説明

光導波路及びアレイ導波路回折格子

【課題】本発明は、スラブ導波路及びアレイ導波路の接続部分の加工容易性を上げるとともに、AWGの所望の光学特性を得るために必要なアレイ導波路の本数を従来と同様にしても、回路サイズを抑えることを目的とする。
【解決手段】本発明は、スラブ導波路1と、スラブ導波路1の端部に接続される接続部21−1(21−2)と、スラブ導波路1の端部から離れた場所に位置し、スラブ導波路1の端部から離れる方向に分岐を生ずる分岐部22−1(22−2)と、を有するアレイ導波路2−1(2−2)と、を備えることを特徴とする光導波路Wである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ導波路回折格子の加工容易性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のAWG(Array Waveguide Grating)では、スラブ導波路及びアレイ導波路の接続損失を低減するため、スラブ導波路及びアレイ導波路の接続部分において、隣接するアレイ導波路の間のギャップ又はピッチを狭くしている(例えば、特許文献1−3を参照)。ギャップとは、隣接するアレイ導波路の間のクラッド部分の幅をいう。ピッチとは、隣接するアレイ導波路の中心軸の間の幅をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3782749号公報
【特許文献2】特開2006−030687号公報
【特許文献3】特開2004−012867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スラブ導波路及びアレイ導波路の接続部分の加工容易性は、隣接するアレイ導波路の間の加工難易度で決定される。隣接するアレイ導波路の間の加工難易度を上げる構造として、以下の構造が挙げられる。まず、スラブ導波路及びアレイ導波路の接続部分が、隣接するアレイ導波路のコア面及びスラブ導波路のコア面に囲まれる構造が挙げられる。次に、スラブ導波路及びアレイ導波路の間の接続損失を低減するため、テーパー導波路を設けることにより、隣接するアレイ導波路の間のギャップを狭くする構造が挙げられる。
【0005】
スラブ導波路及びアレイ導波路の接続部分の加工容易性を上げるためには、隣接するアレイ導波路の間のギャップを広げる必要がある。まず、アレイ導波路の幅を維持して、隣接するアレイ導波路の間のピッチを広げることが考えられるが、回路サイズが大きくなる問題があった。次に、隣接するアレイ導波路の間のピッチを維持して、アレイ導波路の幅を狭くすることが考えられるが、フォトエッチング工程が難しくなる問題があった。
【0006】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、スラブ導波路及びアレイ導波路の接続部分の加工容易性を上げるとともに、AWGの所望の光学特性を得るために必要なアレイ導波路の本数を従来と同様にしても、回路サイズを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、スラブ導波路から距離を隔てるに従って、各アレイ導波路を1本の導波路から複数の導波路へと分岐させることとした。
【0008】
具体的には、本発明は、スラブ導波路と、前記スラブ導波路の端部に接続される接続部と、前記スラブ導波路の端部から離れた場所に位置し、前記スラブ導波路の端部から離れる方向に分岐を生ずる分岐部と、を有するアレイ導波路と、を備えることを特徴とする光導波路である。
【0009】
この構成によれば、AWGの所望の光学特性を得るため必要なアレイ導波路の本数より、スラブ導波路及びアレイ導波路の接続部の個数を少なくすることができる。よって、隣接するアレイ導波路の間のギャップ及びピッチを広げることができ、スラブ導波路及びアレイ導波路の接続部分の加工容易性を上げるとともに、AWGの所望の光学特性を得るために必要なアレイ導波路の本数を従来と同様にしても、回路サイズを抑えることができる。
【0010】
また、本発明は、前記アレイ導波路は、前記分岐部を複数有することを特徴とする光導波路である。
【0011】
この構成によれば、AWGの所望の光学特性を得るため必要なアレイ導波路の本数より、スラブ導波路及びアレイ導波路の接続部の個数をさらに少なくすることができる。
【0012】
また、本発明は、前記アレイ導波路は、複数配置され、隣接する前記アレイ導波路について、前記スラブ導波路の端部に最も近い前記分岐部から前記接続部までの距離が同一であることを特徴とする光導波路である。
【0013】
この構成によれば、隣接するアレイ導波路について、スラブ導波路から最も近い分岐部の位置が同一であるため、スラブ導波路及びアレイ導波路の接続部分の近傍において、隣接するアレイ導波路を同様にかつ容易に作成することができる。
【0014】
また、本発明は、前記アレイ導波路は、複数配置され、隣接する前記アレイ導波路について、前記スラブ導波路の端部に最も近い前記分岐部から前記接続部までの距離が異なることを特徴とする光導波路である。
【0015】
この構成によれば、隣接するアレイ導波路について、スラブ導波路から最も近い分岐部の位置が異なるため、スラブ導波路及びアレイ導波路の接続部分の近傍において、アレイ導波路の密度が低くなり、アレイ導波路をさらに容易に作成することができる。
【0016】
また、本発明は、前記スラブ導波路は、端部から距離を置いて内部に回折格子を形成され、前記アレイ導波路は、前記回折格子の自己像の明干渉部分が形成される位置に前記接続部を有することを特徴とする光導波路である。
【0017】
この構成によれば、スラブ導波路を伝搬した光がアレイ導波路に集光されるため、スラブ導波路及びアレイ導波路の接続損失を低減することができる。
【0018】
また、本発明は、1本以上の第1の入出力導波路と、前記第1の入出力導波路の端部に前記スラブ導波路の前記アレイ導波路と反対側の端部が接続された光導波路と、前記アレイ導波路の前記スラブ導波路と反対側の端部に接続された第2のスラブ導波路と、前記第2のスラブ導波路の前記アレイ導波路と反対側の端部に接続された1本以上の第2の入出力導波路と、を備えることを特徴とするアレイ導波路回折格子である。
【0019】
この構成によれば、AWGの所望の光学特性を得るため必要なアレイ導波路の本数より、スラブ導波路及びアレイ導波路の接続部の個数を少なくすることができる。よって、隣接するアレイ導波路の間のギャップ及びピッチを広げることができ、スラブ導波路及びアレイ導波路の接続部分の加工容易性を上げるとともに、AWGの所望の光学特性を得るために必要なアレイ導波路の本数を従来と同様にしても、回路サイズを抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、スラブ導波路及びアレイ導波路の接続部分の加工容易性を上げるとともに、AWGの所望の光学特性を得るために必要なアレイ導波路の本数を従来と同様にしても、回路サイズを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の光導波路の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の光導波路の構成を示す図である。
【図3】本発明の第3の光導波路の構成を示す図である。
【図4】本発明の第4の光導波路の構成を示す図である。
【図5】本発明の第5の光導波路の構成を示す図である。
【図6】比較例の光導波路のサイズを示す図である。
【図7】本発明の光導波路のサイズを示す図である。
【図8】本発明のアレイ導波路回折格子の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0023】
本発明の第1の光導波路の構成を図1に示す。光導波路Wは、スラブ導波路1及びアレイ導波路2−1、2−2から構成される。アレイ導波路2−1(2−2)は、スラブ導波路1の端部に接続される接続部21−1(21−2)と、スラブ導波路1の端部から離れた場所に位置し、スラブ導波路1の端部から離れる方向に分岐を生ずる分岐部22−1(22−2)と、を有する。
【0024】
アレイ導波路2−1(2−2)は、接続部21−1(21−2)から分岐部22−1(22−2)まで、部分導波路23−1(23−2)を延ばし、分岐部22−1(22−2)から一端部25−1(25−3)まで、部分導波路24−1(24−3)を延ばし、分岐部22−1(22−2)から一端部25−2(25−4)まで、部分導波路24−2(24−4)を延ばす。アレイ導波路2−1(2−2)は、一端部25−1、25−2(25−3、25−4)において、図8に後述のスラブ導波路4に接続される。
【0025】
アレイ導波路2−1、2−2について、接続部21−1から分岐部22−1までの距離は、接続部21−2から分岐部22−2までの距離と同一である。接続部21−1から一端部25−1までの距離は、接続部21−1から一端部25−2までの距離より長く、これらの距離の差分が、光路長差ΔLを構成する。接続部21−1から一端部25−2までの距離は、接続部21−2から一端部25−3までの距離より長く、これらの距離の差分が、光路長差ΔLを構成する。接続部21−2から一端部25−3までの距離は、接続部21−2から一端部25−4までの距離より長く、これらの距離の差分が、光路長差ΔLを構成する。光導波路Wは、これらの光路長差ΔLを有することにより、図8に後述のアレイ導波路回折格子Aの一部として機能する。なお、図8に後述のスラブ導波路4及び入出力導波路5の接続部分では、各導波光の位相が揃っている。
【0026】
図1の光導波路Wでは、アレイ導波路2は、2本であったが、1本であってもよく、3本以上であってもよい。図1の光導波路Wでは、各アレイ導波路2の分岐数は、2であったが、3以上であってもよい。接続部21及び部分導波路23のギャップ及びピッチを広げることができる程度に、分岐前の部分導波路23の本数を分岐後の部分導波路24の本数より少なくする一方で、図8に後述のアレイ導波路回折格子Aの所望の光学特性を得ることができる程度に、分岐後の部分導波路24の本数を多くすればよい。
【0027】
図1の光導波路Wでは、図8に後述のアレイ導波路回折格子Aの所望の光学特性を得るため必要なアレイ導波路2の本数より、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の接続部21の個数を少なくする。よって、接続部21及び部分導波路23のギャップ及びピッチを広げることができ、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の接続部分の加工容易性を上げることができる。図1の光導波路Wでは、アレイ導波路2−1、2−2について、分岐部22−1、22−2の位置が同一である。よって、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の接続部分の近傍において、隣接するアレイ導波路2を同様にかつ容易に作成することができる。
【0028】
本発明の第2の光導波路の構成を図2に示す。光導波路Wは、スラブ導波路1及びアレイ導波路2−1、2−2から構成される。アレイ導波路2−1(2−2)は、スラブ導波路1の端部に接続される接続部21−1(21−2)と、スラブ導波路1の端部から離れた場所に位置し、スラブ導波路1の端部から離れる方向に分岐を生ずる分岐部22−1(22−2)と、を有する。
【0029】
アレイ導波路2−1(2−2)は、接続部21−1(21−2)から分岐部22−1(22−2)まで、部分導波路23−1(23−2)を延ばし、分岐部22−1(22−2)から一端部25−1(25−3)まで、部分導波路24−1(24−3)を延ばし、分岐部22−1(22−2)から一端部25−2(25−4)まで、部分導波路24−2(24−4)を延ばす。アレイ導波路2−1(2−2)は、一端部25−1、25−2(25−3、25−4)において、図8に後述のスラブ導波路4に接続される。
【0030】
アレイ導波路2−1、2−2について、接続部21−1から分岐部22−1までの距離は、接続部21−2から分岐部22−2までの距離と異なる。接続部21−1から一端部25−1までの距離は、接続部21−1から一端部25−2までの距離より長く、これらの距離の差分が、光路長差ΔLを構成する。接続部21−1から一端部25−2までの距離は、接続部21−2から一端部25−3までの距離より長く、これらの距離の差分が、光路長差ΔLを構成する。接続部21−2から一端部25−3までの距離は、接続部21−2から一端部25−4までの距離より長く、これらの距離の差分が、光路長差ΔLを構成する。光導波路Wは、これらの光路長差ΔLを有することにより、図8に後述のアレイ導波路回折格子Aの一部として機能する。なお、図8に後述のスラブ導波路4及び入出力導波路5の接続部分では、各導波光の位相が揃っている。
【0031】
図2の光導波路Wでは、アレイ導波路2は、2本であったが、1本であってもよく、3本以上であってもよい。図2の光導波路Wでは、各アレイ導波路2の分岐数は、2であったが、3以上であってもよい。接続部21及び部分導波路23のギャップ及びピッチを広げることができる程度に、分岐前の部分導波路23の本数を分岐後の部分導波路24の本数より少なくする一方で、図8に後述のアレイ導波路回折格子Aの所望の光学特性を得ることができる程度に、分岐後の部分導波路24の本数を多くすればよい。
【0032】
図2の光導波路Wでは、図8に後述のアレイ導波路回折格子Aの所望の光学特性を得るため必要なアレイ導波路2の本数より、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の接続部21の個数を少なくする。よって、接続部21及び部分導波路23のギャップ及びピッチを広げることができ、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の接続部分の加工容易性を上げることができる。図2の光導波路Wでは、アレイ導波路2−1、2−2について、分岐部22−1、22−2の位置が異なる。よって、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の接続部分の近傍において、アレイ導波路2の密度が低くなり、アレイ導波路2をさらに容易に作成することができる。そして、アレイ導波路2の分岐後において、部分導波路24−1、24−2のペア及び部分導波路24−3、24−4のペアを同様に作成することができる。
【0033】
本発明の第3の光導波路の構成を図3に示す。光導波路Wは、スラブ導波路1及びアレイ導波路2−1、2−2、2−3、2−4から構成される。アレイ導波路2−1は、接続部21−1、部分導波路23−1、分岐部22−1、部分導波路24−1、24−2及び一端部25−1、25−2を有する。アレイ導波路2−2は、接続部21−2、部分導波路23−2、分岐部22−2、部分導波路24−3、24−4及び一端部25−3、25−4を有する。アレイ導波路2−3は、接続部21−3、部分導波路23−3、分岐部22−3、部分導波路24−5、24−6及び一端部25−5、25−6を有する。アレイ導波路2−4は、接続部21−4、部分導波路23−4、分岐部22−4、部分導波路24−7、24−8及び一端部25−7、25−8を有する。
【0034】
図3のアレイ導波路2−1、2−2の構成は、図1のアレイ導波路2−1、2−2の構成と同様である。図3のアレイ導波路2−3、2−4の構成も、図1のアレイ導波路2−1、2−2の構成と同様である。ただし、図3の部分導波路23−1、23−2の長さは、図3の部分導波路23−3、23−4の長さと異なる。このように、隣接する一端部25の間の光路長差がΔLであり、図8に後述のスラブ導波路4及び入出力導波路5の接続部分での各導波光の位相が揃うならば、図1及び図2の構成を組み合わせて図3の構成を採用してもよく、図1及び図2の構成の組み合わせ方は図3の組み合わせ方に限られない。
【0035】
本発明の第4の光導波路の構成を図4に示す。光導波路Wは、スラブ導波路1及びアレイ導波路2−1、2−2から構成される。アレイ導波路2−1(2−2)は、スラブ導波路1の端部に接続される接続部21−1(21−2)と、スラブ導波路1の端部から離れた場所に位置し、スラブ導波路1の端部から離れる方向に分岐を生ずる分岐部22−1、26−1、26−2(22−2、26−3、26−4)と、を有する。つまり、アレイ導波路2−1、2−2は、各々分岐部を複数有する。
【0036】
図4のアレイ導波路2−1(2−2)における接続部21−1(21−2)から分岐部26−1、26−2(26−3、26−4)までの構造は、図1のアレイ導波路2−1(2−2)における接続部21−1(21−2)から一端部25−1、25−2(25−3、25−4)までの構造と、アレイ導波路2の延伸方向について同様である。
【0037】
アレイ導波路2−1は、分岐部26−1から一端部28−1(28−2)まで、部分導波路27−1(27−2)を延ばし、分岐部26−2から一端部28−3(28−4)まで、部分導波路27−3(27−4)を延ばす。アレイ導波路2−2は、分岐部26−3から一端部28−5(28−6)まで、部分導波路27−5(27−6)を延ばし、分岐部26−4から一端部28−7(28−8)まで、部分導波路27−7(27−8)を延ばす。アレイ導波路2−1(2−2)は、一端部28−1〜28−4(28−5〜28−8)において、図8に後述のスラブ導波路4に接続される。
【0038】
接続部21−1から一端部28−1までの距離、及び接続部21−1から一端部28−2までの距離の差分は、光路長差ΔLを構成する。接続部21−1から一端部28−2までの距離、及び接続部21−1から一端部28−3までの距離の差分は、光路長差ΔLを構成する。接続部21−1から一端部28−3までの距離、及び接続部21−1から一端部28−4までの距離の差分は、光路長差ΔLを構成する。接続部21−1から一端部28−4までの距離、及び接続部21−2から一端部28−5までの距離の差分は、光路長差ΔLを構成する。接続部21−2から一端部28−5までの距離、及び接続部21−2から一端部28−6までの距離の差分は、光路長差ΔLを構成する。接続部21−2から一端部28−6までの距離、及び接続部21−2から一端部28−7までの距離の差分は、光路長差ΔLを構成する。接続部21−2から一端部28−7までの距離、及び接続部21−2から一端部28−8までの距離の差分は、光路長差ΔLを構成する。なお、図8に後述のスラブ導波路4及び入出力導波路5の接続部分では、各導波光の位相が揃っている。
【0039】
図4の光導波路Wでは、アレイ導波路2−1、2−2について、スラブ導波路1の端部に最も近い分岐部22−1から接続部21−1までの距離は、スラブ導波路1の端部に最も近い分岐部22−2から接続部21−2までの距離と、図1のように同一であったが、図2のように異なっていてもよい。また、部分導波路23、24、27のうち少なくともいずれかの長さに基づいて、光路長差を設定することができる。
【0040】
例えば、全部分導波路23の長さは同一であり、各部分導波路24の長さが異なっており、各部分導波路27の長さも異なるならば、光路長差は各部分導波路24及び各部分導波路27の長さに基づいて設定される。或いは、全部分導波路23の長さは同一であり、全部分導波路24の長さも同一であり、各部分導波路27の長さが異なるならば、光路長差は各部分導波路27の長さに基づいて設定される。
【0041】
本発明の第5の光導波路の構成を図5に示す。ここで、図5の光導波路Wのトポロジーは、図4の光導波路Wのトポロジーと同様である。しかし、図4の光導波路Wでは、部分導波路23−1、23−2の長さが同一であるのに対して、図5の光導波路Wでは、部分導波路23−1、23−2の長さが異なる。そして、図4の光導波路Wでは、部分導波路24−1、24−2の長さが異なるのに対して、図5の光導波路Wでは、部分導波路24−1、24−2の長さが同一である。このように、隣接する一端部28の間の光路長差がΔLであり、図8に後述のスラブ導波路4及び入出力導波路5の接続部分での各導波光の位相が揃うならば、図1及び図2の構成を組み合わせて図4又は図5の構成を採用してもよく、図1及び図2の構成の組み合わせ方は図4又は図5の組み合わせ方に限られない。
【0042】
図4又は図5の光導波路Wでは、図1及び図2の光導波路Wと比較して、図8に後述のアレイ導波路回折格子Aの所望の光学特性を得るため必要なアレイ導波路2の本数より、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の接続部21の個数を、さらに少なくすることができる。
【0043】
次に、アレイ導波路2を分岐させる本発明では、アレイ導波路2を分岐させない比較例より、光導波路Wの回路サイズを抑えることができることを説明する。比較例の光導波路のサイズを図6に示し、本発明の光導波路のサイズを図7に示す。図6の比較例及び図7の本発明において、スラブ導波路1のスラブ長Rの比較を分かりやすくするため、図8に後述のアレイ導波路回折格子Aの所望の光学特性を得るため必要なアレイ導波路2の本数をともにm本に設定し、隣接するアレイ導波路2の間のピッチをともにDに設定する。
【0044】
図6の比較例では、接続部21の個数はm個であり、隣接するアレイ導波路2の間の開き角度はθであり、スラブ導波路1のスラブ長はR=D/θである。図7の本発明では、各アレイ導波路2は2分岐しているため、接続部21の個数はm/2個であり、隣接するアレイ導波路2の間の開き角度は2θであり、スラブ導波路1のスラブ長はR/2=D/(2θ)である。ここで、各アレイ導波路2がn(nは2以上の自然数)分岐しているとき、接続部21の個数はm/n個であり、隣接するアレイ導波路2の間の開き角度はnθであり、スラブ導波路1のスラブ長はR/n=D/(nθ)である。つまり、各アレイ導波路2の分岐数が増加するに従って、スラブ導波路1のスラブ長は減少する。ここで、各アレイ導波路2のそれぞれにおいて、接続部21及び分岐部22を十分に離すことが望ましい。つまり、隣接するアレイ導波路2の相互間において、部分導波路23、24を十分に離すことにより、伝搬光が干渉しないようにすることが望ましい。
【0045】
次に、スラブ導波路1内部の回折格子を利用して、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の接続損失を低減することができることを説明する。スラブ導波路1は、端部から距離を置いて内部に回折格子を形成される。アレイ導波路2は、回折格子の自己像の明干渉部分が形成される位置に接続部21を有する。スラブ導波路1内部の回折格子を利用する光導波路Wとして、図1から図5までに示した光導波路Wを適用することができる。
【0046】
本発明の光導波路Wは、タルボ(Talbot)効果を利用する。タルボ効果は、光が回折格子に入射されたときに回折光どうしが干渉することにより、光の波長と回折格子の周期に応じて規定される距離だけ回折格子から離れた位置に、回折格子のパターンと同様な光の強度分布が回折格子の自己像として実現されることをいう。
【0047】
つまり、光の波長とスラブ導波路1の内部に形成された回折格子の周期に応じて、回折格子の自己像が形成される。そして、回折格子の自己像の明干渉部分が形成される位置に、アレイ導波路2の接続部21が配置されることにより、光がスラブ導波路1からアレイ導波路2に向けて入射するときに、アレイ導波路2に集中し導波モードになる。よって、スラブ導波路1を伝搬した光がアレイ導波路2に集光されるため、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の接続損失を低減することができる。
【0048】
本発明のアレイ導波路回折格子の構成を図8に示す。アレイ導波路回折格子Aでは、1本以上の入出力導波路3、スラブ導波路1、アレイ導波路2、スラブ導波路4及び1本以上の入出力導波路5が、この順序で接続される。スラブ導波路1及びアレイ導波路2として、図1から図5までに示した光導波路Wを適用することができる。タルボ効果を生ずる回折格子は、スラブ導波路1及びスラブ導波路4のうち少なくとも一方に形成されていればよい。スラブ導波路1及びアレイ導波路2の接続損失並びにスラブ導波路4及びアレイ導波路2の接続損失のうち少なくとも一方を低減することができる。
【0049】
アレイ導波路回折格子Aにおいて、光導波路Wと同様に、接続部21及び部分導波路23のギャップ及びピッチを広げることができ、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の接続部分の加工容易性を上げるとともに、アレイ導波路回折格子Aの所望の光学特性を得るために必要なアレイ導波路2の本数を従来と同様にしても、回路サイズを抑えることができる。
【0050】
実施形態では、分岐部22、26をY分岐としているが、変形例として、分岐部22、26を方向性結合器やMMI(Multi−Mode Interference)カプラなどの干渉を利用した分岐としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る光導波路及びアレイ導波路回折格子は、波長分割多重方式を利用するコストが低い光ファイバ通信に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
W:光導波路
A:アレイ導波路回折格子
1、4:スラブ導波路
2:アレイ導波路
3、5:入出力導波路
21:接続部
22、26:分岐部
23、24、27:部分導波路
25、28:一端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ導波路と、
前記スラブ導波路の端部に接続される接続部と、前記スラブ導波路の端部から離れた場所に位置し、前記スラブ導波路の端部から離れる方向に分岐を生ずる分岐部と、を有するアレイ導波路と、
を備えることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記アレイ導波路は、前記分岐部を複数有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記アレイ導波路は、複数配置され、
隣接する前記アレイ導波路について、前記スラブ導波路の端部に最も近い前記分岐部から前記接続部までの距離が同一であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記アレイ導波路は、複数配置され、
隣接する前記アレイ導波路について、前記スラブ導波路の端部に最も近い前記分岐部から前記接続部までの距離が異なることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光導波路。
【請求項5】
前記スラブ導波路は、端部から距離を置いて内部に回折格子を形成され、
前記アレイ導波路は、前記回折格子の自己像の明干渉部分が形成される位置に前記接続部を有することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の光導波路。
【請求項6】
1本以上の第1の入出力導波路と、
前記第1の入出力導波路の端部に前記スラブ導波路の前記アレイ導波路と反対側の端部が接続された請求項1から請求項5のいずれかに記載の光導波路と、
前記アレイ導波路の前記スラブ導波路と反対側の端部に接続された第2のスラブ導波路と、
前記第2のスラブ導波路の前記アレイ導波路と反対側の端部に接続された1本以上の第2の入出力導波路と、
を備えることを特徴とするアレイ導波路回折格子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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