説明

光学素子の製造方法、光学素子形成用ウェハおよび光学素子

【課題】生産性を向上させながら、高い透過率を有する光学素子を形成することが可能な光学素子の製造方法および光学素子形成用ウェハを提供する。
【解決手段】この光学素子の製造方法は、透明基板1上にアルミニウム膜2を堆積する工程と、アルミニウム膜2の素子領域2a以外の領域を除去することにより分離溝4を形成する工程と、アルミニウム膜2の素子領域2aに陽極酸化を施す工程と、陽極酸化された酸化アルミニウム膜6に水蒸気酸化を施す工程と、水蒸気酸化が施された酸化アルミニウム膜6を含む光学素子形成用ウェハ7を分離溝4に沿って分離する工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の製造方法、光学素子形成用ウェハおよび光学素子に関し、特に、基板上に形成されたアルミニウム膜を陽極酸化する光学素子の製造方法、光学素子形成用ウェハおよび光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明基板上に設けたアルミニウム膜を陽極酸化することにより形成した多孔質構造体を、偏光制御素子、フォトニック結晶素子または光触媒素子などの光学素子として用いる技術が知られている。
【0003】
図64は、従来の光学素子の製造プロセスにおいて用いられる陽極酸化法を説明するための概略図である。図64を参照して、従来では、アルミニウム膜の陽極酸化を行う場合、硫酸、シュウ酸およびリン酸などの水溶液からなる電解液201を収容した耐酸性容器202内に、白金などからなる陰極203と、透明基板204上に形成したアルミニウム膜205からなる陽極206とを対向させて配置する。そして、陰極203と陽極206との間に直流電圧Vaを印加する。これにより、陽極206側のアルミニウム膜205が酸化されるとともに、複数の細孔が自己組織化的にアルミニウム膜205の厚み方向に発生することにより多孔質構造体が形成される。陽極酸化により形成された多孔質構造体は、光学的に透明な酸化アルミニウム(アルミナ)からなるため、光学素子として使用することが可能である。また、上記した製造プロセスによりアルミニウム膜を陽極酸化した場合、酸化アルミニウム膜に形成される複数の細孔は、ランダムに配列される一方、平均して約2.5Va(nm)の間隔で配列することが一般的に知られている。また、従来では、規則的に配列した凸部を有する金型をアルミニウム膜に押し付けてアルミニウム膜に凹部を形成した後、陽極酸化することにより、規則的に配列した細孔を形成する製造プロセスも提案されている。
【0004】
図65〜図67は、上記提案された従来の光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図65〜図67を参照して、上記した酸化アルミニウム膜の細孔を規則的に形成することが可能な製造プロセスについて詳細に説明する。まず、図65に示すように、規則的に配列した凸部207aを有する金型207を透明基板204上のアルミニウム膜205に押し付ける。これによって、図66に示すように、アルミニウム膜205上に規則的に配列した凹部205aを形成する。その後、陽極酸化を行うことにより、アルミニウム膜205の凹部205a(図66参照)を起点として、図67に示すように、アルミニウム膜205の厚み方向に自己組織化的に発生した細孔208aを有する酸化アルミニウム膜208が形成される。この場合、アルミニウム膜205の凹部205aの周期をP(図66参照)とすると、陽極酸化電圧Vaは、Va=P/2.5を満たすように設定される。
【0005】
ここで、陽極酸化により形成された多孔質構造体を光学素子として用いるためには、多孔質構造体の透過率を向上させる必要がある。上記した陽極酸化の場合、図67に示すように、酸化反応により細孔の先端が丸い凸形状(半球形状)で進行するため、酸化反応による細孔208aの形成の最終段階でアルミニウムが断線する。これにより、透明基板204と酸化アルミニウム膜208との境界部分に位置するアルミニウムの酸化が行われずに残留アルミニウム205bとして残る。その結果、陽極酸化により形成された多孔質構造体の透過率を向上させるのが困難であるという不都合があった。
【0006】
そこで、従来、上記した陽極酸化後の残留アルミニウム205bをさらに酸化する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。上記特許文献1には、ガラス基板上に形成された平板状のアルミニウム膜に陽極酸化を行った後、ガラス基板と酸化アルミニウム膜との間に酸化されずに残っている残留アルミニウムを、プラズマ酸化などによってアルミナ化する2段階酸化の技術が開示されている。
【0007】
ところで、一般的に使用されている単体の光学素子は、10mm角以内の大きさである場合が多い。従来では、15cm角程度の比較的大きいサイズの透明基板を用いて光学素子形成用ウェハを形成した後、その光学素子形成用ウェハを1光学素子のサイズに切断している。これにより、一度に複数の光学素子を形成することができるので、光学素子の生産性を向上させることが可能である。
【特許文献1】特開平5−335575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示された従来の2段階酸化の技術を、光学素子の生産性を高めるために、比較的大きいサイズの透明基板を用いて陽極酸化した光学素子形成用ウェハに適用する場合を考える。この場合、図68に示すように、光学素子形成用ウェハ209の端部では、側方から酸素が供給されるので、残留アルミニウム205bが効率良く酸化される。
【0009】
しかしながら、光学素子形成用ウェハ209の中央付近では、酸素の供給不足が原因で残留アルミニウム205bの酸化が十分に行われないという不都合が生じる。この場合に、光学素子形成用ウェハ209を切断することにより光学素子210を形成すると、図69に示すように、光学素子210の透明基板204と酸化アルミニウム膜208との間に、残留アルミニウム205bが存在するという不都合が生じる。そして、このような残留アルミニウム205bが存在する光学素子210では、高い透過率を得るのは困難であるという問題点がある。上記のように、従来では、特許文献1に開示された2段階酸化を用いた場合にも、生産性を向上させるために比較的大きい基板上に形成されたアルミニウム膜を用いた場合には、高い透過率を有する光学素子を得るのは困難であるという問題点がある。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、生産性を向上させながら、高い透過率を有する光学素子を形成することが可能な光学素子の製造方法および光学素子形成用ウェハを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0011】
上記目的を解決するために、この発明の第1の局面による光学素子の製造方法は、透明基板上にアルミニウム膜を堆積する工程と、アルミニウム膜の素子領域以外の領域を除去することにより溝部を形成する工程と、除去されずに残ったアルミニウム膜に陽極酸化を施す工程と、陽極酸化されたアルミニウム膜に熱酸化、水蒸気酸化およびプラズマ酸化のうちの少なくとも1つの酸化処理を施す工程と、酸化処理が施されたアルミニウム膜を素子領域以外の溝部で分離する工程とを備えている。
【0012】
この第1の局面による光学素子の製造方法では、上記のように、アルミニウム膜の素子領域以外の領域を除去することにより溝部を形成することによって、生産性を向上させるために比較的大きい基板上に形成されたアルミニウム膜を用いた場合にも、熱酸化、水蒸気酸化およびプラズマ酸化のうちの少なくとも1つの酸化処理の際に、アルミニウム膜の中央付近に存在する陽極酸化の際に酸化されずに残ったアルミニウムにも、溝部を介して酸素が供給されるので、容易に、陽極酸化の際に酸化されずに残ったアルミニウムを酸化することができる。これにより、生産性を向上させるために比較的大きい基板上に形成されたアルミニウム膜を用いた場合にも、光学素子形成領域の透過率を向上させることができるので、生産性を向上させながら、高い透過率を有する光学素子を形成することができる。
【0013】
上記第1の局面による光学素子の製造方法において、好ましくは、透明基板は、サファイア基板を含む。このように構成すれば、サファイア基板は、陽極酸化されたアルミニウム膜の熱膨張係数(9.6×10−6/℃)に比較的近い熱膨張係数(7.0×10−6/℃)を有しているので、高温を伴う酸化処理である熱酸化、水蒸気酸化またはプラズマ酸化が行われる際に、透明基板と、陽極酸化されたアルミニウム膜との熱膨張係数の差に起因して、陽極酸化されたアルミニウム膜にクラック(割れ)が発生するのを抑制することができる。
【0014】
上記第1の局面による光学素子の製造方法において、好ましくは、透明基板と、陽極酸化されたアルミニウム膜との間に、陽極酸化されたアルミニウム膜の熱膨張係数と透明基板の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する熱膨張緩衝膜を形成する工程をさらに備える。このように構成すれば、透明基板と陽極酸化されたアルミニウム膜との熱膨張係数の差が大きい場合でも、熱膨張緩衝膜が、透明基板と陽極酸化されたアルミニウム膜との境界部分に発生する歪みを緩和する機能を有するので、陽極酸化されたアルミニウム膜にクラック(割れ)が発生するのを抑制することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、熱膨張緩衝膜を形成する工程は、スパッタ法を用いて、40nm以下の厚みを有する酸化アルミニウム膜からなる熱膨張緩衝膜を形成する工程を含む。このように構成すれば、スパッタ法を用いて形成された厚みが40nm以下の酸化アルミニウム膜には、膜自体が収縮しようとする力が働くので、スパッタ法を用いて形成された厚みが40nm以下の酸化アルミニウム膜の熱膨張係数は、スパッタ法以外の方法を用いて形成された酸化アルミニウム膜や、スパッタ法を用いて形成された40nmよりも大きい厚みを有する酸化アルミニウム膜の熱膨張係数よりも小さくなる。つまり、スパッタ法を用いて形成された40nm以下の厚みを有する酸化アルミニウム膜の熱膨張係数は、陽極酸化されたアルミニウム膜の熱膨張係数よりも小さくなるので、スパッタ法を用いて形成された40nm以下の厚みを有する酸化アルミニウム膜は、陽極酸化されたアルミニウム膜と透明基板との間の熱膨張係数を有する。その結果、透明基板と陽極酸化されたアルミニウム膜との間に、スパッタ法を用いて40nm以下の厚みで酸化アルミニウム膜からなる熱膨張緩衝膜を形成すれば、容易に、陽極酸化されたアルミニウム膜にクラック(割れ)が発生するのを抑制することができる。
【0016】
上記熱膨張緩衝膜を形成する工程を含む光学素子の製造方法において、好ましくは、陽極酸化されたアルミニウム膜の屈折率をnとし、熱膨張緩衝膜の屈折率をnとし、透明基板の屈折率をnとするとともに、陽極酸化によりアルミニウム膜に形成された凹部の周期をL(μm)とし、熱膨張緩衝膜の実効屈折率をNとする場合に、熱膨張緩衝膜の厚みは、以下の式(1)および式(2)で示すt未満の厚みに設定されている。
【0017】
= [tan−1{(N−n1/2/(n−N1/2
+tan−1{(N−n1/2/(n−N1/2}]
/(n−N1/2 ・・・ (1)
= 0.4/L ・・・ (2)
このように構成すれば、透明基板と陽極酸化されたアルミニウム膜との間に形成された熱膨張緩衝膜の膜厚が導波路としてのカットオフ膜厚よりも小さくなるので、入射光が熱膨張緩衝膜により構成される導波路に結合して再放射されるのを防止することができる。その結果、光学素子形成領域の透過率を向上させることができる。
【0018】
上記第1の局面による光学素子の製造方法において、好ましくは、溝部を形成する工程は、隣接する素子領域間で連結部を有するように溝部を形成する工程を含む。このように構成すれば、連結部により、溝部を挟んで隣接する素子領域間が電気的に断線された状態になるのを防止することができるので、アルミニウム膜に溝部を形成したとしても、アルミニウム膜の陽極酸化を行うことができる。
【0019】
上記第1の局面による光学素子の製造方法において、好ましくは、透明基板と、陽極酸化されたアルミニウム膜との間に、透明導電膜を形成する工程をさらに備える。このように構成すれば、陽極酸化の際に透明導電膜を介してアルミニウム膜に電力が供給されるので、アルミニウムが断線するのを抑制することができる。これにより、陽極酸化後の残留アルミニウムの量を減少させることができるので、熱酸化、水蒸気酸化、またはプラズマ酸化などの2回目の酸化処理を比較的低温で行うことができる。その結果、透明基板と陽極酸化されたアルミニウム膜との間の熱膨張係数の差に起因する酸化アルミニウム膜のクラッド(割れ)の発生を抑制することができる。
【0020】
上記透明導電膜を形成する工程を含む光学素子の製造方法において、好ましくは、陽極酸化されたアルミニウム膜の屈折率をnとし、透明導電膜の屈折率をnとし、透明基板の屈折率をnとするとともに、陽極酸化によりアルミニウム膜に形成された凹部の周期をL(μm)とし、透明導電膜の実効屈折率をNとする場合に、透明導電膜の厚みは、以下の式(3)および式(4)で示すt未満の厚みに設定されている。
【0021】
= [tan−1{(N−n1/2/(n−N1/2
+tan−1{(N−n1/2/(n−N1/2}]
/(n−N1/2 ・・・ (3)
= 0.4/L ・・・ (4)
このように構成すれば、透明基板と陽極酸化されたアルミニウム膜との間に形成された透明導電膜の膜厚が導波路としてのカットオフ膜厚よりも小さくなるので、入射光が透明導電膜により構成される導波路に結合して再放射されるのを防止することができる。その結果、光学素子形成領域の透過率を向上させることができる。
【0022】
この発明の第2の局面による光学素子形成用ウェハは、透明基板と、透明基板上に形成され、陽極酸化されたアルミニウム膜とを備え、陽極酸化されたアルミニウム膜は、陽極酸化されたアルミニウム膜の素子領域以外の領域に溝部を含み、透明基板およびアルミニウム膜は、溝部に沿って分離可能なように構成されている。
【0023】
この第2の局面による光学素子形成用ウェハでは、上記のように、アルミニウム膜の素子領域以外の領域に溝部を含むことによって、生産性を向上させるために比較的大きい基板上に形成されたアルミニウム膜を用いた場合にも、熱酸化、水蒸気酸化およびプラズマ酸化のうちの少なくとも1つの酸化処理を行う際に、アルミニウム膜の中央付近に存在する陽極酸化の際に酸化されずに残ったアルミニウムにも、溝部を介して酸素が供給されるので、容易に、陽極酸化の際に酸化されずに残ったアルミニウムを酸化することができる。これにより、生産性を向上させるために比較的大きい基板上に形成されたアルミニウム膜を用いた場合にも、光学素子形成領域の透過率を向上させることができるので、生産性を向上させながら、高い透過率を有する光学素子を形成することができる。
【0024】
この発明の第3の局面による光学素子は、透明基板と、透明基板上に形成され、陽極酸化されたアルミニウム膜とを備え、陽極酸化されたアルミニウム膜を含む素子領域の周囲に、素子領域の厚みよりも小さい厚みの領域を含む。
【0025】
この第3の局面による光学素子では、上記のように、素子領域の周囲に素子領域の厚みよりも小さい厚みの領域を含むことによって、光学素子をハウジングなどに固定する際に、固定具が素子領域に接触することがない。これにより、光学素子をハウジングなどに固定する際に素子領域が破損するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1〜図8は、本発明の第1実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための平面図および断面図であり、図9は、本発明の第1実施形態による光学素子形成用ウェハを示した断面図であり、図10は、本発明の第1実施形態による光学素子を示した断面図である。まず、図1〜図10を参照して、第1実施形態による光学素子の製造プロセスについて説明する。
【0028】
まず、図1に示すように、サファイア基板からなる透明基板1上に、電子ビーム蒸着法またはスパッタ法を用いて、1μm〜10μmの厚みを有するアルミニウム膜2を堆積する。次に、図2に示すように、アルミニウム膜2の素子領域2a(図3参照)上に、ニッケル膜3を形成する。そして、図3に示すように、ニッケル膜3をマスクとして、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)法を用いて、アルミニウム膜2の表面から透明基板1の上面までをエッチングすることによって、透明基板1の上面を露出させる。そして、ニッケル膜3を除去することによって、図4および図5に示すように、アルミニウム膜2の素子領域2a以外の領域に分離溝4を形成する。なお、分離溝4は、本発明の「溝部」の一例である。また、第1実施形態では、図4に示すように、アルミニウム膜2に陽極酸化を行うために、隣接する素子領域2a間が電気的に断線された状態になるのを防止する必要があるので、隣接する素子領域2a間を連結する連結部2bを残すように分離溝4を形成する。
【0029】
次に、図6に示すように、三角格子状などの規則的に配列した凸部5aを有する金型5を透明基板1上の素子領域2aに上方から押し付ける。これにより、図7に示すように、素子領域2a上に三角格子状などの規則的に配列された凹部2cが形成される。そして、アルミニウム膜2の陽極酸化を行うことにより、図8に示すように、三角格子状などの規則的に配列された凹部2c(図7参照)を起点として自己組織化的に発生した細孔6aを有する酸化アルミニウム(アルミナ)膜6が形成される。このとき、細孔6aの先端が丸い凸形状(半球形状)を有しているため、細孔6aの形成の最終段階でアルミニウムが断線する。これにより、透明基板1と酸化アルミニウム膜6との境界部分には、酸化されずに残った残留アルミニウム2d(図8参照)が発生する。
【0030】
次に、この残留アルミニウム2dを酸化するために、図8に示した状態から水蒸気酸化を行う。この水蒸気酸化は、窒素ガスをキャリアガスとして、毎分2リットルの流量の水蒸気を用いて、1気圧(大気圧)の水蒸気圧力および約650℃の温度条件下で行う。なお、水蒸気酸化の温度は、500℃〜700℃の間に設定することが好ましい。また、水蒸気酸化が高温(約650℃)を伴う酸化処理であるので、透明基板1の熱膨張係数と酸化アルミニウム膜6の熱膨張係数との差によって、酸化アルミニウム膜6にクラック(割れ)が発生しやすい。そこで、第1実施形態では、上記したように、透明基板1として、酸化アルミニウムの熱膨張係数(9.6×10−6/℃)との差が大きい熱膨張係数(0.54×10−6/℃)を有する石英基板ではなく、酸化アルミニウムの熱膨張係数(9.6×10−6/℃)に近い熱膨張係数(7.0×10−6/℃)を有するサファイア基板を用いている。
【0031】
ここで、第1実施形態の製造プロセスでは、上記した水蒸気酸化によって、透明基板1と酸化アルミニウム膜6との境界部分の残留アルミニウム2dの酸化が行われる。このとき、透明基板1上の中央付近の残留アルミニウム2dにも分離溝4を介して酸素が供給されることにより、透明基板1と酸化アルミニウム膜6との境界部分に存在するほとんどすべての残留アルミニウム2dが酸化される。そして、図9に示すように、高い透過率を有する光学素子形成用ウェハ7が形成される。この光学素子形成用ウェハ7は、複数の分離溝4を有している。そして、光学素子形成用ウェハ7を分離溝4(図9中の点線の位置)に沿って分離(切断)することにより、図10に示すように、残留アルミニウム2dがほとんど存在しない高い透過率を有する光学素子8が形成される。この光学素子8は、素子形成領域としての酸化アルミニウム膜6の周囲の領域の厚みが酸化アルミニウム膜6の厚みよりも小さくなるように、端部に段差部8aを有している。
【0032】
図11は、第1実施形態による光学素子をハウジングに固定した状態を示した断面図である。次に、図11を参照して、第1実施形態による光学素子の製造プロセスを用いて形成された光学素子8のハウジング11への固定方法について説明する。第1実施形態による光学素子8をハウジング11に固定する際は、まず、図11に示すように、光学素子8をハウジング11の載置部11aに載置する。その後、上方から板バネ12で光学素子8の段差部8aを押さえるとともに、ネジ13で固定する。第1実施形態による光学素子8では、図11に示すように、光学素子8の端部に酸化アルミニウム膜6が形成されていないので、固定の際に板バネ12により酸化アルミニウム膜6(素子領域)が押さえられることがない。これにより、板バネ12の押圧力や、温度変化などに起因して光学素子8の酸化アルミニウム膜6(素子領域)が破損するのを抑制することが可能である。また、第1実施形態による光学素子8を、板バネ12を用いずに接着剤で固定する場合にも、段差部8aが存在することにより、接着剤が酸化アルミニウム膜6に付着するのを容易に防止することが可能である。このため、接着剤の塗布箇所を特に限定する必要がないので、光学素子8の固定作業を容易に行うことが可能である。これに対して、図12に示すような比較例1(従来例)による光学素子14では、光学素子14の端部にまで酸化アルミニウム膜15が形成されているので、板バネ12により固定する際に板バネ12により酸化アルミニウム膜15を押さえる必要がある。このため、板バネ12の押圧力や温度変化などに起因して、酸化アルミニウム膜15が破損しやすいという不都合がある。また、比較例1(従来例)による光学素子14では、接着剤によりハウジングなどに固定する場合にも、酸化アルミニウム膜15に接着剤が付着しやすいために、接着剤の塗布箇所を限定する必要があるという不都合がある。
【0033】
第1実施形態による光学素子の製造プロセスでは、上記のように、アルミニウム膜2の素子領域2a以外の領域を除去することにより分離溝4を形成することによって、生産性を向上させるために比較的大きい透明基板1上に形成されたアルミニウム膜2を用いた場合にも、水蒸気酸化の際に、アルミニウム膜2の中央付近に存在する陽極酸化の際に酸化されずに残った残留アルミニウム2dにも、分離溝4を介して酸素が供給されるので、容易に、残留アルミニウム2dを酸化することができる。これにより、生産性を向上させるために比較的大きい透明基板1上に形成されたアルミニウム膜2を用いた場合にも、素子領域2aの透過率を向上させることができるので、生産性を向上させながら、高い透過率を有する光学素子8を形成することができる。
【0034】
なお、上記した第1実施形態とは異なり、図13に示すように、比較的大きい透明基板21上にアルミニウム膜22を堆積し、1光学素子のサイズに切断した後、陽極酸化および水蒸気酸化を行うことにより、光学素子を形成する方法(比較例2)も考えられる。しかしながら、この場合には、透明基板21上のアルミニウム膜22が粘性を有しているため、ダイシングブレードなどによる切断の際に、アルミニウム膜22がダイシングブレードに引っ張られて変形する。これによって、図14に示すように、アルミニウム膜22の端部にバリ22aが形成されたり、アルミニウム膜22と透明基板21との境界部分に剥離による間隙23が発生したりするという不都合が生じる。このため、図13に示したような比較例2による方法は、好ましくないと考えられる。
【0035】
また、上記した第1実施形態とは異なり、図15に示すように、予め1光学素子のサイズに切断された透明基板31上にアルミニウム膜32を堆積した後、陽極酸化および水蒸気酸化を行うことにより、光学素子を形成する方法(比較例3)も考えられる。しかしながら、この場合には、透明基板31が小さいので、透明基板31上にアルミニウムを堆積する際に、透明基板31の側方にアルミニウムの回り込み部32aが形成される。この回り込み部32aにより、水蒸気酸化の際に、酸化アルミニウム膜33の側方からの酸素の供給が遮断される。その結果、図16に示すように、水蒸気酸化後にも残留アルミニウム32bが存在するという不都合が生じる。このため、図15に示したような比較例3による方法も好ましくないと考えられる。
【0036】
図17および図18は、本発明の第1実施形態の第1変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための図である。この第1実施形態の第1変形例では、図17に示すように、透明基板41上にアルミニウム膜42を形成した後、アルミニウム膜42の素子領域42a(図18参照)上に、レジスト膜43を形成する。そして、図18に示すように、レジスト膜43をマスクとして、リン酸水溶液によりアルミニウム膜42の表面から透明基板41の上面までをエッチングすることによって、透明基板41の上面を露出させる。そして、レジスト膜43を除去することによって、第1実施形態の分離溝4(図4および図5参照)と同様の構造を有する分離溝44を形成する。なお、分離溝44は、本発明の「溝部」の一例である。
【0037】
図19および図20は、本発明の第1実施形態の第2変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための図である。この第1実施形態の第2変形例では、図19に示すように、透明基板51上の素子領域以外の領域にレジスト膜52を形成する。そして、図20に示すように、レジスト膜52が形成された透明基板51上にアルミニウム膜53を形成する。そして、レジスト膜52を除去することにより、図21に示すように、第1実施形態の分離溝4(図4および図5参照)と同様の構造を有する分離溝54を形成する。なお、分離溝54は、本発明の「溝部」の一例である。
【0038】
図22および図23は、本発明の第1実施形態の第3変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための図である。この第1実施形態の第3変形例では、図22に示すように、透明基板61上にアルミニウム膜62を堆積した後、エッチングによりアルミニウム膜62のみならず、透明基板61も途中の深さまで除去することにより、分離溝64を形成する。なお、分離溝64は、本発明の「溝部」の一例である。その後、図6〜図9に示した第1実施形態によるプロセスと同様のプロセスを用いて、図23に示す光学素子63が形成される。このように透明基板61の途中まで達する分離溝64を形成した場合にも、上記した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
(第2実施形態)
図24〜図31は、本発明の第2実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための平面図および断面図であり、図32は、本発明の第2実施形態による光学素子形成用ウェハを示した断面図であり、図33は、本発明の第2実施形態による光学素子を示した断面図である。まず、図24〜図33を参照して、第2実施形態による光学素子の製造プロセスについて説明する。
【0040】
この第2実施形態による光学素子の製造プロセスは、上記第1実施形態と異なり、透明基板とアルミニウム膜との間に熱膨張緩衝膜を挿入した例について説明する。
【0041】
すなわち、この第2実施形態では、図24に示すように、石英基板からなる透明基板71上に、電子ビーム蒸着法またはスパッタ法を用いて、約10nmの厚みを有する熱膨張緩衝膜72を堆積した後、熱膨張緩衝膜72上に、電子ビーム蒸着法またはスパッタ法を用いて、1μm〜10μmの厚みを有するアルミニウム膜73を堆積する。この熱膨張緩衝膜72は、透明基板71を構成する石英基板の熱膨張係数(0.54×10−6/℃)と酸化アルミニウムの熱膨張係数(9.6×10−6/℃)との間の熱膨張係数を有する材料から形成されている。第2実施形態では、熱膨張緩衝膜72は、たとえば、酸化チタン(熱膨張係数:7.5×10−6/℃)、酸化ジルコニウム(熱膨張係数:6.5×10−6/℃)、または、BK7(ホウケイ酸クラウン光学ガラス(熱膨張係数:7.1×10−6/℃))などの光学ガラスからなる。この熱膨張緩衝膜72は、陽極酸化後の水蒸気酸化時に透明基板71と酸化アルミニウム膜77との熱膨張係数の差に起因する光学素子79の歪みを緩和する機能を有する。
【0042】
次に、図25に示すように、アルミニウム膜73の素子領域73a(図26参照)上にニッケル膜74を形成する。そして、図26に示すように、RIE法を用いて、ニッケル膜74をマスクとして、アルミニウム膜73の表面から熱膨張緩衝膜72の上面までをエッチングすることによって、熱膨張緩衝膜72の上面を露出させる。そして、ニッケル膜74を除去することによって、図27および図28に示すように、アルミニウム膜73の素子領域73a以外の領域に分離溝75を形成する。なお、分離溝75は、本発明の「溝部」の一例である。また、第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様、図27に示すように、アルミニウム膜73に陽極酸化を行うために、隣接する素子領域73a間が電気的に断線された状態になるのを防止する必要があるので、隣接する素子領域73a間を連結する連結部73bを残すように分離溝75を形成する。なお、熱膨張緩衝膜72として酸化チタンなどの導電性の材料を用いる場合には、隣接する素子領域73aが電気的に断線されることがないので、連結部73bを形成する必要はない。
【0043】
次に、図29に示すように、三角格子状などの規則的に配列した凸部76aを有する金型76を素子領域73aに上方から押し付ける。これにより、図30に示すように、素子領域73a上に三角格子状などの規則的に配列された凹部73cが形成される。そして、アルミニウム膜73の陽極酸化を行うことにより、図31に示すように、細孔77aを有する酸化アルミニウム膜77が形成される。このときにも、上記第1実施形態と同様に、熱膨張緩衝膜72と酸化アルミニウム膜77との境界部分には、酸化されずに残った残留アルミニウム73dが発生する。
【0044】
次に、この残留アルミニウム73dを酸化するために、図31に示した状態から水蒸気酸化を行う。なお、水蒸気酸化は、上記第1実施形態と同様、窒素ガスをキャリアガスとして、毎分2リットルの流量の水蒸気を用いて、1気圧(大気圧)の水蒸気圧力および約650℃の温度条件下で行う。なお、水蒸気酸化の温度は、500℃〜700℃の間に設定することが好ましい。ここで、第2実施形態では、透明基板71と酸化アルミニウム膜77との間に熱膨張緩衝膜72が形成されているので、高温(約650℃)を伴う水蒸気酸化を行った場合でも、透明基板71の熱膨張係数と酸化アルミニウム膜77の熱膨張係数との差によって、酸化アルミニウム膜77にクラック(割れ)が発生するのが抑制される。このため、第2実施形態では、透明基板71として石英(熱膨張係数:0.54×10−6/℃)基板を用いたとしても、酸化アルミニウム膜77にクラック(割れ)が発生することはない。
【0045】
また、第2実施形態の製造プロセスでは、上記した水蒸気酸化によって、透明基板71と酸化アルミニウム膜77との境界部分の残留アルミニウム73dの酸化が行われる。このとき、透明基板71上の中央付近の残留アルミニウム73dにも分離溝75を介して酸素が供給されることにより、透明基板71と酸化アルミニウム膜77との境界部分に存在するほとんどすべての残留アルミニウム73dが酸化される。そして、図9に示すように、高い透過率を有する光学素子形成用ウェハ78が形成される。この光学素子形成用ウェハ78は、複数の分離溝75を有している。そして、光学素子形成用ウェハ78を分離溝75(図32中の点線の位置)に沿って分離(切断)することにより、図33に示すように、残留アルミニウム73dがほとんど存在しない高い透過率を有する光学素子79が形成される。この光学素子79は、素子形成領域としての酸化アルミニウム膜77の周囲の領域の厚みが酸化アルミニウム膜77の厚みよりも小さくなるように、端部に段差部79aを有している。
【0046】
図34は、第2実施形態による光学素子をハウジングに固定した状態を示した断面図である。図34を参照して、この第2実施形態による光学素子の製造プロセスを用いて形成された光学素子79をハウジング81に固定する場合も、上記した第1実施形態と同様、光学素子79をハウジング81の載置部81aに載置する。その後、上方から板バネ82で光学素子79の段差部79aを押さえるとともに、ネジ83で固定する。このように、第2実施形態による光学素子79においても、図34に示すように、光学素子79の端部に酸化アルミニウム膜77が形成されていないので、固定の際に板バネ82により酸化アルミニウム膜77(素子領域)が押さえられることがない。これにより、板バネ82の押圧力や、温度変化などに起因して光学素子79の酸化アルミニウム膜77(素子領域)が破損するのを抑制することが可能である。また、第2実施形態による光学素子79を、板バネ82を用いずに接着剤で固定する場合にも、段差部79aが存在することにより、接着剤が酸化アルミニウム膜77に付着するのを容易に防止することが可能である。このため、接着剤の塗布箇所を特に限定する必要がないので、光学素子79の固定作業を容易に行うことが可能である。
【0047】
図35〜図39は、透明基板と酸化アルミニウム膜との間に位置する熱膨張緩衝膜の膜厚と透過率との関係を説明するための図である。次に、図35〜図39を参照して、第2実施形態による熱膨張緩衝膜72の膜厚と光学素子79の透過率との関係について説明する。透明基板71と酸化アルミニウム膜77との間に、熱膨張緩衝膜72などの挿入膜を設けることにより、光学素子79の透過率が低下する場合がある。すなわち、挿入膜(熱膨張緩衝膜72)の屈折率が、透明基板71の屈折率および酸化アルミニウム膜77の屈折率よりも大きい場合には、挿入膜(熱膨張緩衝膜72)が入射光の導波路として機能する。このため、図35に示すように、酸化アルミニウム膜77側から入射した入射光の一部は、透明基板71側に透過せずに挿入膜内を結合光として伝搬し、放射光として再び酸化アルミニウム膜77から上方に出射する。その結果、光学素子79の透過率が低下する。上記した透過率の特性は、光学素子79を可視光の波長領域で使用する場合には好ましくない。
【0048】
次に、図36を参照して、上記した光学素子79の透過率低下の現象が発生する条件について説明する。図36に示すように、導波路材料としての挿入膜(熱膨張緩衝膜72)の実効屈折率(N)は、挿入膜(熱膨張緩衝膜72)の屈折率(n)と、酸化アルミニウム膜77および透明基板71のうちの大きい方の屈折率(nまたはn)との間で変化する。そして、挿入膜の膜厚(t)が決定すると、挿入膜の実効屈折率(N)も決定する。図35に示す光学素子79に波長λの光が垂直に入射する場合に、入射光が導波路に結合する条件は、細孔77aの格子ベクトル値をKとし、細孔77aの周期をLとし、空気中の光の波数をkとした場合に、以下の式(5)、式(6)および式(7)によって表される。
【0049】
K = N×k ・・・ (5)
K = 2π/L ・・・ (6)
= 2π/λ ・・・ (7)
そして、上記した式(5)に式(6)および式(7)を代入することにより、以下の式(8)が導かれる。
【0050】
N = λ/L ・・・ (8)
ここで、挿入膜(熱膨張緩衝膜72)の実効屈折率(N)と細孔77aの周期(L)とは、光学素子79の構造により決定される値であるので、上記した式(8)を満たす波長λの光が光学素子79に入射したときに、その入射光が導波路に結合する。
【0051】
ところで、一般的な光学機器で用いられる光の波長は、0.4μm以上であるので、0.4μm以上の波長λを有する入射光を導波路に結合させないようにすることが好ましい。このため、光学素子の構造を、波長λが0.4μm未満のときに式(8)を満たすような挿入膜(熱膨張緩衝膜72)の実効屈折率(N)と細孔77aの周期(L)とを有する構造にする必要がある。波長λが0.4μmのときの実効屈折率をNとした場合、Nは、λ=0.4(μm)を式(8)に代入して、N=0.4/Lで表される。このようなNを与える導波路膜厚(t)は、以下の式(9)により導かれる。
【0052】
= [tan−1{(N−n1/2/(n−N1/2
+tan−1{(N−n1/2/(n−N1/2}]
/(n−N1/2 ・・・ (9)
これにより、挿入膜(熱膨張緩衝膜72)の膜厚を上記式(9)で表される導波路膜厚(t)未満にすれば、0.4μm以上の波長λを有する入射光が導波路に結合することはない。
【0053】
次に、上記式(9)を適用する際の条件について説明する。まず、N≧nの場合、挿入膜(熱膨張緩衝膜72)の膜厚にかかわらず、入射光が導波路に結合することはない。そして、(nおよびnのうちの大きい方)≦N<nの場合、0.4μm以上の波長λを有する入射光が導波路に結合しないための挿入膜の膜厚は、上記式(9)で計算される導波路膜厚(t)未満に設定すればよい。そして、N<(nおよびnのうちの大きい方)の場合、0.4μm以上の波長λを有する入射光が導波路に結合しないための挿入膜の膜厚は、上記式(9)にN=(nおよびnのうちの大きい方)を代入して計算される導波路膜厚(t)未満に設定すればよい。
【0054】
具体的には、細孔77aの周期(L)を0.26μmとし、酸化アルミニウム膜77の屈折率(n)を1.679とし、透明基板71を構成する石英基板の屈折率(n)を1.470とし、挿入膜(熱膨張緩衝膜72)として3.301の屈折率(n)を有する酸化チタンを用いた場合には、波長λが0.4μmのときのNは、式(8)よりN=1.538となる。この場合、N<(nおよびnのうちの大きい方)の場合の条件を適用すればよい。これにより、入射光が導波路に結合する酸化チタンからなる熱膨張緩衝膜72(挿入膜)の最小膜厚(カットオフ膜厚)をtとすると、上記式(9)を用いてt=97.8(nm)が導かれる。これは、挿入膜としての酸化チタンの膜厚が97.8nm以上のときには、入射光が導波路と結合するので、光学素子79の透過率が低下することを意味する。この入射光が導波路に結合する場合の一例として、厚さ100nmの酸化チタンを挿入膜(熱膨張緩衝膜72)として用いた場合の透過率シミュレーション結果を図38に示す。図38を参照して、入射光の波長λが0.585μm付近で光学素子79の透過率が急激に低下していることがわかる。また、波長が0.585μm以外の波長領域においても光学素子79の透過率が周期的に低下している。
【0055】
また、t=97.8nmから、挿入膜としての酸化チタンの膜厚が97.8nm未満のときには、図37に示すように、入射光が導波路と結合しないので、光学素子79の透過率は低下しない。この入射光が導波路に結合しない場合の一例として、厚さ5nmの酸化チタンを挿入膜(熱膨張緩衝膜72)として用いた場合の透過率シミュレーション結果を図39に示す。図39を参照して、入射光の波長が0.4μm〜0.8μmの領域では、光学素子79の透過率の急激な低下はなく、透過率の周期的な変動も小さくなっていることがわかる。
【0056】
なお、上記式(9)は、入射光がTEモードである場合の導波路膜厚(t)を示した式である。しかしながら、図40に示すように、入射光のうちのTMモードの光に対するカットオフ膜厚(入射光が導波路に結合する挿入膜の最小膜厚)は、TEモードの光に対するカットオフ膜厚よりも大きい。ここで、TMモードの光とは、図35において、偏光方向が導波路(熱膨張緩衝膜72)と透明基板71との境界面に対して垂直な光であり、TEモードの光とは、偏光方向が導波路(熱膨張緩衝膜72)と透明基板71との境界面に対して平行な光である。このように、TMモードの光に対するカットオフ膜厚は、TEモードの光に対するカットオフ膜厚よりも大きいので、挿入膜(熱膨張緩衝膜72)の膜厚が、入射光のうちのTEモードの光が導波路に結合しないための条件を満たしていれば、TMモードの光が導波路に結合しないための条件を必ず満たしている。つまり、TEモードの光が導波路に結合しなければ、TMモードの光も結合しない。したがって、TEモードの光が導波路に結合しないための条件を満たすように挿入膜(熱膨張緩衝膜72)の膜厚を設定すればよい。
【0057】
なお、上記第2実施形態による透明基板上に熱膨張緩衝膜を形成するプロセスとして、スパッタ法を用いて40nm以下の厚みで酸化アルミニウム膜からなる熱膨張緩衝膜を形成するプロセスを用いてもよい。ここで、スパッタ法を用いて形成された厚みが40nm以下の酸化アルミニウム膜には、膜自体が収縮しようとする力が働くことが知られている。このことは、たとえば、麻蒔立男著「薄膜形成の基礎(第2版)」、日刊工業新聞社、1984年7月30日、pp.94〜96に開示されている。これにより、スパッタ法を用いて形成された厚みが40nm以下の酸化アルミニウム膜の熱膨張係数は、スパッタ法以外の方法を用いて形成された酸化アルミニウム膜や、スパッタ法を用いて形成された40nmよりも大きい厚みを有する酸化アルミニウム膜の熱膨張係数よりも小さくなる。つまり、スパッタ法を用いて形成された40nm以下の厚みを有する酸化アルミニウム膜の熱膨張係数は、陽極酸化されたアルミニウム膜の熱膨張係数よりも小さくなるので、スパッタ法を用いて形成された40nm以下の厚みを有する酸化アルミニウム膜は、陽極酸化されたアルミニウム膜と透明基板との間の熱膨張係数を有する。その結果、透明基板と陽極酸化されたアルミニウム膜との間に、スパッタ法を用いて40nm以下の厚みで酸化アルミニウム膜からなる熱膨張緩衝膜を形成すれば、容易に、陽極酸化されたアルミニウム膜にクラック(割れ)が発生するのを抑制することができる。
【0058】
図41および図42は、第2実施形態の第1変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための図である。この第2実施形態の第1変形例では、図41に示すように、透明基板91上に熱膨張緩衝膜92およびアルミニウム膜93を順次堆積した後、エッチングによりアルミニウム膜93のみならず、熱膨張緩衝膜92も除去することにより分離溝95を形成する。なお、分離溝95は、本発明の「溝部」の一例である。その後、図29〜図32に示した第2実施形態によるプロセスと同様のプロセスを用いて、図42に示す光学素子94が形成される。このように熱膨張緩衝膜92も除去して分離溝95を形成した場合にも、上記した第2実施形態と同様の効果を得ることができる。但し、この第2実施形態の第1変形例では、熱膨張緩衝膜92が除去されて分離溝95が形成されるので、熱膨張緩衝膜92を酸化チタンなどの導電性を有する材料により形成したとしても、分離溝95によって、隣接する素子領域が電気的に断線された状態になる。このため、この第2実施形態の第1変形例では、上記第2実施形態と異なり、熱膨張緩衝膜92を酸化チタンなどの導電性を有する材料により形成した場合にも、隣接する素子領域が電気的に断線されるのを防止するために、隣接する素子領域間に連結部を設ける必要がある。
【0059】
図43および図44は、第2実施形態の第2変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための図である。この第2実施形態の第2変形例では、図43に示すように、透明基板91上に熱膨張緩衝膜92およびアルミニウム膜93を順次堆積した後、エッチングによりアルミニウム膜93のみならず、熱膨張緩衝膜92も途中の深さまで除去することにより、分離溝95aを形成する。なお、分離溝95aは、本発明の「溝部」の一例である。その後、図29〜図32に示した第2実施形態によるプロセスと同様のプロセスを用いて、図44に示す光学素子96が形成される。このように熱膨張緩衝膜92の途中の深さまで達する分離溝95aを形成した場合にも、上記した第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
図45および図46は、第2実施形態の第3変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための図である。この第2実施形態の第3変形例では、図45に示すように、透明基板91上に熱膨張緩衝膜92およびアルミニウム膜93を順次堆積した後、エッチングによりアルミニウム膜93および熱膨張緩衝膜92のみならず、透明基板91も途中の深さまで除去することにより、分離溝95bを形成する。なお、分離溝95bは、本発明の「溝部」の一例である。その後、図29〜図32に示した第2実施形態によるプロセスと同様のプロセスを用いて、図46に示す光学素子97が形成される。このように透明基板91の途中の深さまで達する分離溝95bを形成した場合にも、上記した第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
(第3実施形態)
図47〜図54は、本発明の第3実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための平面図および断面図であり、図55は、本発明の第3実施形態による光学素子形成用ウェハを示した断面図であり、図56は、本発明の第3実施形態による光学素子を示した断面図である。まず、図47〜図56を参照して、第3実施形態による光学素子の製造プロセスについて説明する。
【0062】
この第3実施形態による光学素子の製造プロセスは、上記第1実施形態と異なり、透明基板とアルミニウム膜との間に透明導電膜を挿入した例について説明する。
【0063】
すなわち、この第3実施形態では、図47に示すように、サファイア基板からなる透明基板101上に、電子ビーム蒸着法、スパッタ法またはプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、約10nmの厚みを有する透明導電膜102を堆積した後、透明導電膜102上に、電子ビーム蒸着法またはスパッタ法を用いて、1μm〜10μmの厚みを有するアルミニウム膜103を堆積する。透明導電膜102は、たとえば、ITO(スズドープ酸化インジウム)、酸化亜鉛、酸化スズまたは酸化チタンから形成されている。この透明導電膜102は、陽極酸化の際に透明導電膜102を介してアルミニウム膜103に電力を供給するために設けられている。
【0064】
次に、図48に示すように、アルミニウム膜103の素子領域103a(図49参照)上にニッケル膜104を形成する。そして、図49に示すように、RIE法を用いて、ニッケル膜104をマスクとして、アルミニウム膜103の表面から透明導電膜102の上面までをエッチングすることによって、透明導電膜102の上面を露出させる。そして、ニッケル膜104を除去することによって、図50および図51に示すように、アルミニウム膜103の素子領域103a以外の領域に分離溝105を形成する。なお、分離溝105は、本発明の「溝部」の一例である。なお、この第3実施形態では、上記第1実施形態と異なり、図50に示すように、透明導電膜102を介してアルミニウム膜103に電力が供給されるので、アルミニウム膜103が電気的に断線された状態になることを防止するための連結部を形成する必要がない。
【0065】
次に、図52に示すように、三角格子状などの規則的に配列した凸部106aを有する金型106を素子領域103aに上方から押し付ける。これにより、図53に示すように、素子領域103a上に三角格子状などの規則的に配列された凹部103bが形成される。そして、アルミニウム膜103の陽極酸化を行うことにより、図54に示すように、細孔107aを有する酸化アルミニウム膜107が形成される。このときにも、透明導電膜102と酸化アルミニウム膜107との境界部分には、酸化されずに残った残留アルミニウム103cが僅かに発生する。これは、透明導電膜102自体に抵抗が存在するので、電圧降下が起こることに起因している。
【0066】
次に、この残留アルミニウム103cを酸化するために、図54に示した状態から水蒸気酸化を行う。なお、この第3実施形態の水蒸気酸化の条件は、陽極酸化後の残留アルミニウム103cの量が第1実施形態と比べて少ない分(図8および図54参照)、水蒸気酸化温度(第3実施形態では、約450℃)を低く設定している以外、上記第1実施形態と同様である。すなわち、第3実施形態の水蒸気酸化は、窒素ガスをキャリアガスとして、毎分2リットルの流量の水蒸気を用いて、1気圧(大気圧)の水蒸気圧力および約450℃の温度条件下で行う。この第3実施形態では、水蒸気酸化温度を450℃の比較的低い温度に設定することにより、透明基板101の熱膨張係数と酸化アルミニウム膜107の熱膨張係数との差に起因して酸化アルミニウム膜107にクラック(割れ)が発生するのが抑制される。
【0067】
ここで、第3実施形態の製造プロセスでは、上記した水蒸気酸化によって、透明基板101と酸化アルミニウム膜107との境界部分の残留アルミニウム103cの酸化が行われる。このとき、透明基板101上の中央付近の残留アルミニウム103cにも分離溝105を介して酸素が供給されることにより、透明基板101と酸化アルミニウム膜107との境界部分に存在するほとんどすべての残留アルミニウム103cが酸化される。そして、図9に示すように、高い透過率を有する光学素子形成用ウェハ108が形成される。この光学素子形成用ウェハ108は、複数の分離溝105を有している。そして、光学素子形成用ウェハ108を分離溝105(図55中の点線の位置)で分離(切断)することにより、図56に示すように、残留アルミニウム103cがほとんど存在しない高い透過率を有する光学素子109が形成される。この光学素子109は、素子形成領域としての酸化アルミニウム膜107の周囲の領域の厚みが酸化アルミニウム膜107の厚みよりも小さくなるように、端部に段差部109aを有している。
【0068】
図57は、第3実施形態による光学素子をハウジングに固定した状態を示した断面図である。図57を参照して、この第3実施形態による光学素子の製造プロセスを用いて形成された光学素子109をハウジング111に固定する場合も、上記した第1実施形態と同様に、光学素子109をハウジング111の載置部111aに載置する。その後、上方から板バネ112で光学素子109の段差部109aを押さえるとともに、ネジ113で固定する。このように、第3実施形態による光学素子109においても、図57に示すように、光学素子109の端部に酸化アルミニウム膜107が形成されていないので、固定の際に板バネ112により酸化アルミニウム膜107(素子領域)が押さえられることがない。これにより、板バネ112の押圧力や、温度変化などに起因して光学素子109の酸化アルミニウム膜107(素子領域)が破損するのを抑制することが可能である。また、第3実施形態による光学素子109を、板バネ112を用いずに接着剤で固定する場合にも、段差部109aが存在することにより、接着剤が酸化アルミニウム膜107に付着するのを容易に防止することが可能である。このため、接着剤の塗布箇所を特に限定する必要がないので、光学素子109の固定作業を容易に行うことが可能である。
【0069】
なお、この第3実施形態による透明基板101と酸化アルミニウム膜107との間に形成される透明導電膜102(挿入膜)の膜厚にも、上記した第2実施形態の熱膨張緩衝膜72の膜厚と同様の上記式(9)などの限定条件が適用される。この場合、挿入膜(透明導電膜102)の屈折率をnとし、波長λが0.4μmのときの挿入膜(透明導電膜102)の実効屈折率をNとし、Nを与える導波路膜厚をtとした場合、上記式(9)は、以下の式(10)のようになる。
【0070】
= [tan−1{(N−n1/2/(n−N1/2
+tan−1{(N−n1/2/(n−N1/2}]
/(n−N1/2 ・・・ (10)
上記第3実施形態による光学素子の製造方法では、透明基板101と酸化アルミニウム膜107との間に透明導電膜102を形成することによって、陽極酸化の際に透明導電膜102を介してアルミニウム膜103に電力が供給されるので、アルミニウムが断線するのを抑制することができる。これにより、陽極酸化後の残留アルミニウム103cの量を減少させることができるので、水蒸気酸化を比較的低温(約450℃)で行うことができる。その結果、透明基板101と酸化アルミニウム膜107との間の熱膨張係数の差に起因する酸化アルミニウム膜107のクラック(割れ)の発生を抑制することができる。
【0071】
図58および図59は、第3実施形態の第1変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための図である。この第3実施形態の第1変形例では、図58に示すように、透明基板121上に透明導電膜122およびアルミニウム膜123を順次堆積した後、エッチングによりアルミニウム膜123のみならず、透明導電膜122も除去することにより分離溝125を形成する。なお、分離溝125は、本発明の「溝部」の一例である。その後、図52〜図55に示した第3実施形態によるプロセスと同様のプロセスを用いて、図59に示す光学素子124が形成される。このように透明導電膜122を除去して分離溝125を形成した場合にも、上記した第3実施形態と同様の効果を得ることができる。但し、この第3実施形態の第1変形例では、透明導電膜122が除去されて分離溝125が形成されるので、分離溝125によって、隣接する素子領域が電気的に断線された状態になる。このため、この第3実施形態の第1変形例では、上記第3実施形態と異なり、隣接する素子領域が電気的に断線されるのを防止するために、隣接する素子領域間に連結部を設ける必要がある。
【0072】
図60および図61は、第3実施形態の第2変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための図である。この第3実施形態の第2変形例では、図60に示すように、透明基板121上に透明導電膜122およびアルミニウム膜123を順次堆積した後、エッチングによりアルミニウム膜123のみならず、透明導電膜122も途中の深さまで除去することにより、分離溝125aを形成する。なお、分離溝125aは、本発明の「溝部」の一例である。その後、図52〜図55に示した第3実施形態によるプロセスと同様のプロセスを用いて、図61に示す光学素子126が形成される。このように透明導電膜122の途中の深さまで達する分離溝125aを形成した場合にも、上記した第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
図62および図63は、第3実施形態の第3変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための図である。この第3実施形態の第3変形例では、図62に示すように、透明基板121上に透明導電膜122およびアルミニウム膜123を順次堆積した後、エッチングによりアルミニウム膜123および透明導電膜122のみならず、透明基板121も途中の深さまで除去することにより、分離溝125bを形成する。なお、分離溝125bは、本発明の「溝部」の一例である。その後、図52〜図55に示した第3実施形態によるプロセスと同様のプロセスを用いて、図63に示す光学素子127が形成される。このように透明基板121の途中の深さまで達する分離溝125bを形成した場合にも、上記した第3実施形態と同様の効果を得ることができる。但し、この第3実施形態の第3変形例では、透明導電膜122のみならず、透明基板121の途中の深さまで除去することにより分離溝125bが形成されるので、分離溝125bによって、隣接する素子領域が電気的に断線された状態になる。このため、この第3実施形態の第3変形例では、上記第3実施形態と異なり、隣接する素子領域が電気的に断線されるのを防止するために、隣接する素子領域間に連結部を設ける必要がある。
【0074】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0075】
たとえば、上記実施形態では、陽極酸化後に水蒸気酸化を行う例を示したが、本発明はこれに限らず、水蒸気酸化に代えて、熱酸化またはプラズマ酸化を行うようにしてもよい。熱酸化を行う場合には、酸素雰囲気中で800℃〜1000℃の温度条件下で行う。なお、熱酸化の温度は、約900℃に設定することが好ましい。また、プラズマ酸化を行う場合には、2.45GHzの周波数および500Wの電力のマイクロ波を用いて、酸素とアルゴンとの混合気体の雰囲気中で300℃〜600℃の温度条件下で行う。なお、プラズマ酸化の温度は、約400℃に設定することが好ましい。
【0076】
また、上記実施形態では、アルミニウム膜の表面に金型を押し付けることにより形成された、三角格子状などの規則的な配列の細孔を有する酸化アルミニウム膜に本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限らず、アルミニウム膜の表面に金型を押し付けずに形成された、ランダムな配列の細孔を有する酸化アルミニウム膜に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。
【0077】
また、上記第2および第3実施形態では、式(9)および式(10)を用いて、熱膨張緩衝膜および透明導電膜の膜厚を制御することにより、素子形成領域の周囲に段差部を有する光学素子の透過率を向上させる例を示したが、本発明はこれに限らず、式(9)および式(10)を用いて、熱膨張緩衝膜および透明導電膜の膜厚を制御することによって、素子形成領域の周囲に段差部を有さない光学素子の透過率を向上させてもよい。
【0078】
また、上記第2および第3実施形態では、1層構造の熱膨張緩衝膜および透明導電膜を、透明基板とアルミニウム膜との間に挿入する例を示したが、本発明はこれに限らず、多層構造の熱膨張緩衝膜および透明導電膜を、透明基板とアルミニウム膜との間に挿入してもよい。この場合、多層構造を構成している各々の熱膨張緩衝膜および透明導電膜の膜厚を制御することにより、図39に示した光学素子の透過率の周期的変動をより小さくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための平面図である。
【図5】図4中の300−300線に沿った断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態による光学素子形成用ウェハを示した断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態による光学素子を示した断面図である。
【図11】図10に示した第1実施形態による光学素子をハウジングに固定した状態を示した断面図である。
【図12】図10に示した第1実施形態による光学素子に対応する比較例1による光学素子をハウジングに固定した状態を示した断面図である。
【図13】比較例2による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図14】比較例2による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図15】比較例3による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図16】比較例3による光学素子を示した断面図である。
【図17】本発明の第1実施形態の第1変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図18】本発明の第1実施形態の第1変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図19】本発明の第1実施形態の第2変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図20】本発明の第1実施形態の第2変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図21】本発明の第1実施形態の第2変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図22】本発明の第1実施形態の第3変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図23】本発明の第1実施形態の第3変形例による光学素子を示した断面図である。
【図24】本発明の第2実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図25】本発明の第2実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図26】本発明の第2実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図27】本発明の第2実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための平面図である。
【図28】図27中の400−400線に沿った断面図である。
【図29】本発明の第2実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図30】本発明の第2実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図31】本発明の第2実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図32】本発明の第2実施形態による光学素子形成用ウェハを示した断面図である。
【図33】本発明の第2実施形態による光学素子を示した断面図である。
【図34】図33に示した第2実施形態による光学素子をハウジングに固定した状態を示した断面図である。
【図35】透明基板と酸化アルミニウム膜との間に形成された挿入膜の膜厚と透過率との関係を説明するための図である。
【図36】透明基板と酸化アルミニウム膜との間に形成された挿入膜の膜厚に対する実効屈折率の変化を表したグラフである。
【図37】透明基板と酸化アルミニウム膜との間に形成された挿入膜の膜厚と透過率との関係を説明するための図である。
【図38】透明基板と酸化アルミニウム膜との間に形成された挿入膜を膜厚100nmの酸化チタンとした場合の透過率シミュレーション結果である。
【図39】透明基板と酸化アルミニウム膜との間に形成された挿入膜を膜厚5nmの酸化チタンとした場合の透過率シミュレーション結果である。
【図40】TEモードの光およびTMモードの光に対する膜厚と実効屈折率との関係を説明するためのグラフである。
【図41】本発明の第2実施形態の第1変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図42】本発明の第2実施形態の第1変形例による光学素子を示した断面図である。
【図43】本発明の第2実施形態の第2変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図44】本発明の第2実施形態の第2変形例による光学素子を示した断面図である。
【図45】本発明の第2実施形態の第3変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図46】本発明の第2実施形態の第3変形例による光学素子を示した断面図である。
【図47】本発明の第3実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図48】本発明の第3実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図49】本発明の第3実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図50】本発明の第3実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための平面図である。
【図51】図50中の500−500線に沿った断面図である。
【図52】本発明の第3実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図53】本発明の第3実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図54】本発明の第3実施形態による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図55】本発明の第3実施形態による光学素子形成用ウェハを示した断面図である。
【図56】本発明の第3実施形態による光学素子を示した断面図である。
【図57】図56に示した第3実施形態による光学素子をハウジングに固定した状態を示した断面図である。
【図58】本発明の第3実施形態の第1変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図59】本発明の第3実施形態の第1変形例による光学素子を示した断面図である。
【図60】本発明の第3実施形態の第2変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図61】本発明の第3実施形態の第2変形例による光学素子を示した断面図である。
【図62】本発明の第3実施形態の第3変形例による光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図63】本発明の第3実施形態の第3変形例による光学素子を示した断面図である。
【図64】従来の光学素子の製造プロセスにおける陽極酸化法を説明するための図である。
【図65】従来の光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図66】従来の光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図67】従来の光学素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図68】従来の光学素子形成用ウェハを示した断面図である。
【図69】従来の光学素子を示した断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1、41、51、61、71、91、101、121 透明基板
2、42、53、62、73、93、103、123 アルミニウム膜
2a、42a、73a、103a 素子領域
4、44、54、64、75、95、95a、95b、105、125、125a、125b 分離溝(溝部)
7、78、108 光学素子形成用ウェハ
8、63、79、94、96、97、109、124、126、127 光学素子
72、92 熱膨張緩衝膜
102、122 透明導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上にアルミニウム膜を堆積する工程と、
前記アルミニウム膜の素子領域以外の領域を除去することにより溝部を形成する工程と、
除去されずに残った前記アルミニウム膜に陽極酸化を施す工程と、
前記陽極酸化されたアルミニウム膜に熱酸化、水蒸気酸化およびプラズマ酸化のうちの少なくとも1つの酸化処理を施す工程と、
前記酸化処理が施されたアルミニウム膜を前記素子領域以外の溝部で分離する工程とを備えた、光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記透明基板は、サファイア基板を含む、請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記透明基板と、前記陽極酸化されたアルミニウム膜との間に、前記陽極酸化されたアルミニウム膜の熱膨張係数と前記透明基板の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する熱膨張緩衝膜を形成する工程をさらに備える、請求項1または2に記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記熱膨張緩衝膜を形成する工程は、スパッタ法を用いて、40nm以下の厚みを有する酸化アルミニウム膜からなる熱膨張緩衝膜を形成する工程を含む、請求項3に記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
前記陽極酸化されたアルミニウム膜の屈折率をnとし、前記熱膨張緩衝膜の屈折率をnとし、前記透明基板の屈折率をnとするとともに、前記陽極酸化により前記アルミニウム膜に形成された凹部の周期をL(μm)とし、前記熱膨張緩衝膜の実効屈折率をNとする場合に、前記熱膨張緩衝膜の厚みは、以下の式(1)および式(2)で示すt未満の厚みに設定されている、請求項3または4に記載の光学素子の製造方法。
= [tan−1{(N−n1/2/(n−N1/2
+tan−1{(N−n1/2/(n−N1/2}]
/(n−N1/2 ・・・ (1)
= 0.4/L ・・・ (2)
【請求項6】
前記溝部を形成する工程は、隣接する素子領域間で連結部を有するように溝部を形成する工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
【請求項7】
前記透明基板と、前記陽極酸化されたアルミニウム膜との間に、透明導電膜を形成する工程をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
【請求項8】
前記陽極酸化されたアルミニウム膜の屈折率をnとし、前記透明導電膜の屈折率をnとし、前記透明基板の屈折率をnとするとともに、前記陽極酸化により前記アルミニウム膜に形成された凹部の周期をL(μm)とし、前記透明導電膜の実効屈折率をNとする場合に、前記透明導電膜の厚みは、以下の式(3)および式(4)で示すt未満の厚みに設定されている、請求項7に記載の光学素子の製造方法。
= [tan−1{(N−n1/2/(n−N1/2
+tan−1{(N−n1/2/(n−N1/2}]
/(n−N1/2 ・・・ (3)
= 0.4/L ・・・ (4)
【請求項9】
透明基板と、
前記透明基板上に形成され、陽極酸化されたアルミニウム膜とを備え、
前記陽極酸化されたアルミニウム膜は、前記陽極酸化されたアルミニウム膜の素子領域以外の領域に溝部を含み、
前記透明基板および前記アルミニウム膜は、前記溝部に沿って分離可能なように構成されている、光学素子形成用ウェハ。
【請求項10】
透明基板と、
前記透明基板上に形成され、陽極酸化されたアルミニウム膜とを備え、
前記陽極酸化されたアルミニウム膜を含む素子領域の周囲に、前記素子領域の厚みよりも小さい厚みの領域を含む、光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【公開番号】特開2006−65205(P2006−65205A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250289(P2004−250289)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】