説明

光導入装置、集光ユニット、及び集光装置

【課題】任意方位から大きな入射角で入射する太陽光をも効率よく導入できるようにした光導入装置、その導入した光を集光する集光ユニット、およびそれを備えた集光装置を構成する。
【解決手段】2つの平板プリズム11,12は、その全体で成す角度が、プリズムのウェッジ角αの開角方向に開角(傾斜)する関係となるように配置している。例えば、平板プリズム11,12のウェッジ角αだけ、後段側平板プリズム12を前段側平板プリズム11に対して傾斜していて、前段側平板プリズム11の作用面ESと後段側平板プリズム12の平板面FSとは平行関係にある。そのため、前段側平板プリズムの単位プリズムP1の平板面FSに対して入射角φ1で入射した光は屈折角φ2で屈折し、作用面ESから出射角φ3で出射する。この光は後段側平板プリズム12の単位プリズムP2の平板面FSに対して入射角φ3で入射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定角度範囲内で入射する光を導入し集光する、光導入装置、集光ユニット、及び集光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光をエネルギー源として利用する場合、集光倍率を高めた方が一般に利用価値は高まる。
【0003】
集光倍率を高めるためにはレンズや曲面鏡を用いる必要があるが、太陽の位置は変化するため、常に太陽と対峙した位置にレンズあるいは曲面鏡がくるように装置全体を回転させるか、レンズや曲面鏡に対して常に同じ角度で太陽光が入射するように、プリズムや平面鏡を使って光路を制御する必要がある。
【0004】
これらの方法のうち、プリズムを使って光路を制御する方法は、屋根と屋根裏のスペースを利用して設置できること、面積いっぱいに設置しても他の装置の影響を受けずにすべての入射方向からの光を使えることから、一般家庭での利用に適した方法といえる。
【0005】
通常のプリズムは大きくなるほど重くなり、材料コストも高くなるので、平板プリズムがよい。
平板プリズムを利用したものとして、特許文献1には、採光プリズムを水平面から所定角度傾斜させて配置した太陽光採光装置が開示されている。この採光プリズムは水平面に対して所定角度傾斜させて配置しているため、太陽の仰角が小さい(高度が低い)ときにも太陽光を比較的効率よく室内に導くことができる。
【0006】
しかし、特許文献1の太陽光採光装置では、1枚の採光プリズムを用いているだけであるので光の屈折角が小さく、太陽光を一定の方向に導くことができず、所定位置に太陽光を集光できないという問題があった。
【0007】
特許文献2には、2枚の平板プリズムを互いに平行に重ね、少なくとも一方の平板プリズムを平面内で回転させる太陽追尾装置が開示されている。この太陽追尾装置は、太陽光を一定方向に導くことができる。
【0008】
図1は上記特許文献2に示されている太陽追尾装置の構成を示す図である。この太陽追尾装置は、図1(A)に示すように、平板プリズム1,2を平行に配置している。
【特許文献1】特開平11−167084号公報
【特許文献2】特開昭61−180217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2に記載の太陽追尾装置は、平面を平行にして2枚のプリズムを重ねているため、1枚目の平板プリズムから出射した光が大きな角度で2枚目の平板プリズムに入射してしまう。図1(B)は、その様子を平板プリズムの単位プリズムを取り出して表した図である。1枚目のプリズムP1に入射角φ1で入射した光は屈折角φ2で屈折し、作用面(出射面)から出射角φ3で出射するが、2枚目のプリズムP2の平板面(入射面)は1枚目のプリズムP1の作用面(出射面)に対して、作用面の傾斜方向とは反対方向にプリズムの頂角(以下「ウェッジ角」という。)α分傾いている。そのため、1枚目のプリズムP1の出射面からの出射角φ3より2枚目のプリズムP2の平板面(入射面)への入射角が(φ3+α)に大きくなってしてしまう。
【0010】
したがって2枚目の平板プリズムによる屈折効果が小さくなり、低仰角の太陽光に関しては、平板プリズムで任意の方向に導くことができない、という問題がある。
【0011】
すなわち、特許文献2にも記述されているように、ウェッジ角αを30°としても、下部平板プリズムの垂直下方向へ送り出すことができる光は、上部平板プリズムへの入射角が45.1°までの光だけに限られる。
【0012】
ウェッジ角αを大きくすることや材料の屈折率を変えることで、すべての光をある方向に導くことができるが、これ以上ウェッジ角αを大きくしても、上部平板プリズムへ入射した光のうちプリズム非作用面に当たって所望の方向へ進めない光の割合が大きくなって、損失が大きくなる。また、平板プリズム用の材料として用いられる透明樹脂体の屈折率は1.5〜1.6程度までのものしか実用化されていないので、プリズムの屈折率をこれより大幅に高めることもできない。
【0013】
そこで、この発明の目的は、任意方位から大きな入射角で入射する太陽光をも効率よく導入できるようにした光導入装置、その導入した光を集光する集光ユニット、およびそれを備えた集光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、この発明は次のように構成する。
(1)複数の平板プリズムを備えた光導入装置において、
前記複数の平板プリズムのうち、前段側と後段側の少なくとも2つの平板プリズムは、少なくとも一方の平板プリズムのプリズム面が他方の平板プリズムに対向し、且つ、前記一方の平板プリズムのウェッジ角の開角方向に他方の平板プリズムが相対的に開角する関係に配置され、当該2つの平板プリズムが回転可能に設けられたことを特徴とする。
【0015】
この構成により、プリズムのウェッジ角を大きくすることなく、大きな入射角で入射する太陽光を一定の方向に導くことができる。そのため、低仰角から入射する太陽光も所定方向へ導入することができる。
【0016】
(2)前記2つの平板プリズムは、例えば双方に共通の第1の回転軸を有し、前記2つの平板プリズムの一方は、前記第1の回転軸とは独立した第2の回転軸を有するものとする。
【0017】
これにより、独自の回転軸で回転することにより、複数の平板プリズムによる等価的なウェッジ角が変化し、広い範囲(大きな立体角の範囲)から入射する太陽光を一定の方向に導くことができる。
【0018】
(3)前記2つの平板プリズムの回転に関わらず、前記2つの平板プリズムの互いに対向する面は略平行な関係を維持するものとする。
これにより、前段の平板プリズムから出射する光の出射角と略等しい角度で、後段の平板プリズムに光が入射する。そのため、より大きな入射角の光についても所定方向へ導入できるようになる。
【0019】
(4)前記2つの平板プリズムのうち、少なくとも一方の平板プリズムは、入射面に垂直な軸を回転軸として回転するものとする。
【0020】
これにより、光の入射角を一定に保つことができるので、設計が容易になる。また、追尾の際の制御も容易となる。
【0021】
(5)前記2つの平板プリズムを、それらの対向面を平行に配置した場合に必要なウェッジ角をαで表し、前記2つの平板プリズムのウェッジ角をそれぞれβで表した場合にβ<αの関係にあり、且つ、対向面を平行に配置した場合より、プリズム面が他方の平板プリズムに対向する一方の平板プリズムのウェッジ角の開角方向に、他方の平板プリズムが開角する関係に配置されたものとする。
【0022】
これにより、前段の平板プリズムから出射する角度よりも小さな角度または同等の角度で、後段の平板プリズムに入射させることができる。また、ウェッジ角が小さくなることから非作用面に入射する光の割合が小さくなり、全体に低損失化が図れる。
【0023】
(6)前記2つの平板プリズムは、他方の平板プリズムに対向する一方の平板プリズムの面が平板面である場合にはその平板面が、他方の平板プリズムに対向する一方の平板プリズムの面がプリズム面である場合には、当該プリズム面から前記一方の平板プリズムのウェッジ角βの開角方向に所定の角度開角した面が、前記2つの平板プリズムの回転に関わらず、平行な関係を維持するものとする。
【0024】
この構成により、平行な関係を維持した面をそれぞれの平板プリズムの出入射面と置き換えて考えることができるため、設計が容易となり、追尾の際の制御も容易となる。
【0025】
(7)前記前段の平板プリズムと前記後段の平板プリズムのうち、少なくとも一方の平板プリズムの入射面を平面とする。
【0026】
これにより、プリズム面の非作用面に光が入射することがないため、その分、損失が抑制できる。
【0027】
(8)前記のいずれかの構成からなる光導入装置と、前記複数の平板プリズムのうち最後段から出射される光を集光する集光レンズとを備えて集光ユニットを構成する。
【0028】
この構成により、集光された光を例えば光ダクト、光ファイバなどを通じて容易に搬送でき、搬送先でエネルギーとして利用可能となる。
【0029】
(9)前記複数の平板プリズムのうち最後段に配置された平板プリズムは、その出射面が平面であり、当該平板プリズムの出射面に前記集光レンズを形成する。
【0030】
この構成により、最後段に配置された平板プリズムの出射面に、フレネルレンズや片凸レンズ等のレンズを容易に密着形成することができる。これらのレンズを形成することで、平板プリズムから出射された光を一点に集めることができる。そのため、レンズを別途配置するよりも簡易な構造で形成でき、かつ損失が少ない。
【0031】
(10)前記集光ユニットを、前記複数の平板プリズムのうち初段の平板プリズムの入射面が略同一平面をなすように複数配置して集光装置を構成する。
【0032】
これにより、各集光ユニットが他の集光ユニットへの入射光を遮蔽することなく、大面積の入射面を備えて、全体に高効率な集光装置が構成できる。
【発明の効果】
【0033】
この発明によれば、プリズムのウェッジ角を大きくすることなく、大きな入射角で入射する太陽光を一定の方向に導くことができ、低仰角から入射する太陽光も所定方向へ導入することができ、追尾制御も容易となる。さらに全体に低損失化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
《第1の実施形態》
第1の実施形態に係る光導入装置について、図2〜図9を参照して説明する。
図2は第1の実施形態に係る光導入装置の主要部の構成を示す図である。図2(A)は2つの平板プリズム11,12の配置関係、図2(B)はその単位プリズムの配置関係をそれぞれ示している。
【0035】
図2(A)において、太陽光は図における上方から入射し、下方へ導入される。前段側の平板プリズム11と後段側の平板プリズム12は、共に上面を平板面FS、下面をプリズム面PSとしている。そして、2つの平板プリズム11,12は、その全体の成す角度が、プリズムのウェッジ角αの開角方向に相対的に開角(傾斜)する関係となるように配置している。この例では前段側平板プリズム11のウェッジ角αの開角方向にウェッジ角αだけ、後段側平板プリズム12を前段側平板プリズム11に対して開角させている。すなわち、前段側平板プリズム11の平板面FSと後段側平板プリズム12の平板面FSとを傾斜させている。したがって、図2(A)(B)に示すように、対向する面である、前段側平板プリズム11の作用面ESと後段側平板プリズム12の平板面FSとは平行関係にある。
【0036】
そのため、図2(B)に示すように、前段側平板プリズムの単位プリズムP1の平板面FSに対して入射角φ1で入射した光は屈折角φ2で屈折し、作用面ESから出射角φ3で出射する。この光は後段側平板プリズム12の単位プリズムP2の平板面FSに対して入射角φ3で入射する。
【0037】
図1(B)に示した例と比較すれば明らかなように、後段側の平板プリズム12による屈折効果が小さくならず、入射角φ1が大きな(低仰角)の入射光に対しても所定方向に導入できる。そのため、より広い角度範囲に亘って適応可能となる。
【0038】
また、図2に示した平板プリズム12を、図2(A)において平板面FSに垂直な一点鎖線で示す回転軸で回転させれば、2つの平板プリズム11,12で偏向させる角度を広い範囲(立体角)に亘って任意に変化させることができる。この様子を図3に示す。
【0039】
図3(A)は、2つの平板プリズムの単位プリズムP1,P2を重ねたときのウェッジ角が最も大きく(=2α)なる場合を示している。
図3(B)は、2つのプリズムP1,P2の合成によるウェッジ角が等価的に0になる場合について示している。
図3(C)は、図3(A)と図3(B)の中間状態であり、プリズムP1,P2の合成による等価的なウェッジ角は0〜2αの範囲をとり得る。
【0040】
なお、この例では図2(B)に示したように、前段側平板プリズム11の下面と後段側平板プリズム12の上面とが平行であるので、プリズムを透過する光線の軌跡を考察する場合にはその空気層は等価的に無視でき、図3の各図の右側に示すように、上下の単位プリズムを重ね合わせたものとして取り扱うことができる。
【0041】
平板プリズム11,12の具体的な設計例は次のとおりである。
屈折率:1.5(アクリル樹脂)
形状:直径300mmの円板形(板厚:2mm)
ウェッジ角α=21゜
単位プリズムのピッチ:1mm
単位プリズムの高低差:0.36mm
なお、上記プリズム面における非作用面NSと平板面FSとの成す角度γは、成形時の型離れを良好にするために、90°より小さい80°としている。
【0042】
この条件でウェッジ角α=21°にすぎないにも関わらず、図2(B)に示した入射角φ1が0〜90°の範囲、すなわち全ての方向からの入射光について、後段側平板プリズム12の作用面ESの垂直軸方向へ導出することが可能となる。
【0043】
なお、平板プリズム11,12の界面での屈折率差に伴う反射や、屈折に有効に寄与しない非作用面NSに起因する損失は生じる。
【0044】
図4は、2つの平板プリズム11,12を回転させる機構を備えた光導入装置101の断面図である。前段側平板プリズム11を回転枠体21に取り付けている。また、後段側平板プリズム12を回転枠体22に取り付けている。回転枠体21はギア31と噛合っていて、ギア31はモータ41によって回転する。同様に、回転枠体22はギア32と噛合っていて、ギア32はモータ42によって回転する。
【0045】
平板プリズム11,12は、モータ41の回転によって、前段側平板プリズム11の平板面に垂直な中心軸を回転軸として回転する。また、後段側平板プリズム12はモータ42の回転によって、その平板面に垂直な中心軸を回転軸として回転する。一点鎖線で示すこの2つの回転軸はウェッジ角αと等しい角度をなす。
【0046】
これにより2つの平板プリズム11,12同士の相対的な角度によって等価的なウェッジ角を制御し、且つ2つの平板プリズム11,12の全体の角度によって入射光の偏向方向(方位)を制御する。
【0047】
この第1の実施形態によれば、後段側平板プリズム12の回転軸が平板面の垂直軸と一致しているため、後段側平板プリズム12の回転機構部を薄く構成できる。そのため装置全体を薄くできる。また、どちらの回転軸も平板面の垂直軸となるので、回転機構部の作製時に、プリズムの取付け・調整が簡単で、正常動作しているか否かの確認も容易にできる。
【0048】
また、平板プリズム11,12を通常の肉厚プリズムとして考えた場合に、両プリズムの向かい合う面が常に平行な状態を保つため、両プリズムをどの方向に回転させれば所望の光路に調整できるかを計算しやすい。
【0049】
なお、2つの平板プリズム11,12を後段側平板プリズム12の入射面である平板面の垂直軸を回転軸として共に回転させ、且つ前段側平板プリズム11をその出射面であるプリズム面の垂直軸を回転軸として独立に回転させる構造としてもよい。すなわち図4に示したものと主従関係を逆にしてもよい。
【0050】
図5は、図4に示した光導入装置101を用いるとともに、その入射面側の構造をより具体的に表したものである。図5において、光導入装置101の前段側平板プリズム11の平板面に対して平行にガラス(強化ガラス)板52を配置し、そのガラス板52と前段側平板プリズム11の平板面との間に整合層51を設けている。この整合層51は、例えばガラス板52と平板プリズム11のそれぞれの屈折率に近似する、またはその中間的な屈折率を有する油状の屈折率整合液である。
【0051】
このような構成により、前段側平板プリズム11の平板面とガラス板52との界面には常に整合層51が満たされて空気層が入らないため、光路に対して界面の数を増すことなく光導入装置101の保護を行うことができる。
【0052】
次に、図2〜図5で示したように、平板プリズムの平板面を入射面として用いる場合と、平板プリズムのプリズム面を入射面として用いる場合とについて、損失の違いを示す。
【0053】
図6は、入射面側をプリズム面とした場合の入射角について示している。また図8は、入射面側を平板面とした場合の入射角について示している。ここで、破線で示す向きから入射する光については、平板プリズム14を回転させて、図中実線の矢印で示す方向から入射する状態で用いる。入射面から実線の矢印で示す方向を正方向とすると、入射角は常に正の値となる。
【0054】
図7は、入射面側をプリズム面とした場合の、入射角に対する透過率の関係について示す図であり、図9は、入射面側を平板面とした場合の、入射角に対する透過率の関係について示す図である。図7・図9はウェッジ角α=20°、非作用面と平板面とのなす角度γを80°とした場合の光線透過率を表している。図7・図9において、(A)は作用面を通過する割合について示し、(B)は界面反射を考慮し、且つ入射角による光強度を加味した加重平均をとった場合について示している。図7・図9の(A)において、入射角が負の値の領域は太陽光の追尾には不要な(入射させない)角度範囲である。
【0055】
図6・図7に示したように入射面がプリズム面であると、入射角が大きくなる程プリズム面の非作用面に入射する光が多くなって光透過率が低下してしまう。図7に図示したように、入射面がプリズム面である場合に、作用面に垂直な回転軸で回転させても、平均透過率は75.6%である。
【0056】
ところで、入射面をプリズム面にした場合は、光の入射範囲の中心方向と、作用面の垂直軸方向が一致するように平板プリズムを設置すると、広い角度範囲について入射光を平板プリズムに透過させることができる。しかし、例えば、前段側平板プリズムの入射面がプリズム面である集光ユニットを複数配置して集光装置を構成する場合を考えると、隣接する集光ユニットの影ができてしまうので、実際の平均透過率は63.2%までにさらに低下してしまう。
【0057】
これに対して、図8・図9に示したように入射面が平板面であると、広い角度範囲からの入射光が一旦平板プリズムを透過する。入射角の大きな入射光は非作用面を透過してしまう成分もあるが、作用面を透過する割合も比較的多い。そのため、入射面が平板面である場合の平均透過率は80.9%である。
【0058】
この場合には、複数の集光ユニットを近接配置しても、入射面が平板面であるので、各集光ユニットの前段側平板プリズムの入射面を平面状に配置することができる。そのため、隣接する集光ユニットの影ができることもなく、平均透過率の低下も少ない。
【0059】
《第2の実施形態》
第2の実施形態に係る光導入装置について図10・図11を参照して説明する。
図10は第2の実施形態に係る光導入装置の主要部の構成を示す断面図である。第1の実施形態では後段側平板プリズム12の入射面が平板面側となるように配置したが、第2の実施形態では、図10に示すように後段側平板プリズム13のプリズム面PSが入射面となるように配置している。
【0060】
そして、この例では、平板プリズム11,13のウェッジ角の開角方向に、対向する平板プリズムが相対的に開角するようにしている。すなわち、前段側平板プリズム11の平板面FSと後段側平板プリズム13の平板面FSとを傾斜させている。したがって、対向する面である、前段側平板プリズム11の作用面と後段側平板プリズムの作用面とを平行関係とすることができる。
【0061】
図10(B)は、前段側平板プリズム11と後段側平板プリズム13を回転させるための構造について示している。この図に示すように、前段側平板プリズム11を回転枠体21に取り付けている。後段側平板プリズム13は回転枠体23に取り付けている。回転枠体21はギア31と噛合っていて、ギア31はモータ41によって回転する。同様に、回転枠体23はギア33と噛合っていて、ギア33はモータ43によって回転する。
【0062】
平板プリズム11,13は、モータ41の回転によって、前段側平板プリズムの平板面に垂直な中心軸を回転軸として回転する。また、後段側平板プリズム13はモータ43の回転によって、そのプリズム面の作用面に垂直な中心軸を回転軸として回転する。一点鎖線で示すこの2つの回転軸はウェッジ角αと等しい角度をなす。
【0063】
これにより2つの平板プリズム11,13同士の相対的な角度によって等価的なウェッジ角を制御し、且つ2つの平板プリズム11,13の全体の角度によって入射光の偏向方向(方位)を制御する。
【0064】
なお、2つの平板プリズム11,13を後段側平板プリズム13の入射面であるプリズム面の作用面に垂直な軸を回転軸として共に回転させ、且つ前段側平板プリズム11をその出射面であるプリズム面の垂直軸を回転軸として独立に回転させる構造としてもよい。すなわち図10(B)に示したものと主従関係を逆にしてもよい。
【0065】
図11は、図10に示した光導入装置102を備え、さらに集光手段を備えて構成した集光ユニット201の構成を示す断面図である。
図11において、後段側平板プリズム13の下面(平板面側)にはフレネルレンズ19を設けている。このフレネルレンズ19の焦点FPに光ファイバOFの受光部を配置している。光は後段側平板プリズム13の平板面に対して垂直方向に出射されるので、これらの光はフレネルレンズ19によって焦点FPに集光されることになる。
【0066】
なお、界面の数を減らすために、後段側平板プリズム13の平板面とフレネルレンズ19の平板面との間には整合層を設けるか、両者を一体に成形して空気層を介在させない。
【0067】
このようにして焦点FPに集光された光は光ファイバOFを通じて所定の箇所へ光エネルギーとして伝送される。
【0068】
《第3の実施形態》
図12(A)は第3の実施形態に係る光導入装置103の主要部の断面図である。図12(B)は、前段側平板プリズム14と後段側平板プリズム13を回転させるための構造について示している。
【0069】
この第3の実施形態は、前段側平板プリズム14及び後段側平板プリズム13の両方について、入射面側をプリズム面とした例である。
図12(B)に示すように、前段側平板プリズム14を回転枠体24に取り付けている。後段側平板プリズム13は回転枠体23に取り付けている。回転枠体24はギア34と噛合っていて、ギア34はモータ44によって回転する。同様に、回転枠体23はギア33と噛合っていて、ギア33はモータ43によって回転する。
【0070】
この構成により、前段側平板プリズム14はその出射面である平板面に対して垂直な軸を回転軸として回転し、後段側平板プリズム13はそのプリズム面の作用面ESに対して垂直な軸を回転軸として回転する。
【0071】
なお、第1・第2の実施形態と同様に、前段側平板プリズム14の入射面であるプリズム面の作用面ESに垂直な軸で前段側平板プリズム14及び後段側平板プリズム13を回転させ、後段側平板プリズム13の入射面であるプリズム面の作用面ESに垂直な軸で後段側平板プリズム13を回転させてもよい。
【0072】
これにより2つの平板プリズム14,13同士の相対的な角度によって等価的なウェッジ角を制御し、且つ2つの平板プリズム14,13の全体の角度によって入射光の偏向方向(方位)を制御する。
【0073】
《第4の実施形態》
図13は第4の実施形態に係る光導入装置104の主要部の構成を示す断面図である。この例では、それぞれウェッジ角がβ1の前段側平板プリズム15と後段側平板プリズム16を用いている。前段側平板プリズム15は出射面をプリズム面とし、後段側平板プリズム16は入射面をプリズム面とし、2つの平板プリズム15,16は、対向する平板プリズム15,16のウェッジ角β1の傾斜方向に、角度2×(β1+β2)だけ開角した構造としている。
【0074】
換言すると、2つのプリズムの作用面同士を平行に配置した場合に必要なウェッジ角をαで表し、た場合に、β1<αであり、且つ、2つの平板プリズムの作用面同士を平行に配置した場合より、平板プリズムのウェッジ角β1の開角方向に、対向するプリズムが角度2×β2だけさらに開角するようにしている。
【0075】
そして、それぞれの平板プリズム15,16は、それぞれウェッジ角β1のプリズムとウェッジ角β2の空気プリズムの合成プリズムと見なし、それらの空気プリズムの作用面同士を平行に対向させている。すなわち、平板プリズム15,16のプリズム面から、平板プリズム15,16のウェッジ角β1の開角方向に平板プリズム15,16がそれぞれ角度β2開角した面が平行となるようにしている。そして、両者は前段側平板プリズムの平板面の垂直軸を回転軸として回転し、且つ、後段側平板プリズム16は、前記空気プリズム同士の対向する面(すなわち平板プリズム16の作用面から、平板プリズム16の開角方向にさらに角度β2だけ傾いた面)に垂直な軸を回転軸として回転する構造とする。
【0076】
図13(B)は、前段側平板プリズム15と後段側平板プリズム16を回転させるための構造について示している。この図に示すように、前段側平板プリズム15を回転枠体25に取り付けている。後段側平板プリズム16は回転枠体26に取り付けている。回転枠体25はギア35と噛合っていて、ギア35はモータ45によって回転する。同様に、回転枠体26はギア36と噛合っていて、ギア36はモータ46によって回転する。
【0077】
平板プリズム15,16は、モータ45の回転によって回転し、後段側平板プリズム16はモータ46の回転によっても回転する。一点鎖線で示すこの2つの回転軸は合成プリズムのウェッジ角(β1+β2)と等しい角度をなす。
【0078】
これにより2つの平板プリズム15,16同士の相対的な角度によって等価的なウェッジ角を制御し、且つ2つの平板プリズム15,16の全体の角度によって入射光の偏向方向(方位)を制御する。
【0079】
第1〜第3の実施形態で示した2つの平板プリズムを用いて、対向する作用面同士が平行となるように配置した場合、全ての入射角の光を後段側平板プリズムの出射面の垂直方向に導出するためには、既に述べたように、プリズムのウェッジ角は21゜必要であった。しかし、第4の実施形態では、後段側の平板プリズムの入射面が、出射面の傾斜方向に傾くように配置されているので、2つのプリズム15,16のウェッジ角β1は20.4゜あれば、すべての方向からの入射光に対し(すなわち前段側平板プリズムに対する入射角が0〜90°の範囲について)、後段側平板プリズムの出射面の垂直軸方向へ送り出すことが可能となる。但し、前記空気プリズムとの合成プリズムが占める角度β1+β2=21.4゜となるので、後段側平板プリズムの回転機構部は、図10に示した例よりもわずかに厚くなる。
【0080】
このようにして平板プリズムのウェッジ角を小さくすれば、平板プリズムによる透過損失が少なくなる。
【0081】
なお、同じ入射角の光を送り出す条件で、かつ平板プリズムの面積が同じである場合、β2が大きくなると、前段側平板プリズム15は通るが後段側平板プリズム16は通らない、ということによる損失は増えるが、上述のように平板プリズムのウェッジ角β1が小さくなる分だけ、光がプリズム面の非作用面に当たって所望の方向へ進まない割合は減る。β2がある程度の値までは、前者の損失増よりも後者の損失減の方が勝るため、総合効率は改善される。この理由により、第4の実施形態で示した光導入装置104の方が第2の実施形態で示した光導入装置102に比べてわずかに改善が見込まれる。
【0082】
なお、第1の実施形態として図2に示したように、2つの平板プリズム11,12のプリズム面をともに出射面側にしたものに適用することもできる。この場合には、2つの対向面を平行に配置した場合より、平板プリズム11のウェッジ角β1の開角方向に、平板プリズム12が角度β2開角する。そして、平板プリズム11のプリズム面の作用面から平板プリズム11のウェッジ角β1の開角方向に角度β2開角した面と平板プリズム12の平板面が平行となるように回転する。これによれば、β1=18〜15゜,β2=5〜10゜の範囲で総合効率が1%程度の改善が見込まれる。その理由は、第2の実施形態のように、プリズム面同士が対向していて、2つの平板プリズム11,13が大きな角度を成している場合、その角度をさらに広げると、前段側平板プリズムは通るが後段側平板プリズムは通らない、ということによる損失が大きく増えるが、第1の実施形態のように、対向する2つの平板プリズムのうち一方の面のみがプリズム面であれば、2つの平板プリズムが成す角度がもともと大きくなく、その角度を広げても損失増加は少ないためである。
【0083】
《第5の実施形態》
図14は第5の実施形態に係る集光装置301の構成を示す断面図である。この集光装置301は住宅の南側に面した傾斜屋根に設けたものである。屋根の入射面にはガラス板52を設け、その内側に図11に示したものと同様の集光ユニット201A〜201Dを設けている。但しこの図では断面内に4つの集光ユニット201A〜201Dが現れているが、紙面に対して垂直方向(奥行き方向)にも配列形成されている。
【0084】
このようにして複数の集光ユニットのそれぞれの複数の平板プリズムのうち初段の(前段の)平板プリズムの入射面がほぼ同一平面をなすように複数配置することによって、隣接する他の集光ユニットが入射光を遮蔽することなく、全体に高効率な集光装置が構成できる。
【0085】
なお、図4に示したように、後段側平板プリズム12の出射面がプリズム面である場合には、その平板面側(入射面側)にフレネルレンズを配置するか、両者を一体成形してもよい。さらには平板プリズムのプリズムパターンとフレネルレンズのパターンとの合成パターンを同一面に設けることによって両者を一体化してもよい。
【0086】
また、以上に示した各実施形態ではいずれも2つの平板プリズムを備えたが、3つ以上の平板プリズムを備える場合には、対向する2つの平板プリズムについて本発明を同様に適用すればよい。
【0087】
また、以上に示した各実施形態では、平板プリズムの対向する面または空気プリズムの対向する面が略平行になるように配置しているが、これに限られず、2つの平板プリズムの平板面が平行ではなく、ウェッジ角の開角方向に相対的に開角するように2つの平板プリズムが傾斜していればよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】特許文献2に示されている太陽追尾装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る光導入装置の主要部の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る光導入装置の偏向角の制御の例を示す図である。
【図4】2つの平板プリズム11,12を独立して回転させる機構を備えた光導入装置101の断面図である。
【図5】図4に示した光導入装置101を用いるとともに、その入射面側の構造をより具体的に表した図ある。
【図6】入射面側をプリズム面とした場合の入射角について示す図である。
【図7】入射面側をプリズム面とした場合の、入射角に対する透過率の関係を示す図である。
【図8】入射面側を平板面とした場合の入射角について示している。
【図9】入射面側を平板面とした場合の、入射角に対する透過率の関係を示す図である。
【図10】第2の実施形態に係る光導入装置の主要部の構成を示す断面図である。
【図11】図10に示した光導入装置102を備え、さらに集光手段を備えて構成した集光ユニット201の断面図である。
【図12】第3の実施形態に係る光導入装置103の主要部の構成を示す断面図である。
【図13】第4の実施形態に係る光導入装置104の主要部の構成を示す断面図である。
【図14】第5の実施形態に係る集光装置301の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0089】
11…前段側平板プリズム
12…後段側平板プリズム
13…後段側平板プリズム
14…前段側平板プリズム
15…前段側平板プリズム
16…後段側平板プリズム
19…フレネルレンズ
21〜26…回転枠体
31〜36…ギア
41〜46…モータ
51…整合層
52…ガラス板
101〜104…光導入装置
201…集光ユニット
301…集光装置
ES…作用面
FP…焦点
FS…平板面
NS…非作用面
OF…光ファイバ
P1,P2…単位プリズム
PS…プリズム面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平板プリズムを備えた光導入装置において、
前記複数の平板プリズムのうち、前段側と後段側の少なくとも2つの平板プリズムは、少なくとも一方の平板プリズムのプリズム面が他方の平板プリズムに対向し、且つ、前記一方の平板プリズムのウェッジ角の開角方向に他方の平板プリズムが相対的に開角する関係に配置され、当該2つの平板プリズムが回転可能に設けられたことを特徴とする光導入装置。
【請求項2】
前記2つの平板プリズムは、双方に共通の第1の回転軸を有し、前記2つの平板プリズムの一方は、前記第1の回転軸とは独立した第2の回転軸を有する、請求項1に記載の光導入装置。
【請求項3】
前記2つの平板プリズムの回転に関わらず、前記2つの平板プリズムの互いに対向する面は略平行な関係を維持する、請求項1または2に記載の光導入装置。
【請求項4】
前記2つの平板プリズムのうち、少なくとも一方の平板プリズムは、入射面に垂直な軸を回転軸として回転する、請求項3に記載の光導入装置。
【請求項5】
前記2つの平板プリズムを、それらの対向面を平行に配置した場合に必要なウェッジ角をαで表し、前記2つの平板プリズムのウェッジ角をそれぞれβで表した場合にβ<αの関係にあり、且つ、対向面を平行に配置した場合より、プリズム面が他方の平板プリズムに対向する一方の平板プリズムのウェッジ角の開角方向に、他方の平板プリズムが開角する関係に配置された、請求項1または2に記載の光導入装置。
【請求項6】
前記2つの平板プリズムは、他方の平板プリズムに対向する一方の平板プリズムの面が平板面である場合にはその平板面が、他方の平板プリズムに対向する一方の平板プリズムの面がプリズム面である場合には、当該プリズム面から前記一方の平板プリズムのウェッジ角βの開角方向に所定の角度開角した面が、前記2つの平板プリズムの回転に関わらず、平行な関係を維持する、請求項5に記載の光導入装置。
【請求項7】
前記前段の平板プリズムと前記後段の平板プリズムのうち、少なくとも一方の平板プリズムの入射面が平面である、請求項1〜6のいずれかに記載の光導入装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の光導入装置と、前記複数の平板プリズムのうち最後段から出射される光を集光する集光レンズとを備えてなる集光ユニット。
【請求項9】
前記複数の平板プリズムのうち最後段に配置された平板プリズムは、その出射面が平面であり、当該平板プリズムの出射面に前記集光レンズを形成された、請求項8に記載の集光ユニット。
【請求項10】
請求項8または9に記載の集光ユニットが、前記複数の平板プリズムのうち初段の平板プリズムの入射面が略同一平面をなすように複数配置されてなる集光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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