクリプト言語によって記述する。パーソナルコンピュータで作成されたソースプログラムは、デバッグおよびプログラム修正が繰り返された後、コンパイラによって実行形式のプログラムに変換され、有線又は無線LANなどの通信ネットワークを介してコンピュータからハンディターミナルに転送される。ハンディターミナルは、転送されてきた実行形式のプログラムをフラッシュROM等の不揮発性メモリに記憶するとともに、ユーザのキー入力操作に基づいて、これをRAM等の揮発性メモリに読み出して(ロードして)、アプリケーションを実行する。
【0003】
ここで、2次元コードを読み取るアプリケーションを実行する際に、周囲の照明環境に起因してコード読取が困難になる場合がある。例えば、薄暗い倉庫の中で在庫管理データを収集する場合には、ハンディターミナルに設けられた撮像素子によって2次元コードを撮像しても、デコードに必要となる鮮明な撮像画像を得ることができず、コード読取が困難になる。このような問題を解決するために、LEDなどの照明装置が設けられ、周囲の外光が少ない場合には2次元コードを照らしてコード読取を行うハンディターミナルが開発されている(例えば特許文献1〜3など)。
【0004】
特許文献1に開示された光学パターン読取装置には、2次元の光学パターンを照らす光源と、2次元の光学パターンからの反射光を光検出器に導くとともに反射光の一部を分離して取り出すための光学部材とが設けられている。この光学部材が設けられていることで、光源から照射された光の照明むらが光学パターンにどの程度発生しているかを目視確認することができ、照明むらが発生している部分を避けてコード読取を行うことができるようになっている。しかし、光学パターンと光検出器の間に光学部材を設けると、装置全体の大型化に繋がるし、そもそも撮像画像全体に照明むらが発生するような場合には、コード読取を行うことが難しい。
【0005】
そこで、2次元コードの撮像画像に対してソフトウェアによる補正処理を施して、照明むらを抑制し、読取性能を向上させる技術が開発されている。例えば特許文献2に開示されているように、照明の不均一を是正するため、読取装置内に補正時の基準面となる白紙を設置し、ユーザがスイッチを作動させると白紙を撮像して、撮像画像に対してシェーディング補正を施すことが考えられる。また、特許文献3に開示されているように、カメラで撮像した撮像画像のヒストグラムを常時計算して、各明度値の画素数比較に基づき照度むら補正を施すことも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−161732号公報
【特許文献2】特公平7−34208号公報
【特許文献3】特開2004−214714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、ユーザが意識的にスイッチを作動させないとシェーディング補正が施されず、周囲環境がシェーディング補正を施すべき環境であるか否かは、ユーザの経験と勘に頼らざるを得ない。仮に、シェーディング補正を施さなくても十分な読取性能が得られる場合にもかかわらず、ユーザがスイッチを作動させてシェーディング補正を施した場合には、デコードまでに余計な処理時間が掛かってしまい、利便性が低下する。また、特許文献3に開示された技術では、撮像画像のヒストグラムを常時計算していることから、上述同様、照度むら補正を施さなくても十分な読取性能が得られる場合にまで、照度むら補正が施されてしまう。その結果、上述同様、デコードまでに余計な処理時間が掛かってしまい、利便性が低下する。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、照度むらの補正処理が必要に応じて自動的に施され、不必要な補正処理がなされるのを防ぎ、ひいては利便性の向上に寄与することが可能な光学的情報読取装置及び光学的情報読取方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光学的情報読取装置は、読取対象を撮像して画像信号を生成する撮像部と、撮像部による撮像の際に読取対象に照明光を当てる照明部と、読取対象に照明光が当たることによって画像信号に現れるむらを補正するための補正処理を画像信号に対して実行する補正部と、補正処理が施された画像信号に基づいて、読取対象に含まれる情報コードを復号する復号部と、周囲の照度を検出する照度検出部と、照度検出部の検出結果に基づいて、補正部において補正処理を実行するか否かを決定する補正処理実行有無決定部と、を備える。
【0010】
このような構成によれば、補正処理実行有無決定部によって、照度検出部の検出結果に基づいて、読取対象に照明光が当たることによって画像信号に現れるむらを補正するための補正処理を実行するか否かが決定されるので、周囲の照明環境によりむら補正の必要性がある場合、例えば補正しないと十分な読取性能が得られない場合には、補正処理を実行することができる一方で、例えば補正しなくても十分な読取性能が得られる場合には、補正処理を実行しないようにすることができる。その結果、デコードまでに余計な処理時間が掛かってしまうのを防ぐことができ、ひいては利便性の向上に寄与することができる。
【0011】
また、本発明に係る光学的情報読取装置では、周囲の照度についての閾値を記憶する閾値記憶部を備え、補正処理実行有無決定部は、照度検出部により検出された照度が閾値を下回ったとき、補正部において補正処理の実行を決定するような構成としてもよい。これにより、例えば、倉庫の中へと移動して、周囲の照明環境が暗くなり、照度検出部により検出された照度が閾値を下回り、読取対象に当たる照明光が際立つことに起因したむらが画像信号に生じたときには、補正処理を実行することができる一方、逆に倉庫の中から外へ移動して、周囲の照明環境が明るくなり、照度検出部により検出された照度が閾値を超え、読取対象に当たる照明光が際立たなくなったときには、補正処理を実行しないようにすることができる。その結果、光学的情報読取装置をもったユーザが移動する等して、周囲の照明環境が変化した場合であっても、必要に応じて補正処理を実行することができ、ひいてはデコードまでに余計な処理時間が掛かってしまうのを防ぎ、利便性の向上に寄与することができる。
【0012】
なお、照明部からの照明光をON・OFFするタイミングについては、どのタイミングであっても構わない。例えば、倉庫の中から外へ移動して、周囲の照明環境が明るくなったタイミングで、照明部からの照明光をOFFするような構成とすることもできる。
【0013】
また、本発明に係る光学的情報読取装置では、照明部は、撮像部の撮像範囲のうち特定範囲が明るくなるように照明光を当てるとともに、補正部は、その特定範囲から離れるにつれて画像信号の明度値を高めるような補正処理を実行するような構成としてもよい。このように、読取対象に照明光が当たることによって画像信号に現れるむらを補正するにあたって、画素の位置情報を利用することによって、撮像画像のヒストグラムを計算するなど処理負荷の大きな処理を不要にすることができ、ひいては補正処理に掛かる時間を短縮することができる。その結果、補正処理を伴うデコードに掛かる時間を短縮することができる。また、画素の位置情報を利用することによって、補正に必要なメモリ容量も少なくてすみ、また、場合によっては補正用の画像データを記憶する必要がなく、メモリ資源を効率的に活用することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、補正処理実行有無決定部によって、照度検出部の検出結果に基づいて、補正部において補正処理を実行するか否かが決定されるので、周囲の照明環境によりむら補正の必要がある場合には、補正処理が実行される一方で、その必要がない場合には、補正処理は実行されない。その結果、不必要な補正処理が実行されなくなるので、デコードまでに余計な処理時間が掛かってしまうのを防ぐことができ、ひいては利便性の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るハンディターミナルの外観構成を示す図である。
【図2】ハンディターミナルを側面から見たときの側面図である。
【図3】ハンディターミナルを背面から見たときの背面図である。
【図4】ハンディターミナルの背面を読取対象に対向させて、2次元コードを読み取っている様子を示す図である。
【図5】ハンディターミナルのハードウェア的な機能構成例を示す図である。
【図6】ハンディターミナルにおける情報処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】補正処理が実行される前と後とを比較するための図である。
【図8】補正処理が実行される前と後とを比較するための図である。
【図9】補正処理が実行される前と後とを比較するための図である。
【図10】補正処理が実行される前と後とを比較するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る光学的情報読取装置について、図面に基づいて具体的に説明する。
【0017】
[概略構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るハンディターミナル1の外観構成を示す図である。図2は、ハンディターミナル1を側面から見たときの側面図である。図3は、ハンディターミナル1を背面から見たときの背面図である。図4は、ハンディターミナル1の背面を読取対象1000に対向させて、バーコード(図4では省略)を読み取っている様子を示す図である。なお、本実施形態では、光学的情報読取装置の一例としてハンディターミナル1を採用している。
【0018】
ハンディターミナル1は、商用電源や通信ネットワークに常には接続されていない、いわゆるコードレスのハンディターミナルであって、工場や倉庫における商品やその包装箱等に付されているバーコードなどの1次元コードや、QRコードなどの2次元コードを読み取る目的で使用される。ユーザは、ハンディターミナル1を把持して、背面に設けられた読取窓13(図2および図3参照)を2次元コードに対向させて、筐体の側面に設けられたトリガキー11を押すことによって、2次元コードを読み取ることができる。また、コードレスのハンディターミナル100には充電池(図示せず)が内蔵されており、その電池からの電力供給を受けて、ハンディターミナル1単独で、2次元コードの読取処理や商品の検索処理を実行することができるようになっている。
【0019】
また、ハンディターミナル1は、いわゆるリッチクライアント方式(或いはファットクライアント方式)によって、端末自体がプログラム実行機能を有しており、外部のサーバ等を通信が確立されていない状態でも、例えば2次元コードの読取処理や商品の検索処理などの各種処理を行うことができる(オフライン操作が可能となっている)。また、ハンディターミナル1の表面には、各種処理結果や通信結果が表示される液晶ディスプレイ10や、ユーザが液晶ディスプレイ10を見ながら各種操作を行うための操作キー16が設けられている。
【0020】
ここで、本実施形態に係るハンディターミナル1には、読取対象1000を撮像して画像信号を生成するためのCCD15が組み込まれており、図3に示すように、読取窓13を通じてCCD15のレンズを視認できるようになっている。なお、本実施形態では、撮像部の一例としてCCD15を採用しているが、その他、CMOSなどの撮像素子を用いても構わない。また、図3に示すように、ハンディターミナル1の背面において、読取窓13の四隅には読取対象1000に照明光を当てる4個のLED14が設けられている。このLED14の光量を制御することによって、CCD15で読取対象1000を撮像する際に周囲の照明環境を調節することができる。さらに、図1に示すように、液晶ディスプレイ10の左上方には、照度センサ12が設けられている。この照度センサ12は、周囲の照度を検出する照度検出部の一例となるものであって、周囲の照度が高いとき、すなわち屋外など周囲の照明環境が明るいときには、液晶ディスプレイ10のバックライトを少し明るくして、液晶ディスプレイ10に表示された画面をユーザが見やすくなるように配慮し、一方で、周囲の照度が低いとき、すなわち倉庫の中など周囲の照明環境が暗いときには、液晶ディスプレイ10のバックライトを暗くして、充電池の電力消費を抑えるようにしている。
【0021】
特に、本実施形態に係るハンディターミナル1では、この照度センサ12による照度の検出結果に基づいて、CCD15で撮像して得られた画像信号に現れるむらを補正するための補正処理を施すか否かが決定される。例えば、倉庫の中など周囲の照明環境が暗いときには、読取対象1000の中央付近において4個のLED14からの照明光が集中して際立ってしまうため、CCD15で撮像して得られた画像信号にむらが現れる。このような場合に、ハンディターミナル1においてむら補正をしないと十分な読取性能が得られないと判断されたときには、むらを補正するための補正処理が施される。一方で、例えば屋外など周囲の照明環境が明るいときには、外光が十分であるため、照明環境が暗いときのようにLED14からの照明光が際立つ可能性も低い。このような場合に、ハンディターミナル1においてむら補正をしなくても十分な読取性能が得られると判断されたときには、むらを補正するための補正処理が施されない。このように、むら補正の必要性に応じて、補正処理が施されるようにすることで、不必要な補正処理が施されることを防ぎ、ひいてはデコードまでに余計な処理時間が掛かってしまうのを防ぐことができる。その結果、利便性を高めることができる。
【0022】
図5は、ハンディターミナル1のハードウェア的な機能構成例を示す図である。
【0023】
図5において、ハンディターミナル1は、制御部100と、撮像部101と、照明部102と、照度検出部103と、補正処理実行有無決定部104と、閾値記憶部105と、補正部106と、復号部107と、表示部108と、操作部109と、を有している。制御部100は、CPUやROM(フラッシュROM等の読み書き可能な不揮発性のROMを含む),RAMなどから構成され、内部バスを介して上述したハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部を制御するとともに、ROMに記憶されているプログラムに従って各種ソフトウェアの機能を実現する。また、SRAM等の揮発性メモリで構成されたRAMは、プログラムが実行される際にロードモジュールが展開され、プログラムの実行時に発生する一時的なデータを記憶するワーキングエリアとして機能する。なお、詳細は後述する補正処理実行有無決定部104、補正部106、復号部107は、制御部100に含まれるCPUの一機能としてソフトウェア的に実現することもできるし、制御部100に含まれるCPUとは異なるCPU(専用のプロセッサ)の機能として実現することもできる。
【0024】
撮像部101は、CCD(イメージセンサ)15の2次元撮像素子を有しており、読取対象1000からの反射光を受光して、それを光電変換して得られる画像信号を生成する手段である。また、撮像部101には、アナログ信号の信号増幅を行う増幅器や、アナログ信号からなる画像信号をデジタル信号にA/D変換するA/D変換器、LD(レーザダイオード)素子などが含まれており、CCD15から出力されたアナログ信号は、増幅器で増幅され、A/D変換器でデジタル信号に変換され、制御部100に出力される。LD素子は、読取対象1000に向けてレーザ光を照射することによって、読取対象1000の表面にポインタを表示させる。照明部102は、上述したように4個のLED14を有しており、CCD15による撮像の際に読取対象1000に照明光を当てる手段である。本実施形態では、ハンディターミナル1の背面に4個のLED14を設けているが、その数や位置の如何は問わない。照度検出部103は、照度センサ12を有しており、周囲の照度がどの程度かを検出することができる。照度検出部103の検出結果は、補正処理実行有無決定部104に送られる。
【0025】
補正処理実行有無決定部104は、照度検出部103の検出結果に基づいて、撮像部101で得られた画像信号に現れるむらを補正するための補正処理を実行するか否かを決定するための手段である。補正処理実行有無決定部104は、周囲の照度についての閾値を記憶する閾値記憶部105から閾値を読み出して、照度検出部103により検出された照度と比較する。照度検出部103により検出された照度の方が閾値を下回っていたときには、周囲の照明環境が暗く、補正処理を施さないと十分な読取性能が得られないと決定し、補正処理の実行を決定する旨の決定結果を制御部100に送る。これを受けた制御部100は、補正部106に対して補正処理の実行を指示する。
【0026】
補正部106は、撮像部101によって得られた画像信号に現れるむらを補正するための補正処理を、画像信号に対して実行する。本実施形態では、4個のLED14によって読取対象1000の中央付近が明るくなる。そこで、読取対象1000の中央付近から離れるにつれて画像信号の明度値を高めるような補正処理を実行する。例えば、補正後の画素明度値=補正前の画素明度値+(X軸中心と現画素の距離+Y軸中心と現画その距離)/4:但し、補正後の画素明度値>255のときには、補正後の画素明度値=255、といった補正変換式を使用して補正処理を施すこともできる。より具体的には、全体画素が752×480の場合なら、中心は(376,240)になるので、(100,300)の位置における補正前の画素明度を50としたとき、(100,300)の位置における補正後の画素明度は、50+{(376−100)+(300−240)}/4=134に変換される。この補正変換式は一例であり、少なくとも、読取対象1000の中央付近から離れるにつれて画像信号の明度値を高めるような補正処理が実行されるような補正変換式であれば、どのような補正変換式であっても構わない。また、他にも各種の補正変換式が考えられる。例えば、4個のLED14が十分に離れていて、読取対象1000の4隅だけが明るくなるように照明光を当てたとき、補正変換式としては、読取対象1000の4隅から離れるにつれて画像信号の明度値を高めるような補正処理が実行されればよい。その結果、この場合には、読取対象1000の中央付近が最も明度値が高められることになる。
【0027】
復号部107は、撮像部101によって得られたデジタル信号(画像信号)のデコード処理を行う。具体的には、読取対象1000の中から2次元コードを抽出するための処理が行われ、抽出に成功したときには、その2次元コードがデコードされる。ハンディターミナル1では、バーコードのような1次元コードやQRコードのような2次元コードなど、複数種類の情報コードを読み取り可能である。これらの情報コードは、一般的に、矩形のコード領域内に情報コードが形成されている。
【0028】
表示部108は、上述した液晶ディスプレイ10を有しており、制御部100からの表示制御コマンドに基づいて、ユーザが発注管理や入出庫管理など各種作業を行うための画面が表示される。操作部109は、ハンディターミナル1に対して各種入力操作を行うためのものであって、上述したトリガキー11や操作キー16などを有している。ユーザがトリガキー11を押したことを契機として、制御部100は操作部109からその操作信号を受信し、撮像部101に対し、読取コマンドを送信する。読取コマンドを受信した撮像部101は、上述したように読取対象1000を撮像し、画像信号を生成する。
【0029】
図6は、ハンディターミナル1における情報処理の流れを示すフローチャートである。
【0030】
図6において、まず、読取対象1000に照明光を当てた後、撮像が行われる(ステップS1)。具体的には、ユーザによってトリガキー11が押されると、制御部100は操作部109から操作信号を受信し、照明部102に対して照明指示を行った後、撮像部101に対して撮像指示を行う。その結果、CCD15によって撮像が行われ、撮像部101において画像信号が生成される。
【0031】
次に、照度検出が行われる(ステップS2)。具体的には、制御部100は、直接又は補正処理実行有無決定部104を介して照度検出部103に照度検出指示を行う。そうすると、照度センサ12により周囲の照度が検出され、検出結果が補正処理実行有無決定部104に送られる。
【0032】
次に、補正処理実行有無決定部104において補正処理を実行すべきか否かが判断される(ステップS3)。具体的には、補正処理実行有無決定部104は、閾値記憶部105から閾値を参照して、照度検出部103から得られた照度と比較し、補正処理を実行すべきか否かを判断する。照度検出部103から得られた照度が閾値より低いときには、むら補正を施さないと十分な読取性能が得られないとして、補正処理の実行を決定する。制御部100は、補正処理実行有無決定部104の決定を受けて、撮像部101で得られた画像信号を補正部106に送り、補正部106では、その画像信号に対して補正処理が実行される(ステップS4)。なお、閾値記憶部105に記憶される閾値はユーザが所望の値に設定することもできるし、予め最適な値が記憶されていてもよい。ユーザが所望の値に設定することができる場合には、ハンディターミナル1には、補正処理を実行すべきか否かを決定するための閾値を設定する手段が設けられる。
【0033】
図7〜図10は、補正処理が実行される前と後とを比較するための図である。図7は、周囲の外光はなく、4個のLED14のみによって白紙を撮像したときの画像信号(明度値)を示している。図7によれば、4個のLED14によって白紙の中央付近が明るくなっているのが分かる。図8は、図7に示す画像信号に対し、上述した補正変換式を使ってむら補正の補正処理を施したときの画像信号を示している。図7に示す例では、撮像部101の撮像範囲のうち特定範囲として中央付近が明るくなるように、LED14の照明光が白紙に当たっているので、中央付近から離れるにつれて画像信号の明度値を高めるような補正処理が施される。その結果、図8に示すように、白紙の中央付近に加えて、白紙の4隅近傍も十分な明度値が得られる。
【0034】
本実施形態では、このような補正処理を、読取対象1000を撮像して得られた画像信号に対して施す。図9は、周囲の外光はなく、4個のLED14のみによって読取対象1000を撮像したときの画像信号を示している。そして、図10は、図9に示す画像信号に対し、上述した補正変換式を使ってむら補正の補正処理を施したときの画像信号を示している。図9及び図10に示すように、補正処理を施す前は、読取対象1000の4隅近傍の明度値が小さく、デコードの読取性能の低下を招く虞がある一方で、補正処理を施した後は、読取対象1000の4隅近傍の明度値も十分大きく、デコードの読取性能の低下を防ぐことができる。
【0035】
その後、復号部107によって、補正処理が施された画像信号(例えば図10)に対して復号処理が実行され(ステップS6)、デコードが完了する。
【0036】
一方で、ステップS3において、照度が閾値以上であるときには、むら補正を施さなくても十分な読取性能が得られるとして、補正処理の不実行を決定する。制御部100は、補正処理実行有無決定部104の決定を受けて、撮像部101で得られた画像信号を復号部107に送るため、補正処理は実行されない(ステップS5)。その後、復号部107によって、補正処理が施されない状態での画像信号に対して復号処理が実行され(ステップS6)、デコードが完了する。
【0037】
[実施形態の主な効果]
以上説明したように、本実施形態に係るハンディターミナル1によれば、周囲の照明環境によりむら補正の必要性がある場合、補正処理を実行することができる一方で(図6のステップS4)、補正しなくても十分な読取性能が得られる場合には、補正処理を実行しない(図6のステップS5)。その結果、デコードまでに余計な処理時間が掛かってしまうのを防ぐことができ、ひいては利便性の向上に寄与することができる。
【0038】
また、本実施形態では、液晶ディスプレイ10のバックライトを制御するために設けられた照度センサ12を利用して、補正処理を実行すべきか否かを決定している。これにより、部品点数の増加を防ぐことができる。すなわち、本実施形態に係るハンディターミナル1では、制御部100は、照度センサ12からの信号に基づいて液晶ディスプレイ10のバックライトを制御する機能を有するとともに、補正処理実行有無決定部104の決定結果に基づいて補正部106に対してむら補正を指示する機能をも有しているので、部品点数を増加させることなく、必要に応じたむら補正を行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ハンディターミナル
10 液晶ディスプレイ
11 トリガキー
12 照度センサ
13 読取窓
14 LED
15 CCD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象を撮像して画像信号を生成する撮像部と、
前記撮像部による撮像の際に読取対象に照明光を当てる照明部と、
読取対象に前記照明光が当たることによって前記画像信号に現れるむらを補正するための補正処理を前記画像信号に対して実行する補正部と、
前記画像信号に基づいて、読取対象に含まれる情報コードを復号する復号部と、
周囲の照度を検出する照度検出部と、
前記照度検出部の検出結果に基づいて、前記補正部において前記補正処理を実行するか否かを決定する補正処理実行有無決定部と、を備えることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
周囲の照度についての閾値を記憶する閾値記憶部を備え、
前記補正処理実行有無決定部は、前記照度検出部により検出された照度が前記閾値を下回ったとき、前記補正部において前記補正処理の実行を決定することを特徴とする請求項1記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記照明部は、前記撮像部の撮像範囲のうち特定範囲が明るくなるように照明光を当てるとともに、
前記補正部は、前記特定範囲から離れるにつれて前記画像信号の明度値を高めるような補正処理を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
読取対象に照明光を当てる照明ステップと、
読取対象を撮像して画像信号を生成する撮像ステップと、
周囲の照度を検出する照度検出ステップと、
前記照度検出ステップの検出結果に基づいて、読取対象に前記照明光が当たることによって前記画像信号に現れるむらを補正するための補正処理を前記画像信号に対して実行するか否かを決定する補正処理実行有無決定ステップと、を含み、
前記補正処理実行有無決定ステップにより、前記補正処理を実行すると決定された場合には、前記補正処理が実行された前記画像信号に基づいて、読取対象に含まれる情報コードが復号される一方で、前記補正処理を実行しないと決定された場合には、前記補正処理が実行されていない前記画像信号に基づいて、読取対象に含まれる情報コードが復号されることを特徴とする光学的情報読取方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−118707(P2011−118707A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275925(P2009−275925)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】