説明

光学補償シート、偏光板および液晶表示装置

【課題】広視野角で画面内のムラのない表示を実現する。
【解決手段】Reレターデーション値が20乃至70nmであり、そして、Rthレターデーション値が70乃至400nmであり、遅相軸角度の標準偏差が1.5°以下である一枚のポリマーフイルムを光学補償シートとして利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフイルムからなる光学補償シートおよびそれを用いた偏光板と液晶表示装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースアセテートフイルムは、その強靭性と難燃性から各種の写真材料や光学材料に用いられている。セルロースアセテートフイルムは、代表的な写真感光材料の支持体である。また、セルロースアセテートフイルムは、液晶表示装置にも用いられている。セルロースアセテートフイルムには、他のポリマーフイルムと比較して、光学的等方性が高い(レターデーション値が低い)との特徴がある。従って、光学的等方性が要求される用途、例えば偏光板には、セルロースアセテートフイルムを用いることが普通である。
液晶表示装置の光学補償シート(位相差フイルム)には、逆に光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される。従って、光学補償シートとしては、ポリカーボネートフイルムやポリスルホンフイルムのようなレターデーション値が高い合成ポリマーフイルムを用いることが普通である。
以上のように光学材料の技術分野では、ポリマーフイルムに光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される場合には合成ポリマーフイルムを使用し、光学的等方性(低いレターデーション値)が要求される場合にはセルロースアセテートフイルムを使用することが一般的な原則であった。
特許文献1には、従来の一般的な原則を覆して、光学的異方性が要求される用途にも使用できる高いレターデーション値を有するセルロースアセテートフイルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許0911656A2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、光学補償シートを用いることで、広視野角の液晶表示装置が得られているが、液晶パネル面内で視野角などの表示特性にばらつきがあった。
本発明の目的は、ポリマーフイルムのみで、液晶セルを光学的に補償し、そして、液晶パネル面内で均一かつ良好な表示特性を得ることである。
別の本発明の目的は、ポリマーフイルムのみからなる光学補償シートを提供することである。
さらに別の本発明の目的は、偏光板の構成要素の数を増加することなく、偏光板に光学補償機能を追加することである。
さらにまた別の本発明の目的は、ポリマーフイルムによって光学的に補償され、そして、液晶パネル面内で均一かつ良好な表示特性を示す液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、光学補償シートにより液晶セルを光学的に補償して、かつその優れた表示特性を面内で均一に得るためには、光学補償シートに用いるポリマーフイルムのレターデーション値の制御と、該ポリマーフイルムの延伸方向と遅相軸がなす角度(遅相軸角度)の標準偏差の制御が必要であることを見出した。
従って、本発明の目的は、下記(1)〜(8)の光学補償シート、下記(9)の偏光板および下記(10)〜(13)の液晶表示装置により達成された。
(1)下記式(I)により定義されるReレターデーション値が20乃至70nmの範囲にあり、そして、下記式(II)により定義されるRthレターデーション値が70乃至400nmの範囲にあり、遅相軸角度の標準偏差が1.5°以下である一枚のポリマーフイルムのみからなることを特徴とする光学補償シート:
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;そして、dは、フイルムの厚さである]。
(2)光学補償シートが、3乃至100%の延伸倍率でロールフイルム形態における幅方向に延伸したポリマーフイルムからなる(1)に記載の光学補償シート。
【0006】
(3)遅相軸角度の面内の平均値が延伸方向に対して3°以内であることを特徴とする(2)に記載の光学補償シート。
(4)ポリマーフイルムがセルロースアセテートからなることを特徴とする(1)に記載の光学補償シート。
(5)セルロースアセテートの酢化度が59.0乃至61.5%であることを特徴とする(4)に記載の光学補償シート。
(6)セルロースアセテートフイルムが少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物を含むことを特徴とする(4)に記載の光学補償シート。
(7)セルロースアセテート100質量部に対して、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物を0.01乃至20質量部含むことを特徴とする(6)に記載の光学補償シート。
【0007】
(8)芳香族化合物が、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有する(6)に記載の光学補償シート。
(9)偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる偏光板であって、透明保護膜の一方が(1)に記載の光学補償シートであり、さらに該光学補償シートの遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度の絶対値が3°以下になるように配置されていることを特徴とする偏光板。
【0008】
(10)液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルと偏光膜との間に配置される二枚の透明保護膜の一方が、(1)に記載の光学補償シートであり、さらに該光学補償シートの遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度の絶対値が3°以下になるように配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
(11)液晶セルが、VAモード、TNモードまたはn−ASMモードの液晶セルである(10)に記載の液晶表示装置。
【0009】
(12)液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルと偏光膜との間に配置される二枚の透明保護膜が、それぞれ、(1)に記載の光学補償シートであり、さらに該光学補償シートの遅相軸の平均方向と該光学補償シートに隣接する偏光膜の透過軸のなす角度の絶対値の和が3°以下になるように配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
(13)液晶セルが、VAモード、TNモードまたはn−ASMモードの液晶セルである(12)に記載の液晶表示装置。
【0010】
なお本明細書中、光学補償シートに用いられるポリマーフイルムの遅相軸角度とは、該ポリマーフイルムの延伸方向と、該ポリマーフイルムの遅相軸がなす角度をいう。
【発明の効果】
【0011】
本発明者は、ポリマーフイルムのみで液晶セルを光学的に補償することに成功した。ポリマーフイルムへの添加剤(具体的には、二つの芳香族環を有する芳香族化合物)の種類と量あるいは製造条件(例えば、フイルムの延伸条件)を調節することによって、Reレターデーション値が20乃至70nmであり、Rthレターデーション値が70乃至400nmであるポリマーフイルムが得られる。このポリマーフイルムは、液晶セルを光学的に補償するために充分な光学的異方性を有している。そしてポリマーフイルムの遅相軸角度の標準偏差を1.5゜以内とすることで、液晶パネル面内で、均一かつ優れた表示特性を有する液晶表示装置を得ることができる。従って、一枚のポリマーフイルムのみからなる光学補償シートが得られる。
【0012】
偏光板の保護膜は、一般にセルロースアセテートフイルムからなる。上記のポリマーフイルムを偏光板の一方の保護膜として用いると、偏光板の構成要素の数を増加することなく、偏光板に光学補償機能を追加するができる。
なお、ポリマーフイルムとして、酢化度が59.0未満のセルロースアセテートを使用すると、上記の光学的異方性を容易に達成できるが、耐久性が低下する。本発明では、酢化度が59.0乃至61.5%であるセルロースアセテートを使用し、他の手段(上記の添加剤や製造条件の調節)で上記のレターデーション値を達成することにより、光学的異方性と耐久性との双方が優れたセルロースアセテートフイルムを得ている。
本発明の光学補償シートあるい偏光板を用いることにより、液晶セルが光学的に補償され、そして液晶パネル面内で均一かつ優れた表示特性を有する液晶表示装置を得ることができる。
上記のポリマーフイルムのみからなる光学補償シートおよび上記のポリマーフイルムを保護膜として用いた偏光板は、VA(Vertically Aligned)型またはTN(Twisted Nematic)型の液晶表示装置に、特に有利に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[フイルムのレターデーション]
フイルムのReレターデーション値およびRthレターデーション値は、それぞれ、下記式(I)および(II)で定義される。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(I)および(II)において、nxは、フイルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率である。
式(I)および(II)において、nyは、フイルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率である。
式(II)において、nzは、フイルムの厚み方向の屈折率である。
式(I)および(II)において、dは、単位をnmとするフイルムの厚さである。
【0014】
本発明では、ポリマーフイルムのReレターデーション値を20乃至70nmであり、そして、Rthレターデーション値が70乃至400nmに調節する。
液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフイルムを使用する場合、フイルムのRthレターデーション値は70乃至200nmであることが好ましい。
液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフイルムを使用する場合、フイルムのRthレターデーション値は150乃至400nmであることが好ましい。
なお、ポリマーフイルムの複屈折率(Δn:nx−ny)は、0.00025乃至0.00088であることが好ましい。また、ポリマーフイルムの厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、0.00088乃至0.005であることが好ましい。
【0015】
[フイルムの遅相軸角度]
ポリマーフイルム面内における遅相軸の角度は、ポリマーフイルムの延伸方向を基準線(0°)とし、遅相軸と基準線のなす角度で定義する。ここで、ロール形態のフイルムを幅方向に延伸する時は幅方向を基準線とし、長手方向に延伸する時は長手方向を基準線とする。
遅相軸角度の平均値は3°以下であることが好ましく、2°以下であることがさらに好ましく、1°以下であることが最も好ましい。遅相軸角度の平均値の方向を遅相軸の平均方向と定義する。
また、遅相軸角度の標準偏差は1.5°以下であることが好ましく、0.8°以下であることがにさら好ましく、0.4°以下であることが最も好ましい。
【0016】
[ポリマーフイルム]
本発明に用いるポリマーフイルムとしては、光透過率が80%以上であるポリマーフイルムを用いることが好ましい。ポリマーフイルムとしては、外力により複屈折が発現しにくいものが好ましい。ポリマーフイルムの例としては、セルロース系ポリマー、商品名アートン(JSR(株)製)および商品名ゼオネックス(日本ゼオン(株)製)などのノルボルネン系ポリマー、およびポリメチルメタクリレートなどが挙げられる。セルロース系ポリマーとしては、セルロースエステルが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースエステルとしてはセルロースアセテートが好ましく、その例としては、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどが挙げられる。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いても良い。
【0017】
また、光学補償シートを使用した透過型液晶表示装置においては、通電後時間が経過すると画面周辺部に「額縁状の表示ムラ」が発生することがある。このムラは、画面周辺部の透過率の上昇によるものであり、特に黒表示時において顕著となる。透過型液晶表示装置では、バックライトから発熱しており、しかも液晶セル面内で温度分布が生じる。この温度分布により光学補償シートの光学特性(レターデーション値、遅相軸の角度)が変化することが「額縁状の表示ムラ」の発生原因である。光学補償シートの光学特性の変化は、温度上昇による光学補償シートの膨張または収縮が液晶セルまたは偏光板との粘着により抑制されるために、光学補償シートに弾性変形が生じることに起因する。
上記のような「額縁状の表示ムラ」を抑制するには、光学補償シートに熱伝導率が高いポリマーフイルムを使用することが好ましい。熱伝導率が高いポリマーとしては、セルロースアセテート{0.22W/(m・℃)}、低密度ポリエチレン{0.34W/(m・℃)}、ABS{0.36W/(m・℃)}、ポリカーボネート{0.19W/(m・℃)}が好ましい。環状オレフィンポリマーである、ZEONEX{0.20W/(m・℃)、日本ゼオン(株)製}、ZEONOR{0.20W/(m・℃)、日本ゼオン(株)製}、ARTON{0.20W/(m・℃)、JSR(株)製}も好ましい。
【0018】
上記の光学的な特性と、熱的な特性を考慮して、本発明のポリマーフイルムとしては、酢化度が59.0乃至61.5%であるセルロースアセテートフイルムを用いることが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
また、ポリマーフイルムの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、ポリマーフイルムは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0乃至1.7であることが好ましく、1.3乃至1.65であることがさらに好ましく、1.4乃至1.6であることが最も好ましい。
【0019】
[レターデーション上昇剤]
ポリマーフイルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用する。
ポリマーフイルムとしてセルロースアセテートフイルムを用いる場合、芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲で使用する。芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.05乃至15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。
芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
【0020】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、ベンゼン環および1,3,5−トリアジン環がさらに好ましい。
芳香族化合物は、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有することが特に好ましい。
【0021】
芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至8であることがさらに好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
【0022】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0023】
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
【0024】
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
【0025】
アルキル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチルおよび2−ジエチルアミノエチルが含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよび1−ヘキセニルが含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニルおよび1−ヘキシニルが含まれる。
【0026】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイルおよびブタノイルが含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシおよびメトキシエトキシが含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノおよびエトキシカルボニルアミノが含まれる。
【0027】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオおよびオクチルチオが含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニルおよびエタンスルホニルが含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミドおよびn−オクタンスルホンアミドが含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよび2−カルボキシエチルアミノが含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイルおよびジエチルカルバモイルが含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイルおよびジエチルスルファモイルが含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノおよびモルホリノが含まれる。
レターデーション上昇剤の分子量は、300乃至800であることが好ましい。
【0028】
[ポリマーフイルムの製造]
以下、ポリマーフイルムとしてセルロースアセテートフイルムを用いる場合について具体的に説明する。
ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースアセテートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が3乃至12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0029】
炭素原子数が3乃至12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%であることがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0030】
一般的な方法でセルロースアセテート溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。
セルロースアセテートの量は、得られる溶液中に10乃至40重量%含まれるように調整する。セルロースアセテートの量は、10乃至30重量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0乃至40℃)でセルロースアセテートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアセテートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60乃至200℃であり、さらに好ましくは80乃至110℃である。
【0031】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0032】
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアセテートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアセテートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアセテートを撹拌しながら徐々に添加する。
セルロースアセテートの量は、この混合物中に10乃至40重量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアセテートの量は、10乃至30重量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0033】
次に、混合物を−100乃至−10℃(好ましくは−80乃至−10℃、さらに好ましくは−50乃至−20℃、最も好ましくは−50乃至−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30乃至−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアセテートと有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
【0034】
さらに、これを0乃至200℃(好ましくは0乃至150℃、さらに好ましくは0乃至120℃、最も好ましくは0乃至50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアセテートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
【0035】
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20重量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保存する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
【0036】
調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを製造する。またドープに、前記のレターデーション上昇剤を添加することが好ましい。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフイルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0037】
セルロースアセテートフイルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1乃至25重量%であることが好ましく、1乃至20重量%であることがさらに好ましく、3乃至15重量%であることが最も好ましい。
【0038】
セルロースアセテートフイルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01乃至1重量%であることが好ましく、0.01乃至0.2重量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01重量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1重量%を越えると、フイルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
【0039】
[ポリマーフイルムの延伸処理]
作製されたセルロースアセテートフイルム(ポリマーフイルム)は、さらに延伸処理によりレターデーションを調整することができる。延伸倍率は、3乃至100%であることが好ましい。
ポリマーフイルムの厚さは、40乃至140μmであることが好ましく、70乃至120μmであることがさらに好ましい。
また、この延伸処理の条件を調整することにとり、光学補償シートの遅相軸の角度の標準偏差を小さくすることができる。延伸処理の方法に特に限定はないが、その例としてテンターによる延伸方法が挙げられる。上記のソルベントキャスト法により作製したフイルムに、テンターを用いて延伸を実施する際に、延伸後のフイルムの状態を制御することにより、フイルム遅相軸角度の標準偏差を小さくすることができる。具体的には、テンターを用いてレターデーション値を調整する延伸処理を行い、そして延伸直後のポリマーフイルムをその状態のまま、フイルムのガラス転移温度以下で保持することで、遅相軸角度の標準偏差を小さくすることができる。この保持の際のフイルムの温度をガラス転移温度以上で行うと、標準偏差が大きくなってしまう。
【0040】
[ポリマーフイルムの表面処理]
ポリマーフイルムを偏光板の透明保護膜として使用する場合、ポリマーフイルムを表面処理することが好ましい。
表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理を実施する。酸処理またはアルカリ処理、すなわちポリマーフイルムに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。
【0041】
[偏光板]
偏光板は、偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。一方の保護膜として、上記のポリマーフイルムを用いることができる。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフイルムを用いてもよい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。
ポリマーフイルムの遅相軸と偏光膜の透過軸のなす角度は3°以下になるように配置することが好ましく、2°以下になるように配置することがさらに好ましく、1°以下になるように配置することが最も好ましい。
【0042】
[液晶表示装置]
上記のポリマーフイルムからなる光学補償シート、または上記のポリマーフイルムを用いた偏光板は、液晶表示装置、特に透過型液晶表示装置に有利に用いられる。
透過型液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
光学補償シートは、液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
偏光板では、液晶セルと偏光膜との間に配置される透明保護膜として、上記のポリマーフイルムを用いる。一方の偏光板の(液晶セルと偏光膜との間の)透明保護膜のみ上記のポリマーフイルムを用いるか、あるいは双方の偏光板の(液晶セルと偏光膜との間の)二枚の透明保護膜に、上記のポリマーフイルムを用いる。
液晶セルは、VAモードまたはTNモードであることが好ましい。
【0043】
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625および特公平7−69536号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した液晶セルが含まれる。具体的には、MVA(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845、SID99、Digest of tech. Papers(予稿集)30(1999)206及び特開平11−258605号公報記載)、SURVAIVAL(月刊ディスプレイ、第6巻、第3号(1999)14記載)、PVA(Asia Display98、Proc.of the 18th Inter. Display res. Conf.(予稿集)(1998)383記載)、Para-A(LCD/PDP International‘99で発表)、DDVA(SID98、Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)838記載)、EOC(SID98、Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)319記載)、PSHA(SID98、Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)1081記載)、RFFMH(Asia Display98、Proc.of the 18thInter. Display res. Conf.(予稿集)(1998)375記載)、HMD(SID98、Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)702記載)が含まれる。その他に(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(IWD’98、Proc.of the 5th Inter. Display Workshop.(予稿集)(1998)143記載))も含まれる。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60乃至120゜にねじれ配向している。
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
【実施例】
【0044】
(光学特性の測定)
作製したセルロースアセテートフイルム(光学補償シート)について、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長550nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。また、自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株))で軸ずれ角度を測定した。各々の測定は幅方向10点で行い、平均値を求めた。遅相軸角度については標準偏差も求めた。
(熱伝導率の測定)
シートをTO−3型ヒーターケースと銅板との間に挟み、シート厚みの10%を圧縮した後、銅製ヒーターケースに電力5Wをかけて4分間保持し、銅製ヒーターケースと銅板との温度差を測定し、熱伝導率{W/(m・K)}={電力(W)×厚み(m)}/{温度差(K)×測定面積(m2)}にて熱伝導率を算出した。
【0045】
[実施例1]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0046】
────────────────────────────────────
セルロースアセテート溶液組成
────────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
────────────────────────────────────
【0047】
別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤16質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション上昇剤溶液25質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、3.5質量部であった。
【0048】
【化1】

【0049】
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15重量%のフイルムを、130℃の条件で、テンターを用いて25%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま50℃で30秒間保持した後クリップを外してセルロースアセテートフイルムTAC−1(厚さ:80μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフイルム(光学補償シート)について、光学特性および熱伝導率を測定した。結果は第1表に示す。
【0050】
[実施例2]
実施例1で得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15重量%のフイルムを、130℃の条件で、テンターを用いて25%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま50℃で15秒間保持した後クリップを外してセルロースアセテートフイルムTAC−2(厚さ:80μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフイルム(光学補償シート)について、光学特性および熱伝導率を測定した。結果は第1表に示す。
【0051】
[比較例1]
実施例1で得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15重量%のフイルムを、130℃の条件で、テンターを用いて25%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま130℃で15秒間保持した後クリップを外してセルロースアセテートフイルムTAC−3(厚さ:80μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフイルム(光学補償シート)について、光学特性および熱伝導率を測定した。結果は第1表に示す。
【0052】
[比較例2]
実施例1で得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15重量%のフイルムを、130℃の条件で、テンターを用いて25%の延伸倍率で横延伸し、延伸直後に130℃下でクリップを外してセルロースアセテートフイルムTAC−4(厚さ:80μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフイルム(光学補償シート)について、光学特性および熱伝導率を測定した。結果は第1表に示す。
【0053】
[実施例3]
セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション上昇剤溶液56質量部を混合してドープを調製し(セルロースアセテート100質量部に対して、レターデーション上昇剤7.8質量部を使用し)、延伸倍率を14%に変更した以外は、実施例1と同様にセルロースアセテートフイルムTAC−5(光学補償シート)を作製して光学特性および熱伝導率を測定した。結果は第1表に示す。
【0054】
[実施例4]
セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション上昇剤溶液56質量部を混合してドープを調製し(セルロースアセテート100質量部に対して、レターデーション上昇剤7.8質量部を使用し)、延伸倍率を14%に変更した以外は、実施例2と同様にセルロースアセテートフイルムTAC−6(光学補償シート)を作製して光学特性および熱伝導率を測定した。結果は第1表に示す。
【0055】
[比較例3]
実施例3で得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15重量%のフイルムを、130℃の条件で、テンターを用いて25%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま130℃で15秒間保持した後クリップを外してTAC−7セルロースアセテートフイルム(厚さ:80μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフイルム(光学補償シート)について、光学特性および熱伝導率を測定した。結果は第1表に示す。
【0056】
[比較例4]
実施例3で得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15重量%のフイルムを、130℃の条件で、テンターを用いて25%の延伸倍率で横延伸し、延伸直後に130℃下でクリップを外してセルロースアセテートフイルムTAC−8(厚さ:80μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフイルム(光学補償シート)について、光学特性および熱伝導率を測定した。結果は第1表に示す。
【0057】
[実施例5]
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:28000)を、ジクロロメタンに溶解して、18重量%溶液を得た。溶液を真空脱泡し、ドープを得た。ドープをバンド上に流延し、50℃で10分間乾燥後にはぎ取り、さらに100℃で10分間乾燥した。得られたフイルムを170℃で縦に7.0%延伸し、さらに横に2.0%延伸して、延伸後の幅のまま50℃で30秒間保持した後クリップを外してポリカーボネートフイルムPC−1(厚さ:100μm)を製造した。縦延伸は2本のチャッキングロールの速度差で制御し、横延伸はテンターの幅で制御した。
作製したポリカーボネートフイルム(光学補償シート)について、光学特性および熱伝導率を測定した。結果は第1表に示す。
【0058】
[比較例5]
実施例5と同じドープをバンド上に流延し、50℃で10分間乾燥後にはぎ取り、さらに100℃で10分間乾燥した。得られたフイルムを170℃で縦に7.0%延伸し、さらに横に2.0%延伸して、延伸直後にクリップを外してポリカーボネートフイルムPC−2(厚さ:100μm)を製造した。縦延伸は2本のチャッキングロールの速度差で制御し、横延伸はテンターの幅で制御した。
作製したポリカーボネートフイルム(光学補償シート)について、光学特性および熱伝導率を測定した。結果は第1表に示す。
【0059】
[実施例6]
ノルボルネン樹脂(商品名「ARTON」、JSR(株)製)100質量部と可塑剤(フタル酸ジエチル)5重量部を、トルエンに溶解して、25重量%溶液を得た。溶液を真空脱泡し、ドープを得た。ドープをバンド上に流延し、120℃で10分間乾燥後にはぎ取り、さらに120℃で10分間乾燥した。得られたフイルムを175℃で縦に27.8%延伸し、さらに横に21.3%延伸して、延伸後の幅のまま50℃で30秒間保持した後クリップを外してARTONフイルムAR−1(厚さ:65μm)を製造した。縦延伸は2本のチャッキングロールの速度差で制御し、横延伸はテンターの幅で制御した。
作製したARTONフイルム(光学補償シート)について、光学特性および熱伝導率を測定した。結果は第1表に示す。
【0060】
[比較例6]
実施例6のドープをバンド上に流延し、120℃で10分間乾燥後にはぎ取り、さらに120℃で10分間乾燥した。得られたフイルムを175℃で縦に27.8%延伸し、さらに横に21.3%延伸して、延伸直後にクリップを外してARTONフイルムAR−2(厚さ:65μm)を製造した。縦延伸は2本のチャッキングロールの速度差で制御し、横延伸はテンターの幅で制御した。
作製したARTONフイルム(光学補償シート)について、光学特性および熱伝導率を測定した。結果は第1表に示す。
【0061】
第1表
────────────────────────────────────
Re Rth 遅相軸 標準 熱伝導率
フイルム [nm] [nm] 角度 偏差 [W/m・℃]
────────────────────────────────────
実施例1 TAC−1 40 130 0.5° 0.3° 0.22
実施例2 TAC−2 39 132 0.3° 0.5° 0.21
実施例3 TAC−5 50 240 1.0° 0.4° 0.23
実施例4 TAC−6 51 239 0.4° 0.7° 0.22
実施例5 PC−1 42 129 0.4° 0.4° 0.19
実施例6 AR−1 38 128 0.3° 0.3° 0.20
比較例1 TAC−3 41 131 0.5° 2.0° 0.24
比較例2 TAC−4 38 134 3.9° 2.5° 0.23
比較例3 TAC−7 49 242 0.2° 1.8° 0.22
比較例4 TAC−8 47 245 4.2° 2.3° 0.21
比較例5 PC−2 40 129 4.0° 2.5° 0.19
比較例6 AR−2 38 128 3.1° 2.3° 0.20
────────────────────────────────────
【0062】
[実施例7]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。実施例1で作製したセルロースアセテートフイルムTAC−1をケン化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片側に貼り付けた。TAC−1と偏光膜の長手方向が平行になる様に貼り付けたため、TAC−1の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.5°であった。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)をケン化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。
このようにして偏光板を作製した。
【0063】
[実施例8]
実施例2で作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして、偏光板を作製した。TAC−2の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.3°であった。
【0064】
[実施例9]
実施例3で作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして、偏光板を作製した。TAC−5の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は1.0°であった。
【0065】
[実施例10]
実施例4で作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして、偏光板を作製した。TAC−6の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.4°であった。
【0066】
[比較例7]
比較例1で作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして、偏光板を作製した。TAC−3の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.5°であった。
【0067】
[比較例8]
比較例2で作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして、偏光板を作製した。TAC−4の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は3.9°であった。
【0068】
[比較例9]
比較例3で作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして、偏光板を作製した。TAC−7の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.2°であった。
【0069】
[比較例10]
比較例4で作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして、偏光板を作製した。TAC−8の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は4.2°であった。
【0070】
[実施例11]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。実施例5で作製したポリカーボネートフイルムPC−1を、アクリル系接着剤を用いて、偏光膜の片側に貼り付けた。PC−1と偏光膜の長手方向が平行になる様に貼り付けたため、PC−1の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.4°であった。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)をケン化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。
このようにして偏光板を作製した。
【0071】
[比較例11]
比較例5で作製したポリカーボネートフイルムを用いた以外は、実施例11と同様にして、偏光板を作製した。PC−2の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は4.0°であった。
【0072】
[実施例12]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。実施例5で作製したARTONフイルムAR−1を、アクリル系接着剤を用いて、偏光膜の片側に貼り付けた。AR−1と偏光膜の長手方向が平行になる様に貼り付けたため、AR−1の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.3°であった。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)をケン化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。
このようにして偏光板を作製した。
【0073】
[比較例12]
比較例6で作製したARTONフイルムを用いた以外は、実施例11と同様にして、偏光板を作製した。AR−2の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は3.1°であった。
【0074】
[実施例13]
垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(VL−1530S、富士通(株)製)に設けられている一対の偏光板および一対の光学補償シートを剥がし、代わりに実施例7で作製した偏光板を、実施例1で作製したセルロースアセテートフイルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0075】
[実施例14]
実施例8で作製した偏光板に変えた以外は実施例13と同様にして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0076】
[比較例13]
比較例7で作製した偏光板に変えた以外は実施例13と同様にして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0077】
[比較例14]
比較例8で作製した偏光板に変えた以外は実施例13と同様にして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0078】
[実施例15]
垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(VL−1530S、富士通(株)製)に設けられている一対の偏光板および一対の光学補償シートを剥がし、代わりに実施例9で作製した偏光板を、実施例3で作製したセルロースアセテートフイルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して一枚、観察者側に貼り付けた。また、バックライト側には、市販の偏光板(HLC2−5618HCS、(株)サンリッツ製)を一枚貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0079】
[実施例16]
実施例10で作製した偏光板に変えた以外は実施例15と同様にして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0080】
[比較例15]
比較例9で作製した偏光板に変えた以外は実施例15と同様にして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0081】
[比較例16]
比較例10で作製した偏光板に変えた以外は実施例15と同様にして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0082】
[実施例17]
実施例11で作製した偏光板に変えた以外は実施例13と同様にして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0083】
[比較例17]
比較例11で作製した偏光板に変えた以外は実施例13と同様にして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0084】
[実施例18]
実施例12で作製した偏光板に変えた以外は実施例13と同様にして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0085】
[比較例18]
比較例12で作製した偏光板に変えた以外は実施例13と同様にして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0086】
パネル面内の正面コンラスト比の最大値および最小値をそれぞれ第2表に示した。また、正面コントラスト比が最大値である測定点および最小値である測定点における左右方向の視野角も示した。ここで、視野角とはコントラスト比が10以上の角度範囲を意味する。
【0087】
第2表
────────────────────────────────────
液晶表示装置 正面コントラスト比 視野角/°
最大値 最小値 最大 最小
────────────────────────────────────
実施例13 400 328 >160 150
実施例14 388 291 >160 140
比較例13 412 40 >160 30
比較例14 395 28 >160 20
実施例15 384 328 >160 152
実施例16 400 312 >160 145
比較例15 396 152 >160 70
比較例16 395 80 >160 40
実施例17 385 330 >160 150
比較例17 390 20 >160 15
実施例18 397 333 >160 145
比較例18 395 25 >160 20
────────────────────────────────────
【0088】
[実施例19]
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(6E−A3、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに実施例7で作製した偏光板を、実施例1で作製したセルロースアセテートフイルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは直交であり、Oモードとなるように配置した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第3表に示す。
【0089】
[実施例20]
実施例8で作製した偏光板に変えた以外は実施例19と同様にして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0090】
[比較例19]
比較例7で作製した偏光板に変えた以外は実施例19と同様にして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0091】
[比較例20]
比較例8で作製した偏光板に変えた以外は実施例19と同様にして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル面内の10箇所でコントラスト比を測定した。結果を第2表に示す。
【0092】
パネル面内の正面コンラスト比の最大値および最小値をそれぞれ第3表に示した。また、正面コントラスト比が最大値である測定点および最小値である測定点における左右方向の視野角も示した。ここで、視野角とはコントラスト比が10以上の角度範囲を意味する。
【0093】
第3表
────────────────────────────────────
液晶表示装置 正面コントラスト比 視野角/°
最大値 最小値 最大 最小
────────────────────────────────────
実施例19 208 104 160 110
実施例20 216 93 160 100
比較例19 151 25 140 30
比較例20 242 5 160 0
────────────────────────────────────

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)により定義されるReレターデーション値が20乃至70nmの範囲にあり、そして、下記式(II)により定義されるRthレターデーション値が70乃至400nmの範囲にあり、遅相軸角度の標準偏差が1.5°以下である一枚のポリマーフイルムのみからなることを特徴とする光学補償シート:
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;そして、dは、フイルムの厚さである]。

【公開番号】特開2009−145902(P2009−145902A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15506(P2009−15506)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【分割の表示】特願2000−204733(P2000−204733)の分割
【原出願日】平成12年7月6日(2000.7.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】