説明

光導波路装置の製造方法

【課題】金属製基板の表面に光導波路を形成しても、その光導波路のコア側面の粗面化を抑制することができる光導波路装置の製造方法を提供する。
【解決手段】表面が粗面に形成されている金属製基板1の表面に、照射線吸収剤を含有させたアンダークラッド層2を形成するか、または、照射線吸収剤を含有させないアンダークラッド層の形成に先立って、照射線吸収層を形成する。そして、その後のコア3形成工程において、コア3形成用の感光性樹脂層に対して照射されその感光性樹脂層を透過した照射線を、上記照射線吸収剤を含有させたアンダークラッド層2または照射線吸収層で吸収ないし弱める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信,光情報処理,その他一般光学で広く用いられる光導波路装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光導波路装置の光導波路は、通常、アンダークラッド層の表面に、光の通路であるコアを所定パターンに形成し、そのコアを被覆した状態で、オーバークラッド層を形成して構成されている。このような光導波路は、通常、金属製基板等の基板の表面に形成され、その基板とともに光導波路装置として製造される。
【0003】
このような光導波路装置の従来の製造方法は、つぎのとおりである。まず、図5(a)に示すように、基板10の表面に、アンダークラッド層20を形成する。ついで、図5(b)に示すように、そのアンダークラッド層20の表面に、コア形成用の感光性樹脂を塗布し、感光性樹脂層3Aを形成する。つぎに、コアのパターンに対応する開口パターンが形成されているフォトマスクMを介して、上記感光性樹脂層3Aに対して照射線Lを照射し、その照射線Lを上記開口パターンの開口を通じて上記感光性樹脂層3Aに到達させ、その感光性樹脂層3Aの部分を露光する。上記照射線Lは、上記感光性樹脂層3Aに対して直角に照射され、その照射による露光部分では光反応が進み、硬化する。そして、現像液を用いて現像を行うことにより、図5(c)に示すように、未露光部分を溶解させて除去し、残存した露光部分が所定パターンのコア3となる。このコア3は、通常、断面形状が四角形に形成される。その後、図5(d)に示すように、そのコア3を被覆するよう、上記アンダークラッド層20の表面にオーバークラッド層4を形成する。このようにして、上記基板10の表面に光導波路W2 を形成する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−341454公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の方法では、場合によって、図6に示すように、コア30の側面31が粗面に形成されることがあった。そして、このようなコア30を有する光導波路では、コア30内を伝播する光の伝播損失が大きくなるという問題点があることがわかった。
【0005】
そこで、本発明者らは、コア30の側面31が粗面に形成される原因を究明すべく、研究を重ねた。その過程で、上記コア30の側面31の粗面化は、図7に示すように、上記基板10〔図5(a)〜(d)参照〕としてSUS箔等の金属箔等からなる金属製基板1を用いた場合に起こることを突き止めた。そして、さらに研究を重ねた結果、上記金属箔等からなる金属製基板1は、表面が粗面になっていることがわかった。このため、上記コア形成工程では、図7に示すように、露光に用いられる照射線Lが、コア形成用の感光性樹脂層3Aおよびアンダークラッド層20を透過した後、上記金属製基板1の粗面状の表面で、その粗面のため乱反射する。そして、その乱反射した照射線Lが、上記アンダークラッド層20を下から斜め上方向に透過して、コア形成用の感光性樹脂層3A内のコア形成領域Sにおいて、コア30のパターニングの境界面(側面31となる面)を斜め下から露光する。この斜め下からの露光は上記乱反射によるものであり、不均一である。このため、その斜め下からの露光が原因で、コア30の側面31となる面では不要な光反応が不均一に進み、コア30の幅が広がるとともに、コア30の側面31が粗面に形成されることが判明した。すなわち、コア30の側面31となる面では、上記照射線Lの乱反射により、露光度の大小,または未露光部分と露光部分との混在が生じる。そして、後の現像工程で、上記コア30の側面31となる面の、露光度の小さい部分,未露光部分が溶解除去され、露光度の大きい部分,露光部分が残存するようになる。このため、コア30の側面31が粗面に形成されるのである。
【0006】
ところで、上記金属製基板1は、上記のように光導波路を形成する際の支持体として用いられる場合もあるが、上記光導波路形成面と反対側の面に電気回路を形成する場合等も多い。したがって、金属製基板1を簡単に、合成樹脂等の他の材料からなる基板に換えることはできないという事情がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、金属製基板の表面に光導波路を形成しても、その光導波路のコア側面の粗面化を抑制することができる光導波路装置の製造方法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、粗面状になっている金属製基板の表面に、アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面に、コア形成用の感光性樹脂層を形成する工程と、この感光性樹脂層に対して照射線を照射し所定パターンに露光し、その露光部分をコアに形成する工程とを備えた光導波路装置の製造方法であって、上記コア形成工程において、上記感光性樹脂層に対して照射する照射線が、その感光性樹脂層を透過して上記金属製基板の粗面状表面に達しそこで反射する照射線であり、上記アンダークラッド層には、上記照射線を吸収する照射線吸収剤を含有させる光導波路装置の製造方法を第1の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、粗面状になっている金属製基板の表面に、アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面に、コア形成用の感光性樹脂層を形成する工程と、この感光性樹脂層に対して照射線を照射し所定パターンに露光し、その露光部分をコアに形成する工程とを備えた光導波路装置の製造方法であって、上記コア形成工程において、上記感光性樹脂層に対して照射する照射線が、その感光性樹脂層を透過して上記金属製基板の粗面状表面に達しそこで反射する照射線であり、上記アンダークラッド層の形成に先立って、金属製基板の表面に、上記照射線を吸収する照射線吸収層を形成する光導波路装置の製造方法を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の要旨の光導波路装置の製造方法では、金属製基板の表面に、照射線吸収剤が含有されたアンダークラッド層を形成するため、コア形成工程において、コア形成用の感光性樹脂層を透過した照射線は、上記アンダークラッド層内で、金属製基板の表面で乱反射する前または乱反射した後に上記照射線吸収剤により吸収ないし弱められる。このため、金属製基板の表面で乱反射してアンダークラッド層を下から斜め上方向に透過しコア形成用の感光性樹脂層に達する照射線を大幅に減少させることができる。その結果、コア形成用の感光性樹脂層内において、コアの側面となる面を斜め下から露光して粗面とする照射線が殆どなくなり、コア側面の粗面化を効果的に抑制することができる。この第1の要旨では、照射線吸収剤をアンダークラッド層に含有させており、照射線吸収用の新たな層を設けないため、全体の厚みが厚くならないという利点がある。
【0011】
また、本発明の第2の要旨の光導波路装置の製造方法では、上記第1の要旨の、照射線吸収剤含有アンダークラッド層に代えて、アンダークラッド層の下に照射線吸収層を形成する。このため、コア形成工程において、コア形成用の感光性樹脂層およびアンダークラッド層を透過した照射線は、上記照射線吸収層内で、金属製基板の表面で乱反射する前または乱反射した後に吸収ないし弱められる。このため、金属製基板の表面で乱反射して照射線吸収層を下から斜め上方向に透過しコア形成用の感光性樹脂層に達する照射線を大幅に減少させることができる。その結果、コア側面の粗面化を大幅に抑制することができる。この第2の要旨では、照射線吸収層を新たに設けるため、全体の厚みは第1の要旨に比べて厚くなるが、照射線吸収層の照射線吸収作用により、コア側面の粗面化抑制効果は大きくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0013】
図1は、本発明の光導波路装置の製造方法の第1の実施の形態によって得られた光導波路装置を示している。この光導波路装置は、表面が粗面になっている金属製基板1と、この金属製基板1の表面に形成された光導波路W1 とを備えている。この光導波路W1 は、上記金属製基板1の表面に、照射線吸収剤を含有させたアンダークラッド層2が形成されている。そして、その光導波路W1 は、上記アンダークラッド層2の表面に感光性樹脂層3A〔図2(b)参照〕を形成した後、この感光性樹脂層3Aに対して照射線Lを照射し所定パターンに露光してコア3を形成し、さらにその上に、オーバークラッド層4を積層形成して構成されている。ここで、上記アンダークラッド層2に含有された照射線吸収剤は、上記感光性樹脂層3Aに対して照射される照射線を吸収する吸収作用を奏する。
【0014】
この実施の形態の光導波路装置の製造方法について詳しく説明する。
【0015】
まず、上記金属製基板1〔図2(a)参照〕を準備する。この金属製基板1としては、ステンレス(SUS)製,銅製,アルミニウム製,ニッケル製等のものがあげられる。なかでも、ステンレス製基板が好ましい。ステンレス製基板は、熱に対する伸縮耐性に優れ、上記光導波路装置の製造過程において、様々な寸法が設計値に略維持されるからである。この種のステンレス製基板としては、通常、市販品が用いられる。市販されているステンレス製基板は、その製造過程で、上下両表面が粗面になる。その表面の算術平均粗さ(Ra)は、100〜200nmの範囲内である。なお、上記金属製基板1としては、例えば、厚みが20μm〜1mmの範囲内のものが用いられる。
【0016】
ついで、図2(a)に示すように、上記金属製基板1の表面の所定領域に、アンダークラッド層2形成用の感光性樹脂および照射線吸収剤が溶媒に溶解しているワニスを塗布し、その塗布層2aを形成する。上記感光性樹脂としては、感光性エポキシ樹脂等があげられる。また、上記照射線吸収剤は、先に述べたように、後のコア3形成工程〔図2(b)〜(c)参照〕においてコア3形成用の感光性樹脂層3Aを露光する際に用いる紫外線等の照射線Lを吸収するための吸収剤である。この照射線吸収剤の含有率は、アンダークラッド層2に0.1〜10重量%の範囲内で含有されるよう設定することが好ましい。上記含有率が0.1重量%を下回ると、上記照射線Lの吸収ないし減衰が不充分となる傾向にあり、上記含有率が10重量%を上回ると、上記アンダークラッド層2形成用の感光性樹脂が硬化し難くなるからである。また、上記照射線吸収剤としては、例えば、日本チバガイギー社製のTINUVIN 384-2 ,TINUVIN 900 ,TINUVIN 928 等の紫外線吸収剤等があげられる。そして、上記ワニスの塗布は、例えば、スピンコート法,ディッピング法,キャスティング法,インジェクション法,インクジェット法等により行われる。そして、必要に応じて、上記塗布層2aを50〜120℃×10〜30分間の加熱処理により乾燥させる。これにより、アンダークラッド層形成用の感光性樹脂層2Aを形成する。
【0017】
つぎに、この感光性樹脂層2Aを照射線により露光する。上記露光用の照射線としては、例えば、可視光,紫外線,赤外線,X線,α線,β線,γ線等が用いられる。好適には、紫外線が用いられる。紫外線を用いると、大きなエネルギーを照射して、大きな硬化速度を得ることができ、しかも、照射装置も小型かつ安価であり、生産コストの低減化を図ることができるからである。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯,高圧水銀灯,超高圧水銀灯等があげられ、紫外線の照射量は、通常、10〜10000mJ/cm2 、好ましくは、50〜3000mJ/cm2 である。
【0018】
上記露光後、光反応を完結させるために、加熱処理を行う。この加熱処理は、80〜250℃、好ましくは、100〜200℃にて、10秒〜2時間、好ましくは、5分〜1時間の範囲内で行う。これにより、図2(a)に示すように、上記感光性樹脂層2Aをアンダークラッド層2に形成する。アンダークラッド層2の厚みは、通常、1〜50μmの範囲内に設定され、好ましくは、5〜30μmの範囲内に設定される。
【0019】
ついで、図2(b)に示すように、上記アンダークラッド層2の表面に、コア3〔図2(c)参照〕形成用の感光性樹脂層3Aを形成する。この感光性樹脂層3Aの形成は、図2(a)で説明した、アンダークラッド層2形成用の感光性樹脂層2Aの形成方法と同様にして行われる。なお、このコア3の形成材料は、上記アンダークラッド層2および後記のオーバークラッド層4〔図2(d)参照〕の形成材料よりも屈折率が大きい材料が用いられる。この屈折率の調整は、例えば、上記アンダークラッド層2,コア3,オーバークラッド層4の各形成材料の種類の選択や組成比率を調整して行うことができる。
【0020】
その後、上記コア3形成用の感光性樹脂層3Aの上に、コア3に対応する開口パターンが形成されているフォトマスクMを配置し、このフォトマスクMを介して、上記感光性樹脂層3Aの上記開口パターンに対応する部分を照射線Lにより露光する。この露光は、先に述べたアンダークラッド層2形成工程と同様にして行われる。上記露光において、上記照射線Lは、上記感光性樹脂層3Aに対して直角に照射され、その照射による露光部分で光反応を進めて硬化させる。その光反応に寄与しなかった照射線Lは、上記感光性樹脂層3Aを透過し、上記アンダークラッド層2内で、金属製基板1の表面で乱反射する前または乱反射した後に照射線吸収剤により吸収ないし弱められる。このため、金属製基板1の表面で乱反射してアンダークラッド層2を下から斜め上方向に透過する照射線Lは、大幅に減少する。その結果、コア3形成用の感光性樹脂層3A内において、コア3の側面となる面を乱反射により露光する照射線が殆どなくなり、コア3の側面の粗面化を抑制することができる。
【0021】
上記露光後、先に述べたアンダークラッド層2形成工程と同様にして、加熱処理を行う。ついで、現像液を用いて現像を行うことにより、図2(c)に示すように、上記感光性樹脂層3Aにおける未露光部分を溶解させて除去し、アンダークラッド層2上に残存した感光性樹脂層3Aをコア3のパターンに形成する。上記現像は、例えば、浸漬法,スプレー法,パドル法等が用いられる。また、現像液としては、例えば、有機系の溶媒,アルカリ系水溶液を含有する有機系の溶媒等が用いられる。このような現像液および現像条件は、感光性樹脂組成物の組成によって、適宜選択される。
【0022】
上記現像後、コア3のパターンに形成された感光性樹脂層3Aの表面等に残存する現像液を加熱処理により除去する。この加熱処理は、通常、80〜120℃×10〜30分間の範囲内で行われる。これにより、上記コア3のパターンに形成された感光性樹脂層3Aをコア3に形成する。このコア3の側面は、先に述べたように、粗面化が抑制されている。また、上記コア3の厚みは、通常、10〜150μmの範囲内に設定され、好ましくは、20〜100μmの範囲内に設定される。また、コア3の幅は、通常、8〜50μmの範囲内に設定され、好ましくは、10〜25μmの範囲内に設定される。
【0023】
つぎに、図2(d)に示すように、コア3を被覆するように、上記アンダークラッド層2の表面に、オーバークラッド層4形成用の感光性樹脂層4Aを形成する。この感光性樹脂層4Aの形成は、図2(a)で説明した、アンダークラッド層2形成用の感光性樹脂層2Aの形成方法と同様にして行われる。その後も、アンダークラッド層2の形成工程と同様に露光,加熱処理等を行い、上記感光性樹脂層4Aをオーバークラッド層4に形成する。オーバークラッド層4の厚み(コアの表面からの厚み)は、通常、5〜100μmの範囲内に設定され、好ましくは、10〜80μmの範囲内に設定される。
【0024】
このようにして、金属製基板1の表面に、上記アンダークラッド層2,コア3およびオーバークラッド層4からなる光導波路W1 が形成されている光導波路装置が得られる。この光導波路装置の光導波路W1 では、コア3の側面の粗面化が抑制されているため、光の伝播損失が小さく、良好な光伝播を行うことができる。
【0025】
なお、この実施の形態では、アンダークラッド層2の形成材料である感光性樹脂に、照射線吸収剤を含有させることにより、金属製基板1とアンダークラッド層2との密着力を強化することができる。すなわち、感光性樹脂は、一般に、硬化速度が速いため、金属製基板1に対する濡れが不充分な状態で硬化し、硬化した際、金属製基板1との密着力が低くなる。しかも、感光性樹脂は、一般に、硬化収縮量が大きいため、硬化した際、内部応力が大きくなり、金属製基板1から剥がれようとする力がはたらく。そこで、この実施の形態のように、アンダークラッド層2の形成材料である感光性樹脂に照射線吸収剤を含有させた状態で、金属製基板1の表面で硬化させると、照射線吸収剤により金属製基板1との界面付近における露光量が減少し、硬化速度を遅くすることができるとともに硬化収縮量を小さくすることができる。このため、硬化したアンダークラッド層2は、金属製基板1に対してより強く密着するようになる。すなわち、アンダークラッド層2に含有させる照射線吸収剤の含有率を調整することにより、金属製基板1に対する密着力を調整することができる。
【0026】
図3は、本発明の光導波路装置の製造方法の第2の実施の形態によって得られた光導波路装置を示している。この光導波路装置は、上記第1の実施の形態と同様の、表面が粗面になっている金属製基板1と、この金属製基板1の表面に形成された照射線吸収層5と、この照射線吸収層5の表面に形成された光導波路W2 とを備えている。この光導波路W2 は、上記照射線吸収層5の表面に形成されたアンダークラッド層(照射線吸収剤は含有せず)20と、このアンダークラッド層20の表面に所定パターンに形成された、上記第1の実施の形態と同様のコア3と、このコア3を被覆した状態で上記アンダークラッド層20の表面に形成された、上記第1の実施の形態と同様のオーバークラッド層4とからなっている。図1に示す実施の形態と同様の部分には同じ符号を付している。
【0027】
この実施の形態の光導波路装置の製造方法は、まず、図4(a)に示すように、上記金属製基板1の所定領域に、紫外線等の照射線を吸収する照射線吸収層5を形成する。この照射線吸収層5の形成材料としては、ポリイミド樹脂等の、それ自体が紫外線等の照射線を吸収する性質を有する樹脂が用いられる。また、このポリイミド樹脂等の、紫外線吸収作用を有する樹脂に、さらに、上記第1の実施の形態においてアンダークラッド層2(図1参照)に含有させた紫外線吸収剤を含有させることができる。また、紫外線吸収作用を有する色素を含有させることもできる。その色素としては、例えば、有本化学工業社製のSDO-7 ,Plast Black DA-423,Plast Black 8995等があげられる。これらの紫外線吸収剤,色素を含有させる樹脂は、上記ポリイミド樹脂に限らず、それ以外の熱硬化性樹脂,熱可塑性樹脂が広くあげられる。そして、上記照射線吸収層5の形成方法としは、例えば、上記ポリイミド樹脂等をスピンコート法等により塗布した後、加熱処理等する方法があげられる。上記照射線吸収層5の厚みは、10〜100μmの範囲内に設定される。その厚みが10μmを下回ると、その照射線吸収層内での照射線の吸収ないし減衰が不充分となる傾向にあり、上記厚みが100μmを上回ると、照射線吸収にとって過剰品質となり、光導波路装置の厚みが厚くなるだけである。
【0028】
ついで、図4(b)に示すように、上記照射線吸収層5の表面に、照射線吸収剤が含有されていないアンダークラッド層20を形成する。このアンダークラッド層20の形成は、上記第1の実施の形態において、アンダークラッド層20の形成材料として、上記照射線吸収剤を含有させないものが用いられる。それ以外は、上記第1の実施の形態と同様にしてアンダークラッド層20が形成される。
【0029】
その後は、上記アンダークラッド層20の表面に、上記第1の実施の形態と同様にして〔図2(b)〜(d)参照〕〕、図4(c)に示すように、コア3およびオーバークラッド層4をこの順で形成する。このようにして、金属製基板1の表面に、上記照射線吸収層5を介して、上記アンダークラッド層20,コア3およびオーバークラッド層4からなる光導波路W2 が形成されている光導波路装置が得られる。
【0030】
この実施の形態では、コア3形成工程おいて、コア3形成用の感光性樹脂層を透過した照射線は、アンダークラッド層20も透過し、その後、上記照射線吸収層5内で、金属製基板1の表面で乱反射する前または乱反射した後に吸収ないし弱められる。このため、上記第1の実施の形態と同様、コア3の側面の粗面化を抑制することができる。そして、得られた上記光導波路装置の光導波路W2 では、光の伝播損失が小さく、良好な光伝播を行うことができる。
【0031】
なお、上記各実施の形態では、金属製基板1の裏面(上記光導波路W1 ,W2 が形成されている面と反対側の面)には、何も形成されていないが、上記金属製基板1は、裏面に、絶縁層を介して電気回路が形成されている金属製基板であってもよいし、また、その電気回路に実装用パッドを形成し、その実装用パッドに発光素子,受光素子等の光学素子が実装されている金属製基板であってもよい。
【0032】
また、上記各実施の形態では、オーバークラッド層4を形成したが、このオーバークラッド層4は、場合によって、形成しなくてもよい。
【0033】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0034】
〔金属製基板〕
SUS304箔〔東洋製箔社製、厚み20μm、算術平均粗さ(Ra)0.8μm〕を準備した。
【0035】
〔アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料〕
下記の一般式(1)で示されるビスフェノキシエタノールフルオレングリシジルエーテル(成分A)35重量部、脂環式エポキシ樹脂である3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学社製、セロキサイド2021P)(成分B)40重量部、シクロヘキセンオキシド骨格を有する脂環式エポキシ樹脂である(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシル−カルボキシレート(ダイセル化学社製、セロキサイド2081)(成分C)25重量部、4,4’−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーボネート溶液(成分D)2重量部とを混合することにより、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料を調製した。
【0036】
【化1】

【0037】
〔コアの形成材料〕
上記成分A:70重量部、1,3,3−トリス{4−〔2−(3−オキセタニル)〕ブトキシフェニル}ブタン:30重量部、上記成分D:1重量部を乳酸エチルに溶解することにより、コアの形成材料を調製した。
【0038】
〔実施例1の光導波路装置の製造〕
上記アンダークラッド層の形成材料に紫外線吸収剤(日本チバガイギー社製、TINUVIN 384-2 )を1重量%含有させた料材を調製し、それを上記SUS304箔の表面に、スピンコーターを用いて塗布し、膜厚20μmの塗布層を形成した。その後、その塗布層の全面に、超高圧水銀灯から紫外線を照射し、積算光量1000mJ/cm2 (i線基準)の露光を行った。つづいて、120℃のホットプレート上に10分間放置し、反応を完了させた。このようにして紫外線吸収剤が含有されたアンダークラッド層を形成した。
【0039】
ついで、上記アンダークラッド層の表面に、上記コアの形成材料をスピンコーターを用いて塗布した後、70℃のホットプレート上に5分間放置することにより、溶媒を揮発させ、コア形成用の感光性樹脂層を形成した。つぎに、所定の開口パターン(開口幅50μm、隣り合う開口と開口との間の隙間200μm)が形成されたガラスマスクを介して、超高圧水銀灯から紫外線を照射し、積算光量2000mJ/cm2 (i線基準)の露光を行った。その後、120℃のホットプレート上に10分間放置し、反応を完了させた。つぎに、γ−ブチロラクトン90重量%の現像液を用いて、スプレー現像機で現像を行い、コア(高さ50μm)を形成した。
【0040】
そして、上記コアを被覆するよう、上記アンダークラッド層の表面に、上記オーバークラッド層の形成材料をスピンコーターを用いて塗布した。その後、上記アンダークラッド層の形成方法と同様にして、オーバークラッド層を形成した。このようにして、光導波路装置(総厚100μm)を製造した。
【0041】
〔実施例2の光導波路装置の製造〕
上記実施例1において、アンダークラッド層の形成材料として紫外線吸収剤の含有率が2重量%のものを用いた。それ以外は、上記実施例1と同様にして光導波路装置を製造した。
【0042】
〔実施例3の光導波路装置の製造〕
上記実施例1において、アンダークラッド層の形成材料として紫外線吸収剤の含有率が3重量%のものを用いた。それ以外は、上記実施例1と同様にして光導波路装置を製造した。
【0043】
〔実施例4の光導波路装置の製造〕
上記実施例1において、アンダークラッド層の形成材料として紫外線吸収剤の含有率が5重量%のものを用いた。それ以外は、上記実施例1と同様にして光導波路装置を製造した。
【0044】
〔実施例5の光導波路装置の作製〕
上記SUS304箔の表面に、感光性ポリイミド樹脂を、スピンコーターを用いて塗布し、膜厚10μmの紫外線吸収層を形成した。そして、その紫外線吸収層の表面に、上記アンダークラッド層の形成材料(紫外線吸収剤は含有せず)をスピンコーターを用いて塗布し、上記実施例1と同様にして、アンダークラッド層を形成した。その後は、上記実施例1と同様にして、コアおよびオーバークラッド層を形成した。
【0045】
〔比較例1の光導波路装置の作製〕
上記SUS304箔の表面に直接、上記実施例1と同様にして、アンダークラッド層(紫外線吸収剤は含有せず),コアおよびオーバークラッド層を形成した。
【0046】
〔アンダークラッド層の紫外線透過率の測定〕
アンダークラッド層に紫外線吸収剤を含有させた上記実施例1〜4およびアンダークラッド層に紫外線吸収剤を含有させなかった比較例1の光導波路装置のアンダークラッド層について、波長365nmの紫外線(i線)に対する透過率を測定した。その結果を下記の表1に併せて表記した。
【0047】
〔コア側面の評価〕
上記実施例1〜5および比較例1の光導波路装置のコアの側面を、走査型電子顕微鏡により確認した。その結果、比較例1のコアの側面は、粗面に形成されていたが、実施例1〜5のコアの側面は、比較例1よりも大幅に平坦化していた。また、実施例1〜4では、アンダークラッド層中の紫外線吸収剤の含有率が大きくなるにつれて、コアの側面が平坦化していた。
【0048】
〔コア幅の測定〕
上記実施例1〜5および比較例1の光導波路装置のコアの幅を、走査型電子顕微鏡により測定した。その結果を下記の表1に併せて表記した。
【0049】
〔光伝播損失の測定〕
上記実施例1〜5および比較例1の光導波路装置を、ダイサー(ディスコ社製、DAD522)を用いてカッティングし、コアの端面を露出させた。また、上記光導波路装置を8cmの長さに切断し、光伝播損失の測定した。その結果を下記の表1に併せて表記した。
【0050】
【表1】

【0051】
上記結果から、実施例1〜5では、比較例1と比較して、SUS304箔の表面で乱反射してコアの側面となる面に達する紫外線が弱められていることがわかる。これにより、実施例1〜5では、コア側面の粗面化が抑制され、光伝播性能に優れた光導波路装置を得ることができた。なかでも、アンダークラッド層に紫外線吸収剤を含有させた実施例1〜4では、アンダークラッド層に含有される紫外線吸収剤の含有率が高いほど、そのアンダークラッド層で紫外線が弱められることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の光導波路装置の製造方法の第1の実施の形態によって得られた光導波路装置を模式的に示す説明図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明の光導波路装置の製造方法の第1の実施の形態を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の光導波路装置の製造方法の第2の実施の形態により得られた光導波路装置を模式的に示す説明図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の光導波路装置の製造方法の第2の実施の形態を模式的に示す説明図である。
【図5】(a)〜(d)は、従来の光導波路装置の製造方法を模式的に示す説明図である。
【図6】上記従来の光導波路装置の製造方法におけるコアを模式的に示す説明図である。
【図7】上記従来のコア形成工程での状況を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1 金属製基板
2 アンダークラッド層
3 コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗面状になっている金属製基板の表面に、アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面に、コア形成用の感光性樹脂層を形成する工程と、この感光性樹脂層に対して照射線を照射し所定パターンに露光し、その露光部分をコアに形成する工程とを備えた光導波路装置の製造方法であって、上記コア形成工程において、上記感光性樹脂層に対して照射する照射線が、その感光性樹脂層を透過して上記金属製基板の粗面状表面に達しそこで反射する照射線であり、上記アンダークラッド層には、上記照射線を吸収する照射線吸収剤を含有させることを特徴とする光導波路装置の製造方法。
【請求項2】
上記照射線吸収剤が、アンダークラッド層に0.1〜10重量%の範囲内で含有されている請求項1記載の光導波路装置の製造方法。
【請求項3】
粗面状になっている金属製基板の表面に、アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面に、コア形成用の感光性樹脂層を形成する工程と、この感光性樹脂層に対して照射線を照射し所定パターンに露光し、その露光部分をコアに形成する工程とを備えた光導波路装置の製造方法であって、上記コア形成工程において、上記感光性樹脂層に対して照射する照射線が、その感光性樹脂層を透過して上記金属製基板の粗面状表面に達しそこで反射する照射線であり、上記アンダークラッド層の形成に先立って、金属製基板の表面に、上記照射線を吸収する照射線吸収層を形成することを特徴とする光導波路装置の製造方法。
【請求項4】
上記照射線吸収層が、ポリイミド樹脂からなる請求項3記載の光導波路装置の製造方法。
【請求項5】
上記照射線が紫外線である請求項1〜4のいずれか一項に記載の光導波路装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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