説明

光学結晶保持構造及び波長変換装置

【課題】この発明は、簡便にして容易に高精度な固定保持を実現し得、且つ、安定した高効率な熱制御を実現し得るようにすることにある。
【解決手段】光学結晶15の中間部を熱伝導グリス16を介在させてグリス流動孔122を有したホルダ10の保持部11及び分割保持部12で挟装して、その両端部を、Oリング18を介して弾性的に位置決め保持すると共に、保持部11及び分割保持部12の周囲を、Oリング181を介して封止して配置し、このホルダ10をペルチェ素子19及びヒートシンク21を介して熱的に結合させ、且つ、ベース21に対して断熱結合させて取付け配置するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば固体レーザ用光学結晶等の光学結晶保持構造及び波長変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、固体レーザ用光学結晶を用いた波長変換装置は、波長変換用の光学結晶にレーザ光を照射して共振させることで、所望の波長のレーザ光の抽出が行われる。そのため、このような波長変換装置においては、その光学結晶を光軸上に均一な保持力で位置決め保持すると共に、その波長変換時に発生する熱による熱変形によって、結晶に不均一な応力が発生することを防止して、安定な波長変換を実現するようにした光学結晶保持構造が備えられる。
【0003】
この光学結晶保持構造としては、例えば光学結晶を、熱伝導性を有するヒートシンクで形成される一対の押圧板、熱伝導シートを用いて狭着して保持板及び固定具を用いて位置決め保持することで、均一な保持を実現したうえで、波長変換時に発生する熱を、押圧板及び熱伝導シートを介して放熱するようにしたホルダ構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところが、上記光学結晶保持構造では、光学結晶を一対の押圧板、保持板及び固定具を用いて位置決め保持している構成上、結晶に均一な力が加わっていることを確認することが必要で、その光学結晶の保持調整作業が面倒であるという問題を有する。
【0005】
一方、レーザ発振器等の冷却手段においては、吸熱部と放熱部を有した周知のペルチェ素子とヒートシンクを組み合わせて熱制御効率を高めるように構成したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、上記冷却手段では、上記光学結晶保持構造における熱制御に適用した場合、その熱制御時に発生するペルチェ素子及びヒートシンクの熱変形により、光学結晶の位置・角度が変化してレーザ出力が不安定になるという不都合を有する。
【特許文献1】特開2004−363129号公報
【特許文献2】特開2004−347137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記光学結晶保持構造では、光学結晶の保持調整作業が面倒であると共に、安定した効率的な熱制御が困難で、熱影響を受け易いという問題を有する。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、簡便にして容易に高精度な固定保持を実現し得、且つ、安定した高効率な熱制御を実現し得るようにした光学結晶保持構造及び波長変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、中間部に熱伝導グリスの塗布された棒状の光学結晶の両端部が弾性部材を介して位置決め保持されるもので、前記熱伝導グリスの塗布された光学結晶の中間部を挟装する少なくとも一方側にグリス流動孔の形成された分割自在な挟装保持部が設けられるホルダと、前記ホルダを支持するベースと、前記ホルダに対して熱的に結合される冷却手段とを備えて光学結晶保持構造を構成した。
【0010】
上記構成によれば、光学結晶は、その中間部が熱伝導グリスを介在させてグリス流動孔を有したホルダの挟装保持部に挟装されると共に、その両端部が弾性部材を介して該ホルダに保持され、このホルダが冷却手段を介してベースに支持される。これにより、光学結晶に不均一な力を与えることなく、ホルダへの容易にして確実な固定保持が実現されると共に、熱伝導グリスにより、光学結晶の発熱量に応じたホルダへの高効率な熱伝導が実現され、冷却手段を介した安定した熱制御が可能となり、ホルダによる光学結晶の高精度な位置決め保持が実現される。
【0011】
また、この発明は、棒状の光学結晶を位置決め保持するホルダと、前記ホルダに対して吸熱部が熱的に結合され、前記ホルダの熱を移送するペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の放熱部に熱的に結合されるヒートシンクと、前記ホルダ及び前記ヒートシンクを支持するベースと、前記ベースに対して前記ホルダ及びヒートシンクを断熱結合する断熱手段とを備えて光学結晶保持構造を構成した。
【0012】
上各記構成によれば、光学結晶は、ホルダに位置決め保持され、このホルダがペルチェ素子を介してヒートシンクに熱的に結合された状態で、ホルダ及びヒートシンクが断熱手段を介在してベースに断熱されて取付け配置される。これにより、光学結晶の発熱は、位置決め保持されたホルダを介してペルチェ素子、ヒートシンクに熱伝導されて効率的に制御され、ホルダによる光学結晶の高精度な位置決め保持が可能とする。
【0013】
また、この発明は、棒状の光学結晶を位置決め保持するホルダと、前記ホルダに対して吸熱部が熱的に結合され、前記ホルダの熱を移送するペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の放熱部に熱的に結合されるヒートシンクと、前記ホルダを支持するベースと、前記ベースに対して前記ホルダを断熱結合すると共に、前記ヒートシンクを前記ホルダに断熱結合する断熱手段とを備えて光学結晶保持構造を構成した。
【0014】
上各記構成によれば、光学結晶は、ホルダに位置決め保持され、このホルダがペルチェ素子を介してヒートシンクに熱的に結合された状態で、ホルダが断熱手段を介してベースに断熱されて取付けられると共に、ヒートシンクが断熱手段を介在してホルダに断熱結合されて取付け配置される。これにより、光学結晶の発熱は、位置決め保持されたホルダを介してペルチェ素子、ヒートシンクに熱伝導されて効率的に制御され、ホルダによる光学結晶の高精度な位置決め保持が可能とする。
【0015】
また、この発明は、中間部に熱伝導グリスの塗布された棒状の光学結晶の両端部が弾性部材を介して位置決め保持されるもので、前記熱伝導グリスの塗布された光学結晶の中間部を挟装する少なくとも一方側にグリス流動孔の形成された分割自在な挟装保持部が設けられるホルダと、前記ホルダを支持するベースと、前記ホルダに対して熱的に結合される冷却手段とを有する光学結晶保持機構と、前記光学結晶保持機構に保持された光学結晶に照射されたレーザ光の波長を変換して出力する波長変換手段とを備えて波長変換装置を構成した。
【0016】
上記構成によれば、光学結晶は、光学結晶保持機構のホルダに熱伝導グリスを介在して熱的に結合させた状態で、弾性部材を介して位置決め固定され、その熱量が熱伝導グリスを介してホルダに熱輸送されて冷却される。これにより、光学結晶のホルダへの容易な保持が実現されると共に、光学結晶の高効率な熱制御が実現されて、熱変形の影響の無い高精度な位置決め保持を実現され、波長変換手段による高精度な波長変換を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、この発明によれば、簡便にして容易に高精度な固定保持を実現し得、且つ、安定した高効率な熱制御を実現し得るようにした光学結晶保持構造及び波長変換装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態に係る光学結晶保持構造及び波長変換装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、この発明の一実施の形態に係る光学結晶保持構造を示すもので、光学結晶保持機構を構成するホルダ10には、挟装保持部を構成する略半円形状の保持溝111を有する保持部11が立設され、この保持部11には、略半円形状の保持溝121を有する分割保持部12が螺子部材13及びスプリングワッシャ14を用いて分離合体自在に取付け配置される(図2参照)。
【0020】
ここで、上記保持部11の保持溝111及び分割保持部12の保持溝121は、合体状態で棒状、例えば円柱状に形成された光学結晶15の外径形状に対応するように形成され、その保持溝111,121により上記光学結晶15の中間部を挟装保持する。そして、光学結晶13の中間部と保持溝111,121との間には、周知の熱伝導グリス16が介在される。
【0021】
上記分割保持部12には、グリス流動孔122が結晶光軸方向に対して略直交して形成され、このグリス流動孔122は、その保持溝121に連通される。これにより、グリス流動孔122には、組立時の余分なグリスが吸収されると共に、光学結晶15と保持溝121と間に介在される熱伝導グリス16が光学結晶15の発熱温度に応じて選択的に出入りして外部への流出が防止される。なお、このグリス流動孔122は、保持部11に設けるようにしても良い。
【0022】
また、ホルダ10の保持部11及び分割保持部12には、その保持溝111,121の両端にそれぞれ固定板17が、そのレーザ光挿通孔172を保持溝111.121の中心に合わせて当て付けられて、螺子部材13及びスプリングワッシャ14を用いて取付けられる(図3参照)。この固定板17には、凹状収容部171が光学結晶15の両端に対応して設けられ、この凹状収容部171には、上記光学結晶15の両端に外挿された弾性部材であるOリング18が圧入する如く挿入されて弾性係合される。そして、この凹状収容部171の略中央部には、レーザ光挿通孔172が、上記保持溝111,121に挟装される光学結晶15の光軸に対応して設けられる。この際、光学結晶15は、ホルダ中心に導き、且つその周囲に均一的に熱伝導グリス16が塗布される。
【0023】
さらに、上記固定板17には、凹状収容部173が上記保持部11及び分割保持部12の周壁に対応して設けられ、この凹状収容部173には、Oリング181が圧入する如く弾性係合されて収容される。このOリング181は、固定板17が上述したように保持部11及び分割保持部12に対して螺子部材13及びスプリングワッシャ14を介して取付けられた状態で、該保持部11及び分割保持部12との間を封止にして、グリスの漏れを阻止する。
【0024】
ここで、上記ホルダ10、保持部11、分解保持部12及び固定板17は、例えば熱伝導性の良い銅等の金属材料で形成される。
【0025】
上記ホルダ10の基端には、冷却手段を構成する周知のペルチェ素子19の吸熱部191が例えば図示しない熱伝導グリスを介在して熱的に結合して取付けられ、このペルチェ素子19の放熱部192には、板状の複数のフィン201が並設配置される、例えばアルミニウムで形成されたヒートシンク20の背面側のベース部202が図示しない熱伝導グリスを介在して熱的に結合されて取付けられる。
【0026】
このうちペルチェ素子19は、ベース21に設けられる挿通孔部211に収容配置される。そして、他方のヒートシンク20は、ベース21の挿通孔部211に挿通されてエアーダクト22内にそのフィン201が風(エアー)の流れ方向に沿うように収容される。このヒートシンク20には、例えば図4に示すようにそのフィン201の設けられるベース部202の一方面の略中央部に一本の溝203が形成される。
【0027】
なお、このヒートシンク20のベース部202に設ける溝203としては、上記説明では、一本を設けて構成したが、これに限るものでなく、その他、クロス状(十字状)に設けたり、複数本を所定の間隔に並設するように構成したり、各種配置構成が可能であり、その本数を増やすことにより、ヒートシンク20の柔軟性の向上が図れることで、さらに熱変形に対する影響防止の促進を図ることが可能となる。
【0028】
そして、上記ヒートシンク20のフィン201の形状としては、上記説明では、板状のものを並設配置するように構成したが、この形状構成に限ることなく、その他、円柱状等のピン形状のものを所定の間隔に立設して配置したり、各種の形状のものを用いて構成することが可能である。
【0029】
上記ホルダ10には、例えばそのベース21との間に断熱手段を構成する、断熱パッキン23が配置される。この断熱パッキン23には、図5に示すように取付け用の断熱ワッシャ24が設けられ、その断熱ワッシャ24に対してホルダ10の上面側から螺子部材131が断熱ワッシャ24及びスプリングワッシャ141を介在して挿入される。そして、この螺子部材131が、ベース21に螺着されることで、ホルダ10とベースは、断熱結合される。
【0030】
また、上記ベース21には、例えばそのヒートシンク20との間に断熱手段を構成する2枚の断熱パッキン23が配置される。この断熱パッキン23には、同様に取付け用の断熱ワッシャ24が設けられ(図5参照)、その断熱ワッシャ24に対してベース21の上面側から螺子部材131が断熱ワッシャ24及びスプリングワッシャ141を介在して挿入される。そして、この螺子部材131がヒートシンク20に螺着されることで、ベース21とヒートシンク20とが断熱結合される。
【0031】
上記断熱パッキン23は、例えば単泡シリコンゴム等の比較的ヤング率の低い断熱材料で形成され、その断熱ワッシャ24は、セラミックス等の断熱パッキン23に比してヤング率の高い断熱材料で形成される。そして、この断熱パッキン23は、上記螺子部材(図示せず)で断熱ワッシャ24を締付けて取付けられた状態で、上記ヒートシンク20及びホルダ10と、ベース21との間にそれぞれ介在されていることにより、所望の圧縮率で配置される。
【0032】
ここで、上記ホルダ10は、断熱ワッシャ24があるため、規定トルクで固定するだけで、所望の高さに固定されると共に、規定トルクで締付可能であることにより螺合の緩み防止も実現される。この結果、断熱パッキン23は、ヒートシンク20及びホルダ10とベース21との間の高精度な位置決めを確保したうえで、優れた特性を有する断熱構造を形成することができる。
【0033】
なお、この断熱手段を構成する断熱パッキン23及び断熱ワッシャ24の配置構成としては、上述したような螺子部材131をベース21及びヒートシンク20に直接的に螺着するように構成するだけに限るものでなく、その他、ナット構造等各種の取付け構造が構成可能である。そして、この熱結合を行う断熱手段としては、上記説明では、ベース21及びホルダ10の上面側を断熱ワッシャ24のみを用いて構成した場合で説明しているが、これに限ることなく、その他、断熱パッキン23及び断熱ワッシャ24の双方を用いて構成することも可能である。
【0034】
上記構成において、光学結晶15は、その両端がOリング18に挿入され、その中間部の周囲の熱伝導グリス16が塗布され、中間部がホルダ10の保持部11の保持溝111に収容される。そして、この保持部11上には、分割保持部12がその保持溝121に光学結晶15の中間部を収容させて、該分割保持部12を合体させ、相互間を、Oリング181を取付けた固定板17で挟装して、該固定板17が螺子部材13により、スプリングワッシャ14を介在して螺着されて合体される。
【0035】
ここで、光学結晶15は、その両端が保持部11及び分割保持部12から突出され、その両端が固定板17のOリング収容部171に収容され、この固定板17がスプリングワッシャ14を介在して螺子部材13で保持部11及び分割保持部12に架設するように螺着される。このように光学結晶15は、Oリング18を介して弾性を有して固定板17に位置決め固定される。そして、この固定板17は、保持部11及び分解保持部12の周囲にOリング181を介して弾性係合されて相互間が封止される。これにより、光学結晶15は、熱伝導グリス16を介して保持部11及び分解保持部12に熱的に結合された状態で、高精度な精度でホルダ10に取付けられる。
【0036】
そして、ホルダ10は、ペルチェ素子19を介してヒートシンク20に熱的に結合され、光学結晶15で発生した熱量が熱伝導グリス16、保持部11、固定板17、分割保持部12を経由して伝導されると、ペルチェ素子19を介してヒートシンク20から放熱され、所望の光学特性を確保するような温度に熱制御される。これにより、光学結晶15の高精度な熱制御を安定して行うことが可能となる。
【0037】
この際、ホルダ10及びヒートシンク20に伝導された熱量は、断熱パッキン23及び断熱ワッシャ24により断熱され、ベース21に熱伝導されることが防止される。同時に、ヒートシンク20は、その放熱時に発生する熱変形やペルチェ素子19の熱変形がその溝203の作用により吸収され、ホルダ10の変形を緩和し、光学結晶15の安定した保持を可能とする。
【0038】
このように、上記光学結晶保持構造は、光学結晶15の中間部を熱伝導グリス16を介在させてグリス流動孔122を有したホルダ10の保持部11及び分割保持部12で挟装して、その両端部を、Oリング18を介して弾性的に位置決め保持すると共に、保持部11及び分割保持部12の周囲を、Oリング181を介して封止して配置し、このホルダ10をペルチェ素子19及びヒートシンク21を介して熱的に結合させ、且つ、ベース21に対して断熱結合させて取付け配置するように構成した。
【0039】
これによれば、光学結晶15のホルダ10への容易にして確実な固定保持が実現されると共に、熱伝導グリス16により、ホルダ10への高効率な熱伝導が実現され、冷却手段を介した安定した熱制御が可能となり、ホルダ10による光学結晶15の高精度な位置決め保持が可能とする。
【0040】
なお、上記光学結晶保持構造においては、波長変換用光学結晶15を、グリス流動孔122を有するホルダ10に熱伝導グリス16を介在して熱的に結合させた状態で、Oリング18を介して位置決め固定する保持構成と、このホルダ10に対してペルチェ素子19、ヒートシンク20を熱的に結合して、このホルダ10及びヒートシンク20を、断熱パッキン23及び断熱ワッシャ24を用いてベース21に断熱配置する冷却構成とを備えて構成した場合で説明したが、この構造に限るものでなく、その他、上述した簡便にして容易な位置決め固定が可能な保持構成、あるいは安定した高精度な熱制御が可能な冷却構成のいずれか一方を備えて構成することも可能である。
【0041】
また、上記実施の形態では、ヒートシンク20をベース21に断熱パッキン23及び断熱ワッシャ24を介して断熱結合するように構成した場合で説明したが、これに限ることなく、その他、例えば図6に示すようにヒートシンク20を配置構成することも可能である。但し、図6中においては、図の便宜上、上記図1における固定板17を記述していないが、その他の図1と同一部分については、同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0042】
即ち、図6に示す実施の形態では、ホルダ10をベース21に対して断熱パッキン23及び断熱ワッシャ24を介して断熱結合して、ヒートシンク20をホルダ10に対して直接的に断熱パッキン23及び断熱ワッシャ24を介して断熱結合するように構成したもので、組立作業性の向上を図ることが可能となる。そして、この図6に示す実施の形態の場合には、ヒートシンク20を、ホルダ10の取付け部位に対して断熱ワッシャ24のみを用いて断熱結合するように構成することも可能で、同様の断熱特性を実現することができる。
【0043】
ここで、上述したこの発明の特徴とする光学結晶保持構造を用いた波長変換装置について説明する。
【0044】
図7は、この発明の一実施の形態に係る波長変換装置を示すもので、上述した光学結晶保持構造における光学結晶保持機構を構成するホルダ10の設置された上記ベース21の後段には、例えばレーザ光をパルス化するキュースイッチ部25、偏光の向きを揃えるブリュースタ部26、中間ミラー27、変換光学系28、出力ミラー29が順に光軸を合わせて配置されて二段階変換型が形成される。但し、図7において、変換光学系28は、上述したこの発明の特徴とする光学結晶保持構造と同様に光学結晶が位置決め保持され、同様に冷却手段を介して熱制御されて配されることで、ここでは、同一部分に同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0045】
即ち、上記ホルダ10の保持部11及び分割保持部12に挟装されて位置決め保持された光学結晶15には、入射される波長Aのレーザ光を透過して波長Bの光を反射するミラーコーティングが施され、透過した波長Aの光をキュースイッチ部25でパルス化してブリュースタ部26に出力する。ブリュースタ部26は、入射したレーザ光の偏光を揃えて中間ミラー27に出力する。中間ミラー27は、入射したレーザ光の波長Bを透過して、波長Cを反射するように構成され、ブリュースタ部26を介して入射された波長Bのレーザ光を変換光学系28に案内する。
【0046】
この変換光学系28は、入射した波長Bのレーザ光を波長Cに変換して出力ミラー29に出力する。この出力ミラー29は、入射された波長Bのレーザ光を反射させ、上記光学結晶15との間で共振させると共に、変換光学系28で変換された波長Cのレーザ光を一定の割合で透過させて出力する。
【0047】
このように、上記波長変換装置においては、波長変換用光学結晶15を、ホルダ10の保持部11及び分割保持部12に熱伝導グリス16を介在して熱的に結合させた状態で、Oリング18を介して位置決め固定し、このホルダ10に対して冷却手段であるペルチェ素子19、ヒートシンク20を熱的に結合して、このホルダ10及びヒートシンク20を、断熱パッキン23及び断熱ワッシャ24を介してキュースイッチ部25、ブリュースタ部26、中間ミラー27、変換光学系28、出力ミラー29を設置するベース21に断熱して取付け配置し、波長変換を行うように構成した。
【0048】
これによれば、光学結晶15の容易な保持が実現されると共に、光学結晶15の高効率な熱制御が実現されて、変換装置を構成するベース21への熱変形の無い高精度な位置決め保持を実現され、高精度な波長変換を行うことが可能となる。
【0049】
なお、上記実施の形態では、二段階変換型の波長変換構成に適用した場合で説明したが、この波長変換構成に限ることなく、構成可能である。
【0050】
また、上記波長変換装置は、本発明の光学結晶保持構造を用いた装置の一例であり、他の装置であっても適用し得ることはいうまでもない。
【0051】
よって、この発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0052】
例えば実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の一実施の形態に係る光学結晶保持構造の要部を断面して示した図である。
【図2】図1のホルダと光学結晶との関係を示した分解して示した図である。
【図3】図1のホルダとペルチェ素子及びヒートシンクとの配置関係を示した図である。
【図4】図1のヒートシンクの詳細を示した図である。
【図5】図1の断熱パッキン及び断熱ワッシャを取出して示した図である。
【図6】この発明の他の実施の形態に係る光学結晶保持構造の要部を断面して示した図である。
【図7】この発明の一実施の形態に係る波長変換装置の配置構成を示した図である。
【符号の説明】
【0054】
10…ホルダ、11…保持部、111…保持溝、12…分割保持部、121…保持溝、122…グリス流動孔、13,131…螺子部材、14,141…スプリングワッシャ、15…光学結晶、16…熱伝導グリス、17…固定板、171,173…凹状収容部、172…レーザ光挿通孔、18,181…Oリング、19…ペルチェ素子、191…吸熱部、192…放熱部、20…ヒートシンク、201…フィン、202…ベース部、203…溝、21…ベース、211…挿通孔部、22…エアーダクト、23…断熱パッキン、24…断熱ワッシャ、25…キュースイッチ部、26…ブリュースタ部、27…中間ミラー、28…変換光学系、29…出力ミラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間部に熱伝導グリスの塗布された棒状の光学結晶の両端部が弾性部材を介して位置決め保持されるもので、前記熱伝導グリスの塗布された光学結晶の中間部を挟装する少なくとも一方側にグリス流動孔の形成された分割自在な挟装保持部が設けられるホルダと、
前記ホルダを支持するベースと、
前記ホルダに対して熱的に結合される冷却手段と、
を具備することを特徴とする光学結晶保持構造。
【請求項2】
棒状の光学結晶を位置決め保持するホルダと、
前記ホルダに対して吸熱部が熱的に結合され、前記ホルダの熱を移送するペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子の放熱部に熱的に結合されるヒートシンクと、
前記ホルダ及び前記ヒートシンクを支持するベースと、
前記ベースに対して前記ホルダ及びヒートシンクを断熱結合する断熱手段と、
を具備することを特徴とする光学結晶保持構造。
【請求項3】
棒状の光学結晶を位置決め保持するホルダと、
前記ホルダに対して吸熱部が熱的に結合され、前記ホルダの熱を移送するペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子の放熱部に熱的に結合されるヒートシンクと、
前記ホルダを支持するベースと、
前記ベースに対して前記ホルダを断熱結合すると共に、前記ヒートシンクを前記ホルダに断熱結合する断熱手段と、
を具備することを特徴とする光学結晶保持構造。
【請求項4】
前記ヒートシンクには、前記ペルチェ素子の放熱部との結合面におけるフィン側に溝部を形成したことを特徴とする請求項2又は3記載の光学結晶保持構造。
【請求項5】
前記断熱手段は、シート状の断熱パッキンと該断熱パッキンに比して硬質な断熱ワッシャで形成され、前記断熱ワッシャを介在して前記ホルダ及びヒートシンクに取付けられることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか記載の光学結晶保持構造。
【請求項6】
前記ペルチェ素子の吸熱部及び放熱部は、熱伝導グリスが介在されて前記ベース及び前記ヒートシンクと熱的に結合されることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか記載の光学結晶保持構造。
【請求項7】
中間部に熱伝導グリスの塗布された棒状の光学結晶の両端部が弾性部材を介して位置決め保持されるもので、前記熱伝導グリスの塗布された光学結晶の中間部を挟装する少なくとも一方側にグリス流動孔の形成された分割自在な挟装保持部が設けられるホルダと、前記ホルダを支持するベースとを有する光学結晶保持機構と、
前記光学結晶保持機構に保持された光学結晶に照射されたレーザ光の波長を変換して出力する波長変換手段と、
を具備することを特徴とする波長変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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