説明

光情報記録媒体、及び光情報記録媒体再生装置

【課題】 光情報記録媒体の記録密度向上を図るために伴うコストアップを抑制することと、記録密度の向上と、低再生耐久性とを併せて実現する。
【解決手段】 光情報記録媒体は、再生光入射面側から、透光層10と、第1情報記録層20と、主に樹脂からなる中間層30と、第2情報記録層40と、基板50とが少なくともこの順に積層されている。第1及び第2情報記録層20,40の両層に、それぞれ、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生するための第1及び第2再生膜21,41と、再生光を吸収し熱に変換する第1及び第2吸光膜22,42とを設ける。これにより、コストアップを最低限に抑え、再生耐久性の高い、より高い記録密度である2層超解像媒体を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を光学的に記録又は再生する光情報記録媒体、及び該光情報記録媒体を再生する光情報記録媒体再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光情報記録媒体においては、画像等の膨大な情報の処理のために、ますます情報記録密度を増加させることが求められている。その解決法として、再生時における情報処理向上技術の一つである超解像技術と、情報記録層を多層化し、それぞれの情報記録層に対して記録/再生可能である多層光情報記録媒体とがある。超解像技術とは、再生装置が有する光学的解像限界以下のマーク長(レーザ波長及び光学系の開口数によって決まる)の信号を再生する技術であり、これによってより小さなマーク長を使用した記録が可能となるので、実質的な記録密度が増加する。このことは、高密度化する際に問題となるのが再生技術であり、記録技術ではないことに起因する。
【0003】
これらの技術について、まず、超解像技術より説明する。従来、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生するための多くの光情報記録媒体(以降、超解像媒体と呼ぶ)が提案されてきた。
【0004】
このような技術として、例えば、基板の凹凸により書き換え不可な情報が記録されている再生専用媒体の再生には利用できないが、書き換え可能な光磁気記録媒体に対応し、光記録媒体駆動装置により光磁気記録媒体の磁性材料からなる記録膜に磁化方向によって記録された情報を再生する際に用いることが知られている(特許文献1)。また、他には、書き換え可能な光記録媒体のみならず、再生専用媒体も適応可能である温度によって光学特性(透過率)が変化するサーモクロミック色素層をマスク層として、反射膜の再生光入射面上に設ける技術も知られている(特許文献2)。なお、マスク層とは、後述するレーザスポットを擬似的に限縮したりするなどの超解像現象を引き起こす層のことである。
【0005】
これらの光情報記録媒体では、その再生面に照射された再生レーザによって生じるレーザスポットには光強度分布があり、そのために温度分布が生じている事を利用している。より具体的には、特許文献1に開示されているような光磁気記録媒体では、記録層の上に再生層を設け、再生時に、レーザスポット内の高温部分にのみ、記録層の磁界が再生層に転写されるため、結果的に光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生することができる。また、特許文献2に開示されているような光記録媒体では、反射層より再生光入射面に近い再生層上の再生レーザスポット内に、温度又は光強度分布が生じ、それにより前記レーザスポット内に光学特性の分布が生じる。例えば、温度が高くなる場合に透過率が高くなる材料を再生層に用いている場合、温度が高い部分の透過率のみが高くなるので、反射層面上に生じるレーザスポットが擬似的に縮小される。これにより、結果的に光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生することができる。
【0006】
次に、多層光情報記録媒体について説明する。多層光情報記録媒体は、例えば、特許文献3に開示されているように、再生光入射面より、第1情報記録層、第2情報記録層という順に情報記録層を設け、主に樹脂からなる中間層により各情報層を分離した構造となっている。このような構造では、再生光入射面より最も遠い情報記録層以外は、再生光が透過するような半透明層になっているので、再生光入射面から入射した再生光が、各情報記録層にフォーカスできる。したがって、この多層光情報記録媒体は、情報記録層の総数が増えるにしたがって情報記録密度を増加させることができる光情報記録媒体と言える。
【0007】
このように、光情報記録媒体の高密度化の手法は上記2手法が提案されてきた。
【特許文献1】特開平8−180486号公報(1996年7月12日公開)
【特許文献2】特開2001−35012号公報(2001年2月9日公開)
【特許文献3】特開2000−235733号公報(2000年8月29日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、まず、超解像再生技術においては、レーザースポットを擬似的に縮小するため、再生光の利用効率が下がる(反射光が当然少なくなる)。このため、レーザースポットの縮小に限界が生じることになり、記録密度の向上はあまり望めない(線密度で2倍が限界)。
【0009】
また、再生専用光情報記録媒体にも使用可能な特許文献2に記載の超解像再生技術など、多くの超解像再生技術を用いた光情報記録媒体は、使用されるマスク層自体が、直接光又は熱を吸収することにより、組成変化や、相変化するため、マスク層材料自体にかかる負担が大きくなりやすく再生耐久性に乏しいという問題もあった。
【0010】
さらに、通常、超解像再生技術を使用し、再生装置のもつ光学的解像限界より小さなマーク長の信号を再生できる光情報記録媒体(以降、超解像媒体と呼ぶ)に使用される再生膜は、色素や相変化材料などが多く、通常光情報記録媒体に使用される膜材料に比べて高価である。したがって、超解像媒体が、通常の光情報記録媒体(情報記録層は1層)より高価になるという問題もあった。
【0011】
一方、多層光情報記録媒体においては、その生産が困難であるため、非常に高価な媒体となるという問題があった。以下に、生産が困難な理由を、多層光情報記録媒体の生産法の一例を基に説明する。
【0012】
多層光情報記録媒体の生産においては、まず、真空中で通常スパッタリング等により基板上に記録膜や反射膜等の第1情報記録層を成膜し、その後大気中に戻した後、上記第1情報記録層上に紫外線硬化樹脂等をスピンコートする。次に、プラスチックスタンパを貼り合わせた後、紫外線を照射して硬化させ、プラスチックスタンパを剥離することにより、中間層の表面に、トッラキング用の溝や、その配列により情報を記録されているプリピット等の凹凸を転写(2P法と呼ばれる)する。さらに、上記中間層上に第2情報記録層を成膜し、さらに2P法により凹凸を転写した中間層を積層する。このような工程を情報記録層の数に応じた回数繰り返し、最後にカバー層(透光層)を設ける。
【0013】
このように、媒体が真空中と大気中とを何度も繰り返し行き来するといった非常に複雑な工程で生産される。また、各層は、各反射率を調整するため、異なる膜構造となっているので、通常の大量生産時には、媒体が生産ラインを一方向に進みながら各層が形成されるため、情報記録層の層数だけ真空成膜装置が必要となる。しかも、真空成膜装置は非常に高価であり、ランニングコストも光情報記録媒体生産に使用する装置の中では高価である。
【0014】
このような理由により、多層光情報記録媒体は、非常に高価な媒体となるのである。このことは、実際に現在(2005.01.31)発売されているBlu-ray Discにおける片面2層Disc(記録容量:50GB)の価格が、単層Disc(記録容量:25GB)の2倍以上であることからも明らかである。なお、一般に、これらの生産工程複雑化によるコストアップは、情報記録層に使用する材料の変更によるコストアップよりはるかに大きいものである。
【0015】
上記のように、従来の光情報記録媒体における情報記録密度向上法には、多くの問題があった。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、安価であり、かつ再生耐久性に優れた超解像再生技術を用いた多層光情報記録媒体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る光情報記録媒体は、上記課題を解決するために、再生光入射面側から、透光層と、第1情報記録層と、主に樹脂からなる中間層と、第2情報記録層と、基板とがこの順に積層されている光情報記録媒体であって、上記第1及び第2情報記録層の両層が、再生光を吸収して熱に変換する吸光膜と、該吸光膜の発熱によって加熱され、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生する再生膜とを含んでいることを特徴としている。
【0018】
上記の構成では、例えば、再生膜がサーモクロミック材料などのマスク層として作用する膜である場合では、第1情報記録層に記録された情報を再生するときには、再生光が透光層から照射されて第1情報記録層にフォーカスされる。このとき、第1情報記録層の吸光膜が、再生光を吸収し、吸収した光を熱に変換し、第1情報記録層の第1吸光膜においては、レーザの温度分布により、レーザスポットの後端部の温度が高くなる(ディスク再生時はディスクが回転するので温度が高い位置が中心からずれる)ので、第1情報記録層における再生膜の透過率が増加あるいは減少し、増加の場合は、増加した領域のみを再生光が透過し、減少した場合は、再生光が他の領域を透過するので、第1情報記録層の吸光膜からの反射光がマスクされた状態となり、第1情報記録層の解像限界以下のマーク長で記録された情報を読み出すことができる。
【0019】
また、第2情報記録層に記録された情報を再生する時には、再生光が、透光層と、第1情報記録層と、中間層とを透過して照射され、第2情報記録層にフォーカスされる。そして、第1情報記録層と同様にして、第2情報記録層の解像限界以下のマーク長で記録された情報を読み出すことができる。
【0020】
これにより、第1及び第2情報記録層ともに、実質的な記録密度(再生可能な記録密度の意)を解像限界により規制された記録密度より高められる。それゆえ、特許文献2の超解像媒体よりも、情報記録層が多いだけ、記録容量を向上させることができる。更に、同じ記録容量を有する記録媒体を作製する場合、各情報層が解像限界により規制された記録密度である特許文献3の多層光情報記録媒体よりも、記録層数を減少させることが可能になる。
【0021】
このように、第1及び第2情報記録層は、光スポットにおける光強度の高い中心部分のみを第1及び第2再生に透過させることができ、超解像効果により情報読み取りが可能になる。これにより、第1及び第2吸光膜の記録密度が解像限界以下となるため、製造コストに対して光情報記録媒体の記録容量を向上させることが可能になり、コストパフォーマンスの高い記録媒体を提供することができる。それゆえ、第1及び第2情報記録層を備えることで、同じ記録容量を有する記録媒体を作製する場合、特許文献3の多層光情報記録媒体よりも記録層数を減少させることが可能になる。したがって、製造ラインにおいて、記録層をスパッタリングで形成するための高価な真空装置の台数を削減することができ、記録層を増加させるのに伴う記録媒体の製造コストを大幅に低減させることができる。
【0022】
また、第1及び第2再生膜と第1及び第2吸光膜とをそれぞれ分離形成しているので、第1及び第2再生膜自体が光吸収して分子構造を変化させるなどにより光学特性を変化させることがない。それゆえ、第1及び第2再生膜に多くの負担をかけることなく超解像再生が可能となり、再生耐久性の向上が可能になる。
【0023】
上記光情報記録媒体は、上記透光層が透明基板であることが好ましい。この構成では、単に2層構造を貼り合わせるだけで良いので、多層構造を形成するための2P転写のような複雑な工程を用いる必要がなく、より安価に光情報記録媒体を製造することができる。また、この構造は、DVDの規格に適合しているので、安価に高密度のDVD(HD−DVD)を提供することができる。
【0024】
上記光情報記録媒体において、上記再生膜が、主に金属酸化膜からなることが好ましい。金属酸化膜は、熱によるバンドギャップ変化により光学特性が変化する特性を有するので、このような金属酸化膜を再生膜として用いることにより、通常の組成変化や相変化によって光学特性が変化する色素や相変化材料を用いた再生膜を用いた光情報記録媒体と比較して、再生耐久性をより向上させることができる。
【0025】
上記光情報記録媒体において、上記再生膜が、金属酸化膜の中で比較的安価な酸化亜鉛、又は酸化亜鉛を主成分とする混合物であることが好ましい。これにより、光情報記録媒体のコストと低減でき、さらに、酸化亜鉛、又は酸化亜鉛を主成分とする混合物を用いることにより、他の金属酸化膜を用いるよりも高い超解像特性を得ることができるため、光情報記録媒体の記録容量を向上させることが可能になる。
【0026】
上記光情報記録媒体において、上記吸光膜が無機物であることが好ましい。これにより、色素等の有機材料からなる吸光膜に比較して、光吸収時における吸光膜自体の耐久性を向上させることができる。それゆえ、光情報記録媒体の再生耐久性を向上させることが可能になる。
【0027】
上記光情報記録媒体において、上記吸光膜が、Si又はGeの単体、又はこれらを主成分とした合金からなることにより、他の金属膜に比較して、効率よく再生膜を加熱できるため、再生感度向上が可能となる。
【0028】
上記光情報記録媒体において、上記第1情報記録層が、再生光波長において、再生光波長において、25%より大きく、かつ58%より小さい透過率を有することが好ましい。これにより、第2情報記録層の超解像特性をほとんど悪化させることなく、第1情報記録再生層の超解像特性得ることができる。それゆえ、光情報記録媒体の記録容量を向上させることが可能になる。なお、上記第1情報記録層が、再生光波長において、再生光波長において、34.4%より大きく、かつ46.9%より小さい透過率を有することが更に好ましい。これにより、第1情報記録再生層の超解像特性が更に向上し、光情報記録媒体の記録容量を向上させることが可能となり、再生耐久性も向上する。
【0029】
光情報記録媒体において、上記第1情報記録層の吸光膜の膜厚が、5nmより厚く、かつ25nmより薄いことが好ましい。これにより、第1情報記録層の吸光膜が再生耐久性を保つために最低必要な膜厚を有しているため、第1情報記録層の再生耐久性を保ち、さらに第2情報記録層の超解像特性をほとんど悪化させることなく、第1情報記録再生層の超解像特性得ることができ、光情報記録媒体の記録容量を向上させることが可能になる。なお、上記第1情報記録層の吸光膜の膜厚が、7nmより厚く、かつ13nmより薄いことが更に好ましい。これにより、第1情報記録再生層の超解像特性が更に向上し、光情報記録媒体の記録容量を向上させることが可能となり、再生耐久性も向上する。
【0030】
本発明に係る光情報記録媒体再生装置は、上記の課題を解決するために、上記のいずれかの光情報記録媒体を再生可能であるレーザパワーのレーザ光を上記第1又は第2情報記録層に照射し、上記光情報記録媒体からの反射光を読み取る光学読取手段を備えていることを特徴としている。
【0031】
この光情報記録媒体再生装置は、光学読取手段によって、光情報記録媒体を再生可能なレーザパワーのレーザ光を照射することで光情報記録媒体からの反射光を読み取るので、より高密度に記録された光情報記録媒体からの安定した情報再生が可能となる。このような光情報記録媒体を再生可能とするには、レーザーパワーが従来のレーザパワーより高い値に設定される。このようにして、光情報記録媒体の再生が可能となれば、2層超解像媒体での再生が可能となる。例えば、同じ記録容量で4層通常媒体より低コストの2層超解像媒体を用いた再生が可能になる。それゆえ、超解像技術を用いずに情報記録密度を高めた多層光情報記録媒体を再生するよりも、フォーカスしなければならない情報記録層の数が減少するので、各層へのフォーカス回数が減少する。例えば、同じ記録容量である4層通常媒体を再生する場合に比較して、層数が半分となり、フォーカス回数も半分となる。この結果、光学読取装置(光ピックアップ)のフォーカス制御が簡素になるので、光学読取装置のコスト上昇が抑制されると共に、フォーカスに要する時間が短縮されるので、再生命令に対する反応が向上する。したがって、より低コストで高性能な再生装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明の光情報記録媒体は、第1及び第2情報記録層の両層が、再生光を吸収して熱に変換する吸光膜と、該吸光膜の発熱によって加熱され、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生可能にする再生膜とを含んでいる。これにより、従来の超解像媒体では達成できない記録容量が得られ、かつ同じ記録容量を有する記録媒体を作製する場合、各情報記録層の記録密度が解像限界により規制された記録密度である従来の多層光情報記録媒体よりも、記録層数を減少させることが可能になる。したがって、コストに対して光情報記録媒体の記録容量を向上させることが可能になるという効果を奏する。また、吸光膜と再生膜とが分離して形成されているので、再生膜自体に多くの負担をかけることなく超解像再生が可能となり、再生耐久性の向上が可能になるという効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図11に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0034】
図1は、実施の形態に係る2層超解像光情報記録媒体60の断面構造を示している。
【0035】
図1に示すように、光情報記録媒体60は、透光層10と、第1情報記録層20と、中間層30と、第2情報記録層40と、基板50とを備え、光入射面からこの順に積層されている。
【0036】
透光層10は、ポリカーボネートフィルム11及び透明粘着樹脂層12を含んでいる。中間層30は、透明紫外線硬化樹脂等の樹脂によって形成されている。基板50は、ポリオレフィン系樹脂等の樹脂によって形成されている。
【0037】
また、中間層30には、図2(a)の拡大斜視図に示すように、情報が記録されているプリピット31が形成されている。また、基板50には、図2(b)の拡大斜視図に示すように、プリピット51が形成されている。
【0038】
第1及び第2情報記録層20,40は、このプリピット31,51上に成膜されることにより、プリピット31,51による凹凸が反映された状態となり、情報を記録した状態となる。このような構造により、いわゆる再生専用光情報記録媒体が構成される。
【0039】
第1情報記録層20は、酸化亜鉛や酸化亜鉛を主成分とする混合物等からなる第1再生膜21(再生膜)及び第1吸光膜22(吸光膜)を含んでいる。第1吸光膜22は、再生光を吸収して、第1再生膜21を加熱しうる熱に変換する。第1再生膜21は、第1吸光膜22で生じる熱によって加熱されると、第1再生膜21の光学定数が変化することによって、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生可能にする。
【0040】
第2情報記録層40は、酸化亜鉛等からなる第2再生膜41(再生膜)及び第2吸光膜42(吸光膜)を含んでいる。第2吸光膜42は、再生光を吸収して、第2再生膜41を加熱しうる熱に変換する。第2再生膜41は、第2吸光膜42で生じる熱によって加熱されると、第2再生膜41の光学定数が変化することによって、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生可能にする。
【0041】
なお、酸化亜鉛とは、亜鉛酸化物を指し、特に酸化の割合を問うものではない。更に、酸化亜鉛を主成分とする混合物は、酸化亜鉛に微少添加物(例:Cd,Mg,N2 等)が含まれている場合も含む。
【0042】
上記第1及び第2再生膜21,41並びに第1及び第2吸光膜22,42は、真空装置においてスパッタリングによって形成される。また、第1及び第2吸光膜22,42は、例えば、SiやGeの単体、又はこれらを主成分として合金からなる。
【0043】
上記第1及び第2再生膜21,41は、熱によるバンドギャップ変化により光学特性が変化するという特性を有する金属酸化膜からなることが好ましい。これにより、通常の組成変化や相変化によって光学特性が変化する色素や相変化材料を用いた従来の記録媒体における再生膜と比較して、第1及び第2再生膜21,41の再生耐久性を向上させることができる。
【0044】
以上のように、光情報記録媒体60は、第1及び第2情報記録層20,40において、再生光を吸収して発熱する第1及び第2吸光膜22,42と、第1及び第2吸光膜22,42のそれぞれによる加熱で加熱部分の光学定数を変化させる第1及び第2再生層21,41を備えている。
【0045】
これにより、第1及び第2情報記録層20,40ともに、実質的な記録密度(再生可能な記録密度の意)を、解像限界により規制された記録密度よりも高められる。それゆえ、特許文献2の超解像媒体よりも、情報記録層が多いだけ、記録容量を向上させることができ、更に、同じ記録容量を有する記録媒体を作製する場合、各情報層が解像限界により規制された記録密度である特許文献3の多層光情報記録媒体よりも、記録層数を減少させることが可能になる。したがって、製造ラインにおいて、記録層をスパッタリングで形成するための高価な真空装置の台数を削減することができ、記録層を増加させるのに伴う記録媒体の製造コストを大幅に低減させることができる。
【0046】
また、第1及び第2再生膜21,41と第1及び第2吸光膜22,42とをそれぞれ分離形成しているので、第1及び第2再生膜21,41自体が光吸収して分子構造を変化させるなどにより光学特性を変化させることがない。それゆえ、第1及び第2再生膜21,41に多くの負担をかけることなく超解像再生が可能となり、再生耐久性の向上が可能になる。
【0047】
〔実施例1〕
図1に示す本実施例に係る光情報記録媒体60は、透光層10としてポリカーボネイトフィルム11(膜厚:80μm)及び透明粘着樹脂層12(膜厚:20μm)と、第1情報記録層20としての第1再生膜21(酸化亜鉛,膜厚:175nm)、第1吸光膜22(Si,膜厚:7nm)と、中間層30としての透明紫外線硬化樹脂(膜厚:25μm)と、第2情報記録層40としての第2再生膜41(酸化亜鉛,膜厚:155nm)、第2吸光膜42(Si,膜厚:50nm)と、基板50としてのポリオレフィン系樹脂基板とを備え、光入射面よりこの順に積層された構造となっている。
【0048】
なお、上記光情報記録媒体60の実際の作製工程は以下の通りである。
【0049】
まず、5×10-4(Pa)以下まで排気した成膜装置内で、基板50としての0.5mm厚のポリオレフィン系樹脂製ROM基板上に、3インチSiターゲットにRF電力200Wを印加して、Arガス雰囲気中で、膜厚50nmのSi薄膜からなる第2吸光膜42成膜する。そして、引き続きZnOターゲットにRF電力200Wを印加して、Ar+O2のガス雰囲気中(流量比16:1)で、膜厚155nmの酸化亜鉛薄膜からなる第2再生膜41を成膜する。このようにして、まず、基板50上に第2情報記録層40が形成される。
【0050】
その後、上記第2情報記録層40までが形成されたディスクを、大気中に取り出し、第2情報記録層40上に透明紫外線樹脂を塗布し、前述の2P法により、その表面に凹凸(配列によって情報が記録されるプリピットの意)が転写された中間層30を形成する。更に、このディスクを再び成膜装置内に投入し、5×10-4(Pa)以下まで排気した後、3インチSiターゲットにRF電力200Wを印加して、Arガス雰囲気中で、膜厚7nmのSi薄膜からなる第1吸光膜22を成膜する。そして、引き続きZnOターゲットにRF電力200Wを印加して、Ar+O2 のガス雰囲気中(流量比16:1)で、膜厚17nmの酸化亜鉛薄膜からなる第1再生膜21を成膜する。こうして、中間層30上に第1情報記録層20が形成される。最後に、第1情報記録層20上に透明粘着剤を20μm厚に塗布して透明粘着樹脂層12を形成し、80μm厚のポリカーボネートフィルム11を透明粘着樹脂層12にて貼り合せて透光層10を形成する。以上のようにして、上記光情報記録媒体60を作製した。また、他の実施例の光情報記録媒体も、同様の工程にて作製している。
【0051】
これに対し、図3に、本実施例の光情報記録媒体60に対する比較例としての従来の2層光情報記録媒体70の断面構造を示す。なお、本比較例において、本実施例の光情報記録媒体60における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記する。
【0052】
図3に示すように、比較例の2層光情報記録媒体70は、透光層10としてのポリカーボネートフィルム11(膜厚80μm)及び透明粘着樹脂層12(膜厚20μm)と、第1情報記録層80としての半透明反射膜81(Ag,膜厚5nm)と、中間層30としての透明紫外線硬化樹脂層(膜厚25μm)と、第2情報記録層90としての反射膜91(Al,膜厚30nm)と、基板50としてのポリオレフィン系樹脂基板とを備え、光入射面より、この順に積層された構造となっている。
【0053】
また、本実施例の2層光情報記録媒体60の中間層30及び基板50には、図2(a)及び(b)に示すように、情報が記録されているプリピット31,51が設けられている。これにより、この2層光情報記録媒体60は、各情報記録層20,40がこのプリピット31,51上に成膜されることにより、各情報記録層20,40に対応するプリピット31,51により凹凸が転写された状態となる。また、2層光情報記録媒体70も同様である。したがって、2層光情報記録媒体60及び2層光情報記録媒体70は、各情報記録層20,40が情報を記録された状態となる、いわゆる再生専用光情報記録媒体として形成される。
【0054】
続いて、本実施例の光情報記録媒体60(以降、本実施例において「第1実施例媒体」と称する)と比較例の2層光情報記録媒体70(以降、本実施例において「比較例媒体」と称する)との各種特性の比較について説明する。
【0055】
図4(a)及び(b)は、波長404nm半導体レーザと、N.A.(開口率)0.85の光学系を有するディスク測定器にて、上記第1実施例媒体及び比較例媒体のそれぞれにおける、第1及び第2情報記録層20,40のOTFを測定した結果である。なお、OTFは、超解像性能を表す指標であり、C/N(信号品質を表す評価基準)の記録マーク長(再生専用光情報記録媒体の場合はピット長と同意)依存性を表す。
【0056】
図4(a)及び(b)より明らかなように、第1実施例媒体では、比較例媒体で第1及び第2情報記録層20,40ともに信号が確認されない再生光学系の解像限界以下のマーク長である0.10μmにおいても、第1及び第2情報記録層20,40ともに、C/Nが35dBを超えている。これは、解像限界以下のマーク長の信号が再生可能であることを示している。
【0057】
また、図4(a)及び(b)は、再生装置の理論的な光学解像限界に比較して、ほぼ半分の長さである0.06μmが第1実施例媒体の解像限界となっていることも示している。これは、0.120μm近辺で解像限界を迎える従来例媒体の半分の長さとなっている。すなわち、第1実施例媒体では、解像限界が比較例媒体の約1/2となり、約半分の長さのマーク長の信号を利用した情報記録が可能となる。したがって、同じ長さの領域に1/2の長さのマーク長の信号を記録した場合、当然ながら、約2倍の信号を記録することができる。このように、第1実施例媒体は比較例媒体の約2倍の情報記録密度(線密度)を有する。
【0058】
また、図5は、第1実施例媒体の第1及び第2情報記録層20,40のそれぞれにおいて2万回の連続再生を行い、初期C/Nとの比較を行った結果である。
【0059】
図5より、第1実施例媒体では、第1及び第2情報記録層20,40ともに、2万回の連続再生後も、C/Nが劣化せず、優れた再生耐久性があることがわかる。
【0060】
このように、第1実施例媒体は、通常の超解像光情報媒体では、得られない再生耐久性を有し、到達しえない通常光情報記録媒体媒体(単層)の約4倍の情報記録密度を、同じ情報記録密度を有する4層光情報記録媒体の約半分の生産コストで生産可能であることが示された。
【0061】
なお、酸化亜鉛等の金属酸化物による第1再生層21及び第2再生膜41は、それぞれ第1吸光膜22及び第2吸光膜42で生じる熱によって加熱されると、第1再生膜21及び第2再生膜41の光学定数が変化することによって、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生可能にすると考えられるが、現時点では明確ではない。
【0062】
〔実施例2〕
また、本実施の形態の光情報記録媒体60は、上記第1実施例媒体の構造に限るものではない。
【0063】
例えば、本実施例の光情報記録媒体60(以降、本実施例において「第2実施例媒体」と称する)において、透光層10は、再生光を十分に透過すればよく、再生面にハードコートが設けられていても良いし、紫外線硬化樹脂などの他の材料で形成されていても良い。さらに、図6に示すように、透光層10は、透明基板13であっても良く、あるいは透明基板13を含む構造であっても良い。この構造では、第1実施例媒体では中間層30に設けていたプリピット31を透明基板13上に設けることが可能となる。この構成では、透明基板13上に設けられるプリピット(図示せず)は、プリピット31と向きが逆に形成される。また、このような構成では、単に2層構造を貼り合わせるだけで良いので、第1実施例媒体の製造に用いる、複雑な工程を要する2P転写を用いる必要がなく、より安価に光情報記録媒体を製造することができる。この構造は、DVDの規格に適合しているので、安価に高密度のDVD(HD−DVD)を提供することができる。
【0064】
基板50も、ポリカーボネート樹脂や、圧縮成型可能な他の樹脂であってよいし、ガラスや、金属等でも良い。
【0065】
第1及び2の再生膜21,41の材料としては、色素等の有機材料や、相変化材料や、他の金属酸化物(例えばTiO2 ,CeO2 )からなる材料や、主に金属酸化物からなる材料等でもよい。なお、金属酸化物からなる材料は、数種の金属酸化物の混合物や、数種の金属酸化物の積層膜や、Cd,Mg,N2 等の添加物が含まれている材料も含む。例えば、色素等の有機材料や、相変化材料の場合は、第1実施例媒体には耐久性が及ばないものの、少なくとも吸光膜が分離しているため、再生膜材料自体で再生光を吸収する従来の超解像膜構造に比較して再生耐久性が高いことが容易に予想できる。
【0066】
また、他の金属酸化物(例えばTiO2 ,CeO2 )からなる材料や、主に金属酸化物からなる材料の場合、第1実施例媒体と同等の再生耐久性を有するが、現時点では第1実施例媒体で用いた酸化亜鉛以上の超解像特性は得られていない。なお、金属酸化膜は一般に透明であるため、吸光膜への透過性がよく吸光膜がより効率的に作用するという利点もある。
【0067】
第1再生膜21の膜厚については、どのような材料であっても、第2情報記録層40に再生光をフォーカスしたときに超解像特性が生じる膜厚であればよい。また、膜厚については、図7に示すように、第1再生膜21の膜厚が175nmの第1実施例媒体と、第1再生膜21の膜厚が50nmである第2実施例媒体とを、第1再生膜21が酸化亜鉛からなる場合について再生感度で比較した実験結果を得た。
【0068】
図7よりわかるように、若干超解像特性が劣化(解像限界以下のピット長での到達C/Nが低下する)する。これは、前述した吸光膜からの熱による光学特性の変化による効果が、膜厚が薄くなることによって、減少したためであると思われる。ただし、膜厚が減少したために加熱されやすくなり、再生感度(低再生レーザパワー時より再生可能となる)は向上するため、第1再生膜21の膜厚による優位差を明言することはできない。また、膜厚が厚いほど再生耐久性は向上するため、再生耐久性を含めると、厚いほうが有利であるとも言える。これらのことを考慮すると、膜厚は、100〜500nmであることが望ましい。なお、第2再生膜41でも、同様のことが言える。
【0069】
また、第2実施例媒体における第1及び2吸光膜22,42の材料としては、色素等の有機材料や、相変化材料や、他の無機物などでもよい。吸光膜材料として、色素等の有機材料や相変化材料を採用した場合は、吸光膜材料自体が、組成変化や相変化するので、膜自体の負担が大きく、第1実施例媒体には耐久性が及ばないことは容易に予想できる。また、他の無機物を吸光膜材料として用いた場合、第1実施例媒体と同様の再生耐久性があることは、容易に予想できる。ただし、現時点では、Ge以外の材料ではSiと同様の再生感度を有する材質は確認できていない。
【0070】
また、第1吸光膜22の膜厚については、どのような材料であっても、第1情報記録層20を再生した場合に、十分な再生耐久性を有し、第2情報記録層40に再生光をフォーカスした際、十分に超解像特性が生じる膜厚であればよい。
【0071】
例えば、第2実施例媒体における第1情報記録層20が、現在得られている中で最も超解像特性のよい第1実施例媒体における第1情報記録層20と同じ材料(Si)であった場合において、図8に示すように、再生波長における第1情報記録層20の透過率と、第1情報記録層20における再生装置の光学系解像限界以下のピット長である0.1μmでのC/Nの関係を測定した結果が得られた。図8からわかるように、上記透過率が増加し、73.4%に達すると、特性が十分に確認できる30dB以下に低下する。
【0072】
また、この場合、この近傍の透過率(46.9%,51.5%,58.0%,73.4%)をそれぞれ有する2層超解像光情報記録媒体を作製し、再生耐久性を確認した結果を図9に示す。この図9より、再生耐久性は、更に透過率が低い58.0%になると、急激に低下することがわかる。したがって、第1情報記録層20の上記必要な条件を満たすためには、上記透過率は58.0%より小さい必要がある。更に、透過率が51.5%となっても、再生耐久性は、十分でなく、透過率が46.9%になった場合に、初めて十分な再生耐久性が得られる。
【0073】
また、例えば、第2情報記録層40が、現在得られている中で最も超解像特性のよい第1実施例媒体と同じ膜構造であった場合においても、第1情報記録層20の透過率と第2情報記録層40のOTFの関係を示す測定結果である図10よりわかるように、第1情報記録層の再生光波長での透過率が25%になると、再生装置の光学系解像限界以下のピット長である0.1μmでのC/Nが、特性が十分に確認できる30dB以下に低下する。したがって、第1情報記録層20の上記必要な条件を満たすためには、上記透過率は25%より大きい必要がある。また、更に良い特性である35dB以上を得るためには、上記透過率は、33.4%より大きい必要がある。
【0074】
このように、第1吸光膜22の膜厚は、上記透過率によって制限される。したがって、第1吸光膜22にSiを用いた場合、図11よりわかるように、5nmより厚く、25nmより薄い必要があり、よりよい特性を得るためには、7nmより厚く、13nmより薄い必要がある。なお、Geを用いた場合も同様なことが言える。これにより、上記透過率を満たすことができ、第1情報記録層20及び第2情報記録層40における超解像特性及び再生耐久性を得ることができる。
【0075】
なお、第2吸光膜42の膜厚についても、どのような材料であっても、十分な再生耐久性を有し、十分に超解像特性が生じる膜厚であればよい。例えば、第2実施例媒体における第2情報記録層が、現在得られている中で最も超解像特性のよい第1実施例媒体における第2情報記録層と同じ材料(Si)であった場合において、膜厚は30〜200nmであることが望ましい。
【0076】
また、第2実施例媒体の構造で、各情報記録層20,40に他の膜等を追加した場合でも、上記に示したような特性が大きく失われることはない。
【0077】
なお、第1及び第2実施例媒体では再生専用光情報記録媒体であったが、本発明の光情報記録媒体は、これに限られるものではなく、記録/再生型光情報記録媒体や、追記型光情報記録媒体も含まれる。これらの場合は、各情報記録層に少なくとも記録膜が追加される。
【0078】
さらに、コストと記録容量のバランスがとれるならば、本願技術を3層以上の多層光情報記録媒体に適応することも可能である。
【0079】
なお、光情報記録媒体としては、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、CD−R(Compact Disk Recordable)、CD−RW(Compact Disk Rewritable)、DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disk Rewritable)、BD(Blu-ray Disc),BD(Blu-ray Disc)−ROM等の光学読取式のディスクや、光磁気ディスク、相変化型ディスク等、種々の光ディスクを適応する光情報記録媒体の形式として挙げることができる。なお、本発明は、記録の方式や大きさを問うものではない。
【0080】
また、以上に述べたことから明らかなように、本光情報記録媒体60を用いて、情報の再生を行うことにより、より高密度に記録された光情報記録媒体からの安定した情報再生が可能となることがわかる。
【0081】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について図12及び図13に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0082】
本実施形態では、実施の形態1で説明した光情報記録媒体60を再生するための光情報記録媒体再生装置について説明する。図12は、その光情報記録媒体再生装置100の概略構成を示す図である。
【0083】
図12に示すように、本光情報記録媒体再生装置100は、前述の光情報記録媒体60に対して光ビームを照射し、その反射光を検出することによって光情報記録媒体60に記録された情報を再生するための装置である。なお、本実施の形態では、光情報記録媒体60が円盤状の光ディスクである場合について説明するが、光情報記録媒体60は必ずしも円盤状の光ディスクでなくてもよい。
【0084】
図12に示すように、光情報記録媒体再生装置100は、光情報記録媒体60をスピンドルモータ101にて回転駆動し、光ピックアップ装置102にて、光情報記録媒体60からの情報の読み出しを行う。また、光ピックアップ装置102及びスピンドルモータ101の制御は制御部103で行われる。
【0085】
スピンドルモータ101は、光情報記録媒体60を回転することにより、光スポットを光情報記録媒体60上で走査させる。
【0086】
制御部103は、信号処理部103a、駆動制御部103b等を含む。
【0087】
信号処理部103aは、光情報記録媒体60上の記録マークからの反射光より得られた光ピックアップ装置102からの電気信号に基づいて記録情報を検出することにより、光情報記録媒体60上に記録マークによって記録された情報を読み取る。また、信号処理部103aは、光情報記録媒体60上の記録マークからの反射光より得られた光ピックアップ装置102からの電気信号に基づいて、後述のフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を生成する。
【0088】
駆動制御部103bは、光ピックアップ装置102から読み出されて信号処理部103aで生成された電気信号や外部からの指示に基づいて、スピンドルモータ101及び光ピックアップ装置102の駆動を制御するめにサーボ回路を有している。特に、駆動制御部103bは、信号処理部103aからのフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に基づいて対物レンズ102eの位置を補正し、レーザ光のオートフォーカスおよびトラッキングを行うためのサーボ回路を上記のサーボ回路として含んでいる。
【0089】
図13は、記録再生装置10に搭載される光ピックアップ装置102の構成を示す図である。
【0090】
図13に示すように、光ピックアップ装置102は、半導体レーザ102a、コリメートレンズ102b、ビーム整形プリズム(ビームを円形にするプリズム)102c、ビームスプリッタ102d、対物レンズ102e、レンズアクチュエータ102f、及び検出光学系102gを備えている。
【0091】
また、光ピックアップ装置102は、光源である半導体レーザ102aから照射されたレーザ光をビーム状に整形して光情報記録媒体60上に集光する装置である。この光ピックアップ装置102では、レーザ光源として半導体レーザ102aを用いている。ただし、これに限らず、他の光源を用いてもよい。また、半導体レーザ102aのレーザパワーは、超解像特性を発現させるために従来のレーザパワーより高く設定可能であり、従来のレーザパワーとの切り替えも可能である。これにより、2層超解像媒体での再生が可能となるため、同じ記録容量で4層通常媒体より低コストの2層超解像媒体を用いた再生が可能になる。また、同じ記録容量である4層通常媒体を再生する場合に比較して、層数が半分であることから、各層へのフォーカス回数が減少する。それゆえ、フォーカスに要する時間が短縮されるので、再生命令に対する反応が向上する。
【0092】
半導体レーザ102aからのレーザ光は、コリメートレンズ102bによってほぼ平行光に変換され、ビーム整形プリズム102cによって光強度の分布がほぼ円形となるように整形される。このほぼ円形の平行光は、ビームスプリッタ102dを透過した後、対物レンズ102eによって光ビーム(入射光)として光情報記録媒体60に集光される。なお、対物レンズ102eの開口数(NA)は0.65又は0.85に設定されている。
【0093】
また、光情報記録媒体60からの反射光は、ビームスプリッタ102dで分岐され、検出光学系102gに導かれる。検出光学系102gでは、光情報記録媒体60からの反射光の偏光方向の変化や反射光強度の変化(反射光レベルの高低)等から記録情報、焦点ずれ情報及びトラック位置ずれ情報が識別され、これらの情報が電気信号に変換される。なお、変換された電気信号は、信号処理部103aに送られる。
【0094】
上記の反射光には、光情報記録媒体60上に設けられたプリピット31,51の一部によって構成されるアドレス情報マークからの反射光も含まれている。検出光学系102gは、その反射光から得られた電気信号、すなわちアドレス情報マークを再生することにより得られた電気信号から、光情報記録媒体60における光ビーム照射面に形成される光スポット(光ビームの集光部)の光情報記録媒体60に対するフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号とを検出する。
【0095】
レンズアクチュエータ102fは、上記のフォーカスエラー信号がフィードバックされることにより、光スポットの光軸方向の位置ずれを補正する。これにより、光ピックアップ装置102は、光情報記録媒体60における所望の第1情報記録層20又は第2情報記録層40に光スポットを形成できる。また、レンズアクチュエータ102fは、トラッキングエラー信号がフィードバックされることにより、光スポットのトラック幅方向の位置ずれを補正する。これにより、光ピックアップ装置102は、光情報記録媒体60における目標のトラックに光スポットを追従させることができる。
【0096】
従来の多層光情報記録媒体再生装置では、多くの記録層に再生光をフォーカスして情報を再生するために、コストアップの伴うピックアップの性能を向上させる必要がある。これに対し、本光情報記録媒体再生装置100においては、実施の形態1の光情報記録媒体60を用いて再生を行うので、フォーカスさせる情報記録層数が従来装置に比べて減少することから、でピックアップ装置102のコストアップを抑制することができる。すなわち、より低コストの再生装置が実現できる。また、本光情報記録媒体再生装置100は、高密度に記録された光情報記録媒体60を用いることにより、安定した情報再生を行うことができる。
【0097】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の光情報記録媒体は、情報記録層において、再生光を収集して熱に変換する吸光膜と、その熱で加熱された部分の光透過率を変化させる再生膜とを設けることによって、製造コストの低減、情報記録密度の向上及び情報記録層の再生耐久性の向上を図ることができるので、光密度記録へ好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施形態1の2層超解像光情報記録媒体の構造を示す断面図である。
【図2】(a)は上記光情報記録媒体における中間層に設けられるプリピットの構造を示す斜視図であり、(b)は上記光情報記録媒体における基板に設けられるプリピットの構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1の実施例1の光情報記録媒体に対する比較例の光情報記録記録媒体の構造を示す断面図である。
【図4】(a)は実施例1及び比較例の光情報記録媒体における第1情報記録層についてのそれぞれのC/Nのピット長依存性(OTF)を示す特性図であり、(b)は第1実施例及び比較例の光情報記録媒体における第2情報記録層のそれぞれのC/Nのピット長依存性(OTF)を示す特性図である。
【図5】実施例1の光情報記録媒体におけるC/Nの再生回数依存性を示す特性図である。
【図6】本発明の実施形態1における実施例2の光情報記録媒体の構造を示す特性図である。
【図7】実施例1及び2の光情報記録媒体の第1再生膜のそれぞれの再生膜厚別C/Nについての再生レーザパワー依存性を示す特性図である。
【図8】実施例2の光情報記録媒体における第1情報記録層のC/Nについての透過率依存性を示す特性図である。
【図9】実施例2の光情報記録媒体における第1情報記録層の透過率別C/Nについての再生回数依存性を示す特性図である。
【図10】実施例2の光情報記録媒体における第2情報記録層の透過率別C/Nについての第1情報記録層透過率依存性を示す特性図である。
【図11】実施例2の光情報記録媒体における第1情報記録層の透過率についての吸収膜厚依存性とを示す特性図である。
【図12】本発明の実施形態2の光情報記録媒体再生装置の概略構成を示す図である。
【図13】上記光情報記録媒体再生装置における光ピックアップ装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
10 透光層
11 ポリカーボネートフィルム
12 透明粘着材
13 透明基板
20 第1情報記録層
21 第1再生膜(再生膜)
22 第1吸光膜(吸光膜)
23 半透明反射膜
30 中間層
31 プリピット
40 第2情報記録層
41 第2再生膜(再生膜)
42 第2吸光膜(吸光膜)
43 反射膜
50 基板
51 プリピット
60 光情報記録媒体
100 光情報記録媒体再生装置
102 光ピックアップ装置(光学読取手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生光入射面側から、透光層と、第1情報記録層と、主に樹脂からなる中間層と、第2情報記録層と、基板とがこの順に積層されている光情報記録媒体であって、
上記第1及び第2情報記録層の両層が、
再生光を吸収して熱に変換する吸光膜と、
該吸光膜の発熱によって加熱され、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生可能とする再生膜とを含んでいることを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項2】
上記透光層が、透明基板であることを特徴とする請求項1の光情報記録媒体。
【請求項3】
上記再生膜が、主に金属酸化膜からなることを特徴とする請求項1の光情報記録媒体。
【請求項4】
上記再生膜が、酸化亜鉛又は酸化亜鉛を主成分とする混合物であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
上記吸光膜が、無機物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のの光情報記録媒体。
【請求項6】
上記吸光膜が、SiもしくはGeの単体、又はこれらを主成分とした合金からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項7】
上記第1情報記録層が、再生光波長において、25%より大きく、かつ58%より小さい透過率を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項8】
上記第1情報記録層が、再生光波長において、33.4%より大きく、かつ46.9%より小さい透過率を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項9】
上記第1情報記録層の吸光膜の膜厚が、5nmより厚く、かつ25nmより薄いことを特徴とする請求項6に記載の光情報記録媒体。
【請求項10】
上記第1情報記録層の吸光膜の膜厚が、7nmより厚く、かつ13nmより薄いことを特徴とする請求項6に記載の光情報記録媒体。
【請求項11】
再生光入射面側から、透光層と、第1情報記録層と、主に樹脂からなる中間層と、第2情報記録層と、基板とがこの順に積層されている光情報記録媒体であって、
上記第1及び第2情報記録層の両層が、SiもしくはGeの単体、又はこれらを主成分とした合金からなる吸光膜と、
主に金属酸化膜からなる再生膜とを含んでいることを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項12】
上記金属酸化膜が酸化亜鉛又は酸化亜鉛を主成分とする混合物であることを特徴とする請求項11に記載の光情報記録媒体。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の光情報記録媒体を再生可能であるレーザパワーのレーザ光を上記第1又は第2情報記録層に照射し、上記光情報記録媒体からの反射光を読み取る光学読取手段を備えていることを特徴とする光情報記録媒体再生装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生光入射面側から、透光層と、第1情報記録層と、主に樹脂からなる中間層と、第2情報記録層と、基板とがこの順に積層されている光情報記録媒体であって、
上記第1及び第2情報記録層の両層が、
再生光を吸収して熱に変換する吸光膜と、
該吸光膜の発熱によって加熱され、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生可能とする再生膜とを含んでいることを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項2】
上記透光層が、透明基板であることを特徴とする請求項1の光情報記録媒体。
【請求項3】
上記再生膜が、主に金属酸化膜からなることを特徴とする請求項1の光情報記録媒体。
【請求項4】
上記再生膜が、酸化亜鉛又は酸化亜鉛を主成分とする混合物であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
上記吸光膜が、無機物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のの光情報記録媒体。
【請求項6】
上記吸光膜が、SiもしくはGeの単体、又はこれらを主成分とした合金からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項7】
上記第1情報記録層が、再生光波長において、25%より大きく、かつ58%より小さい透過率を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項8】
上記第1情報記録層が、再生光波長において、33.4%より大きく、かつ46.9%より小さい透過率を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項9】
上記第1情報記録層の吸光膜の膜厚が、5nmより厚く、かつ25nmより薄いことを特徴とする請求項6に記載の光情報記録媒体。
【請求項10】
上記第1情報記録層の吸光膜の膜厚が、7nmより厚く、かつ13nmより薄いことを特徴とする請求項6に記載の光情報記録媒体。
【請求項11】
再生光入射面側から、透光層と、第1情報記録層と、主に樹脂からなる中間層と、第2情報記録層と、基板とがこの順に積層されている光情報記録媒体であって、
上記第1及び第2情報記録層の両層が、SiもしくはGeの単体、又はこれらを主成分とした合金からなる吸光膜と、
主に金属酸化膜からなる再生膜とを含んでいることを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項12】
上記金属酸化膜が酸化亜鉛又は酸化亜鉛を主成分とする混合物であることを特徴とする請求項11に記載の光情報記録媒体。
【請求項13】
上記第1情報記録層が、再生光波長において、25%より大きく、かつ58%より小さい透過率を有することを特徴とする請求項11に記載の光情報記録媒体。
【請求項14】
上記第1情報記録層が、再生光波長において、33.4%より大きく、かつ46.9%より小さい透過率を有することを特徴とする請求項11に記載の光情報記録媒体。
【請求項15】
上記第1情報記録層の吸光膜の膜厚が、5nmより厚く、かつ25nmより薄いことを特徴とする請求項11に記載の光情報記録媒体。
【請求項16】
上記第1情報記録層の吸光膜の膜厚が、7nmより厚く、かつ13nmより薄いことを特徴とする請求項11に記載の光情報記録媒体。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の光情報記録媒体を再生可能であるレーザパワーのレーザ光を上記第1又は第2情報記録層に照射し、上記光情報記録媒体からの反射光を読み取る光学読取手段を備えていることを特徴とする光情報記録媒体再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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