説明

光拡散膜形成用樹脂組成物とその製造方法、光拡散膜、光拡散反射部材、光拡散透過部材、光学素子

【課題】LEDのような指向性の高い光に対しても、高い光拡散性を付与することが可能な光拡散膜を形成できる光拡散膜形成用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の光拡散膜形成用樹脂組成物は、平均長径が1μm以上かつ5μm以下、かつ平均短径が0.5μm以上かつ3μm以下であって、少なくとも1個の鋭角な端部を有する凝集粒子片と、樹脂とを含有してなり、前記凝集粒子片が、前記凝集粒子片と前記樹脂の合計質量に対して、15質量%以上かつ45質量%以下含有されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散膜形成用樹脂組成物とその製造方法、光拡散膜、光拡散反射部材、光拡散透過部材、光学素子に関する。特に詳しくは、LED光を用いた光学部品に光拡散性を付与する際に用いて好適な光拡散膜形成用樹脂組成物及びその製造方法と、光拡散膜形成用樹脂組成物を用いて形成される光拡散膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス製品に光拡散性を付与した構造としては、ガラス表面にサンドブラスト加工を施したり、ガラス表面をフッ酸処理したりすることで、その表面に凹凸を設けることで光拡散性を持たせた構造が知られている。
しかしこのような構造は、薄いガラスでは割れが生じる虞があり、表面を均一に処理することが難しい等の問題点があった。
【0003】
そこで、基板上に有機系の透明樹脂と、この透明樹脂と屈折率の異なる微粒子とを含む光散乱膜用組成物をダイコート法により塗布した光散乱膜(特許文献1)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−187824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の有機系の透明樹脂と微粒子とを含む光散乱膜用組成物を塗布した光散乱膜では、樹脂と微粒子との屈折率が違うことによる界面効果を利用しているだけであるので、LEDのような指向性の高い光を光拡散させるには不十分であるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、LEDのような指向性の高い光に対しても、高い光拡散性を付与することが可能な光拡散膜を形成することができる光拡散膜形成用樹脂組成物及びその製造方法、並びに光拡散膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、長径と短径を所望の大きさにし、かつ鋭角な端部を一箇所以上有する形状の凝集粒子片と、樹脂とを混合することで、高い光拡散性を有する樹脂組成物が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の光拡散膜形成用樹脂組成物は、平均長径が1μm以上かつ5μm以下、平均短径が0.5μm以上かつ3μm以下であって、少なくとも1個の鋭角な端部を有する凝集粒子片と、樹脂とを含有してなり、前記凝集粒子片が、前記凝集粒子片と前記樹脂の合計質量に対して、15質量%以上かつ45質量%以下含有されていることを特徴とする。
【0009】
前記凝集粒子片は、凝集粒子体を破砕又は粉砕することによって得られた破砕片又は粉砕片からなることが好ましい。
【0010】
本発明の光拡散膜形成用樹脂組成物の製造方法は、凝集粒子体を、平均長径が1μm以上かつ5μm以下、平均短径が0.5μm以上かつ3μm以下の凝集粒子片になるよう破砕又は粉砕しながら溶媒に分散させる分散工程と、前記分散工程で得られた分散液と樹脂とを混合させる工程を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の光拡散膜は、本発明の光拡散膜形成用樹脂組成物により形成されてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の光拡散反射部材は、本発明の光拡散膜を、可視光反射率が95%以上の基材の表面に形成してなることを特徴とする。
【0013】
本発明の光拡散透過部材は、本発明の光拡散膜を、可視光透過率が90%以上の基材の表面に形成してなることを特徴とする。
【0014】
本発明の光学部材は、上記の光拡散膜、光拡散反射部材、及び光拡散透過部材のうちの少なくとも1種を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光拡散膜形成用樹脂組成物によれば、平均長径が1μm以上かつ5μm以下、かつ平均短径が0.5μm以上かつ3μm以下であって、少なくとも1個の鋭角な端部を有する凝集粒子片と、樹脂成分とを含有したので、光拡散性に優れた光拡散膜形成用樹脂組成物を得ることができる。
【0016】
本発明の光拡散膜形成用樹脂組成物の製造方法によれば、凝集粒子体を破砕又は粉砕することにより、凝集粒子片が鋭角な端部を多く有することができるので、光拡散性に優れた光拡散膜形成用樹脂組成物を製造することができる。
【0017】
本発明の光拡散膜によれば、本発明の光拡散膜形成用樹脂組成物を形成してなるので、優れた光拡散性を得ることができる。
【0018】
本発明の光拡散反射部材によれば、本発明の光拡散膜形成用樹脂組成物からなる光拡散膜が可視光反射率が95%以上の基材の表面に形成されていることで、優れた光拡散性と光反射性を得ることができる。
【0019】
本発明の光拡散透過部材によれば、本発明の光拡散膜形成用樹脂組成物からなる光拡散膜が可視光透過率が90%以上の基材の表面に形成されていることで、優れた光拡散性と光透過性を得ることができる。
【0020】
本発明の光学部材によれば、光拡散性、光拡散反射性、光拡散透過性の少なくとも一つについて優れた特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係る凝集粒子体及び凝集粒子片の一例を示す模式図である。
【図2】実施形態に係る凝集粒子体及び凝集粒子片の他の一例を示す模式図である。
【図3】実施形態に係る凝集粒子片の他の一例を示す模式図である。
【図4】実施形態に係る凝集粒子片の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の光拡散膜形成用樹脂組成物及びその製造方法並びに光拡散膜を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り本発明を限定するものではない。
【0023】
[光拡散膜形成用樹脂組成物]
本実施形態の光拡散膜形成用樹脂組成物は、平均長径が1μm以上かつ5μm以下、かつ平均短径が0.5μm以上かつ3μm以下であって、少なくとも1個の鋭角な端部を有する凝集粒子片と、樹脂とを含有してなり、前記凝集粒子片が、前記凝集粒子片と前記樹脂の合計質量に対して、15質量%以上かつ45質量%以下含有されている。
平均長径は2μm以上かつ5μm以下、平均短径は0.5μm以上かつ2μm以下が好ましく、平均アスペクト比(長径/短径)は1.5以上が好ましい。
【0024】
「凝集粒子片」
本明細書中における「凝集」とは、一次粒子が集合することにより表面に凹凸を有する凝集粒子片を形成することを意味する。表面に形成される凹凸は、構成粒子(一次粒子又は一次粒子の凝集物)同士の間隙により形成される凹凸を少なくとも含み、構成粒子(一次粒子又は一次粒子の凝集物)の形状により付与される凹凸を含んでいてもよい。
【0025】
凝集粒子片を構成する構成粒子は、無機酸化物粒子であれば特に限定されず、例えば、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、アルミナ等の粒子を用いることができる。
構成粒子の材質は、形成する光拡散膜の用途に応じて決定してもよい。例えば、樹脂との屈折率差が小さい一次粒子を用いることで、光拡散膜の光透過性を高めることができるため、光拡散透過膜を形成するための樹脂組成物として好適なものとなる。
一方、樹脂との屈折率差が大きい構成粒子を用いることで、光拡散膜の光反射性を高めることができるので、光拡散反射膜を形成するための樹脂組成物として好適なものとなる。
【0026】
凝集粒子片は少なくとも1個の鋭角な端部を有する。ここでいう鋭角な端部とは、先端の頂角が鋭角である角錐状又は円錐状の突起部が形成された凝集粒子片の端部である。光拡散性を高めるためには凝集粒子片は鋭角な端部を複数有することが好ましく、多数の鋭角な端部を有することがより好ましい。
【0027】
また、このような鋭角な端部は、凝集粒子体を破砕又は粉砕することによって得られる破砕片又は粉砕片が、凝集粒子片の形状も多岐にわたるため好ましい。
ここで凝集粒子体とは、複数の構成粒子(一次粒子又は一次粒子の凝集物)が凝集した平均長径が1μm以上の集合体であれば特に限定されない。凝集粒子体としては、平均長径が1μm以上かつ5μm以下の球状の凝集粒子体を用いることが好ましく、これにより凝集粒子片の長径及び短径を所望の大きさに調整し易くなる。
【0028】
凝集粒子片の長径と短径は一定の範囲内であり、かつ鋭角な端部を有する。凝集粒子片そのものの形状は不定形で、多種の形状が混在していることが好ましい。このような形状とすることにより、LED光のような指向性が高い光を光拡散することができる。この作用効果は、凝集粒子片(一次粒子又は一次粒子の凝集物)の大きさが光を光拡散させるのに十分な大きさであり、上記粒子の凝集により形成された凝集粒子片表面の凹凸と、凝集粒子片が有する鋭角な端部により光の光拡散効果がより高められることによって得られると推定される。
なお、平均長径が1μm未満、又は平均短径が0.5μm未満の小さな凝集片であっても、光拡散膜の光拡散性を低下させない程度であれば、混入されていてもよい。
【0029】
凝集粒子片の形態としては、図1〜図4に示すものを挙げることができる。
図1(b)、図2(b)、図3及び図4は、本実施形態の凝集粒子片の複数の例を示す図である。図1(a)及び図2(a)には、図1(b)、図2(b)に示す凝集粒子片の出発原料である凝集粒子体がそれぞれ示されている。また図1〜図4には、1つの凝集粒子片における長径L、短径Sの測定例を示している。
【0030】
図1(b)に示す凝集粒子片11〜16は、平均粒経が1nm〜50nm程度の一次粒子2が凝集したものであり、一次粒子2同士の間隙が凝集粒子片の表面に微細な凹凸を形成している。凝集粒子片11〜16はそれぞれ少なくとも1個の鋭角な端部を有している。凝集粒子片11〜16の平均長径は1μm以上かつ5μm以下であり、平均短径は0.5μm以上かつ3μm以下である。
【0031】
図1(b)に示した凝集粒子片11〜16は、図1(a)に示す凝集粒子体1を破砕又は粉砕することで作製することができる。凝集粒子体1は、平均粒子径1nm〜50nmの一次粒子2が、内部に空洞部3を有する球状に凝集したものである。凝集粒子体1の平均粒子径は1μm以上かつ5μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上かつ3μm以下である。空洞部3は複数形成されていてもよく、空洞部3の一部が凝集粒子体1の外部に連通していてもよい。
【0032】
図2(b)に示す凝集粒子片31〜38は、一次粒経が1nm〜50nm程度の粒子が凝集して一次粒子同士の間隙が微細な凹凸を形成し、かつ少なくとも1個の鋭角な端部を有する、平均長径が1μm以上かつ5μm以下、平均短径が0.5μm以上かつ3μm以下の凝集粒子片である。
【0033】
図2(b)に示した凝集粒子片31〜38は、図2(a)に示す凝集粒子体21を粉砕又は破砕することにより作製することができる。凝集粒子体21は、平均粒子径1nm〜50nmの一次粒子2が、中実の球状に凝集したものである。凝集粒子体21の平均粒子径は1μm以上かつ5μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上かつ3μm以下である。
【0034】
図3に示す凝集粒子片42は、板状粒子41が幾重にも任意に積層して凝集粒子片を形成したものである。凝集粒子片42も平均長径が1μm以上かつ5μm以下、平均短径が0.5μm以上かつ3μm以下である形状に形成される。凝集粒子片42において、板状粒子41同士の間隙が凹凸を形成し、板状粒子41の角部が鋭角な端部を形成する。
【0035】
板状粒子41の大きさは、凝集粒子片42において平均長径、平均短径の規定寸法を満たせれば特に限定されないが、主面部分の一辺の平均長さが0.5μm〜3μm、平均厚さが0.1μm〜2μmである板状粒子を用いることが好ましい。
【0036】
図4に示す凝集粒子片45は、複数の板状粒子43の積層体である積層粒子44が凝集して形成されたものである。積層粒子44において、板状粒子43は全体として直方体状となるように秩序よく積層されている。凝集粒子片45も平均長径が1μm以上かつ5μm以下、平均短径が0.5μm以上かつ3μm以下である形状に形成される。凝集粒子片42において、積層粒子44同士の間隙が凹凸を形成し、積層粒子44の角部が鋭角な端部を形成する。
【0037】
積層粒子44の大きさは、凝集粒子片45において平均長径、平均短径の規定寸法を満たせれば特に限定されないが、主面部分の一辺の平均長さが0.5μm〜3μm、平均厚さが0.1μm〜2μmである板状粒子43が2〜10枚程度積層されたものを用いることが好ましい。
【0038】
凝集粒子片としては、図1(a)に示した球状の凝集粒子体1、又は図2(a)に示した凝集粒子体21を、破砕又は粉砕することによって得られる凝集粒子片11〜16、31〜38が好ましい。破砕又は粉砕により形成された凝集粒子片では不定形で鋭利な角部が得られやすく、これにより優れた光拡散性を得やすくなる。また凝集粒子体1、21のうちでも、中空の凝集粒子体1の方が不定形の凝集粒子片を得やすい。
【0039】
図1から図4に示した凝集粒子片11〜16、31〜38、42、45のいずれにおいても、それらの平均長径は1μm以上かつ5μm以下、平均短径は0.5μm以上かつ3μm以下である。凝集粒子片の平均長径及び平均短径を上記範囲とすることにより、光拡散性が高く、塗布ムラのない塗膜を形成することができる。
ここで平均長径とは、個々の凝集粒子片の最も長い部分の長さ(長径L)の平均値を意味し、平均短径とは、個々の凝集粒子片の最も短い部分の長さ(短径S)の平均値を意味する。
【0040】
「樹脂」
樹脂は、熱可塑性、熱硬化性、可視光線や紫外線や赤外線等による光(電磁波)硬化性、電子線照射による電子線硬化性等の硬化性樹脂、あるいはケイ素含有無機有機ハイブリッド構造体が好適に用いられる。また光拡散膜における光損失を抑えるために、可視光に対して透明な樹脂を用いることが好ましい。
【0041】
これらの樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル・ポリシロキサンハイブリッド樹脂、エポキシ・ポリシロキサンハイブリッド樹脂、ウレタン・ポリシロキサンハイブリッド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、光透過性及び光拡散性に優れ、耐熱性及び機械的特性に優れている点で、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂が好ましい。
【0042】
本実施形態の光拡散膜形成用樹脂組成物は、上記凝集粒子片を液状の樹脂モノマー又は液状の樹脂オリゴマーに分散させたものや、これらの分散液に上記樹脂を1種以上混合させて用いても良い。
【0043】
液状の樹脂モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系又はメタクリル系のモノマー、エポキシ系モノマー等が好適に用いられる。
また、液状の樹脂オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、アクリレート系オリゴマー等が好適に用いられる。以下、「樹脂」の語を用いる場合には、モノマー、オリゴマーも含むものとする。
【0044】
樹脂と凝集粒子片の混合比率は、樹脂と凝集粒子片の合計質量に対して、凝集粒子片が15質量%以上かつ45質量%以下である。樹脂と凝集粒子片の混合比率を上記範囲とすることにより、この樹脂組成物を塗布して得られる膜の機械的強度等の機械特性と、光拡散性、透過率、反射率等の光学特性の双方において良好な特性が得られる。
【0045】
本実施形態の光拡散膜形成用樹脂組成物は、必要に応じて適宜溶媒を混合させてもよい。溶媒としては、水や有機溶媒の少なくとも1種が好適に用いられる。
上記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられる。これらの有機溶媒は、1種のみ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
溶媒中に凝集粒子片を分散させる場合には、凝集粒子片の含有率は、溶媒と凝集粒子片の全質量に対して1質量%以上かつ70質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上かつ50質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上かつ30質量%以下である。
【0047】
ここで、凝集粒子片の含有率が上記範囲であれば、凝集粒子片が溶媒に対して良好な分散状態となる。しかし、含有率が1質量%未満であると、樹脂と混合した時に、溶媒量が多すぎて、塗布膜を得るハンドリング性が悪くなる。また、70質量%を超えると、塗料としての均一性が低下する場合があるので好ましくない。
【0048】
なお、本実施形態の組成物には、特性を失わない範囲において、分散剤、消泡剤、レベリング剤、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤等の一般的に用いられる添加剤を適宜添加しても良い。
【0049】
[光拡散膜形成用樹脂組成物の製造方法]
本実施形態の光拡散膜形成用樹脂組成物の製造方法は、凝集粒子体を、平均長径が1μm以上かつ5μm以下、平均短径が0.5μm以上かつ3μm以下の凝集粒子片になるよう破砕又は粉砕しながら溶媒に分散させる分散工程と、上記分散工程で得られた分散液と樹脂とを混合させる工程を有する製造方法である。
【0050】
「分散工程」
分散工程では、凝集粒子体を平均長径が1μm以上かつ5μm以下、平均短径が0.5μm以上かつ3μm以下の凝集粒子片になるよう破砕又は粉砕しながら溶媒、樹脂モノマー、又は樹脂オリゴマーに分散させて分散液を得る工程である。これら凝集粒子体、溶媒、樹脂モノマー、樹脂オリゴマーは、先に記載のものである。
【0051】
凝集粒子体を破砕又は粉砕することで所望の形状(平均長径が1μm以上かつ5μm以下、かつ平均短径が0.5μm以上かつ3μm以下であり、かつ鋭角な端部を有する形状)の凝集粒子片を形成しつつ、形成された凝集粒子片を溶媒等に均一に分散させるには、分散装置を用いる方法が挙げられる。このような分散装置としては、ビーズミル、ボールミル、ジェットミル等が挙げられ、これらの中でもビーズミルが好ましい。
なお、凝集粒子体をあらかじめ破砕機等で破砕したものを用いて、溶媒等に分散させてもよい。
【0052】
「混合工程」
混合工程では、分散工程で得られた分散液と樹脂とを混合する工程をいう。
混合方法は分散液と樹脂が均一に混合されれば特に限定されず、公知の混合方法を用いることができる。
以上により、本実施形態の光拡散膜形成用樹脂組成物を得ることができる。
【0053】
[光拡散膜]
本実施形態の光拡散膜は、本実施形態の光拡散膜形成用組成物により形成されてなることを特徴とする。
光拡散膜の膜厚は特に限定されず、用途に応じて適宜調整すればよい。LED光のように指向性の高い光を光拡散させる光拡散膜である場合には、1μm以上かつ30μm以下が好ましい。膜厚が1μm未満の場合には、膜の光拡散性能が劣るため好ましくない。一方で、膜厚が30μmを超えると、表面にヒビ、又は割れが発生する場合があるため好ましくない。
【0054】
本実施形態の光拡散膜の製造方法は、上記光拡散膜形成用樹脂組成物を膜状に成形する工程と、その形成膜を硬化させる工程とを含む。
光拡散膜形成用樹脂組成物を膜状に成形する方法は特に限定されず、基材に上記樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する方法や、任意形状の成形用型に流しいれる方法を用いることができる。
【0055】
光拡散膜形成用樹脂組成物を塗布される基材は特に限定されず、ガラス基材やプラスチック基材を用いることができる。
また、塗布方法も特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップコート法、グラビアコート法、スプレー法、ローラー法、バーコート法、はけ塗り法等が挙げられる。
【0056】
塗膜を硬化させる工程における硬化方法としては、使用する樹脂に応じて熱硬化方法や光硬化方法を用いればよい。光硬化に用いるエネルギー線は塗膜が硬化すれば特に限定されず、例えば、紫外線、遠赤外線、近紫外線、赤外線、X線、γ線、電子線、プロトン線、中性子線等のエネルギー線を用いることができる。これらのエネルギー線の中でも、硬化速度が速く、装置の入手が容易である紫外線照射による硬化が好ましい。
【0057】
[光拡散反射部材]
本実施形態の光拡散反射部材は、先の実施形態の光拡散膜形成用組成物からなる光拡散膜を、可視光線の反射率が95%以上である基材の少なくとも一方の面に形成してなるものである。
ここで、可視光線の反射率が95%以上とは、MgOの標準白色板を基準として、380nm〜800nmにおける反射率の平均値が95%以上であることを意味する。
【0058】
光拡散膜の膜厚は適宜調整すればよいが、LED光のように指向性の高い光を光拡散反射させる場合には、1μm以上かつ30μm以下、好ましくは5μm以上かつ20μm以下である。膜厚が1μm未満の場合には、光拡散膜において所望の光拡散反射性能が得られない場合があるため好ましくない。一方で、膜厚が30μmを超えると、光拡散膜の表面にヒビ、又は割れが発生するため好ましくない。
【0059】
「基材」
光拡散反射部材に用いられる基材は、可視光線の反射率が95%以上であれば特に限定されない。
例えば、銀蒸着PETフィルム等の金属反射層を形成したフィルムや、白色PETフィルム、白色ポリプロピレンフィルム、白色ポリカーボネートフィルム等の白色フィルムや、アルミニウム、鏡面仕上げやアルマイト処理を施したアルミニウム、白色に塗装されたアルミニウム等のアルミニウム基材や発泡白色ポリエステルフィルムが挙げられる。またこれらの基材は、金属等の支持体に貼り合せたものでもよい。
【0060】
白色フィルムとしては、東レ(株)製の、ルミラー60L、ルミラー60V、ルミラー60SL、ルミラー60SV、三井化学(株)製のPPリフレクタ−、古河電工(株)製のエムシーペット等の市販品も用いることができる。
【0061】
本実施形態の光拡散反射部材は、可視光反射率が95%以上である上記の基材を用い、先に記載の光拡散膜の製造方法と同様の塗布方法及び硬化方法を実施することで製造することができる。
【0062】
[光拡散透過部材]
本実施形態の光拡散透過部材は、先の実施形態の光拡散膜形成用組成物からなる光拡散膜を、可視光線の透過率が90%以上である基材の少なくとも一方の面に形成してなるものである。
ここで、可視光線の透過率が90%以上とは、空気を基準として380nm〜800nmの波長域における平均透過率が90%以上であることを意味する。
【0063】
「基材」
光拡散透過部材に用いられる基材は、可視光線の透過率が90%以上であれば特に限定されない。例えば、ガラス基材やプラスチック基材を用いることができる。
【0064】
本実施形態の光拡散透過部材は、可視光透過率が90%以上である基材を用い、先に記載の光拡散膜の製造方法と同様の塗布方法及び硬化方法を実施することで製造することができる。
【0065】
「光学素子」
本実施形態の光学部材は、先の実施形態の光拡散膜、光拡散反射部材、光拡散透過部材のうちの少なくとも1種を備えたものである。
光学素子としては、光を光拡散させる用途で用いられる光学素子であれば限定されない。例えば光拡散反射部材を備えた光学素子としては、照明器具や液晶ディスプレイ用バックライトユニットにおいて照明光路制御に使用される光拡散板等が挙げられる。
【0066】
光拡散膜を光学素子に形成する方法は特に限定されず、例えば先に記載した光拡散膜の形成方法や公知の方法を用いて光学部材に実装させればよい。
また先の実施形態の光拡散反射部材、光拡散透過部材を光学素子に装着する方法も特に限定されず、公知の方法で光学素子に実装させればよい。
【0067】
以上説明したとおり、本実施形態の光拡散膜形成用樹脂組成物によれば、平均長径が1μm以上かつ5μm以下、かつ平均短径が0.5μm以上かつ3μm以下であって、少なくとも1個の鋭角な端部を有する凝集粒子片と、樹脂成分とを含有したことで、光拡散性に優れた光拡散膜を形成することができる。
【0068】
上記凝集粒子片として、凝集粒子体を破砕又は粉砕することによって得られた破砕片又は粉砕片を用いた場合には、凝集粒子片の形状が鋭角な端部を多数形成し、かつ凝集粒子片の形状が多岐にわたるので、より光拡散性に優れた光拡散膜を形成可能な樹脂組成物とすることができる。
【0069】
また本実施形態の光拡散膜形成用樹脂組成物の製造方法によれば、凝集粒子体を破砕又は粉砕することにより凝集粒子片を形成するので、鋭角な端部を多く有する凝集粒子片を含む樹脂組成物とすることができ、光拡散性に優れた光拡散膜を形成可能な樹脂組成物を製造することができる。
【0070】
また本実施形態の光拡散膜によれば、本実施形態の光拡散膜形成用樹脂組成物を用いて形成されていることで、優れた光拡散性を得ることができる。また膜表面の面内均一性に優れており、膜や基材に割れが生じる虞も無い。そして、本実施形態の光拡散膜は曲部にも形成することができる。
【0071】
本実施形態の光拡散反射部材は、本実施形態の光拡散膜形成用樹脂組成物からなる光拡散膜が、反射率95%以上の基材の表面に形成されているので、優れた光拡散性と光反射性を得ることができる。また、波長380nm〜800nmの可視光領域で、波長依存性なく略一律に光を反射することができる。また、膜や基材に割れが生じる虞も無く、膜表面の面内均一性にも優れている。
【0072】
本実施形態の光拡散透過部材は、本実施形態の光拡散膜形成用樹脂組成物からなる光拡散膜が、可視光透過率90%以上の基材の表面に形成されているので、優れた光拡散性と光透過性を得ることができる。また、波長380nm〜800nmの可視光領域で、波長依存性なく略一律に光を透過することができる。また、膜や基材に割れが生じる虞も無く、膜表面の面内均一性に優れている。
【0073】
本実施形態の光学素子によれば、本実施形態の光拡散膜、光拡散反射部材、光拡散透過部材の少なくとも一種を備えてなるので、光拡散性、光拡散反射性、光拡散透過性の少なくとも一つの性能に優れた光学素子を得ることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0075】
「光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜」
[実施例1]
平均長径が2.3μmの中空の球状シリカ凝集体A(鈴木油脂工業株式会社 ゴッドボール B−6C 凝集粒子の一次粒子径 20nm〜30nm)(凝集粒子体)を、分散剤、ビーズを含む純水中にビーズミルを用いて粉砕・分散させ、その後ビーズを分離し、凝集粒子片を20質量%、分散剤を2質量%含有する分散液を作製した。
【0076】
分散液中の凝集粒子片を走査型電子顕微鏡S−4000(日立ハイテク社製)を用いて100個観察したところ、平均長径は2μm、平均短径は1μmであった。
【0077】
次いで、この分散液にアクリル樹脂を、アクリル樹脂と凝集粒子片の合計質量に対して、凝集粒子片が20質量%となるように添加して均一に混合し、実施例1の光拡散膜形成用樹脂組成物を作製した。
【0078】
次いで、この光拡散膜形成用樹脂組成物を、バーコート法により、白色反射フィルム(東レ社製、ルミラーE60L)上に膜厚が1.5μmとなるように塗布し、得られた塗膜を、大気中、90℃にて5分エアブローしながら乾燥し、実施例1の光拡散反射膜(光拡散反射部材)を得た。
【0079】
[実施例2]
実施例1において、光拡散膜形成用樹脂組成物中の凝集粒子片の含有率を30質量%となるようにした他は同様にして、実施例2の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
【0080】
[実施例3]
実施例1において、光拡散膜形成用樹脂組成物中の凝集粒子片の含有率を40質量%となるようにした他は同様にして、実施例3の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
【0081】
[実施例4]
実施例1において、球状シリカ凝集体Aの替わりに、平均長径が3μmの中実の球状シリカ凝集体B(東ソー・シリカ株式会社製、ニップジェル SS−170X 凝集粒子の一次粒子径 1nm〜10nm)(凝集粒子体)に変更した他は同様にして、実施例4の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
分散液中の凝集粒子片を実施例1と同様に観察したところ、平均長径は2μm、平均短径は1μmであった。
【0082】
[実施例5]
実施例4において、光拡散膜形成用樹脂組成物中の凝集粒子片の含有率を30質量%となるようにした他は同様にして、実施例5の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
【0083】
[実施例6]
実施例4において、光拡散膜形成用樹脂組成物中の凝集粒子片の含有率を40質量%となるようにした他は同様にして、実施例6の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
【0084】
[実施例7]
実施例1において、球状シリカ凝集体Aの替わりに、平均長径が5μmの板状シリカ凝集体C(AGCエスアイテック株式会社製、サンラブリー)を用いた他は同様にして、実施例7の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
分散液中の凝集粒子片を実施例1と同様に観察したところ、平均長径は5μm、平均短径は3μmであった。
【0085】
[実施例8]
実施例7において、光拡散膜形成用樹脂組成物中の凝集粒子片の含有率を30質量%となるようにした他は同様にして、実施例8の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
【0086】
[実施例9]
実施例7において、光拡散膜形成用樹脂組成物中の凝集粒子片の含有率を40質量%となるようにした他は同様にして、実施例9の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
【0087】
[実施例10]
実施例1において、アクリル樹脂の替わりに、ポリエステル樹脂を用いた他は同様にして、実施例10の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
【0088】
[実施例11]
実施例1において、アクリル樹脂の替わりに、フッ素樹脂を用いた他は同様にして、実施例10の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
【0089】
[比較例1]
実施例1において、光拡散膜形成用樹脂組成物中の凝集粒子片の含有率を10質量%となるようにした他は同様にして、比較例1の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
【0090】
[比較例2]
実施例1において、光拡散膜形成用樹脂組成物中の凝集粒子片の含有率を50質量%となるようにした他は同様にして、比較例2の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
【0091】
[比較例3]
実施例4において、光拡散膜形成用樹脂組成物中の凝集粒子片の含有率を10質量%となるようにした他は同様にして、比較例3の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
【0092】
[比較例4]
実施例4において、光拡散膜形成用樹脂組成物中の凝集粒子片の含有率を50質量%となるようにした他は同様にして、比較例4の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
【0093】
[比較例5]
実施例7において、光拡散膜形成用樹脂組成物中の凝集粒子片の含有率を10質量%となるようにした他は同様にして、比較例5の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
【0094】
[比較例6]
実施例7において、光拡散膜形成用樹脂組成物中の凝集粒子片の含有率を50質量%となるようにした他は同様にして、比較例6の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
【0095】
[比較例7]
実施例1において、球状シリカ凝集体Aの替わりに、平均長径が9μmの中空の球状シリカ凝集体D(鈴木油脂工業株式会社 ゴッドボール B−25C 凝集粒子の一次粒子径 20nm〜30nm)(凝集粒子体)を用いた他は同様にして、比較例7の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
分散液中の凝集粒子片を実施例1と同様に観察したところ、平均長径は7μm、平均短径は4μmであった。
【0096】
[比較例8]
実施例1において、球状シリカ凝集体Aの替わりに、凝集粒子体ではない平均長径が0.1μmの中空の球状シリカE(日鉄鉱業社製 シリナックスSP−PN(b))を用いた他は同様にして、比較例8の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
分散液中の粒子を実施例1と同様に観察したところ、平均長径は0.1μm、平均短径は0.1μmであった。
【0097】
[比較例9]
実施例1において、球状シリカ凝集体Aの替わりに、平均長径が4μmであって、凝集粒子体ではない不定形の溶融シリカの粉砕品F(鈴木油脂工業株式会社 ゴッドボール G−6C)を用いた他は同様にして、比較例9の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
分散液中の粒子を実施例1と同様に観察したところ、平均長径は4μm、平均短径は4μmであった。
【0098】
[比較例10]
実施例1において、球状シリカ凝集体Aの替わりに、凝集粒子体ではない平均長径が3μmの球状のアルミナG(住友化学社製 アドバンストアルミナAA−3)を用いた他は同様にして、比較例10の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
分散液中の粒子を実施例1と同様に観察したところ、平均長径は3μm、平均短径は3μmであった。
【0099】
[比較例11]
実施例1において、球状シリカ凝集体Aの替わりに、凝集粒子体ではない平均長径が0.1μmの球状のチタニアH(石原産業社製 A−100)を用いた他は同様にして、比較例11の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
分散液中の粒子を実施例1と同様に観察したところ、平均長径は0.1μm、平均短径は0.1μmであった。
【0100】
[比較例12]
実施例1において、平均長径が2μmの中空の球状シリカ凝集体Aの替わりに、凝集粒子体でない平均長径が1μmの中実の球状シリカI(東ソーシリカ社製 SS−50F)を用いた他は同様にして、比較例12の光拡散膜形成用樹脂組成物及び光拡散反射膜を得た。
分散液中の粒子を実施例1と同様に観察したところ、平均長径は1μm、平均短径は1μmであった。
【0101】
実施例1〜11及び比較例1〜12各々で得られた光拡散反射膜の積分反射率、反射率の波長ばらつき、LED光の光拡散性、塗布ムラの各特性について、下記の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0102】
(1)550nmにおける積分反射率
光拡散反射膜の積分反射率(R(%))を380nm〜800nmの波長範囲で、分光度計V−570(日本分光株式会社製)を用いて、白色反射フィルム(東レ社製、ルミラーE60L)の反射率を基準として測定した。
波長が550nmの時の積分反射率(%)の値に従って、下記基準に基づき反射特性の評価を行った。なお反射率(%)は、いずれも、光拡散反射膜の形成に基材として用いたフィルムを介在させた状態で測定した値である。
◎:反射率が98%以上
○:反射率が95%以上かつ98%未満
△:反射率が90%以上かつ95%未満
×:反射率が90%未満
【0103】
(2)反射光の波長ばらつき
(1)で測定した380nm〜800nmの波長範囲で、積分反射率の最大値と最小値の差を算出した。そして、得られた反射率(%)の差に従って、下記基準に基づき反射光の波長ばらつき特性の評価を行った。
◎:差が3%未満
○:差が3%以上かつ6%未満
△:差が6%以上かつ9%未満
×:差が9%以上
【0104】
(3)LED光の光拡散性
LED素子を6個有するLED白色電球(シャープ社製 DL−L601N)の光拡散カバーを外した状態でLED素子を発光させ、光拡散反射膜に対して白色光を直接照射した。この場合にLED光源の素子の形状がそのまま映りこむかどうかにより、下記基準に基づきLED光の光拡散性の特性評価を行った。
◎:LED光源が光拡散して、素子の形状が映りこまない
×:LED光源が光拡散せず、素子の形状がそのまま映りこむ
【0105】
(4)塗布ムラ
光拡散反射膜を目視で観察し、下記基準に基づき塗布ムラの特性評価を行った。
◎:塗布ムラがまったく観察されない。
×:塗布ムラが観察される。
【0106】
【表1】

【0107】
「光拡散透過膜」
[実施例12]
実施例1において、白色反射フィルム(東レ社製、ルミラーE60L)の替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、実施例12の光拡散透過膜(光拡散透過部材)を得た。
【0108】
[実施例13]
実施例2において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、実施例13の光拡散透過膜を得た。
【0109】
[実施例14]
実施例3において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、実施例14の光拡散透過膜を得た。
【0110】
[実施例15]
実施例4において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、実施例15の光拡散透過膜を得た。
【0111】
[実施例16]
実施例5において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、実施例15の光拡散透過膜を得た。
【0112】
[実施例17]
実施例6において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、実施例17の光拡散透過膜を得た。
【0113】
[実施例18]
実施例7において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、実施例18の光拡散透過膜を得た。
【0114】
[実施例19]
実施例8において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、実施例19の光拡散透過膜を得た。
【0115】
[実施例20]
実施例9において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、実施例20の光拡散透過膜を得た。
【0116】
[実施例21]
実施例10において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、実施例21の光拡散透過膜を得た。
【0117】
[実施例22]
実施例11において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、実施例22の光拡散透過膜を得た。
【0118】
[比較例13]
比較例1において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、比較例13の光拡散透過膜を得た。
【0119】
[比較例14]
比較例2において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、比較例14の光拡散透過膜を得た。
【0120】
[比較例15]
比較例3において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、比較例15の光拡散透過膜を得た。
【0121】
[比較例16]
比較例4において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、比較例16の光拡散透過膜を得た。
【0122】
[比較例17]
比較例5において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、比較例17の光拡散透過膜を得た。
【0123】
[比較例18]
比較例6において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、比較例18の光拡散透過膜を得た。
【0124】
[比較例19]
比較例7において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、比較例19の光拡散透過膜を得た。
【0125】
[比較例20]
比較例8において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、比較例20の光拡散透過膜を得た。
【0126】
[比較例21]
比較例9において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、比較例21の光拡散透過膜を得た。
【0127】
[比較例22]
比較例10において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、比較例22の光拡散透過膜を得た。
【0128】
[比較例23]
比較例11において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、比較例23の光拡散透過膜を得た。
【0129】
[比較例24]
比較例12において、白色反射フィルムの替わりに、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)を用いた他は同様にして、比較例24の光拡散透過膜を得た。
【0130】
実施例12〜22及び比較例13〜24各々で得られた光拡散透過膜のヘーズ値、全光線透過率、透過率の波長ばらつき、成膜性の各特性について、下記の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0131】
(5)ヘーズ値及び全光線透過率
光拡散透過膜のヘーズ値及び全光線透過率をヘーズメータ NDH−2000(日本電色工業社製)を用いて測定した。
ヘーズ値については、下記基準に基づき評価を行った。
◎:ヘーズ値が60%以上
○:ヘーズ値が40%以上かつ60%未満
△:ヘーズ値が20%以上かつ40%未満
×:ヘーズ値が20%未満
【0132】
全光線透過率(%)については、下記基準に基づき評価を行った。
◎:全光線透過率が90%以上
○:全光線透過率が85%以上かつ89%未満
△:全光線透過率が80%以上かつ85%未満
×:ヘーズ値が80%未満
【0133】
(6)透過光の波長ばらつき
積分透過率(T(%))を380nm〜800nmの波長範囲で、分光度計V−570(日本分光株式会社製)を用いて、ホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(20mm×50mm×2mmt)の透過率を基準として測定した。
得られた積分透過率の最大値と最小値の差を算出し、その差に従って、下記基準に基づき透過光の波長ばらつき特性の評価を行った。
◎:差が6%未満
○:差が6%以上かつ10%未満
△:差が10%以上かつ20%未満
×:差が20%以上
【0134】
(7)塗布ムラ
塗布ムラについては、上記(4)の評価方法、評価基準と全く同様に行った。
【0135】
【表2】

【符号の説明】
【0136】
1,21 凝集粒子体
2 一次粒子
3 空洞部
11〜16,31〜38,42,45 凝集粒子片
41,43 板状粒子
44 積層粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均長径が1μm以上かつ5μm以下、かつ平均短径が0.5μm以上かつ3μm以下であって、少なくとも1個の鋭角な端部を有する凝集粒子片と、樹脂とを含有してなり、前記凝集粒子片が、前記凝集粒子片と前記樹脂の合計質量に対して、15質量%以上かつ45質量%以下含有されていることを特徴とする、光拡散膜形成用樹脂組成物。
【請求項2】
前記凝集粒子片が、平均長径が1μm以上かつ5μm以下の凝集粒子体を破砕又は粉砕することによって得られた破砕片又は粉砕片からなることを特徴とする、請求項1記載の光拡散膜形成用樹脂組成物。
【請求項3】
凝集粒子体を、平均長径が1μm以上かつ5μm以下、平均短径が0.5μm以上かつ3μm以下の凝集粒子片になるよう破砕又は粉砕しながら溶媒、液状樹脂モノマー又は液状樹脂オリゴマーに分散させる分散工程と、前記分散工程で得られた分散液と樹脂とを混合させる工程を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の光拡散膜形成用樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の光拡散膜形成用樹脂組成物により形成されてなることを特徴とする、光拡散膜。
【請求項5】
請求項4記載の光拡散膜を、可視光反射率が95%以上の基材の表面に形成してなることを特徴とする、光拡散反射部材。
【請求項6】
請求項4記載の光拡散膜を、可視光透過率が90%以上の基材の表面に形成してなることを特徴とする、光拡散透過部材。
【請求項7】
請求項4記載の光拡散膜、請求項5記載の光拡散反射部材、及び請求項6記載の光拡散透過部材のうちの少なくとも1種を備えたことを特徴とする光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−72885(P2013−72885A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209428(P2011−209428)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】