説明

光学素子切替装置及び顕微鏡システム

【課題】光学素子を切り替える際の位置精度を大幅に高め得るようにする。
【解決手段】鏡筒切替部15の連結部50は、鏡筒移動体15Mを左端位置まで移動させ、当該左端位置に到達させた後もモータ42からベルト46を介して伝達される左方向への駆動力を、コイルばね57の弾性力により吸収する。その後連結部50は、モータ42からベルト46を介して伝達される駆動力が遮断されると、コイルばね57の復元力により連結移動体50Mが右方向へ僅かに戻されるものの、鏡筒移動体15Mを左端位置に静止させたまま移動させない。これにより鏡筒切替部15は、連結部50により余分な駆動力を吸収でき、接触部34AXを位置規定部35BXに接触させた状態を維持して鏡筒移動体15Mを極めて正確に左端位置に静止させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学素子切替装置及び顕微鏡システムに関し、例えば例えば生体サンプルを拡大して観察する分野に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡では、観察対象の内容や種類に応じて像の拡大率を変化させるべく、対物レンズや接眼レンズ等の光学素子を交換し得るようになされたものが広く用いられている。
【0003】
また顕微鏡のなかには、主に対物レンズの交換を容易化した構成として、いわゆるレボルバ型のものが広く用いられている。さらに、当該レボルバをパルスモータ等で駆動することにより対物レンズの切替を自動化した顕微鏡も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、顕微鏡のなかには、交換すべき対物レンズが2種類のみの場合に、直線上を移動する移動部に2本の対物レンズを配置し、手動で当該移動部を動かすことにより当該対物レンズを切り替え得るようになされたものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−207173公報(第1図、第2図)
【0006】
【特許文献2】特開2007−328063公報(第1図〜第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、2本の対物レンズを直線上に配置して切り替える顕微鏡において、対物レンズの切替を自動化しようとした場合、特許文献1のようなパルスモータを用いて移動部を直線方向に移動させる手法が考えられる。
【0008】
しかしながらステッピングモータを用いた場合、当該ステッピングモータの駆動を停止したときの停止位置を細かく制御することができず、例えば200[μm]間隔のような比較的粗い精度でしか停止位置を定めることができない。
【0009】
このような場合、顕微鏡における光学系の光軸がずれてしまう。特に、接眼レンズの焦点位置に撮像素子を設けて観察対象を撮像するような場合、このような光軸のずれは画像の画質を大幅に低下させてしまう、という問題があった。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、光学素子を切り替える際の位置精度を大幅に高め得る光学素子切替装置及び結像レンズを切り替える際の位置精度を大幅に高め得る顕微鏡システムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明の光学素子切替装置においては、光路が設定された本体部と、2種類の光学素子が取り付けられた移動体部と、2種類の光学素子の光軸をいずれも所定の移動線上で移動させることによりいずれかの光学素子の光軸を光路の光軸に一致させるよう、本体部に対し移動体部を移動させる移動部と、移動線に沿った第1方向及びその反対方向でなる第2方向それぞれに関し、本体部に対する移動体部の移動限界位置を規定する移動限界位置規定部と、移動体部を第1方向または第2方向へ所定の単位移動距離ずつ移動させる駆動力を発生し所定の伝達部に伝達する駆動力発生部と、伝達部と移動体部との間を所定の弾性体を介して連結し、当該伝達部に対し当該移動体部を第1方向及び第2方向それぞれに移動単位よりも大きい弾性変位幅の範囲内で変位させる連結部と、移動限界位置に移動された移動体部に対し、連結部に発生する弾性力よりも強い力を当該弾性力が作用する方向と反対の方向に作用させて当該移動体部を当該移動限界位置に保持する保持部と、移動体部を移動させる際、当該移動体部を移動限界位置よりも遠方へ移動させ得る駆動力を供給するよう駆動力発生部を制御する制御部とを設けるようにした。
【0012】
本発明の光学素子切替装置は、駆動力発生部による移動体部の移動距離が単位移動距離ごとであるものの、連結部における弾性作用及び保持部の保持作用により、当該移動体部を当該移動限界位置で精度良く静止させることができる。
【0013】
また本発明の顕微鏡システムにおいては、撮像対象に焦点を結ぶ対物レンズが取り付けられた本体部と、対物レンズ及び所定の光学素子を介して撮像対象を撮像する撮像素子と、撮像対象の像を撮像素子に結像させる2種類の結像レンズが取り付けられた移動体部と、2種類の結像レンズの光軸をいずれも所定の移動線上で移動させることによりいずれかの結像レンズの光軸を光路の光軸に一致させるよう、本体部に対し移動体部を移動させる移動部と、移動線に沿った第1方向及びその反対方向でなる第2方向それぞれに関し、本体部に対する移動体部の移動限界位置を規定する移動限界位置規定部と、移動体部を第1方向または第2方向へ所定移動距離ずつ移動させる駆動力を発生し所定の伝達部に伝達する駆動力発生部と、伝達部と移動体部との間を所定の弾性体を介して連結し、当該伝達部に対し当該移動体部を第1方向及び第2方向それぞれに移動単位よりも大きい弾性変位幅の範囲内で変位させる連結部と、移動限界位置に移動された移動体部に対し、連結部に発生する弾性力よりも強い力を当該弾性力が作用する方向と反対の方向に作用させて当該移動体部を当該移動限界位置に保持する保持部と、移動体部を移動させる際、当該移動体部を移動限界位置よりも遠方へ移動させ得る駆動力を供給するよう駆動力発生部を制御する制御部とを設けるようにした。
【0014】
本発明の顕微鏡システムは、駆動力発生部による移動体部の移動距離が単位移動距離ごとであるものの、連結部における弾性作用及び保持部の保持作用により、当該移動体部を当該移動限界位置で精度良く静止させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、駆動力発生部による移動体部の移動距離が単位移動距離ごとであるものの、連結部における弾性作用及び保持部の保持作用により、当該移動体部を当該移動限界位置で精度良く静止させることができる。かくして本発明は、光学素子を切り替える際の位置精度を大幅に高め得る光学素子切替装置及び結像レンズを切り替える際の位置精度を大幅に高め得る顕微鏡システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】顕微鏡システムの概略構成を示す略線図である。
【図2】制御ユニットの構成を示す略線図である。
【図3】鏡筒切替部の構成を示す略線的斜視図である。
【図4】鏡筒切替部の構成(正面図)を示す略線図である。
【図5】鏡筒切替部の構成(上面図)を示す略線図である。
【図6】鏡筒切替部の構成(左側面図)を示す略線図である。
【図7】連結部の構成を示す略線的斜視図である。
【図8】結像レンズの切替動作(1)を示す略線図である。
【図9】結像レンズの切替動作(2)を示す略線図である。
【図10】結像レンズの切替動作(3)を示す略線図である。
【図11】結像レンズの切替動作(4)を示す略線図である。
【図12】結像レンズの切替動作(5)を示す略線図である。
【図13】結像レンズ切替処理手順を示す略線的フローチャートである。
【図14】押付部の構成を示す略線的斜視図である。
【図15】押付部の構成(背面図)を示す略線図である。
【図16】押付部の構成(正面図)を示す略線図である。
【図17】カムガイド上面の傾斜角度と押付力との関係を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
2.他の実施の形態
【0018】
<1.実施の形態>
[1−1.顕微鏡システムの概略構成]
図1において、本実施の形態による顕微鏡システム1は、スライドガラスSGを所定の倍率で拡大して撮像する顕微鏡ユニット2と、当該顕微鏡ユニット2を制御する制御ユニット3とにより構成されている。
【0019】
因みに図1では、説明の都合上、顕微鏡システム1の概略構成を模式的に表している。
【0020】
スライドガラスSGは、血液等の結合組織、上皮組織又はそれらの双方の組織などの組織切片又は塗抹細胞でなる生体サンプルSPLを、所定の固定手法により固定したものであり、該組織切片又は塗抹細胞には必要に応じて染色が施される。この染色には、HE(ヘマトキシリン・エオシン)染色、ギムザ染色又はパパニコロウ染色等に代表される一般染色のみならず、FISH(Fluorescence In-Situ Hybridization)や酵素抗体法等の蛍光染色が含まれる。
【0021】
顕微鏡ユニット2は、ベース11を土台として構成されている。当該ベース11の上面には、振動を吸収する吸収部材11Aを介してステージ部12が取り付けられると共に、吸収部材11B及び11Cを介して光学系保持部13が取り付けられている。
【0022】
光学系保持部13は、全体として底面を解放した箱状でなり、振動等を生じさせないよう強固に構成されている。また光学系保持部13は、その内部にステージ部12を格納し得る程度の空間が設けられており、その上面に略円筒形状の対物レンズ14が固定されている。
【0023】
ステージ部12は、スライドガラスSGを保持するステージ12Aと、当該ステージ12Aを3軸方向に移動させるステージ移動部12Bとを有している。
【0024】
実際上制御ユニット3は、ステージ部12を制御してステージ12Aを3軸方向に移動させることにより、対物レンズ14が焦点を結ぶ箇所に、スライドガラスSGに固定されている生体サンプルSPLにおける所望の部分を位置させるようになされている。
【0025】
光学系保持部13の上面には、対物レンズ14に加えて、複数の結像レンズを切り替える鏡筒切替部15と、撮像部17を保持する撮像系保持部16とが取り付けられている。
【0026】
鏡筒切替部15は、対物レンズ14を通ってきた生体サンプルSPLの像を結像させる2種類の結像レンズ15A及び15Bが設けられており、制御ユニット3の制御に基づき、これら2種類の結像レンズを切り替え得るようになされている(詳しくは後述する)。因みに結像レンズ15A及び15Bは、互いの光学倍率が相違するようになされている。
【0027】
撮像部17は、結像レンズ15A又は15Bにより結像される像をハーフミラー17Aにより所定の割合で透過して撮像素子17Bに到達させると共に、その残りを反射させてAF(Auto Focus)用光学系17Cを介してAF用撮像素子17Dへ到達させる。
【0028】
撮像素子17Bは、例えば所定画素数のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等でなり、生体サンプルSPLの像を撮像して画像データを生成し、生成した画像データを制御ユニット3へ送出するようになされている。
【0029】
一方、AF用光学系17Cは、生体サンプルSPLの像に対し、画像の合焦状態を判別しやすくするような所定の光学的処理を施し、AF用撮像素子17Dに撮像させる。
【0030】
AF用撮像素子17Dは、この生体サンプルSPLの像を撮像しAF用画像データを生成して制御ユニット3へ送出する。これに応じて制御ユニット3は、AF用画像データを基に合焦状態を判別し、ステージ部12を上下方向に移動制御して生体サンプルSPLに対物レンズ14の焦点を合わせるようになされている。
【0031】
因みに制御ユニット3は、ステージ部12を移動制御することにより生体サンプルSPLにおける撮像箇所を移動させながら撮像素子17Bによりその像を順次撮像し、得られた画像データを合成するようになされている。
【0032】
これにより顕微鏡システム1は、撮像素子17Bの画素数を大幅に超えた画素数でなり、スライドガラスSGに固定された生体サンプルSPLの全範囲を表す極めて大きな画像を生成し得るようになされている。
【0033】
このように顕微鏡システム1では、鏡筒切替部15により結像レンズ15A又は15Bを切り替えながら、所望の拡大倍率で生体サンプルSPLの像を順次撮像するようになされている。
【0034】
[1−2.制御部の構成]
制御ユニット3は、顕微鏡ユニット2の各部を制御すると共に、撮像により得られた撮像対象の画像データに対し所定の画像処理等を施すと共に、所定の記憶部に記憶させるようになされている。
【0035】
図2に示すように、制御ユニット3は、各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)21A、データが予め記憶されたROM(Read Only Memory)21B、及びデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)21Cを有する制御部21を中心に構成されている。
【0036】
制御部21では、CPU21AがRAM21Cをワークエリアとして用いながら、バス22を介してROM21Bや記憶部23から読み出した各種プログラムを実行し、また当該記憶部23に各種データを記憶させるようになされている。
【0037】
記憶部23は、例えばハードディスクドライブや光ディスクドライブ、或いはフラッシュメモリ等でなり、高解像度の画像データのような大容量の各種データを記憶し得るようになされている。
【0038】
操作部24は、例えばキーボードや各種スイッチ、或いはタッチパネル等でなり、ユーザの操作入力を受け付け、その操作内容を表す操作命令を制御部21へ供給するようになされている。
【0039】
表示部25は、例えば液晶ディスプレイやEL(Electro Luminescence)ディスプレイ、或いはプラズマディスプレイ等でなり、各種表示画面や撮像した画像データを画像として表示し得るようになされている。
【0040】
インタフェース26は、顕微鏡ユニット2のステージ移動部12B、鏡筒切替部15、撮像素子17B及びAF用撮像素子17D等との間で各種制御信号や検出信号、或いは各種データ等を送受信するようになされている。
【0041】
[1−3.鏡筒切替部の構成]
次に、鏡筒切替部15の構成について説明する。
【0042】
図3は、顕微鏡システム1のうち鏡筒切替部15のみを抽出して表した斜視図である。なお説明の都合上、図3ではベース11及びステージ部12等(図1)がある側を下方向、撮像素子17Bがある側を上方向と定義し、さらに左方向、右方向、前方向及び後方向をそれぞれ定義している。
【0043】
また図4は鏡筒切替部15を前方向からみた正面図であり、図5は鏡筒切替部15を上方向から見た上面図であり、図6は鏡筒切替部15を左方向から見た左側面図である。ただし、図4では鏡筒切替部15における一部の部品を省略して示しており、図6では鏡筒切替部15に加えて撮像系保持部16及び撮像部17も示している。
【0044】
また鏡筒切替部15では、各部品がねじ止めされているが、図3〜図6では、一部を除いてねじを省略している。
【0045】
鏡筒切替部15は、鏡筒支持部31を中心に構成されている。鏡筒支持部31は、矩形状の金属板が複数組み合わされねじ止めされることにより、中空の直方体状に構成されており、その下面において光学系保持部13(図1)にねじ止めされている。
【0046】
因みに鏡筒切替部15は、左右の側面がほぼ解放され大きな穴が設けられているほか、前面板及び後側面板にも図示しない大きな穴が複数設けられている。鏡筒切替部15は、これらの穴を介して、その内部に蛍光照明や各種光学フィルタ等を設置し得るようになされている。
【0047】
鏡筒支持部31の上面31Aには、比較的前側及び後側に、左側の端部近傍から右側の端部近傍まで延長されたレール32A及び32Bが、互いにほぼ平行となるようにそれぞれ取り付けられている。レール32A及び32Bは、ほぼ同一形状であり、いずれも細長い四角柱状に構成されている。
【0048】
レール32A及び32Bの上方には、矩形板状の移動ベース34が設けられている。この移動ベース34の下面には、左側及び右側のレール32Aと対応する箇所にレールガイド33A及び33Bがそれぞれ設けられ、左側及び右側のレール32Bと対応する箇所にレールガイド33C及び33Dがそれぞれ設けられている。
【0049】
レールガイド33A、33B、33C及び33Dは、いずれもほぼ同一形状であり、レール32A及び32Bよりも左右方向に短く、前後方向に長い略直方体状に構成されている。またレールガイド33A、33B、33C及び33Dは、それぞれの下面に左右方向に渡る溝が形成されている。これら溝は、その前後幅がレール32A及び32Bの前後幅よりも僅かに広くなっている。
【0050】
このためレールガイド33A、23B、23C及び23Dは、それぞれの溝をレール32A及び32Bに係合させた状態で、当該レール32A及び32Bの上面を左右方向に摺動することができる。
【0051】
すなわち移動ベース34は、当該レール32A及び32Bに沿って左右方向に移動し得るようになされている。
【0052】
移動ベース34の左側面及び右側面には、六角ボルトの頭部分でなる接触部34AX及び34BXがそれぞれ設けられている。一方、鏡筒支持部31の左側面31B及び右側面31Cそれぞれにおける上方には、上面31Aよりも上方に突出するように板状のストッパ35A及び35Bがそれぞれ設けられている。
【0053】
ストッパ35A及び35Bには、移動ベースの接触部34AX及び34BXとそれぞれ対向する箇所に、六角ボルトの頭部分でなる位置規定部35AX及び35BXがそれぞれ設けられている。
【0054】
このような構成により、鏡筒支持部31に対する移動ベース34の移動範囲は、左方向については接触部34AXが位置規定部35AXに接触することにより規制され、また右方向については接触部34BXが位置規定部35BXに接触することにより規制される。
【0055】
説明の都合上、以下では、移動ベース34の位置に関し、接触部34AXが位置規定部35AXに接触する位置を左端と呼び、接触部34BXが位置規定部35BXに接触する位置を右端と呼ぶ。
【0056】
また移動ベース34の前面中央部には、板状部材が折り曲げられてなるセンサドグ36が取り付けられている。センサドグ36は、移動ベース34の前面に取り付けられる取付部分から前方に延設され、さらにその前側端部から下方に延設されたような形状となっている。
【0057】
一方、鏡筒支持部31の前面31Dにおける上方には、左右にセンサ37A及び37Bが取り付けられている。センサ37A及び37Bは、発光素子及び受光素子が隙間を空けて対向するように設けられており、当該隙間における異物の有無を検出してその検出結果を表す検出信号を制御ユニット3(図1)に供給するようになされている。
【0058】
センサ37Aは、移動ベース34が左端に到達する直前にセンサドグ36を検出するような位置に取り付けられている。またセンサ37Bは、移動ベース34が右端に到達する直前にセンサドグ36を検出するような位置に取り付けられている。
【0059】
かかる構成により制御ユニット3は、センサ37A及び37Bからの検出信号を基に、移動ベース34が左端又は右端の近傍の位置にあることを認識し得るようになされている。
【0060】
移動ベース34の上面左側には、矩形板状のレンズ台38Aを介して結像レンズ15Aが取り付けられている。また移動ベース34の上面右側には、矩形板状のレンズ台38Bを介して結像レンズ15Bが取り付けられている。
【0061】
すなわち移動ベース34、結像レンズ15A及び15Bは、レールガイド33A〜33D及びセンサドグ36等と共に、一体としてレール32A及び32B上を右方向又は左方向へ移動し得るようになされている。以下では、これらをまとめて鏡筒移動体15Mと呼ぶ。
【0062】
因みに鏡筒切替部15では、移動ベース34が左端に移動したときに対物レンズ14の光軸と結像レンズ15Bの光軸とを一致させるよう、接触部34AX及び位置規定部35AXの位置等がそれぞれ調整されている。また鏡筒切替部15は、移動ベース34が右端に移動したときに対物レンズ14の光軸と結像レンズ15Aの光軸とを一致させるよう、接触部34BX及び位置規定部35BXの位置等がそれぞれ調整されている。
【0063】
さらに鏡筒支持部31の前面31Dにおける上方には、移動ベース34を右方向又は左方向へ駆動する駆動部40が設けられている。
【0064】
駆動部40は、概略的には、モータ42により動力を発生し、ベルト46を介してこの動力を移動ベース34に伝達するようになされている。
【0065】
鏡筒支持部31の前面31Dにおける左側上方には、取付板41を介してモータ42がその出力軸を後方向へ向けるよう取り付けられている。モータ42の出力軸には、扁平な円盤状のプーリー43が取り付けられている。プーリー43の周側面には、ギアが刻まれている。
【0066】
また鏡筒支持部31の前面31Dにおける右側上方には、取付板44を介して扁平な円盤状のアイドラー45が回転自在に取り付けられている。このアイドラー45の回転軸は、プーリー43の回転軸、すなわちモータ42の出力軸とほぼ平行となっている。
【0067】
プーリー43及びアイドラー35の間には、環状のベルト46が弛まない程度の張力で巻装されている。ベルト46の内側には、プーリー43の周側面に刻まれたギアと噛合する溝が設けられている。
【0068】
またモータ42は、いわゆるステッピングモータとなっており、パルス状の制御信号が供給されると当該パルスの周期に応じた回転速度で回転するようになされている。
【0069】
かかる構成により駆動部40は、制御ユニット3からパルス状の制御信号がモータ42に供給されると、プーリー43を当該パルスの周期に応じた速度で回転させることにより、当該プーリー43及びアイドラー45の間でベルト46を滑らせることなく周回させる。
【0070】
因み駆動部40では、モータ42及びプーリー43の組み合わせにより、制御信号の1パルスに相当するベルト46の移動距離が約200[μm]となっている。すなわち駆動部40は、ベルト46を単位移動距離である約200[μm]ごとに移動させることができる。
【0071】
ベルト46の下段には、その駆動力を移動ベース34の前面中央部分に伝達する連結部50が設けられている。
【0072】
連結部50は、後述するように、ベルト46に加えられた駆動力を移動ベース34に直接伝達するのではなく、弾性を有する部材を介して伝達するようになされている。
【0073】
かかる構成により鏡筒切替部15は、移動ベース34を左端又は右端に移動させることにより、ステージ12上のスライドガラスSGから対物レンズ14を介して撮像素子17B(図1)まで至る光路上に、結像レンズ15A又は15Bを位置させ得るようになされている。
【0074】
これにより顕微鏡ユニット2では、当該光路上に位置する結像レンズ15A又は15Bを用いてスライドガラスSGを撮像することができる。
【0075】
[1−4.連結部の構成]
次に、連結部50について、図7の斜視図を中心に説明する。
【0076】
連結部50は、ベルト46を上下から挟持する上挟持部51及び下挟持部52、当該下挟持部52を左右に貫通する軸体53、移動ベース34に固定され軸体53を左右に摺動させる左固定部54及び右固定部55、コイルばね56及び57等により構成されている。
【0077】
上挟持部51は、略平板状でなり、その下面に前後方向に渡る溝が左右方向に繰り返し形成されている。
【0078】
下挟持部52は、上挟持部51の下面を平坦にしたような略平板状部分と、当該平板を前後に圧縮し上下に延長させた直方体状部分とを上下に一体化したような形状となっている。さらに下挟持部52には、上下方向及び前後方向に関しほぼ中央の位置を左右に貫通する円形の孔部が穿設されている。
【0079】
上挟持部51は、その下面と下挟持部52の上面との間にベルト46の下段を挟んだ状態で、当該下挟持部52にねじ止めされるようになされている。
【0080】
軸体53は、下挟持部52の孔部よりも僅かに小さな直径でなる円柱状に形成されており、当該孔部に挿通され左右の突出長さをほぼ均等とする状態で下挟持部52Hにねじ止めされるようになされている。
【0081】
説明の都合上、以下では軸体53のうち下挟持部52から左側に突出した部分を左軸体53Aと呼び、当該軸体53のうち下挟持部52から右側に突出した部分を右軸体53Bと呼ぶ。
【0082】
一方、左固定部54は、略直方体状に形成された主体部分54Aと、当該主体部分の左側面後下方に左方向に延設された延設部分54Bとにより構成されている。また主体部分54Aの中央よりも上側には、軸体53の直径よりも僅かに大きい直径でなる孔部54Hが左右方向に貫通するよう穿設されている。
【0083】
右固定部55は、左固定部54と左右対称に構成されており、孔部54Hと対応する孔部45Hを有している。
【0084】
左固定部54及び右固定部55は、それぞれ孔部54H及び55Hに左軸体53A及び右軸体53Bが挿通された状態で移動ベース34の前面34Dにねじ止めされるようになされている。
【0085】
このため左固定部54及び右固定部55は、移動ベース34と一体に左方向又は右方向へ移動することになる。以下の説明では、上述した鏡筒移動体15Mに左固定部54及び右固定部55も含まれるものとする。
【0086】
ここで左固定部54の右側面と右固定部55の左側面との間隔は、図4に示したように、下挟持部52における左右の長さよりも広くなっている。このため左固定部54及び下挟持部52の間には隙間GLが形成され、右固定部55及び下挟持部52の間には隙間GRが形成される。
【0087】
コイルばね56(図7)は、軸体53の直径及び孔部44Hの直径よりも僅かに大きな巻き径で螺旋状に巻回されており、弾性力を有している。またコイルばね56の自然長は、左軸体53Lのうち左固定部54から左方向に突出した部分の長さよりも長くなるようになされている。
【0088】
抜け止め部58は、コイルばね56の巻き径よりも大きな外径を有すると共に軸体53の直径とほぼ同等の内径を有する円環状に形成されている。この抜け止め部58は、左固定部54から左方向に突出した左軸体53Aに、左右方向に圧縮されたコイルばね56を挿通させた状態で、当該左軸体53Aの左端近傍に固定されるようになされている。
【0089】
これによりコイルばね56は、左固定部54の左側面と抜け止め部58の右側面との間で、自然長に戻ろうとする弾性力(復元力)を作用させるようになされている。
【0090】
またコイルばね57及び抜け止め部59は、それぞれコイルばね56及び抜け止め部58と同様に構成されている。抜け止め部59は、右固定部55から左方向に突出した右軸体53Bに、左右方向に圧縮されたコイルばね57を挿通させた状態で、当該右軸体53Bの右端近傍に固定されるようになされている。
【0091】
これによりコイルばね57は、コイルばね56と同様、右固定部55の右側面と抜け止め部59の左側面との間で、自然長に戻ろうとする弾性力(復元力)を作用させるようになされている。
【0092】
かかる構成により、連結部50では、上挟持部51、下挟持部52、軸体53、並びに抜け止め部58及び59をベルト46と一体に左右方向に移動させるようになされている。説明の都合上、以下ではこれらを連結移動体50Mと呼ぶ。
【0093】
すなわち連結部50は、ベルト46に印加される駆動力を連結移動体50Mから当該コイルばね56及び57を介し、さらに左固定部54又は右固定部55を介して移動ベース34に当該駆動力を伝達するようになされている。
【0094】
[1−5.結像レンズの切替動作]
次に、撮像処理において使用する結像レンズを鏡筒切替部15により結像レンズ15A又は15Bに切り替える際の切替動作について説明する。
【0095】
まず、図4の連結部50を中心とした部分を拡大すると共に一部の部品を省略した図8に示すように、鏡筒切替部15において移動ベース34が左端と右端との間に位置しており、ベルト46に駆動力が印加されていない場合を想定する。
【0096】
このとき連結部50は、連結移動体50M(上挟持部51、下挟持部52、軸体53、抜け止め部58及び59)に左右方向への力が印加されていない。このため左右のコイルばね56及び57は、互いに同程度の力で圧縮された状態となり、それぞれのコイル長さSL及びSRがほぼ同等となる。
【0097】
またこのときセンサドグ36は、左右のセンサ37A及び37Bの間に位置しており、いずれによっても検出されていない。
【0098】
次に、鏡筒切替部15が移動ベース34を左端まで移動させる場合を想定する。鏡筒切替部15では、まず制御ユニット3(図1)の制御に基づきモータ42にパルス状の制御信号が供給され、プーリー43を介してベルト46に右回りの駆動力(すなわち下段を左方向へ駆動させる力)が伝達される。
【0099】
このとき連結部50では、ベルト46に固定されている連結移動体50Mに左方向への駆動力が印加され、抜け止め部59にも左方向への駆動力が印加される。これに伴いコイルばね57は、圧縮されると共に右固定部55の右側面に復元力を作用させる。
【0100】
コイルばね57は、一般的なばねと同様、圧縮された長さに応じた復元力を作用させる。このため、当該復元力が鏡筒移動体15Mの静止摩擦力を上回った時点で当該鏡筒移動体15Mが左方向へ移動し始める。
【0101】
因みにこのときの制御信号におけるパルスの周期は比較的短くなっている。このため鏡筒移動体15Mは、比較的高い速度で左方向へ移動する。
【0102】
その後、鏡筒切替部15が鏡筒移動体15Mをさらに左方向へ進行させると、図9に示すように、センサドグ36がセンサ37Aの隙間を遮ることにより、当該センサ37Aが当該センサドグ36を検出する。因みに鏡筒移動体15Mの接触部34AXは、この段階では鏡筒支持部31側の位置規定部35BXには接触していない。以下、このときの鏡筒移動体15Mの位置を左センサ検出位置と呼ぶ。
【0103】
このとき制御ユニット3は、モータ42に対し、制御信号におけるパルスの周期を長くすると共に、供給するパルスの数を所定数(以下これを端部微動数と呼ぶ)に制限する。これにより鏡筒移動体15Mは、移動速度を低下させて、さらに左方向へ進行する。
【0104】
その後、鏡筒切替部15が鏡筒移動体15Mをさらに左方向へ進行させると、図10に示すように、鏡筒移動体15Mが左端位置に到達し、接触部34AXが位置規定部35BXに接触する。
【0105】
ここで端部微動数は、左センサ検出位置から左端位置までの距離、すなわちセンサ37Aによりセンサドグ36が検出されてから接触部34AXを位置規定部35BXに接触させるまでの鏡筒移動体15Mの移動距離よりも長い距離に相当するパルス数となるよう設定されている。
【0106】
このため制御ユニット3は、鏡筒移動体15Mが左端位置に到達した後もパルスをモータ42に供給し続ける。このため連結部50では、連結移動体50Mの抜け止め部59がコイルばね57の右側から力を印加する。
【0107】
一方、既に左端位置にある鏡筒移動体15Mは、この状態において左方向への力が加えられたとしても、左方向へ移動することはできない。このため連結移動体50Mの抜け止め部59は、図11に示すように、鏡筒移動体15Mに固定されている右固定部55との間で、コイルばね57を圧縮することになる。
【0108】
その後、制御ユニット3は、センサ37Aによりセンサドグ36を検出した後における制御信号のパルス数が端部微動数に達すると、当該モータ42に対するパルスの供給を停止する。
【0109】
このとき連結部50では、ベルト46から連結移動体50Mに加えられていた駆動力が消滅するため、それまで当該駆動力により圧縮されていたコイルばね57の復元力が作用する。
【0110】
このときコイルばね57は、当該復元力を、連結移動体50Mに対しては右方向へ作用させ、鏡筒移動体15Mに対しては左方向へ作用させる。この結果、既に接触部34AXが位置規定部35BXに接触している鏡筒移動体15Mは静止したままとなり、連結移動体50Mは図12に示すように右方向へ僅かに移動する。
【0111】
因みに鏡筒移動体15Mは、左端位置に位置しているとき、後述する押付部70の作用により、左方向へ押し付ける押付力が印加された状態となり、モータ42による駆動力が遮断された後も当該左端位置にある状態を維持し得るようになされている。
【0112】
かくして鏡筒切替部15は、鏡筒移動体15Mを左方向へ移動させた後、左端位置に静止させることができる。
【0113】
ところで、コイルばね56及び57に作用する復元力や圧縮される長さについては、連結部50における一連の動作を行うため、種々の制約が存在する。以下、この制約について説明する。
【0114】
ここでは、モータ42における1回転に相当するパルスステップ数をP[step/rev]、鏡筒移動体15M全体の質量をM[kg]、鏡筒移動体15Mの動摩擦係数をμd、静止摩擦係数をμs、コイルばね56及び57のばね定数をk[N/m]とする。
【0115】
ただし連結部50には2個のコイルばね56及び57が設けられているため、このばね定数kは、2個のコイルばね56又は57を合わせた、すなわち2倍のばね定数を表している。
【0116】
また、モータ42の停止トルクをTs[Nm]、駆動トルクをTd[Nm]、プーリー43の半径をr[m]、当該プーリー43の総損失係数をd(ただしd<1.0とする)、鏡筒移動体15Mがいずれかの端部に位置してから連結移動体50Mをさらに押し付けるときの過剰移動量をx[m]とする。
【0117】
さらに、左固定部54及び右固定部55の曲げ弾性係数をS[N/m]、停止位置精度をxs[m]とする。
【0118】
まず、連結部50において左固定部54及び右固定部55に加える力が強すぎると、当該左固定部54及び右固定部55を撓ませることになる。そこで、当該左固定部54及び右固定部55を撓ませないための条件は、次の(1)式のようになる。
【0119】
(k*x−μs*M)/S≧xs …(1)
【0120】
また、鏡筒移動体15Mが左右いずれかの端部位置において停止しているときの、連結部50から加えられる左右方向の力については、次の2つの条件が挙げられる。1番目に、モータ42の停止トルクによりコイルばね56又は57が縮んだ状態を維持するための条件は、次の(2)式のようになる。
【0121】
k*x≦Ts*d*r …(2)
【0122】
2番目に、モータ42の停止後に、コイルばね56又は57の復元力により連結移動体50Mが最大1パルス分戻された(反対側の端部方向へ移動された)としても、当該コイルばね56又は57が縮んだ状態を維持するための条件は、次の(3)式のようになる。
【0123】
k*x>2*π*r/P …(3)
【0124】
さらに、鏡筒移動体15Mの移動中に、コイルばね56又は57が縮みすぎないための条件、例えば過剰移動量xの1/5以下に抑えるための条件は、次の(4)式のようになる。
【0125】
k*x/5≧Td*d*r−μd*M …(4)
【0126】
そこで鏡筒切替部15は、これらの(1)〜(4)式を満たすよう設計されている。
【0127】
[1−6.結像レンズ切替処理手順]
次に、制御ユニット3が鏡筒切替部15の鏡筒移動体15Mをいずれか一端又は中間の位置から他端へ移動させることにより結像レンズ15A又は15Bに切り替える際の結像レンズ切替処理手順について、図13のフローチャートを用いて説明する。
【0128】
因みに、以下では鏡筒移動体15Mを左端へ移動させる場合を例に説明する。
【0129】
制御ユニット3の制御部21は、ユーザの操作指示や予め設定されたスケジュールプログラム等の指示に従い、記憶部23から結像レンズ切替プログラムを読み出すことによりルーチンRT1を開始して、ステップSP1へ移る。
【0130】
ステップSP1において制御部21は、モータ42に対し、比較的短い周期のパルスでなるジョグ指令の送信を開始して次のステップSP2へ移る。
【0131】
これに応じてモータ42は、当該ジョグ指令を受信している間、比較的高い速度でベルト46を周回させ、連結部50を介して鏡筒移動体15Mを左方向へ移動させる。
【0132】
ステップSP2において制御部21は、センサ37Aがセンサドグ36を検出したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは鏡筒移動体15Mが未だ左センサ検出位置まで到達しておらず(図8)、引き続き当該鏡筒移動体15Mを左方向へ移動させる必要があることを表している。このとき制御部21は、当該ステップSP2を繰り返し、センサドグ36の検出を待ち受ける。
【0133】
一方、ステップSP2において肯定結果が得られると、このことは鏡筒移動体15Mが左センサ検出位置に到達したため(図9)、当該鏡筒移動体15Mを左端で停止させる必要があることを表しており、このとき制御部21は次のステップSP3へ移る。
【0134】
ステップSP3において制御部21は、モータ42に対し、比較的長い周期のパルスでなるパルス送り指令の送信を開始すると共にそのパルス数のカウントを開始して、次のステップSP4へ移る。
【0135】
これに応じてモータ42は、当該パルス送り指令を受信している間、比較的低い速度でベルト46を周回させ、連結部50を介して鏡筒移動体15Mを左方向へゆっくり移動させる。
【0136】
ステップSP4において制御部21は、パルス送り指令を開始してからのパルス数が端部微動数に達したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、制御部21は、パルス送り指令の送信を継続したまま当該ステップSP4を繰り返す。
【0137】
このときモータ42は、接触部34AXが位置規定部35BXに接触して鏡筒移動体15Mが左端に到達した後(図10)も、パルス送り指令に従いベルト46に駆動力を印加し続け、コイルばね57を圧縮させながら連結移動体50Mを左方向へ押し付ける(図11)。
【0138】
一方、ステップSP4において肯定結果が得られると、このことはパルス送り指令を開始してからのパルス数が端部微動数に達したことを表しており、このとき制御部21は次のステップSP5へ移る。
【0139】
ステップSP5において制御部21は、モータ42に対し、パルス送り指令の送信を中止し、停止指令を送信した後、ステップSP6へ移ってルーチンRT1を終了する。
【0140】
このときモータ42は、ベルト46に対する駆動力の印加を停止する。これに応じて連結移動体50Mがコイルばね57の復元力により右方向へ僅かに移動するものの(図12)、鏡筒移動体15Mは左端位置での静止状態を維持する。
【0141】
この結果、制御部21は、鏡筒移動体15Mを左端位置に精度良く位置させることができる。
【0142】
[1−7.押付部の構成]
次に、鏡筒移動体15Mを左方向又は右方向に押し付ける押付部70について説明する。
【0143】
図5及び図6に示したように、押付部70は、鏡筒支持部31の後面上方部分から移動ベース34の後方部分に渡るように設けられている。
【0144】
ここで押付部70については、図14に左後側上方から見た斜視図を、図15に背面図を、図16に正面図を示す。因みに図15及び図16においては、結像レンズ15A及び15B、レンズ台38A及び38B、並びに駆動部40を省略している。
【0145】
押付部70は、大きく分けると、取付板71を介して鏡筒支持部31に取り付けられる部分と、移動ベース34に取り付けられるカムガイド80とにより構成されている。
【0146】
取付板71は、左右に長く前後に薄い扁平な直方体状に構成されており、鏡筒支持部31の背面31Eにおける左右中央の上方に取り付けられている。
【0147】
取付板71の上面には、左右の中央から僅かに左右にずれた位置に、それぞれ略円柱状でなるガイド軸72及び73が上方へ向けて延設されている。
【0148】
一方、カムブロック74は、略直方体状に構成されると共に、ガイド軸72及び73とそれぞれ対応する箇所に、当該カムブロック74を上下に貫通し当該ガイド軸72及び73の直径よりも僅かに大きな孔径の挿通穴がそれぞれ穿設されている。
【0149】
さらにカムブロック74の前面略中央には、略円柱状のカム75が回転自在に取り付けられている。
【0150】
実際上カムブロック74は、2箇所の挿通穴にガイド軸72及び73がそれぞれ挿通された状態で、上下に移動することにより、カム75を上下に移動させ得るようになされている。
【0151】
コイルばね76及び77は、ガイド軸72及び73の直径よりも僅かに大きな巻き径で螺旋状に巻回されており、弾性力を有している。またコイルばね76及び77の自然長は、ガイド軸72及び73のうちカムブロック74から上方に突出した部分の長さよりも長くなるようになされている。
【0152】
抜け止め部78及び79は、それぞれコイルばね76及び77の巻き径よりもそれぞれ大きな外径を有すると共に、それぞれガイド軸72及び73の軸径とほぼ同等の内径を有している。
【0153】
実際上抜け止め部78及び79は、カムブロック74並びにコイルばね76及び77が挿通されたガイド軸72及び63の上端部分にそれぞれ固定されるようになされている。
【0154】
このときコイルばね76及び77は、上下方向に圧縮された状態となるため、上下方向に復元力を作用させる。
【0155】
一方、移動ベース34の上面後方には、カム75と対応するようにカムガイド80が設けられている。カムガイド80は、レール32A及び32Bと同様、左右に細長い四角柱状に構成されている。このカムガイド80における左右方向の長さは、図5に示したように、結像レンズ15A及び15Bの中心同士の距離であるレンズ間距離よりも僅かに長くなっている。
【0156】
さらにカムガイド80の上面には、図15及び16に示したように、左右の端部近傍において、端側へ進むに連れて下方へ下がるよう傾斜された傾斜部80A及び80Bが設けられている。なお、以下ではカムガイド80の上面のうち傾斜部80A及び80Bを除いた中央の平坦な部分を平坦部80Cと呼ぶ。
【0157】
かかる構成により押付部70は、コイルばね76及び77の復元力(以下これを押付力Fと呼ぶ)の作用により、カムブロック74を介してカム75をカムガイド80の上面に押し付ける。
【0158】
カムガイド80は、移動ベース34を含む鏡筒移動体15Mと一体に左方向又は右方向へ移動される。一方、カム75は、左右方向に関しては鏡筒支持部31に対し固定されている。
【0159】
押付部70のこのような構造により、カム75は、鏡筒移動体15Mが左端位置近傍又は右端位置近傍にあるときに、カムガイド80の傾斜部80B又は80Aに当接し、それ以外のときに平坦部80Cに当接することになる。
【0160】
ここでカム75からカムガイド80に加えられる力の方向及び大きさは、当該カム75が当接する箇所の傾斜角度に応じて変化することになる。
【0161】
カム75からカムガイド80に対し下方向に作用する押付力Fは、コイルばね76及び77のばね定数をそれぞれkとし、当該コイルばね76及び77の自然長からの圧縮長さをyとすると、次の(5)式により表される。
【0162】
F=2*k*y …(5)
【0163】
図16の一部を拡大した図17(A)に示すように、カム75がカムガイド80の平坦部80Cに当接している場合、押付力Fはほぼ真下方向に作用し、左右方向には殆ど作用しない。
【0164】
一方、図17(B)に示すように、カム75がカムガイド80の傾斜部80Bに当接している場合、傾斜部80Bの傾斜角度をθとすると、真下方向に作用する押付力Fに対し、左方向に作用する水平抗力でなる水平押付力Fs=F・tanθが発生する。
【0165】
すなわち押付部70のカム75は、鏡筒移動体15Mが左端位置の近傍にある場合、カムガイド80の傾斜部80Bを介して当該鏡筒移動体15Mに対し左方向への水平押付力Fsを作用させる。
【0166】
因みにカム75が傾斜部80Aに当接している場合、当該カム75による押付力Fの作用については、図17(B)と左右対称となる。
【0167】
すなわち押付部70のカム75は、鏡筒移動体15Mが右端位置の近傍にある場合、カムガイド80の傾斜部80Aを介して当該鏡筒移動体15Mに対し右方向への水平押付力Fsを作用させる。
【0168】
ここで水平押付力Fsにより鏡筒移動体15Mを左右いずれかの端部位置に静止させるための条件は、鏡筒移動体15M全体の質量Mと制止摩擦係数μsとを用いると、次の(6)式のようになる。
【0169】
Fs>M*μs …(6)
【0170】
実際上、押付部70は、(6)式を満たすよう傾斜部80A及び80Bの傾斜角θが定められている。
【0171】
かくして押付部70は、鏡筒移動体15Mが左端位置近傍又は右端位置近傍に位置している場合のみ、当該鏡筒移動体15Mを左端又は右端へさらに押し付けるような水平押付力Fsを作用させるようになされている。
【0172】
[1−8.動作及び効果]
以上の構成において、鏡筒切替部15の連結部50は、鏡筒移動体15Mを左端位置まで移動させ、当該左端位置に到達させた後もモータ42からベルト46を介して伝達される左方向への駆動力を、コイルばね57の弾性力により吸収する。
【0173】
その後連結部50は、モータ42からベルト46を介して伝達される駆動力が遮断されると、コイルばね57の復元力により連結移動体50Mが右方向へ僅かに戻されるものの、鏡筒移動体15Mを左端位置に静止させたまま移動させない。
【0174】
すなわち制御部21は、モータ42に供給するパルスの周期や数を制御し、鏡筒移動体15Mを当該左センサ検出位置から左端位置までの移動距離を僅かに超える程度の過剰な駆動力を発生させるだけで、鏡筒移動体15Mの接触部34AXを位置規定部35BXに接触させることができる。
【0175】
このとき連結部50は、コイルばね57の弾性作用により、この過剰な駆動力を吸収することができ、モータ42の過負荷等による損傷を防止しながら、鏡筒移動体15Mを左端位置に静止させた状態を維持することができる。
【0176】
また鏡筒切替部15は、モータ42の単位移動距離が約200[μm]であり必ずしも緻密な位置調整ができず、さらに鏡筒移動体15Mの左右方向に関する位置を高精度に検出することもできない。
【0177】
しかしながら鏡筒切替部15は、センサドグ36並びにセンサ37A及び37Bの組み合わせにより、鏡筒移動体15Mが左センサ検出位置(図9)にあることを制御部21に認識させることができる。
【0178】
このため制御部21は、連結部50により過剰な駆動力を吸収できることを前提に、鏡筒移動体15Mを当該左センサ検出位置から左端位置までの距離を超える程度に過剰に移動させるだけで、鏡筒移動体15Mを高い精度で左端位置に合わせることができる。
【0179】
さらに連結部50は、モータ42にパルスが供給されベルト46が周回され始めるとき、まずコイルばね56又は57が圧縮され、その復元力が鏡筒移動体15Mの静止摩擦力を上回った段階で初めて当該鏡筒移動体15Mを移動させる。このため連結部50は、鏡筒移動体15Mの結像レンズ15A及び15Bに対して急激な駆動力(加速力)が印加されることを防止でき、穏やかに移動を開始させることができる。
【0180】
また鏡筒切替部15は、押付部70におけるカムガイド80の上面に、左右の端部近傍に傾斜部80A及び80Bを設け、その他の部分は平坦部80Cとして、コイルばね76及び77の復元力によりカムブロック74及びカム75を下方向へ押し付けるようにした。
【0181】
押付部70は、カム75がカムガイド80における左右の端部近傍に位置するときに、傾斜部80A又は80Bに対して水平押付力Fsを作用させる。これにより押付部70は、鏡筒移動体15Mが左右いずれかの端部近傍にあるときのみ、当該鏡筒移動体15Mを当該端部の方向へ押し付けることができる(図17(B))。
【0182】
このため押付部70は、鏡筒移動体15Mが左端位置又は右端位置に到達し、モータ42からの駆動力が遮断されて連結部50におけるコイルばね56又は57の復元力が作用するときも、当該鏡筒移動体15Mを左端位置又は右端位置に継続的に静止させることができる。
【0183】
さらに押付部70は、鏡筒移動体15Mが左右いずれかの端部以外の位置にあるとき、すなわちカム75をカムガイド80の平坦部80Cに当接させているときは、押付力Fを下方向に作用させる(図17(A))。
【0184】
このため押付部70は、鏡筒移動体15Mの移動中は水平押付力Fsにより駆動力を妨げることが無く、且つレール32A及び32Bとレールガイド33A〜33Dとの密着性を高めることができる。
【0185】
この結果押付部70は、モータ42により発生する駆動力が一定でなく変動するような場合であっても、鏡筒移動体15Mにおける不要な振動の発生を防止することができる。
【0186】
また顕微鏡ユニット2では、撮像素子17B等を有する撮像部17を、鏡筒切替部15と切り離し、光学系保持部13に取り付けられた頑強な撮像系保持部16により保持するようにした。
【0187】
特に顕微鏡ユニット2では、スライドガラスSGの画像を部分ごとに撮像して合成するため、撮像開始後にステージ部12(図1)からの振動等により各光学素子の位置ずれが生じると、正しく合成できない等の問題が生じるおそれがある。
【0188】
この点において顕微鏡ユニット2では、鏡筒切替部15の可動機構により位置精度の誤差が生じ得る結像レンズ15A及び15Bに比較的重量のある撮像部17を直接取り付ける場合と比較して、当該撮像部17の位置精度を高めることができる。
【0189】
以上の構成によれば、鏡筒切替部15の連結部50は、鏡筒移動体15Mを左端位置まで移動させ、当該左端位置に到達させた後もモータ42からベルト46を介して伝達される左方向への駆動力を、コイルばね57の弾性力により吸収する。その後連結部50は、モータ42からベルト46を介して伝達される駆動力が遮断されると、コイルばね57の復元力により連結移動体50Mが右方向へ僅かに戻されるものの、鏡筒移動体15Mを左端位置に静止させたまま移動させない。これにより鏡筒切替部15は、連結部50により余分な駆動力を吸収でき、接触部34AXを位置規定部35BXに接触させた状態を維持して鏡筒移動体15Mを極めて正確に左端位置に静止させることができる。
【0190】
<2.他の実施の形態>
なお上述した実施の形態においては、図7に示したように、連結移動体50Mと、コイルばね56及び57と、左固定部54及び右固定部55との組み合わせにより連結部50を構成するようにした場合について述べた。
【0191】
本発明はこれに限らず、種々の部品の組み合わせにより連結部50を構成するようにしても良い。この場合、要はベルト46から伝達される駆動力を、弾性力を有する弾性体を介して鏡筒移動体15Mに伝えるようにし、且つ(1)式〜(4)式を満たすようにすれば良い。
【0192】
また上述した実施の形態においては、駆動部40においてプーリー43、アイドラー45及びベルト46の組み合わせによりモータ42の動力を連結部50に伝達するようにした場合について述べた。
【0193】
本発明はこれに限らず、例えばウォームギアやねじ軸等と各種ギアやラック等の組み合わせ、或いはボールねじ等、種々の伝達機構によりモータ42の動力を連結部50に伝達するようにしても良い。
【0194】
さらに上述した実施の形態においては、モータ42をステッピングモータとするようにした場合について述べた。
【0195】
本発明はこれに限らず、当該モータ42を他の種々のモータとしても良い。要は、制御ユニット3の制御に基づいてベルト46を所望の方向に所望の周回速度で所定の単位移動距離ごとに周回させ得れば良い。この場合、ベルト46の移動距離を段階的にのみ制御し得る場合であっても、連結部50におけるコイルばね56又は57の圧縮長さがベルト46の最小移動距離よりも長ければ良い。
【0196】
さらに上述した実施の形態においては、センサドグ36並びにセンサ37A及び37Bの組み合わせにより鏡筒移動体15Mが左センサ検出位置等に有ることを検出するようにした場合について述べた。
【0197】
本発明はこれに限らず、例えば接触型のセンサや距離センサ等を用いて鏡筒移動体15Mの位置を検出するようにしても良い。さらには、センサ類を設けないようにしても良い。要は、制御ユニット3の制御の基で、モータ42から連結部50を介して鏡筒移動体15Mを左端位置又は右端位置に移動させる以上の過剰な駆動力を供給できれば良い。
【0198】
さらに上述した実施の形態においては、鏡筒移動体15Mが左端位置又は右端位置に位置するときに、押付部70により左方向又は右方向への水平押付力Fsを作用させるようにした場合について述べた。
【0199】
本発明はこれに限らず、例えば鏡筒移動体15Mが左端位置又は右端位置に到達し、モータ42に供給するパルス数が端部微動数に達した後に、当該モータ42に十分な静止用のトルクを発生させてコイルばね57を圧縮した状態(図11)を維持させるようにしても良い。或いは、種々の機構により鏡筒移動体15Mが左端位置又は右端位置に到達したときのみベルト46を保持するようにしても良い。この場合、静止したベルト46及びコイルばね57の復元力の作用により、鏡筒移動体15Mに対し左方向への押付力を発生させることができる。
【0200】
さらには、鏡筒移動体15Mの静止摩擦係数が十分に大きい場合に、当該鏡筒移動体15Mには左方向又は右方向への押付力を作用させず、静止摩擦力のみにより当該鏡筒移動体15Mを左端位置又は右端位置に静止させるようにしても良い。
【0201】
さらに上述した実施の形態においては、駆動部40のモータを鏡筒支持部31側に固定し、連結部50を介して鏡筒移動体15Mにその駆動力を伝達して移動させるようにした場合について述べた。
【0202】
本発明はこれに限らず、例えば駆動部40のモータを鏡筒移動体15M側に固定し、連結部50を介して鏡筒支持部31側にその駆動力を伝達し、当該鏡筒移動体15Mを移動させるようにしても良い。
【0203】
さらに上述した実施の形態においては、押付部70において、カム75等を鏡筒支持部31側に取り付け、カムガイド80を鏡筒移動体15Mにおける移動ベース24の上面に取り付けるようにした場合について述べた。
【0204】
本発明はこれに限らず、例えばカム75等を鏡筒移動体15M側に取り付け、カムガイド80を鏡筒支持部31側に取り付けるようにしても良い。具体的には、例えばガイド軸72及び73が下方向へ突出するように、すなわち上下反転した状態でカム75等を設け、カムガイド80における傾斜部80A及び80B並びに平坦部80Cが下面となるように鏡筒支持部31に取り付ければ良い。
【0205】
この場合、要は、カム75の押付力Fにより、カムガイド80を介して押付対象物(この場合の鏡筒支持部31又は実施の形態における鏡筒移動体15M)をガイド軸72及び73の支持物(この場合の鏡筒移動体15M又は実施の形態における鏡筒支持部31)に押し付け得れば良い。
【0206】
さらに上述した実施の形態においては、押付部70を鏡筒支持部31の後面側に1組のみ設けるようにした場合について述べた。
【0207】
本発明はこれに限らず、例えば当該押付部70を前面側に設け、或いは前後に2組以上設けるようにしても良い。
【0208】
さらに上述した実施の形態においては、レール32A及び32Bを左右方向に延長するよう設置し、レールガイド33A〜Dを当該レール32A及び32Bにそれぞれ係合させ摺動させることにより、鏡筒支持部21に対し鏡筒移動体15Mを左右方向に移動させるようにした場合について述べた。
【0209】
本発明はこれに限らず、例えば左右方向に延長された溝と当該溝内を摺動する突起との組み合わせ等、種々の移動機構により、鏡筒支持部21に対し鏡筒移動体15Mを左右方向に移動させるようにしても良い。
【0210】
さらに上述した実施の形態においては、顕微鏡ユニット2の対物レンズ14を固定し、2種類の結像レンズ15A及び15Bを鏡筒切替部15により切り替えるようにした場合について述べた。
【0211】
本発明はこれに限らず、例えば結像レンズを固定し、互いに倍率の異なる2種類の対物レンズを切り替える場合に鏡筒切替部15を使用する等、種々の光学素子を切り替える場合に当該鏡筒切替部15を用いるようにしても良い。
【0212】
さらに上述した実施の形態においては、移動ベース34上に2本の結像レンズ15A及び15Bを左右方向に配置し、鏡筒切替部15の駆動部40によって鏡筒移動体15Mを左右方向に移動させることにより、当該結像レンズ15A又は15Bに切り替えるようにした場合について述べた。
【0213】
本発明はこれに限らず、例えば2組の駆動部40の組み合わせにより、4本の結像レンズを切り替えるようにしても良い。具体的には、例えば移動ベース34上に4本の結像レンズを左右及び前後に2本ずつ配置し、移動ベースと鏡筒支持部31との間に中間移動ベースをさらに設け、2組の駆動部40を設ける。そして、第1の駆動部40により鏡筒支持部31に対し中間移動ベースを左右方向に移動させ、第2の駆動部により当該中間移動ベースに対し移動ベース34を前後方向に移動させるようにすれば良い。
【0214】
さらに上述した実施の形態においては、本体部としての鏡筒支持部31と、移動体部としての鏡筒移動体15Mと、移動部としてのレール32A及び32B並びにレールガイド33A、33B、33C及び33Dと、移動限界位置規定部としての位置規定部35AX及び35BXと、駆動力発生部としてのモータ42と、連結部としての連結部50と、保持部としての押付部70と、制御部としての制御ユニット3とによって光学素子切替装置としての顕微鏡システム1を構成する場合について述べた。
【0215】
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる本体部と、移動体部と、移動部と、移動限界位置規定部と、駆動力発生部と、連結部と、保持部と、制御部とによって光学素子切替装置を構成するようにしても良い。
【0216】
さらに上述した実施の形態においては、本体部としての鏡筒支持部31と、撮像素子としての撮像素子17Bと、移動体部としての鏡筒移動体15Mと、移動部としてのレール32A及び32B並びにレールガイド33A、33B、33C及び33Dと、移動限界位置規定部としての位置規定部35AX及び35BXと、駆動力発生部としてのモータ42と、連結部としての連結部50と、保持部としての押付部70と、制御部としての制御ユニット3とによって顕微鏡システムとしての顕微鏡システム1を構成する場合について述べた。
【0217】
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる本体部と、撮像素子と、移動体部と、移動部と、移動限界位置規定部と、駆動力発生部と、連結部と、保持部と、制御部とによって顕微鏡システムを構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明は、種々の構成の顕微鏡や撮像装置等、光路上に設ける光学素子を切り替える種々の光学機器でも利用できる。
【符号の説明】
【0219】
1……顕微鏡システム、2……顕微鏡ユニット、3……制御ユニット、15……鏡筒切替部、15M……鏡筒移動体、17B……撮像素子、21……制御部、31……鏡筒支持部、32A、32B……レール、33A、33B、33C、33D……レールガイド、34……移動ベース、34AX、34BX……接触部、35A、35B……ストッパ、35AX、35BX……位置規定部、40……駆動部、42……モータ、43……プーリー、46……ベルト、50……連結部、51……上挟持部、52……下挟持部、53……軸体、54……左固定部、55……右固定部、56、57、76、77……コイルばね、58、59、78、79……抜け止め部、70……押付部、72、73……ガイド軸、74……カムブロック、75……カム、80……カムガイド、80A、80B……傾斜部、80C……平坦部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路が設定された本体部と、
2種類の光学素子が取り付けられた移動体部と、
上記2種類の光学素子の光軸をいずれも所定の移動線上で移動させることによりいずれかの上記光学素子の光軸を上記光路の光軸に一致させるよう、上記本体部に対し上記移動体部を移動させる移動部と、
上記移動線に沿った第1方向及びその反対方向でなる第2方向それぞれに関し、上記本体部に対する上記移動体部の移動限界位置を規定する移動限界位置規定部と、
上記移動体部を上記第1方向または上記第2方向へ所定の単位移動距離ずつ移動させる駆動力を発生し所定の伝達部に伝達する駆動力発生部と、
上記伝達部と上記移動体部との間を所定の弾性体を介して連結し、当該上記伝達部に対し当該移動体部を上記第1方向及び上記第2方向それぞれに上記移動単位よりも大きい弾性変位幅の範囲内で変位させる連結部と、
上記移動限界位置に移動された上記移動体部に対し、上記連結部に発生する弾性力よりも強い力を当該弾性力が作用する方向と反対の方向に作用させて当該移動体部を当該移動限界位置に保持する保持部と、
上記移動体部を移動させる際、当該移動体部を上記移動限界位置よりも遠方へ移動させ得る駆動力を供給するよう上記駆動力発生部を制御する制御部と
を有する光学素子切替装置。
【請求項2】
上記移動体部が上記移動限界位置の近傍に位置することを検出するセンサ
をさらに有し、
上記制御部は、
上記センサにより上記移動体部が上記移動限界位置の近傍に有ることを検出した後、上記駆動力発生部に対し、上記移動体部を上記移動限界位置よりも遠方に移動させ得る距離だけ移動させるよう制御する
請求項1に記載の光学素子切替装置。
【請求項3】
上記駆動力発生部は、ステッピングモータでなり、
上記伝達部は、上記ステッピングモータの出力軸に取り付けられたプーリーを介して上記駆動力が伝達されるベルトでなる
請求項1に記載の光学素子切替装置。
【請求項4】
上記ステッピングモータは、上記本体部に対して固定され、
上記連結部は、
上記ベルトの一部に固定されたベルト側固定部と、
上記ベルト側固定部に取り付けられ上記第1及び第2の方向にそれぞれ延長された第1及び第2軸体部と、
上記移動体部におけるベルト側固定部の上記第1方向側及び上記第2方向側にそれぞれ取り付けられ、上記移動線に沿った方向に上記軸体部を挿通可能な挿通穴が設けられた第1及び第2移動体部側固定部と、
上記第1軸体部に取り付けられた第1ストッパと上記第1移動体部側固定部との間に圧縮された状態で上記第1軸体部に挿通された第1コイルバネと、
上記第2軸体部に取り付けられた第2ストッパと上記第2移動体部側固定部との間に圧縮された状態で上記第2軸体部に挿通された第2コイルバネと
を有する請求項3に記載の光学素子切替装置。
【請求項5】
上記保持部は、
上記移動体部又は上記本体部に取り付けられ、上記移動線に沿って上記2種類の光学素子の光軸間隔以上に延長されたカムガイドと、
上記本体部又は上記移動体部に取り付けられ、所定の押当体を当該本体部又は当該移動体部へ向けて弾性力を介して上記カムガイドに押し当てる押当部と
を有し、
上記カムガイドは、
上記押当体が押し当てられる押当面における、上記移動体部が上記第1方向側又は上記第2方向側の移動限界位置にあるときに上記押当体が押し当てる箇所の近傍を、当該移動体部が当該移動限界位置へ近づくに連れて上記本体部又は上記移動体部に近づくよう傾斜された第1及び第2傾斜部を有する
請求項1に記載の光学素子切替装置。
【請求項6】
上記カムガイドは、
上記第1又は第2傾斜部において上記押当部が当該カムガイドに対し上記第2方向又は上記第1方向へ作用させる保持力が、上記連結部により上記移動体部を上記第1方向又は上記第2方向へ押し付ける押付力よりも強くなるよう、上記傾斜部の傾斜角度が定められている
請求項5に記載の光学素子切替装置。
【請求項7】
上記押当部は、
上記本体部又は上記移動体部から上記弾性力が加えられた中間支持体と、
上記中間支持体に回転自在に取り付けられたローラーと
を有する請求項5に記載の光学素子切替装置。
【請求項8】
上記保持部は、
上記制御部から上記駆動力発生部を制御させることにより上記移動体部を移動させた方向に上記駆動力を発生させ続ける
請求項1に記載の光学素子切替装置。
【請求項9】
撮像対象に焦点を結ぶ対物レンズが取り付けられた本体部と、
上記対物レンズ及び所定の光学素子を介して上記撮像対象を撮像する撮像素子と、
上記撮像対象の像を上記撮像素子に結像させる2種類の結像レンズが取り付けられた移動体部と、
上記2種類の結像レンズの光軸をいずれも所定の移動線上で移動させることによりいずれかの上記結像レンズの光軸を上記光路の光軸に一致させるよう、上記本体部に対し上記移動体部を移動させる移動部と、
上記移動線に沿った第1方向及びその反対方向でなる第2方向それぞれに関し、上記本体部に対する上記移動体部の移動限界位置を規定する移動限界位置規定部と、
上記移動体部を上記第1方向または上記第2方向へ所定移動距離ずつ移動させる駆動力を発生し所定の伝達部に伝達する駆動力発生部と、
上記伝達部と上記移動体部との間を所定の弾性体を介して連結し、当該上記伝達部に対し当該移動体部を上記第1方向及び上記第2方向それぞれに上記移動単位よりも大きい弾性変位幅の範囲内で変位させる連結部と、
上記移動限界位置に移動された上記移動体部に対し、上記連結部に発生する弾性力よりも強い力を当該弾性力が作用する方向と反対の方向に作用させて当該移動体部を当該移動限界位置に保持する保持部と、
上記移動体部を移動させる際、当該移動体部を上記移動限界位置よりも遠方へ移動させ得る駆動力を供給するよう上記駆動力発生部を制御する制御部と
を有する顕微鏡システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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