説明

光書き込み型表示媒体

【課題】交流駆動における駆動能力や表示特性、さらには繰り返し安定性を向上させることが可能な光スイッチング層を用いた光書き込み型表示媒体を提供することである。
【解決手段】一対の電極の間に、少なくとも表示層と光スイッチング層とを含む光書き込み型表示媒体であって、前記光スイッチング層が、電荷発生材料、正孔輸送性材料及び電子輸送性材料を含む単層の両極性感光体を光スイッチング層として有する光書き込み型表示媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光導電体(OPC)を用いた光スイッチング層を有する光書き込み型表示媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光書き込み型表示デバイスは、所定の電圧を素子に印加しつつ、受光した光量により光スイッチング素子のインピーダンスを変化させ、表示素子に印加される電圧あるいは電流を制御することにより、表示素子を駆動し、画像を表示するものである。特に、メモリ性のある表示素子と光導電性スイッチング素子を積層し、これに、電圧を印加すると共に、光画像を入射し、書き込みを行う光書き込み型表示媒体は、書き込み装置から媒体を切り離して持ち歩くことが可能な電子ペーパー媒体として注目されている。
【0003】
光書き込み型表示媒体の表示素子としては、例えば、ポリマーに分散しメモリ性を付与したネマチック液晶、コレステリック液晶、強誘電液晶のような液晶表示素子、あるいは電気泳動素子や電界回転素子、トナー電界移動型素子や、これらをカプセル化した素子等が検討されている。
【0004】
これら、受光した光量により電圧あるいは電流を制御できるような光スイッチング素子としては、例えば、電子写真の分野で用いられるアモルファスシリコン素子、有機光導電体を用いた機能分離型二層構造のOPC素子、さらに、電荷輸送層(以下、「CTL」という場合がある)の上下に電荷発生層(以下、「CGL」という場合がある)、を形成した構造(以下、デュアルCGL構造と称する)のOPC素子が検討されている(例えば、特許文献1参照)。特に、OPC素子は、その製造工程において高温の熱処理を必要としないため、PETフィルムなどのフレキシブル基板への適用も可能であり、かつ、真空プロセスも不要なために安価に作製できるという利点を有する。
中でも、前記デュアルCGL構造は、交流駆動が可能であり、表示素子に液晶素子を用いた場合においても、直流駆動では問題となる画像の焼付き現象も生じにくいため、特に有効な構造である。
【0005】
この光スイッチング素子に用いるOPC素子の電荷発生層の作製方式には、蒸着やスパッタリング等の真空プロセスを使う方式と、電荷発生材料を分散させた分散液を塗布するという方式とがあるが、真空プロセスを用いる方式では、装置が高価になるため、低価格な媒体の作製が困難である一方、塗布方式では安価に大量生産が可能であり、コスト的に優位であるため、電荷発生層の作製方式としては、塗布方式が注目されている。
【0006】
前記デュアルCGL構造を塗布方式で作製するためには、上部電荷発生層の作製時に、電荷発生材料分散液の溶剤として一般的に用いられているエステル系やケトン系の溶剤が、電荷輸送層に損傷を与えるという問題が発生するため、これを回避すべく、上部電荷発生層を形成するための溶剤として、電荷輸送層を溶解・膨潤させないようなアルコール系溶剤を使用してきた(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、一般にアルコール系の溶剤及びそれにより制約されるバインダー樹脂を用いて電荷発生層形成塗布液を作製すると、電荷発生材料の分散性が悪い、それから成膜されたCGLを有するOPCにおいて光感度が低下する、暗電荷が多い、繰り返し安定性が低い、等の弊害が発生することが多かった。
【0008】
また、上記に伴いこの方法により作製した光スイッチング素子では、交流駆動時の応答電圧波形の対称性が十分でないという問題が発生する場合もあった。このような応答波形の対称性に劣る光スイッチング素子を、例えば表示素子を駆動するスイッチング素子として使用した場合、光照射時表示素子に対し、一方の極性においては十分な電圧印加がなされても、反対極性においては十分な電圧印加が得られず、結果として、所望の表示画像が得られなくなる。
このように、前記塗布法でデュアルCGL構造を形成した場合には、満足な特性を有する光書き込み型表示媒体が得られていなかった。
【特許文献1】特開2000−180888号公報
【特許文献2】特開2002−196291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明の目的は、交流駆動における表示特性や駆動能力、さらには繰り返し安定性を向上させることが可能な光スイッチング素子を用いた光書き込み型表示媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するため、本発明者等は、交流駆動に対応可能な光スイッチング層としてデュアルCGL構造以外の感光体、具体的には両極性感光体について検討した。そして、光書き込み型表示媒体の駆動に必要な光導電特性をより明確化し、これに対応可能な単層の両極性感光体を、特に電子輸送性材料及び正孔輸送性材料の組み合わせ、さらに電荷発生材料との最適化の観点から検討した結果、特定の材料同士を混合して用いることで良好な分散性と高い交流駆動特性が得られることを見出し、本発明に想到した。すなわち、本発明は、
【0011】
<1> 一対の電極の間に、少なくとも表示層と光スイッチング層とを含む光書き込み型表示媒体であって、
前記光スイッチング層が、電荷発生材料、正孔輸送性材料及び電子輸送性材料を含む単層の両極性感光層を有する光書き込み型表示媒体である。
【0012】
<2> 前記電子輸送性材料が低分子の電子輸送性材料であり、前記正孔輸送性材料が正孔輸送性高分子である<1>に記載の光書き込み型表示媒体である。
【0013】
<3> 前記正孔輸送性高分子が、下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される電荷輸送性高分子のうちの少なくとも1種である<2>に記載の光書き込み型表示媒体である。
【0014】
【化1】

【0015】
一般式(I−1)及び(I−2)中、Y及びZはそれぞれ独立に任意の有機基を表し、Aは下記一般式(II−1)で示される有機基を表し、B及びB’はそれぞれ独立に−O−(Y−O)m−Hまたは−O−(Y−O)m−CO−Z−CO−OR’(ここで、R’は水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基を表し、Y及びZはそれぞれ独立に任意の有機基を表す。)を表し、mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。
【0016】
【化2】

【0017】
一般式(II−1)中、Arは置換もしくは未置換の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の芳香族基を表し、Tは炭化水素基を表し、k、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表す。
【0018】
<4> 前記一般式(II−1)で示される有機基におけるArが、置換もしくは未置換の芳香環数2以上の芳香族基である<3>に記載の光書き込み型表示媒体である。
【0019】
<5> 前記一般式(II−1)で示される有機基におけるXが、下記構造式(III−1)、(III−2)及び(III−3)で示される有機基のうちのいずれかである<4>に記載の光書き込み型表示媒体である。
【0020】
【化3】

【0021】
<6> 前記表示層が、メモリ性を有する液晶表示層である<1>〜<5>のいずれかに記載の光書き込み型表示媒体である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、交流駆動における駆動能力や表示特性、さらには繰り返し安定性を向上させることが可能な光スイッチング層を用いた光書き込み型表示媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、図面を参照した説明においては、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面通して同じ符合を付与して説明する。
本発明の光書き込み型表示媒体は、一対の電極の間に、少なくとも表示層と光スイッチング層とを含む光書き込み型表示媒体であって、前記光スイッチング層が、電荷発生材料、正孔輸送性材料及び電子輸送性材料を含む単層の両極性感光層を有することを特徴とする。
【0024】
本発明の光書き込み型表示媒体は、後述するように、単層の両極性感光体を光スイッチング層として用いているため、前記デュアルCGL構造のように上部電荷発生層を形成しなくても交流駆動が可能である。このため、上部電荷発生層形成に伴う電荷輸送層に損傷を与えるという問題が発生することがなく、さらに単層構成であり、光スイッチング層の作製をより簡便に行うことができる。
【0025】
また、アルコール系の溶剤で電荷発生層形成塗布液を作製する必要がないので、電荷発生材料の分散性、分散安定性が良好となり、さらに電荷発生材料の含有量を非常に低く設定でき感光体の暗抵抗を大きくすることができ、光スイッチング層のインピーダンスの明暗比や繰り返し安定性を向上させることができるため、これを用いた光書き込み型表示媒体においても、交流駆動特性(駆動マージン等)に優れ安定した書き込み・表示を行うことができる。
なお、前記両極性感光体とは、電子、正孔ともに一定以上の移動度で輸送が可能であり、電界下において正極性及び負極性で動作可能な感光体をいう。
【0026】
前記両極性感光体に関しては、電荷輸送材料として両極性電荷輸送能を有するものを用いれば容易に作製可能であるが、現状では該両極性電荷輸送能を有する単一材料は知られていない。
そこで、本発明者等は、従来の電子輸送材料及び正孔輸送材料を混合してなる両極性電荷輸送材料についてより詳細に検討し、特に正、負両電荷の移動度が大きい特定の材料や、特定の構造の正孔輸送性高分子に低分子の電子輸送性材料を分散したものが、電荷発生材料の混合分散特性にも優れており、これらを用いることにより、交流駆動特性に優れた新たな光スイッチング層用の単層の両極性感光体が得られ、前記問題を解消した光書込み型表示媒体の構築が可能であることを見出し本発明を完成させた。
【0027】
図1に、前記のごとき両極性感光体を有する光スイッチング層を用いた本発明の光書き込み型表示媒体の一例の概念図を示す。この光書き込み型表示媒体20は、光スイッチング層30、表示素子40および光スイッチング層30と表示素子40との間に挟まれた機能層50より構成され、光スイッチング層30は基板31、電極32及び両極性感光体層34より構成され、表示素子40は、基板41、電極42および表示層(液晶層等)43から構成される。
【0028】
前記光書き込み型表示媒体20において、光書き込みが光スイッチング層側あるいは表示素子側から行なわれるかにより、光入射側の素子の基板および電極を光透過性にすることが必要である。また、電極32と42との間には交流電界が印加される。
以下、上記構成ごとに本発明の光書き込み型表示媒体を説明する。
【0029】
<光スイッチング層>
図2に、図1に示した光書き込み型表示媒体における光スイッチング層の部分を拡大して示す。これを用いて、本発明における光スイッチング層を説明する。
図2に示す光スイッチング層30(両極性感光体を有する光スイッチング層)は、電極32(導電膜)が形成された基板31上に、光スイッチング層(光導電層)として、単層の両極性感光体層34を設けたものである。図中、矢印は光入射方向を示す(但し、光入射方向はこれに限定されるわけではない)。
【0030】
基板31としては、ガラス、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PEN(ポリエチレンアフタレート)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド、PES(ポリエーテルスルホン)、SUS、Ni、Al等の基板が用いられる。また、光導電層(両極性感光体層)に有機材料を用いる場合には高温で熱処理をする工程がないので、フレキシブル基板が得られること、成形が容易なこと、コストの点などから光透過性のプラスチック基板を用いることが有利である。
基板31の厚みとしては、50〜500μmの範囲程度が好適である。
【0031】
また、電極32としては、ITO膜、Au、SnO2 、Al、Cu等が用いられる。
なお、基板31および電極32は、必ずしも光透過性である必要はない。すなわち、特開2001−100664号公報に示すように、光書き込み型表示媒体の表示素子が、メモリ性を有し、かつ、表示に必要な波長を選択的に反射する選択反射性または後方散乱性の表示素子である場合には、表示側から書き込むことが可能であるので、この場合には少なくとも表示素子側の基板31および電極32が光透過性であればよい。したがって、表示素子側から光書き込みをする場合、光スイッチング素子30の基板31あるいは電極32は光透過性である必要はなく、電極32として不透明なAl層などを用いることもできる。
【0032】
また、光スイッチング層において、任意の機能層を設けることも可能である。たとえば、電極と両極性感光体層との間に電荷の突入を防ぐ層や接着層を形成することができる。また、反射膜や遮光膜を形成することも可能であるし、これらの複数の機能を兼ねた機能層でも良い。このような機能層は電流の流れを著しく妨げない範囲で適用可能である。
【0033】
(両極性感光体)
本発明における両極性感光体は、単層であり、電荷発生材料、正孔輸送性材料及び電子輸送性材料を含んで構成される。
両極性感光体層34に含まれる電荷発生材料としては、金属又は無金属フタロシアニン顔料、スクアリウム顔料、アズレニウム顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスアゾ顔料やトリスアゾ顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール顔料、ジブロモアントアントロンなどの多環キノン顔料、等が適用可能であるが、フタロシアニン顔料である、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、あるいはチタニルフタロシアニンの一種類かあるいは混合物を主成分とする電荷発生材料が好ましい。
【0034】
ヒドロキシガリウムフタロシアニンとしては、X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)がi)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°、ii)7.7°、16.5°、25.1°及び26.6°、iii)7.9°、16.5°、24.4°及び27.6°、iv)7.0°、7.5°、10.5°、11.7°、12.7°、17.3°、18.1°、24.5°、26.2°及び27.1°、v) 6.8°、12.8°、15.8°及び26.0°又はvi)7.4°、9.9°、25.0°、26.2°及び28.2°に強い回折ピークを有するような結晶構造のものが、電荷発生効率が高く、特に好ましい。
【0035】
クロロガリウムフタロシアニンとしては、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°、又は6.8°、17.3°、23.6°及び26.9°、又は8.7°〜9.2°、17.6°、24.0°、27.4°及び28.8°に強い回折ピークを有する結晶構造のものが、電荷発生効率が高く、特に好ましい。
また、チタニルフタロシアニンとしては、X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)が、9.5°,9.7°,11.7°,15.0°,23.5°,24.1°,27.3°に回折ピークをもつ結晶構造のものが、電荷発生効率が高く、特に好ましい。
【0036】
上記電荷発生材料の両極性感光体層中の含有量は、0.1〜20質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
含有量が0.1質量%未満では、光感度が十分でなく光書き込み型表示媒体に用いたときに光書き込みに対する良好な表示特性が得られない場合がある。20質量%を超えると、感光層の暗抵抗が十分大きくできず交流駆動時の駆動マージンが小さくなってしまう場合がある。
【0037】
また、両極性感光体層34は、さらに少なくとも電子輸送性材料及び正孔輸送性材料を含んで構成される。この場合に、材料の組み合わせとしては、低分子電荷輸送性材料同士、低分子電荷輸送性材料及び電荷輸送性高分子、電荷輸送性高分子同士、の3つの形態がいずれも可能である。
【0038】
両極性感光体層34に含有される電荷輸送性材料としては、公知のものならいかなるものでも使用可能であるが、下記に示すものを例示することができる。
正孔輸送性材料としては、例えば2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、などのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N−ジ(p−トリル)フルオレン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4'−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(p−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体など、あるいは、以上に示した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体などを挙げることができる。
【0039】
また、電子輸送性材料としては、例えばクロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3',5,5'テトラ−t−ブチルジフェノキノン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジシクロヘキシルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物など、あるいは、以上に示した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。
【0040】
特に、電子輸送性材料は有機化合物の本質的な問題により、高い輸送性を有するものが得られにくいが、近年、電子写真感光体の分野において電子輸送性材料について精力的な研究がなされ、それらの化合物も好ましく用いることができる。
例えば、特公昭50−10496号公報に記載されたトリニトロフルオレノン、特開昭61−143764号公報に記載されたジシアノメチレンフルオレノン誘導体、特開昭61−225151号公報に記載されたアントラキノンン誘導体、特開昭60−222477号公報に記載されたチオピラン誘導体、特開平5−279582号公報、特開平7−233134号公報、特開平7−258189号公報などに記載されたフルオレノン誘導体、特開平8−245601号公報、特開平8−283249号公報、特開平8−301858号公報、特開平8−286402号公報などに記載されたベンゾオキサゾールあるいはベンゾチアゾール誘導体、特開平8−15878号公報に記載されたベンゾキノン誘導体、電子写真学会誌 第30巻 第3号 266(1991)に記載されたジフェノキノン誘導体、特開平5−25136号公報、特開平5−25174号公報、特開平5−117274号公報、特開平5−125043号公報、特開平5−132464号公報などに記載されたイミド化合物誘導体、あるいは、特開昭52−12153号公報、特開昭52−12154号公報、Macromolecules,22,2266(1989)などに記載された電子輸送性の基をポリマー中に導入した電子輸送性ポリマーなどを挙げることができる。
【0041】
さらには、例えば、特開平8−248656号公報、同8−240921号公報、同8−157476号公報、同8−151534号公報、同8−151532号公報、同−151533号公報、同8−245601号公報、同8−245518号公報、同8−231502号公報、同8−113565号公報、同8−211635号公報などに記載の種々のアクセプター性化合物も好ましく用いられる。
【0042】
これらの正孔輸送性材料と電子輸送性材料とを組み合わせて用いる場合、該正孔輸送性材料と電子輸送性材料とが電荷移動(CT)錯体を形成してしまうと、着色したり、移動度が低下してしまったりすることがある。CT錯体は、正孔輸送性材料及び電子輸送性材料のπ電子軌道が空間的に接近しやすいほど形成されやすいので、空間的な接近を阻害する嵩高い置換基を有するものを用いることが好ましい。
【0043】
上記の観点から、前記低分子の電荷輸送性材料同士の組み合わせとしては、正孔輸送性材料として、嵩高い置換基を有する芳香族第3級アミノ化合物や芳香族第3級ジアミノ化合物などを用いることが好ましく、これらに対して、低分子の電子輸送性材料として嵩高い置換基を有するフルオレノン誘導体やジフェノキノン誘導体などを組み合わせて用いることが好ましい。
また、正孔輸送性材料Aと電子輸送性材料Bとの混合質量比(A/B)は、9/1〜 1/9の範囲とすることが好ましく、7/3〜3/7の範囲とすることがより好ましい。
【0044】
両極性感光体層34において、正孔輸送性材料、電子輸送性材料を共に低分子材料とした場合、成膜性を改善するために各種バインダー樹脂を用いることができる。該バインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等が適用可能である。
特に、ポリカーボネート樹脂は、バインダーとした場合、電荷輸送材料の特性を改善するため、大変有効である。
【0045】
前記正孔輸送性材料及び電子輸送性材料を併せた低分子の電荷輸送性材料の両極性感光体層中の含有量は、20〜90質量%の範囲であることが好ましく、40〜70質量%の範囲であることがより好ましい。
含有量が20質量%未満では、光感度が十分でなく光書き込み型表示媒体に用いたときに光書き込みに対する良好な表示特性が得られない場合がある。90質量%を超えると、感光層全体が脆くなり光書き込み型表示媒体の耐久性が低下する場合がある。
【0046】
本発明においては、両極性感光体層34に電子輸送性材料として低分子の電子輸送性材料を、正孔輸送性材料として正孔輸送性高分子を組み合わせて用いることが好ましい。前述の低分子の正孔輸送性材料及び電子輸送性材料を組み合わせてバインダー樹脂に分散して両極性感光体層を作製する場合には、正、負両電荷について一定以上の移動度を得ようとすると、各々相当量の電荷輸送性材料を混合して両極性感光体層34を形成しなければならず、両者の混合性が悪いだけでなく形成された膜が脆くなり、実使用において耐久性等が問題となる場合がある。
【0047】
本発明者等は、特に正孔輸送性高分子に低分子の電子輸送性材料を分散させたときに、電子輸送性材料を相当量混合した場合でも均一性が保たれ、これに電荷発生材料を混入して両極性感光体層を形成しても膜質が低下することなく、しかも正、負両電荷の移動度もバランスよく高くすることができることを見出した。
【0048】
前記正孔輸送性高分子としては、下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される正孔輸送性高分子のうちの少なくとも1種であることが好ましい。このような正孔輸送性高分子は、正孔輸送の基本単位として優れたトリフェニルアミン構造を有するため、高い正孔輸送性を有すると共に、柔軟性の高い連結構造を有するため低分子化合物の分散性等にも優れる。
【0049】
【化4】

【0050】
一般式(I−1)及び(I−2)中、Y及びZはそれぞれ独立に任意の有機基を表し、Aは下記一般式(II−1)で示される有機基を表し、B及びB’はそれぞれ独立に−O−(Y−O)m−Hまたは−O−(Y−O)m−CO−Z−CO−OR’(ここで、R’は水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基を表し、Y及びZはそれぞれ独立に任意の有機基を表す。)を表し、mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。
【0051】
【化5】

【0052】
一般式(II−1)中、Arは置換もしくは未置換の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の芳香族基を表し、Tは−O−または任意の有機基を表し、k、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表す。
【0053】
一般式(I−1)、(I−2)、(II−1)におけるX、Y、Z、ArおよびTは、具体的には、下記の有機基が好適に挙げられる。
まず、Xとしては、以下の基(IV−1)〜(IV−2)から選択された有機基が好適に挙げられる。
【0054】
【化6】

【0055】
有機基(IV−1)〜(IV−2)中、R10およびR11は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、またはハロゲン原子を表し、aは0または1を表し、Vは下記の有機基(V−1)〜(V−10)から選択されるいずれかを表す。但し、有機基(V−1)〜(V−10)中、bは、1〜10の整数を、cは1〜3の整数を各々表す。
【0056】
【化7】

【0057】
Y及びZとしては、それぞれ独立に下記の有機基(VI−1)〜(VI−7)から選択された基が好適に挙げられる。
【0058】
【化8】

【0059】
有機基(VI−1)〜(VI−7)中、R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、またはハロゲン原子を表し、dおよびeはそれぞれ独立に1〜10の整数を、fおよびgは、それぞれ独立に0、1または2の整数を、hおよびiはそれぞれ独立に0または1を各々表す。また、Vは有機基(IV−1)〜(IV−2)中におけるVと同義である。
【0060】
Arは、置換もしくは未置換の芳香族基を表し、好ましくは置換もしくは未置換の芳香環数2以上の芳香族基、さらに好ましくは芳香環数2〜10の多核芳香環、または置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の縮合芳香環である。具体的には、例えば、置換もしくは未置換のビフェニル基、置換もしくは未置換のターフェニル基、置換もしくは未置換のナフチル基、置換もしくは未置換のフルオレニル基、置換もしくは未置換のフェナントレニル基、または置換もしくは未置換のピレニル基が好適である。
【0061】
ここで、前記多核芳香環または縮合芳香環の置換基としては、例えば水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。前記アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えばフェニル基、トルイル基等があげられる。前記アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられ、具体例としては前述の通りである。
【0062】
Tは−O−または任意の有機基であるが、好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝状炭化水素基である。Tの具体的な構造を以下に示す。
【0063】
【化9】

【0064】
本発明における前記正孔輸送性高分子では、一般式(II−1)おけるXが下記一般式(III−1)、(III−2)及び(III−3)で示される有機基のうちのいずれかであることが特に好ましい。このようなビフェニル構造もしくはターフェニル構造を有する高分子は電荷移動度が高く、実用性の高いものであるからである。
【0065】
【化10】

【0066】
本発明における正孔輸送性高分子の重合度(p)は、5〜5000であるが、成膜性、素子の安定性等の理由から、好ましくは10〜1000の範囲である。また、重量平均分子量Mwは、10000〜300000の範囲にあることが好ましい。
【0067】
本発明における正孔輸送性高分子について、一般式(I−1)で示される構造を有する化合物の具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。なお、Zの欄が「−」であるものは一般式(I−1)で示される正孔輸送性高分子の具体例を示し、その他は一般式(I−2)で示される正孔輸送性高分子の具体例を示す。以下、各化合物番号を付した具体例、例えば、15の番号を付した具体例は正孔輸送性高分子(15)という。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
【表7】

【0075】
【表8】

【0076】
【表9】

【0077】
【表10】

【0078】
【表11】

【0079】
次に、本発明における正孔輸送性高分子の合成方法について説明するが、これに限定されるわけではない。
まず、本発明における正孔輸送性高分子の合成に使用される正孔輸送性構造を有するモノマーについて説明する。例えば、下記一般式(VII−1)で示される化合物が、電荷輸送活性モノマーとして、対応するジアリールアミン誘導体とビスハロゲン化ビフェニル誘導体(Xがビフェニル構造の場合)とを反応させるか、対応するハロゲン化ベンゼン誘導体とジアリールベンジジン誘導体(Xがビフェニル構造の場合)とを反応させて、容易に合成することができる
【0080】
次に、下記一般式(VII−1)で示される正孔輸送活性モノマーを、例えば第4版実験科学講座28巻などに記載された公知の方法で重合することにより、本発明における正孔輸送性高分子を合成することができる。なお、一般式(VII−1)中、Ar、X、T、k及びnは、前記一般式(II−1)におけるAr、X、T、k及びnと同様である。また、A’は水酸基、ハロゲン原子、または基−O−R14を表す。ここで、R14はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基またはアラルキル基を表す。
【0081】
【化11】

【0082】
即ち、本発明における正孔輸送性高分子は、例えば、次のようにして合成することができる。
(1)A'が水酸基の場合
A'が水酸基の場合には、例えば、HO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類をほぼ当量混合し、酸触媒を用いて脱水縮合エステル化反応によって重合させる。酸触媒としては硫酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等、通常のエステル化反応に用いるものが使用でき、正孔輸送活性モノマー1質量部に対して、1/10000〜1/10質量部、好ましくは1/1000〜1/50質量部の範囲で用いられる。合成中に生成する水を除去するために、水と共沸可能な溶剤を用いることが好ましく、トルエン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、正孔輸送活性モノマー1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。反応終了後、溶剤を用いなかった場合には、溶解可能な溶剤に溶解させ、また、溶剤を用いた場合には、反応溶液をそのまま、メタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等のポリマーが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、正孔輸送性高分子を析出させ、正孔輸送性高分子を分離した後、水や有機溶剤で十分洗浄し、乾燥させる。更に、必要であれば適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、正孔輸送性高分子を析出させる再沈殿処理を繰り返してもよい。再沈殿処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく攪拌しながら行うことが好ましい。再沈殿処理の際に正孔輸送性高分子を溶解させる溶剤は、正孔輸送性高分子1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる、また、貧溶剤は正孔輸送性高分子1質量部に対して、1〜1000質量部、好ましくは10〜500質量部の範囲で用いられる。
【0083】
(2)A'がハロゲンの場合
A'がハロゲンの場合には、例えば、HO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類をほぼ当量混合し、ピリジンやトリエチルアミン等の有機塩基性触媒を用いて重合させる。有機塩基性触媒は、正孔輸送性モノマー1質量部に対して、1〜10当量、好ましくは2〜5当量の範囲で用いられる。溶剤としては、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、正孔輸送性モノマー1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できる。重合後、前述のように再沈殿処理し、精製する。また、前記2価のアルコール類がビスフェノール等の酸性度の高い2価のアルコール類の場合には、界面重合法も用いることができる。すなわち、2価のアルコール類に水を加え、当量の塩基を加えて、溶解させた後、激しく攪拌しながら2価のアルコール類と当量の正孔輸送活性モノマー溶液を加えることによって重合できる。この際、水は2価アルコール類1質量部に対して、1〜1000質量部、好ましくは2〜500質量部の範囲で用いられる。正孔輸送活性モノマーを溶解させる溶剤としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効である。反応温度は任意に設定でき、反応を促進するために、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の相間移動触媒を用いることが効果的である。相間移動触媒は、正孔輸送活性モノマー1質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部の範囲で用いられる。
【0084】
(3)A'が−O−R14の場合
A'が−O−R14の場合には、まずHO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類を過剰に加え、硫酸、リン酸等の無機酸、チタンアルコキシド、カルシウムおよびコバルト等の酢酸塩或いは炭酸塩、亜鉛の酸化物を触媒に用いて加熱し、エステル交換反応によりA'を−O−(Y−O)m−Hに変換させ、次に脱HO−(Y−O)m−H縮合エステル化反応によって、重合させる。2価アルコール類は正孔輸送性モノマー1当量に対して、2〜100当量、好ましくは3〜50当量の範囲で用いられる。触媒は、正孔輸送性モノマー1質量部に対して、1/1000〜1質量部、好ましくは1/100〜1/2質量部の範囲で用いられる。反応は、反応温度200〜300℃で行い、−O−R14から−O−(Y−O−)m−Hへのエステル交換終了後はHO−(Y−O−)m−Hの脱離による重合反応を促進するため、減圧下で反応させることが好ましい。また、HO−(Y−O−)m−Hと共沸可能な1−クロロナフタレン等の高沸点溶剤を用いて、減圧下でHO−(Y−O−)m−Hを共沸で除きながら反応させることもできる。
【0085】
以上のように本発明における正孔輸送性高分子は、容易に合成することができる。
両極性感光体層34には、上記正孔輸送性高分子に加えて、他の低分子の電子輸送性材料を混合する。該電子輸送性材料としては、前記例示した電子輸送性材料のうちの低分子のものをいずれも用いることができるが、前記低分子電荷輸送材料同士と同様に、正孔輸送性高分子と電子輸送材料とがCT錯体を形成しないようにすることが好ましく、同様に電子輸送性材料としては、嵩高い置換基を有するものを用いることが好ましい。
【0086】
上記の観点から、前記正孔輸送性高分子としては、前記一般式(II−1)中のArが置換もしくは未置換の芳香環数2以上の嵩高い芳香族基であるものを用いることが好ましく、これらに対して、低分子の電子輸送性材料として、嵩高い置換基を有するフルオレノン誘導体やジフェノキノン誘導体などを組み合わせて用いることが好ましい。
また、正孔輸送性高分子Cと電子輸送性材料Dとの混合質量比(C/D)は、9/1〜1/9の範囲とすることが好ましく、7/3〜3/7の範囲とすることがより好ましい。
【0087】
両極性感光体層34の作製方法としては、真空蒸着法やスパッタ法などドライな膜形成法のほか、溶液あるいは分散液を用いるスピンコート法、ディップ法などの湿式塗布法が適用可能である。湿式塗布法の場合には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン、シクロペンタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0088】
なお、塗布液の作製法としては、上記溶剤に電荷発生材料、電荷輸送性材料を同時に混合して作製してもよいが、事前に電荷発生材料のみ(必要によりバインダー樹脂と併せて)をボールミル、超音波等で溶剤に分散させ、その後前記電荷輸送性材料を加えることが、良好な分散性を有する塗布液を得ることができる点で好ましい。
また、上記塗布液中での電荷発生材料の分散粒径は、体積平均粒径で0.01〜0.2μmの範囲とすることが高感度化等の観点から好ましい。
【0089】
両極性感光体層34の膜厚は、1〜100μmの範囲とすることが一般的であり、1〜10μmの範囲とすることがより好ましい。1μmより薄いと、耐電圧が低くなって信頼性確保が困難となる場合があり、また、10μmより厚くなると、機能素子とのインピーダンスマッチングが困難となって設計が難しくなる場合がある。
【0090】
なお、前記移動度は、ITO基材上に約5μmに形成した両極性電荷輸送層の膜厚を正確に測定し、上部にAuをスパッタ法により設け、膜に10V/μmの電界が印加された状態で窒素ガスレーザ(パルス幅:10nsec)を照射したときに流れる過渡光電流を通常のTOF法(Time−of−flight法)によって観測し、Transit Timeを測定することにより求めた。なお、測定は、20℃の環境にて行った。
【0091】
本発明における光スイッチング層は、光スイッチング層に交流電界を印加し、光を照射した場合にその応答対称性が優れていることに加え、デュアルCGL構造のような上部電荷発生層を塗布することなく作製されるので、高品質かつ低コストで作製し得る光スイッチング層であり、また、電荷輸送層が、上部電荷発生層の形成の際に損傷を受けることがないので、光スイッチング層としての光感度劣化が生じない。
【0092】
(表示層)
前記光スイッチング層には、図1に示すように、表示素子40が電気的に接続される。光スイッチング層30と表示素子40とは直列接続であっても並列接続であっても構わないし、これらの組み合わせであっても構わない。更にほかの素子と接続されていてもよい。
【0093】
光書き込み型表示媒体20は、表示素子40として液晶素子を用いた場合は、光書き込み型液晶空間変調素子として使用することが可能である。特に、液晶素子は、交流駆動が基本であり直流成分を嫌うため、前記光スイッチング層の適用が効果的である。使用できる液晶は、ネマチック、スメクチック、ディスコチック、コレステリック系などである。
【0094】
また、表示素子40としては、メモリ性のある表示層43を用いることが好ましい。メモリ性のある表示層43としては、例えば、前記液晶表示素子のうちメモリ性のある液晶表示層を挙げることができる。メモリ性のある液晶とは、液晶を電圧印加により配向制御した後、電圧印加を解除した後も、一定時間、液晶の配向が保たれる特徴を持った液晶である。たとえば、ポリマー分散型液晶(PDLC)やカイラルスメクチックC相等の強誘電性液晶、あるいはコレステリック液晶等である。また、これらをカプセル化した液晶層でも適用可能である。メモリ性を有する液晶はそのメモリ性ゆえに、画像表示保持のための電力を必要とせず、また、表示媒体を光書き込み装置から分離して使用することが可能とすることができる。
なお、メモリ性のある表示層43を含む表示素子40としては、上記液晶表示素子の他、エレクトロクロミック素子、電気泳動素子、電界回転素子を挙げることができる。
【0095】
また、本発明においては、光スイッチング層30と前記のごとき表示素子40とを接続する場合において、これらを一体化させて光書き込み型表示媒体20とすることが好ましい。一体化させることにより光スイッチング層30と表示素子40との接続を安定化させることができる。
特に、メモリ性を有する表示素子40と光スイッチング層30とを一体化することが効果的である。これらを一体化した光書き込み型表示媒体20は、デバイスを駆動する本体(光書き込み装置)から分離させることが可能となる。したがって、本体から分離させた表示媒体を、例えば配布することが可能になる。また、その使用者は自由な場所で自由な姿勢で閲覧することができる。
【0096】
もちろん、表示部の画像表示のみ分離することにも適用可能である。しかし、表示素子40と光スイッチング層30とを、再度改めて接続する場合の信頼性の確保が困難な場合があるため、表示素子40と光スイッチング層30とを一体化したものの方が効果的である。
【0097】
なお、前記一体化の方法としては、光スイッチング層30、機能層50、および表示素子40を順次積層し一体化したデバイスとすることが、製造の容易性、表示機能の安定化の点から有利である。機能層50としては、たとえば光スイッチング層30と表示素子40とを隔離するための隔離層や、直流成分除去用機能膜等が挙げられる。該直流成分除去用機能膜を備えたデバイスの場合には、交流電界により駆動する際の応答対称性がさらに改善されることになる。
【0098】
本発明の光書き込み型表示媒体20としては、メモリ性を有する液晶素子と光スイッチング層とを一体化したデバイス(画像表示媒体)が特に効果的である。また、上記メモリ性を有する液晶素子のなかでも、コレステリック液晶は、反射率が高く、表示性能が優れているため、コレステリック液晶表示素子と光スイッチング層とを一体化したデバイスが特に光書き込み型表示媒体として望ましい。
【0099】
<光書き込み型表示媒体への書き込み>
上記本発明の光書き込み型表示媒体は、例えば、少なくとも一方が透明電極である一対の電極に交流電圧を印加しつつ、一方が透明でない基板である場合には、透明基板側から画像様の光を照射することで書き込みをすることができる。
【0100】
印加電圧は交流電圧であるが、波形としてはサイン波、矩形波、三角波などが適用可能であり、これらを組み合わせたものでも、全く任意の波形であっても構わない。勿論、表示素子層の構成などによっては、若干の直流成分印加が有効である場合があるが、これを適用しても差し支えない。
【0101】
図3に、本発明の光書き込み型表示媒体に書き込みを行うシステムの概念の一例を示す。図3において、ガラスまたはプラスチック等の光入射側基板31上に、透明な電極32と、両極性感光体層34からなる光スイッチング層と、表示層43と、透明電極42と、表示側基板41と、から構成される本発明の光書き込み型表示媒体20に書き込みを行うシステムを示している。
【0102】
光書き込み型表示媒体20の上下の透明電極32および42は、コネクタ14に接続され、電圧印加手段16により電圧が印加できるようになっている。コネクタ14、電圧印加手段16、光書き込み手段12、ならびに電圧印加手段16および光書き込み手段12を制御するための制御手段18により、光書き込み装置が構成される。該光書き込み装置は、一つにまとめられていてもよいし、分離していてもよい。
コネクタ14は、透明電極32と、透明電極42に接続するためのコネクタで、それぞれの側に接点を有する。勿論、これは自在に取り外しが可能である。
【0103】
電圧印加手段16は、光書き込み手段による光書き込みと同期して、表示のための電圧パルスを印加するものであり、印加パルスの生成手段、出力するためのトリガー入力を検知する手段を有する。パルス生成手段には例えば、ROMのような波形記憶手段とDA変換手段と制御手段とを有し、電圧印加時にROMから読み出した波形をDA変換して光書き込み型表示媒体に印加する手段が適用可能であるし、また、ROMではなくパルス発生回路のような電気回路的な方式でパルスを発生させる手段が適用可能であるが、このほかにも駆動パルスを印加する手段であれば特に制限なく使用することができる。
【0104】
光書き込み手段12としては、光書き込み型表示媒体20の光入射側に照射する光のパターンを生成する手段と、そのパターンを光書き込み型表示媒体に照射する光照射手段とを有する。パターンの生成には、例えば、TFTを用いた液晶ディスプレイ、単純マトリックス型液晶ディスプレイ等の透過型のディスプレイが適用可能である。光照射手段としては、蛍光ライト、ハロゲンランプ、エレクトロルミネッセンス(EL)ライト等が適用可能である。また、パターン生成手段と光照射手段を兼ね備えたELディスプレイやCRT、フィールドエミッションディスプレイ(FED)など発光型ディスプレイも適用可能である。前記のほかにも、照射する光量、波長、照射パターンを制御できる手段であれば、問題なく適用することができる。
制御手段18は、送られてくる画像データを表示データに変換するほか、上記手段の動作を制御するための手段により構成されている。
【0105】
本発明の光書き込み型表示媒体は、以上のような構成の光書き込み装置により、画像を書き込むことができ、一度光書き込み型表示媒体20に書き込んだ画像は、コネクタ14から外しても保持され、閲覧、回覧、配布等に供することができる。また、再度コネクタ14に接続し、電圧を印加することで、書き込んだ画像を消去することもでき、再び別の画像を書き込むことも可能であるため、省資源化の要求に応え得るものである。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0107】
<実施例1>
(光書き込み型表示媒体の作製)
−光スイッチング層−
電極としてITO膜(厚さ800Å)を形成したポリエチレンテレフタレート(PET)基板(厚さ125μm)の前記ITO膜上に、両極性感光体層を形成した。具体的には、まず、電荷発生材料としてのヒドロキシガリウムフタロシアニン(X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)が、7.0°、7.5°、10.5°、11.7°、12.7°、17.3°、18.1°、24.5°、26.2°及び27.1°に強い回折ピークを有するもの)を、モノクロロベンゼンを用いてダイノーミルにより分散させ、濃度が5質量%の電荷発生材料分散液(CG液)を調製した。
【0108】
一方、低分子の電子輸送性材料である3,3’−ジメチル−5,5’−ジシクロヘキシルジフェノキノン10質量部と前記例示した正孔輸送性高分子(32)10質量部とを、モノクロロベンゼン80質量部に溶解させ電荷輸送性材料溶液(CT液)1を調製した。
前記CG液と上記CT液1とを、固形分としての電荷発生材料CGと電荷輸送性材料CTとの質量比(CG/CT)が2/98となるように混合し塗布液とした。これをスピンコート法により塗布、乾燥することによって、前記ITO膜上に5μm厚の両極性感光体層を形成した。
【0109】
−光書き込み型表示媒体−
前記作製した光スイッチング層を用い、その両極性感光体層の上に、隔離層として、スピンコート法によりポリビニルアルコールの3質量%水溶液を塗布し、ポリビニルアルコール膜(膜厚:0.2μm)を形成した。さらに、隔離層の上に、遮光膜、カプセル液晶による表示素子層、透明電極層及び透明基板を以下のようにして形成した。
【0110】
正の誘電率異方性を有するネマチック液晶E8(メルク社製)74.8質量部に、カイラル剤CB15(BDH社製)21質量部とカイラル剤R1011(メルク社製)4.2質量部とを加熱溶解し、その後、室温に戻して、ブルーグリーンの色光を選択反射するカイラルネマチック液晶を得た。このブルーグリーンカイラルネマチック液晶10質量部に、キシレンジイソシアネート3分子とトリメチロールプロパン1分子との付加物(武田薬品工業製、D−110)3質量部と酢酸エチル100質量部とを加えて均一溶液とし、油相となる液を調製した。一方、ポリビニルアルコール(クラレ社製ポバール217EE)10質量部を、熱したイオン交換水1000質量部に加えて攪拌後、放置冷却することによって、水相となる液を調製した。
【0111】
次に、スライダックで30Vの交流を与えた家庭用ミキサーによって、前記油相10質量部を前記水相100質量部中に1分間乳化分散処理して、水相中に油相液滴が分散した水中油エマルジョンを調製した。この水中油エマルジョンを60℃のウォーターバスで加熱しながら2時間攪拌し、界面重合を行わせ、液晶マイクロカプセルを形成した。得られた液晶マイクロカプセルの平均粒径をレーザー粒度分布計によって測定したところ、約12μmと見積もられた。得られた液晶マイクロカプセル分散液を、網目38μmのステンレスメッシュを通して濾過後、一昼夜放置し,乳白色の上澄みを取り除くことにより、液晶マイクロカプセルからなる固形成分約40質量%のスラリーを得た。得られたスラリーに、その固形成分の質量に対して2/3となる量のポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール10質量%の水溶液を加えることにより塗布液Bを調製した。
【0112】
ITO膜付きのPETフィルムのITO膜面の上に、上記塗布液Bをワイヤーバー法にて塗布することにより、液晶を含む表示層を形成し、表示素子を作製した。
一方、先に光スイッチング層及び隔離層が形成されたPETフィルムの隔離層面上に、ブラックポリイミドBKR−105(日本化薬製)を塗布し、遮光膜(厚さ:1μm)を形成した後、更に、ドライラミネート接着剤であるディックドライWS−321A/LD−55(大日本インキ化学工業製)を塗布し、乾燥させて厚さ1μmの接着層を形成した。この接着層の上に、表示層が形成されたPETフィルムを、表示層と接着層とが接するように密着させ、70℃でラミネートを行い、モノクロ表示の光書き込み型表示媒体を得た。
【0113】
(光書き込み型表示媒体の評価)
作製した表示媒体を以下のように評価し、光書込み型表示媒体として有効に機能することを検証した。
−初期表示特性−
光照射は660nmにピークを持つLED光源を用いた。明時(Photo)の光量は、500μW/cm2とした。駆動電圧は、50Hz、8パルスで0〜600Vまで変化させた。電圧パルスとして矩形波、第一パルスが正極性パルス、第二パルスが負極性パルスとした。なお、光照射側基板の透明電極を正に印加した場合を正極性と定義する。同様に暗時(Dark)の反射率を調べた。なお、電圧印加に伴う反射率の変化は、反射光学濃度としてX−rite404(X−rite社製)により測定した。
【0114】
その結果、最大コントラスト(電圧を固定した状態での表示層反射率の明暗比の最大値)が13、駆動マージン(最大明暗比の50%以上のコントラストが得られる電圧幅)が300Vという良好な値が得られた。
【0115】
−耐久性−
図3に示した光書き込み装置を用いて、作製した光書き込み型表示媒体に電圧を印加し、モノクロ画像表示を試みた。書き込みパルスとして矩形波、50Hz、8パルス、300Vを印加した。駆動パルスとしては第一パルスが負極性パルス、第二パルスが正極性パルスとし、これを順次第八パルスまで印加し、最終の第八パルスは正極性パルスとした。正極性パルスは光照射側基板の透明電極に印加した。この結果、暗部と光照射部において、光照射部はグリーン、暗部はブラックのモノクロ画像が得られた。
この操作を繰り返したところ、消し残りによる色むら等の画像劣化は1000回以上の繰り返しでも発生しなかった。
【0116】
<実施例2>
実施例1の光スイッチング素子の作製において、CT液1における正孔輸送性高分子(32)の代わりに正孔輸送性高分子(64)を用いた以外は、同様にして光スイッチング素子を作製し、さらに実施例1と同様にして光書き込み型表示媒体を得た。
【0117】
この光書き込み型表示媒体を用いて実施例1と同様の評価を行なった。その結果、最大コントラストが12、駆動マージンが250Vという良好な値が得られた。また、耐久性も1000回以上の繰り返しで色むら等の画像劣化は発生しなかった。
尚、実施例1の光スイッチング層に比べ、実施例2の光スイッチング層は、曲げや裁断等の機械的ストレスに対する耐性に優れていた。これは、実施例2で用いた正孔輸送性高分子が、前記一般式(I−2)で示される正孔輸送活性モノマーと低分子モノマーの共重合タイプのものであることから、前記一般式(I−1)で示されるタイプのものよりも電荷移動度は劣るものの、柔軟性等の機械的特性に優れるためと推察される。
【0118】
<比較例1>
電極としてITO膜(厚さ800Å)を形成したポリエチレンテレフタレート(PET)基板(厚さ125μm)の前記ITO膜上に、下部電荷発生層を形成した。具体的には、まず、ヒドロキシガリウムフタロシアニン(X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)が、7.0°、7.5°、10.5°、11.7°、12.7°、17.3°、18.1°、24.5°、26.2°及び27.1°に強い回折ピークを有するもの)を電荷発生材料とし、バインダー樹脂としてカルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(ユニオンカーバイド社製、VMCH)を用い、その質量比率を1:1として、モノクロロベンゼンを用いてダイノーミルで分散させ、固形分濃度4質量%の分散液を調製した。これをスピンコート法により基板に塗布後、乾燥させ、膜厚約0.1μmの下部電荷発生層を形成した。
【0119】
正孔輸送材料としてN,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビスフェニル−4−アミン(CTM A)と、バインダー樹脂としてポリ(4,4'−シクロヘキシリデンジフェニレンカーボネート)(ビスフェノール−Z、三菱瓦斯化学社製、重量平均分子量:3万)とを、1:1の質量比で混合した後、これをモノクロロベンゼンに溶解させ20質量%の溶液を調製した。
【0120】
これをスピンコート法により塗布、乾燥することによって、前記下部電荷発生層上に5μm厚の電荷輸送層を形成し、さらにその上に前記電荷発生材料分散液を用いて膜厚約0.3μmの上部電荷発生層を形成して、デュアルCGL構造の光スイッチング層を作製した。
なお、この場合には、上部電荷発生層形成時に電荷輸送層の溶解または膨潤によると思われる顕著な塗布欠陥が発生し、光書込み型表示媒体用の光スイッチング層への適用には耐えないものであった。
【0121】
<比較例2>
実施例1において電子輸送材料を用いなかった以外は、実施例1と同様にして光スイッチング層を作製し、該光スイッチング層を用いて実施例1と同様にして光書込み型表示媒体を作製し、同様の評価を行なった。
評価の結果、最大コントラストは5以下であり、駆動マージンも50V以下と狭く、さらに数回の繰返しで著しくコントラストが低下してしまい、光書込み型表示媒体としては実用に耐えないものであった。
【0122】
以上の結果のように、実施例における光書き込み型表示媒体では、良好な光書き込み特性、繰り返し安定性が得られた。
一方、比較例1では、上部電荷発生層塗布時に致命的な塗布欠陥が発生し、比較例2では、交流駆動適性が不十分であり、光スイッチング層として有効に機能せず、光書込み型表示媒体として実用に耐えないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の光書き込み型表示媒体の一形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明における光スイッチング素子の一形態を示す概略構成図である。
【図3】本発明の光書き込み型記録媒体に書き込みを行うシステムの概念の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0124】
12 光書き込み手段
14 コネクタ
16 電圧印加手段
18 制御手段
20 光書き込み型表示媒体
30 光スイッチング層
31、41 基板
32、42 電極
34 両極性感光体層
40 表示素子
43 表示層
50 機能層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極の間に、少なくとも表示層と光スイッチング層とを含む光書き込み型表示媒体であって、
前記光スイッチング層が、電荷発生材料、正孔輸送性材料及び電子輸送性材料を含む単層の両極性感光層を有することを特徴とする光書き込み型表示媒体。
【請求項2】
前記電子輸送性材料が低分子の電子輸送性材料であり、前記正孔輸送性材料が正孔輸送性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の光書き込み型表示媒体。
【請求項3】
前記正孔輸送性高分子が、下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される正孔輸送性高分子のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の光書き込み型表示媒体。
【化1】

(一般式(I−1)及び(I−2)中、Y及びZはそれぞれ独立に任意の有機基を表し、Aは下記一般式(II−1)で示される有機基を表し、B及びB’はそれぞれ独立に−O−(Y−O)m−Hまたは−O−(Y−O)m−CO−Z−CO−OR’(ここで、R’は水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基を表し、Y及びZはそれぞれ独立に任意の有機基を表す。)を表し、mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。)
【化2】

(一般式(II−1)中、Arは置換もしくは未置換の芳香環数2以上の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の芳香族基を表し、Tは−O−または任意の有機基を表し、k、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表す。)
【請求項4】
前記一般式(II−1)で示される有機基におけるArが、置換もしくは未置換の芳香環数2以上の芳香族基であることを特徴とする請求項3に記載の光書き込み型表示媒体。
【請求項5】
前記一般式(II−1)で示される有機基におけるXが、下記構造式(III−1)、(III−2)及び(III−3)で示される有機基のうちのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の光書き込み型表示媒体。
【化3】

【請求項6】
前記表示層が、メモリ性を有する液晶表示層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光書き込み型表示媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−279369(P2007−279369A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105303(P2006−105303)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】