説明

光学装置及び光学システム

【課題】光の偏光状態が変更されることなく光の進行方向を変更することができる光学装置及びこの光学装置を用いた光学システムを提供する。
【解決手段】光学装置1は、s偏光及びp偏光の2種類の直線偏光を含む光Lのうちいずれか一方の第1の直線偏光の振動方向に対して特定の角度を有する反射面を備え、当該反射面が他方の第2の直線偏光の振動方向に対して平行に配置される金属ミラー(第1のミラー)10と、金属ミラー10により反射された光Lの第2の直線偏光の進行方向に対して特定の角度を有する反射面を備え、当該反射面が第1の直線偏光の振動方向に対して平行に配置される金属ミラー(第2のミラー)20と、を有する。この構成とすることにより、第1の直線偏光と第2の直線偏光との間における相対的な位相変化により発生する偏光状態の変化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置及び光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光源から出力された光をミラーで反射させることにより、光のs偏光とp偏光との間の位相差がミラーに対する光の入射角に応じて変更されることが従来から知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、ミラーに対して入射した光の偏光状態と、ミラーにより反射された光の偏光状態とが異なるという問題があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、光の偏光状態が変更されることなく光の進行方向を変更することができる光学装置及びこの光学装置を用いた光学システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る光学装置は、s偏光及びp偏光の2種類の直線偏光を含む光のうちいずれか一方の第1の直線偏光の振動方向に対して特定の角度を有する反射面を備え、当該反射面が他方の第2の直線偏光の振動方向に対して平行に配置される第1のミラーと、第1のミラーにより反射された光の第2の直線偏光の進行方向に対して特定の角度を有する反射面を備え、当該反射面が第1の直線偏光の振動方向に対して平行に配置される第2のミラーと、を有することを特徴とする。
【0006】
上記の光学装置のように、第1のミラーと第1の直線偏光の振動方向とがなす角と、第2のミラーと第2の直線偏光の振動方向とがなす角と、を等しくし、且つ、第1のミラーと第2の直線偏光の振動方向とが平行であると共に第2のミラーと第1の直線偏光の振動方向とが平行な態様とすることにより、第1の直線偏光と第2の直線偏光との間における相対的な位相変化により発生する偏光状態の変化を抑制することができる。
【0007】
ここで、上記の光学装置において、特定の角度は45度であることが好ましい。
【0008】
また、上記の光学装置において、第1のミラー及び第2のミラーは金属からなることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る光学システムは、光の光路上に上記の光学装置を複数設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光の偏光状態が変更されることなく光の進行方向を変更することができる光学装置及びこの光学装置を用いた光学システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る光学装置1を示す平面図である。
【図2】本発明の好適な実施形態に係る光学装置1を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る光学装置1の構成を示す平面図であり、図2は、その側面図である。光学装置1は金属ミラー(第1のミラー)10と金属ミラー(第2のミラー)20とを備える。
【0014】
金属ミラー10,20は、光Lの光路上にそれぞれ設けられ、光源(図示せず)から出力される光を反射する。また、金属ミラー10は、x方向に進む光Lに関して入射角が45度となるように設けられ、光Lをy方向へ反射する。そして金属ミラー10の反射面により反射された光Lは、金属ミラー20に入射する。この金属ミラー10の反射面により反射された光Lでは、s偏光及びp偏光に位相差が生じ、偏光状態が変化される。なお、p偏光とは、入射面内に電界ベクトルのある直線偏光のことをいい、s偏光とは、電界ベクトルが入射面に対して垂直である直線偏光のことをいう。
【0015】
金属ミラー20は、金属ミラー10により反射されたy方向に進む光Lの反射面に関して入射角が45度となるように設けられ、光Lを−z方向へ反射する。この金属ミラー20により反射された光Lでは、s偏光及びp偏光に位相差が生じ、金属ミラー20に入射する前の光Lのs偏光及びp偏光とは異なる位相差が生じ、偏光状態が変化される。しかし、金属ミラー20による光Lの偏光状態の変化は、金属ミラー10による光Lの偏光状態の変化を打ち消すようにはたらくため、金属ミラー20により反射された光Lは、金属ミラー10に入射する前の光Lにおけるs偏光及びp偏光の偏光状態と等しくなる。したがって、図1及び図2に示すように、光Lは、その進行方向が90度変更され、且つ、偏光状態の変化が抑制される。
【0016】
ここで、s偏光及びp偏光の位相差の発生について説明する。光Lが媒質1から媒質2に対して斜めに入射することにより、光Lがその界面で反射する場合、その光Lを構成するs偏光及びp偏光に対するフレネル係数r、rは、下記式(1)、(2)に示す値となる。
【0017】
【数1】

【0018】
【数2】

【0019】
ここで、「ε=n」であり、媒質1の誘電率のことを示す。また、nは媒質1の屈折率を示す。また、「ε=(n+iκ)」であり、媒質2の誘電率のことを示す。また、nは媒質2の屈折率を示し、κは媒質2の消光係数を示す。さらに、ψは、界面に入射する入射光と法線とのなす角(すなわち、入射角)を示す。
【0020】
また、s偏光とp偏光の反射率R、Rは、下記式(3)、(4)により求められる。
【0021】
【数3】

【0022】
【数4】

【0023】
上記の式(1)、(2)に示すように、s偏光及びp偏光に対するフレネル係数r、rは複素数であり、その実部と虚部とは、光Lの入射角に依存する。このため、式(3)、(4)に示すように、反射率と位相変化量は入射角に依存し、且つ、s偏光とp偏光との間で異なる値となる。ここで、s偏光とp偏光との位相変化量がそれぞれ異なると、反射した光の偏光状態は、入射光の偏光状態から変更されてしまう。
【0024】
しかしながら、本実施形態に係る光学装置1では、光Lに含まれる直線偏光のうちのいずれか一方(第1の直線偏光)の振動方向と反射面とのなす角が45度となり、他方の直線偏光(第2の直線偏光)の振動方向と反射面とが平行となるように金属ミラー10を設ける。そして、この金属ミラー10により反射された光Lのうち第2の直線偏光の振動方向と反射面とのなす角が45度となり、かつ第1の直線偏光の振動方向と反射面とが平行となるように金属ミラー20を設けることにより、金属ミラー10による位相変化量と、金属ミラー20による位相変化量と、を合計した位相変化量を第1の直線偏光と第2の直線偏光との間で等しくすることができる。このため、第1の直線偏光と第2の直線偏光との間の相対位相変化量を低減させることができ、金属ミラー10及び金属ミラー20により光Lを反射させても偏光状態の変更が抑制される。
【0025】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施形態では、直線偏光の振動方向と反射面とのなす角が45度となる場合について説明したが、45度としない場合であっても、金属ミラー10及び金属ミラー20に対して第1の直線偏光又は第2の直線偏光が入射する角度を共通とすることにより、偏光状態の変更が抑制されるという本発明による効果が奏される。
【0026】
また、本発明は、金属ミラーに限られず、他の材料によるミラーに適用することもできる。
【0027】
さらに、上記実施形態では、第1の直線偏光及び第2の直線偏光の振動方向に対してそれぞれ共通の角度(特定の角度)となるように配置される1組の金属ミラー10,20を用いて説明したが、上記の金属ミラーの組み合わせを複数組用いた光学システムとすることもできる。この場合、各組のミラーを光路上に配置する際の特定の角度は、組毎に変更することができる。
【符号の説明】
【0028】
1…光学装置、10,20…金属ミラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
s偏光及びp偏光の2種類の直線偏光を含む光のうちいずれか一方の第1の直線偏光の振動方向に対して特定の角度を有する反射面を備え、当該反射面が他方の第2の直線偏光の振動方向に対して平行に配置される第1のミラーと、
前記第1のミラーにより反射された前記光の前記第2の直線偏光の進行方向に対して前記特定の角度を有する反射面を備え、当該反射面が前記第1の直線偏光の振動方向に対して平行に配置される第2のミラーと、
を有することを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記特定の角度は45度であることを特徴とする請求項1記載の光学装置。
【請求項3】
前記第1のミラー及び前記第2のミラーは金属からなることを特徴とする請求項1又は2記載の光学装置。
【請求項4】
前記光の光路上に請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学装置を複数設けることを特徴とする光学システム。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−169874(P2010−169874A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12023(P2009−12023)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】