説明

光散乱型液晶デバイス

【課題】 光学ヒステリシスを本質的に低減した、特に中間調域におけるHS50が小さい光散乱型液晶デバイスを提供する。
【解決手段】 側鎖型ラジカル重合性組成物及び液晶組成物を含有する調光層形成材料を重合させて得た調光層を有する光散乱型液晶デバイスにおいて、前記側鎖型ラジカル重合性組成物が、下記式を同時に満たす。
【数1】


【数2】


【数3】


(Δαは、ラジカル重合性化合物から導き出された複数のαの、最大値αと最小値αの差を表す。NR1R2は、ラジカル重合性化合物が重合した時に生じる、隣り合う側鎖同士の距離を表す。NR1及びNR2は側鎖の長さを表す。Σ(αi×βi)は、複数のαiに対して、ラジカル重合性化合物間の反応性がすべて同じと仮定した際に得られるαiの出現確率βiを乗じた期待値を該重合体のすべてのαiに対して和した、理論値を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光散乱型の液晶デバイスに関し、更に詳しくは高分子化合物中に液晶を分散させた高分子分散型液晶表示デバイスに関する。この高分子分散型液晶表示デバイスには、ポリマーマトリックスの連続相に液晶滴が分散された狭義の高分子分散型液晶と、三次元網目状に形成されたポリマーマトリックスの網目内に液晶が連続的に分散されたポリマーネットワーク型液晶の双方が含まれる。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の進展に伴い、情報通信材料の需要がますます高まっている。特に、光散乱型の液晶デバイスは、偏光板が不要なことや視野角依存性が少ないことから、広告板、装飾表示板、時計、コンピューター、プロジェクション、デジタルペーパー、携帯用情報端末、光シャッター、などの液晶表示素子又は光学素子として大きく期待されている。
光散乱型液晶デバイスとしては、重合性組成物と液晶組成物とからなる調光層形成材料に光照射又は加熱して、重合性組成物と液晶組成物とを相分離させた状態で重合性組成物を硬化させて得た、ポリマーマトリックスと液晶組成物からなる調光層を有する高分子分散型液晶表示デバイスが知られている。
【0003】
従来の高分子分散型液晶表示デバイスには、光学ヒステリシスが大きいという問題がある。
光学ヒステリシスとは、印加電圧と光の透過率との関係において(印加電圧−光透過率曲線)、同一印加電圧での電圧上昇過程と電圧下降過程で、透過率が同じ軌跡を辿らない現象である。光学ヒステリシスの大きいデバイスは、階調表示が正しく行えない、あるいは表示の焼き付けを起こす等の不具合を生じる。特に印加電圧上昇時に透過率変化50%の透過率を与える電圧と印加電圧下降時に透過率変化50%の透過率を与える電圧の差として定義される光学ヒステリシスHS50(単位:mV)(以下、単にHS50と略す)は、中間調の階調表示性能に強い影響を与えることから、この低減が大きな課題となっていた。なおここで透過率変化50%の透過率(%)をT50(%)と表記すると、T50(%)は数式(a)で表される。
【0004】
【数1】

【0005】
(T100は光散乱型液晶デバイスに対してそれ以上透過率が変化しなくなるまで電圧を印加した場合の透過率(%)を表し、T0は電圧無印加状態における透過率(%)を表す。)
さらに、HS50(mV)は数式(b)で表される。
【0006】
【数2】

【0007】
(前記数式(a)、(b)において、Vr50(mV)は光散乱型液晶デバイスに対する印加電圧を無印加から上昇させていった時にT50(%)が得られる印加電圧を表し、Vd50(mV)は光散乱型液晶デバイスに対する印加電圧をV100(mV)から下降させていった時にT50(%)が得られる印加電圧を表す。V100(mV)はT100(%)における印加電圧を表す。)
【0008】
一般に、光散乱型液晶デバイスの光学ヒステリシスは、用いる重合性組成物と液晶組成物、及び形成されるポリマーネットワークの網目サイズあるいは液晶液滴径が同じであれば、光散乱型液晶デバイスのセルギャップの大きさに比例する。このため、最も簡単な光学ヒステリシスの低減手段は光散乱型液晶デバイスのセルギャップを小さくすることである。しかし光散乱型液晶デバイスのセルギャップを小さくすると、散乱強度が低下して良好な光学特性が得られなくなる。
【0009】
光学ヒステリシスを低減させるための対策として、調光層内の液晶滴径の平均を15μm以上とする手法が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし該手法では、光散乱型液晶デバイスのセルギャップが15μm以下の場合には実施不可能であった。またこの手法は、明確な液晶滴が存在しないポリマーネットワーク型液晶には適用できなかった。さらに、このように液晶滴径が大きくなると、ポリマーマトリックスと液晶液滴の界面が少なくなるために、散乱強度の低下や応答速度の低下を避けることができなかった。
また、ポリマーマトリックス中の液晶滴径を、基板界面とポリマーマトリックス内部で変化させることによって電気光学特性の急峻性を調整し、光学ヒステリシスの低減及び駆動電圧の低減の両者を図る提案もなされている(例えば特許文献2)。この方法は、各液晶液滴個々には光学ヒステリシスが存在することを容認したものであり、印加電圧−透過率変化挙動が異なる液晶液滴を共存させ急峻性を最適範囲とすることで、光学ヒステリシス低減を図ったものである。しかしこの方法は、光学ヒステリシスを液晶液滴単位で低減することはできないため、低減効果は十分ではなかった。
【0010】
また、使用する液晶分子の配向状態をバイポーラ配向とする提案もなされている。かかる提案では、液晶組成物の構成成分として分子長軸に対する側方位置に極性基を有する分子を用いる(例えば特許文献3)、あるいは、重合性組成物と液晶組成物とを相分離させた状態で重合性組成物を紫外線硬化させる、即ち調光層を形成する際の紫外線照射強度を制御して、基板と高分子分散型液晶との界面近傍を除く領域に位置する液晶滴をほぼ同一の形状と大きさとして、電圧無印加時における液晶滴内の液晶分子の配向形態をバイポーラ型とする(例えば特許文献4)、といった手段がとられている。
しかしながら、特許文献3のように、分子長軸方向に対する側方位置に極性基を有する液晶分子を液晶組成物中に含有させると、駆動電圧が上昇するという問題点があった。これを解消するために該デバイスのセルギャップを小さくしたり、液晶滴径を大きくすると、散乱強度が低下してしまう。また特許文献4においては紫外線照射強度が非常に強い条件であり、該紫外線により液晶分子が劣化してしまうといった問題があった。
さらにこれらの提案は、液晶滴内で液晶分子が水平に配向したバイポーラ配向状態を得ることを目的としているが、バイポーラ配向状態が得られたとしても依然として光学ヒステリシスが解消されない場合も数多く、光学ヒステリシスを効果的に低減できるようになったとは言い難い状況であった。
【0011】
【特許文献1】特開平11−344693号公報
【特許文献2】特開2000−137213号公報
【特許文献3】特開平10−195445号公報
【特許文献4】特開平10−232387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、光学ヒステリシスを本質的に低減すること、即ち、単位セルギャップ当たりの光学ヒステリシス、特に階調表示に重要な中間調域におけるHS50が小さい光散乱型液晶デバイスを提供することである。(以下、単位セルギャップ当たりの光学ヒステリシスを、単に光学ヒステリシスと略す。また、単位セルギャップ(μm)当たりのHS50(mV)をHS50/d(mV/μm)と略す。)
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために、まず光学ヒステリシスが発生する原因について鋭意検討した。
高分子化合物中に液晶を分散させた高分子分散型液晶表示デバイスにおいては、電圧無印加状態−(電圧印加過程)−印加状態−(電圧降下過程)−無印加状態の各状態における光散乱の強弱により表示を行なう。これらの状態および過程を説明すると、
1)電圧無印加状態
液晶分子は電圧無印加状態では、平均的にはあらゆる方向を向いているポリマーの主鎖または側鎖との相互作用により、あらゆる方向に対して平均的に配向している、所謂ランダムな配向をしている。このため、光散乱状態となる。
2)電圧印加過程
電圧無印加状態に電圧が印加されると、液晶分子はポリマーの主鎖または側鎖との相互作用を振り払って電界方向に配列しようとする。
この際、液晶−ポリマーの相互作用が強いと電圧−光透過率曲線は高電圧側にシフトする。
3)電圧降下過程
電界により電界方向に配列している液晶分子に対して、電界強度を弱める、または無印加にすると、液晶とポリマーの相互作用によるエネルギー安定化状態に戻ろうとする。
この際、液晶−ポリマーの相互作用が強いと安定化状態への戻りが促進され、電圧−光透過率曲線は高電圧側にシフトする。
一方、この相互作用が弱いと安定化状態への戻りが遅くなり、電圧−光透過率曲線は低電圧側にシフトする。
【0014】
このように、電圧−透過率曲線は、液晶分子とポリマーとの相互作用の大きさによりシフトすることがわかる。
このため、高分子分散型液晶表示デバイスを電気光学素子として利用する際の光学ヒステリシスは、液晶分子とポリマーの相互作用を制御することにより、電圧印加過程と電圧降下過程での電圧−光透過率曲線を一致させることにより低減させることができることがわかった。この考えの基づき多くの液晶分子とポリマー(特に側鎖型ポリマー)の組み合わせについて、電圧印加過程と電圧降下過程の電圧−光透過率曲線および光学ヒステリシスを測定して検討した結果、
1)液晶分子とポリマーの相互作用の大きさの平均値と、
2)液晶分子とポリマーの相互作用の大きさの不均一度とを
制御することによりヒステリシスを低減できることを見出した。
これらの知見により下記1)〜3)の指針に基づく発明を行い、本発明を完成するに至った。
1)液晶と強く相互作用が起こる主鎖領域と側鎖領域とを混在させる。
2)相互作用は全体の内の限られた少ない領域で、強い相互作用をしている方が好ましい。(立ち上がりには、大きな束縛にはならないが、立下りには、トリガーとして働く)
3)しかし、全体としての液晶とポリマーとの相互作用は、あまり大きくない。
(複数ある相互作用が相殺しているような状態が好ましい)
すなわち、液晶相と接するポリマー界面において、液晶分子に対して主鎖が強いアンカリング力がある部分と側鎖が強いアンカリング力がある部分が混在しており、前記の強いアンカリングを有する部分のポリマー全体に対する比率が特定の比率以下であり、ポリマー界面全体の平均としては主鎖若しくは側鎖のアンカリング力がバランスをとられているように、側鎖型ポリマーとして使用するラジカル重合性組成物をラジカル重合性化合物の特定の組み合わせとすることで、上記課題を解決した。
【0015】
即ち、本発明は、ラジカル重合性組成物及び液晶組成物を含有する調光層形成材料を重合させて得た調光層を有する光散乱型液晶デバイスにおいて、前記ラジカル重合性組成物が、一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物を少なくとも1種含む組成物であり、且つ、数式(1)および数式(3)を同時に満たすことを特徴とする光散乱型液晶デバイスを提供する。
【0016】
【化1】


(1)
【0017】
(式中、Rは炭素原子数3〜40のアルキル基を表す。但し、該アルキル基中の炭素原子は、
a)酸素原子が相互に直接に結合しないものとして−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、−OCONH−、又は炭素原子数6〜12のアリーレン基で置き換えられていてもよく、
b)置換基として炭素原子数1〜15のアルキル基を有していても良い。
【0018】
は、−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、−OCONH−、又は、アルキレン基(但し、該アルキレン基中の炭素原子は、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、−OCONH−、炭素原子数6〜12の脂環基、又は炭素原子数6〜12のアリーレン基で置き換えられていてもよい)で表され、Aが結合する2つの炭素原子間結合を辿ったときに含まれる結合数Na1が3〜40である連結基を表し、Aは、−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、−OCONH−、又は、アルキレン基(但し、該アルキレン基中の炭素原子は、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、−OCONH−、炭素原子数6〜12の脂環基、又は炭素原子数6〜12のアリーレン基で置き換えられていてもよい)を表し、
は、−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、−OCONH−、アルキレン基、アルキルトリイル基、又はアルキルテトライル基(但し、該アルキレン基、該アルキルトリイル基、又は該アルキルテトライル基中の炭素原子は、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、−OCONH−、炭素原子数6〜12の脂環基、又は炭素原子数6〜12のアリーレン基で置き換えられていてもよい)を表し、
−A−A−A−に含まれる結合数Na2が3〜40である連結基を表す。
【0019】
を表す。
は水素原子又はメチル基を表し、Bは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、複数あるR、A、A、A、B、及びBは、同じであってもよく、異なっていて良い。mは2〜4の整数を表す。)
【0020】
【数3】

(1)
【0021】
【数4】


(2)
【0022】
【数5】

(3)
【0023】
(数式(1)において、Δαは、前記ラジカル重合性組成物に含まれるラジカル重合性化合物から導き出された複数のαの、最大値α(αmax)と最小値α(αmin)の差を表し、αは、数式(2)から導き出される値を表す。数式(2)において、NR1R2は、前記一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物において、隣接する2つのRをR及びRとしたとき、及び、前記一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物が重合反応することにより形成される、隣接する2つのRをR及びRとしたときの、RおよびRが結合している炭素原子の間にある結合数を表す。NR1及びNR2は、RおよびRが結合している炭素原子からRおよびRの末端の炭素原子までの結合を辿ったときに含まれる結合の数を表す。但し、RおよびRが置換基を有する場合は、もっとも原子数の多い末端の炭素原子までの結合に含まれる結合数をNR1及びNR2とする。また、先端の原子が水素原子である場合はこれを数えない。Σ(αi×βi)は、前記ラジカル重合性組成物に含まれるラジカル重合性化合物から導き出された複数のαiに対して、一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物を含むラジカル重合性組成物に含まれるラジカル重合性化合物間の反応性がすべて同じと仮定した際に得られるαiの出現確率βiを乗じた、所謂期待値を、該重合体のすべてのαiに対して和した、理論値を表す。但し、B2とRを取り替えても前記定義を満たす場合は、前記結合数の多い方をRとする。)
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、光学ヒステリシスが本質的に小さく、焼き付きが起こりにくく、階調表示性能が高い光散乱型液晶デバイスを提供することができる。
具体的には、HS50/dを20(mV/μm)以下とすることができる。更に、HS50/dを10(mV/μm)とすることで、高階調度の表示を行うことも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(一般式(1))
前記一般式(1)において、Rは下記一般式(2)
【0026】
【化2】

(2)
【0027】
で表される基であることが好ましい。
一般式(2)中、Vは単結合、又は炭素原子数1〜5のアルキレン基を表す。中でも、単結合又は炭素原子数1のメチレン基が好ましい。
は単結合、−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、又は−OCONH−を表す。中でも、−O−、−CO−O−、又は−OCO−が好ましい。
【0028】
Wは炭素原子数3〜30のアルキル基をあらわす。また、該アルキル基は、置換基として、炭素原子数1〜15であり、且つWを構成する炭素原子数と同じ又は少ない数のアルキル基を有していてもよい。
W及びWの置換基に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−又は炭素原子数6〜12のアリーレン基で置き換えられていても良い。
Wは、具体的には、ノルマルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ノルマルオクチル基、ノルマルウンデシル基、ノルマルトリデシル基、ノルマルテトラデシル基、ノルマルオクタデシル基、2−n−ヘプチルノニル基、イソミリスチル基、2−エチルヘキシル基、ブトキシエチル基、ヘキシロキシエチル基、ノルマルブトキシエトキシメチル基、シクロヘキシル基、ポリエチレングリコールモノエーテル基、4−ノニルフェニレン基、4−オクチルシクロヘキシル基等があげられる。中でも、炭素数6〜20のアルキル基が好ましく、更に、アルキル基が直鎖アルキル基の場合は、炭素数7〜14の直鎖アルキル基がより好ましい、アルキル鎖が分岐鎖の場合は、炭素数9〜18の分岐アルキル基がより好ましい。
Wが、例えば、ノルマルウンデシル基、ノルマルトリデシル基等の炭素数6〜20の直鎖アルキル基であると、より低電圧で駆動可能な液晶デバイスを得ることができる。また。Wが、例えば、2−ノルマルヘプチル−ノニル基等の分岐アルキル基であると、駆動電圧の温度による変化の少ない液晶デバイスを得ることができる。
【0029】
前記一般式(1)において、Aが結合する2つの炭素原子間結合を辿った時に含まれる結合数Na1は、多すぎると一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物の重合速度が低下するため充分なネットワークが形成されず光散乱が弱くなってしまう。このためNa1は3〜20がより好ましく、3〜7が最も好ましい。
具体的には、−O−CH−、−O−CH−CH−CO−O−CH−、−O−CH−CHO−、又は−O−CH−CH(CH)O−が好ましい。
また、Aは、具体的には−CH−O−、−CH−OCO−、−CH−CO−O−又は−CH−が好ましい。
【0030】
前記一般式(1)において、Aは、mが2のときは、炭素数2〜30のアルキレン基(但し、該基中に存在し、Aと直接結合しない1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−、アリーレン基、又は炭素数3〜10のシクロアルキレン基で置き換えられていても良い)、炭素数6〜18のアリーレン基、炭素数3〜10のシクロアルキレン基、又は、−Y−R−Y− (但し、Yはアリーレン基又は炭素数3〜10のシクロアルキレン基を表し、Rは単結合又は炭素数1〜15のアルキレン基(但し、アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−で置き換えられていても良い)を表す。)を表す。mが3のときは、炭素数2〜30のアルキルトリイル基(但し、該基中に存在し、Aと直接結合しない1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−、アリーレン基、又は炭素数3〜10のシクロアルキレン基で置き換えられていても良い)を表す。mが4のときは、炭素数2〜30のアルキルテトライル基(但し、該基中に存在し、Aと直接結合しない1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−、アリーレン基、又は炭素数3〜10のシクロアルキレン基で置き換えられていても良い)であることが好ましい。また、Aは、原子数3以上の側鎖を有さないことが好ましい。
【0031】
前記Aの、mが2のときの具体例としては、ブチレン基、ヘキシレン基、オクタメチレン基、7,12−ジメチルオクタデシレン基、7−エチルヘキサデシレン基、2,2’−ジメチル−プロピレン基、繰り返し数が2〜10のポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリオキシテトラメチレン基、シクロヘキシレン基、ビフェニレンジイル基、
【0032】
【化3】

【0033】
(上記基中、p及びqは各々独立して1〜4の整数を表し、rは1〜3の整数を表す)等の基が挙げられる。
また、前記Aの、mが3のときの具体例としては、
【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
(上記基中、s及びtは各々独立して1〜2の整数を表す)等の基が挙げられる。
また、前記Aの、mが4のときの具体例としては、
【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
(上記基中、uは1〜2の整数を表す)等の基が挙げられる。
一般式(1)においてmは2であるとなお好ましい。また、その場合におけるRの好ましい例としては、Vがメチレン基、Xが−O−、−CO−O−、又は−OCO−、Wが炭素数2〜30のアルキレン基の組み合わせが最も好ましい。
【0041】
また、−A−A−A−に含まれる最小の結合数Na2が少なすぎると隣接する側鎖間の空間的干渉が非常に大きくなるため、側鎖の運動性が極端に低下する。この結果ポリマーの結晶性が高まり、低温における光散乱型液晶デバイスの駆動電圧が高くなるという問題が発生する。また、Na2が多すぎると一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物の重合速度が低下するため充分なネットワークが形成されず光散乱が弱くなってしまう。このためNa2の値は4〜35がより好ましく、6〜30がさらに好ましく、8〜25が最も好ましい。
【0042】
前記一般式(1)において、Bは水素原子又はメチル基を表す。中でも水素原子であることが、反応性の高さや合成のしやすさから特に好ましい。
は前記一般式(1)と同じ基であり、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ノルマルブチル基、ノルマルペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基を表す。なお、Bがアルキル基の場合、該炭素原子数は、前記Rの炭素原子数と同等であるかそれ未満である。
の部位に炭素数1〜5のアルキル基を導入することにより、0℃以下の極低温でも前記一般式(2)における−V−X−Wで表される基の運動性を保つことができる。更に、Bを炭素原子数1〜5のアルキル基とすることにより、前記Wが分岐アルキル基でも低駆動電圧化が図れる。従って、より低駆動電圧で、且つ、低温域における駆動電圧の上昇の少ない光散乱型液晶デバイスを得ることができる。Bの炭素数が5よりも大きくなるとアクリル基の重合性を阻害する恐れがある。
【0043】
一般式(1)において、複数あるR、A、A、A、B、及びBは、同じであってもよく、異なっていて良い。
【0044】
また、一般式(1)のラジカル重合性化合物は、Tetrahedoron Letters,Vol.30,pp4985、Tetrahedoron Letters,Vol.23,No6,pp681−684、及び、Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry,Vol.34,pp217−225等の公知の方法で合成することができる。
例えば、一般式(1)において、Bが水素であるラジカル重合性化合物は、エポキシ基を複数有する化合物と、エポキシ基と反応し得る活性水素を有するラジカル重合性化合物とを反応させ、水酸基を有するラジカル重合性化合物を合成し、次に、飽和脂肪酸とを反応させることにより得ることができる。
例えば、一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物が下記化合物の場合は
【0045】
【化9】

【0046】
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとアクリル酸とを、トリフェニルフォスフィンやN,N−ジメチルベンジルアミンの存在下、80〜120℃で反応させて、水酸基を有するラジカル重合性化合物を合成し、次に、水酸基を有するラジカル重合性化合物とラウリル酸をジシクロヘキシルカルボジイミドなどの脱水剤を用いたエステル化反応により得ることができる。
【0047】
更に、複数のエポキシ基を有する化合物と飽和脂肪酸とを反応させ、水酸基を有する化合物を合成し、次に水酸基と反応し得る基を有するラジカル重合性化合物とを反応させることにより得ることができる。
例えば、一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物が下記式(1−1)で表される化合物の場合は、
【0048】
【化10】

(1−1)
【0049】
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルと酪酸とをトリフェニルフォスフィンやN,N−ジメチルベンジルアミンの存在下80〜120℃で反応させて、水酸基を有するラジカル重合性化合物を合成し、次に、アクリル酸塩化物をトリエチルアミンの存在下で反応させることにより得ることができる。
【0050】
またラジカル重合性化合物が、例えば、一般式(1)のBがアルキル基であり、一般式(2)のVが炭素原子数1であるメチレン基である場合は、オキセタン基を複数有する化合物と、オキセタン基と反応し得る脂肪酸塩化物や脂肪酸とを反応させ、更に、アクリル酸などの活性水素を有する重合性化合物とを反応させる方法や、オキセタン基を一つ有する化合物と、オキセタン基と反応し得る多価の脂肪酸塩化物や脂肪酸とを反応させ、更に、アクリル酸などの活性水素を有する重合性化合物とを反応させる方法等により得ることができる。
また、一般式(2)のVが炭素原子数4であるブチレン基の場合は、オキセタン基の代わりにフラン基を複数有する化合物を用いることにより得ることができる。更に、一般式(2)のVが炭素原子数5であるペンチレン基の場合は、オキセタン基の代わりにピラン基を複数有する化合物を用いることにより得ることができる。
【0051】
例えば、一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物が下記式(1−2)で表される化合物の場合は、
【0052】
【化11】

(1−2)
【0053】
1,6−ヘキサンジオールのスルホン酸エステルと3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンを水酸化ナトリウムの存在下で反応させることにより3,3’−(1,6−ヘキサンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)を得ることができる。更にこの2官能のジオキセタン化合物とカプリン酸クロリドとをヨウ化ナトリウム、アセトニトリルの存在下、0℃で反応させ炭素数C9のメチレン鎖を有するヨード化合物を得る。次に、生成したヨード化合物とアクリル酸を1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセン−7の存在下でジメチルスルオキシドを溶媒に用い、90℃で12時間反応させることにより目的物を得ることができる。
【0054】
また、一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物が下記式(1−3)で表される化合物の場合は、
【0055】
【化12】


(1−3)
【0056】
ラウリルアルコールのスルホン酸エステルと3−エチル−3ヒドロキシメチルオキセタンを水酸化ナトリウムの存在下で反応させることにより3−エチル−3−ドデシルオキシオキセタンを得ることができる。更にこのオキセタン化合物とセバシン酸クロリドとをヨウ化ナトリウム、アセトニトリルの存在下、0℃で反応させ炭素数C11のメチレン鎖を有するヨード化合物を得る。次に、生成したヨード化合物とアクリル酸を1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセン−7の存在下でジメチルスルオキシドを溶媒に用い、90℃、12時間反応させることにより目的物を得ることができる。
【0057】
前記オキセタン基を有する化合物は、ハロゲン化合物とオキセタンアルコールとの反応、カルボン酸とオキセタンアルコールとの反応、アルコールとオキセタンアルコールのスルホン酸エステルとの反応、アルコールとオキセタンを有するハロゲン化合物との反応、ジメチロール化合物と炭酸ジメチルとの反応、等により得ることができる。アルコールとしては、1,6−ヘキサンジオール以外に、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコール、ダイマー酸ジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、エチレンオキサイド変性ビスフェノール、デカノール、ドデカノール、ウンデカノール、等が挙げられる。カルボン酸としては、セバシン酸、アジピン酸、イタコン酸、長鎖二塩基酸、ダイマー酸、カプリル酸、ラウリル酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、ウンデカン酸等が挙げられる。ハロゲン化合物としては、1,6−ジブロモヘキサン、1,4−ジブロモブタン、1−クロロヘキサン、1−クロロデカン等が挙げられる。
【0058】
オキセタン基と反応し得る脂肪酸塩化物や脂肪酸としては、カプリン酸クロリド以外に、カプリル酸クロリド、ラウリル酸クロリド、ステアリン酸クロリド、ミリスチン酸クロリド、イソミリスチン酸クロリド、パルミチン酸クロリド、ウンデカン酸クロリド、カプリル酸、ラウリル酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、ウンデカン酸、セバシン酸、アジピン酸、ダイマー酸、イタコン酸、セバシン酸、アジピン酸、イタコン酸等を使用することができる。
【0059】
前記活性水素を有するラジカル重合性化合物としては、アクリル酸以外に、例えば、メタクリル酸、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート等を使用することができる。また、オキセタンと脂肪酸との反応の場合は、アクリル酸塩化物、メタクリル酸塩化物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等を使用することができる。
【0060】
また、オキセタンアルコールの合成方法としては、例えば特開平11−012261号公報、特開平9−71545号公報等の公知の方法で合成することができる。具体的には、トリメチロールアルカンとジメチルカーボネートとを反応させる方法等により得ることができる。
例えばオキセタンアルコールが下記化合物の場合は、
【0061】
【化13】

【0062】
メチルターシャリーブチルエーテル中にヘキサナールとパラホルムアルデヒドとを水酸化ナトリウムの存在下で反応させ、トリメチロールブタンを合成する。更に、トリメチロールブタンと炭酸ジメチルを炭酸カリウムの存在下で反応させ、副生するメタノールを除去してカーボネート化を行った後に、200℃に加熱して脱炭酸することにより合成することができる。
【0063】
また、前記一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物が、例えば下記式(1−4)で表される化合物の場合は、
【0064】
【化14】

(1−4)
【0065】
ジブチル−1,3−プロパンジオールとアクリル酸クロリドをトリエチルアミンの存在下で反応させ、更にこの生成物とセバシン酸とを1−エチル−3−(3′−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩とジメチルアミノピリジンの存在下で塩化メチレン中に室温で8時間反応させることにより得ることができる。
【0066】
本発明で使用する一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、特開平6−32761号公報、特開平11−029527号公報に記載のような化合物が挙げられる。
【0067】
本発明で使用するラジカル重合性組成物は、上記一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物を少なくとも1種使用し、且つ、数式(1)及び数式(3)を同時に満たすように、モノマーを選択する。
【0068】
【数6】

(1)
【0069】
【数7】


(2)
【0070】
【数8】

(3)
【0071】
数式(2)において、αは、ポリマー界面における主鎖または側鎖のアンカリング力の程度を示す指標を表す。
図5に示すように、NR1R2は、前記一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物において、隣接する2つのRをR及びRとしたとき、及び、前記一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物が重合反応することにより形成される、隣接する2つのRをR及びRとしたときの、RおよびRが結合している炭素原子の間にある結合数を表す。また、NR1及びNR2は、RおよびRが結合している炭素原子からRおよびRの末端の炭素原子までの結合を辿ったときに含まれる結合の数を表す。(但し、RおよびRが置換基を有する場合は、もっとも原子数の多い末端の炭素原子までの結合に含まれる結合数をNR1及びNR2とする。また、先端の原子が水素原子である場合はこれを数えない。)
【0072】
これらの数値は次のように決定する。
R1、NR2:側鎖の付け根から先端までの側鎖骨格を形成する結合の数を数える。ただし先端の原子が水素原子である場合はこれを数えない。なお、本発明においてこの値が3未満の場合は側鎖とみなさない。
R1R2:R、R二本の側鎖間に挟まれた主鎖骨格を形成する結合の数を数える。
例えば図5の場合では、NR1=10、NR2=7、NR1R2=8であり、α=8−{(10−1)+(7−1)}/2=0.5 である。
【0073】
例えば、仮にポリマーマトリックスが、前記一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物1種のみで形成されたと考えると、NR1R2は、−A−A−A−の結合数、及び、−A−CO−CB(CHZ)−CH−CBZ−CO−A−の結合数となる(式中Zは隣接主鎖との連結基、又は二重結合と反応した後の重合開始剤を表す)。
具体的には、前記一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物が下記式(1−5)で表される化合物であり、該ラジカル重合性化合物のみでポリマーマトリックスが形成された場合、NR1R2の、−A−A−A−は、25であり、−A−CO−CB(CHZ)−CH−CBZ−CO−A−は、10である。
【0074】
【化15】


(1−5)
【0075】
また、前記一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物が、前記式(1−5)で表される化合物、及び下記式(1−6)で表される化合物であり、該2種のラジカル重合性化合物でポリマーマトリックスが形成された場合、NR1R2の、−A−A−A−は、25と8であり、
−A−CO−CB(CHZ)−CH−CBZ−CO−Aは、10である。
【0076】
【化16】

(1−6)
【0077】
定義から明らかなように、隣接するR、Rの二本の側鎖が側鎖間長の結合数に比べて小さくなるとαの値は増加し、逆に隣接するR、R二本の側鎖が側鎖間長の結合数に比べて大きくなるとαの値は減少する。同じく定義から明らかなように、αはポリマーマトリックスあるいはポリマーネットワーク中の任意の微小部分における側鎖長と側鎖間長の関係を示したものである。
ポリマー界面におけるアンカリング力はポリマー界面を形成するポリマー鎖の側鎖長と側鎖間長の関係と強い相関がある。すなわち、側鎖長に比べて側鎖間長が長くなると主鎖のアンカリング力が増大し、側鎖長に比べて側鎖間長が短くなると逆に主鎖のアンカリング力が減少する。さらに側鎖長に比べて側鎖間長が短くなるとその部分は側鎖のアンカリング力を有するようになり、その傾向がさらに顕著になるにつれ側鎖のアンカリング力が増大する。これは側鎖間すなわち主鎖の運動性は低く、側鎖の運動性は一般的にこれよりも著しく高いことに起因している。液晶分子は運動性の低い主鎖に対して水平に配向しやすい。従って液晶バルクからポリマー界面を見て、ポリマー主鎖が露出していればその部分に液晶分子が水平配向することになる。しかしながら、運動性の高い側鎖が存在するとその排除体積効果の及ぶ範囲では、液晶分子は主鎖に接近することができず主鎖に対して水平配向することができない。側鎖の排除体積効果の及ぶ範囲は側鎖長に比例しているため、側鎖長に比べて側鎖間長が長ければ長いほどすなわちαの値が正で大きいほどその部分は液晶分子に対する主鎖の水平アンカリング力が強いことになる。一方、側鎖長が隣接する側鎖間長よりも長くなるとその排除体積効果は側鎖間全体に及び、該側鎖間の主鎖の水平アンカリング力を完全に奪ってしまう。さらに側鎖長が側鎖間長よりも長くなると、次第に隣接する側鎖同士が空間的に干渉するようになり、その立体障害により両方の側鎖の運動性が損なわれる。この立体障害の程度が強まると側鎖はポリマー界面に対して垂直に立った運動性の低い状態に変化する。液晶分子はこの状態となった側鎖に対して平行に配向し、側鎖に対する水平アンカリングが強くなる。この配向は実質的には、ポリマー主鎖に対しては垂直配向することになる。すなわちαの値が負で大きいほど液晶分子と側鎖との水平アンカリングが強くなり、言い換えれば主鎖に対する垂直アンカリング力が強いことになる。
【0078】
なお、αの定義においてR、Rの各側鎖長の数値から−1しているのは、側鎖の付け根の結合は主鎖に対して垂直方向を向いていることから、排除体積効果によって主鎖を液晶分子から覆い隠すことに寄与しないため、この分を差し引いたものである。
【0079】
一方、数式(1)は、一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物を少なくとも1種含むラジカル重合性組成物から導き出された複数のαの、最大値α(αmax)と最小値α(αmin)の差を表す。
Δαが大きければ大きいほど光学ヒステリシスの低減効果が高くなる。Δαが大きいほどαが正で大きいか、負で大きいかとなるため、主鎖に対する水平アンカリング力の強い部分(αが正で大きい場合)または、側鎖に対する水平アンカリング力の強い部分(αが負で大きい場合)を導入できることになるから、電圧降過程における液晶分子が垂直配向状態から水平配向状態に戻る反応を鋭くすることができるためである。
【0080】
本発明の光散乱型液晶デバイスにおいては、主鎖に対して水平アンカリング力を有する部分のαは正の値、側鎖に対して水平アンカリング力を有する部分(主鎖に対して垂直アンカリング力を有する部分)のαは負の値を示す。ポリマーマトリックスあるいはポリマーネットワーク全体でこれらの主鎖に対して水平アンカリング力を有する部分と垂直アンカリング力を有する部分をどのような比率で存在させるかは光学ヒステリシスを低減させる上で重要である。両者のバランスが悪いと前記した光学ヒステリシス発生要因である電圧−光透過率曲線が電圧印加過程と電圧降下過程で異なった方向にシフトし、光学ヒステリシスが大きくなるからである。その指標が数式(3)である。
数式(3)において、Σ(αi×βi)は、一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物を少なくとも1種含むラジカル重合性組成物に含まれるラジカル重合性化合物から導き出された複数のαiに対して、ラジカル重合性組成物に含まれるラジカル重合性化合物間の反応性がすべて同じと仮定した際に得られるαiの出現確率βiを乗じた、所謂期待値を、該重合体のすべてのαiに対して和した、理論値を表す。
出現確率βiは、以下の式(9)により導き出される。
【0081】
【数9】

(9)
【0082】
式中、xiは、ポリマーマトリックスあるいはポリマーネットワーク全体の中に存在する全ての側鎖間のうち、αの値がαiである側鎖間の数の合計値を表す。またyは、ポリマーマトリックスあるいはポリマーネットワーク全体の中にある全ての側鎖間数を表す。異なる構造を持つにも関わらずαの値が同一である側鎖間パターンが複数ある場合は、これらのβiを個々に計算しても良いし、αの値が同一の側鎖間パターンをひとまとめにしてβiを求めても良い。
【0083】
以下具体例を挙げてΔα、Σ(αi×βi)の計算方法を説明する。例えばラジカル重合性化合物として下記式(1−7)で表されるラジカル重合性化合物と下記式(1−8)で表されるラジカル重合性化合物を混合させて使用し、その混合比率が、式(1−7)で表されるラジカル重合性化合物が20mol%、式(1−8)で表されるラジカル重合性化合物が80mol%であるラジカル重合性組成物を使用する場合を考える。説明上下記のように、式(1−7)で表されるラジカル重合性化合物の主鎖骨格を側鎖Rが結合した炭素の箇所で区切り、A部分〜C部分の3つの部分に分ける。同様に下記のように式(1−8)で表されるラジカル重合性化合物の化合物の主鎖骨格を側鎖Rが結合した炭素の箇所で区切り、D部分〜F部分の3つの部分に分ける。
【0084】
【化17】

(1−7)
【0085】
【化18】

(1−8)
【0086】
式(1−7)で表されるラジカル重合性化合物と式(1−8)で表されるラジカル重合性化合物を混合して重合させることにより、重合体中には以下ア)〜シ)の側鎖間パターンが生成しうる。
ア)A部分とA部分が結合して生成する側鎖間
イ)A部分とC部分が結合して生成する側鎖間
ウ)A部分とD部分が結合して生成する側鎖間
エ)A部分とF部分が結合して生成する側鎖間
オ)C部分とC部分が結合して生成する側鎖間
カ)C部分とD部分が結合して生成する側鎖間
キ)C部分とF部分が結合して生成する側鎖間
ク)D部分とD部分が結合して生成する側鎖間
ケ)D部分とF部分が結合して生成する側鎖間
コ)F部分とF部分が結合して生成する側鎖間
サ)B部分
シ)E部分
【0087】
式(1−7)で表されるラジカル重合性化合物のA部分とC部分は同一構造であり、式(1−8)で表されるラジカル重合性化合物のD部分とF部分は同一構造であるから、上記ア)〜シ)は下記1)〜5)のようにまとめることができる。
1)AまたはC部分と、AまたはC部分が結合して生成する側鎖間、即ち、ア)、イ)、オ)
2)AまたはC部分と、DまたはF部分が結合して生成する側鎖間、即ちウ)、エ)、カ)、キ)
3)DまたはF部分と、DまたはF部分が結合して生成する側鎖間即ちク)、ケ)、コ)
4)B部分即ちサ)
5)E部分即ちシ)
上記1)〜5)の側鎖間パターンについてそれぞれαを計算すると表1のようになる。
【0088】
【表1】

【0089】
このとき、αの最大値は側鎖間パターン4)の8である。αの最小値は側鎖間パターン3)と5)の−3である。従ってΔα=8−(−3)=11となる。
【0090】
各側鎖間パターンの出現確率βiは次のようにして求める。
ラジカル重合性化合物全体に占める式(1−7)で表されるラジカル重合性化合物のモル分率は0.2である。同様に式(1−8)で表されるラジカル重合性化合物のモル分率は0.8である。式(1−7)で表されるラジカル重合性化合物一個に含まれるA〜C部分の数はそれぞれ一個づつである。式(1−8)で表されるラジカル重合性化合物一個に含まれるD〜F部分の数はそれぞれ一個づつである。従ってラジカル重合性化合物全体のモル数をγとするとその中に存在するA〜F部分のモル数は表2のようになる。
【0091】
【表2】

【0092】
式(1−7)で表されるラジカル重合性化合物と式(1−8)で表されるラジカル重合性化合物の重合速度が同じであり、重合により生成する1)〜3)の側鎖間の数が重合体の末端の数よりも充分に多いとすると、表2から重合後に存在する上記1)〜5)の側鎖間パターンのモル数は下のように計算される。
1)0.4γ×0.4γ/(0.4γ+1.6γ)=0.08γ
3)1.6γ×1.6γ/(0.4γ+1.6γ)=1.28γ
2)上記1)と3)の結果を使って以下のように計算する。
(0.4γ+1.6γ)−(0.08γ+1.28γ)=0.64γ
4)0.2γ
5)0.8γ
計算結果を下記表3にまとめる。
【0093】
【表3】

【0094】
前述したようにβiは下記数式(9)から求める。
【0095】
【数10】

(9)
【0096】
(上式(9)中、xiはαの値がαiである側鎖間の数の合計値、yはポリマーマトリックスまたはポリマーネットワーク全体の中に含まれる全ての側鎖間の数の合計値。)
【0097】
側鎖間パターン3)と5)はαが同じであるが、ここではそれぞれ分けてβiを求める。(βiの算出の際このようにαの値が同一であって構造が異なった側鎖間パターンが複数ある場合、それらのβiを個々に計算しても良いし、αの値が同一である側鎖間パターンをひとまとめにして計算しても良い。)すると側鎖間パターン1)〜5)のxiはそれぞれ表3の計算結果の通りとなる。yはこれらの合計値であるから
y=0.08γ+0.64γ+1.28γ+0.2γ+0.8γ=3γ
となる。表3に示したxiと上記yの計算結果を数式(9)に代入することによって、側鎖間パターン1)〜5)のβiは表4のように計算される。
【0098】
【表4】

【0099】
側鎖間パターン1)〜5)のαiは表1に示したαの値のとおりである。これと表4のβi計算結果から各側鎖間パターンの(αi×βi)を計算すると表5のようになる。
【0100】
【表5】

【0101】
Σ(αi×βi)は、表5の側鎖間パターン1)〜5)の(αi×βi)を全て合計することによって計算される。この場合は下記のようになる。
Σ(αi×βi)=0.081+0−1.281+0.536−0.801
=−1.465
【0102】
このようにして得られたΣ(αi×βi)が数式(3)を満たす、即ち、−3.16以上、2.00以下となるように光散乱型液晶デバイスを製造すれば、光学ヒステリシスを小さくすることができる。言い換えると、前記数式(2)及び(3)は、光学ヒステレシスを低減する方法の指標とすることができ、前記数式(2)及び(3)を同時に満たすように前記ラジカル重合性組成物を調整する方法は、光学ヒステリシスの小さい光散乱型液晶デバイスを得る方法として有用である。
具体的には、Δαが5以上であって、(α×β)合計が−3.16以上、2.00以下になるようにすれば、HS50/dを20(mV/μm)以下にすることができる。
さらに、上記条件で、Δαを12以上とすると、HS50/dを10(mV/μm)以下にすることができる。
Σ(αi×βi)は、中でも、−1.79以上、2.00以下の範囲とすることが好ましく、より光学ヒステリシスを低減することができる。
【0103】
本発明においては、Δαの値は大きければ大きいほど光学ヒステリシス低減効果が高くなるため好ましい。しかしながら側鎖長が骨格を形成する結合数(先端の水素原子は含まない)にして20以上になると低温環境において光散乱型液晶デバイスの駆動電圧が上昇しやすくなる。従って、この低温駆動電圧の観点から側鎖長は19以下とすることが好ましく、17以下とすることが最も好ましい。それに伴って実際上選択できるαの値には好ましい下限がある。また、側鎖間長を長くすることは架橋点間長を長くすることにもなっている。架橋点間長が長くなりすぎると重合速度が極端に低下し、最悪の場合相分離しなくなるため、あまり長くしすぎることはできない。このような観点から側鎖間長は35以下とすることが好ましい。このため実際上選択できるαの値には好ましい上限がある。
【0104】
本発明において、前記数式(1)〜(3)を満たすことで、何故光学ヒステレシスが低減できるかを推定した。
上記上記数式(1)〜(3)を満たすことは、主鎖に対するアンカリング又は側鎖に対するアンカリングが大きい部分があるが、全体としての平均アンカリングは大きくないようにすることである。即ち、ポリマー界面の中でアンカリング力の分布を不均一にすることである。このような構成とする理由の一つとして、ポリマー界面全体でアンカリング力の分布が均一である場合、前述した光学ヒステリシス発生要因である電圧印加過程での電圧−光透過率曲線のシフトと電圧降下過程での電圧−光透過率曲線のシフトを最適化できないことが挙げられる。すなわち光学ヒステリシス発生要因である電圧印加過程と電圧降下過程での電圧−光透過率曲線のシフトを最適に制御するためには電圧印加過程ではポリマーの主鎖または側鎖に対する水平アンカリング力が一定の水準より弱く、電圧降下過程には上記水平アンカリング力が一定の水準より強いという相反する条件を満たさなければならない。
【0105】
本発明による光散乱型液晶デバイスは、ポリマー界面の中の限られた主鎖または側鎖の部分が強い水平アンカリング力を持つ。この限られた部分では、電圧印加により大半の液晶分子が主鎖または側鎖に対して垂直に立ち上がった後も、ポリマー界面近傍の液晶分子の水平配向性が維持される。このため電圧降下時にこの水平配向した液晶分子が他の大半の液晶分子をポリマー界面に対して水平に戻すトリガーとして働き、印加電圧−光透過率曲線が低電圧側にシフトすることを防ぐことにより、光学ヒステリシスの発生が抑制される。この強い水平アンカリング力を持つ部分の、ポリマー界面全体における存在比率は高くないため、この部分の水平アンカリング力が他の大半の液晶分子が昇電圧時に立ち上がることを妨げようとする束縛力として働くことは少ない。加えて、ポリマー界面の中には主鎖と側鎖(主鎖に対して垂直)に対するアンカリング力を持つ部分が混在するため、前記水平アンカリング力を持つ部分に接する液晶分子が電圧印加時に他の大半の液晶分子の立ち上がりを妨げようとする力は一層減じられる。このようにして本発明による光散乱型液晶デバイスでは前記光学ヒステリシスの電圧印加過程および電圧降下過程における電圧−光透過率曲線のシフトを最適に制御することができると考えられる。
【0106】
本発明においては、調光層形成材料に使用するラジカル重合性組成物を、前記一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物を少なくとも1種含み、かつ、前記数式(1)〜(3)を満たすように、組成物を構成するラジカル重合性化合物を選択して得る。従って、この範囲であれば、若干の公知慣用のラジカル重合性化合物を共重合させることは問題ない。
ラジカル重合性化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリテトラエチレングリコールジマレイミド等や、1,11−ジアクリロイルオキシ−2,10−ジドデカノイルオキシ−6,6−ジメチル−4,8−ジオキサウンデカン、1,14−ジアクリロイルオキシ−2,10−ジドデカノイルオキシ−4,11−ジオキサテトラデカン、1,14−ジアクリロイルオキシ−2,10−ジテトラデカノイルオキシ−4,11−ジオキサテトラデカン、1,14−ジアクリロイルオキシ−2,10−ジヘキサノイルオキシ−4,11−ジオキサテトラデカン、2,13−ジアクリロイルオキシ−1,14−[ジ(2−n−ヘプチルウンデカノイルオキシ)]−4,11−ジオキサテトラデカン、2,13−ジアクリロイルオキシエチル−1,14−ジエチル−1,14−ウンデカノイルオキシ−4,11−ジオキサテトラデカン、2,13−ジアクリロイルオキシエチル−1,14−ジメチル−1,14−ドデカノイルオキシ−4,11−ジオキサテトラデカン、13,22−ジアクリロイルオキシエチル−13,22−ジエチル−15−オキシカルボニル―20−カルボニルオキシ−11,24−ジオキサテトラトリアコンタン、等が挙げられる。これらのラジカル重合性化合物の配合率としては、一般式(1)のラジカル重合性化合物の合計量に対して、30%以下とすることが好ましく、20%以下とすることが最も好ましい。
【0107】
また、重合させる際には、重合開始剤を使用するのが好ましい。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤やイオン重合触媒を使用できる。ラジカル重合開始剤としては、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−イソプロピルチオキサントン等のラジカル光重合開始剤や、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル熱重合開始剤が挙げられる。またイオン重合触媒としては、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム等のルイス酸、燐酸等のプロトン酸等のカチオン重合触媒、アルキルリチウム、グリニャール試薬等のアニオン重合触媒等が挙げられる。これらの重合開始剤の添加率はラジカル重合性化合物の全量に対し0.01〜10%が好ましく、1〜5%がより好ましい。
【0108】
その他、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、非反応性のオリゴマーや無機充填剤、有機充填剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、シランカップリング剤等を適宜、添加しても良い。
【0109】
本発明で使用する液晶組成物は、液晶化合物としては通常この技術分野で液晶相と認識される相を示す化合物および組成物であり、中でも、液晶相としてネマチック液晶、コレステリック液晶、カイラルネマチック液晶を発現するものが好ましい。そのような液晶相を示すものとしては、例えば、安息香酸エステル系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、ビフェニル系、ターフェニル系、フェニルシクロヘキサン酸系、ピリミジン系、ピリジン系、ジオキサン系、シクロヘキサンシクロヘキサンエステル系、トラン系、アルケニル系、フルオロ系、シアノ系、ナフタレン系等の液晶化合物からなる組成物や、該液晶化合物を含有する組成物が挙げられる。
【0110】
中でも、下記に示した一般式(I−a)および(I−b)の液晶化合物を用いることにより、アクティブ素子にて駆動可能な高分子分散型液晶デバイスを得ることができる。
一般式(I-a)及び一般式(I-b)
【0111】
【化19】

【0112】
(式中、R11及びR12はそれぞれ独立して、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよく、A11及びA12はそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基を表し、該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができ、X11及びX17はそれぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、イソシアネート基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はジフルオロメトキシ基を表し、X12からX16及びX18からX22はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を表し、Z11及びZ13はそれぞれ独立して、単結合又は−CH2−CH2−を表し、Z12及びZ14はそれぞれ独立して、単結合、−CH2−CH2−又は−CF2O−を表し、n11及びn12は0又は1を表す。)
更に一般式(I-c)とを併用することもできる。
【0113】
【化20】

【0114】
(式中、R21は炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよく、A21は1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基を表し、該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができ、Z21は単結合又は−CH2−CH2−を表し、X51は、炭素原子数1から20のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)、フッ素原子、塩素原子、イソシアネート基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基又は一般式(I−d)を表し、
【0115】
【化21】

【0116】
(式中、A22は1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基を表し、該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができ、X60は、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)、フッ素原子、塩素原子、イソシアネート基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、又はジフルオロメトキシ基基を表す。)
52からX57はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、メチル基、メトキシ基又はエチル基を表し、
10は0又は1を表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物を少なくとも一種類含有することが望ましい。
【0117】
本発明の光散乱型液晶デバイスは、例えば、透明電極層を有し少なくとも片方が透明であり、該透明電極層を対向させた状態でスペーサー等を使用して一定間隔を保った2枚の基板間に、ラジカル重合性化合物と、液晶組成物との混合物を挟持させ、相分離させることで得られる。
前記液晶組成物とラジカル重合性組成物との配合比は、所望の電気光学特性に応じて調整することができ、59:41〜89:11の範囲が好ましく、63:36〜75:25の範囲がより好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤を用いることができるが、光重合開始剤が好ましい。具体的には以下の化合物が好ましい。
ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系;
ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル系;
ベンゾフェノン、ο−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;
2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;
ミヒラーケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;
10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が好ましい。
この中でも、ベンジルジメチルケタールが最も好ましい。
【0118】
透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムチンオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより得ることができる。また、低波長分散の透明性基板を用いることにより本発明のデバイスの光散乱能が高まり反射率やコントラストが向上してより好ましい。低波長分散の透明性基板としては、ホウケイ酸硝子や、ポリエチレンテレフタレートまたはポリカーボネート等のプラスチック透明フィルム、1/4λの光干渉条件を使用した誘電体多層膜をコートした透明性基板が挙げられる。
【0119】
また、該基板上には、必要に応じて、高分子膜や、配向膜やカラーフィルターを配置することもできる。配向膜としては、例えば、ポリイミド配向膜、光配向膜等が使用できる。配向膜の形成方法としては、例えばポリイミド配向膜の場合、ポリイミド樹脂組成物を該透明基板上に塗布し、180℃以上の温度で熱硬化させ、更に綿布やレーヨン布でラビング処理することで得ることができる。また、ラビング処理を施していないポリイミド膜等の高分子膜も用いることもできる。更に、片側の基板にはシリコン等の不透明な材料でも良い。
【0120】
カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法、又は、染色法等によって作成することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作成方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作成することができる。その他、該基板上に、TFT、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属比抵抗素子等の能動素子を設けた画素電極を設置してもよい。
【0121】
前記基板を、透明電極層が内側となるように対向させる。その際、スペーサーを介して、基板の間隔を調整してもよい。このときは、得られる調光層の厚さが1〜100μm、中でも2〜50μmとなるように、該基板の間隔を調整することが好ましい。スペーサーとしては、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子、フォトレジスト材料等が挙げられる。その後、エポキシ系熱硬化性組成物等のシール剤を、液晶注入口を設けた形で該基板にスクリーン印刷し、該基板同士を貼り合わせ、加熱しシール剤を熱硬化させる。
【0122】
得られた液晶セルに前記調光層形成材料を封入し、調光層形成材料中の液晶組成物を等方性液体状態に保持した状態で光照射又は加熱、冷却することで、本発明の光散乱型液晶デバイスを作成することができる。作製方法としては、特に限定はなく、紫外線、可視光線、高周波等のエネルギー線を利用することができる。中でも紫外線を用いたラジカル重合性化合物の重合を利用する方法は、調光層形成材料を等方性液体状態に保持した状態で瞬間的にラジカル重合性化合物の重合を進行させるので、調光層内の平均空隙間隔を均一な大きさにでき、且つ3次元ネットワーク状のポリマーマトリックスを得ることができるので、より好ましい。すなわち、該ポリマーマトリックスが3次元ネットワーク状となることで、得られる液晶デバイスの電気光学特性がより向上する。
【0123】
また、本発明の液晶デバイスの裏面側に光吸収層や、拡散反射板等を配置することもでき、反射率とコントラストの高い反射型光散乱型液晶デバイスが得られる。また、シアン・マゼンタ・イエロー等の光吸収波長の異なる光吸収層を各色別に分割した画素電極の位置に一致するように配置すると、カラー表示が可能である。鏡面反射、拡散反射、再帰性反射、ホログラム反射等の機能を付加することもできる。
【実施例】
【0124】
以下、合成例及び実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0125】
(合成例)
(中間体1)
撹拌装置、及び温度計を備えた反応容器に、1−ブロモドデカン30g(0.12モル)、テトラブチルアンモニウムブロミド1.9g、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成社製:OXT−101)28g(0.24モル)、およびジメチルスルオキシド200mlを加え、50%水酸化カリウム水溶液26.5gをゆっくり滴下した。滴下終了後は、室温で4時間撹拌して反応を終了した。反応液に酢酸エチルを1L加えた後に5%炭酸ナトリウム、純水、飽和食塩水の順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムにより精製を行い式(1)で表される中間体1を24g得た。
【0126】
【化22】

(1)
【0127】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:4.45−4.40(dd,4H),3.56(s,2H),3.45(t、2H),1.75(m,2H),1.59(m,2H),1.26(m,18H),0.88(t,6H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:78.6,73.4,71.6,44.3,43.4,31.9,29.5,29.4,29.3,26.7,26.1,22.7,14.0,8.2
【0128】
(中間体2)
撹拌装置、及び温度計を備えた反応容器に、1−ブロモウンデカン40g(0.17モル)、テトラブチルアンモニウムブロミド2.7g、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成社製:OXT−101)30g(0.25モル)、およびジメチルスルオキシド200mlを加え、50%水酸化カリウム水溶液23.5gをゆっくり滴下した。滴下終了後は、室温で4時間撹拌して反応を終了した。反応液に酢酸エチルを1L加えた後に5%炭酸ナトリウム、純水、飽和食塩水の順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムにより精製を行い式(2)で表される中間体2を30g得た。
【0129】
【化23】

(2)
【0130】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:4.45−4.40(dd,4H),3.56(s,2H),3.45(t、2H),1.75(m,2H),1.59(m,2H),1.26(m,16H),0.88(t,6H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:78.6,73.4,71.6,44.3,43.4,31.9,29.5,29.4,29.3,26.7,26.1,22.7,14.0,8.2
【0131】
(中間体3)
撹拌装置、及び温度計を備えた反応容器に、1−ブロモヘキサン20g(0.12モル)、テトラブチルアンモニウムブロミド1.9g、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成社製:OXT−101)28g(0.24モル)、およびジメチルスルオキシド200mlを加え、50%水酸化カリウム水溶液26.5gをゆっくり滴下した。滴下終了後は、室温で4時間撹拌して反応を終了した。反応液に酢酸エチルを1L加えた後に5%炭酸ナトリウム、純水、飽和食塩水の順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムにより精製を行い式(3)で表される中間体3を14g得た。
【0132】
【化24】


(3)
【0133】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:4.45−4.40(dd,4H),3.56(s,2H),3.45(t、2H),1.75(m,2H),1.59(m,2H),1.26(m,6H),0.88(t,6H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:78.6,73.4,71.6,44.3,43.4,31.9,29.5,29.3,26.1,22.7,14.0,8.2
【0134】
(中間体4)
撹拌装置、窒素導入管、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオール23.6g(0.2モル)、トリエチルアミン44.5g(0.44モル)、テトラメチルエチレンジアミン(0.04モル)4.6gおよびトルエン500mlを入れ、5℃以下になるように氷水バスで冷却しながら撹拌した。p−トルエンスルホニウムクロリド80g(0.42モル)を5回に分けて1時間添加した。添加終了後、室温で反応容器を3時間撹拌した後反応を終了した。生成する塩酸塩を濾過した後、反応液を1/10Nの塩酸溶液、純水、飽和食塩水の順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去して、1,6−ヘキサンジオールジトシレートの白色固体を83.6g得た。
次いで、撹拌装置、及び温度計を備えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオールジトシレート50g(0.12モル)、テトラブチルアンモニウムブロミド4g、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成社製:OXT−101)41g(0.35モル)、およびジメチルスルオキシド150mlを加え、50℃で溶解させた後に、粒状の水酸化ナトリウム 18.7g(0.47モル)を5回に分けて1時間かけて添加した。添加終了後に反応容器を80℃に加熱して3時間撹拌して反応を終了した。反応液に酢酸エチルを1L加えた後に5%炭酸ナトリウム、純水、飽和食塩水の順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去して、式(4)で表される中間体4を30g得た。
【0135】
【化25】


(4)
【0136】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:4.45−4.40(dd,8H),3.56(s,4H),3.45(t、4H),1.70(m,4H),1.60(m,4H),1.38(m,4H),0.88(t,6H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:73.4,71.5,44.3,43.4,32.7,29.5,26.8,26.2,26.0,25.5,8.2
【0137】
(合成例1)
撹拌装置、窒素導入管、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、長鎖二塩基酸であるIPS−22(岡村製油社製)5g、テトラヒドロフラン20ml、ジメチルホルムアミド2滴を仕込み、室温で撹拌した。次いでオキザリルクロリド1.8g(0.014モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で4時間撹拌しながら発生する塩化水素を除去する。その後、反応容器を減圧し、テトラヒドロフラン、塩化水素を除去して、長鎖二塩基酸塩化物(IPS−22Cl)7.8gを得た。
更に撹拌装置、窒素導入管、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、前記の中間体1を6g(0.021モル)、ヨウ化ナトリウム3.5g(0.023モル)、およびアセトニトリルを50ml入れ、5℃以下になるように氷水バスで冷却しながら撹拌した。次いで上記で合成したIPS−22Cl 4.5gをゆっくり滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌した後に、更に室温で3時間撹拌して反応を終了した。反応容器に少量の水を加えた後にヘキサン/酢酸エチル=1/1溶液を100ml加え、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液 200mlでヨウ素を分解した。更に純水、飽和食塩水の順で有機層を洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に、有機溶媒を減圧留去して中間体M−1を10g合成した。
【0138】
次いで、撹拌装置、温度計を備えた反応容器に、上記の方法で合成した中間体M−1 4g(0.003モル)、アクリル酸1g(0.013モル)、p−メトキシフェノール6mg、およびジメチルスルオキシド40mlを入れ、室温で撹拌しながら1,8―ジアザビシクロ[5,4,0]7−ウンデセン(以下DBUと略す)を2.1g(0.013モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を90℃に加熱し、12時間撹拌して反応を終了した。反応容器にヘキサン/酢酸エチル=1/1 100ml加え、1/10Nの塩酸溶液、5%水酸化ナトリウム溶液、純水、飽和食塩水の順で有機層を洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機層の溶媒を減圧留去した後、濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、ラジカル重合性化合物「M1」を3g得た。
【0139】
【化26】


(M1)
【0140】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:6.43(d,2H),6.12(q,2H),5.84(d,2H),4.21(s,4H)4.07(s,4H),3.37(t,4H),3.32(s,4H),2.32(t,4H),1.75−1.38(m,8H),1.25(m,66H),0.87(t,18H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:173.6,165.9,130.6,128.3,71.6,70.4,64.7,64.4,41.5,34.3,32.731.9,29.6−29.2,26.9,26.1,25.0,23.0,22.6,14.0,7.4
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1733,1652−1622,1190,808.9
【0141】
(合成例2)
撹拌装置、窒素導入管、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、前記の中間体1を6.7g(0.024モル)、ヨウ化ナトリウム3.9g(0.026モル)、およびアセトニトリルを50ml入れ、5℃以下になるように氷水バスで冷却しながら撹拌した。次いで、ジメチルマロン酸クロリド 2g(0.012モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌した後に、更に室温で3時間撹拌して反応を終了した。反応容器に少量の水を加えた後にヘキサン/酢酸エチル=1/1溶液を100ml加え、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液 200mlでヨウ素を分解した。更に純水、飽和食塩水の順で有機層を洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に、有機溶媒を減圧留去して中間体M−2を7g合成した。
【0142】
次いで、撹拌装置、温度計を備えた反応容器に、上記の方法で合成した中間体M−2 7g(0.008モル)、アクリル酸2.2g(0.030モル)、p−メトキシフェノール 14mg、およびジメチルスルオキシド100mlを入れ、室温で撹拌しながらDBUを4.6g(0.030モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を90℃に加熱し、12時間撹拌して反応を終了した。反応容器にヘキサン/酢酸エチル=1/1 100ml加え、1/10Nの塩酸溶液、5%水酸化ナトリウム溶液、純水、飽和食塩水の順で有機層を洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機層の溶媒を減圧留去した後、濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、ラジカル重合性化合物「M2」を5g得た。
【0143】
【化27】

(M2)
【0144】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:6.42(d,2H),6.12(q,2H),5.84(d,2H),4.08(s,8H),3.35(t,4H),3.27(s,4H),1.63−1.38(m,14H),1.25(m,36H),0.87(t,12H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:172.2,165.8,130.7,128.2,71.6,70.4,65.4,64.7,64.6,50.2,41.7,31.9,29.5−29.3,26.1,23.1,22.7,14.0,7.4
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1733,1652−1622,1190,808.9
【0145】
(合成例3)
合成例2と同様な反応容器に、前記の中間体3を6.5g(0.032モル)、ヨウ化ナトリウム5.3g(0.036モル)、およびアセトニトリルを50ml入れ、5℃以下になるように氷水バスで冷却しながら撹拌した。次いで、セバシン酸クロリド 4g(0.017モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌した後に、更に室温で3時間撹拌して反応を終了した。反応容器に少量の水を加えた後にヘキサン/酢酸エチル=1/1溶液を100ml加え、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液 200mlでヨウ素を分解した。更に純水、飽和食塩水の順で有機層を洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に、有機溶媒を減圧留去して中間体M−3を10g合成した。
【0146】
次いで、合成例2の中間体M−2の代わりに上記中間体M−3 10g(0.012モル)を用いた以外は同様にして、アクリル酸 3.5g(0.048モル)、p−メトキシフェノール 14mg、およびジメチルスルオキシド100mlを入れ、室温で撹拌しながらDBUを7.4g(0.048モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を90℃に加熱し、12時間撹拌して反応を終了した。反応容器にヘキサン/酢酸エチル=1/1 100ml加え、1/10Nの塩酸溶液、5%水酸化ナトリウム溶液、純水、飽和食塩水の順で有機層を洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機層の溶媒を減圧留去した後、濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、ラジカル重合性化合物「M3」を6g得た。
【0147】
【化28】

(M3)
【0148】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:6.41(d,2H),6.12(q,2H),5.84(d,2H),4.10(s,4H)3.99(s,4H),3.35(t,4H),3.29(s,4H),2.29(t,4H),1.6−1.46(m,12H),1.25(s,20H),0.87(t,12H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:173.6,165.9,130.7,128.4,71.7,70.4,64.7,64.4,41.5,34.3,31.6,29.5−29.1,25.8,24.9,23.1,22.6,14.0,7.5
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1733,1652−1622,1190,808.9
【0149】
(合成例4)
合成例2と同様な反応容器に、前記の中間体1を12g(0.042モル)、ヨウ化ナトリウム6.9g(0.046モル)、およびアセトニトリルを70ml入れ、5℃以下になるように氷水バスで冷却しながら撹拌した。次いで、グルタル酸クロリド 3.7g(0.022モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、合成例2と同様な操作を行い、中間体M−4を17g合成した。
【0150】
次いで、合成例2の中間体M−2の代わりに上記中間体M−4 16g(0.017モル)を用いた以外は同様にして、アクリル酸 5.0g(0.070モル)、p−メトキシフェノール 30mg、およびジメチルスルオキシド200mlを入れ、室温で撹拌しながらDBUを10.5g(0.070モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、合成例2と同様な操作を行い、シリカゲルクロマトグラフィー精製により、ラジカル重合性化合物「M4」を7.4g得た。
【0151】
【化29】

(M4)
【0152】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:6.41(d,2H),6.12(q,2H),5.84(d,2H),4.10(s,4H)4.00(s,4H),3.34(t,4H),3.28(s,4H),2.37(t,4H),1.92(m,2H),1.63(m,8H),1.25(s,36H),0.87(t,12H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:172.6,165.9,130.7,128.3,71.7,70.4,64.7,64.4,41.5,33.2,31.9,29.6−29.3,26.1,23.0,22.6,14.0,7.5
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1733,1652−1622,1190,808.9
【0153】
(合成例5)
合成例2と同様な反応容器に、前記の中間体1を10g(0.035モル)、ヨウ化ナトリウム5.8g(0.039モル)、およびアセトニトリルを70ml入れ、5℃以下になるように氷水バスで冷却しながら撹拌した。次いで、コハク酸クロリド 2.9g(0.018モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、合成例2と同様な操作を行い、中間体M−5を14g合成した。
【0154】
次いで、合成例2の中間体M−2の代わりに上記中間体M−5 14g(0.015モル)を用いた以外は同様にして、アクリル酸 4.4g(0.061モル)、p−メトキシフェノール 25mg、およびジメチルスルオキシド200mlを入れ、室温で撹拌しながらDBUを9.3g(0.061モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、合成例2と同様な操作を行い、シリカゲルクロマトグラフィー精製により、ラジカル重合性化合物「M5」を5.0g得た。
【0155】
【化30】

(M5)
【0156】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:6.42(d,2H),6.12(q,2H),5.84(d,2H),4.10(s,4H)4.02(s,4H),3.34(t,4H),3.29(s,4H),2.37(s,4H),1.64−1.38(m,8H),1.25(m,36H),0.87(t,12H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:171.9,165.9,130.7,128.3,71.7,70.4,64.9,64.6,41.5,31.9,29.6−29.0,26.1,23.0,22.6,14.0,7.4
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1733,1652−1622,1190,808.9
【0157】
(合成例6)
合成例2と同様な反応容器に、前記の中間体3を10g(0.050モル)、ヨウ化ナトリウム8.2g(0.055モル)、およびアセトニトリルを70ml入れ、5℃以下になるように氷水バスで冷却しながら撹拌した。次いで、スベリル酸クロリド 5.5g(0.026モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、合成例2と同様な操作を行い、中間体M−6を17g合成した。
【0158】
次いで、合成例2の中間体M−2の代わりに上記中間体M−6 17g(0.021モル)を用いた以外は同様にして、アクリル酸 6.2g(0.085モル)、p−メトキシフェノール 36mg、およびジメチルスルオキシド250mlを入れ、室温で撹拌しながらDBUを13.0g(0.085モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、合成例2と同様な操作を行い、シリカゲルクロマトグラフィー精製により、ラジカル重合性化合物「M6」を6.5g得た。
【0159】
【化31】

(M6)
【0160】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:6.41(d,2H),6.12(q,2H),5.84(d,2H),4.14(s,4H)4.07(s,4H),3.35(t,4H),3.29(s,4H),2.29(t,4H),1.63−1.43(m,12H),1.25(m,16H),0.87(t,12H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:173.4,165.9,130.7,128.3,71.6,70.4,64.7,64.4,41.5,34.3,31.9,29.6−29.1,25.7,24.7,23.1,22.6,14.0,7.4
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1733,1652−1622,1190,808.9
【0161】
(合成例7)
撹拌装置、窒素導入管、冷却管及び温度計を備えた反応容器に1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル「エポライト1600」(共栄社製)60g(0.26モル)、アクリル酸41g(0.57モル)、p−メトキシフェノール200mg、及び触媒としてN,N−ジメチルベンジルアミン0.5gを入れ、80℃で撹拌した。次いで反応液を100℃に昇温し、5時間撹拌した後反応を終了した。次いでトルエン500ml加え、5%水酸化ナトリウム溶液300ml、飽和食塩水の順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去して淡褐色透明液状の中間体M−7を80g得た。
【0162】
次に、撹拌装置、窒素導入管、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、塩化メチレン300ml、n−ヘキサン酸26.7g(0.23mol)、p−メトキシフェノール20mg、「ドータイトWSC」43g(0.23mol)及び触媒として4−ジメチルアミノピリジン2.7gを加え、5℃に保ちながら、上記中間体M−7 40gを溶解させた塩化メチレン溶液50ml溶液を1時間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で10時間撹拌した後反応を終了した。1/10Nの塩酸溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層の溶媒を減圧留去した後、濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、ラジカル重合性化合物「M7」を45.2g得た。
【0163】
【化32】


M7
【0164】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:6.45(d,2H),6.17(q,2H),5.87(d,2H),5.28(m,2H),4.41(m,2H),4.37(m,2H),3.6(m,4H),3.4(m,4H),2.32(t,4H),1.73−1.55(m,8H),1.21(s,12H),0.88(t,6H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:173.0,165.6,131.1,128.0,71.5,70.5,69.9,68.9,63.0,62.6,34.4,34.0,31.8,29.6―29.0,24.9,22.6,14.0,
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr)cm−1:2930,2861,1744,
1652−1622,1176,807
【0165】
(合成例8)
撹拌装置、窒素導入管、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル「EX−211」(ナガセケミテックス社製)100g(0.46モル)、アクリル酸90g(1.2モル)、p−メトキシフェノール200mg、及び触媒としてN,N−ジメチルベンジルアミン1gを入れ、80℃で撹拌した。次いで反応液を100℃に昇温して、温度を保ちながら5時間撹拌した後反応を終了した。
次にトルエン300mlを加え、5%水酸化ナトリウム溶液300ml、飽和食塩水の順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去して、中間体M−8を170gを得た。
【0166】
次に、撹拌装置、窒素導入管、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、塩化メチレン300ml、ラウリン酸55g(0.27モル)、p−メトキシフェノール20mg、同仁化学社製の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩「ドータイトWSC」53g(0.27モル)、及び触媒として4−ジメチルアミノピリジン3.3gを入れ、5℃に保ちながら、上記中間体M−8 50gを溶解させた塩化メチレン溶液50ml溶液を1時間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で10時間撹拌した後反応を終了した。1/10Nの塩酸溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層の溶媒を減圧留去した後、濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製してラジカル重合性化合物「M8」を60g得た。
【0167】
【化33】

【0168】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:6.45(d,2H),6.17(q,2H),5.87(d,2H),5.28(m,2H),4.41(m,2H),4.37(m,2H),3.6(m,4H),3.2(m,4H),2.34(t,4H),1.6(m,4H),1.25(s,16H),0.87(t,12H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:173.0,165.6,131.1,128.0,69.9,69.5,63.1,36.4,34.3,31.8,29.5―29.0,24.9,22.6,21.8,14.0,
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr)cm−1:2930,2861,1744,
1652−1622,1176,807
【0169】
(合成例9)
撹拌装置、窒素導入管、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、塩化メチレン300ml、ラウリン酸28g(0.14mol)、p−メトキシフェノール20mg、「ドータイトWSC」27g(0.14mol)及び触媒として4−ジメチルアミノピリジン1.7gを加え、5℃に保ちながら、岡村製油社製の長鎖二塩基酸のエポキシアクリレート「IPS−22GA」43.8gを溶解させた塩化メチレン溶液50ml溶液を1時間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で10時間撹拌した後反応を終了した。1/10Nの塩酸溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層の溶媒を減圧留去した後、濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製してラジカル重合性化合物「M9」を33g得た。
【0170】
【化34】


M9
【0171】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:6.45(d,2H),6.17(q,2H),5.67(d,2H),5.30(m,2H),4.33(m,2H),4.25(m,2H),4.21(m,4H),2.34(m,4H),2.32(t,4H),1.70−1.55(m,8H),1.53(m,2H),1.25(s,56H),0.88(t,12H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:173.5,173.2,165.9,131.5,128.0,71.6,69.9,68.9,68.8,63.0,62.6,42.4,34.9,34.0,31.8,29.6―29.0,24.9,22.6,14.0,
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr)cm−1:2930,2861,1744,
1652−1622,1176,807
【0172】
(合成例10)
合成例2と同様な反応容器に、前記の中間体1を5.7g(0.020モル)、ヨウ化ナトリウム3.3g(0.022モル)、およびアセトニトリルを50ml入れ、5℃以下になるように氷水バスで冷却しながら撹拌した。次いで、セバシン酸クロリド 2.5g(0.010モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌した後に、更に室温で3時間撹拌して反応を終了した。反応容器に少量の水を加えた後にヘキサン/酢酸エチル=1/1溶液を100ml加え、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液 200mlでヨウ素を分解した。更に純水、飽和食塩水の順で有機層を洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に、有機溶媒を減圧留去して中間体M−10を6.5g合成した。
【0173】
次いで、合成例2の中間体M−2の代わりに上記中間体M−10 6.5g(0.012モル)を用いた以外は同様にして、アクリル酸 1.4g(0.020モル)、p−メトキシフェノール 14mg、およびジメチルスルオキシド100mlを入れ、室温で撹拌しながらDBUを3.0g(0.020モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、合成例2と同様な操作を行い、シリカゲルクロマトグラフィー精製により、ラジカル重合性化合物「M10」を3.5g得た。
【0174】
【化35】

(M10)
【0175】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:6.41(d,2H),6.12(q,2H),5.84(d,2H),4.14(s,4H)4.03(s,4H),3.36(t,4H),3.29(s,4H),2.29(t,4H),1.61−1.38(m,12H),1.25(m,44H),0.87(t,12H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:173.5,165.9,130.6,128.3,71.5,70.4,64.7,64.4,41.4,34.3,31.9,29.6−29.0,26.1,24.9,23.0,22.6,14.0,7.4
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1733,1652−1622,1190,808.9
【0176】
(合成例11)
合成例2と同様な反応容器に、前記の中間体2を15g(0.055モル)、ヨウ化ナトリウム9.1g(0.061モル)、およびアセトニトリルを150ml入れ、5℃以下になるように氷水バスで冷却しながら撹拌した。次いで、アジピン酸クロリド 5.3g(0.029モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌した後に、更に室温で3時間撹拌して反応を終了した。反応容器に少量の水を加えた後にヘキサン/酢酸エチル=1/1溶液を200ml加え、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液 300mlでヨウ素を分解した。更に純水、飽和食塩水の順で有機層を洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に、有機溶媒を減圧留去して中間体M−11を23.3g合成した。
【0177】
次いで、合成例2の中間体M−2の代わりに上記中間体M−11 23.3g(0.026モル)を用いた以外は同様にして、アクリル酸 7.4g(0.102モル)、p−メトキシフェノール 110mg、およびジメチルスルオキシド300mlを入れ、室温で撹拌しながらDBUを3.0g(0.020モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、合成例2と同様な操作を行い、シリカゲルクロマトグラフィー精製により、ラジカル重合性化合物「M11」を11.2g得た。
【0178】
【化36】

(M11)
【0179】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:6.41(d,2H),6.12(q,2H),5.84(d,2H),4.14(s,4H)4.03(s,4H),3.36(t,4H),3.29(s,4H),2.29(t,4H),1.61−1.38(m,12H),1.25(m,36H),0.87(t,12H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:173.5,165.9,130.6,128.3,71.5,70.4,64.7,64.4,41.4,34.3,31.9,29.6−29.0,26.1,24.9,23.0,22.6,14.0,7.4
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1733,1652−1622,1190,808.
【0180】
(合成例12)
合成例2と同様な反応容器に、前記の中間体4を14.3g(0.045モル)、ヨウ化ナトリウム16.4g(0.110モル)、およびアセトニトリルを150ml入れ、5℃以下になるように氷水バスで冷却しながら撹拌した。次いで、n−デカノイルクロリド18.2g(0.095モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌した後に、更に室温で3時間撹拌して反応を終了した。反応容器に少量の水を加えた後にヘキサン/酢酸エチル=1/1溶液を300ml加え、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液 400mlでヨウ素を分解した。更に純水、飽和食塩水の順で有機層を洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に、有機溶媒を減圧留去して中間体M−12を28.2g合成した。
【0181】
次いで、合成例2の中間体M−2の代わりに上記中間体M−12 28.2g(0.032モル)を用いた以外は同様にして、アクリル酸 9.3g(0.128モル)、p−メトキシフェノール 60mg、およびジメチルスルオキシド300mlを入れ、室温で撹拌しながらDBUを19.5g(0.128モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、合成例2と同様な操作を行い、シリカゲルクロマトグラフィー精製により、ラジカル重合性化合物「M12」を16.7g得た。
【0182】
【化37】


(M12)
【0183】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:6.42(d,2H),6.12(q,2H),5.84(d,2H),4.10(s,4H)3.99(s,4H),3.34(t,4H),3.29(s,4H),2.29(t,4H),1.62(s,4H),1.6−1.4(m,8H),1.25(m,28H),0.87(t,12H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:173.6,165.9,130.6,128.3,71.5,70.4,64.7,64.3,41.4,34.3,31.8,29.5−29.1,25.9,24.9,23.0,22.6,14.0,7.4
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1733,1652−1622,1190,808.9
【0184】
(合成例13)
合成例2と同様な反応容器に、前記の中間体4を9.4g(0.029モル)、ヨウ化ナトリウム10.3g(0.069モル)、およびアセトニトリルを150ml入れ、5℃以下になるように氷水バスで冷却しながら撹拌した。次いで、n−ミリストロイルクロリド14.7g(0.060モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌した後に、更に室温で3時間撹拌して反応を終了した。反応容器に少量の水を加えた後にヘキサン/酢酸エチル=1/1溶液を400ml加え、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液 500mlでヨウ素を分解した。更に純水、飽和食塩水の順で有機層を洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に、有機溶媒を減圧留去して中間体M−13を22.8g合成した。
【0185】
次いで、合成例2の中間体M−2の代わりに上記中間体M−13 22.8g(0.032モル)を用いた以外は同様にして、アクリル酸 6.8g(0.095モル)、p−メトキシフェノール 60mg、およびジメチルスルオキシド200mlを入れ、室温で撹拌しながらDBUを14.4g(0.094モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、合成例2と同様な操作を行い、シリカゲルクロマトグラフィー精製により、ラジカル重合性化合物「M13」を9.6g得た。
【0186】
【化38】

(M13)
【0187】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:6.42(d,2H),6.12(q,2H),5.84(d,2H),4.10(s,4H)3.99(s,4H),3.34(t,4H),3.29(s,4H),2.29(t,4H),1.62(s,4H),1.6−1.4(m,8H),1.25(m,46H),0.87(t,12H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:173.7,165.9,130.6,128.3,71.5,70.4,64.7,64.4,41.5,34.3,31.9,29.6−29.1,25.9,24.9,23.0,22.6,14.0,7.4
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1733,1652−1622,1190,808.9
【0188】
実施例中の光散乱型液晶デバイスは以下の方法で作製した。
液晶組成物、ラジカル重合性化合物、光重合開始剤からなる調光層形成材料を真空注入法でセルギャップ5μmのITO付きガラスセル内に注入した。この時、調光層形成材料が常に均一状態となるよう、真空注入装置内の温度をコントロールした。また真空度は2パスカルとなるよう設定した。注入後ガラスセルを取り出し、注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した後、調光層形成材料のアイソトロピック−ネマチック転移点より1から2℃高い温度にコントロールし、紫外線カットフィルターUV−35(東芝硝子社製)を介した照射強度が10mW/cmとなるように調整された高圧水銀ランプを60秒間照射して、光散乱型液晶デバイスを得た。
【0189】
実施例中に示される光散乱型液晶デバイスの特性の略号、及び意味は以下に示す通りである。
25℃の室内環境において、光散乱型液晶デバイスに対する印加電圧を無印加から0.2V/ステップかつ5秒/ステップの条件で光透過率が変化しなくなるまで段階的に上昇させる。光透過率が変化しなくなったら印加電圧を0.2Vステップかつ5秒/ステップの条件で無印加まで下降させる。この操作を行った時の印加電圧と光透過率の関係から、以下の特性値が定義される。
T0:電圧無印加時の光透過率(%)。
T100:印加電圧上昇に伴う光透過率変化が飽和に達し、光透過率が変化しなくなった時の光透過率(%)。
T50:T0+0.5×(T100−T0)で定義される、T0とT100の中間の光透過率(%)。
V100:T100における印加電圧(V)。
Vr50:光散乱型液晶デバイスに対する印加電圧を無印加から上昇させていった時、T50の透過率における印加電圧(V)。
Vd50:光散乱型液晶デバイスに対する印加電圧をV100から下降させていった時、T50の透過率における印加電圧(V)。
HS50:Vr50−Vd50で定義される光学ヒステリシス(mV)。図6にこの定義を図解した。
HS50/d:光散乱型液晶デバイスのHS50を該光散乱型デバイスのセルギャップdで除した値(mV/μm)。
【0190】
(実施例1)
液晶組成物(A)が70%、ラジカル重合性化合物(M1)と(M2)の混合物が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。液晶組成物(A)の液晶温度範囲は−37℃から82℃である。
【0191】
【化39】


液晶組成物(A)
【0192】
ラジカル重合性化合物(M1)と(M2)の混合物を重合させることによって、下記5種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M1同士が結合することによって生じる「M1−M1間」
2)M1とM2が結合することによって生じる「M1−M2間」
3)M2同士が結合することによって生じる「M2−M2間」
4)M1中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M1中」
5)M2中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M2中」
これら1)〜5)の側鎖間について計算したαの値を表6に示す。
【0193】
【表6】

【0194】
表6から、ラジカル重合性化合物(M1)と(M2)の混合物より得られるΔαの値は
12−(−5)=17となる。
【0195】
次に光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)〜5)の存在比率であるβiを見積もる。この存在比率βiはラジカル重合性化合物(M1)と(M2)の全てがランダムに重合したとして、確率的に計算した。本実施例ではラジカル重合性化合物(M1)と(M2)の混合比(モル/モル)を表7のように変化させた。表7においてモノマーとはラジカル重合性化合物を表す。表7にラジカル重合性化合物(M1)と(M2)の各混合比から得られる光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の存在比率βiをモル分率で示した。
【0196】
【表7】

【0197】
表6中のαiと表7中のβiから、ラジカル重合性化合物(M1)と(M2)の各混合比から得られる光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の(αi×βi)及びΣ(αi×βi)の値を求めることができる。この計算値と該光散乱型液晶デバイスのHS50/d評価結果を表8に示す。
【0198】
【表8】

【0199】
(実施例2)
液晶組成物(A)が70%、ラジカル重合性化合物(M3)と(M4)の混合物が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。
【0200】
ラジカル重合性化合物(M3)と(M4)の混合物を重合させることによって、下記5種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M3同士が結合することによって生じる「M3−M3間」
2)M3とM4が結合することによって生じる「M3−M4間」
3)M4同士が結合することによって生じる「M4−M4間」
4)M3中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M3中」
5)M4中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M4中」
これら1)〜5)の側鎖間について計算したαの値を表9に示す。
【0201】
【表9】

【0202】
表9から、ラジカル重合性化合物(M3)と(M4)の混合物より得られるΔαの値は
8−(−3)=11となる。
【0203】
次に光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)〜5)の存在比率βiを見積もる。この存在比率βiはラジカル重合性化合物(M3)と(M4)の全てがランダムに重合したとして、確率的に計算した。本実施例ではラジカル重合性化合物(M3)と(M4)の混合比(モル/モル)を表10のように変化させた。表10においてモノマーとはラジカル重合性化合物を表す。表10にラジカル重合性化合物(M3)と(M4)の各混合比から得られる光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の存在比率βiをモル分率で示した。
【0204】
【表10】

【0205】
表9中のαiと表10中のβiから、ラジカル重合性化合物(M3)と(M4)の各混合比から得られる光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の(αi×βi)及びΣ(αi×βi)の値を求めることができる。この計算値と該光散乱型液晶デバイスのHS50/d評価結果を表11に示す。
【0206】
【表11】

【0207】
(実施例3)
液晶組成物(A)が70%、ラジカル重合性化合物(M3)が5.9%、ラジカル重合性化合物(M5)が23.5%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。
【0208】
ラジカル重合性化合物(M3)と(M5)の混合物を重合させることによって、下記5種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M3同士が結合することによって生じる「M3−M3間」
2)M3とM5が結合することによって生じる「M3−M5間」
3)M5同士が結合することによって生じる「M5−M5間」
4)M3中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M3中」
5)M5中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M5中」
これら1)〜5)の側鎖間について計算したαの値を表12に示す。
【0209】
【表12】

【0210】
表12から、ラジカル重合性化合物(M3)と(M5)の混合物より得られるΔαの値は、8−(−4)=12となる。
【0211】
次に光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)〜5)の存在比率βiを見積もる。この存在比率βiはラジカル重合性化合物(M3)と(M5)の全てがランダムに重合したとして、確率的に計算した。本実施例ではラジカル重合性化合物(M3)と(M5)の混合比(モル/モル)は0.22:0.78である。表13においてモノマーとはラジカル重合性化合物を表す。表13に本実施例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の存在比率βiをモル分率で示した。
【0212】
【表13】

【0213】
表12中のαと表13中のβから、本実施例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の(αi×βi)及びΣ(αi×βi)の値を求めることができる。この計算値と該光散乱型液晶デバイスのHS50/d評価結果を表14に示す。
【0214】
【表14】

【0215】
(実施例4)
液晶組成物(A)が70%、ラジカル重合性化合物(M6)が5.9%、ラジカル重合性化合物(M5)が23.5%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。液晶組成物(A)の液晶温度範囲は−37℃から82℃である。
【0216】
ラジカル重合性化合物(M6)と(M5)の混合物を重合させることによって、下記5種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M6同士が結合することによって生じる「M6−M6間」
2)M6とM5が結合することによって生じる「M6−M5間」
3)M5同士が結合することによって生じる「M5−M5間」
4)M6中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M6中」
5)M5中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M5中」
これら1)〜5)の側鎖間について計算したαの値を表15に示す。
【0217】
【表15】

【0218】
表15から、ラジカル重合性化合物(M6)と(M5)の混合物より得られるΔαの値は、6−(−4)=10となる。
【0219】
次に光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)〜5)の存在比率βiを見積もる。この存在比率βiはラジカル重合性化合物(M6)と(M5)の全てがランダムに重合したとして、確率的に計算した。本実施例ではラジカル重合性化合物(M6)と(M5)の混合比(モル/モル)は0.23:0.77である。表16においてモノマーとはラジカル重合性化合物を表す。表16に本実施例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の存在比率βiをモル分率で示した。
【0220】
【表16】

【0221】
表15中のαiと表16中のβiから、本実施例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の(αi×βi)及びΣ(αi×βi)の値を求めることができる。この計算値と該光散乱型液晶デバイスのHS50/d評価結果を表17に示す。
【0222】
【表17】

【0223】
(実施例5)
液晶組成物(B)が70%、ラジカル重合性化合物(M7)と(M8)の混合物が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。液晶組成物(B)の液晶温度範囲は−41℃から80℃である。
【0224】
【化40】


液晶組成物(B)
【0225】
ラジカル重合性化合物(M7)と(M8)の混合物を重合させることによって、下記5種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M7同士が結合することによって生じる「M7−M7間」
2)M7とM8が結合することによって生じる「M7−M8間」
3)M8同士が結合することによって生じる「M8−M8間」
4)M7中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M7中」
5)M8中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M8中」
これら1)〜5)の側鎖間について計算したαの値を表18に示す。
【0226】
【表18】

【0227】
表18から、ラジカル重合性化合物(M7)と(M8)の混合物より得られるΔαの値は、5−(−4)=9となる。
【0228】
次に光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)〜5)の存在比率βiを見積もる。この存在比率βiはラジカル重合性化合物(M7)と(M8)の全てがランダムに重合したとして、確率的に計算した。本実施例ではラジカル重合性化合物(M7)と(M8)の混合比(モル/モル)を表19のように変化させた。表19においてモノマーとはラジカル重合性化合物を表す。表19にラジカル重合性化合物(M7)と(M8)の各混合比から得られる光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の存在比率βiをモル分率で示した。
【0229】
【表19】

【0230】
表18中のαiと表19中のβiから、ラジカル重合性化合物(M7)と(M8)の各混合比から得られる光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の(αi×βi)及びΣ(αi×βi)の値を求めることができる。この計算値と該光散乱型液晶デバイスのHS50/d評価結果を表20に示す。
【0231】
【表20】

【0232】
(実施例6)
液晶組成物(B)が70%、ラジカル重合性化合物(M9)と(M8)の混合物が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。液晶組成物(B)の液晶温度範囲は−41℃から80℃である。
【0233】
ラジカル重合性化合物(M9)と(M8)の混合物を重合させることによって、下記5種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M9同士が結合することによって生じる「M9−M9間」
2)M9とM8が結合することによって生じる「M9−M8間」
3)M8同士が結合することによって生じる「M8−M8間」
4)M9中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M9中」
5)M8中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M8中」
これら1)〜5)の側鎖間について計算したαの値を表21に示す。
【0234】
【表21】

【0235】
表21から、ラジカル重合性化合物(M9)と(M8)の混合物より得られるΔαの値は、13−(−4)=17となる。
【0236】
次に光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)〜5)の存在比率βiを見積もる。この存在比率βiはラジカル重合性化合物(M9)と(M8)の全てがランダムに重合したとして、確率的に計算した。本実施例ではラジカル重合性化合物(M9)と(M8)の混合比(モル/モル)を表22のように変化させた。表22においてモノマーとはラジカル重合性化合物を表す。表22にラジカル重合性化合物(M9)と(M8)の各混合比から得られる光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の存在比率βiをモル分率で示した。
【0237】
【表22】

【0238】
表21中のαiと表22中のβiから、ラジカル重合性化合物(M9)と(M8)の各混合比から得られる光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の(αi×βi)及びΣ(αi×βi)の値を求めることができる。この計算値と該光散乱型液晶デバイスのHS50/d評価結果を表23に示す。
【0239】
【表23】

【0240】
(実施例7)
液晶組成物(B)が70%、ラジカル重合性化合物(M10)が11.8%、ラジカル重合性化合物(M11)が17.6%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。液晶組成物(B)の液晶温度範囲は−41℃から80℃である。
【0241】
ラジカル重合性化合物(M10)と(M11)の混合物を重合させることによって、下記5種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M10同士が結合することによって生じる「M10−M10間」
2)M10とM11が結合することによって生じる「M10−M11間」
3)M11同士が結合することによって生じる「M11−M11間」
4)M10中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M10中」
5)M11中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M11中」
これら1)〜5)の側鎖間について計算したαの値を表24に示す。
【0242】
【表24】

【0243】
表24から、ラジカル重合性化合物(M10)と(M11)の混合物より得られるΔαの値は、2−(−3)=5となる。
【0244】
次に光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)〜5)の存在比率βiを見積もる。この存在比率βiはラジカル重合性化合物(M10)と(M11)の全てがランダムに重合したとして、確率的に計算した。本実施例ではラジカル重合性化合物(M10)と(M11)の混合比(モル/モル)は0.38:0.62である。表25においてモノマーとはラジカル重合性化合物を表す。表25に本実施例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の存在比率βiをモル分率で示した。
【0245】
【表25】

【0246】
表24中のαiと表25中のβiから、ラジカル重合性化合物(M10)と(M11)の各混合比から得られる光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の(αi×βi)及びΣ(αi×βi)の値を求めることができる。この計算値と該光散乱型液晶デバイスのHS50/d評価結果を表26に示す。
【0247】
【表26】

【0248】
(実施例8)
液晶組成物(C)が70%、ラジカル重合性化合物(M7)と(M8)の混合物が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。
【0249】
【化41】


液晶組成物(C)
【0250】
ラジカル重合性化合物(M7)と(M8)の混合物を重合させることによって、下記5種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M7同士が結合することによって生じる「M7−M7間」
2)M7とM8が結合することによって生じる「M7−M8間」
3)M8同士が結合することによって生じる「M8−M8間」
4)M7中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M7中」
5)M8中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M8中」
これら1)〜5)の側鎖間について計算したαの値を表27に示す。
【0251】
【表27】

【0252】
表27から、ラジカル重合性化合物(M7)と(M8)の混合物より得られるΔαの値は、5−(−4)=9となる。
【0253】
次に光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)〜5)の存在比率βiを見積もる。この存在比率βiはラジカル重合性化合物(M7)と(M8)の全てがランダムに重合したとして、確率的に計算した。本実施例ではラジカル重合性化合物(M7)と(M8)の混合比(モル/モル)を表28のように変化させた。表28においてモノマーとはラジカル重合性化合物を表す。表28にラジカル重合性化合物(M7)と(M8)の各混合比から得られる光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の存在比率βiをモル分率で示した。
【0254】
【表28】

【0255】
表27中のαiと表28中のβiから、ラジカル重合性化合物(M7)と(M8)の各混合比から得られる光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の(αi×βi)及びΣ(αi×βi)の値を求めることができる。この計算値と該光散乱型液晶デバイスのHS50/d評価結果を表29に示す。
【0256】
【表29】

【0257】
(実施例9)
液晶組成物(C)が70%、ラジカル重合性化合物(M12)と(M13)の混合物が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。
【0258】
ラジカル重合性化合物(M12)と(M13)の混合物を重合させることによって、下記5種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M12同士が結合することによって生じる「M12−M12間」
2)M12とM13が結合することによって生じる「M12−M13間」
3)M13同士が結合することによって生じる「M13−M13間」
4)M12中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M12中」
5)M13中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M13中」
これら1)〜5)の側鎖間について計算したαの値を表30に示す。
【0259】
【表30】

【0260】
表30から、ラジカル重合性化合物(M12)と(M13)の混合物より得られるΔαの値は、0−(−5)=5となる。
【0261】
次に光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)〜5)の存在比率βiを見積もる。この存在比率βiはラジカル重合性化合物(M12)と(M13)の全てがランダムに重合したとして、確率的に計算した。本実施例ではラジカル重合性化合物(M12)と(M13)の混合比(モル/モル)を表31のように変化させた。表31においてモノマーとはラジカル重合性化合物を表す。表31にラジカル重合性化合物(M12)と(M13)の各混合比から得られる光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の存在比率βiをモル分率で示した。
【0262】
【表31】

【0263】
表30中のαiと表31中のβiから、ラジカル重合性化合物(M12)と(M13)の各混合比から得られる光散乱型液晶デバイス中に含まれる、側鎖間1)〜5)の(αi×βi)及びΣ(αi×βi)の値を求めることができる。この計算値と該光散乱型液晶デバイスのHS50/d評価結果を表32に示す。
【0264】
【表32】

【0265】
(比較例1)
液晶組成物(A)が70%、ラジカル重合性化合物(M2)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。液晶組成物(A)の液晶温度範囲は−37℃から82℃である。
【0266】
ラジカル重合性化合物(M2)を重合させることによって、下記2種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M2同士が結合することによって生じる「M2−M2間」
2)M2中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M2中」
これら1)〜2)の側鎖間について計算したαの値を表33に示す。
【0267】
【表33】

【0268】
表33から、ラジカル重合性化合物(M2)より得られるΔαの値は、(−3)−(−5)=2となる。
【0269】
本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)の存在比率はラジカル重合性化合物(M2)の全てが重合したとして下記のモル分率βiとなる。
側鎖間1)のβi:側鎖間2)のβi=0.67:0.33
表33中のαiと上記βiから本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)のΣ(αi×βi)を求めると−3.67となる。
本比較例の光散乱型液晶デバイスのHS50/dを評価したところ102.7mV/μmであった。
【0270】
(比較例2)
液晶組成物(A)が70%、ラジカル重合性化合物(M3)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。液晶組成物(A)の液晶温度範囲は−37℃から82℃である。
【0271】
ラジカル重合性化合物(M3)を重合させることによって、下記2種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M3同士が結合することによって生じる「M3−M3間」
2)M3中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M3中」
これら1)〜2)の側鎖間について計算したαの値を表34に示す。
【0272】
【表34】

【0273】
表34から、ラジカル重合性化合物(M3)より得られるΔαの値は、8−3=5となる。
【0274】
本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)の存在比率はラジカル重合性化合物(M3)の全てが重合したとして下記のモル分率βiとなる。
側鎖間1)のβi:側鎖間2)のβi=0.67:0.33
表34中のαiと上記βiから本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)のΣ(αi×βi)を求めると4.67となる。
本比較例の光散乱型液晶デバイスのHS50/dを評価したところ49.4mV/μmであった。
【0275】
(比較例3)
液晶組成物(A)が70%、ラジカル重合性化合物(M4)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。液晶組成物(A)の液晶温度範囲は−37℃から82℃である。
【0276】
ラジカル重合性化合物(M4)を重合させることによって、下記2種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M4同士が結合することによって生じる「M4−M4間」
2)M4中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M4中」
これら1)〜2)の側鎖間について計算したαの値を表35に示す。
【0277】
【表35】

【0278】
表35から、ラジカル重合性化合物(M4)より得られるΔαの値は、(−3)−(−3)=0となる。
【0279】
本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)の存在比率はラジカル重合性化合物(M4)の全てが重合したとして下記のモル分率βiとなる。
側鎖間1)のβi:側鎖間2)のβi=0.67:0.33
表35中のαiと上記βiから本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)のΣ(αi×βi)を求めると−3.00となる。
本比較例の光散乱型液晶デバイスのHS50/dを評価したところ43.1mV/μmであった。
【0280】
(比較例4)
液晶組成物(A)が70%、ラジカル重合性化合物(M5)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。液晶組成物(A)の液晶温度範囲は−37℃から82℃である。
【0281】
ラジカル重合性化合物(M5)を重合させることによって、下記2種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M5同士が結合することによって生じる「M5−M5間」
2)M5中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M5中」
これら1)〜2)の側鎖間について計算したαの値を表36に示す。
【0282】
【表36】

【0283】
表36から、ラジカル重合性化合物(M5)より得られるΔαの値は、(−3)−(−4)=1となる。
【0284】
本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)の存在比率はラジカル重合性化合物(M5)の全てが重合したとして下記のモル分率βiとなる。
側鎖間1)のβi:側鎖間2)のβi=0.67:0.33
表36中のαiと上記βiから本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)のΣ(αi×βi)を求めると−3.33となる。
本比較例の光散乱型液晶デバイスのHS50/dを評価したところ76.0mV/μmであった。
【0285】
(比較例5)
液晶組成物(A)が70%、ラジカル重合性化合物(M6)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。液晶組成物(A)の液晶温度範囲は−37℃から82℃である。
【0286】
ラジカル重合性化合物(M6)を重合させることによって、下記2種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M6同士が結合することによって生じる「M6−M6間」
2)M6中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M6中」
これら1)〜2)の側鎖間について計算したαの値を表37に示す。
【0287】
【表37】

【0288】
表37から、ラジカル重合性化合物(M6)より得られるΔαの値は、6−3=3となる。
【0289】
本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)の存在比率はラジカル重合性化合物(M6)の全てが重合したとして下記のモル分率βiとなる。
側鎖間1)のβi:側鎖間2)のβi=0.67:0.33
表37中のαiと上記βiから本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)のΣ(αi×βi)を求めると4.00となる。
本比較例の光散乱型液晶デバイスのHS50/dを評価したところ75.0mV/μmであった。
【0290】
(比較例6)
液晶組成物(C)が70%、ラジカル重合性化合物(M7)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。
【0291】
ラジカル重合性化合物(M7)を重合させることによって、下記2種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M7同士が結合することによって生じる「M7−M7間」
2)M7中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M7中」
これら1)〜2)の側鎖間について計算したαの値を表38に示す。
【0292】
【表38】

【0293】
表38から、ラジカル重合性化合物(M7)より得られるΔαの値は、5−4=1となる。
【0294】
本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)の存在比率はラジカル重合性化合物(M7)の全てが重合したとして下記のモル分率βiとなる。
側鎖間1)のβi:側鎖間2)のβi=0.67:0.33
表38中のαiと上記βiから本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)のΣ(αi×βi)を求めると4.33となる。
本比較例の光散乱型液晶デバイスのHS50/dを評価したところ68.0mV/μmであった。
【0295】
(比較例7)
液晶組成物(C)が70%、ラジカル重合性化合物(M8)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。
【0296】
ラジカル重合性化合物(M8)を重合させることによって、下記2種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M8同士が結合することによって生じる「M8−M8間」
2)M8中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M8中」
これら1)〜2)の側鎖間について計算したαの値を表39に示す。
【0297】
【表39】

【0298】
表39から、ラジカル重合性化合物(M8)より得られるΔαの値は、(−2)−(−4)=2となる。
【0299】
本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)の存在比率はラジカル重合性化合物(M8)の全てが重合したとして下記のモル分率βiとなる。
側鎖間1)のβi:側鎖間2)のβi=0.67:0.33
表39中のαiと上記βiから本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)のΣ(αi×βi)を求めると−2.67となる。
本比較例の光散乱型液晶デバイスのHS50/dを評価したところ177.7mV/μmであった。
【0300】
(比較例8)
液晶組成物(B)が70%、ラジカル重合性化合物(M9)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる光散乱型液晶デバイス用組成物を調合し、前述の手法で光散乱型液晶デバイスを得た。液晶組成物(B)の液晶温度範囲は−41℃から80℃である。
【0301】
ラジカル重合性化合物(M9)を重合させることによって、下記2種類の側鎖間パターンが生成しうる。
1)M9同士が結合することによって生じる「M9−M9間」
2)M9中に重合前から存在している側鎖R1とR2の間である「M9中」
これら1)〜2)の側鎖間について計算したαの値を表40に示す。
【0302】
【表40】

【0303】
表40から、ラジカル重合性化合物(M9)より得られるΔαの値は、13−(−2)=15となる。
【0304】
本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)の存在比率はラジカル重合性化合物(M9)の全てが重合したとして下記のモル分率βiとなる。
側鎖間1)のβi:側鎖間2)のβi=0.67:0.33
表40中のαiと上記βiから本比較例の光散乱型液晶デバイス中に含まれる側鎖間1)、2)のΣ(αi×βi)を求めると3.00となる。
本比較例の光散乱型液晶デバイスのHS50/dを評価したところ48.8mV/μmであった。
【0305】
以上に説明した実施例と比較例について、Δα、Σ(αi×βi)、25℃におけるHS50/dの関係を表41にまとめた。
【0306】
【表41】

【0307】
表41に示すように、Δαが5以上、Σ(αi×βi)が−3.16から2.00まで、の二つの条件を同時に満たす実施例の光散乱型液晶デバイスは単位セルギャップ当たりの光学ヒステリシスであるHS50/dが20mV/μm以下となった。その中でもΔαを12以上にした場合、Σ(αi×βi)を−1.79から2.00まで、にした場合ではさらにHS50/dを低くすることができた。
一方、Δαが5以上、Σ(αi×βi)が−3.16から2.00まで、の二つの条件を同時に満たしていない比較例の光散乱型液晶デバイスは実施例の光散乱型液晶デバイスよりもHS50/dが高かった。比較例の光散乱型液晶デバイスではHS50/dを20mV/μm以下とすることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0308】
本発明の光散乱型液晶デバイスは、中間調領域における光学ヒステリシスが少ないため、再現性の高い階調表示、高い階調度での階調表示を行うことができる。さらに本発明の光散乱型デバイスは、表示セルのギャップを小さくすることなく低い光学ヒステリシスが得られるため、光散乱型液晶デバイスの散乱特性と低光学ヒステリシスの両立を図ることができる。このため、光散乱モードの高表示品位ディスプレイに使用することができる。具体的にはPDAなどの携帯情報端末の表示素子や光散乱型の直視・反射型ペーパーライクディスプレイに使用することができる。またデジタルペーパー、ICカードの情報表示、電子ブックや、光シャッターなどの光学素子としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0309】
【図1】ポリマー主鎖と液晶分子とのアンカリングについて説明した図である。
【図2】ポリマーの側鎖と液晶分子とのアンカリングについて説明した図である。
【図3】ポリマー主鎖または側鎖と液晶分子とのアンカリングによって電圧印加過程で電圧−光透過率曲線が高電圧側にずれる様子を説明した図である。
【図4】ポリマー主鎖または側鎖と液晶分子とのアンカリングによって電圧降下過程での電圧−光透過率曲線が低電圧側にずれる様子を説明した図である。
【図5】本発明におけるαの定義について具体例を挙げて説明した図である。
【図6】本発明の光散乱型液晶デバイスの主要評価項目である光学ヒステリシスHS50の定義について示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性組成物及び液晶組成物を含有する調光層形成材料を重合させて得た調光層を有する光散乱型液晶デバイスにおいて、前記ラジカル重合性組成物が、一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物を少なくとも1種含む組成物であり、且つ、数式(1)および数式(3)を同時に満たすことを特徴とする光散乱型液晶デバイス。
【化1】


(1)
(式中、Rは炭素原子数3〜40のアルキル基を表す。但し、該アルキル基中の炭素原子は、
a)酸素原子が相互に直接に結合しないものとして−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、−OCONH−、又は炭素原子数6〜12のアリーレン基で置き換えられていてもよく、
b)置換基として炭素原子数1〜15のアルキル基を有していても良い。
は、−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、−OCONH−、又は、アルキレン基(但し、該アルキレン基中の炭素原子は、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、−OCONH−、炭素原子数6〜12の脂環基、又は炭素原子数6〜12のアリーレン基で置き換えられていてもよい)で表され、Aが結合する2つの炭素原子間結合を辿ったときに含まれる結合数Na1が3〜40である連結基を表し、Aは、−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、−OCONH−、又は、アルキレン基(但し、該アルキレン基中の炭素原子は、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、−OCONH−、炭素原子数6〜12の脂環基、又は炭素原子数6〜12のアリーレン基で置き換えられていてもよい)を表し、Aは、−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、−OCONH−、アルキレン基、アルキルトリイル基、又はアルキルテトライル基(但し、該アルキレン基、該アルキルトリイル基、又は該アルキルテトライル基中の炭素原子は、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして−O−、−CO−O−、−OCO−、−NHCO−O−、−OCONH−、炭素原子数6〜12の脂環基、又は炭素原子数6〜12のアリーレン基で置き換えられていてもよい)を表し、−A−A−A−に含まれる結合数Na2が3〜40である連結基を表す。
は水素原子又はメチル基を表し、Bは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、複数あるR、A、A、A、B、及びBは、同じであってもよく、異なっていて良い。mは2〜4の整数を表す。)
【数1】

(1)
【数2】


(2)
【数3】

(3)
(数式(1)において、Δαは、前記ラジカル重合性組成物に含まれるラジカル重合性化合物から導き出された複数のαの、最大値α(αmax)と最小値α(αmin)の差を表し、αは、数式(2)から導き出される値を表す。数式(2)において、NR1R2は、前記一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物において、隣接する2つのRをR及びRとしたとき、及び、前記一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物が重合反応することにより形成される、隣接する2つのRをR及びRとしたときの、RおよびRが結合している炭素原子の間にある結合数を表す。NR1及びNR2は、RおよびRが結合している炭素原子からRおよびRの末端の炭素原子までの結合を辿ったときに含まれる結合の数を表す。但し、RおよびRが置換基を有する場合は、もっとも原子数の多い末端の炭素原子までの結合に含まれる結合数をNR1及びNR2とする。また、先端の原子が水素原子である場合はこれを数えない。Σ(αi×βi)は、前記ラジカル重合性組成物に含まれるラジカル重合性化合物から導き出された複数のαiに対して、一般式(1)で表されるラジカル重合性化合物を含むラジカル重合性組成物に含まれるラジカル重合性化合物間の反応性がすべて同じと仮定した際に得られるαiの出現確率βiを乗じた、所謂期待値を、該重合体のすべてのαiに対して和した、理論値を表す。但し、B2とRを取り替えても前記定義を満たす場合は、前記結合数の多い方をRとする。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、Aが−O−CH−、−O−CH−CH−CO−O−CH−、−O−CH−CHO−、又は−O−CH−CH(CH)O−であり、Aが−CH−O−、−CH−OCO−、−CH−CO−O−又は−CH−であり、Aが、mが2のときは、炭素数2〜40のアルキレン基(但し、該基中に存在し、Aと直接結合しない1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−、アリーレン基、又は炭素数3〜10のシクロアルキレン基で置き換えられていても良い)、炭素数6〜18のアリーレン基、炭素数3〜10のシクロアルキレン基、又は、−Y−A−Y− (但し、Yはアリーレン基又は炭素数3〜10のシクロアルキレン基を表し、Aは単結合又は炭素数1〜15のアルキレン基(但し、アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−で置き換えられていても良い)を表す。)を表し、
mが3のときは、炭素数2〜30のアルキルトリイル基(但し、該基中に存在し、Aと直接結合しない1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−、アリーレン基、又は炭素数3〜10のシクロアルキレン基で置き換えられていても良い)を表し、mが4のときは、炭素数2〜30のアルキルテトライル基(但し、該基中に存在し、Aと直接結合しない1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−、アリーレン基、又は炭素数3〜10のシクロアルキレン基で置き換えられていても良い)である、請求項1に記載の光散乱型液晶デバイス。
【請求項3】
前記数式(1)のΔαが、数式(4)を満たし、且つ数式(5)を満たす、請求項1又は2に記載の光散乱型液晶デバイス。
【数4】

(4)
【数5】


(5)
(但し、Δα、αmax、αmin、及びΣ(αi×βi)は、前記数式(1)〜(3)での定義と同様である)



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−45416(P2006−45416A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230635(P2004−230635)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】