説明

光導波路の製造方法および光導波路

【課題】接着層を用いることなく、基材と被着体との間に光の伝搬経路を形成するとともに、基材と被着体とを強固に接合し、光導波路として機能する接合体を容易に得ることができる光導波路の製造方法、および、薄型化が可能でかつ信頼性の高い光導波路を提供すること。
【解決手段】第1の基板2上にプラズマ重合法により接合膜3を成膜する工程と、接合膜3のうち、一部に線状に設定したコア部領域(第2の領域)310を囲むように設定したクラッド部領域(第1の領域)320に紫外線を照射する工程と、接合膜3を介して第1の基板2と第2の基板4とを接合し、光導波路1を得る工程とを有する光導波路の製造方法であって、紫外線照射処理によりクラッド部領域320の屈折率が低下するため、コア部領域310とクラッド部領域320との間で屈折率差が生じ、コア部領域310がコア部31になる一方、クラッド部領域320が側方クラッド部32となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の製造方法および光導波路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器内では、デバイス間で大容量のデータをやりとりするため、多くの電気配線が使用されているが、近年のデータ量の増加に伴って、ノイズやクロストーク、消費電力等の問題が顕在化しつつある。このため、電気配線がボトルネックとなって、データ量の増加に対応することが困難になりつつある。
そこで、電気配線に代わる信号伝送手段として、光信号を使用してデータを伝送することができる光導波路の開発が進んでいる。光導波路は、光信号を一地点から他地点に導くことができる手段であり、光信号が伝搬する線状のコア部と、その周囲を覆うように設けられた筒状のクラッド部とを有している。このうち、コア部は、光に対して実質的に透明な材料で構成されており、一方、クラッド部は、コア部より屈折率が低い材料で構成されている。
【0003】
このような光導波路は、通常、シート状の形態をなしており、接着剤等により基板に接着した状態で使用される。
例えば、特許文献1には、電気素子や光素子を内蔵した基板に、絶縁性接着物を介して導波路基板(光導波路)を接着してなる多層光電気混載基板が開示されている。
ところが、近年のデータ量の増加に伴って、多層光電気混載基板のさらなる多層化が求められている。しかしながら、基板間の接着には、ある程度の厚さの接着層が不可欠であるため、層数が多くなればなるほど、多層光電気混載基板が著しく厚くなってしまう。その結果、多層光電気混載基板の薄型化を困難にしていた。
【0004】
【特許文献1】特開2004−327516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、接着層を用いることなく、基材と被着体との間に光の伝搬経路を形成するとともに、基材と被着体とを強固に接合し、光導波路として機能する接合体を容易に得ることができる光導波路の製造方法、および、薄型化が可能でかつ信頼性の高い光導波路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の光導波路の製造方法は、基材および被着体を用意し、前記基材上に、プラズマ重合法により、シロキサン(Si−O)結合を含むSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含む接合膜を形成する第1の工程と、
前記接合膜のうち、一部に設定された第1の領域に紫外線照射処理を施すことにより、前記第1の領域に存在する前記脱離基を前記Si骨格から脱離させ、接着性を発現させるとともに、前記第1の領域の屈折率を低下させる第2の工程と、
接着性が発現した前記接合膜を介して前記基材と前記被着体とを接合することにより、前記接合膜の前記第1の領域と、前記基材および前記被着体とをクラッド部とし、前記接合膜の前記第1の領域で囲まれた第2の領域をコア部とする光導波路を得る第3の工程とを有することを特徴とする。
これにより、接着剤を用いることなく、基材と被着体との間に光の伝搬経路を形成するとともに、基材と被着体とを強固に接合し、光導波路として機能する接合体を容易に得ることができる。
【0007】
本発明の光導波路の製造方法では、前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%であることが好ましい。
これにより、接合膜は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜自体が強固なものとなる。また、かかる接合膜は、基材および被着体に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
本発明の光導波路の製造方法では、前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、基材と被着体とをより強固に接合することができるようになる。
【0008】
本発明の光導波路の製造方法では、前記Si骨格は、シロキサン結合を含むランダムな原子構造を含んでおり、
前記Si骨格の結晶化度は、45%以下であることが好ましい。
これにより、Si骨格は特にランダムな原子構造を含むものとなる。そして、寸法精度および接着性に優れた接合膜が得られる。
【0009】
本発明の光導波路の製造方法では、前記接合膜は、Si−H結合を含んでいることが好ましい。
Si−H結合は、シロキサン結合の生成が規則的に行われるのを阻害すると考えられる。このため、シロキサン結合は、Si−H結合を避けるように形成されることとなり、Si骨格の規則性が低下する。このようにして、プラズマ重合法によれば、接合膜中にSi−H結合が含まれることにより、結晶化度の低いSi骨格を効率よく形成することができる。
【0010】
本発明の光導波路の製造方法では、前記Si−H結合を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピーク強度が0.001〜0.2であることが好ましい。
これにより、接合膜中の原子構造は、相対的に最もランダムなものとなる。このため、接合膜は、接合強度、耐薬品性および寸法精度において特に優れたものとなる。
【0011】
本発明の光導波路の製造方法では、前記脱離基は、アルキル基であることが好ましい。
これにより、耐候性および耐薬品性に優れた接合膜が得られる。
本発明の光導波路の製造方法では、前記脱離基としてメチル基を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、メチル基に帰属するピーク強度が0.05〜0.45であることが好ましい。
これにより、メチル基の含有率が最適化され、メチル基がシロキサン結合の生成を必要以上に阻害するのを防止しつつ、接合膜中に必要かつ十分な数の活性手が生じるため、接合膜に十分な接着性が生じる。また、接合膜には、メチル基に起因する十分な耐候性および耐薬品性が発現する。
【0012】
本発明の光導波路の製造方法では、前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、接着性により優れた接合膜が得られる。また、この接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなり、例えば、薬品類等に長期にわたって曝されるような基材および被着体の接合に際して、有効に用いられるものとなる。さらに、この接合膜は、耐光性に優れたものとなり、長期にわたって使用した場合でも、損失特性の著しい低下を防止し得る光導波路を実現することができる。
本発明の光導波路の製造方法では、前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、接着性に特に優れた接合膜が得られる。
本発明の光導波路の製造方法では、前記接合膜の平均厚さは、1〜300μmであることが好ましい。
これにより、基材と被着体とを接合してなる光導波路の厚さが厚くなり過ぎるのを防止しつつ、十分な伝搬特性を有するコア部を備えた光導波路が得られる。
【0013】
本発明の光導波路の製造方法では、前記紫外線の波長は、126〜300nmであることが好ましい。
これにより、接合膜中の脱離基を確実に脱離させ、屈折率を低下させることができる。
本発明の光導波路の製造方法では、前記紫外線の照射は、酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。
これにより、接合膜の第2の領域の有機成分が減少することにより、第2の領域の無機化が進行し、第2の領域の屈折率の低下幅をより拡大することができる。その結果、光導波路における伝搬特性のさらなる向上を図ることができる。
【0014】
本発明の光導波路の製造方法では、前記第2の工程において、前記接合膜の前記第1の領域に紫外線を照射することにより、前記第1の領域の厚さを減少させ、
前記第3の工程の後、前記接合膜の前記第1の領域の厚さの減少に伴って、結果的に前記厚さ方向に突出した前記第2の領域を、前記第1の領域と同じ厚さになるまで加圧して圧縮することが好ましい。
これにより、接合膜の第1の領域のみが圧縮されることにより、第1の領域の屈折率がさらに向上することとなる。その結果、光導波路のコア部とクラッド部との屈折率差がさらに拡大し、光導波路の伝搬特性のさらなる向上が図られる。
【0015】
本発明の光導波路の製造方法では、前記第3の工程における前記コア部と前記クラッド部との比屈折率差は、0.5〜6%であることが好ましい。
このような十分な屈折率差があれば、コア部とクラッド部との間で全反射が確実に生じ、界面での光の染み出しを抑制することができる。その結果、光導波路における損失特性を高めることができる。
【0016】
本発明の光導波路の製造方法では、前記基材および前記被着体は、それぞれガラス材料で構成されていることが好ましい。
これにより、基材および被着体は、接合膜との屈折率の整合性および密着性(接合性)に優れたものとなる。
本発明の光導波路の製造方法では、前記被着体は、第2の基材と、該第2の基材上に成膜された、前記接合膜と同様の第2の接合膜とを有するものであり、
前記第2の工程において、前記第2の接合膜に紫外線を照射することにより、前記第2の接合膜に接着性を発現させ、
前記第3の工程において、前記接合膜と前記第2の接合膜とが接触するように、前記基材と前記第2の基材とを接合することが好ましい。
第2の接合膜は、紫外線の照射によって屈折率が低下するため、コア部とクラッド部との屈折率差のさらなる拡大が図られる。また、その屈折率差の拡大は、第2の基材の屈折率に依存しないものであるため、第2の基材の構成材料の選択幅が広がることとなる。
【0017】
本発明の光導波路は、互いに対向配置された基材および被着体と、
前記基材の前記被着体側の面にプラズマ重合法により成膜され、シロキサン(Si−O)結合を含むSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、前記基材と前記被着体とを接合する機能を有し、かつ、光透過性を有するコア部と、該コア部を囲むように設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とが形成された接合膜とを有し、
前記接合膜の一部に設定された第1の領域に紫外線照射処理を施し、前記接合膜の表面に存在する前記脱離基を前記Si骨格から脱離させることにより、前記接合膜に発現した接着性によって、前記基材と前記被着体とが接合されており、
かつ、前記接合膜のうち、前記紫外線照射処理を施した前記第1の領域と、前記基材および前記被着体とが前記クラッド部であり、前記接合膜の前記第1の領域に囲まれた第2の領域が前記コア部であることを特徴とする。
これにより、接着層を用いることなく、基材と被着体とが強固に接合され、これにより薄型化が可能でかつ信頼性の高い光導波路が得られる。
【0018】
本発明の光導波路では、前記被着体は、第2の基材と、該第2の基材の前記接合膜側に成膜された、前記接合膜と同様の第2の接合膜とを有するものであり、
前記接合膜の前記第1の領域および前記第2の接合膜にそれぞれ紫外線照射処理を施し、前記接合膜と前記第2の接合膜にそれぞれ発現した接着性によって、前記基材と前記被着体とが接合されており、
かつ、前記接合膜の前記第1の領域と、前記基材および前記第2の接合膜とが前記クラッド部であり、前記接合膜の前記第2の領域が前記コア部であることが好ましい。
これにより、光導波路の信頼性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の光導波路の製造方法および光導波路を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の光導波路の製造方法の第1実施形態について説明する。
図1には、本発明の光導波路の第1実施形態を示す図(斜視図)、図2は、本発明の光導波路の製造方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)、図3は、本発明の光導波路の製造方法において、接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図4は、本発明の光導波路の製造方法において、接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図1および図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0020】
図1に示す光導波路1は、第1の基板(基材)2と、第2の基板(被着体)4と、これらの基板2、4間に設けられた接合膜3とを有しており、この接合膜3を介して、2つの基板2、4が接合されてなるものである。なお、図1では、第2の基板4を透過するように図示している。
この光導波路1のうち、接合膜3は、プラズマ重合法により成膜されたものであり、シロキサン(Si−O)結合を含むランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含むものである。
このような接合膜3では、エネルギーを付与することにより、接合膜3に存在する脱離基がSi骨格から脱離する。そして、この脱離基の脱離によって、接合膜3のエネルギーを付与した領域に接着性が発現するという特徴を有する。
【0021】
また、接合膜3には、図1に示すように、光透過性を有する線状のコア部31と、このコア部31の側面に隣接するように設けられ、コア部31よりも屈折率の低い側方クラッド部32とが形成されている。すなわち、接合膜3を介して各基板2、4を接合することにより、その接合体は、コア部31の周囲を各基板2、4と側方クラッド部32とで囲まれたものとなる。そして、各基板2、4として、コア部31より屈折率の小さいものを選択することにより、各基板2、4は、側方クラッド部32とともに、コア部31の周囲を覆うクラッド部33を構成し、接合体は光導波路として機能することができる。
【0022】
この光導波路1では、コア部31の一方の端部に入射された光を、コア部31とクラッド部33との界面で次々と全反射させ、コア部31の他方の端部まで伝搬することができる。そして、他方の端部で受光した光の明滅パターンに基づいて光通信を行うことができる。
上記のような特徴を有する接合膜3は、2つの基板2、4間を、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合可能である。そして、この接合膜3を用いることにより、第1の基板2と第2の基板4とが強固に接合してなる信頼性の高い光導波路1が得られる。
【0023】
このような光導波路1は、第1の基板2上に、プラズマ重合法により接合膜3を成膜する工程(第1の工程)と、接合膜3のうち、一部に線状に設定したコア部領域(第2の領域)310を囲むように設定したクラッド部領域(第1の領域)320に紫外線を照射する工程(第2の工程)と、接合膜3を介して第1の基板2と第2の基板4とを接合し、光導波路1を得る工程(第3の工程)とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0024】
[1]まず、第1の基板2および第2の基板4を用意する。
これらの基板2、4は、接合膜3を介して互いに貼り合わせることにより、光伝搬性を有する光導波路1を形成し得るものである。
第1の基板2および第2の基板4の各構成材料は、コア部31よりも屈折率が小さい材料から適宜選択することができるが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の各種樹脂材料や、ソーダガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等のガラス材料、CaF、BaF、MgF等の結晶材料等が挙げられる。
これらの中でも、接合膜3との屈折率の整合性や密着性(接合性)の観点から、各種ガラス材料が好ましく用いられる。
【0025】
ここで、コア部31と、第1の基板2および第2の基板4との屈折率差は、できるだけ大きい方が好ましいが、一例としては比屈折率差が0.5〜6%程度であるのが好ましく、1〜5%程度であるのがより好ましい。このような十分な屈折率差があれば、コア部31と第1の基板2および第2の基板4との間で全反射が確実に生じ、界面での光の染み出しを抑制することができる。その結果、光導波路1における損失特性を高めることができる。すなわち、第1の基板2および第2の基板4は、クラッド部33の一部として機能する。
【0026】
なお、前述した比屈折率差は、(コア部の屈折率−クラッド部の屈折率)/(コア部の屈折率)の百分率として定義される。
また、第1の基板2の構成材料と第2の基板4の構成材料とは、同じでも互いに異なっていてもよい。
また、第1の基板2の構成材料および第2の基板4の構成材料は、実質的に透明な材料が一般的であるが、不透明な材料であってもよい。
【0027】
次に、図2(a)に示すように、第1の基板2の表面上に接合膜3を成膜する(第1の工程)。接合膜3は、第1の基板2と第2の基板4との間に位置し、これらの接合を担うものである。
かかる接合膜3は、図4、5に示すように、シロキサン(Si−O)結合302を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合する脱離基303とを有するものである。
なお、接合膜3については、後に詳述する。
【0028】
また、第1の基板2の少なくとも接合膜3を形成すべき領域には、第1の基板2の構成材料に応じて、接合膜3を形成する前に、あらかじめ、第1の基板2と接合膜3との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、第1の基板2の接合膜3を形成すべき領域を清浄化するとともに、該領域を活性化させることができる。これにより、第1の基板2と接合膜3との接合強度を高めることができる。
【0029】
また、これらの各表面処理の中でもプラズマ処理を用いることにより、接合膜3を形成するために、第1の基板2の表面を特に最適化することができる。
なお、表面処理を施す第1の基板2が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、第1の基板2の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3の接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第1の基板2の構成材料としては、例えば、前述したような各種ガラス材料、各種結晶材料等を主材料とするものが挙げられる。
【0030】
このような材料で構成された第1の基板2は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成された第1の基板2を用いると、上記のような表面処理を施さなくても、第1の基板2と接合膜3との密着強度を高めることができる。
なお、この場合、第1の基板2の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜3を形成すべき領域の表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
【0031】
一方、第2の基板4においても、その構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、第1の基板2と第2の基板4との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第2の基板4の構成材料には、前述した第1の基板2の構成材料と同様のもの、すなわち、各種ガラス材料、各種結晶材料等を用いることができる。
さらに、第2の基板4の接合膜3に密着する領域に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、第1の基板2と第2の基板4との接合強度を十分に高くすることができる。
【0032】
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような官能基、ラジカル、開環分子、2重結合、3重結合のような不飽和結合、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質が挙げられる。
また、このようなものを有する表面が得られるように、上述したような各種表面処理を適宜選択して行うのが好ましい。
【0033】
[2]次に、図2(b)に示すように、接合膜3のうち、光導波路1のコア部31を形成すべき領域をコア部領域(第2の領域)310として設定するとともに、側方クラッド部32を形成すべき領域(コア部領域310の周囲の領域)をクラッド部領域(第1の領域)320として設定する。そして、クラッド部領域320に紫外線を照射する(紫外線照射処理)。
【0034】
紫外線が照射されると、接合膜3のクラッド部領域320では、紫外線のエネルギーが付与されることにより、脱離基303がSi骨格301から脱離する。そして、脱離基303が脱離した後には活性手が生じるため、接合膜3のクラッド部領域320に、第2の基板4との接着性が発現する。その結果、接合膜3のクラッド部領域320は、化学的結合に基づいて第2の基板4と安定して強固に接合可能なものとなる。
【0035】
ここで、紫外線が照射する前の接合膜3は、図4に示すように、Si骨格301と脱離基303とを有している。かかる接合膜3にエネルギーが付与されると、特に表面付近の脱離基303(本実施形態では、メチル基)がSi骨格301から脱離する。これにより、図5に示すように、接合膜3の表面35に活性手304が生じ、活性化される。その結果、接合膜3の表面には接着性が発現する。
【0036】
なお、接合膜3を「活性化させる」とは、接合膜3の表面35および内部の脱離基303が脱離して、Si骨格301において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態や、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
したがって、活性手304とは、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手304によれば、第2の基板4に対して、特に強固な接合が可能となる。
【0037】
また、接合膜3のクラッド部領域320に紫外線を照射すると、クラッド部領域320の屈折率が低下する。その結果、クラッド部領域320の屈折率は、コア部領域310の屈折率よりも低くなる。すなわち、接合膜3のコア部領域310とクラッド部領域320との間に屈折率差が生じる。
なお、紫外線が照射されたクラッド部領域320において屈折率が低下する理由の1つとしては、紫外線の照射に伴ってクラッド部領域320の内部から脱離基303が脱離し、これによりクラッド部領域320中の高屈折率成分(例えば有機基等)が減少し、かつ多数の空隙が生じ、屈折率の低下に影響を及ぼしているものと推察される。
特に、脱離基303が有機基等の高屈折率成分の場合、その成分の減少に伴って屈折率の十分な低下が期待できる。
【0038】
また、紫外線の照射に伴い、接合膜3のクラッド部領域320中に多数の空隙が生じ、その空隙を埋めるようにしてクラッド部領域320の体積が減少する。その結果、クラッド部領域320の膜厚が減少して、図3(c)に示すように、コア部領域310よりもクラッド部領域320が凹み、両者の間に膜厚差が生じる。換言すれば、コア部領域310は、クラッド部領域320より厚さ方向に突出した状態になる。
【0039】
なお、本実施形態では、前記工程において、コア部領域310の膜厚とクラッド部領域320の膜厚とが同じになるように接合膜3を成膜する例について説明しているが、上記のクラッド部領域320における膜厚の減少分を加味して、クラッド部領域320の膜厚がコア部領域310より厚くなるよう成膜するようにしてもよい。これにより、接合膜3では、コア部領域310の膜厚とクラッド部領域320の膜厚とが同じになり、後述する工程において、コア部領域310を圧縮することなく、接合膜3を介して第1の基板2と第2の基板4とを接合することができる。
また、接合膜3のクラッド部領域320に紫外線を選択的に照射するためには、図2(b)に示すように、クラッド部領域320の平面視形状に対応した形状の窓部71を有するマスク7を介して紫外線照射を行うようにすればよい。
【0040】
接合膜3に照射する紫外線の波長は、126〜300nm程度であるのが好ましく、160〜200nm程度であるのがより好ましい。紫外線の波長を前記範囲内とすることにより、接合膜3中の脱離基303を確実に脱離させ、屈折率を低下させることができる。
また、接合膜3に照射する紫外線の照度は、好ましくは1mW/cm〜1W/cm程度、より好ましくは5mW/cm〜50mW/cm程度とされる。さらに、接合膜3に紫外線を照射する時間は、10秒〜60分程度であるのが好ましく、30秒〜30分程度であるのがより好ましい。紫外線の照度および照射時間を前記範囲内とすることにより、十分な量の脱離基303を脱離させ、クラッド部領域320の屈折率を確実に低下させるとともに、膜厚を確実に減少させることができる。
【0041】
さらに、紫外線を照射する雰囲気は、大気、酸素のような酸化性雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性雰囲気、水素のような還元性雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧雰囲気等のいかなる雰囲気でもよいが、好ましくは酸化性雰囲気とされる。酸化性雰囲気下で紫外線を照射することにより、接合膜3のクラッド部領域320の有機成分が減少することにより、クラッド部領域320の無機化が進行し、クラッド部領域320の屈折率の低下幅をより拡大することができる。その結果、光導波路1における伝搬特性のさらなる向上を図ることができる。
【0042】
[3]次に、紫外線が照射された接合膜3のクラッド部領域320と第2の基板4とが密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを重ね合わせる。これにより、図3(d)に示す仮接合体5を得る。この仮接合体5の状態では、接合膜3のうち、紫外線を照射していないコア部領域310と第2の基板4とが接触し、クラッド部領域320と第2の基板4とは接触していない状態であるため、第1の基板2と第2の基板4とは単に重ね合わせた状態である。
【0043】
次いで、仮接合体5を加圧してコア部領域310を圧縮する。この圧縮は、コア部領域310の膜厚がクラッド部領域320の膜厚と同じになるまで行う。これにより、接合膜3のクラッド部領域320が第2の基板4と密着する。クラッド部領域320には紫外線照射により接着性が発現していることから、クラッド部領域320と第2の基板4とが密着することにより、接合膜3を介して第1の基板2と第2の基板4とが接合される。その結果、接合膜3のコア部領域310がコア部31となり、クラッド部領域320が側方クラッド部32となる。そして、得られた側方クラッド部32と、第1の基板2および第2の基板4とが、コア部31の周囲を覆うクラッド部33となり、図3(e)に示す光導波路(本発明の光導波路)1が得られる。
【0044】
このようにして得られた光導波路1では、第1の基板2と第2の基板4との間が、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて接合されている。このため、光導波路1を短時間で形成することができ、かつ各基板2、4間が極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
換言すれば、光導波路1の接合膜3は、第1の基板2と第2の基板4とを接合する接合膜としての機能と、光を伝搬するコア部を含む光伝搬機能とを併せ持つものとなる。
【0045】
ここで、本工程において、第1の基板2と第2の基板4とが接合されるメカニズムについて説明する。
例えば、第2の基板4の接合面に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、接合膜3の表面35と第2の基板4の接合面とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜3の表面35に存在する水酸基と、第2の基板4の接合面に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、第1の基板2と第2の基板4とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合する。その結果、第1の基板2と第2の基板4との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が酸素原子を介して結合する。これにより、第1の基板2と第2の基板4とがより強固に接合されると推察される。
【0046】
なお、前記工程[2]で活性化された接合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[2]の終了後、できるだけ早く本工程[3]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[2]の終了後、60分以内に本工程[3]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程で第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
【0047】
換言すれば、活性化させる前の接合膜3は、Si骨格301を有する接合膜であるため、化学的に比較的安定であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜3は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような接合膜3を備えた第1の基板2を多量に製造または購入して保存しておき、本工程の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[2]に記載した紫外線照射処理を行うようにすれば、光導波路1の製造効率の観点から有効である。
【0048】
以上のようなメカニズムで第1の基板2と第2の基板4とが接合される。
なお、第1の基板2と第2の基板4との貼り合わせは、いかなる雰囲気下で行われてもよいが、好ましくは大気雰囲気下で行われる。大気雰囲気下では、接合膜3の表面35および第2の基板4の接合面に水酸基が速やかにかつ高密度で吸着するため、接合膜3と第2の基板4との間が短時間で強固に接合する。
【0049】
接合された第1の基板2と第2の基板4との間の接合強度は、5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する光導波路1は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。
また、本実施形態では、第1の基板2と第2の基板4との間が、接合膜3の一部の領域であるクラッド部領域320を介して接合されている。この場合、接合面積を限定することにより、全面を接合する場合に比べて、接合界面における応力集中を緩和することができ、光導波路1の変形または接合界面の剥離等の不具合を防止することができる。
【0050】
また、前記加圧により、接合膜3のコア部領域310のみが圧縮されるため、膜の密度が向上し、コア部領域310の屈折率がさらに向上することとなる。その結果、光導波路1のコア部31と側方クラッド部32との間の屈折率差がさらに拡大し、光導波路1の伝搬特性のさらなる向上が図られる。
さらに、このような屈折率差が拡大した接合膜3は、その厚さを十分に薄くしたとしても第1の基板2と第2の基板4とを強固に接合することができる。したがって、光導波路1のさらなる薄型化を可能にする。
【0051】
なお、仮接合体5を加圧する際の圧力は、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。
また、得られたコア部31の屈折率は、各種成膜条件や紫外線照射条件等に応じて調整可能であるが、その範囲の一例は、波長550nmで1.45〜1.52程度である。したがって、各基板2、4の構成材料は、このコア部31の屈折率に基づいて選択すればよい。
【0052】
一方、側方クラッド部32の屈折率も、各種成膜条件や紫外線照射条件等に応じて調整可能であるが、その範囲の一例は、波長550nmで1.42〜1.48程度である。
また、コア部31と側方クラッド部32との屈折率差は、できるだけ大きい方が好ましいが、一例としては比屈折率差が0.5〜6%程度であるのが好ましく、1〜5%程度であるのがより好ましい。このような十分な屈折率差があれば、コア部31と側方クラッド部32との間で全反射が確実に生じ、界面での光の染み出しを抑制することができる。その結果、光導波路1における損失特性を高めることができる。
また、光導波路1を得た後、この光導波路1に対して、必要に応じ、以下の工程(光導波路1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、光導波路1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0053】
[4]得られた光導波路1を加熱する。
これにより、光導波路1における接合強度をより高めることができる。
このとき、光導波路1を加熱する際の温度は、室温より高く、光導波路1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、光導波路1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
【0054】
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[4]における加熱は、前述したように仮接合体5を加圧しつつ行うのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、光導波路1の接合強度を特に高めることができる。
以上のような工程を行うことにより、光導波路1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0055】
ここで、接合膜3について詳述する。
前述したように接合膜3は、プラズマ重合法により形成されたものであり、図4に示すように、シロキサン(Si−O)結合302を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合する脱離基303とを有するものである。このような接合膜3は、シロキサン結合302を含みランダムな原子構造を有するSi骨格301の影響によって、変形し難い強固な膜となる。これは、Si骨格301の結晶性が低くなるため、結晶粒界における転位やズレ等の欠陥が生じ難いためであると考えられる。このため、接合膜3自体が接合強度、耐薬品性、耐光性および寸法精度の高いものとなり、最終的に得られる光導波路1においても、接合強度、耐薬品性、耐光性および寸法精度が高いものが得られる。
【0056】
このような接合膜3は、エネルギーが付与されると、脱離基303がSi骨格301から脱離し、図5に示すように、接合膜3の表面35および内部に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜3表面に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜3は、第2の基板4に対して高い寸法精度で強固に効率よく接合可能な
【0057】
なお、脱離基303とSi骨格301との結合エネルギーは、Si骨格301中のシロキサン結合302の結合エネルギーよりも小さい。このため、接合膜3は、エネルギーの付与により、Si骨格301はほとんど切れることなく、脱離基303とSi骨格301との結合を選択的に切断し、脱離基303を脱離させることができる。
【0058】
また、このような接合膜3は、流動性を有しない固体状のものとなる。このため、従来、流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。これにより、光導波路1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
【0059】
なお、接合膜3においては、特に接合膜3を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%程度であるのが好ましく、20〜80原子%程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜3はSi原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜3自体が強固なものとなる。また、かかる接合膜3は、第1の基板2および第2の基板4に対して、特に高い密着強度を示すものとなる。
【0060】
また、接合膜3中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、第1の基板2と第2の基板4とをより強固に接合することができるようになる。
また、接合膜3中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述したSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜3の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
【0061】
なお、Si骨格301の結晶化度は、一般的な結晶化度測定方法により測定することができ、具体的には、結晶部分における散乱X線の強度に基づいて測定する方法(X線法)、赤外線吸収の結晶化バンドの強度から求める方法(赤外線法)、核磁気共鳴吸収の微分曲線の下の面積に基づいて求める方法(核磁気共鳴吸収法)、結晶部分には化学試薬が浸透し難いことを利用した化学的方法等により測定することができる。
【0062】
また、接合膜3は、その構造中にSi−H結合を含んでいるのが好ましい。このSi−H結合は、プラズマ重合法によってシランが重合反応する際に重合物中に生じるものであるが、このとき、Si−H結合がシロキサン結合の生成が規則的に行われるのを阻害すると考えられる。このため、シロキサン結合は、Si−H結合を避けるように形成されることとなり、Si骨格301の原子構造の規則性が低下する。このようにして、プラズマ重合法によれば、結晶化度の低いSi骨格301を効率よく形成することができる。
【0063】
一方、接合膜3中のSi−H結合の含有率が多ければ多いほど結晶化度が低くなるわけではない。具体的には、接合膜3の赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピークの強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピークの強度は、0.001〜0.2程度であるのが好ましく、0.002〜0.05程度であるのがより好ましく、0.005〜0.02程度であるのがさらに好ましい。Si−H結合のシロキサン結合に対する割合が前記範囲内であることにより、接合膜3中の原子構造は、相対的に最もランダムなものとなる。このため、Si−H結合のピーク強度がシロキサン結合のピーク強度に対して前記範囲内にある場合、接合膜3は、接合強度、耐薬品性および寸法精度において特に優れたものとなる。
【0064】
また、Si骨格301に結合する脱離基303は、前述したように、Si骨格301から脱離することによって、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないようSi骨格301に確実に結合しているものである必要がある。
なお、プラズマ重合法による成膜の際には、原料ガスの成分が重合して、シロキサン結合を含むSi骨格301と、それに結合した残基とを生成するが、例えばこの残基が脱離基303となり得る。
【0065】
かかる観点から、脱離基303には、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含み、これらの各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜3の接着性をより高度なものとすることができる。
【0066】
なお、上記のような各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0067】
これらの各基の中でも、脱離基303は、特にアルキル基、アルケニル基のような有機基であるのが好ましい。有機基は化学的な安定性が高いため、有機基を含む接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
また、このような有機基は、接合膜3から脱離することにより、接合膜3の屈折率を十分に低下させることができる。
【0068】
ここで、脱離基303がメチル基(−CH)である場合、その好ましい含有率は、赤外光吸収スペクトルにおけるピーク強度から以下のように規定される。
すなわち、接合膜3の赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピークの強度を1としたとき、メチル基に帰属するピークの強度は、0.05〜0.45程度であるのが好ましく、0.1〜0.4程度であるのがより好ましく、0.2〜0.3程度であるのがさらに好ましい。メチル基のピーク強度がシロキサン結合のピーク強度に対する割合が前記範囲内であることにより、メチル基がシロキサン結合の生成を必要以上に阻害するのを防止しつつ、接合膜3中に必要かつ十分な数の活性手が生じるため、接合膜3に十分な接着性が生じる。また、接合膜3には、メチル基に起因する十分な耐候性および耐薬品性が発現する。
【0069】
このような特徴を有する接合膜3の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合とそれに結合した脱離基303となり得る有機基とを含む重合物等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、第1の基板2に対して特に強固に被着するとともに、第2の基板4に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、第1の基板2と第2の基板4とを強固に接合することができる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
【0070】
なお、この撥水性(非接着性)は、主に、ポリオルガノシロキサン中に含まれた有機基による作用である。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、エネルギーを付与されることにより、表面35に接着性が発現するとともに、表面35以外の部分においては、前述した有機基による作用・効果が得られるという利点も有する。したがって、このような接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなり、例えば、薬品類等に長期にわたって曝されるような光導波路の組み立てに際して、有効に用いられるものとなる。
【0071】
さらに、プラズマ重合にて成膜したポリオルガノシロキサンは、広い波長領域で吸収を持たないため耐光性が高く、コア部31に長期にわたって光を入射したとき、コア部31の変色や光による劣化を抑制することができ、各基板2、4間の接合も長期にわたって維持することができる。このため、光導波路1を長期にわたって使用した場合でも、その損失特性の著しい低下を防止することができる。
【0072】
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜3は、接着性に特に優れるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
【0073】
このような接合膜3の平均厚さは、1〜300μm程度であるのが好ましく、2〜200μm程度であるのがより好ましい。接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、光導波路1の厚さが厚くなり過ぎるのを防止しつつ、十分な伝搬特性を有するコア部31が得られる。
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られなかったり、コア部31の径が小さくなり過ぎて、光導波路1の接続性が低下するおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、光導波路1が厚くなり過ぎるおそれがある。
【0074】
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、第1の基板2の接合面(接合膜3に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせた際に、両者の密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
【0075】
以上、接合膜3について詳述したが、このような接合膜3は、プラズマ重合法により作製されたものである。プラズマ重合法によれば、緻密で均質な接合膜3を効率よく作製することができる。これにより、接合膜3は、第2の基板4に対して特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で作製された接合膜3は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、光導波路1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
【0076】
次に、接合膜3を作製する方法について説明する。
まず、接合膜3の作製方法を説明するのに先立って、第1の基板2上にプラズマ重合法により接合膜3を作製する際に用いるプラズマ重合装置について説明する。
図6は、本発明の光導波路の製造方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0077】
図6に示すプラズマ重合装置100は、チャンバー101と、第1の基板2を支持する第1の電極130と、第2の電極140と、各電極130、140間に高周波電圧を印加する電源回路180と、チャンバー101内にガスを供給するガス供給部190と、チャンバー101内のガスを排気する排気ポンプ170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極130および第2の電極140がチャンバー101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
【0078】
チャンバー101は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。
図6に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
【0079】
チャンバー101の上方には供給口103が、下方には排気口104が、それぞれ設けられている。そして、供給口103にはガス供給部190が接続され、排気口104には排気ポンプ170が接続されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
【0080】
第1の電極130は板状をなしており、第1の基板2を支持している。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図6に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
【0081】
第1の電極130の第1の基板2を支持する面には、静電チャック(吸着機構)139が設けられている。
この静電チャック139により、図6に示すように、第1の基板2を鉛直方向に沿って支持することができる。また、第1の基板2に多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で第1の基板2をプラズマ処理に供することができる。
【0082】
第2の電極140は、第1の基板2を介して、第1の電極130と対向して設けられている。なお、第2の電極140は、チャンバー101の側壁の内壁面から離間した(絶縁された)状態で設けられている。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
このような電源回路180によれば、第1の電極130は接地されているので、第1の電極130と第2の電極140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極130と第2の電極140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
【0083】
ガス供給部190は、チャンバー101内に所定のガスを供給するものである。
図6に示すガス供給部190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ193とを有している。また、これらの各部とチャンバー101の供給口103とが、それぞれ配管194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口103からチャンバー101内に供給するように構成されている。
【0084】
貯液部191に貯留される液状の膜材料は、プラズマ重合装置100により、重合して第1の基板2の表面に重合膜を形成する原材料となるものである。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
【0085】
ガスボンベ193に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
拡散板195は、チャンバー101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
【0086】
排気ポンプ170は、チャンバー101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による第1の基板2の汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー101内から効果的に除去することができる。
また、排気口104には、チャンバー101内の圧力を調整する圧力制御機構171が設けられている。これにより、チャンバー101内の圧力が、ガス供給部190の動作状況に応じて、適宜設定される。
【0087】
次に、上記のプラズマ重合装置100を用いて、第1の基板2上に接合膜3を作製する方法について説明する。
図7は、第1の基板2上に接合膜3を作製する方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
接合膜3は、強電界中に、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を重合させ、重合物を第1の基板2上に堆積させることにより得ることができる。以下、詳細に説明する。
【0088】
まず、第1の基板2を用意し、必要に応じて、第1の基板2の上面25に前述したような表面処理を施す。
次に、第1の基板2をプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
次に、ガス供給部190を作動させ、チャンバー101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー101内に充填される(図7(a)参照)。
【0089】
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
【0090】
次いで、電源回路180を作動させ、一対の電極130、140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極130、140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、図7(b)に示すように、重合物が第1の基板2に付着・堆積する。これにより、第1の基板2上にプラズマ重合膜で構成された接合膜3が形成される(図7(c)参照)。
また、プラズマの作用により、第1の基板2の表面が活性化・清浄化される。このため、原料ガスの重合物が第1の基板2の表面に堆積し易くなり、接合膜3の安定した成膜が可能になる。このようにプラズマ重合法によれば、第1の基板2の構成材料によらず、第1の基板2と接合膜3との密着強度をより高めることができる。
【0091】
原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン等が挙げられる。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜3は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
【0092】
プラズマ重合の際、一対の電極130、140間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz〜100MHz程度であるのが好ましく、10〜60MHz程度であるのがより好ましい。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜100W/cm程度であるのが好ましく、0.1〜50W/cm程度であるのがより好ましく、1〜40W/cm程度であるのがさらに好ましい。高周波の出力密度を前記範囲内とすることにより、高周波の出力密度が高過ぎて原料ガスに必要以上のプラズマエネルギーが付加されるのを防止しつつ、ランダムな原子構造を有するSi骨格301を確実に形成することができる。すなわち、高周波の出力密度が前記下限値を下回った場合、原料ガス中の分子に重合反応を生じさせることができず、接合膜3を形成することができないおそれがある。一方、高周波の出力密度が前記上限値を上回った場合、原料ガスが分解する等して、脱離基303となり得る構造がSi骨格301から分離してしまい、得られる接合膜3において脱離基303の含有率が低くなったり、Si骨格301のランダム性が低下する(規則性が高くなる)おそれがある。
【0093】
また、成膜時のチャンバー101内の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
処理時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、4〜7分程度であるのがより好ましい。
また、第1の基板2の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、接合膜3を得る。
【0094】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の光導波路の製造方法の第2実施形態について説明する。
図8、9は、本発明の光導波路の製造方法の第2実施形態を説明するための図(断面図)である。なお、以下の説明では、図8、9中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第2実施形態にかかる光導波路の製造方法について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0095】
本実施形態にかかる光導波路の製造方法は、第1の基板2上に、接合膜3と同様の第1の接合膜3aを成膜するとともに、第2の基板4上に、接合膜3と同様の第2の接合膜3bを成膜し、第1の接合膜3aと第2の接合膜3bとが密着するように第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせるようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる光導波路の製造方法は、第1の基板2上に第1の接合膜3aを成膜するとともに、第2の基板4上に第2の接合膜3bを成膜する工程(第1の工程)と、第1の接合膜3aのうち、一部に線状に設定したコア部領域(第2の領域)310を囲むように設定されたクラッド部領域(第1の領域)320に紫外線を照射するとともに、第2の接合膜3bの全面に紫外線を照射する工程(第2の工程)と、第1の接合膜3aと第2の接合膜3bとが接触するように、第1の基板2と第2の基板4とを接合し、光導波路1aを得る工程(第3の工程)とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0096】
[1]まず、前記第1実施形態と同様にして、第1の基板2および第2の基板4を用意し、各基板2、4上にそれぞれプラズマ重合法により第1の接合膜3aおよび第2の接合膜3bを成膜する(図8(a)参照)。これらの第1の接合膜3aおよび第2の接合膜3bは、それぞれ前記第1実施形態における接合膜3と同様にして形成される。すなわち、前記第1実施形態では、第2の基板4が被着体に相当するものであったのに対し、本実施形態では、第2の接合膜3bが成膜された第2の基板4が「被着体」に相当する。
【0097】
[2]次に、図8(b)に示すように、第1の接合膜3aの一部(クラッド部32を形成すべき領域)に設定されたクラッド部領域320に紫外線を照射する。
紫外線を照射すると、クラッド部領域320に接着性が発現するとともに、その屈折率が低下する。
一方、第2の接合膜3bには、全面に紫外線を照射する。紫外線を照射すると、第2の接合膜3bの全面に接着性が発現するとともに、第2の接合膜3bの屈折率が低下する。
また、第2の接合膜3bの膜厚は、紫外線の照射に伴って減少する。
【0098】
[3]次に、図8(c)に示すように、第1の接合膜3aと第2の接合膜3bとが密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを重ね合わせる。これにより、図9(d)に示す仮接合体5を得る。
次いで、仮接合体5を加圧してコア部領域310を圧縮する。これにより、接合膜3のクラッド部領域320が第2の基板4と接合される。その結果、接合膜3中にコア部31と側方クラッド部32とが形成され、得られた側方クラッド部32と、第1の基板2および第2の接合膜3bとが、コア部31の周囲を覆うクラッド部33となり、図9(e)に示す光導波路(本発明の光導波路)1aが得られる。
この光導波路1aでは、得られた側方クラッド部32と、第1の基板2および第2の接合膜3bとが、コア部31の周囲を覆うクラッド部33となる。前述したように、第2の接合膜3bは紫外線の照射によって屈折率が低下しているため、本実施形態によれば、コア部31とクラッド部33との屈折率差のさらなる拡大を図ることができる。
【0099】
また、上記屈折率差の拡大は、第2の基板4の屈折率に依存しないものであるため、本実施形態では、第2の基板4の構成材料の選択幅が広がることとなる。
ここで、本工程では、第1の接合膜3aと第2の接合膜3bとを接合するが、この接合は、以下のような2つのメカニズム(i)、(ii)の双方または一方に基づくものであると推察される。
【0100】
(i)例えば、各接合膜3a、3bの表面に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、各接合膜3a、3b同士が密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせたとき、各接合膜3a、3bの表面に存在する水酸基同士が、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、第1の基板2と第2の基板4とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合する。その結果、各接合膜3a、3bの間では、水酸基が結合していた結合手同士が酸素原子を介して結合する。これにより、第1の基板2と第2の基板4とがより強固に接合されると推察される。
【0101】
(ii)各接合膜3a、3b同士が密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせると、各接合膜3a、3bの表面や内部に生じた終端化されていない結合手(未結合手)同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成される。これにより、各接合膜3a、3bを構成するそれぞれの母材(Si骨格301)同士が直接接合して、各接合膜3a、3b同士が一体化する。
以上のような(i)または(ii)のメカニズムにより、図9(e)に示すような光導波路(本発明の光導波路)1aが得られる。
【0102】
≪第3実施形態≫
次に、本発明の光導波路の製造方法の第3実施形態について説明する。
図10、11は、本発明の光導波路の製造方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面)である。なお、以下の説明では、図10、11中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第3実施形態にかかる光導波路の製造方法について説明するが、前記第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0103】
本実施形態にかかる光導波路の製造方法は、第1の基板2と第1の接合膜3aとの間に、下地層30を設けた以外は、前記第2実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる光導波路の製造方法は、第1の基板2上に下地層30を成膜し、下地層30上に第1の接合膜3aを成膜するとともに、第2の基板4上に第2の接合膜3bを成膜する工程(第1の工程)と、第1の接合膜3aのうち、一部に線状に設定したコア部領域(第2の領域)310を囲むように設定されたクラッド部領域(第1の領域)320に紫外線を照射するとともに、第2の接合膜3bの全面に紫外線を照射する工程(第2の工程)と、第1の接合膜3aと第2の接合膜3bとが接触するように、第1の基板2と第2の基板4とを接合し、光導波路1bを得る工程(第3の工程)とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0104】
[1]まず、前記第1実施形態と同様にして、第1の基板2および第2の基板4を用意し、第1の基板2上にプラズマ重合法により下地層30を成膜する。この下地層30は、前記第1実施形態における接合膜3と同様にして成膜される。
次いで、図10(a)に示すように、下地層30に対して紫外線を照射する。これにより、下地層30に接着性が発現するとともに、照射前に比べて下地層30の屈折率が低下する。その結果、下地層30は、第1の基板2と後の工程で成膜される第1の接合膜3aとの密着性を高める機能と、第1の接合膜3a中に形成されるコア部31に対して大きな屈折率差を有するクラッド部33としての機能を併せ持つものとなる。
また、下地層30は、紫外線を照射することにより、その膜厚が低下する(図10(b)参照)。
次いで、前記第2実施形態と同様にして、下地層30上に第1の接合膜3aを成膜するとともに、第2の基板4上に第2の接合膜3bを成膜する(図10(c)参照)。すなわち、本実施形態では、第1の基板2とその上に成膜された下地層30とが「基材」に相当する。
【0105】
[2]次に、図10(d)に示すように、第1の接合膜3aの一部(クラッド部32を形成すべき領域)に設定されたクラッド部領域320に紫外線を照射する。
紫外線を照射すると、クラッド部領域320に接着性が発現するとともに、その屈折率が低下する。
一方、第2の接合膜3bには、全面に紫外線を照射する。紫外線を照射すると、第2の接合膜3bの全面に接着性が発現するとともに、第2の接合膜3bの屈折率が低下する。
また、第2の接合膜3bの膜厚は、紫外線の照射に伴って減少する。
【0106】
[3]次に、図11(e)に示すように、第1の接合膜3aと第2の接合膜3bとが密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを重ね合わせる。これにより、図11(f)に示す仮接合体5を得る。
次いで、仮接合体5を加圧してコア部領域310を圧縮する。これにより、接合膜3のクラッド部領域320が第2の接合膜3bと接合される。その結果、接合膜3中にコア部31と側方クラッド部32とが形成され、得られた側方クラッド部32と、下地層30および第2の接合膜3bとが、コア部31の周囲を覆うクラッド部33となり、図11(g)に示す光導波路(本発明の光導波路)1bが得られる。なお、下地層30と第2の接合膜3bとは、紫外線の照射に伴って屈折率が低下しているため、コア部31との間に大きな屈折率差を有するものとなる。このため、コア部31とクラッド部33との界面における光損失がさらに低減されることとなり、光導波路1bは、特に優れた伝搬特性を有するものとなる。
【0107】
<多層プリント配線基板>
以上のような前記各実施形態にかかる光導波路の製造方法は、例えば多層プリント配線基板の製造に適用することができる。
図12は、本発明の光導波路の製造方法を適用して得られた多層プリント配線基板を示す断面図である。なお、以下の説明では、図12中の上側を「上」、下側を「下」という。
【0108】
図12に示す多層プリント配線基板200は、表面に電気配線(図示せず)が形成された2枚のプリント基板210、220を有しており、これらのプリント基板210、220間が、本発明の光導波路の製造方法により接合されている。すなわち、2枚のプリント基板210、220間は、光信号を伝搬可能なコア部とクラッド部とが形成された接合膜230を介して接合されている。
【0109】
また、プリント基板220には、2つの貫通孔221、222が設けられている。
接合膜230中に形成されたコア部およびクラッド部は、この貫通孔221と貫通孔222とをつなぐように形成されている。そして、接合膜230の両端は、各貫通孔221、222の下方に位置しており、この両端部にはコア部を斜め45°に横切るミラー231、232が設けられている。
【0110】
一方、プリント基板220の貫通孔221の上方には、発光素子240が設けられている。
この発光素子240は、接合膜230中に形成されたコア部に向けて光を照射する素子であって、本体部241と、本体部241の下面に、貫通孔221に臨むように設けられた発光部242と、本体部241の電極部(図示せず)とプリント基板220の電気配線とを電気的に接続するバンプ243とを有している。
【0111】
また、プリント基板220の貫通孔222の上方には、受光素子250が設けられている。
この受光素子250は、接合膜230中に形成されたコア部を伝搬してきた光を受光する素子であって、本体部251と、本体部251の下面に、貫通孔222に臨むように設けられた受光部252と、本体部251の電極部(図示せず)とプリント基板220の電気配線とを電気的に接続するバンプ253とを有している。
【0112】
上記のような構成の多層プリント配線基板200においては、発光部242から下方に出射された光が、図11に矢印で示すように、貫通孔221を通過してミラー231により右方に反射され、接合膜230中のコア部に入射する。
また、接合膜230中のコア部を伝搬してきた光は、図11に矢印で示すように、ミラー232で上方に反射され、貫通孔222を通過して受光素子250の受光部252に到達する。
【0113】
以上説明したような多層プリント配線基板200では、発光素子240と受光素子250との間で、光の明滅パターンに基づいて光信号を伝送することができる。
このような光信号によるデータ伝送では、電気信号によるデータ伝送に比べて、ノイズ、クロストーク、インピーダンスの不整合等の問題が抑制されることにより、高速かつ大容量の伝送が可能になる。このため、多層プリント配線基板200の製造に本発明の光導波路の製造方法を適用することにより、高性能の多層プリント配線基板200を提供することが可能になる。また、従来、光通信が可能な多層プリント配線基板を製造する場合、光導波路とプリント基板とを接着剤等を用いて接着していたため、多層プリント配線基板の厚さを薄くすることが困難であったが、上記方法では、接合膜230が接着剤と光導波路とを兼ねているため、多層プリント配線基板200を十分に薄くすることができる。このため、本発明によれば、従来の製造方法で得られた多層プリント配線基板と同じ厚さであっても、層数を多くすることができる等、多層プリント配線基板200の設計の自由度を高めることができる。さらに、各プリント基板210、220間を強固に接合することが可能なため、剥離等の不具合が長期にわたって防止される。
【0114】
このような多層プリント配線基板200は、例えば、ルーター装置、WDM(Wavelength Division Multiplexing)装置、携帯電話、ゲーム機、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類に適用が可能である。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が多層プリント配線基板200を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、基板内の集積度が高められるとともに、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
【0115】
以上、本発明の光導波路の製造方法および光導波路を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の光導波路の製造方法は、前記各実施形態のうち、任意の2つ以上を組み合わせたものであってもよい。
また、本発明の光導波路の製造方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
また、前記各実施形態では、第1の基板2と第2の基板4の2つの基板を接合する方法について説明しているが、3つ以上の基板を接合する場合(例えば、3枚以上のプリント基板を積層した多層プリント配線基板等)に、本発明の光導波路の製造方法を適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の光導波路の第1実施形態を示す図(斜視図)である。
【図2】本発明の光導波路の製造方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図3】本発明の光導波路の製造方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図4】本発明の光導波路の製造方法において、接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。
【図5】本発明の光導波路の製造方法において、接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
【図6】本発明の光導波路の製造方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。
【図7】第1の基板上に接合膜を作製する方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図8】本発明の光導波路の製造方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図9】本発明の光導波路の製造方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図10】本発明の光導波路の製造方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図11】本発明の光導波路の製造方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図12】本発明の光導波路の製造方法を適用して得られた多層プリント配線基板を示す断面図である。
【符号の説明】
【0117】
1、1a、1b……光導波路 2……第1の基板 25……上面 3……接合膜 3a……第1の接合膜 3b……第2の接合膜 301……Si骨格 302……シロキサン結合 303……脱離基 304……活性手 30……下地層 31……コア部 310……コア部領域 32……側方クラッド部 320……クラッド部領域 33……クラッド部 35……表面 4……第2の基板 5……仮接合体 7……マスク 71……窓部 100……プラズマ重合装置 101……チャンバー 102……接地線 103……供給口 104……排気口 130……第1の電極 139……静電チャック 140……第2の電極 170……ポンプ 171……圧力制御機構 180……電源回路 182……高周波電源 183……マッチングボックス 184……配線 190……ガス供給部 191……貯液部 192……気化装置 193……ガスボンベ 194……配管 195……拡散板 200……多層プリント配線基板 210、220……プリント基板 221、222……貫通孔 230……接合膜 231、232……ミラー 240……発光素子 241……本体部 242……発光部 243……バンプ 250……受光素子 251……本体部 252……受光部 253……バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材および被着体を用意し、前記基材上に、プラズマ重合法により、シロキサン(Si−O)結合を含むSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含む接合膜を形成する第1の工程と、
前記接合膜のうち、一部に設定された第1の領域に紫外線照射処理を施すことにより、前記第1の領域に存在する前記脱離基を前記Si骨格から脱離させ、接着性を発現させるとともに、前記第1の領域の屈折率を低下させる第2の工程と、
接着性が発現した前記接合膜を介して前記基材と前記被着体とを接合することにより、前記接合膜の前記第1の領域と、前記基材および前記被着体とをクラッド部とし、前記接合膜の前記第1の領域で囲まれた第2の領域をコア部とする光導波路を得る第3の工程とを有することを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%である請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項1または2に記載の光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記Si骨格は、シロキサン結合を含むランダムな原子構造を含んでおり、
前記Si骨格の結晶化度は、45%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項5】
前記接合膜は、Si−H結合を含んでいる請求項1ないし4のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項6】
前記Si−H結合を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピーク強度が0.001〜0.2である請求項5に記載の光導波路の製造方法。
【請求項7】
前記脱離基は、アルキル基である請求項1ないし6のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項8】
前記脱離基としてメチル基を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、メチル基に帰属するピーク強度が0.05〜0.45である請求項7に記載の光導波路の製造方法。
【請求項9】
前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている請求項1ないし8のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項10】
前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものである請求項9に記載の光導波路の製造方法。
【請求項11】
前記接合膜の平均厚さは、1〜300μmである請求項1ないし10のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項12】
前記紫外線の波長は、126〜300nmである請求項1ないし11のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項13】
前記紫外線の照射は、酸化性雰囲気下で行う請求項1ないし12のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項14】
前記第2の工程において、前記接合膜の前記第1の領域に紫外線を照射することにより、前記第1の領域の厚さを減少させ、
前記第3の工程の後、前記接合膜の前記第1の領域の厚さの減少に伴って、結果的に前記厚さ方向に突出した前記第2の領域を、前記第1の領域と同じ厚さになるまで加圧して圧縮する請求項1ないし13のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項15】
前記第3の工程における前記コア部と前記クラッド部との比屈折率差は、0.5〜6%である請求項1ないし14のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項16】
前記基材および前記被着体は、それぞれガラス材料で構成されている請求項1ないし15のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項17】
前記被着体は、第2の基材と、該第2の基材上に成膜された、前記接合膜と同様の第2の接合膜とを有するものであり、
前記第2の工程において、前記第2の接合膜に紫外線を照射することにより、前記第2の接合膜に接着性を発現させ、
前記第3の工程において、前記接合膜と前記第2の接合膜とが接触するように、前記基材と前記第2の基材とを接合する請求項1ないし16のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【請求項18】
互いに対向配置された基材および被着体と、
前記基材の前記被着体側の面にプラズマ重合法により成膜され、シロキサン(Si−O)結合を含むSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、前記基材と前記被着体とを接合する機能を有し、かつ、光透過性を有するコア部と、該コア部を囲むように設けられ、前記コア部よりも屈折率の低いクラッド部とが形成された接合膜とを有し、
前記接合膜の一部に設定された第1の領域に紫外線照射処理を施し、前記接合膜の表面に存在する前記脱離基を前記Si骨格から脱離させることにより、前記接合膜に発現した接着性によって、前記基材と前記被着体とが接合されており、
かつ、前記接合膜のうち、前記紫外線照射処理を施した前記第1の領域と、前記基材および前記被着体とが前記クラッド部であり、前記接合膜の前記第1の領域に囲まれた第2の領域が前記コア部であることを特徴とする光導波路。
【請求項19】
前記被着体は、第2の基材と、該第2の基材の前記接合膜側に成膜された、前記接合膜と同様の第2の接合膜とを有するものであり、
前記接合膜の前記第1の領域および前記第2の接合膜にそれぞれ紫外線照射処理を施し、前記接合膜と前記第2の接合膜にそれぞれ発現した接着性によって、前記基材と前記被着体とが接合されており、
かつ、前記接合膜の前記第1の領域と、前記基材および前記第2の接合膜とが前記クラッド部であり、前記接合膜の前記第2の領域が前記コア部である請求項18に記載の光導波路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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