説明

光学装置の製造方法

【課題】良好な特性を得ることができる光学装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、マッハツェンダ変調器10をパッケージ70内に固定する工程と、マッハツェンダ変調器10を固定する工程の後、入力光を入力レンズ46に入射する工程と、入力レンズ46を介してマッハツェンダ変調器10に入力する入力光を検知し、入力光の検知結果に基づいて、入力レンズ46の位置合わせをする工程と、位置合わせをする工程の後、入力レンズ46をパッケージ70内に固定する工程と、を有する光学装置の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信用機器では、例えばLD(Laser Diode:レーザーダイオード)等の発光素子と、発光素子の出力光を変調する変調器とを備える光学装置が用いられることがある。例えば、特許文献1には、マッハツェンダ変調器が開示されている。このような光学装置では、LDとマッハツェンダ変調器との良好な光結合を得ることが求められる。このため、製造工程において光結合を調整することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−102160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、LDとマッハツェンダ変調器との光結合を調整する場合に、光学装置の特性が悪化することがあった。本発明は上記課題に鑑み、良好な特性を得ることができる光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、マッハツェンダ変調器をパッケージ内に固定する工程と、前記マッハツェンダ変調器を固定する工程の後、レンズを前記マッハツェンダ変調器の入力側に配置する工程と、前記レンズを配置する工程の後、入力光を前記レンズに入射する工程と、前記レンズを介して前記マッハツェンダ変調器に入力する前記入力光を検知し、前記入力光の検知結果に基づいて、前記レンズの位置合わせをする工程と、前記位置合わせをする工程の後、前記レンズを前記パッケージ内に固定する工程と、を有する光学装置の製造方法である。本発明によれば、良好な特性を得ることができる光学装置の製造方法を提供することができる。
【0006】
上記構成において、前記パッケージは、外部と接続するための外部接続電極を備え、前記マッハツェンダ変調器を固定する工程の後であって、前記レンズを配置する工程の前に、前記マッハツェンダ変調器が備える検知用電極と前記外部接続電極とをワイヤを介して接続する工程を有する構成とすることができる。この構成によれば、効率的に良好な特性を得ることができる。
【0007】
上記構成において、前記検知用電極は、前記マッハツェンダ変調器に設けられた位相調整用電極である構成とすることができる。この構成によれば、入力光を適切に検知することができる。
【0008】
上記構成において、前記レンズを配置する工程の前に、前記マッハツェンダ変調器に入力する変調信号を伝送するための伝送路を前記パッケージに設ける工程と、前記マッハツェンダ変調器に設けられた変調用電極と、前記伝送路とをワイヤを介して接続する工程と、を有する構成とすることができる。この構成によれば、効率的に良好な特性を得ることができる。
【0009】
上記構成において、発光素子を前記パッケージに固定する工程を有し、前記入力光は、前記発光素子の出力光である構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良好な特性を得ることができる光学装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、光学装置を例示する平面図である。
【図2】図2(a)〜図2(c)は、マッハツェンダ変調器の説明図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、比較例に係る光学装置の製造方法を例示する平面図である。
【図4】図4は、実施例1に係る光学装置の製造方法を例示する平面図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)は、実施例1に係る光学装置の製造方法を例示する平面図である。
【図6】図6(a)及び図6(b)は、実施例1に係る光学装置の製造方法を例示する平面図である。
【図7】図7は、実施例1に係る光学装置の製造方法を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
まず、マッハツェンダ変調器を用いた光学装置の構成について説明する。図1は、光学装置を例示する平面図である。
【0013】
図1に示すように、光学装置100は、LDユニット30、変調器ユニット50、高周波配線基板56、及びパッケージ70を備える。パッケージ70には、光ファイバ固定部66、セラミック端子72a及び72b、並びにパッケージウィンド74が設けられている。高周波配線基板56は、例えば複数のストリップラインを有する。光ファイバ固定部66には、パッケージウィンド74と対向するように光ファイバ64が挿入されている。また、パッケージウィンド74と光ファイバ64との間には、光アイソレータ60と第2出力レンズ62とが設けられている。セラミック端子72aと、セラミック端子72bとは、パッケージ70の対向する辺に沿って設けられている。セラミック端子72aには位相調整用電極76が含まれる。セラミック端子72bには、位相調整用電極76及び変調用ストリップライン78が含まれる。位相調整用電極76及び変調用ストリップライン78は、光学装置100の外部の電子機器と接続することが可能な外部接続電極である。
【0014】
LDユニット30は、LD32(発光素子)、LDレンズ33、光アイソレータ34、LDキャリア36、LDキャリアマウント38、TEC(Thermoelectric Cooler)39を備える。TEC39はパッケージ70の上面に搭載されている。LDキャリアマウント38はTEC39の上面に搭載されている。LDレンズ33、光アイソレータ34及びLDキャリア36は、LDキャリアマウント38の上面に搭載されている。LD32は、LDキャリア36の上面に搭載されている。LDレンズ33及び光アイソレータ34は、LD32と変調器ユニット50との間に配置されている。
【0015】
変調器ユニット50は、マッハツェンダ変調器10、ビームスプリッタ40a及び40b、PD(Photo Diode:フォトダイオード)42a及び42b、エタロン44、入力レンズ46、第1出力レンズ48、変調器キャリア52、変調器キャリアマウント53、並びにTEC54を備える。TEC54はパッケージ70の上面に搭載されている。変調器キャリアマウント53は、TEC54の上面に搭載されている。ビームスプリッタ40a及び40b、PD42a及び42b、エタロン44、入力レンズ46、第1出力レンズ48、並びに変調器キャリア52は、変調器キャリアマウント53の上面に搭載されている。マッハツェンダ変調器10は変調器キャリア52の上面に搭載されている。ビームスプリッタ40a及び40b、並びに入力レンズ46は、LDユニット30とマッハツェンダ変調器10との間に配置されている。第1出力レンズ48は、マッハツェンダ変調器10とパッケージウィンド74との間に配置されている。このように、マッハツェンダ変調器10と光ファイバ64との間には、マッハツェンダ変調器10に近い方から順に、第1出力レンズ48、パッケージウィンド74、光アイソレータ60、及び第2出力レンズ62が配置されている。また、高周波配線基板56は、パッケージ70の上面及び変調器キャリアマウント53の上面に搭載されている。変調器キャリア52には、位相調整用配線51、及び変調用ストリップライン55が設けられている。
【0016】
マッハツェンダ変調器10の位相調整用電極16(図2(a)において後述)は、ワイヤ41により位相調整用配線51と接続されている。位相調整用配線51は、ワイヤ41により、パッケージ70に設けられた位相調整用電極76と接続される。マッハツェンダ変調器10の変調用電極17(図2(a)において後述)は、ワイヤ41により、変調用ストリップライン55と接続されている。変調用ストリップライン55は、ワイヤ41により、高周波配線基板56と接続されている。高周波配線基板56は、ワイヤ41により、パッケージ70に設けられた変調用ストリップライン78と接続されている。パッケージ70は、例えばセラミック等の絶縁体からなる。LDキャリア36及び変調器キャリア52は、例えば窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックからなる。LDキャリアマウント38及び変調器キャリアマウント53は、例えばコバール(KOVAR)等の金属からなる。LDレンズ33、入力レンズ46、第1出力レンズ48、第2出力レンズ62、及びパッケージウィンド74は、例えばガラス又はプラスチック等からなる。各ワイヤ41は、例えばアルミニウム(Al)、又は金(Au)等の金属からなる。位相調整用電極16及び76、変調用電極17、位相調整用配線51、並びに変調用ストリップライン55及び78は、例えば金(Au)等の金属からなる。
【0017】
光学装置100の動作について説明する。なお、マッハツェンダ変調器10の構成及び動作については、図2(a)〜図2(c)において詳述する。LD32は、例えば出力光の波長が可変であるチューナブルレーザである。LD32は、温度を変化させることにより光の波長を調整するタイプのLDである。TEC39はLD32の温度を調整する。この結果、LD32の出力光の波長を調整することができる。なお、TEC54はマッハツェンダ変調器10をある一定の温度に保つことができる。LD32とマッハツェンダ変調器10とでは、異なる温度で動作する。従って、LD32とマッハツェンダ変調器10とは、独立に温度調整することが好ましい。このため、LD32が搭載されるTEC39と、マッハツェンダ変調器10が搭載されるTEC54とは別の部品とすることが好ましい。また、LD32が搭載されるLDキャリアマウント38と、マッハツェンダ変調器10が搭載される変調器キャリアマウント53とは、別の部品とすることが好ましい。言い換えれば、LDユニット30と変調器ユニット50とを、別の部品とすることが好ましい。なお、TEC39及び54は、例えばペルチェ素子からなる。
【0018】
LD32の出力光は、LDレンズ33及び光アイソレータ34を透過して、ビームスプリッタ40aに入力される。ビームスプリッタ40aは、入力された光を分岐する。分岐された光の一方はPD42aに入力され、他方の光はビームスプリッタ40bに入力される。PD42aは入力された光の強度を検出する。ビームスプリッタ40bは、入力された光を分岐する。分岐された光の一方はエタロン44に入力され、他方は入力レンズ46に入射する。エタロン44は、入力された光のうち特定の波長を有する光を透過させる。PD42bは、エタロン44を透過した光の強度を検出する。PD42aにより検出された光の強度と、PD42bにより検出された光の強度とを比較することにより、LD32の出力波長(出力光の波長)を検知することができる。その検知結果に基づいて、LD32の出力波長をフィードバック制御することができる。
【0019】
ビームスプリッタ40bを通過した光は入力レンズ46により収束され、マッハツェンダ変調器10が備える第1入力端21a又は第2入力端21b(図2(a)において後述)の一方に入力される。マッハツェンダ変調器10には、例えば外部の電子機器から、位相調整用電極76、位相調整用配線51、並びにワイヤ41を介して、位相調整のための電圧が印加される。また、マッハツェンダ変調器10には、例えば外部の電子機器から、変調用ストリップライン78、高周波配線基板56が有するストリップライン、変調用ストリップライン55、及びワイヤ41を介して、変調のための電圧が印加される。変調のための電圧は、例えばRF(Radio Frequency:高周波)信号である。マッハツェンダ変調器10から、LD32から入力された光を変調した光が、第1出力レンズ48に出力される。TEC54は、マッハツェンダ変調器10の温度を調整する。マッハツェンダ変調器10により変調された光は、第1出力レンズ48、パッケージウィンド74、光アイソレータ60及び第2出力レンズ62を透過する。光は、第2出力レンズ62により収束された後、光ファイバ64に入力され、光ファイバ64を通じて光学装置100の外部に出力される。このように、光学装置100は発光装置として機能する。次にマッハツェンダ変調器10について詳しく説明する。
【0020】
図2(a)〜図2(c)は、マッハツェンダ変調器10の説明図である。マッハツェンダ変調器10は、半導体基板上のメサ状の光導波路の経路を組み合わせて構成される変調器である。図2(a)は、マッハツェンダ変調器10の上面図である。図2(b)は、図2(a)のA−A線断面図である。図2(c)は、図2(a)のB−B線断面図である。なお、図2(a)においては、光の通過経路が点線で描かれている。
【0021】
図2(b)を参照して、光導波路は、半導体基板11上に形成されている。光導波路は、半導体基板11上において、下クラッド層12a、コア13、上クラッド層12bがこの順にメサ状に積層された構造を有している。半導体基板11の上面、光導波路の上面および側面には、パッシベーション膜14および絶縁膜15が順に積層されている。
【0022】
半導体基板11は、InPなどの半導体からなる。下クラッド層12aおよび上クラッド層12bは、InPなどの半導体からなる。コア13は、下クラッド層12aおよび上クラッド層12bよりもバンドギャップエネルギが小さい半導体からなり、例えばInGaAsPなどからなる。それにより、コア13を通過する光が下クラッド層12aおよび上クラッド層12bによってとじ込められる。パッシベーション膜14は、InPなどの半導体からなる。絶縁膜15は、SiNなどの絶縁体からなる。
【0023】
図2(a)を参照して、マッハツェンダ変調器10には、第1入力端21aに接続された第1入力光導波路22aが設けられ、第2入力端21bに接続された第2入力光導波路22bが設けられている。第1入力光導波路22aおよび第2入力光導波路22bは、第1MMI(Malti Mode Interference)23で合流し、第1光導波路24aおよび第2光導波路24bに分岐する。マッハツェンダ変調器10の長手方向を対称軸とした場合に、第1光導波路24aは第1入力端21aと同じ側に配置され、第2光導波路24bは第2入力端21bと同じ側に配置されている。
【0024】
第1光導波路24aおよび第2光導波路24bは第2MMI25で合流し、第1出力端27aに接続された第1出力光導波路26aと、第2出力端27bに接続された第2出力光導波路26bとに分岐する。マッハツェンダ変調器10の長手方向を対称軸とした場合に、第1出力端27aは第2光導波路24bと同じ側に配置され、第2出力端27bは第1光導波路24aと同じ側に配置されている。第1光導波路24aの光路長と第2光導波路24bの光路長との間には、あらかじめ差が設けられている。例えば、第1光導波路24aを伝播する光と第2光導波路24bを伝播する光とに−0.5πの位相差が生じるような、光路長差が設定されている。
【0025】
第1光導波路24aおよび第2光導波路24bのそれぞれには、位相調整用電極16および変調用電極17が設けられている。位相調整用電極16および変調用電極17は、互いに離間している。位相調整用電極16および変調用電極17の位置関係は特に限定されるものではないが、本実施例においては、位相調整用電極16は変調用電極17よりも光入力端側に配置されている。第1出力光導波路26aおよび第2出力光導波路26bのそれぞれには、光強度検出電極18が設けられている。
【0026】
図2(c)を参照して、変調用電極17は、上クラッド層12b上において、コンタクト層19を介して配置されている。コンタクト層19は、InGaAsなどの半導体からなる。なお、上クラッド層12bとコンタクト層19との間には、パッシベーション膜14および絶縁膜15は設けられていない。また、位相調整用電極16、変調用電極17および光強度検出電極18は、Auなどの金属からなる。
【0027】
各変調用電極17に電圧が印加されると、第1光導波路24aおよび第2光導波路24bにおいてコア13の屈折率が変化し、第1光導波路24aおよび第2光導波路24bを通過する光の位相が変化する。本実施例においては、各変調用電極17には、所定のDCバイアス電圧にHigh信号とLow信号とが交互に重畳された変調信号が入力される。各変調用電極17に入力される変調信号は、互いに逆相の関係を有する。すなわち、第1光導波路24aの変調用電極17にHigh信号が入力された場合には第2光導波路24bの変調用電極17にはLow信号が入力され、第1光導波路24aの変調用電極17にLow信号が入力された場合には第2光導波路24bの変調用電極17にHigh信号が入力される。この場合、各光導波路の屈折率に差が生じる。従って、第1光導波路24aを通過した光と第2光導波路24bを通過した光との間に位相差が生じる。
【0028】
第1光導波路24aを通過した光と第2光導波路24bを通過した光との位相差に応じて、光が出力される出力端が第1出力端27aと第2出力端27bとの間で切り替わる。具体的には、第1光導波路24aを通過した光の位相と第2光導波路24bを通過した光の位相との差が「−π」になった場合に第1出力端27aから光が出力され、当該位相差が「0」になった場合に第2出力端27bから光が出力される。本実施例においては、第1出力端27aの出力信号を変調光として利用する。
【0029】
各位相調整用電極16には、第1光導波路24aを通過した光と第2光導波路24bを通過した光との位相差を調整するためのDC電圧が印加される。例えば、第1光導波路24aの変調用電極17にHigh信号が入力されかつ第2光導波路24bの変調用電極17にLow信号が入力された場合に上記位相差が「−π」に調整され、第1光導波路24aの変調用電極17にLow信号が入力されかつ第2光導波路24bの変調用電極17にHigh信号が入力された場合に上記位相差が「0」に調整されるように、各位相調整用電極16にDC電圧が印加される。
【0030】
なお、各光強度検出電極18で検出される電気信号に基づいて、各出力端の出力信号の光強度を検出することができる。ここで、第1光導波路24aを通過した光と第2光導波路24bを通過した光との位相差が「0」又は「π」に合致して変化する場合には、第1出力端27aから出力される光の強度と第2出力端27bから出力される光の強度とは、所定の時間幅でほぼ一致する。従って、各光強度検出電極18で検出される光強度が一致するように、各位相調整用電極16に印加する電圧をフィードバック制御することによって、第1光導波路24aを通過した光と第2光導波路24bを通過した光との位相差を「0」と「π」とに合致させることができる。
【0031】
次に光学装置100の製造方法について説明する。図3(a)及び図3(b)は、比較例に係る光学装置の製造方法を例示する平面図である。
【0032】
図3(a)に示すように、LDキャリア36にLD32を搭載する。LD32を搭載した後、LD32の出力光が入力されるように、LDレンズ33、光アイソレータ34、及びLDキャリア36を、LDキャリアマウント38に搭載する。さらに、TEC54をパッケージ70に搭載する。TEC54には、PD42a及びPD42bが搭載された変調器キャリアマウント53が搭載される。光アイソレータ34を透過した光が入力され、分岐された光がPD42aに入力されるように、ビームスプリッタ40aを変調器キャリアマウント53に搭載する。ビームスプリッタ40aから出力された光が入力され、分岐された光がPD42bに入力されるように、ビームスプリッタ40bを変調器キャリアマウント53に搭載する。ビームスプリッタ40bから出力された光が入力されるように、入力レンズ46を変調器キャリアマウント53に搭載する。パッケージ70の外部に波長計(図示せず)を設け、入力レンズ46から出力された光の波長を波長計により検知しながら、エタロン44を変調器キャリアマウント53に搭載する。
【0033】
図3(b)に示すように、変調器キャリアマウント53に、マッハツェンダ変調器10が搭載された変調器キャリア52を搭載する。ここで、変調器キャリア52を変調器キャリアマウント53に固定する前に、ワイヤボンディングを行う。これにより、マッハツェンダ変調器10に入力される入力光を、位相調整用電極76を介して検知することが可能となる。例えば、パッケージ70外部の電流計を位相調整用電極76と接続し、電流を測定することにより、入力光の大きさが検知される。
【0034】
マッハツェンダ変調器10は、LD32と良好な光結合が得られる位置に固定することが好ましい。しかし、LD32、LDレンズ33、ビームスプリッタ40a及び40b等のそれぞれの実装精度により、光軸が変化することがある。このため、変調器キャリア52を一定の位置に固定することは困難である。そこで図中に矢印で示すように、変調器キャリア52を、図中の上下方向、左右方向、及び紙面に垂直な方向に移動させ、電流を測定しながら位置決めを行う。言い換えれば、入力光の検知結果に基づいて、光軸を合わせる調芯を行いながら、位置決めを行う。例えば、位相調整用電極76から出力される電流が極大、つまりマッハツェンダ変調器10に入力される入力光の大きさが極大となるように、マッハツェンダ変調器10の位置を定め、変調器キャリア52を固定する。
【0035】
しかし、ワイヤボンディングの後に変調器キャリア52を移動させるためには、ワイヤ41の長さを、電極間、及び電極−配線間を接続するために必要な長さよりも大きくすることが求められる。この結果、ワイヤ41のインダクタ成分が増大し、光学装置100の特性が悪化する可能性がある。特に、変調用ストリップライン78から変調信号としてRF信号が入力されるため、ワイヤ41の長さの増大は、特性を大きく悪化させる可能性がある。また、高周波配線基板56は、パッケージ70とは別の部品であり、変調器キャリア52とセラミック端子72bとの間に配置される。このため、変調器キャリア52とセラミック端子72bとの間のスペースが狭くなると、高周波配線基板56を搭載できるスペースがなくなる可能性もある。この結果、高周波配線基板56の搭載が困難になる。
【0036】
次に実施例1について説明する。図4〜図7は、実施例1に係る光学装置の製造方法を例示する平面図である。
【0037】
図4に示すように、まずLD32が搭載されたLDキャリア36、及びLDレンズ33をLDキャリアマウント38に搭載する。LD32とLDキャリア36、並びにLDキャリア36及びLDレンズ33とLDキャリアマウント38とは、それぞれ例えば接着剤、又はレーザ溶接等の溶接又はハンダにより固定される。また、マッハツェンダ変調器10を変調器キャリア52に搭載する。変調器キャリア52を変調器キャリアマウント53に搭載する。マッハツェンダ変調器10と変調器キャリア52、及び変調器キャリア52と変調器キャリアマウント53とは、それぞれ例えば接着剤又は溶接又はハンダにより固定される。
【0038】
図5(a)に示すように、パッケージ70にTEC39及びTEC54を搭載した後に、LDキャリアマウント38をTEC39に、変調器キャリアマウント53をTEC54にそれぞれ搭載する。LDキャリアマウント38とTEC39、及び変調器キャリアマウント53とTEC54とは、それぞれ例えば接着剤、溶接、又はハンダにより固定される。ビームスプリッタ40a及び40b、PD42a及び42b、エタロン44、並びに入力レンズ46は、変調器キャリアマウント53に搭載されていない。パッケージ70に高周波配線基板56を搭載する。TEC39及びTEC54は、例えばSuAgCu(錫銀銅)等のロウ材により、パッケージ70に固定される。また、パッケージ70のセラミック端子72a及び72bに、例えば金等の金属からなるメタライズパターンを形成する。これにより、位相調整用電極76及び変調用ストリップライン78が形成される。さらに、マッハツェンダ変調器10が備える位相調整用電極16と位相調整用配線51とをワイヤボンディングする。位相調整用配線51と、パッケージ70が備える位相調整用電極76とをワイヤボンディングする。ワイヤボンディングの結果、位相調整用電極16と、位相調整用電極76とは、ワイヤ41及び位相調整用配線51を介して接続される。また、マッハツェンダ変調器10が備える変調用電極17と、変調用ストリップライン55とをワイヤボンディングする。変調用ストリップライン55と高周波配線基板56のストリップラインとをワイヤボンディングする。高周波配線基板56のストリップラインと、パッケージ70が備える変調用ストリップライン78とをワイヤボンディングする。ワイヤボンディングの結果、変調用電極17と、変調用ストリップライン78とは、ワイヤ41、変調用ストリップライン55、及び高周波配線基板56のストリップラインを介して、接続される。これにより、位相調整用電極76を介して、マッハツェンダ変調器10の入力光を検知することが可能となる。このように、マッハツェンダ変調器10がパッケージ70内に固定される。
【0039】
図5(b)に示すように、変調器キャリアマウント53にビームスプリッタ40a及び40b、並びにPD42a及び42b、を搭載する。このとき、エタロン44及び入力レンズ46は搭載されない。変調器キャリアマウント53上にPD42a及びPD42bを搭載する。光アイソレータ34を透過した光が入力され、分岐された光がPD42aに入力されるように、ビームスプリッタ40aを変調器キャリアマウント53に搭載する。ビームスプリッタ40aから出力された光が入力され、分岐された光がPD42bに入力されるように、ビームスプリッタ40bを変調器キャリアマウント53に搭載する。
【0040】
図6(a)に示すように、ビームスプリッタ40bとマッハツェンダ変調器10との間に入力レンズ46を配置する。このとき、入力レンズ46は固定されていない。従って、入力レンズ46を移動、又は回転等させ、変調用電極17を用いてマッハツェンダ変調器10の入力光を検知しつつ位置合わせを行い、固定することで、パッケージ70に搭載することができる。
【0041】
図6(b)は、図6(a)の入力レンズ46及びマッハツェンダ変調器10を拡大して図示したものである。図6(b)に示すように、具体的には、マッハツェンダ変調器10の第1入力端21aに入力される入力光の経路に入力レンズ46を配置する。このため、入力レンズ46には入力光が入射する。入力レンズ46の位置を調整して、第1入力端21a及び第2入力端21bの位置を確認し、2つの入力端のうち入力光が入力される入力端を確定する。図6(b)では、例えば第1入力端21aに入力光が入力されるものとする。入力端を確定した後、調芯を行う。図中に矢印で示すように、例えば入力レンズ46を回転させることで、変調用電極17から出力される電流は変動する。電流は、ワイヤ41及び位相調整用電極76を介して、例えば外部の電流計に入力される。このように、入力レンズ46は、調芯しながら固定される。言い換えれば、マッハツェンダ変調器10への入力光を検知し、検知結果に基づいて、入力光とマッハツェンダ変調器10とを光結合させつつ、入力レンズ46の位置合わせをし、固定することで、入力レンズ46をパッケージ70に搭載する。このとき、例えば電流が極大、つまり入力光が極大となるように入力レンズ46を搭載する。
【0042】
図7に示すように、第1出力レンズ48とエタロン44をパッケージ70に配置する。入力レンズ46を搭載した後、マッハツェンダ変調器10から出力された光が入力されるように、第1出力レンズ48を変調器キャリアマウント53に搭載する。パッケージ70の外部に波長計(図示せず)を設け、第1出力レンズ48から出力された光の波長を波長計により検知しながら、エタロン44を変調器キャリアマウント53に搭載する。第1出力レンズ48及びエタロン44を搭載した後、パッケージウィンド74、及び光ファイバ固定部66をパッケージ70に設ける。光ファイバ固定部66には、光アイソレータ60及び第2出力レンズ62が搭載され、光ファイバ64が挿入されている。このとき、位相調整用電極76に電圧を印加して、マッハツェンダ変調器10の第1出力端27a及び第2出力端27bのうち一方から、所望の出力光が出力されるようにする。例えば光ファイバ64を介して、マッハツェンダ変調器10の出力光を検知しつつ、光ファイバ固定部66を設けることで、調芯が可能となる。以上の工程により、図1に示したような光学装置100が完成する。
【0043】
実施例1によれば、位相調整用電極16を有するマッハツェンダ変調器10をパッケージ70内に固定する工程の後、入力レンズ46をマッハツェンダ変調器10の入力側に配置し、入力光を入射する。入力レンズ46を介してマッハツェンダ変調器10に入力される入力光を検知する。入力光の検知結果に基づいて、入力レンズ46の位置合わせ及び固定を行う。言い換えれば、マッハツェンダ変調器10を固定した後、調芯を行いながら入力レンズ46を搭載する。このため、比較例の場合よりも、ワイヤ41を短くすることができる。この結果、良好な特性を得ることができる。また、調芯を行うため、良好な光結合を得ることができる。特に、入力レンズ46を搭載する工程において、入力光の大きさを検知し、入力光の大きさが極大となるように入力レンズ46を搭載することで、良好な光結合を得ることができる。さらに良好な光結合を得るためには、入力光の大きさが最大となるように入力レンズ46を搭載することが、より好ましい。
【0044】
マッハツェンダ変調器10が備える位相調整用電極16と、パッケージ70が備える位相調整用電極76とはワイヤ41を介して接続されている。また、マッハツェンダ変調器10が備える変調用電極17と、パッケージ70が備える変調用ストリップライン78とはワイヤ41を介して接続されている。このため、位相調整のための信号が伝送されるワイヤ41、及び変調信号が伝送されるワイヤ41を短くし、インダクタ成分を低減することができる。この結果、効果的に良好な特性を得ることができる。特に、変調信号はRF信号であるため、変調用電極17と変調用ストリップライン78とを接続するワイヤ41を短くすることで、より効果的に良好な特性を得ることができる。ワイヤ41の長さは、例えば電極間、及び電極−配線間を接続する程度の長さとすればよい。
【0045】
入力光を検知するための電極は、位相調整用電極16に限定されない。しかし、図2(a)に示すように、変調用電極17は、位相調整用電極16と比較して、第1入力端21a及び第2入力端21bから遠い位置に設けられている。このため、変調用電極17に到達するまでに入力光が減衰する可能性がある。従って、変調用電極17を用いると、入力光を適切に検知することが困難となる恐れがある。また、光強度検出電極18は、変調用電極17の後段に設けられている。このため、光強度検出電極18を用いると、変調後の光の強度を検知することになり、変調前の入力光を適切に検知できない可能性がある。従って、入力光を適切に検知するためには、位相調整用電極16を、入力光の検知用電極として用いることが好ましい。言い換えれば、検知用電極として、マッハツェンダ変調器10が備える複数の電極のうち、第1入力端21a及び第2入力端21bに最も近い電極を用いることが好ましい。また、位相調整用電極16とは別に、検知用電極を設けてもよい。この場合、検知用電極は、位相調整用電極16よりも、第1入力端21a及び第2入力端21bに近い位置に設けることが好ましい。ただし、検知用電極を設けることは高コスト化の原因となりうるため、位相調整用電極16を検知用電極として用いることが好ましい。
【0046】
また、図5(a)に示したワイヤボンディングにおいて、位相調整用電極16と位相調整用電極76、及び変調用電極17と変調用ストリップライン78とを接続するとした。しかし、ワイヤボンディングは複数回に分けて行ってもよい。図6(b)に示した入力レンズ46を搭載する工程においては、位相調整用電極16と位相調整用電極76とが接続されていればよく、変調用電極17と変調用ストリップライン78とは接続されていなくてもよい。従って、例えば入力レンズ46搭載前には位相調整用電極16と位相調整用電極76とを接続するワイヤボンディングを行い、入力レンズ46搭載後に変調用電極17と変調用ストリップライン78とを接続するワイヤボンディングを行ってもよい。
【0047】
図5(a)に示したように、入力レンズ46を搭載する前に、高周波配線基板56をパッケージ70内に固定する。つまり、変調器キャリア52とパッケージ70との間に高周波配線基板56を搭載した後に、調芯を行いながら入力レンズ46を搭載する。このため、高周波配線基板56をパッケージ70とは別の部品とした場合でも、パッケージ70に高周波配線基板56を搭載するスペースがなくなることは抑制される。この結果、RF信号の伝送に高周波配線基板56を用いることができるため、効果的に良好な特性を得ることができる。なお、RF信号を伝送する伝送路はストリップラインに限定されず、例えばマイクロストリップライン、コプレーナ導波路等でもよい。また、伝送路をパッケージ70と別の部品とせずに、パッケージ70に伝送路を形成するとしてもよい。なお実施例1では、LD32の出力光の波長が可変であるとしたが、例えば出力光の波長は可変でないとしてもよい。また、マッハツェンダ変調器10の入力端は第1入力端21a及び第2入力端21bの2つとしたが、入力端は1つでもよい。入力端が1つの場合、入力光が入力される入力端を確定する工程は不要となる。
【0048】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
マッハツェンダ変調器 10
半導体基板 11
位相調整用電極 16、76
変調用電極 17
第1入力端 21a
第2入力端 21b
第1出力端 27a
第2出力端 27b
LD 32
LDレンズ 33
ワイヤ 41
入力レンズ 46
高周波配線基板 56
パッケージ 70
光学装置 100

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッハツェンダ変調器をパッケージ内に固定する工程と、
前記マッハツェンダ変調器を固定する工程の後、レンズを前記マッハツェンダ変調器の入力側に配置する工程と、
前記レンズを配置する工程の後、入力光を前記レンズに入射する工程と、
前記レンズを介して前記マッハツェンダ変調器に入力する前記入力光を検知し、前記入力光の検知結果に基づいて、前記レンズの位置合わせをする工程と、
前記位置合わせをする工程の後、前記レンズを前記パッケージ内に固定する工程と、を有することを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記パッケージは、外部と接続するための外部接続電極を備え、
前記マッハツェンダ変調器を固定する工程の後であって、前記レンズを配置する工程の前に、前記マッハツェンダ変調器が備える検知用電極と前記外部接続電極とをワイヤを介して接続する工程を有することを特徴とする請求項1記載の光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記検知用電極は、前記マッハツェンダ変調器に設けられた位相調整用電極であることを特徴とする請求項2記載の光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記レンズを配置する工程の前に、前記マッハツェンダ変調器に入力する変調信号を伝送するための伝送路を前記パッケージに設ける工程と、
前記マッハツェンダ変調器に設けられた変調用電極と、前記伝送路とをワイヤを介して接続する工程と、を有することを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
発光素子を前記パッケージに固定する工程を有し、
前記入力光は、前記発光素子の出力光であることを特徴とする請求項1から4いずれか一項記載の光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−118293(P2012−118293A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267844(P2010−267844)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000154325)住友電工デバイス・イノベーション株式会社 (291)
【Fターム(参考)】