説明

光学素子の製造方法

【課題】ナノメートルオーダーの高精度で金属微粒子や金属微小開口のサイズや配列を有する、高感度な局在表面プラズモン共鳴センサを、製造単価の安い製造方法を用いて作成することを目的としている。
【解決手段】本発明は、第1の部材からなる誘電体の基板の少なくとも一つの表面に、該表面の法線方向に対し、外側に突出した突起、あるいは、内側に窪んだ窪みを形成する工程と、前記突起部あるいは前記窪みに対し、前記法線及び前記表面に対し斜め方向から第2の材料をからなる膜を形成する工程と、を有し、少なくとも前記突起部と隣接した前記表面の前記第1の部材が露出した領域、あるいは、前記窪みに前記第1の部材が露出した領域が形成されることを特徴とする光学素子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療や健康診断、食品の検査に用いられるバイオセンサを含む化学センサに用いられる光学素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年医療における診断や食物の検査等における需要がますます増大し、小型で高速センシングが可能で、且つ、低コストなバイオセンサの開発が求められている。このため、電極やFETを用いた電気化学的な手法を利用したバイオセンサが半導体加工技術を応用し、製造されてきた。
【0003】
しかしながら、さらなる集積化、低コスト化および測定環境を選ばないセンサが求められ、表面プラズモン共鳴をトランスジューサとして用いたバイオセンサが有望視されている。例えば、全反射型プリズム表面に設けた金属薄膜に発生させた表面プラズモン共鳴を用い、抗原抗体反応における抗原の吸着の有無など、物質の吸着の有無を検出するものである。
【0004】
最近、高感度なセンシングを目的として、金属微粒子や金属微小開口を用いた局在表面プラズモン共鳴を生じる光学素子をセンサとして用いる提案がなされている。特許文献1、2等に提案されている局在表面プラズモン共鳴センサは、基板上に形成した金属微粒子や金属開口に光を照射し、透過光を測定することにより、金属微粒子、微小開口近傍の媒質の変化を検出するものである。
【特許文献1】特開2000−356587号公報
【特許文献2】特開2003−270132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記バイオセンサにおいて、極微量のタンパク質を検出することによる早期の病状段階での医療診断や病原性大腸菌O157等非常に少ない数の細菌検出の必要性のため、いっそうの高感度化が望まれている。
【0006】
上記のような局在表面プラズモン共鳴センサを高感度化するためには、ナノメートルオーダーの高精度で金属微粒子や金属微小開口のサイズや配列を制御する必要がある。このためのナノメートル加工装置として、電子線加工装置や集束イオンビーム加工装置、半導体露光装置を用いることもできるが、このような高額装置を用いたのでは、センサ用途の光学素子製造コストが大きくなってしまう。医療用のバイオセンサでは、検体ごとの使い捨てセンサ素子を用いることも多く、一素子当たりの製造単価の安い、よりローコストなセンサ用途の光学素子の製造方法の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の部材からなる誘電体基板の少なくとも一つの表面に、該表面の法線方向に対し、外側に突出した突起、あるいは、内側に窪んだ窪みを形成する工程と、
前記突起部あるいは前記窪みに対し、前記法線及び前記表面に対し斜め方向から第2の材料をからなる膜を形成する工程と、を有し、
少なくとも前記突起部と隣接した前記表面の前記第1の部材が露出した領域、あるいは、
前記窪みに前記第1の部材が露出した領域が形成されることを特徴とする光学素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、基板材料にナノメートルサイズの突起や窪みを形成し、これに対し斜め方向から蒸着を行うことで、ナノメートルサイズの配列の金属微粒子構造あるいは金属微小開口を形成するものである。
【0009】
本発明の製造方法を用いることで、電子線加工装置、集束イオンビーム加工装置及び半導体露光装置を用いることなしに、ナノメートルサイズの配列構造を形成することができる。このため、医療用のバイオセンサの素子製造単価を安くでき、ローコストなセンサ用途の光学素子が実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の局在表面プラズモン共鳴を生じる光学素子を用いるセンサの製造方法について説明する。
【0011】
局在表面プラズモン共鳴を生じる光学素子を用いるセンサは、第1の部材からなる誘電体基板の少なくとも一つの表面に、該表面の法線方向に対し、外側に突出した突起、あるいは、内側に窪んだ窪みを形成する工程と、
突起部あるいは窪みに対し、法線及び表面に対し斜め方向から第2の材料をからなる膜を形成する工程と、を有し、
少なくとも突起部と隣接した表面の第1の部材が露出した領域、あるいは、窪みに第1の部材が露出した領域が形成されている。
【0012】
あるいは、第1の部材からなる誘電体の基板の少なくとも一つの表面に、該表面の法線方向に対し、外側に突出した突起、あるいは、内側に窪んだ窪みを形成する工程と、
突起部あるいは窪みに対し、法線及び表面に対し斜め方向から第2の材料をからなる膜を形成する工程と、更に、
第2の材料からなる膜を形成後、金属材料からなる第3の材料を成膜する工程と、
その後、第2の材料を除去する工程と、を有し、
第2の材料を除去する際に、第2の材料からなる膜上に形成されている第3の材料も同時に除去することで、
少なくとも突起部と隣接した表面の第1の部材が露出した領域、あるいは、窪みに第1の部材が露出した領域が形成されている。
【0013】
第1の部材からなる誘電体の基板の表面に、突起あるいは窪みを形成する工程は、型上に形成された、突起あるいは窪みの形状の反転形状を可塑性材料からなる基板に転写する工程により得ることができる。
【0014】
本発明の光学素子の4種類の製造方法について、以下、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図2は本発明の第1の光学素子の基板を製造する第1の工程の説明図である。第1の工程は、型に形成された窪み形状(窪み)を基板に転写する転写工程である。例えば、凹んだ窪み構造201を有する型202と誘電体の可塑性材料203とを用意する(図2(a)参照)。次に、型202を可塑性材料203に押し付ける(図2(b)参照)、あるいは、射出成形する、ことにより、可塑性材料203の表面に型202の窪み構造201が転写され、棒状突起204が形成される(図2(c)参照)。
【0016】
型202は、ニッケル、タンタル等からなる金属金型、あるいは、シリコン、シリコンカーバイド、石英、ガラス等からなる半導体や誘電体製の型、テフロンからなる樹脂製の型であって良い。可塑性材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等からなる熱可塑性材料、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等からなる熱硬化材料、ウレタンアクリレ−ト系樹脂、エポキシアクリレ−ト系樹脂、エステルアクリレ−ト系樹脂、アクリレ−ト系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、オキセタン系樹脂等からなる光硬化材料、PMMA、エポキシ樹脂等からなる重合材料あるいは、アクリル樹脂、ポリスチレン等からなる溶媒可溶材料を使うことができる。
【0017】
図1は本発明の第1の光学素子の第2の工程の製造方法の説明図である。第1の工程で作製した棒状突起101を有する基板部材102(図1(a)参照)を用意する。
【0018】
基板部材102に対し、基板法線方向と45°程度の斜めの方向から金、銀等のプラズモンを励起しやすい金属材料103を蒸着する(図1(b)参照)。これにより、棒状突起101の隣接部に金属微小開口104が形成される(図1(c)参照)。
【0019】
例えば、棒状突起の形状として、直径100nm、高さ150nmの円柱であり、斜め蒸着角度を45°、金属材料膜厚を50nmとすると、大きさが100nm程度の三日月形状の開口が形成される。ここで、棒状突起の断面形状やその大きさ、高さ、斜め蒸着角度、金属材料膜厚、基板面内における斜め蒸着の方向を変化させることにより、形成される開口の形状や大きさを変化させることができる。センサ用途の局在プラズモン光学素子に用いる金属微小開口の大きさとしては、10nmから500nmの大きさの範囲から選択することが好適である。
【0020】
斜め蒸着の基板法線方向とのなす角度をθ、(基板法線方向の)蒸着膜厚をt、形成する金属微小開口104の幅をd(蒸着方向と基板法線方向を含む面内)、棒状突起の高さをhとすると、
d=(h−t)tanθ
の関係となる。また、蒸着方向と基板法線方向を含む平面の法線方向の金属微小開口104の幅は同方向の棒状突起の幅と同じとなる。これらの関係により、所望の金属微小開口サイズに応じて、蒸着角度、蒸着膜厚、棒状突起の大きさを決定することができる。
【0021】
図3(a)に棒状突起301の隣接部に本発明の第1の光学素子作製方法によって作製された金属微小開口302を有する光学素子を示す。
【0022】
図4は本発明の第2の光学素子の基板を製造する第1の工程の説明図である。図2では、型に形成された窪み構造を基板に転写するものであるに対し、図4は、型に形成された棒状突起構造(突起)を基板に転写する転写工程である。図4においては、突き出た棒状突起構造401を有する型402と可塑性材料403とを用意する(図4(a)参照)。次に、型402を可塑性材料403に押し付け(図4(b)参照)、成型することにより、可塑性材料403の表面に凹んだ窪み構造404を形成する(図4(c)参照)。
【0023】
尚、図2で説明したように、射出成型法を用いることもできる。
【0024】
図5は第2の工程の説明図である。第1の工程で作製した窪み構造501を有する基板部材502(図5(a)参照)に対し、基板法線方向と45°程度の斜めの方向から金、銀等のプラズモンを励起しやすい金属材料503を蒸着する(図5(b)参照)。これにより、棒状突起501の隣接部に金属微小開口504が形成される(図5(c)参照)。
【0025】
例えば、窪み構造の形状として、直径100nm(深さ150nm程度)の穴であり、斜め蒸着角度を45°、金属材料膜厚を50nmとすると、短軸50nm、長軸100nm程度の楕円形状の開口が形成される。ここで、窪み構造の形状やその大きさ、斜め蒸着角度、金属材料膜厚、基板面内における斜め蒸着の方向を変化させることにより、形成される開口の形状や大きさを変化させることができる。センサ用途の局在プラズモン光学素子に用いる金属微小開口の大きさとしては、10nmから500nmの大きさの範囲から選択することが好適である。
【0026】
ここで、斜め蒸着の基板法線方向とのなす角度をθ、(基板法線方向の)蒸着膜厚をt、形成する金属微小開口504の幅をd(蒸着方向と基板法線方向を含む面内)、窪み構造501の幅をDとすると、
d=D−t×tanθ
の関係となる。また、蒸着方向と基板法線方向を含む平面の法線方向の金属微小開口504の幅は同方向の棒状突起の幅と同じとなる。これらの関係により、所望の金属微小開口サイズに応じて、蒸着角度、蒸着膜厚、窪み構造の大きさを決定することができる。
【0027】
本発明の第2の光学素子作製方法によって、窪み構造303の一部に作製された金属微小開口304を有する光学素子を図3(b)に示す。
【0028】
図6は本発明の第3の光学素子の第2の工程の製造方法の説明図である。なお、第1の工程は図1に示す第1の光学素子の製造方法の第1の工程と同様である。第1の工程で作製した棒状突起601を有する基板部材602(図6(a)参照)に対し、基板法線方向と45°程度の斜めの方向から、SiO2、Al23等の後のエッチングで除去可能な材料603を蒸着(例えばEB蒸着法を用いる)する(図6(b)参照)。次に、金、銀等のプラズモンを励起しやすい金属材料604を垂直方向から蒸着する(図6(c)参照)。その後、材料603からなる膜を、エッチング液を用い、ウエットエッチング法を用いて除去する。ここで用いるエッチング液として、例えば、材料603がSiO2の場合はHF水溶液、Al23の場合はH3PO4水溶液を用いる。材料603がエッチング除去される際に、材料603上に形成されている金属材料604も同時に除去され、棒状突起601の隣接部に金属微粒子構造605が形成される(図6(d)参照)。
【0029】
例えば、棒状突起の形状として、直径100nm、高さ150nmの円柱であり、斜め蒸着角度を45°、エッチングで除去可能な材料603の膜厚を50nmとすると、大きさが100nm程度の三日月形状の金属微粒子構造が形成される。ここで、棒状突起の断面形状やその大きさ、高さ、斜め蒸着角度、材料603の膜厚、基板面内における斜め蒸着の方向を変化させることにより、形成される金属微粒子の形状や大きさを変化させることができる。センサ用途の局在プラズモン光学素子に用いる金属微粒子の大きさとしては、10nmから500nmの大きさの範囲から選択することが好適である。
【0030】
斜め蒸着の基板法線方向とのなす角度をθ、(基板法線方向の)材料603の蒸着膜厚をt、形成する金属微粒子605の幅をd(蒸着方向と基板法線方向を含む面内)、棒状突起の高さをhとすると、
d=(h−t)tanθ
の関係となる。また、蒸着方向と基板法線方向を含む平面の法線方向の金属微粒子605の幅は同方向の棒状突起の幅と同じとなる。これらの関係により、所望の金属微粒子サイズに応じて、蒸着角度、材料603及び金属材料の蒸着膜厚、棒状突起の大きさを決定することができる。
【0031】
ここで、材料603の膜厚の下限としては、金属材料604の下にエッチング液が染み込み、材料603が溶解することが可能な膜厚である必要があり、具体的には20nm以上、好ましくは50nm以上であることが望ましい。膜厚の上限としては、棒状突起を埋めてしまわない程度、すなわち、突起の高さ以下である必要がある。
【0032】
図8(a)に本発明の第3の光学素子の製造方法によって製造された棒状突起801の隣接部に金属微粒子構造802を有する光学素子を示す。
【0033】
図7は本発明の第4の光学素子の第2の工程の製造方法の説明図である。なお、第1の工程は、図4に示す第2の光学素子の製造方法の第1の工程と同様である。第1の工程で作製した窪み構造701を有する基板部材702(図7(a)参照)に対し、基板法線方向と45°程度の斜めの方向から、SiO2あるいはAl23等の後のエッチングで除去可能な材料703を蒸着(例えばEB蒸着法を用いる)する(図7(b)参照)。次に、金、銀等のプラズモンを励起しやすい金属材料704を垂直方向から蒸着する(図7(c)参照)。その後、材料703からなる膜をエッチング除去する。ここで用いるエッチング液として、例えば材料703がSiO2の場合はHF水溶液、Al23の場合はH3PO4水溶液を用いる。材料703がエッチング除去される際に、材料703上に形成されている金属材料704も同時に除去され、窪み構造701の一部に金属微粒子構造705が形成される(図7(d)参照)。
【0034】
例えば、窪み構造の形状として、直径100nm(高さ150nm程度)の穴であり、斜め蒸着角度を45°、エッチングで除去可能な材料703の膜厚を50nmとすると、短軸50nm、長軸100nm程度の楕円形状の金属微粒子構造が形成される。ここで、窪み構造の形状やその大きさ、斜め蒸着角度、材料603及び金属材料の膜厚、基板面内における斜め蒸着の方向を変化させることにより、形成される金属微粒子の形状や大きさを変化させることができる。センサ用途の局在プラズモン光学素子に用いる金属微粒子の大きさとしては、10nmから500nmの大きさの範囲から選択することが好適である。
【0035】
斜め蒸着の基板法線方向とのなす角度をθ、(基板法線方向の)材料703の蒸着膜厚をt、形成する金属微粒子705の幅をd(蒸着方向と基板法線方向を含む面内)、窪み構造701の幅をDとすると、
d=D−t×tanθ
の関係となる。また、蒸着方向と基板法線方向を含む平面の法線方向の金属微粒子705の幅は同方向の窪み構造の幅と同じとなる。これらの関係により、所望の金属微粒子サイズに応じて、蒸着角度、材料703及び金属材料の蒸着膜厚、窪み構造の大きさを決定することができる。
【0036】
ここで、材料703の膜厚の下限としては、金属材料704の下にエッチング液が染み込み、材料703が溶解することが可能な膜厚である必要があり、具体的には20nm以上、好ましくは50nm以上であることが好ましい。膜厚の上限としては、窪み構造の開口部を塞いでしまわない程度、すなわち、窪み構造701の幅をD、蒸着角度をθとしたとき、D/tanθ以下である必要がある。
【0037】
図8(b)に本発明の第4の光学素子作製方法によって作製された窪み構造803の一部に金属微粒子構造804を有する光学素子を示す。
【0038】
本発明の製造方法を用いて作製した光学素子をセンサ素子として用いた化学センシング装置を、図9を用いて説明する。
【0039】
タングステンランプや発光ダイオード等の光源901から照射される波長が500nmから1300nm程度の照射光906を、コリメータレンズ902を介して、暗視野照明の配置でセンサ素子905を照射する。センサ素子905の表面上には、前述の図3や図8に示したような例えば、縦200nm、横50nm高さ50nmの金属微粒子や金属微小開口が設けられており、金属微粒子や金属微小開口には、例えば、抗体分子等の捕捉体物質が結合している。センサ素子905は検体液903中に浸漬される。センサ素子905は、検体液903中の抗原分子等の標的物質904と反応し、結合を生じる。センサ素子905中の金属微粒子や金属微小開口に結合している捕捉体物質が検体液903中の標的物質904と反応し結合を生じると、金属微粒子や金属微小開口における局在プラズモン共鳴条件に変化が生じる。この結果、反応の前後で透過スペクトルのピーク波長位置や吸光度の大きさに変化を生じる。そこで、センサ素子905からの散乱光907を集光レンズ908によって集光し、結合が生じる前後の透過スペクトル変化の著しい波長領域のみを選択的に透過させる干渉フィルタ909を通した後、光検出器910に入射させ、検出信号911とする。
【0040】
この検出信号911の強度からセンサ素子905の金属微粒子近傍への標的物質の結合の程度が求められ、これから検体液903中の標的物質の濃度を得ることができる。
【0041】
尚、干渉フィルタ909の代わりに分光器を用い、透過スペクトルのシフト量を測定するようにしても良い。
【0042】
センサ素子の捕捉体物質と標的物質の組み合わせとしては、酵素センサ、微生物センサ、オルガネラセンサ、組織センサ、免疫センサ、酵素免疫センサ、バイオアフィニティセンサ等のバイオセンサを含む化学センサで用いられる材料を用いることができる。
【0043】
本発明のセンサ素子をマイクロ化学分析システム(μ−TAS: Micro Total Analysis System や Lab−on−a−chipとも呼ばれる)やDNAチップやプロテインチップに一体形成してもよい。この場合、図1や図4に示した第1の工程において、同時にμ−TASやDNAチップ、プロテインチップに必要な構造を形成すると、ローコストに高機能なセンサ素子を実現できる。
【0044】
本発明の製造法によって製造される光学素子の金属薄膜の金属材料としては、金属一般から選択できるが、特に、金、銀、銅およびアルミニウムからなる群から選ばれた金属材料は、発生する表面プラズモンの強度が大きく、光学素子の材料として好適である。中でも、金は可視域全般から近赤外域にわたって局在プラズモン共鳴に起因するピークを有するため、可視光や近赤外光を用いて検出するセンサ用途の光学素子を構成するには最適である。また、所定の構成比とした金、銀、銅およびアルミニウムからなる群から選ばれた2以上の金属材料からなる合金を用いることにより、透過スペクトルのピーク波長の位置を近紫外領域から近赤外領域の間で調整することが可能である。
【0045】
上記の記載では、本発明の製造方法で製造される光学素子の用途として、センサ素子を例に挙げて説明を行ったが、この光学素子の用途はこれに制限されるものではない。例えば、形成された金属微粒子構造や金属微小開口構造に生じる局在プラズモン共鳴に起因する透過スペクトルを利用する光学フィルタに用いることもできる。また、形成された金属微粒子や金属微粒子構造の形状異方性を利用した偏光板や位相板に用いることもできる。さらに、形成された金属微粒子構造や金属微小開口構造に電磁波が照射された際に電磁波の磁界成分や電界成分に対する特異な応答特性(誘電率や透磁率が負の値となる)を利用するメタマテリアルと呼ばれる光学素子に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の光学素子の製造方法を示す図である。
【図2】本発明の第1の光学素子及び第3の光学素子で用いる基板の製造方法を示す図である。
【図3】本発明の第1の光学素子及び第2の光学素子を示す図である。
【図4】本発明の第2の光学素子及び第4の光学素子で用いる基板の製造方法を示す図である。
【図5】本発明の第2の光学素子の製造方法を示す図である。
【図6】本発明の第3の光学素子の製造方法を示す図である。
【図7】本発明の第4の光学素子の製造方法を示す図である。
【図8】本発明の第3の光学素子及び第4の光学素子を示す図である。
【図9】本発明の製造方法を用いて製造した光学素子をセンサ素子として用いた化学センシング装置を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
101 棒状突起
102 基板部材
103 金属材料
104 金属微小開口
201 窪み構造
202 型
203 可塑性材料
204 棒状突起
301 棒状突起
302 金属微小開口
303 窪み構造
304 金属微小開口
401 棒状突起構造
402 型
403 可塑性材料
404 窪み構造
501 窪み構造
502 基板部材
503 金属材料
504 金属微小開口
601 棒状突起
602 基板部材
603 エッチングで除去可能な材料
604 金属材料
605 金属微粒子構造
701 窪み構造
702 基板部材
703 エッチングで除去可能な材料
704 金属材料
705 金属微粒子構造
801 棒状突起
802 金属微粒子構造
803 窪み構造
804 金属微粒子構造
901 光源
902 コリメータレンズ
903 検体液
904 標的物質
905 センサ素子
906 照射光
907 散乱光
908 集光レンズ
909 干渉フィルタ
910 光検出器
911 検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材からなる誘電体基板の少なくとも一つの表面に、該表面の法線方向に対し、外側に突出した突起、あるいは、内側に窪んだ窪みを形成する工程と、
前記突起部あるいは前記窪みに対し、前記法線及び前記表面に対し斜め方向から第2の材料をからなる膜を形成する工程と、を有し、
少なくとも前記突起部と隣接した前記表面の前記第1の部材が露出した領域、あるいは、
前記窪みに前記第1の部材が露出した領域が形成されることを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記第2の材料が金属材料であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記金属材料が、金、銀、銅およびアルミニウムからなる群から選ばれた金属材料、あるいは、前記群から選ばれた2以上の金属材料からなる合金であることを特徴とする請求項2に記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記第2の材料からなる膜を形成後、金属材料からなる第3の材料を成膜する工程と、
その後、前記第2の材料を除去する工程と、を有し、
前記第2の材料を除去する際に、前記第2の材料からなる膜上に形成されている第3の材料も同時に除去することを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
前記金属材料が、金、銀、銅およびアルミニウムからなる群から選ばれた金属材料、あるいは、前記群から選ばれた2以上の金属材料からなる合金であることを特徴とする請求項4に記載の光学素子の製造方法。
【請求項6】
前記第2の材料がSiO2またはAl23であることを特徴とする請求項3に記載の光学素子の製造方法。
【請求項7】
前記第2の材料を除去する工程が、エッチングであることを特徴とする請求項6に記載の光学素子の製造方法。
【請求項8】
前記突起あるいは前記窪みを形成する工程が、型上に形成された、前記突起あるいは前記窪みの形状の反転形状を可塑性材料からなる基板に転写する工程であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項9】
前記可塑性材料が、熱可塑性材料、熱硬化材料、光硬化材料、重合材料あるいは溶媒可溶材料のいずれかであることを特徴とする請求項8記載の光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−232806(P2008−232806A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72429(P2007−72429)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】