説明

光学素子およびその作製方法

【課題】 周期性構造の元型となる微粒子をエッチングなどで除去する際にも、周期性構造物そのものが基板から剥がれ難い光学素子およびその作製方法を提供すること。
【解決手段】 コロイド溶液の毛管力、微粒子の自己組織化を利用して微粒子からなる周期性構造物(微粒子膜)を作製した後、微粒子間を光硬化型樹脂(またはチタニアナノ粒子)Aにより充填し、その後のシリカ除去により、空隙3の周期構造を得る。本発明では、シリコン基板1の溝11による定着部分4が存在するため、光硬化型樹脂Aはシリコン基板1から外れずに固定される。アンカーボルトの役割を果たすためのシリコン基板1の溝の加工形状は、入り口面積より大きい面積の箇所を内部に有する形状が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を周期的に配列させた微粒子周期構造体を利用した光学素子およびその製造方法に係り、特に、反転構造領域と非反転構造領域を有する微粒子周期構造体を利用した導波路、光共振器、レーザ、光スイッチなどのフォトニック結晶光学デバイスを用いた光学素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトニックバンドギャップにより結晶中に光を閉じ込めることが可能なフォトニック結晶は、光学デバイスに利用できる材料として期待され、研究開発が盛んになされている。
【0003】
フォトニック結晶形成技術として、光学媒質(微粒子)の自己組織化を利用した方法がある。自己組織化を利用して配列された微粒子膜(周期構造体、フォトニック結晶)は、高品質、大表面積を可能にするものとして特に期待されている。
【0004】
永山らは、特開平7−116502号公報(特許文献1)およびそれに対応する特許第2828386号公報(特許文献2)において、コロイド溶液を用いた「微粒子薄膜の製造方法」を報告している。
【0005】
これは、液体の毛管力を利用し、溶媒の蒸発速度、微粒子の体積分率を制御することにより集積される結晶の高品質化を図ったものである。2枚の実質的に平行な面の間の狭い間隙にコロイド結晶を成長させる方法もピュージ、ピーター・ニカラスら(特許第2693844号公報「懸濁コロイド球」(特許文献3))をはじめとして報告されている。
【0006】
その際に、2枚の基板のうちの下部基板に型を施し、この型を利用して、微粒子で形成される形状を制御するようにした技術が、Younan Xiaらによって提案されている(B. T. Mayers, et al., Advanded Materials, 12, No.21, pp.1629-1632, 2000.(非特許文献1)、S. H. Park, et al., Advanded Materials, 11, No.6, pp. 462-466, 1999.(非特許文献2)参照)。
【0007】
使用する微粒子としては単分散の良いシリカやポリスチレンが用いられるのが一般的である。しかしながら、これらの物質ではデバイス材料としては屈折率が十分に高くなく所望の特性のデバイスを得ることができない。
【0008】
屈折率のより高い微粒子膜を作製するために、上記の方法により作製された微粒子膜を利用してさらに改善した方法が報告されている。その方法とは、微粒子膜の微粒子間の空隙に光硬化性樹脂などのモノマーを流し込み、固体させた後、微粒子をエッチングにより取り除いて、ポリマーによる周期構造体(反転構造、逆オパール構造、インバース構造、あるいはテンプレートと呼ばれる)を得るインバースオパール法と呼ばれる方法である。
【0009】
インバースオパール法については、V. L. Colvinらによって精力的に報告されている(P. Jiang, et al., J. Am. Chem. Soc., 121, pp. 11630-11637, 1999.(非特許文献3)、K. M. Kulinowski, et al., Advanded Materials, 12, No.11, pp.833-838, 2000.(非特許文献4)、特開2003−2687号公報(特許文献4)参照)。
【0010】
さらに、改善された方法も提案されている。それは、インバースオパール法において、最初に微粒子が存在していた空隙に屈折率のより高い材質を充填し、インバースオパール法によって得られた箇所(逆オパール構造)を取り除くようにしたものである。その結果、自己組織化によって最初に得られた周期構造とほぼ同等な周期構造体を材質が変わった形で得ることができる。
【0011】
このような中空微粒子構造体に関するものとしては、V. L. Colvinグループ、デイビット・ノリスらによるP. Jiang, et al., Science, Vol.291, pp. 453-457, 2001.(非特許文献5)や特許第3183344号公報(特許文献5)がある。
【0012】
微粒子が存在していた空隙に液晶分子を充填することも可能である。このような周期構造体においても最初に作製される微粒子膜が鋳型になるので、微粒子を欠陥なく配列させる技術を高めることは重要である。
【0013】
光学素子として使用する場合には、例えば、導波路では周期構造体の中に例えば微粒子が存在しない空間が連続的に存在するなど、光路となる箇所が必要となる。
【0014】
光路となる箇所の作製方法としては、Lee, et al.により提案されている(Adv. Mater.14, 271-274, 2003;非特許文献6参照)。
【0015】
この文献で提案されている方法は、シリカ球による周期構造体の間隙にモノマーを流し込み、レーザを用いて特定の箇所のモノマーを選択的に硬化させるとともに、硬化していないモノマーを取り除いてシリコンを導入し、シリカ球とポリマーを選択的に取り除き、ポリマーが存在していた箇所を導波路とする方法である。
【0016】
また、フォトニックバンドギャップを確実に開き、特定波長の光の閉じ込めを行う必要がある。そのためには、高屈折率箇所の体積分率が低い方がフォトニックバンドギャップは大きくなると考えられている。
【0017】
そのため、インバース構造以上に高屈折率箇所の体積分率を低くする構造を形成する必要がある。一つには、中空粒子が規則配列したハロー構造である(例えば、上述したP. Jiang, et al., Science, Vol.291, pp. 453-457, 2001.(非特許文献5)参照)。
【0018】
微粒子による周期性構造物を作製する際には、一度数層の膜を作製した後に、その基板を再度コロイド液に浸すことにより、作製された周期性構造物上にさらに新たな周期性構造物を作製することが可能である。この際にコロイド液の微粒子の材質や粒径を変えることによって最初に作製された周期性構造物とその上に作製された周期性構造物のフォトニックバンドギャップ波長を変えることができる。
【0019】
フォトニック結晶や、逆オパール構造の空隙に、導電性高分子、フォトクロミック色素等を導入し、フォトニックバンドギャップ波長を変化させる試みも行われている。
【0020】
また、微細加工を用いたフォトニック結晶では、線欠陥導波路を利用した欠陥エンジニアリングにより、大きさの異なる欠陥により、特定の波長の光を分波する報告がなされている(S. Noda, et al., Nature 407, pp 608, 2000(非特許文献7)参照)。微細加工による作製では、装置に加工精度が求められるほか、作製に多大なエネルギーを要するため、代替となる簡易な作製方法を提案することが必要となる。なお、フォトニック結晶に関しては、K. Yoshino, et al., Jpn. J. Appl. Phys., vol.38, ppL786-788, 1999(非特許文献8)、Y. Shimoda, et al., Appl. Phys. Lett., vol.79, pp.3627-3629, 2001(非特許文献9)も参照されたい。
【0021】
【特許文献1】特開平7−116502号公報
【特許文献2】特許第2828386号公報
【特許文献3】特許第2693844号公報
【特許文献4】特開2003−2687号公報
【特許文献5】特許第3183344号公報
【非特許文献1】B. T. Mayers, et al., Advanded Materials, 12, No.21, pp.1629-1632, 2000.
【非特許文献2】S. H. Park, et al., Advanded Materials, 11, No.6, pp. 462-466, 1999.
【非特許文献3】P. Jiang, et al., J. Am. Chem. Soc., 121, pp. 11630-11637, 1999.
【非特許文献4】K. M. Kulinowski, et al., Advanded Materials, 12, No.11, pp.833-838, 2000.
【非特許文献5】P. Jiang, et al., Science, Vol.291, pp. 453-457, 2001.
【非特許文献6】Lee, et al.Adv. Mater.14, 271-274, 2003
【非特許文献7】S. Noda, et al., Nature 407, pp 608, 2000.
【非特許文献8】K. Yoshino, et al., Jpn. J. Appl. Phys., vol.38, ppL786-788, 1999.
【非特許文献9】Y. Shimoda, et al., Appl. Phys. Lett., vol.79, pp.3627-3629, 2001.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上述したように、インバースオパール法により作製された周期性構造物は光学素子として有望視され盛んに研究されているが、周期性構造の元型となる微粒子をエッチングなどで除去する際に周期性構造物そのものが基板から剥がれ易いという問題がある。
【0023】
本発明は、上記事情に鑑み、周期性構造の元型となる微粒子をエッチングなどで除去する際にも、周期性構造物そのものが基板から剥がれ難い光学素子およびその作製方法を提供することである。以下、請求項毎の目的を記す。
【0024】
a)請求項1に係る発明の目的
請求項1に係る発明の目的は、反転構造(球形の空隙からなる周期構造)を有する材料を基板に剥がれ難く固定することである。
【0025】
b)請求項2に係る発明の目的
請求項2に係る発明の目的は、請求項1に係る発明と同じであるが、より強固に反転構造を有する材料を基板に固定することである。
【0026】
c)請求項3に係る発明の目的
請求項3に係る発明の目的は、反転構造の周期性構造の他に存在する、非周期構造に光を導波させることである。
【0027】
d)請求項4に係る発明の目的
請求項4に係る発明の目的は、反転構造の空隙が周期的であることを利用し、その中に異なる材質の材料を導入して機能性を増加することである。
【0028】
e)請求項5に係る発明の目的
請求項5に係る発明の目的は、シリコン基板を用いることにより異方性エッチングもしくは等方性エッチングによりシリコン基板表面に溝を形成することである。
【0029】
f)請求項6に係る発明の目的
請求項6に係る発明の目的は、光もしくは熱により重合するモノマーを微粒子間および基板の溝部に導入しポリマーとすることで簡易に反転構造を得ることである。
【0030】
g)請求項7に係る発明の目的
請求項7に係る発明の目的は、ナノスケールの粒子を用いて簡易に反転構造を得ることである。
【0031】
h)請求項8に係る発明の目的
請求項8に係る発明の目的は、基板に固定された周期性構造物をもつ光学素子の簡易な作製方法を提供することである。
【0032】
i)請求項9に係る発明の目的
請求項9に係る発明の目的は、一部非周期構造箇所をもつ周期性構造物をもつ光学素子の簡易な作製方法を提供することである。
【0033】
j)請求項10に係る発明の目的
請求項10に係る発明の目的は、請求項8に係る目的と同じである。
【0034】
k)請求項11に係る発明の目的
請求項11に係る発明の目的は、反転構造内に異なる材料が充填された周期性構造物を得ることである。
【0035】
l)請求項12に係る発明の目的
請求項12に係る発明の目的は、基板にフォトニック結晶を定着させるための箇所を簡易に形成することである。
【0036】
m)請求項13に係る発明の目的
請求項13に係る発明の目的は、単分散性の良い微粒子を用いることにより周期性構造物の欠陥数を低減することである。
【0037】
n)請求項14に係る発明の目的
請求項14に係る発明の目的は、ナノスケールの粒子を含む溶液の乾燥を利用して簡易に反転構造を得ることである。
【0038】
o)請求項15に係る発明の目的
請求項15に係る発明の目的は、微粒子としてポリマー微粒子を用いた場合には熱によって除去することにより、反転構造を作製することである。
【0039】
p)請求項16に係る発明の目的
請求項16に係る発明の目的は、液相における化学反応を利用して微粒子を除去し、簡易に反転構造を作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本願各請求項に記載の発明は、上記目的を達成するために、次のような手段を採用した。
【0041】
a)請求項1記載の発明は、周期性を有する反転構造の空隙によりフォトニックバンドギャップを形成するフォトニック結晶を用いた光学素子であって、前記フォトニック結晶は反転構造の空隙を有する反転構造領域と反転構造の空隙を有しない非反転構造領域を有し、前記非反転構造領域の一部が、基板に作製された溝を埋める構造を有することを特徴としている。
【0042】
b)請求項2記載の発明は、さらに、前記基板に作製された溝の形状は、入り口面積より大きい面積の箇所を内部に有する形状であることを特徴としている。
【0043】
c)請求項3記載の発明は、さらに、前記反転構造の空隙を形成する材料が前記基板に作製された溝に埋められるとともに、前記周期構造の中の一部に非周期箇所を形成していることを特徴としている。
【0044】
d)請求項4記載の発明は、さらに、前記反転構造の空隙に、該反転構造の空隙を形成している材料とは異なる材質の材料が充填されていることを特徴としている。
【0045】
e)請求項5記載の発明は、前記基板はシリコンであることを特徴としている。
【0046】
f)請求項6記載の発明は、さらに、前記フォトニック結晶の反転構造の空隙を形成する材料は、ポリマーからなることを特徴としている。
【0047】
g)請求項7記載の発明は、さらに、前記フォトニック結晶の反転構造の空隙を形成する材料は、ナノスケールの粒子を固定化したものからなることを特徴としている。
【0048】
h)請求項8記載の発明は、(a)基板の表面の一部に溝を作製する工程、(b)コロイド溶液を用いて、前記基板の表面に微粒子を周期的に配列させることにより周期性構造物を作製する工程、(c)前記工程(b)に用いた微粒子とは異なる材質からなる材料を微粒子間および前記工程(a)により前記基板上に作製された溝に導入する工程、(d)前記工程(c)により導入された材料を固化もしくは固定化する工程、(e)前記微粒子を除去する工程を有することを特徴としている。
【0049】
i)請求項9記載の発明は、(a)基板の表面の一部にフォトニック結晶を定着させるための溝を作製する工程、(b)コロイド溶液を用いて、前記基板の表面に微粒子を周期的に配列させることにより周期性構造物を作製する工程、(c)前記工程(b)により作製された周期性構造物を形成する前記微粒子の一部を除去する工程、(d)前記工程(b)に用いた微粒子とは異なる材質からなる材料を微粒子間および前記工程(a)により基板に作製された溝に導入する工程、(e)前記工程(d)により導入された材料を固化もしくは固定化する工程、(f)前記微粒子を除去する工程を有することを特徴としている。
【0050】
j)請求項10記載の発明は、(a)基板の表面の一部にフォトニック結晶を定着させるための溝を作製する工程、(b)前記工程(a)により作製した基板と凹凸加工が施された基板を向かい合わせて固定し、コロイド溶液を用いて、前記2枚の基板間に微粒子を周期的に配列させることにより周期性構造物を作製する工程、(c)前記工程(b)に用いた微粒子とは異なる材質からなる材料を前記微粒子間および前記工程(a)により前記基板に作製された溝に導入する工程、(d)前記工程(c)により導入された材料を固化もしくは固定化する工程、(e)前記微粒子を除去する工程を有することを特徴としている。
【0051】
k)請求項11記載の発明は、さらに、前記光学素子作製方法の後に、反転構造の空隙に、該反転構造の空隙を形成する材料とは異なる材質の材料を充填する工程を有することを特徴としている。
【0052】
l)請求項12記載の発明は、さらに、前記工程(a)における基板にフォトニック結晶を定着させるための溝を作製する工程は、シリコンの異方性エッチングもしくは等方性エッチングを利用することを特徴としている。
【0053】
m)請求項13記載の発明は、さらに、前記工程(b)におけるコロイド液はシリカ微粒子、ポリスチレン微粒子もしくはポリメタクリル酸メチル微粒子のいずれかを含むことを特徴としている。
【0054】
n)請求項14記載の発明は、さらに、前記微粒子間へ導入する材料として、ナノスケールのシリカ粒子もしくはチタニア粒子のいずれかを含む溶液を用い、それらの乾燥および加熱により、前記ナノスケールの粒子を固定化することを特徴としている。
【0055】
o)請求項15記載の発明は、さらに、前記微粒子を除去する工程は、熱による微粒子の焼失であることを特徴としている。
【0056】
p)請求項16記載の発明は、さらに、前記微粒子を除去する工程は、液相における化学反応による微粒子の除去であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、反転構造領域と非反転構造領域を有する周期性構造物を基板上に剥がれ難いように定着した形で得ることができるという効果を有する。以下、請求項毎の効果を記す。
【0058】
a)請求項1に係る発明の効果
請求項1に係る光学素子によれば、空隙からなる反転周期性構造物を基板上に剥がれ難い状態で定着した形で得ることができるという効果を奏する。
【0059】
b)請求項2に係る発明の効果
請求項2に係る光学素子によれば、空隙からなる反転周期性構造物をさらに強固に基板上に定着した形で得ることができるという効果を奏する。
【0060】
c)請求項3に係る発明の効果
請求項3に係る光学素子によれば、非周期構造箇所も持つ周期性構造物を基板上に定着した形で得ることができるという効果を奏する。
【0061】
d)請求項4に係る発明の効果
請求項4に係る光学素子によれば、通常周期構造を得にくい材料に対して、空隙の周期性構造物に充填することにより、充填した材料の周期性構造物を得ることができるという効果を奏する。
【0062】
e)請求項5に係る発明の効果
請求項5に係る光学素子によれば、平坦性の良い基板を利用できるという効果を奏する。
【0063】
f)請求項6に係る発明の効果
請求項6に係る光学素子によれば、樹脂の重合を利用することにより、空隙による反転周期構造を簡易に作製できるという効果を奏する。
【0064】
g)請求項7に係る発明の効果
請求項7に係る光学素子によれば、ナノ粒子溶液の乾燥を利用することにより、空隙による反転周期構造を簡易に作製できるという効果を奏する。
【0065】
h)請求項8に係る発明の効果
請求項8に係る光学素子の作製方法によれば、簡易なフォトニック結晶の作製方法を提供することができるという効果を奏する。
【0066】
i)請求項9に係る発明の効果
請求項9に係る光学素子の作製方法によれば、周期性構造物を簡易に作製することができるという効果を奏する。
【0067】
j)請求項10に係る発明の効果
請求項10に係る光学素子の作製方法によれば、周期性構造物を簡易に作製することができるという効果を奏する。
【0068】
k)請求項11に係る発明の効果
請求項11に係る光学素子の作製方法によれば、周期構造を得にくい材料の周期性構造物を簡易に作製することができるという効果を奏する。
【0069】
l)請求項12に係る発明の効果
請求項12に係る光学素子の作製方法によれば、基板に形成するアンカーボルトの役割を果たす箇所を簡単に精度良く作製することができるという効果を奏する。
【0070】
m)請求項13に係る発明の効果
請求項13に係る光学素子の作製方法によれば、単分散性の良い粒子を用いることにより周期構造の規則性を良くすることができるという効果を奏する。
【0071】
n)請求項14に係る発明の効果
請求項14に係る光学素子の作製方法によれば、ナノスケールの粒子を含む溶液を用いることにより、簡易に微粒子間に充填できるという効果を奏する。
【0072】
o)請求項15に係る発明の効果
請求項15に係る光学素子の作製方法によれば、簡単かつ確実に微粒子を除去することができるという効果を奏する。
【0073】
p)請求項16に係る発明の効果
請求項16に係る光学素子の作製方法によれば、簡単かつ確実に微粒子を除去することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて詳細に説明する。なお、各実施例の説明中、類似の構成を有する場合は共通の図面を用いて説明する。但し、基板材料、粒子材料、粒子径などは各実施例で異なる。
【0075】
まず最初に、本願の各実施例と請求項との対応関係を説明しておく。実施例1では、請求項1、2、5、6、8、12、13、16に係る発明を説明する。実施例2では、請求項1、2、5、7、8、12〜15に係る発明を説明する。実施例3では、請求項1、2、5、7、8、11〜15に係る発明を説明する。実施例4では、請求項1〜3、5、7、9、12〜15に係る発明を説明する。実施例5では、請求項1〜3、5、6、10、12、13、16に係る発明を説明する。
【0076】
<実施例1>
図1は、実施例1によって作製された光学素子の模式図である。図では、空隙周期構造の周期間隔や層数、基板に加工された箇所の形状や大きさなどは実際に作製した構造物とは異なるが、簡単に模式的に示している。
【0077】
図1に示す光学素子は、シリコン基板1と、該シリコン基板1上に設けられた空隙3の周期構造をもつ光硬化型樹脂Aを有する周期性構造物2からなる。空隙3の周期構造は、周期間隔 300nm、層数約20層である。Bは反転構造領域、Cは非反転構造領域を示している。
【0078】
シリコン基板1の表面の非反転構造領域Cの数カ所には溝11が形成されており、その箇所に入り込んだ光硬化型樹脂A自体が自らをシリコン基板1に固定するいわゆるアンカーボルトの役割を果たす定着部分4を形成している。
【0079】
以下、図1に示す光学素子の作製方法を説明する。
図2は、図1に示す光学素子の作製方法を説明するための図である。
同図に示すように、まず、異方性エッチングおよび等方性エッチングを用いて溝51(図1の溝11に対応)が形成された数cm角のシリコン基板5(図1のシリコン基板1に対応)を用意した。シリコン基板5の表面には、酸化膜が形成されている(図示せず)。
【0080】
また、直径300nm、粒度分布の変動係数(C.V.値;Coefficient of Variation)が3%以内のシリカ微粒子分散水溶液(0.5 wt%、100 ml)を用意した。
【0081】
シリコン基板5を、水面にほぼ垂直になるようにシリカ微粒子分散水溶液(コロイド溶液)6に浸し、シリコン基板5の上部を固定した。1週間程度そのまま放置し、コロイド溶液6内の溶媒を乾燥させた。その後、シリコン基板5を取り出し、十分乾燥させた。この際に、シリコン基板1の表面にはシリカ微粒子による周期性構造物7が形成された。シリコン基板1上の微粒子膜の硬度を高めるために600℃にて1時間の加熱を行った。
【0082】
その後、作製した周期性構造物の微粒子間、およびシリコン基板1の加工部分(溝51)に光硬化型樹脂Aを流しこみ、紫外線を照射し、光硬化型樹脂を硬化させた。その後、フッ酸中にシリカが除去されるのに充分な時間浸し、洗浄後、乾燥させた。シリカ微粒子のほか、シリコン基板表面の酸化膜もエッチング除去された。
【0083】
図1に示す光学素子は、コロイド溶液6の毛管力、微粒子の自己組織化を利用して微粒子からなる周期性構造物(微粒子膜)を作製した後、微粒子間を光硬化型樹脂Aにより充填し、その後のシリカ除去により、空隙3の周期構造を得たものである。シリコン基板1の表面には非常に薄い酸化膜(図示せず)が形成されているため、フッ酸によるエッチングは進行する。
【0084】
シリコン基板1の溝加工による定着部分4が無い場合には光硬化型樹脂は基板から外れ易い。しかしながら、本実施例では、定着部分4が存在するため、光硬化型樹脂Aはシリコン基板1から外れずに固定される。アンカーボルトの役割を果たすためのシリコン基板1の溝の加工形状は、図1に示すように、シリコン基板1の入り口面積より大きい面積の箇所を内部に有する形状が好ましい。
【0085】
コロイド溶液6に浸して微粒子による周期性構造物を作製する際に、設計により加工箇所にコロイドが入ってしまう場合もあるが、そのような場合にはあらかじめ局所的に疎水処理を施すことが必要である。
【0086】
微細加工による作製では困難な3次元周期構造であり、フォトニック結晶としての効果は高い。微粒子が自己組織的に配列する現象を利用したボトムアップ手法では、エッチング装置などを用いて材料を加工するトップダウン手法と比較して、材料の無駄がなく、プロセスとしても容易であるため、省資源・省エネルギーであり、環境面でも優れている。従来では導波路などのフォトニック結晶は微細加工を施す方法でしか作製できず、環境面で問題があった。しかしながら、本実施例により、環境面に優れたフォトニック結晶を作製できるようになった。
【0087】
<実施例2>
図1は、実施例2により作製した光学素子の模式図を示す図である。図では、空隙周期構造の周期間隔や層数、基板に加工された箇所の形状や大きさなどは実際に作製した構造物とは異なるが、簡単に模式的に示している。
【0088】
図1に示す光学素子は、シリコン基板1と、該シリコン基板1上に設けられた空隙3の周期構造をもつチタニアナノ粒子の固形物Aを有する周期性構造物2からなる。空隙3の周期構造は、周期間隔 300nm、層数約20層である。Bは反転構造領域、Cは非反転構造領域を示している。
【0089】
シリコン基板1の表面の非反転構造領域Cの数カ所には溝11が形成されており、その箇所に入り込んだチタニアナノ粒子の固形物A自体が自らをシリコン基板1に固定するいわゆるアンカーボルトの役割を果たす定着部分4を形成している。
【0090】
以下、図1に示す光学素子の作製方法を説明する。
図2は、図1に示す光学素子の作製方法を説明するための図である。
同図に示すように、まず、異方性エッチングおよび等方性エッチングを用いて溝51(図1の溝11に対応)が形成された数cm角のシリコン基板5(図1のシリコン基板1に対応)を用意した。
【0091】
また、直径300 nm、粒度分布の変動係数(C.V.値;Coefficient of Variation)が3%以内のポリスチレン微粒子分散水溶液(0.5 wt%、100 ml)を用意した。シリコン基板5を、図2に示すように水面にほぼ垂直になるようにポリスチレン微粒子分散水溶液(コロイド溶液)6に浸し、シリコン基板5の上部を固定した。
【0092】
1週間程度そのまま放置し、ポリスチレン微粒子分散水溶液(コロイド溶液)6内の溶媒を乾燥させた。その後、シリコン基板5を取り出し、十分乾燥させた。この際に、シリコン基板5の表面にはポリスチレン微粒子による周期性構造物2が形成された。シリコン基板5上の微粒子膜の硬度を高めるために80℃にて1時間の加熱を行った。
【0093】
その後、作製した周期性構造物の微粒子間、およびシリコン基板5の加工部分にチタニアナノ粒子を含む水溶液を流しこみ、水分を乾燥させて硬化させた。その後、500℃ 5時間の加熱により、ポリスチレンを焼失させた。
【0094】
図1に示す光学素子は、コロイド溶液の毛管力、微粒子の自己組織化を利用して微粒子からなる周期性構造物(微粒子膜)を作製した後、微粒子間をナノ粒子水溶液により充填し、その後の加熱によるポリスチレン除去により、空隙3の周期構造を得たものである。ナノ粒子からなる固形物がシリコン基板1上に定着部分4によって強固に固定されている。材料としてチタニアナノ粒子を用いることにより、屈折率の高い材料による空隙周期構造となっている。
【0095】
<実施例3>
図3は、実施例3によって作製された光学素子の模式図である。図では、空隙周期構造の周期間隔や層数、基板に加工されたアンカー箇所の形状や大きさなどは実際に作製した構造物とは異なるが、簡単に模式的に示している。
【0096】
図3に示す光学素子は、シリコン基板1と、該シリコン基板1上に設けられた球形8の周期構造をもつシリカナノ粒子の固形物Aを有する周期性構造物2からなる。Bは反転構造領域、Cは非反転構造領域を示している。
【0097】
球形8の周期構造は、周期間隔 300nm、層数約20層である。球形8の内部には液晶分子が入っている。シリコン基板1の表面の非反転構造領域Cの数カ所には溝11が形成されており、その箇所に入り込んだシリカナノ粒子の固形物A自体が自らを基板に固定するアンカーとなっている。
【0098】
以下、図3に示す光学素子の作製方法を説明する。
図2は、図3に示す光学素子の作製方法を説明するための図である。
同図に示すように、まず、異方性エッチングおよび等方性エッチングを用いて溝51(図3の溝11に対応)が形成された数cm角のシリコン基板5(図1のシリコン基板1に対応)を用意した。
【0099】
また、直径300 nm、粒度分布の変動係数(C.V.値;Coefficient of Variation)が3%以内のポリスチレン微粒子分散水溶液(0.5 wt%、100 ml)を用意した。シリコン基板5を、図2に示すように水面にほぼ垂直になるようにポリスチレン微粒子分散水溶液(コロイド溶液)6に浸し、シリコン基板5の上部を固定した。
【0100】
1週間程度そのまま放置し、ポリスチレン微粒子分散水溶液(コロイド溶液)6内の溶媒を乾燥させた。その後、シリコン基板5を取り出し、十分乾燥させた。この際に、シリコン基板5の表面にはポリスチレン微粒子による周期性構造物2が形成された。シリコン基板5上の微粒子膜の硬度を高めるために80℃にて1時間の加熱を行った。
【0101】
その後、作製した周期性構造物2の微粒子間、およびシリコン基板5のアンカー部分にシリカナノ粒子を含む水溶液を流しこみ、水分を乾燥させて硬化させた。その後、500℃ 5時間の加熱により、ポリスチレンを焼失させた。その後、空隙箇所に液晶を充填した。
【0102】
図3に示す光学素子は、コロイド溶液6の毛管力、微粒子の自己組織化を利用して微粒子からなる周期性構造物(微粒子膜)を作製した後、微粒子間をナノ粒子水溶液により充填し、その後の加熱によるポリスチレン除去により、空隙の周期構造を得て、その空隙部に液晶を充填したものである。ナノ粒子からなる固形物がシリコン基板1上に溝11によって強固に固定されている。空隙部に液晶が導入されることにより、液晶浸透フォトニック結晶としての役割を果たす。
【0103】
<実施例4>
図4は、実施例4により作製した光学素子の模式図を示す図である。図では、空隙周期構造の周期間隔や層数、基板に加工された箇所の形状や大きさなどは実際に作製した構造物とは異なるが、簡単に模式的に示している。
【0104】
図4に示す光学素子は、シリコン基板1と、該シリコン基板1上に設けられた空隙3の周期構造をもつチタニアナノ粒子の固形物Aを有する周期性構造物2からなる。Bは反転構造領域、Cは非反転構造領域を示している。
【0105】
空隙3の周期構造は、周期間隔 300nm、層数約20層である。シリコン基板1の表面の非反転構造領域Cの数カ所には溝11が形成されており、その箇所に入り込んだチタニアナノ粒子の固形物A自体が自らをシリコン基板1に固定するいわゆるアンカーボルトの役割を果たしている。
【0106】
空隙3の周期構造を有するチタニアナノ粒子固形物Aによる周期性構造物2の上側には一部非周期構造となっている箇所(非周期構造部分9)があり、特定の波長の光を導波する箇所となっている。この非周期箇所はチタニアナノ粒子の充填量により、空隙になる場合とチタニアナノ粒子固形物Aで充填される場合の2通りがある。図4は、チタニアナノ粒子固形物Aで充填された場合を示している。
【0107】
以下、図4に示す光学素子の作製方法を説明する。
図2は、図4に示す光学素子の作製方法を説明するための図である。
同図に示すように、まず、異方性エッチングおよび等方性エッチングを用いて溝51が形成された数cm角のシリコン基板5を用意した。また、直径300 nm、粒度分布の変動係数(C.V.値;Coefficient of Variation)が3%以内のポリスチレン微粒子分散水溶液(0.5 wt%、100 ml)を用意した。
【0108】
シリコン基板5(図4のシリコン基板1に対応)を、図2に示すように水面にほぼ垂直になるようにポリスチレン微粒子分散水溶液(コロイド溶液)6に浸し、シリコン基板5の上部を固定した。
【0109】
1週間程度そのまま放置し、ポリスチレン微粒子分散水溶液(コロイド溶液)6内の溶媒を乾燥させた。その後、シリコン基板5を取り出し、十分乾燥させた。この際に、シリコン基板5の表面にはポリスチレン微粒子による周期性構造物2が形成された。シリコン基板5上の微粒子膜の硬度を高めるために80℃にて1時間の加熱を行った。
【0110】
その後、規則配列したポリスチレン微粒子の一部を、フェムト秒レーザを用いて消去した。これにより非周期構造部分9が形成された周期性構造物2が得られた。
【0111】
その後、作製した周期性構造物2の微粒子間、およびシリコン基板5の加工部分(溝51)にチタニアナノ粒子を含む水溶液を流しこみ、水分を乾燥させて硬化させた。その後、500℃ 5時間の加熱により、ポリスチレン微粒子を焼失させた。このようにして、図4の如き空隙3を有する光学素子が得られた。
【0112】
図4に示す光学素子は、ポリスチレン微粒子分散水溶液(コロイド溶液)6の毛管力、微粒子の自己組織化を利用して微粒子からなる周期性構造物(微粒子膜)を作製した後、微粒子間をチタニアナノ粒子水溶液により充填し、その後の加熱によるポリスチレン除去により、空隙3の周期構造を得たものである。
【0113】
チタニアナノ粒子からなる固形物Aが溝11に充填されることによりシリコン基板上に強固に固定されている。空隙の周期構造を含むチタニアナノ粒子からなる周期性構造物2の中の反転構造領域Bの一部に一部非周期構造部分9が含まれており、このような非周期構造部分9は光を導波する箇所となるため、光導波路として有用である。
【0114】
<実施例5>
図5は、実施例5により作製した光学素子の模式図を示す図である。図では、空隙周期構造の周期間隔や層数、基板に加工された箇所の形状や大きさなどは実際に作製した構造物とは異なるが、簡単に模式的に示している。
【0115】
図5に示す光学素子は、シリコン基板1と、該シリコン基板1上に設けられた空隙3の周期構造をもつ光硬化型樹脂Aを有する周期性構造物2からなる。
【0116】
空隙3の周期構造は、周期間隔 300nm、層数約20層である。シリコン基板1の表面の非反転構造領域Cの数カ所には溝11が形成されており、その箇所に入り込んだ光硬化型樹脂A自体が自らをシリコン基板1に固定するいわゆるアンカーボルトの役割を果たしている。
【0117】
空隙3の周期構造を含む光硬化型樹脂Aからなる周期性構造物2の上側には一部非周期構造となっている箇所(非周期構造部分91)があり、特定の波長の光を導波する箇所となっている。Bは反転構造領域、Cは非反転構造領域を示している。
【0118】
以下、図5に示す光学素子の作製方法を説明する。
図6は、図5に示す光学素子の作製方法を説明するための図である。
同図に示すように、まず、異方性エッチングおよび等方性エッチングを用いて溝51が形成された数cm角のシリコン基板5を用意した。また、凹凸加工が施され凸部101を有する石英基板7を用意した。2枚の基板5,7を互いに加工された面が向かい合うようにスペーサー(図示せず)を介してはりあわせた。
【0119】
直径300 nm、粒度分布の変動係数(C.V.値;Coefficient of Variation)が3%以内のシリカ微粒子分散水溶液(0.5 wt%、100 ml)を用意した。はりあわせた2枚の基板5,7を水面にほぼ垂直になるようにシリカ微粒子分散水溶液(コロイド溶液)6に浸し、2枚の基板5,7の上部を固定した。
【0120】
1週間程度そのまま放置し、シリカ微粒子分散水溶液(コロイド溶液)6内の溶媒を乾燥させた。その後、基板を取り出し、十分乾燥させた。この際に、基板表面にはシリカ微粒子による周期性構造物2が形成された。基板上の微粒子膜の硬度を高めるために600℃にて1時間の加熱を行った。
【0121】
その後、作製した周期性構造物2の微粒子間、およびシリコン基板5の加工部分に光硬化型樹脂Aを流しこみ、紫外線を照射して硬化させた。その後、はりあわせた2枚の基板をフッ酸液に浸し、シリカを除去した。
【0122】
その結果、シリコン基板5側に光硬化型樹脂Aは固定され、片側の石英基板7は該石英基板7自体がエッチングされることによりはずれた。
【0123】
光硬化型樹脂Aによる周期構造の一部は、石英基板に凹凸がほどこされていたことにより、その反転形状が反映された(図5の非周期構造部分91参照)。このような箇所は特定の波長の光を閉じ込め導波させる箇所として機能する。
【0124】
図5に示す光学素子は、シリカ微粒子分散水溶液(コロイド溶液)6の毛管力、シリカ微粒子の自己組織化を利用してシリカ微粒子からなる周期性構造物(微粒子膜)を作製した後、シリカ微粒子間を光硬化型樹脂Aにより充填し、その後の加熱によるシリカ微粒子除去により、空隙3の周期構造を得たものである。
【0125】
周期構造の空隙3を含む光硬化型樹脂Aからなる周期性構造物2は、溝11によりシリコン基板5上に強固に固定されている。
【0126】
周期構造の空隙3を含む光硬化型樹脂Aからなる周期性構造物2は、反転構造領域Bの一部に非周期構造部分91が含まれており、このような非周期構造部分91は光を導波する箇所となるため、光導波路をして有用である。
【0127】
以上、本発明を説明するために実施例を示してきたが、本発明はこれらの実施例にとどまることなく応用できることは言うまでもない。微粒子の種類は、シリカ、ポリエチレンのほかに酸化ジルコニウムなど様々である。
【0128】
また、微粒子径は通常数nmから数百nmのものが市販されているが、限定されない。
【0129】
また、微粒子周期性構造物を作製するために使用する微粒子径を変えることによって、閉じ込める光の波長を選択することができる。
【0130】
また、微粒子周期性構造物の作製方法は、基板を水平に設置する、基板に加工を施すなど、他の作製方法による周期性構造物であってもよい。周期性構造物は2枚の基板間に作製して、一方の基板を取り外す場合と、最初から1枚の基板表面に作製する場合がある。
【0131】
また、作製される周期性構造物、使用する基板等の大きさ等は限定されず、材質は請求項を満たす範囲で限定されない。
【0132】
また、周期性構造物作製時における溶液濃度、温度などは限定されない。周期構造物の微粒子間にナノスケールの粒子を充填して固定化する場合には、ナノ粒子を含む溶液を使う場合のほか、粉末状の固体を用いて固定化する場合もある。
【0133】
また、微粒子が自己組織的に配列する現象を利用したボトムアップ手法では、エッチング装置などを用いて材料を加工するトップダウン手法と比較して、材料の無駄がなく、プロセスとしても容易であるため、省資源・省エネルギーであり、環境面でも優れている。
【0134】
トップダウン方式では、真空装置は真空ポンプ、ヒータなども用いるので電力を大量に長時間使用する上、材料が無駄になる。一方、本発明などのようなボトムアップ手法では基板を微粒子分散液に浸すことにより微粒子が集積し、周期性構造物が形成されるので、作製に要するエネルギーが格段に小さく、プロセスそのものも省エネルギーになる。作製プロセスに用いる溶媒なども回収が容易で、省資源かつ環境に優しい。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】実施例1および実施例2にて作製された光学素子の正面図である。
【図2】実施例1、2、3、4における微粒子による周期性構造物の作製方法を説明するための概略図である。
【図3】実施例3にて作製された光学素子の正面図である。
【図4】実施例4にて作製された光学素子の正面図である。
【図5】実施例5にて作製された光学素子の正面図である。
【図6】実施例5における微粒子による周期性構造物の作製方法を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0136】
1:基板
11:溝
2:周期構造を含む周期性構造物
3:空隙
4:定着部分
5:基板
51:溝
6:コロイド液
7:微粒子からなる周期性構造物
8:空隙内に導入された材料
9:非周期構造部分
91:非周期構造部分
100:石英基板
101:凸部
A:充填材料
B:反転構造領域
C:非反転構造領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期性を有する反転構造の空隙によりフォトニックバンドギャップを形成するフォトニック結晶を用いた光学素子であって、
前記フォトニック結晶は反転構造の空隙を有する反転構造領域と反転構造の空隙を有しない非反転構造領域を有し、前記非反転構造領域の一部が、基板に作製された溝を埋める構造を有することを特徴とする光学素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光学素子において、
前記基板に作製された溝の形状は、入り口面積より大きい面積の箇所を内部に有する形状であることを特徴とする光学素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学素子において、
前記反転構造の空隙を形成する材料が前記基板に作製された溝に埋められるとともに、前記周期構造の中の一部に非周期箇所を形成していることを特徴とする光学素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の光学素子において、
前記反転構造の空隙に、該反転構造の空隙を形成している材料とは異なる材質の材料が充填されていることを特徴とする光学素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の光学素子において、
前記基板はシリコンであることを特徴とする光学素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の光学素子において、
前記フォトニック結晶の反転構造の空隙を形成する材料は、ポリマーからなることを特徴とする光学素子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の光学素子において、
前記フォトニック結晶の反転構造の空隙を形成する材料は、ナノスケールの粒子を固定化したものからなることを特徴とする光学素子。
【請求項8】
(a)基板の表面の一部に溝を作製する工程
(b)コロイド溶液を用いて、前記基板の表面に微粒子を周期的に配列させることにより周期性構造物を作製する工程
(c)前記工程(b)に用いた微粒子とは異なる材質からなる材料を微粒子間および前記工程(a)により前記基板上に作製された溝に導入する工程
(d)前記工程(c)により導入された材料を固化もしくは固定化する工程
(e)前記微粒子を除去する工程
を有することを特徴とする光学素子の作製方法。
【請求項9】
(a)基板の表面の一部にフォトニック結晶を定着させるための溝を作製する工程
(b)コロイド溶液を用いて、前記基板の表面に微粒子を周期的に配列させることにより周期性構造物を作製する工程
(c)前記工程(b)により作製された周期性構造物を形成する前記微粒子の一部を除去する工程
(d)前記工程(b)に用いた微粒子とは異なる材質からなる材料を微粒子間および前記工程(a)により基板に作製された溝に導入する工程
(e)前記工程(d)により導入された材料を固化もしくは固定化する工程
(f)前記微粒子を除去する工程
を有することを特徴とする光学素子の作製方法。
【請求項10】
(a)基板の表面の一部にフォトニック結晶を定着させるための溝を作製する工程
(b)前記工程(a)により作製した基板と凹凸加工が施された基板を向かい合わせて固定し、コロイド溶液を用いて、前記2枚の基板間に微粒子を周期的に配列させることにより周期性構造物を作製する工程
(c)前記工程(b)に用いた微粒子とは異なる材質からなる材料を前記微粒子間および前記工程(a)により前記基板に作製された溝に導入する工程
(d)前記工程(c)により導入された材料を固化もしくは固定化する工程
(e)前記微粒子を除去する工程
を有することを特徴とする光学素子の作製方法。
【請求項11】
請求項8から10のいずれかに記載の光学素子作製方法の後に、反転構造の空隙に、該反転構造の空隙を形成する材料とは異なる材質の材料を充填する工程
を有することを特徴とする光学素子の作製方法。
【請求項12】
請求項8から11のいずれかに記載の光学素子の作製方法において、
前記工程(a)における基板にフォトニック結晶を定着させるための溝を作製する工程は、シリコンの異方性エッチングもしくは等方性エッチングを利用することを特徴とする光学素子の作製方法。
【請求項13】
請求項8から12のいずれかに記載の光学素子の作製方法において、
前記工程(b)におけるコロイド液はシリカ微粒子、ポリスチレン微粒子もしくはポリメタクリル酸メチル微粒子のいずれかを含むことを特徴とする光学素子の作製方法。
【請求項14】
請求項8から13のいずれかに記載の光学素子の作製方法において、
前記微粒子間へ導入する材料として、ナノスケールのシリカ粒子もしくはチタニア粒子のいずれかを含む溶液を用い、それらの乾燥および加熱により、前記ナノスケールの粒子を固定化することを特徴とする光学素子の作製方法。
【請求項15】
請求項8から13のいずれかに記載の光学素子の作製方法において、
前記微粒子を除去する工程は、熱による微粒子の焼失であることを特徴とする光学素子の作製方法。
【請求項16】
請求項項8から13のいずれかに記載の光学素子の作製方法において、
前記微粒子を除去する工程は、液相における化学反応による微粒子の除去であることを特徴とする光学素子の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−171263(P2006−171263A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−362362(P2004−362362)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】