説明

光拡散防止部材付きのインクタンク

【課題】ユーザーが可視光線により発光するインクタンクの場所を確実に認識できるとともに、光検知部を備えた印刷装置にユーザー報知用の可視光線を発信するインクタンクを適用する構成とした場合においても、光検知部が誤検知することなく、さらに低コストで可視光線の拡散を防ぐことができる光拡散防止部材付きのインクタンクを提供する。
【解決手段】LEDを有するインクタンク1において、前記LEDの発光部分に光の拡散を防ぐための光拡散防止部材8を備える構成とした光拡散防止部材付きのインクタンク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の光拡散防止部材付きのインクタンクは、発光素子としてLEDを有するインクタンクにおいて、LEDから発光される可視光線が拡散することなく、ユーザーが確実に目視によって認識することができ、さらに光照合等の検出に影響を及ぼすことのない、新規な光拡散防止部材を備えたインクタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、市場において報知手段として、例えば可視光線を採用したインクタンクが実用化されている。この可視光線による報知手段としては特許文献1にあるように、個々のインクタンクにLED(Light Emitting Diode)発光部を設けると共に、プリンタに備えるキャリッジに開口を設け、発光部からの可視光線に、受光部へ直接投光せしめると共に、操作者へ可視認識せしめるだけの発光量を必要としている。
【0003】
また、特許文献2には、特許文献1と同様に、LED発光部が設けられ、特許文献1の開口に変えて、可視光線が拡散する前にプリンタに備えた受光部へ導くための光路を構成する技術が開示されている。
【0004】
しかし、上述の特許文献1や特許文献2のように、1つのLED発光による可視光報知部を採用したインクタンクでは、プリンタに備えた受光部に向けて可視光線を発信すると共に、操作者へ報知情報を可視認識させるために、LED自体の発光量をかなり大きなものにせざるを得ないため、LED自体が高価であるだけでなく、発光した光の拡散による認識不良が発生してしまう。これを防止するための開口や光路といった補助的機構をさらに設ける従来の方式は、全体として複雑で高価であるだけでなく、受光・非受光を判別するための受光部認識閾値にも影響を与えるので、プリンタ自体の設計を高価なものにせざるを得ない。
【0005】
そこで本出願人は特許文献3として、上述の特許文献1や特許文献2のように強度劣化をもたらす開口や高価な光路部材を使用するといった課題を解決するべく、またさらに、受光部への報知手段として、可視光線よりも長い波長の赤外線を発信する発信素子を使うことによって、可視光線よりも指向性に優れ、屈折することなく受信部に到達し易い発信素子を備えたインクタンクを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許登録第3793216号公報
【特許文献2】特開2007−112150号公報
【特許文献3】実用新案登録第3163016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1乃至特許文献2のように、可視光報知部によって可視光線を発信した場合、ユーザーは光が拡散することによって広い範囲で発光しているように見えてしまい、発光するインクタンクの場所が認識しにくいという問題がある。
【0008】
また、発光素子と受光素子等の光検知部を採用して光照合を行い、その照合結果に基づいて何等かの制御を行う印刷装置に、複数の可視光線を発信するインクタンクをこの印刷装置に適用する構成とした場合、意図しない他のインクタンクから発信される可視光線の拡散によって、光検知部に可視光線が投光されて誤検知をしてしまい、結果として誤った制御を引き起こしてしまうという問題もある。
【0009】
上述の問題を防ぐために、例えば、発光素子として低光量の可視光線を発信するLEDを採用することで光の拡散を防ぐ構成や、抵抗器を採用することで光量を低く調節し光の拡散を防ぐ構成も考えられるが、その場合、特殊なLEDや抵抗器等を採用しなければならず、結果としてコストが掛かるという新たな問題が発生してしまう。
【0010】
本発明の目的は、ユーザーが可視光線により発光するインクタンクの場所を確実に認識できるとともに、光検知部を備えた印刷装置にユーザー報知用の可視光線を発信するインクタンクを適用する構成とした場合においても、光検知部が誤検知することなく、さらに低コストで可視光線の拡散を防ぐことができる光拡散防止部材付きのインクタンクを提供することである。この目的は、特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は、本発明のさらなる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の発明は、LEDを有するインクタンクにおいて、前記LEDの発光部分に光の拡散を防ぐための光拡散防止部材を備える構成としたことを特徴とする光拡散防止部材付きのインクタンクである。
【0012】
本発明の第2の発明は、前記インクタンクが、赤外線を発信する赤外線LEDと、可視光線を発信する可視光線LEDとを備えることを特徴とする第1の発明に記載の光拡散防止部材付きのインクタンクである。
【0013】
本発明の第3の発明は、前記光拡散防止部材が、前記可視光線LEDの発光部分に備えられたことを特徴とする第2の発明に記載の光拡散防止部材付きのインクタンクである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の発明は、LEDを有するインクタンクにおいて、前記LEDの発光部分に光の拡散を防ぐための光拡散防止部材を備える構成としたことを特徴とする構成としているので、発光部の光の拡散を防ぐことによって、ユーザーが可視光線により発光されたインクタンクの場所を確実に認識できるとともに、光検知部等を備えた印刷装置にユーザー報知用の可視光線を発信するインクタンクを適用する構成とした場合においても、光検知部が誤検知することなく、さらに低コストで可視光線の拡散を防ぐことができるという優れた効果を奏する。
【0015】
本発明の第2の発明は、前記インクタンクが、赤外線を発信する赤外線LEDと、可視光線を発信する可視光線LEDとを備えることを特徴とする構成としているので、発光部の光の拡散を防ぐことによって、ユーザーが可視光線により発光されたインクタンクの場所を確実に認識できるとともに、光検知部等を備えた印刷装置にユーザー報知用の可視光線を発信するインクタンクを適用する構成とした場合においても、光検知部が誤検知することなく、さらに低コストで可視光線の拡散を防ぐことができるという優れた効果を奏する。
【0016】
本発明の第3の発明は、前記光拡散防止部材が、前記可視光線LEDの発光部分に備えられたことを特徴とする構成としているので、発光部の光の拡散を防ぐことによって、ユーザーが可視光線により発光されたインクタンクの場所を確実に認識できるとともに、光検知部等を備えた印刷装置にユーザー報知用の可視光線を発信するインクタンクを適用する構成とした場合においても、光検知部が誤検知することなく、さらに低コストで可視光線の拡散を防ぐことができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の光拡散防止部材付きのインクタンクにおいて、側面側の透視した模式図である。
【図2】本発明の光拡散防止部材付きのインクタンクにおいて、上面3a側を示した模式図である。
【図3】従来のインクタンクの一例を示した側面側の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の光拡散防止部材付きのインクタンクの1実施形態について図面1乃至図面2を参照して説明するが、本発明はこの事例に限られるものではなく、適宜選択が可能である。
【実施例】
【0019】
図1で示す本実施形態の光拡散防止部材付きのインクタンク1は、上面3a、底面3b、前面3c、後面3d及びそれらを繋ぐ1対の側面3e及び3fからなる概ね箱型の容器であり、容器内部にはインクが収納されるインク室2が形成されている。このインクタンク1は、プリンタのキャリッジ(不図示、以下同じ)に装着され、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(BK)等の各色で略同一形状のインクタンク1をこのキャリッジに収容する。
【0020】
このインクタンク1の上面3aには、図1、図2で示すように、大気を導入する大気孔4及び大気孔4を密封する大気孔ゴム栓5、本インクタンク1をプリンタのキャリッジに係止固定するための弾性復帰可能な剛性を有する係止部材6、可視光線を発信する可視光線発信部7と、その可視光線発信部7の上部を覆うように貼り付けられた光拡散防止部材8が構成されている。
【0021】
係止部材6は透明又は半透明な樹脂部材で構成されており、前面側にはラッチ爪9と、その上方に操作部10が設けられており、プリンタのキャリッジに係止固定が可能となっている。なお、係止部材6はキャリッジ側の構成に対応して、係合できるものであれば本実施形態以外の構成でも適宜選択が可能である。
【0022】
ここで、可視光線発信部7は、発光素子としてLEDにより可視光線を発信するように構成されており、インクタンク1の状態をユーザーに対して正確に認識できるよう視認用として用いるものである。例えば、インクタンクを装着した際や、インク残量が僅かである、あるいはインク無し等によりインクタンクの交換を促す状態であることを、この可視光線発信部7が可視光線によって点灯あるいは点滅するよう構成されることによって、ユーザーに視覚的に報知する。
【0023】
次に、図1に示すインクタンク1の前面3cには、赤外線を発信する赤外線発信部11が構成されており、発光素子として赤外線LEDを用いて赤外線を発信するよう構成されている。
【0024】
この赤外線発信部11は、可視光線発信部7と同様にインクタンクの状態を報知するものであるが、プリンタの認識用として図示しないプリンタに備える受光部に対して赤外線を発信するためのものである。その発信は、例えば、インクタンクを装着した際や、インク残量が僅かである、あるいはインク無し等によりインクタンクの交換を促す状態である場合に、この赤外線発信部11が赤外線によって点灯あるいは点滅するよう構成されている。そして、発信された赤外線をプリンタは受光部で検知し、その検知結果に基づいて、インクタンクがどのような状態であるかを判定してプリンタの制御を行う。
【0025】
ここにおいて、可視光線発信部7からユーザーへの視認用として発信された可視光線が、例えば光の拡散あるいは高光量等の原因によって、プリンタに備える受光部に誤って受信されてしまう虞がある。その場合、プリンタは誤って受信された可視光線を検知し、その検知結果に基づいてインクタンクの状態を判定することで、結果としてプリンタが誤った制御あるいはエラー等を引き起こしてしまう。
【0026】
このような、上述の問題を防止するために、本実施形態では可視光線発信部7を配置しているインクタンク1の上面3aに、光拡散防止部材8を可視光線発信部7の発光素子であるLEDを覆うように接着剤等によって貼着して構成させている。
【0027】
この光拡散防止部材8によって、可視光線の拡散を防止することができ、本実施形態ではプリンタに備える受光部に向けて可視光線が発信されることを防止することができる。また、図示しないプリンタのキャリッジに複数装着されたインクタンクにおいて、意図しない他のインクタンクが可視光線を発信したとしても、受光部に可視光線が投光されることを防いでいるため、光検出に影響を与えることがない。さらに、ユーザーは図示しないプリンタのキャリッジに複数装着されたインクタンクについて、どのインクタンクが発光しているかを、誤認識することなく確実に視認することができる。
【0028】
なお、光拡散防止部材8は、可視光線の拡散を防ぐような構成で、かつユーザーが認識できる程度の光透過の構成があれば、厚さ、材質、配色等適宜選択が可能である。
【0029】
例えば、厚さ0.1ミリ乃至0.25ミリ程のシート状部材で、かつ、透明ではなく配色を施し、材質として紙や、フィルム、プラスチック等の樹脂を用い、それらを適宜組み合わせることで、可視光線の拡散を防ぎ、かつユーザーが認識できる程度の光透過できる構成が好ましい。
【0030】
また、この光拡散防止部材8は、可視光線の拡散を防ぐ構成であれば、製品名、製品番号、型式番号、インク色の記載や彩色等の識別機能を表示するラベルの構成を兼ね備えることもできる。そのようなラベルの構成を採用することによって、可視光線の拡散防止と、さらに、ユーザーの目視によるインクタンクの識別が可能となる。
【0031】
さらに、この光拡散防止部材8を上面3aに貼着することによって、LED及びLEDまで伸延している配線を固定するような構成であってもよい。
【0032】
なお、本実施形態において光拡散防止部材8を上面3aに貼着することとしているが、インクタンク1の上面3aと光拡散防止部材8が係合されることで固定する構成であってもよい。
【0033】
図3は従来の一例を示したインクタンクであり、可視光線を発信する可視光線発信部を備え、プリンタのキャリッジに装着されている状態を示している。そして、この可視光線発信部からプリンタに備える受光部に向けて可視光線を発信するよう構成されているが、インクタンクには、本発明の構成である光拡散防止部材を備えていないため可視光線の散乱を引き起こし、受光部が誤検知してしまうといった問題や、ユーザーに対して確実な報知ができないという問題が発生する。しかし本発明ではこのような問題が発生することはない。
【0034】
なお、図1乃至図2に記載した実施例については、種々の組み合わせが可能であり、前述した実施例に拘泥されることなく本発明の構成に含めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の光拡散防止部材付きのインクタンクは、例えば印刷装置に備えるインクタンク、さらに詳しくは、プリンタ、ファクシミリ、複写機、複合機等の印刷装置に装着されるトナーカートリッジ、インクジェットカートリッジ、ヘッド付インクタンク等のインクタンクに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 インクタンク
2 インク室
3a 上面
3b 底面
3c 前面
3d 後面
3e、3f 側面
4 大気孔
5 大気孔ゴム栓
6 係止部材
7 可視光線発信部
8 光拡散防止部材
9 ラッチ爪
10 操作部
11 赤外線発信部













【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDを有するインクタンクにおいて、前記LEDの発光部分に光の拡散を防ぐための光拡散防止部材を備える構成としたことを特徴とする光拡散防止部材付きのインクタンク。
【請求項2】
前記インクタンクが、赤外線を発信する赤外線LEDと、可視光線を発信する可視光線LEDとを備えることを特徴とする請求項1に記載の光拡散防止部材付きのインクタンク。
【請求項3】
前記光拡散防止部材が、前記可視光線LEDの発光部分に備えられたことを特徴とする請求項2に記載の光拡散防止部材付きのインクタンク。





































【図1】
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【図2】
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【図3】
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