説明

光学素子、撮像レンズ群および撮像装置

【課題】光画素の撮像素子に対応した光学素子において、ゴーストやフレアの発生を有効に抑える。
【解決手段】光学素子は、光軸を中心として有効光束を通過させる有効径エリアと、有効径エリアの周囲のフランジ部を有する。フランジ部は像側および物体側に側面を有する。この側面において光軸の方向に対して非垂直となる傾斜を有することによりゴーストやフレアを引き起こすおそれのある有害な光束が撮像素子へ入射することを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、光学素子に関する。詳しくは、撮像レンズ群におけるレンズの形状に関し、また、そのレンズを利用した撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CCDやCMOSセンサ等の固体撮像素子を用いたカメラ付携帯電話やデジタルスチルカメラ等の撮像装置が知られている。このような撮像装置ではより一層の小型化および低背化が要求されており、搭載される撮影用のレンズについてもより小型で全長の短いものが要求されている。
【0003】
また、近年ではカメラ付携帯電話のような小型撮像機器においても小型化とともに撮像素子の高画素化が進んでおり、デジタルスチルカメラと同等の高画素撮像素子を搭載したモデルが普及機となっている。そのため、搭載される撮像レンズとしてもこうした高画素の固体撮像装置に対応する高いレンズ性能が要求されている。
【0004】
さらに、画質劣化の要因としてゴーストやフレアの存在が挙げられており、これらが発生しない撮像光学系を提供する必要があるが、近年の小型化および低背化によってゴーストやフレアについては逆に発生し易く、除去し難い状況となってきている。
【0005】
そのため、例えば、第二レンズの外周面(コバ面)において光軸に対する非平行面を設けることにより、ゴーストやフレアの発生を抑える光学素子が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−164755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の従来技術は、有害光がコバ面に入射した場合には有効である。しかしながら、有害光が物体側のフランジ面に向かって反射していくような、像側有効径内エリアの曲率半径の小さい光学系においては、ゴーストを除去することができない。また、像側に凸面を向けた光学系において、像側フランジ面で全反射する光束についても、コバ面における非平行面に光線は当たらない。したがって、物体側のフランジ面に向かって反射していくような場合にはゴーストやフレアを除去することはできない。
【0008】
本技術はこのような状況に鑑みて生み出されたものであり、光画素の撮像素子に対応した光学素子において、ゴーストやフレアの発生を有効に抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の側面は、光軸を中心として有効光束を通過させる有効径エリアと、上記有効径エリアの周囲の側面において上記光軸の方向に対して非垂直となる傾斜を有するフランジ部とを具備する光学素子である。これにより、フランジ部の側面に入射した光束の反射角度を傾斜によって変化させることにより、有害な光束が撮像素子の方へ入射することを回避するという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記傾斜は、上記フランジ部の像側の側面に設けられてもよい。また、この傾斜は、上記フランジ部の側面における内端部または周縁部に設けられてもよい。また、この傾斜は、上記フランジ部の側面における内端部および周縁部の両者にそれぞれ設けられた窪みであり、上記内端部および周縁部における上記窪みを結ぶ領域は上記光軸に対して略垂直な平面であってもよい。また、この傾斜は、上記フランジ部の側面において上記光軸を中心とする円の全周またはその一部に設けられてもよい。
【0011】
また、本技術の第2の側面は、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、負の屈折力を有する第4のレンズとを有し、上記第2レンズまたは第3レンズは、光軸を中心として有効光束を通過させる有効径エリアと、上記有効径エリアの周囲の側面において上記光軸の方向に対して非垂直となる傾斜を有するフランジ部とを備える撮像レンズ群である。これにより、4枚構成のレンズ群の第2レンズまたは第3レンズにおいて、フランジ部の側面に入射した光束の反射角度を傾斜によって変化させることにより、有害な光束が撮像素子の方へ入射することを回避するという作用をもたらす。なお、撮像レンズ群は、実質的にレンズパワーを有さないレンズをさらに有してもよい。
【0012】
また、本技術の第3の側面は、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、正の屈折力を有する第4のレンズと、負の屈折力を有する第5のレンズとを有し、上記第2レンズまたは第3レンズは、光軸を中心として有効光束を通過させる有効径エリアと、上記有効径エリアの周囲の側面において上記光軸の方向に対して非垂直となる傾斜を有するフランジ部とを備える撮像レンズ群である。これにより、5枚構成のレンズ群の第2レンズまたは第3レンズにおいて、フランジ部の側面に入射した光束の反射角度を傾斜によって変化させることにより、有害な光束が撮像素子の方へ入射することを回避するという作用をもたらす。なお、撮像レンズ群は、実質的にレンズパワーを有さないレンズをさらに有してもよい。
【0013】
また、本技術の第4の側面は、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、負の屈折力を有する第4のレンズとを有する撮像レンズ群と、上記撮像レンズにより形成された光学像を電気的な信号に変換する撮像素子とを具備し、上記第2レンズまたは第3レンズは、光軸を中心として有効光束を通過させる有効径エリアと、上記有効径エリアの周囲の側面において上記光軸の方向に対して非垂直となる傾斜を有するフランジ部とを備える撮像装置である。これにより、撮像レンズ群を有する撮像装置において、第2レンズまたは第3レンズのフランジ部の側面に入射した光束の反射角度を傾斜によって変化させることにより、有害な光束が撮像素子の方へ入射することを回避するという作用をもたらす。なお、撮像レンズ群は、実質的にレンズパワーを有さないレンズをさらに有してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本技術によれば、光画素の撮像素子に対応した光学素子において、ゴーストやフレアの発生を有効に抑えることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本技術の第1の実施の形態における撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の一例である。
【図2】本技術の第1の実施の形態における撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の他の例である。
【図3】本技術の第1の実施の形態における第2レンズ120の像側の光軸方向からみた背面図の一例である。
【図4】本技術の第1の実施の形態における第2レンズ120の窪み121を拡大した断面図の一例である。
【図5】本技術の第2の実施の形態における撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の一例である。
【図6】本技術の第2の実施の形態における撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の他の例である。
【図7】本技術の第2の実施の形態における第2レンズ120の像側の光軸方向からみた背面図の一例である。
【図8】本技術の第3の実施の形態における撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の一例である。
【図9】本技術の第3の実施の形態における第2レンズ120の像側の光軸方向からみた背面図の一例である。
【図10】本技術の第4の実施の形態における撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の一例である。
【図11】本技術の第5の実施の形態における撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の一例である。
【図12】本技術の実施の形態における第2レンズ120の像側の光軸方向からみた背面図の第1の変形例である。
【図13】本技術の実施の形態における第2レンズ120の像側の光軸方向からみた背面図の第2の変形例である。
【図14】従来の撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の一例である。
【図15】従来の撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(第2レンズの像側フランジ面の周縁部に窪みを設けた例)
2.第2の実施の形態(第2レンズの像側フランジ面の内端部に窪みを設けた例)
3.第3の実施の形態(第2レンズの像側フランジ面の周縁部および内端部に窪みを設けた例)
4.第4の実施の形態(第2レンズの像側フランジ面の周縁部および内端部に窪みを設けた他の例)
5.第5の実施の形態(第3レンズの像側フランジ面の内端部に窪みを設けた例)
6.変形例
【0017】
<1.第1の実施の形態>
[撮像装置の光学系の構成]
図1は、本技術の第1の実施の形態における撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の一例である。この第1の実施の形態における光学系は、正の屈折力を有する第1レンズ110と、負の屈折力を有する第2レンズ120と、正の屈折力を有する第3レンズ130と、負の屈折力を有する第4レンズ140とを備えている。なお、以下では第1レンズ110乃至第4レンズ140の各々を単に「レンズ」と称することがある。各レンズは光軸90を中心として有効光束を通過させる有効径70に相当する有効径エリアを有している。各レンズにおける有効径エリアの外側の周囲はフランジ部と呼ばれる。フランジ部のうち、物体側に面している側面を物体側フランジ面と呼称し、像側に面している側面を像側フランジ面と呼称する。また、各レンズの端の外周面はコバ面と呼ばれる。
【0018】
4枚のレンズ110乃至140のフランジ部におけるそれぞれの隙間には遮光部品151乃至153が挟まれている。この遮光部品151乃至153はドーナツ状の形状を有しており、有効径エリア以外においてレンズ間で光が透過しないよう遮っている。
【0019】
レンズ110乃至140および遮光部品151乃至153は、レンズホルダ160に収納される。このレンズホルダ160は、レンズバレルまたはレンズ鏡筒などとも呼ばれる。
【0020】
レンズ110乃至140の像側にはフィルタ180が設けられている。このフィルタ180は、余分な赤外線をカットするためのものである。
【0021】
フィルタ180のさらに像側には撮像素子190が設けられている。この撮像素子190は、物体側からレンズ110乃至140により形成された光学像を電気的な信号に変換するものである。
【0022】
このような4枚構成レンズにおいては、例えば図14に示すように、光源10からの入射光20の光束が第2レンズ120の有効径エリアの像側から物体側フランジ面に反射して、第2レンズ120内で反射を繰り返すおそれがある。このような光束は、第2レンズ120内で反射を繰り返した後に撮像素子190へ入射することにより、ゴーストやフレアを引き起こす要因となる。そこで、この第1の実施の形態では、図1のように第2レンズ120の像側フランジ面129の周縁部に窪み121を設けることにより、像側の有効径エリア127から入射した有害な光束をレンズホルダ160や遮光部品152の方へ屈折させている。その結果、ゴーストやフレアを引き起こすおそれのある有害な光束が撮像素子190へ入射することを防ぐことができる。
【0023】
図2は、本技術の第1の実施の形態における撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の他の例である。この図における撮像装置の光学系は図1のものと同様であり、入射光20の入射角度のみが異なっている。この例では、窪み121を設けない場合には、光源10からの入射光20の光束が第2レンズ120の有効径エリアの像側から物体側フランジ面に反射して、第2レンズ120内で反射を繰り返すおそれがある。このような光束も、同様に、第2レンズ120内で反射を繰り返した後に撮像素子190へ入射することにより、ゴーストやフレアを引き起こす要因となる。本技術の第1の実施の形態では、このような角度で入射した光束も、図2のように第2レンズ120の像側フランジ面129の周縁部に窪み121を設けることにより、遮光部品152の方へ屈折させている。その結果、ゴーストやフレアを引き起こすおそれのある有害な光束が撮像素子190へ入射することを防ぐことができる。
【0024】
[第2レンズの構造]
図3は、本技術の第1の実施の形態における第2レンズ120の像側の光軸方向からみた背面図の一例である。この第1の実施の形態における第2レンズ120は、像側の有効径エリア127の周囲の像側フランジ面129の周縁部に窪み121を設けている。この窪み121は、像側フランジ面129の周縁部において、光軸90を中心とする円の全周に亘って設けられている。
【0025】
なお、ここでは光軸90を中心とする円の全周に亘って窪み121を設けた例について示したが、光軸90を中心とする円上の一部のみに窪み121を設けるようにしてもよい。例えば、有害な光束が上方から下方へ入射することを考慮して、光軸90を中心とする円上の下半分のみに窪み121を設けてもよい。
【0026】
図4は、本技術の第1の実施の形態における第2レンズ120の窪み121を拡大した断面図の一例である。ここでは、窪み121の形状例として、同図(a)に窪み121aを、同図(b)に窪み121bを、同図(c)に窪み121cをそれぞれ示している。
【0027】
窪み121aは、光軸90の方向に対して非垂直となる傾斜を、第2レンズ120の内周側および外周側の両者において有する形状の例である。窪み121bは、光軸90の方向に対して非垂直となる傾斜を、第2レンズ120の内周側のみにおいて有する形状の例である。窪み121bは、光軸90の方向に対して非垂直となる傾斜を、第2レンズ120の外周側のみにおいて有する形状の例である。これらの傾斜によってレンズ120における光束の反射角度を変えることにより、第2レンズ120内での反射の繰り返しを抑制することができるようになる。
【0028】
このように、本技術の第1の実施の形態では、第2レンズ120の像側フランジ面129の周縁部に窪み121を設けることにより、ゴーストやフレアを引き起こすおそれのある有害な光束が撮像素子190へ入射することを防ぐことができる。すなわち、像側有効径エリア、物体側フランジ面と反射してきた有害な光束が、窪み121によってレンズホルダ160または遮光部品152の方へ屈折し、撮像素子190への入射を防ぐことができる。また、像側有効径エリア、物体側フランジ面、レンズコバ面を反射してきた有害な光束を遮光部品152の方へ屈折し、撮像素子190への入射を防ぐことができる。さらに、像側有効径エリアで反射した光束が直接レンズコバ面に向かう場合においても、窪み121によってレンズホルダ160または遮光部品152の方へ屈折し、撮像素子190への入射を防ぐことができる。
【0029】
<2.第2の実施の形態>
[撮像装置の光学系の構成]
図5は、本技術の第2の実施の形態における撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の一例である。この第2の実施の形態における光学系は、第1の実施の形態と同様に、正の屈折力を有する第1レンズ110と、負の屈折力を有する第2レンズ120と、正の屈折力を有する第3レンズ130と、負の屈折力を有する第4レンズ140とを備えている。また、遮光部品151乃至153、レンズホルダ160、フィルタ180および撮像素子190を備える点も第1の実施の形態と同様である。
【0030】
第1の実施の形態では第2レンズ120の像側フランジ面129の周縁部に窪み121を設けていたが、この第2の実施の形態では第2レンズ120の像側フランジ面129の内端部に窪み122を設けている。この窪み122により、第2レンズ120の像側フランジ面129の内端部に入射した光束を反射させることなく遮光部品152の方へ屈折させている。その結果、ゴーストやフレアを引き起こすおそれのある有害な光束が撮像素子190へ入射することを防ぐことができる。
【0031】
図6は、本技術の第2の実施の形態における撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の他の例である。この図における撮像装置の光学系は図5のものと同様であり、入射光20の入射角度のみが異なっている。この例では、第2レンズ120の像側フランジ面129の内端部に入射した光束が第2レンズ120内で反射を繰り返した後に、内端部においてさらに反射する直前に窪み122によって遮光部品152の方へ屈折させている。その結果、ゴーストやフレアを引き起こすおそれのある有害な光束が撮像素子190へ入射することを防ぐことができる。
【0032】
[第2レンズの構造]
図7は、本技術の第2の実施の形態における第2レンズ120の像側の光軸方向からみた背面図の一例である。この第2の実施の形態における第2レンズ120は、像側の有効径エリア127の周囲の像側フランジ面129の内端部に窪み122を設けている。この窪み122は、像側フランジ面129の内端部において、光軸90を中心とする円の全周に亘って設けられている。
【0033】
なお、ここでは光軸90を中心とする円の全周に亘って窪み122を設けた例について示したが、第1の実施の形態の場合と同様に、光軸90を中心とする円上の一部のみに窪み122を設けるようにしてもよい。例えば、有害な光束が上方から下方へ入射することを考慮して、光軸90を中心とする円上の下半分のみに窪み122を設けてもよい。
【0034】
また、窪み122の形状についても、図4において説明した第1の実施の形態の場合と同様の形状を採用することができる。
【0035】
このように、本技術の第2の実施の形態では、第2レンズ120の像側フランジ面129の内端部に窪み122を設けることにより、ゴーストやフレアを引き起こすおそれのある有害な光束が撮像素子190へ入射することを防ぐことができる。すなわち、像側有効系エリアで全反射した有害な光束を遮光部品152の方へ屈折し、撮像素子190への入射を防ぐことができる。また、像側有効径エリア、物体側フランジ面、レンズコバ面、像側フランジ面、物体側フランジ面において全反射を繰り返してきた有害な光束を、遮光部品152の方へ屈折し、撮像素子190への入射を防ぐことができる。さらに、像側有効径エリア、レンズコバ面、物体側フランジ面において全反射を繰り返してきた有害な光束についても、遮光部品152の方へ屈折し、撮像素子190への入射を防ぐことができる。
【0036】
<3.第3の実施の形態>
[撮像装置の光学系の構成]
図8は、本技術の第3の実施の形態における撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の一例である。この第3の実施の形態における光学系は、第1の実施の形態と同様に、正の屈折力を有する第1レンズ110と、負の屈折力を有する第2レンズ120と、正の屈折力を有する第3レンズ130と、負の屈折力を有する第4レンズ140とを備えている。また、遮光部品151乃至153、レンズホルダ160、フィルタ180および撮像素子190を備える点も第1の実施の形態と同様である。
【0037】
上述のように、第1の実施の形態では第2レンズ120の像側フランジ面129の周縁部に窪み121を設け、第2の実施の形態では第2レンズ120の像側フランジ面129の内端部に窪み122を設けていたが、この第3の実施の形態ではその両者を設ける。すなわち、この第3の実施の形態では、第2レンズ120の像側フランジ面129の周縁部に窪み121を設けるとともに、内端部に窪み122を設ける。これにより、様々な角度から入射する有害な光束をレンズホルダ160や遮光部品152の方へ屈折させる。その結果、ゴーストやフレアを引き起こすおそれのある有害な光束が撮像素子190へ入射することを防ぐことができる。
【0038】
[第2レンズの構造]
図9は、本技術の第3の実施の形態における第2レンズ120の像側の光軸方向からみた背面図の一例である。この第2の実施の形態における第2レンズ120は、像側の有効径エリア127の周囲の像側フランジ面129の周縁部に窪み121を設けるとともに、内端部に窪み122を設けている。これら窪み121および122は、像側フランジ面129において、光軸90を中心とする同心円の全周に亘って設けられている。
【0039】
また、窪み121と窪み122との間を結ぶ領域は光軸90に対して略垂直な平面となっている。これにより、レンズ110乃至140をレンズホルダ160に組み込む際に、それぞれの間隔の精度を向上させることを容易にするという利点がある。
【0040】
なお、ここでは光軸90を中心とする円の全周に亘って窪み121および122を設けた例について示したが、第1の実施の形態の場合と同様に、光軸90を中心とする円上の一部のみに窪み121および122を設けるようにしてもよい。例えば、有害な光束が上方から下方へ入射することを考慮して、光軸90を中心とする円上の下半分のみに窪み121および122を設けてもよい。また、窪み121および122の一方を全周に設け、他方を円上の一部のみに設けてもよい。
【0041】
また、窪み121および122の形状についても、図4において説明した第1の実施の形態の場合と同様の形状を採用することができる。
【0042】
このように、本技術の第3の実施の形態では、第2レンズ120の像側フランジ面129の周縁部に窪み121を設けるとともに、内端部に窪み122を設けることにより、有害な光束が撮像素子190へ入射することを防ぐことができる。すなわち、上述の第1の実施の形態における効果および第2の実施の形態における効果の両者を兼ね備え、光源が光軸に対してあらゆる角度をもって存在する場合においても、ゴーストやフレアとなる有害な光束を有効に阻止することができる。
【0043】
<4.第4の実施の形態>
[撮像装置の光学系の構成]
図10は、本技術の第4の実施の形態における撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の一例である。この第4の実施の形態における光学系は、第1の実施の形態と同様に、正の屈折力を有する第1レンズ110と、負の屈折力を有する第2レンズ120と、正の屈折力を有する第3レンズ130と、負の屈折力を有する第4レンズ140とを備えている。また、遮光部品151乃至153、レンズホルダ160、フィルタ180および撮像素子190を備える点も第1の実施の形態と同様である。
【0044】
この第4の実施の形態では、上述の第3の実施の形態と同様に、第2レンズ120の像側フランジ面129の周縁部に窪み121を設けるとともに、内端部に窪み122を設ける。上述の第3の実施の形態では、窪み121と窪み122との間を結ぶ領域は光軸90に対して略垂直な平面であることを想定したが、この第4の実施の形態では窪み121と窪み122との間を曲面123により接続している。これにより、この第4の実施の形態では、窪み121および122における傾斜の範囲を広く確保することができる。
【0045】
<5.第5の実施の形態>
[撮像装置の光学系の構成]
図11は、本技術の第5の実施の形態における撮像装置の光学系と入射光との関係を示す断面図の一例である。この第5の実施の形態における光学系は、第1の実施の形態と同様に、正の屈折力を有する第1レンズ110と、負の屈折力を有する第2レンズ120と、正の屈折力を有する第3レンズ130と、負の屈折力を有する第4レンズ140とを備えている。また、遮光部品151乃至153、レンズホルダ160、フィルタ180および撮像素子190を備える点も第1の実施の形態と同様である。
【0046】
上述の第1乃至第4の実施の形態では第2レンズ120の像側フランジ面129の周縁部に窪みを設けていたが、この第5の実施の形態では第3レンズ130の像側フランジ面139の内端部に窪み132を設けている。この窪み132により、第3レンズ130の像側フランジ面139の内端部に入射した光束を反射させることなく遮光部品153の方へ屈折させている。その結果、ゴーストやフレアを引き起こすおそれのある有害な光束が撮像素子190へ入射することを防ぐことができる。
【0047】
第3レンズ130の像側フランジ面139の内端部に窪み132は、図7により説明した第2の実施の形態と同様に、像側フランジ面139の内端部において、光軸90を中心とする円の全周に亘って設けることができる。ただし、他の実施の形態の場合と同様に、光軸90を中心とする円上の一部のみに窪み132を設けるようにしてもよい。例えば、有害な光束が上方から下方へ入射することを考慮して、光軸90を中心とする円上の下半分のみに窪み132を設けてもよい。
【0048】
また、窪み132の形状についても、図4において説明した第1の実施の形態における窪み121と同様の形状を採用することができる。
【0049】
このように、本技術の第5の実施の形態では、第3レンズ130において像側フランジ面139の内端部に窪み132を設けることにより、ゴーストやフレアを引き起こすおそれのある有害な光束が撮像素子190へ入射することを防ぐことができる。
【0050】
<6.変形例>
上述の実施の形態では、第2または第3レンズのフランジ部の像側の側面に窪みを設けることにより有害な光束が撮像素子190へ入射することを防ぐ例について説明したが、そのような機能を果たす窪みは像側の側面ではなく物体側の側面に設けてもよい。また、第1または第4レンズにおいてそのような窪みを設けるようにしてもよい。
【0051】
また、第1乃至3および5の実施の形態では、レンズのフランジ面においては窪み121等以外は平面であることを想定したが、レンズの固定に差し支えない範囲内で起伏を設けるようにしてもよい。例えば、図12に示すように、フランジ面において凹部124を設けてもよい。同図の場合、凹部124を除くフランジ面の領域においてレンズを支えることになる。また、例えば、図13に示すように凸部125をさらに設けてもよい。同図の場合、主に凸部125においてレンズを支えることになる。
【0052】
また、上述の実施の形態では、正の屈折力を有する第1レンズ、負の屈折力を有する第2レンズ、正の屈折力を有する第3レンズおよび負の屈折力を有する第4レンズからなる4枚構成を例示したが、本技術はこれに限定されるものではない。例えば、正の屈折力を有する第1レンズ、負の屈折力を有する第2レンズ、正の屈折力を有する第3レンズ、正の屈折力を有する第4レンズおよび負の屈折力を有する第5レンズからなる5枚構成を採用しても同様に適用可能である。
【0053】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0054】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)光軸を中心として有効光束を通過させる有効径エリアと、
前記有効径エリアの周囲の側面において前記光軸の方向に対して非垂直となる傾斜を有するフランジ部と
を具備する光学素子。
(2)前記傾斜は、前記フランジ部の像側の側面に設けられる前記(1)に記載の光学素子。
(3)前記傾斜は、前記フランジ部の側面における内端部または周縁部に設けられる前記(1)または(2)に記載の光学素子。
(4)前記傾斜は、前記フランジ部の側面における内端部および周縁部の両者に設けられる前記(1)から(3)のいずれかに記載の光学素子。
(5)前記傾斜は、前記フランジ部の側面における内端部および周縁部の両者にそれぞれ設けられた窪みであり、
前記内端部および周縁部における前記窪みを結ぶ領域は前記光軸に対して略垂直な平面である前記(1)から(4)のいずれかに記載の光学素子。
(6)前記傾斜は、前記フランジ部の側面において前記光軸を中心とする円の全周またはその一部に設けられる前記(1)から(5)のいずれかに記載の光学素子。
(7)物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、負の屈折力を有する第4レンズとを有し、
前記第2レンズまたは第3レンズは、光軸を中心として有効光束を通過させる有効径エリアと、前記有効径エリアの周囲の側面において前記光軸の方向に対して非垂直となる傾斜を有するフランジ部とを備える
撮像レンズ群。
(8)前記撮像レンズ群は、実質的にレンズパワーを有さないレンズをさらに有する前記(7)に記載の撮像装置。
(9)物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズと、負の屈折力を有する第5レンズとを有し、
前記第2レンズまたは第3レンズは、光軸を中心として有効光束を通過させる有効径エリアと、前記有効径エリアの周囲の側面において前記光軸の方向に対して非垂直となる傾斜を有するフランジ部とを備える
撮像レンズ群。
(10)前記撮像レンズ群は、実質的にレンズパワーを有さないレンズをさらに有する前記(9)に記載の撮像装置。
(11)物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、負の屈折力を有する第4レンズとを有する撮像レンズ群と、
前記撮像レンズにより形成された光学像を電気的な信号に変換する撮像素子とを具備し、
前記第2レンズまたは第3レンズは、光軸を中心として有効光束を通過させる有効径エリアと、前記有効径エリアの周囲の側面において前記光軸の方向に対して非垂直となる傾斜を有するフランジ部とを備える
撮像装置。
(12)前記撮像レンズ群は、実質的にレンズパワーを有さないレンズをさらに有する前記(11)に記載の撮像装置。
【符号の説明】
【0055】
10 光源
20 入射光
70 有効径
90 光軸
110〜140 レンズ
121、122、132 窪み
123 曲面
124 凹部
125 凸部
127 有効径エリア
129、139 像側フランジ面
151〜153 遮光部品
160 レンズホルダ
180 フィルタ
190 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸を中心として有効光束を通過させる有効径エリアと、
前記有効径エリアの周囲の側面において前記光軸の方向に対して非垂直となる傾斜を有するフランジ部と
を具備する光学素子。
【請求項2】
前記傾斜は、前記フランジ部の像側の側面に設けられる請求項1記載の光学素子。
【請求項3】
前記傾斜は、前記フランジ部の側面における内端部または周縁部に設けられる請求項2記載の光学素子。
【請求項4】
前記傾斜は、前記フランジ部の側面における内端部および周縁部の両者に設けられる請求項3記載の光学素子。
【請求項5】
前記傾斜は、前記フランジ部の側面における内端部および周縁部の両者にそれぞれ設けられた窪みであり、
前記内端部および周縁部における前記窪みを結ぶ領域は前記光軸に対して略垂直な平面である請求項4記載の光学素子。
【請求項6】
前記傾斜は、前記フランジ部の側面において前記光軸を中心とする円の全周またはその一部に設けられる請求項2記載の光学素子。
【請求項7】
物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、負の屈折力を有する第4レンズとを有し、
前記第2レンズまたは第3レンズは、光軸を中心として有効光束を通過させる有効径エリアと、前記有効径エリアの周囲の側面において前記光軸の方向に対して非垂直となる傾斜を有するフランジ部とを備える
撮像レンズ群。
【請求項8】
物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズと、負の屈折力を有する第5レンズとを有し、
前記第2レンズまたは第3レンズは、光軸を中心として有効光束を通過させる有効径エリアと、前記有効径エリアの周囲の側面において前記光軸の方向に対して非垂直となる傾斜を有するフランジ部とを備える
撮像レンズ群。
【請求項9】
物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、負の屈折力を有する第4レンズとを有する撮像レンズ群と、
前記撮像レンズにより形成された光学像を電気的な信号に変換する撮像素子とを具備し、
前記第2レンズまたは第3レンズは、光軸を中心として有効光束を通過させる有効径エリアと、前記有効径エリアの周囲の側面において前記光軸の方向に対して非垂直となる傾斜を有するフランジ部とを備える
撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−68857(P2013−68857A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208346(P2011−208346)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】