説明

光導波路及び光増幅器

【課題】 種々の波長帯の光を増幅して出力可能な光導波路及び光増幅器を提供する。
【解決手段】 光増幅器100は、光導波路10と、光導波路10に励起光L1を供給する励起光源Pとを備える。光導波路10は、コア8と、コア8中に分散された複数の積層体12とを備える。積層体12は、第1の層14と、層14上に設けられた化合物半導体層16と、化合物半導体層16上に設けられた第2の層18とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路及び光増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
光増幅器の一例として、Er(エルビウム)が添加されたコアを有する光導波路を備えた光増幅器(EDWA:Erbium-Doped Waveguide Amplifier)が知られている(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】JacobL. Philipsen et al., We2.2.1, ECOC2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、EDWAでは、増幅媒体となるErのエネルギー準位に起因して、増幅される光の波長帯は1.55μm帯に限られる。
【0004】
本発明は、種々の波長帯の光を増幅して出力可能な光導波路及び光増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するため、本発明の第1の側面に係る光導波路は、コアと、前記コア中に分散された複数の構造体と、を備え、各前記構造体は、化合物半導体部と、前記化合物半導体部の表面の少なくとも一部を覆う被覆部と、を有する。
【0006】
本発明の第1の側面に係る光導波路では、構造体に励起光が供給されると、例えば、化合物半導体部の構成材料、化合物半導体部の構造等に応じて、種々の波長帯の光が出力される。したがって、この光導波路では、種々の波長帯の光を増幅して出力可能である。
【0007】
また、前記化合物半導体部は量子井戸構造を有することが好ましい。この場合、光導波路から出力される光の波長帯を調整し易くなる。
【0008】
また、前記化合物半導体部は、III-V族化合物半導体からなることが好ましい。この場合、光導波路から出力される光の波長帯を調整することができる。
【0009】
本発明の第2の側面に係る光導波路は、コアと、前記コア中に分散された複数の積層体と、を備え、各前記積層体は、第1の層と、前記第1の層上に設けられた化合物半導体層と、前記化合物半導体層上に設けられた第2の層と、を有する。
【0010】
本発明の第2の側面に係る光導波路では、積層体に励起光が供給されると、例えば、化合物半導体層の構成材料、化合物半導体層の構造等に応じて、種々の波長帯の光が出力される。したがって、この光導波路では、種々の波長帯の光を増幅して出力可能である。
【0011】
また、前記化合物半導体層は量子井戸構造を有することが好ましい。この場合、光導波路から出力される光の波長帯を調整し易くなる。
【0012】
また、前記化合物半導体層は、III-V族化合物半導体からなることが好ましい。この場合、光導波路から出力される光の波長帯を調整することができる。
【0013】
また、前記コアは、樹脂又はガラスから構成されることが好ましい。この場合、上記構造体又は上記積層体がコア中に分散し易くなる。
【0014】
本発明の光増幅器は、上述の光導波路と、前記光導波路に励起光を供給する励起光源と、を備える。
【0015】
本発明の光増幅器は上述の光導波路を備えるので、この光増幅器では、励起光源からの励起光が光導波路に供給されることによって、例えば化合物半導体層の構成材料や構造等に応じて光導波路から種々の波長帯の光が出力される。したがって、光導波路から出力される光の波長帯を、光導波路に入力される光の波長帯に予め対応させることによって、本発明の光増幅器では光導波路に入力される種々の波長帯の光を増幅できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、種々の波長帯の光を増幅して出力可能な光導波路及び光増幅器が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0018】
[光増幅器]
図1は、本実施形態に係る光増幅器の一例を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示されるII−II線に沿った断面図である。図1に示される光増幅器100は、本実施形態に係る光導波路10と、光導波路10に励起光L1を供給する励起光源Pと、を備える。
【0019】
光導波路10は、コア部6と、コア部6を覆うクラッド部3とを備える。コア部6は、コア8と、コア8中に分散された複数の積層体12と、を有する。コア8は、樹脂又はガラスから構成されることが好ましい。この場合、積層体12がコア8中に分散し易くなる。樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の光硬化型樹脂が挙げられる。ガラスとしては、例えば、SiO等が挙げられる。コア8中には、屈折率を調整するための添加物が含まれている。具体的には、コア8は、Ge(ゲルマニウム)を含むガラスであることが好ましい。コア8の屈折率(n1.55)は、添加物の含有割合によって制御され、例えば1.45である。なお、本明細書において、屈折率(n1.55)とは波長1.55μmの光に対する屈折率を意味する。
【0020】
積層体12は、例えば粒子状である。積層体12の屈折率(n1.55)は、例えば3.4である。コア部6において、積層体12の体積分率は例えば5体積%である。例えば、積層体12の体積分率又はコア8の構成材料を調整することにより、コア部6への光閉じ込めの強さ、モードフィールド径等を制御することができる。
【0021】
クラッド部3は、例えば、コア部6を収容するための溝2aが形成されたクラッド2と、コア部6及びクラッド2上に設けられたクラッド4とを備える。クラッド部3は励起光L1を透過する。クラッド2,4は、例えば、樹脂又はガラスから構成される。樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の光硬化型樹脂が挙げられる。ガラスとしては、例えば、SiO等が挙げられる。クラッド2,4の屈折率(n1.55)は、添加物の含有割合によって制御され、例えば1.44である。
【0022】
ここで、第1実施例では、コア8が添加物を含む紫外線硬化型樹脂から構成され、クラッド2,4がいずれも石英ガラスから構成される。第2実施例では、コア8がGeを含むシリカから構成され、クラッド2,4がいずれも石英ガラスから構成される。第3実施例では、コア8及びクラッド2,4がいずれも添加物を含む紫外線硬化型樹脂から構成される。第1実施例〜第3実施例において、コア8の屈折率(n1.55)は1.45であり、クラッド2,4の屈折率(n1.55)はいずれも1.444である。また、コア8及びクラッド2,4の屈折率(n1.55)は、Ge等の添加物の含有割合を制御することにより調整される。
【0023】
コア部6は、光源Sからの光(信号光)L2が入力される入射面6aと、増幅された光L2が出力される出射面6bと、を有する。また、コア部6は、入射面6aに向けて徐々に細くなる端部6cと、出射面6bに向けて徐々に細くなる端部6dと、端部6c及び端部6dの間に設けられた主要部6eと、を有することが好ましい。コア部6が、上述の端部6c,6dを有することにより、モードフィールドを変換することができると共に、入射面6a及び出射面6bに光ファイバーを光学的に結合し易くなる。
【0024】
図2に示されるように、コア部6の主要部6eの断面形状は、例えば縦寸法6y、横寸法6xの矩形形状であることが好ましい。ここで、縦寸法6y及び横寸法6xが同一であると、縦方向yの偏波(TM)及び横方向xの偏波(TE)の両方を導波しやすくなるので、偏波依存性が低減される。光導波路10では、縦寸法6y及び横寸法6xを任意に制御できるので、偏波依存性を低減することができる。一実施例において、縦寸法6y及び横寸法6xはいずれも1.6μmである。この場合、光導波路10はシングルモード光導波路となる。
【0025】
図3は、コア中に分散された積層体の一例を示す斜視図である。図3に示される積層体12は、第1の層14と、層14上に設けられた化合物半導体層16と、化合物半導体層16上に設けられた第2の層18と、を有する。
【0026】
積層体12の厚さは例えば0.1μm程度である。積層体12の主面12aの形状は特に限定されないが、例えば、積層体12の主面12aの形状が矩形の場合、各辺の長さは0.1μm以下であることが好ましい。
【0027】
化合物半導体層16は、量子井戸構造を有することが好ましい。化合物半導体層16は、例えば、互いにエネルギーバンドギャップの異なる化合物半導体層20,22が交互に配列されたものである。この場合、光導波路10から出力される光L2の波長帯を調整し易くなる。化合物半導体層22は、隣り合う化合物半導体層20,20の間に設けられている。化合物半導体層20のエネルギーバンドギャップは、化合物半導体層22のエネルギーバンドギャップよりも大きい。
【0028】
化合物半導体層16は、III−V族化合物半導体からなることが好ましい。この場合、光導波路10から出力される光L2の波長帯を調整することができる。また、一般的に使用されるIII−V族化合物半導体基板(例えばGaAs基板又はInP基板等)を用いて化合物半導体層16を作製することができる。III−V族化合物半導体を構成するIII族元素としては、例えばAl、Ga、In等が挙げられる。III−V族化合物半導体を構成するV族元素としては、例えばP、As等が挙げられる。特に、化合物半導体層16は、AlGaInP層及びGaInP層を有することが好ましい。この場合、光導波路10から出力される光L2の波長帯を0.5〜0.7μmに調整し易くなる。例えば、化合物半導体層20,22がそれぞれAlGaInP層及びGaInP層であることが好ましい。
【0029】
層14,18は、半導体層又は絶縁層であることが好ましい。層14,18は、III−V族化合物半導体から構成されることが好ましい。層14,18は、ノンドープの化合物半導体から構成されることが好ましい。この場合、化合物半導体層16からの発光効率が高くなる。絶縁層は、例えば、酸化物、窒化物等から構成される。酸化物層は、例えば、半導体層を酸化することにより得られる。層14,18のエネルギーバンドギャップは、化合物半導体層16のエネルギーバンドギャップよりも大きいことが好ましい。
【0030】
上述のような光導波路10では、積層体12に励起光L1が供給されると、例えば、化合物半導体層16の構成材料の種類又は組成比、化合物半導体層16の構造(例えば量子井戸構造の種類)等に応じて、種々の波長帯の光L2が出力される。したがって、光導波路10では、入力される種々の波長帯の光L2を増幅して出力可能である。得られる波長帯としては、例えば、DVD等に好適に用いられる青色の波長帯、SAN(StorageArea Networks)等に好適に用いられる0.85μm帯、光通信等に好適に用いられる1.3μm帯又は1.55μm帯等が挙げられる。
【0031】
以下、得られる波長帯が、(1)0.5〜0.7μm、(2)0.7〜1.3μm、及び(3)1.3〜1.6μmの場合について、図3を参照して具体的に説明する。
【0032】
(1)0.5〜0.7μm
一実施例において、層14,18の構成材料はいずれもAlGaInPであり、化合物半導体層20,22の構成材料はそれぞれAlGaInP及びGaInPである。
【0033】
(2)0.7〜1.3μm
一実施例において、層14,18の構成材料はいずれもAlGaAsであり、化合物半導体層20,22の構成材料はそれぞれAlGaAs及びGaAsである。また、他の実施例において、層14,18の構成材料はいずれもAlGaAsであり、化合物半導体層20,22の構成材料はそれぞれGaInAs及びGaAsである。
【0034】
(3)1.3〜1.6μm
一実施例において、層14,18の構成材料はいずれもInPであり、化合物半導体層20,22の構成材料は互いに組成比の異なるGaInAsPである。
【0035】
また、化合物半導体層16の表面16sの一部(化合物半導体層16の上面及び下面)が層14,18によって覆われているので、励起光L1により発生したキャリアが化合物半導体層16の表面準位にトラップされること(表面16sで再結合すること)を抑制できる。
【0036】
また、光増幅器100は、本実施形態に係る光導波路10を備えるので、励起光源Pからの励起光L1が光導波路10に供給されることによって、化合物半導体層16の構成材料や構造等に応じて光導波路10から種々の波長帯の光L2が出力される。なお、励起光L1のエネルギーは、化合物半導体層16のエネルギーバンドギャップよりも大きい。
【0037】
したがって、光増幅器100では、光導波路10から出力される光L2の波長帯と、光導波路10に入力される光L2の波長帯とを予め対応させることによって、光導波路10に入力される種々の波長帯の光L2を増幅できる。また、化合物半導体層16の表面16sにおける再結合が抑制されているので、光増幅器100の増幅効率を向上させることができる。
【0038】
光導波路10は、積層体12に代えて以下のような構造体を備えるとしてもよい。この場合であっても、光導波路10では、入力される種々の波長帯の光L2を増幅して出力可能である。図4及び図5は、いずれもコア中に分散された構造体の一例を示す斜視図である。
【0039】
図4に示される構造体112は、化合物半導体部116と、化合物半導体部116の表面116sの少なくとも一部を覆う被覆部114と、を有する。構造体112は、例えば粒子状である。化合物半導体部116は化合物半導体層16の変形例であり、被覆部114は層14,18の変形例である。本例において、構造体112は柱状であり、任意の形状を有する端面112aを有する。化合物半導体部116は柱状であり、側面を有する。被覆部114は、化合物半導体部116の側面を覆うように設けられている。被覆部114は、層14,18と同様の材料から構成される。被覆部114のエネルギーバンドギャップは、化合物半導体部116のエネルギーバンドギャップよりも大きいことが好ましい。
【0040】
化合物半導体部116は、量子井戸構造を有することが好ましい。化合物半導体部116は、例えば、互いにエネルギーバンドギャップの異なる化合物半導体層120,122が交互に配列されたものである。この場合、光導波路10から出力される光L2の波長帯を調整し易くなる。化合物半導体層120のエネルギーバンドギャップは、化合物半導体層122のエネルギーバンドギャップよりも大きい。
【0041】
化合物半導体部116は、III−V族化合物半導体からなることが好ましい。この場合、光導波路10から出力される光L2の波長帯を調整することができる。また、一般的に使用されるIII−V族化合物半導体基板(例えばGaAs基板又はInP基板等)を用いて化合物半導体部116を作製することができる。III−V族化合物半導体を構成するIII族元素としては、例えばAl、Ga、In等が挙げられる。III−V族化合物半導体を構成するV族元素としては、例えばP、As等が挙げられる。特に、化合物半導体部116は、AlGaInP層及びGaInP層を有することが好ましい。この場合、光導波路10から出力される光L2の波長帯を0.5〜0.7μmに調整し易くなる。例えば、化合物半導体層120,122がそれぞれAlGaInP層及びGaInP層であることが好ましい。
【0042】
図5に示される構造体212は、化合物半導体部116と、化合物半導体部116の表面116sの全部を覆う被覆部214と、を有する。構造体212は、例えば粒子状である。被覆部214は、被覆部114の変形例である。本例において、構造体212は柱状であり、任意の形状を有する端面212aを有する。被覆部214は、端面212a上にも設けられており、被覆部114と同様の材料から構成される。被覆部214のエネルギーバンドギャップは、化合物半導体部116のエネルギーバンドギャップよりも大きいことが好ましい。
【0043】
図6は、実施形態に係る光増幅器の変形例を模式的に示す平面図である。図6に示される光増幅器100aは、光導波路10と、光導波路10に励起光L1を供給する励起光源Pと、を備える。本変形例において、光導波路10は例えば石英基板等の基板31に形成されている。基板31の一方の端部には、入力ポート24a,26aが設けられている。基板31の他方の端部には、出力ポート28aが設けられている。入力ポート24aには、励起光L1が入力され、入力ポート26aには、光源Sからの光L2が入力される。
【0044】
入力ポート24aには、基板31に形成された光導波路24が光学的に結合されている。入力ポート26aには、基板31に形成された光導波路26が光学的に結合されている。光導波路24,26は、光導波路10の入射面6aに光学的に結合されている。光導波路10の出射面6bには、光導波路28が光学的に結合されている。光導波路28は、基板31に形成されたフィルタ30を介して出力ポート28aに光学的に結合されている。フィルタ30は、例えば励起光L1を遮断するカットフィルタである。この場合、出力ポート28aから出力された光L2は、受光部Rによって受光される。
【0045】
したがって、光増幅器100aによれば、入力ポート26aに入力された種々の波長帯の光L2を増幅することができる。
【0046】
続いて、図7〜図9を参照しながら、光導波路10の製造方法の一例について説明する。図7(a)は、本実施形態に係る光増幅器の製造方法の一例における一工程を模式的に示す断面図であり、図7(b)は図7(a)に示される領域Aの拡大図である。図8(a)は、本実施形態に係る光増幅器の製造方法の一例における一工程を模式的に示す斜視断面図であり、図8(b)は、本実施形態に係る光増幅器の製造方法の一例における一工程を模式的に示す断面図である。図9(a)〜図9(c)は、それぞれ、本実施形態に係る光増幅器の製造方法の一例における一工程を模式的に示す断面図である。
【0047】
[光増幅器の製造方法]
(積層工程)
まず、図7(a)に示されるように、半導体基板32上に、複数の化合物半導体膜34及び複数の中間膜36を交互にエピタキシャル成長させる。各中間膜36は、隣り合う化合物半導体膜34,34の間に設けられている。半導体基板32は例えばInPから構成され、中間膜36は例えばAlから構成される。
【0048】
化合物半導体膜34は、図7(b)に示されるように、化合物半導体膜14a,16a,18aを有する。化合物半導体膜16aは、化合物半導体膜14a,18aの間に設けられている。化合物半導体膜16aは、交互に配列された複数の化合物半導体膜20a及び複数の化合物半導体膜22aを有する。各化合物半導体膜22aは、隣り合う化合物半導体膜20a,20aの間に設けられている。
【0049】
(エッチング工程)
次に、図8(a)に示されるように、例えばフォトリソグラフィー法を用いて化合物半導体膜34上にエッチング用マスクを形成し、化合物半導体膜34及び中間膜36をエッチングする。化合物半導体膜34をエッチングすることにより主面12aを有する積層体12が形成される。中間膜36をエッチングすることにより中間層36aが形成される。その結果、半導体基板32上に、複数の積層体12及び複数の中間層36aが交互に配列される。
【0050】
(溶解工程)
次に、図8(b)に示されるように、例えばフッ酸等の溶解液を用いて中間層36aを溶解させることにより、隣り合う積層体12,12同士を分離する。
【0051】
(分散工程)
次に、図9(a)に示されるように、積層体12を溶液8a中に分散させる。具体的には、例えば、積層体12を溶液8a中に投入した後、溶液8aを攪拌する。
【0052】
(コア部形成工程)
次に、図9(b)に示されるように、クラッド2の溝2a内に、積層体12が分散された溶液8aを流し込み、充填する。その後、溶液8aを固化させることによりコア8を形成する。このようにして、クラッド2の溝2a内にコア部6を形成する。なお、クラッド2の溝2aは、例えば、フォトリソグラフィー法及びドライエッチング法を用いて形成される。
【0053】
(クラッド形成工程)
次に、図9(c)に示されるように、コア部6及びクラッド2上にクラッド4を形成する。これにより、光導波路10を製造することができる。
【0054】
(配置工程)
続いて、得られた光導波路10に励起光L1が供給されるように励起光源Pを配置することにより、光増幅器100,100aを製造することができる。
【0055】
ここで、光導波路10の製造例について詳細に説明するが、光導波路10の製造方法は以下の製造例に限定されるものではない。
【0056】
(第1製造例)
第1製造例では、以下のように光導波路10が製造される。コア8は添加物を含む紫外線硬化型樹脂から構成され、クラッド2,4はいずれも石英ガラスから構成される。
【0057】
分散工程では、積層体12をエポキシ樹脂の液状モノマー(溶液8a)中に分散させる。
【0058】
コア部形成工程では、積層体12が分散されたエポキシ樹脂の液状モノマーを、クラッド2の溝2a内に流し込む。その後、フォトマスクを介して溝2aに紫外線を照射してエポキシ樹脂の液状モノマーを架橋させることにより、硬化させる。続いて、溝2a外に残存する未硬化のエポキシ樹脂の液状モノマーを洗い流す。その結果、溝2a内に、添加物を含む紫外線硬化型樹脂から構成されるコア8が得られる。
【0059】
なお、クラッド2は、石英ガラス基板に、フォトリソグラフィー法及びドライエッチング法を用いて溝2aを形成することにより得られる。
【0060】
クラッド形成工程では、プラズマCVD法を用いて厚さ約10μmの石英ガラス膜(クラッド4)をコア部6及びクラッド2上に堆積させる。
【0061】
(第2製造例)
第2製造例では、以下のように光導波路10が製造される。コア8はGeを含むシリカから構成され、クラッド2,4はいずれも石英ガラスから構成される。この場合、コア8及びクラッド2,4は、以下のようなゾル−ゲル法を用いて好適に形成される。ゾル−ゲル法を用いると、低温プロセスが実現される。
【0062】
分散工程では、積層体12を有機化合物の混合液(溶液8a)中に分散させる。この混合液は、液状の有機シリコン化合物、液状の有機化合物、水、メタノール、ジエチルフォルムアミド、及びアンモニア等を含む。液状の有機シリコン化合物としては、例えばテトラメトキシシラン等が挙げられる。液状の有機化合物としては、例えばテトラメトキシゲルマニウム等が挙げられる。
【0063】
コア部形成工程では、積層体12が分散された混合液を、クラッド2の溝2a内に流し込む。その後、乾燥空気中で、30℃から300℃まで約200時間かけて徐々に温度を上げ、300℃で約100時間加熱する。これにより、有機化合物を酸化させ余分な有機物を輝散させる。その結果、溝2a内に、Geが添加されたシリカから構成されるコア8が得られる。
【0064】
なお、クラッド2は、石英ガラス基板に、フォトリソグラフィー法及びドライエッチング法を用いて溝2aを形成することにより得られる。
【0065】
クラッド形成工程では、プラズマCVD法を用いて厚さ約10μmの石英ガラス膜(クラッド4)をコア部6及びクラッド2上に堆積させる。
【0066】
(第3製造例)
第3製造例では、以下のように光導波路10が製造される。コア8及びクラッド2,4はいずれも添加物を含む紫外線硬化型樹脂から構成される。
【0067】
分散工程では、積層体12をエポキシ樹脂の液状モノマー(溶液8a)中に分散させる。
【0068】
コア部形成工程では、積層体12が分散されたエポキシ樹脂の液状モノマーを、クラッド2の溝2a内に流し込む。その後、フォトマスクを介して溝2aに紫外線を照射してエポキシ樹脂の液状モノマーを架橋させることにより、硬化させる。続いて、溝2a外に残存する未硬化のエポキシ樹脂の液状モノマーを洗い流す。その結果、溝2a内に、添加物を含む紫外線硬化型樹脂から構成されるコア8が得られる。
【0069】
なお、クラッド2は以下のようにして形成される。まず、任意の材料から構成される基板上に、紫外線硬化型樹脂のモノマーを厚さ10μm以上に塗布する。その後、全面に紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂のモノマーを架橋させることにより、硬化させる。続いて、硬化した紫外線硬化型樹脂上に、紫外線硬化型樹脂のモノマーを更に塗布する。その後、フォトマスクを介して溝2aを形成するための領域以外の領域に紫外線を照射して、紫外線硬化型樹脂のモノマーを架橋させることにより、硬化させる。続いて、未硬化のエポキシ樹脂の液状モノマーを洗い流すことにより、溝2aを形成する。
【0070】
クラッド形成工程では、コア部6及びクラッド2上に紫外線硬化型樹脂のモノマーを塗布する。その後、全面に紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂のモノマーを架橋させることにより、硬化させる。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施形態に係る光増幅器の一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示されるII−II線に沿った断面図である。
【図3】コア中に分散された積層体の一例を示す斜視図である。
【図4】コア中に分散された構造体の一例を示す斜視図である。
【図5】コア中に分散された構造体の一例を示す斜視図である。
【図6】実施形態に係る光増幅器の変形例を模式的に示す平面図である。
【図7】図7(a)は、本実施形態に係る光増幅器の製造方法の一例における一工程を模式的に示す断面図であり、図7(b)は図7(a)に示される領域Aの拡大図である。
【図8】図8(a)は、本実施形態に係る光増幅器の製造方法の一例における一工程を模式的に示す斜視断面図であり、図8(b)は、本実施形態に係る光増幅器の製造方法の一例における一工程を模式的に示す断面図である。
【図9】図9(a)〜図9(c)は、それぞれ、本実施形態に係る光増幅器の製造方法の一例における一工程を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
8…コア、10…光導波路、12…積層体、14…第1の層、16…化合物半導体層、16s…化合物半導体層の表面、18…第2の層、20…化合物半導体層、22…化合物半導体層、100,100a…光増幅器、112,212…構造体、116…化合物半導体部、116s…化合物半導体部の表面、114,214…被覆部、120…化合物半導体層、122…化合物半導体層、L1…励起光、P…励起光源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、
前記コア中に分散された複数の構造体と、
を備え、
各前記構造体は、化合物半導体部と、前記化合物半導体部の表面の少なくとも一部を覆う被覆部と、を有する、光導波路。
【請求項2】
前記化合物半導体部は量子井戸構造を有する、請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記化合物半導体部は、III-V族化合物半導体からなる、請求項1又は2に記載の光導波路。
【請求項4】
コアと、
前記コア中に分散された複数の積層体と、
を備え、
各前記積層体は、第1の層と、前記第1の層上に設けられた化合物半導体層と、前記化合物半導体層上に設けられた第2の層と、を有する、光導波路。
【請求項5】
前記化合物半導体層は量子井戸構造を有する、請求項4に記載の光導波路。
【請求項6】
前記化合物半導体層は、III-V族化合物半導体からなる、請求項4又は5に記載の光導波路。
【請求項7】
前記コアは、樹脂又はガラスから構成される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光導波路。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の光導波路と、
前記光導波路に励起光を供給する励起光源と、
を備える、光増幅器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate