説明

光機能触媒剤粉末もしくは顆粒の固定と分解脱臭方法

【課題】 悪臭除去を目的とした光機能触媒剤の粉末もしくは顆粒を風にあおられて飛散させない、かつ光機能触媒剤への光透過性と空気透過性にすぐれる固定方法と悪臭分解脱臭機能を効果的に発揮させる。
【解決手段】 秤量15g/m以上80g/m以下の紙、不織布、織布あるいは秤量100g/m以上600g/m以下のガラスクロス、ガラスマットで袋状にしたものに、光機能触媒剤の粉末もしくは顆粒をいれる。そのまま太陽光に当てるか殺菌灯で照射し臭気の分解を行う。あるいは紫外線透過機能を有する石英、ガラス、メタクリル樹脂からなる筒状もしくは皿状の容器に光機能触媒剤の粉末もしくは顆粒を収め、開口部を前述の素材でふさぎ臭気の分解脱臭を行う方法。または殺菌灯の周りに光機能触媒剤の粉末もしくは顆粒をじかに接触させるか袋に詰めたもので覆う方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌、脱臭、セルフクリーニングが出来る光触媒の粉末もしくは顆粒からなる材料を風で飛散させず通気性と光透過性を有するようにして、充分に抗菌、分解脱臭が発揮できるようにした方法にかかわる。
【背景技術】
【0002】
一般に光触媒を用いて脱臭する場合に粉末状のものでは風に飛ばされるためこのままでは利用できず、樹脂で固定したり、フイルターに光触媒を含芯させ固定化したものを紫外線のもとで通風させる方法がとられていた。
ところが樹脂で固定化したものは樹脂に被覆されて露出表面積が減じ、量的にも分解脱臭に預かる光触媒の量が少なく、分解脱臭効果が少ないという問題を抱えていた。
【特許文献1】特開平7−60132号公報
【特許文献2】特開平8−66635号公報
【特許文献3】特開平9-209208号公報
【特許文献4】特開平11−226422号公報
【特許文献5】特開2003−287352号公報
【特許文献6】特開2004−173129号公報
【特許文献7】特開2005−343725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
悪臭の分解除去を目的とした光触媒剤と吸着剤を含む触媒において(以後、光機能触媒剤という)、空気中で風にあおられて飛散させず、かつ光機能触媒剤への光透過性と空気を通過しやすく固定する方法と悪臭の分解除去機能を効果的に発揮させる方法である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
秤量15g/m以上80g/m以下の紙、不織布、織布あるいは秤量100g/m以上600g/m以下のガラスクロス、ガラスマット(これらの材料を以下、通気性材料という)を袋状にしたものに光機能触媒剤の粉末もしくは顆粒をいれ、そのまま太陽光に当てるか殺菌灯に照射することで臭気の分解を行う。あるいは紫外線透過機能を有する石英、ガラス、メタクリル樹脂からなる筒状もしくは皿状の容器に光機能触媒剤を収め、開口部を通気性材料で塞ぎ臭気の分解を行う方法。または管状殺菌灯の周りに光機能触媒剤をじかに接しさせるか袋状につめたもので覆う方法。
(従来技術)
【0005】
室内の抗菌、脱臭、セルフクリーニングなど快適な生活を維持するために、例えば消臭剤噴霧で悪臭分子の固定を行う方法(マスキング法)、プラズマによる分解脱臭もしくは燃焼脱臭という方法がある。
【0006】
このような状況の中、半導体は基本的に光触媒として有機物を分解させる性質があり、その中でも酸化チタンは地球上に膨大な量存在し、価格的に安く有機物分解触媒として快適な環境を維持する技術として、近年多数用いられるようになってきた。
【0007】
しかし、光触媒の1次粒子はナノメーターからマイクロメーターときわめて微細であるためそのままでは風で飛散されやすい。これを防止するために、より大きな基体上に有機物を用いて接着する方法が特開平7-60132号公報に開示されている。
【0008】
さらにはガラスや金属表面に光触媒を薄膜コーティングし、飛散させない対策をとり大気の汚れを表面に付着させないようにしたり(特開平8−66635号公報)、塗料に光触媒剤の粒子をブレンドして塗装面を汚染されにくしたり(特開平11−226422号公報)、あるいは人工植物の表面に溶剤と有機バインダー液に分散させた光触媒剤をスプレーしたものを部屋に置き室内の悪臭やハウスダストを除去する等の方法もある(特開平9-209208号公報)。
【0009】
光触媒剤をハイドロキシアパタイトなどの匂い吸着性あるいはガス状有機物吸着性のある物質と組み合わせた光機能触媒剤を成型・焼結を行い、多孔性焼結体としたものもある。(特開2005−343725号公報)
【0010】
さらには上記、光機能触媒剤の粒子に結合剤を加え石やタイルの芯体に塗布した複合材が出願されている。(特開2004-173129号公報)
【0011】
悪臭を取り除く方法に光触媒を含むハニカム構造の光触媒フィルターと紫外線ランプ並びに送風機を組み合わせた例もある。(例えば特開2003−287352号公報)
【0012】
前述したように、光触媒剤そのものをガラスや金属表面に直接、蒸着させる場合と、きわめて微細な粒子を接着剤を用いて基体に固定するか、光機能触媒剤を成型して多孔質に焼き固める(焼結)などの方法もある。さらには織布もしくは無機質繊維に光触媒を固定して、光触媒フイルターとして用いる方法もある。
【0013】
ガラスや金属表面に光触媒剤を蒸着した場合、光触媒剤自体は匂いや有機物を吸着する能力はほとんどないため、臭気などの有機物を一定箇所にとどめておく事ができず、これらを分解させるに必要な時間を保持できず、充分な脱臭効果を発揮させる事ができない。
【0014】
接着剤を用いた光触媒剤の固定は接着剤が光触媒剤を覆ってしまうことと、接着力を維持するために光触媒剤の分解脱臭効果はそれほど高いとはいえない。
【0015】
一方、匂いを吸着できる物質(例、ハイドロキシアパタイト、アルミナ、ムライト、シリカゲル)を共に多孔質に焼き固めた焼結体は吸着効果に優れているものの、比表面積が大きいにもかかわらず、タイルのように大きな焼結体の場合は芯部まで充分に紫外線が行き渡らないため、粉末状や顆粒状のものに比較して光触媒機能が充分に発揮できないという欠点を有していた。
【0016】
さらに、無機物繊維に光触媒剤と吸着剤を含ませた光触媒フイルターはその悪臭除去に預かる光触媒と吸着剤の量自体が少ないため、時間当たりの悪臭分解速度を早く出来ないという欠点を有している。
【発明の効果】
【0017】
光触媒剤に限らずあらゆる素材は比表面積が大きいほど吸着・吸収並びに化学反応性に優れる事はよく知られている。光触媒剤もより細かい粒子であればあるほど悪臭除去の点から好ましい。細かい光機能触媒剤の粒子を凝集させた顆粒でも、その分解脱臭能力は接着剤や塗料に混合した光触媒剤の場合よりもはるかに優れている。
【0018】
なお、臭気が紫外線を利用しつつ光触媒で分解されるためには光触媒剤に接している臭気分子が一定時間そこにとどまっている事が必要で、そのために匂いを吸着できる物質と共存させて光機能触媒剤とさせる事が必要であり、さらにはその絶対量が多いほど、かつ、充分な紫外線が与えられるほど脱臭効果は高い。
【0019】
光機能触媒剤の分解脱臭効果は湿度が低く温度が比較的高めのほうが好ましい。そのため、殺菌灯や紫外線ランプから発生する熱を利用して光機能触媒の結露を防ぐ事も対策として好ましい。また光機能触媒は紫外線量が多いほど分解脱臭は迅速に行われる。そのために太陽光を用いるのがもっとも好ましいが、天候にも左右されるので殺菌灯や紫外線ランプを用いる事となる。その場合、光機能触媒剤は光源により近い位置に設置するのが好ましい。また、紫外線を有効に利用するために鏡面アルミやミラーで反射光を利用する事も好ましい。
【0020】
光透過と通気性を確保しながら、粉末や顆粒が空気中に飛散もしくは放散させないように固定する方法とそれを用いた分解脱臭方法について以下のべる。
【0021】
本願発明で用いられる光機能触媒剤粉末は2次凝集体が10マイクロメーター以上の粉末か、5mm以下の顆粒、好ましくは2mm以下の顆粒である。この粉末あるいは顆粒を空気中に飛散もしくは放散させないための素材はコウゾ、ミッマタ、ケナフ、バガス等の天然素材からなる紙かPP,PETなどの化学繊維からなる通気性材料である事が好ましい。
【0022】
このように素材の秤量をある範囲に限定したのは、太陽光もしくは紫外線の透過性を有し、通気性を保持し光機能触媒剤の粉末もしくは顆粒が漏れ出る事のないように保持するためである。 その他に紫外線透過性に優れる石英、ガラスまたは紫外線透過機能を有するメタクリル樹脂であって、その形状がパイプ状もしくは皿状のものを併用する事ができる。また、光機能触媒剤のパッケージの単位面積あたりの必要量は要求される分解脱臭量と分解脱臭速度によって異なるが、より効率のよい光機能触媒剤量は下限0.2g/cm上限100g/cmであつて、好ましくは0.5g/cmから10g/cmである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
この発明の第1の実施形態を図1に示す。秤量15g/mのコウゾ、三又からなる和紙(商品名:初午和紙)を幅100mm長さ300mmの角型の袋を製作し、片端から70wt%酸化チタン、残り主体がハイドロキシアパタイトからなる光機能触媒剤70gを入れ封を閉じた。この袋から光機能触媒剤の粉末がこぼれ出る事はなかった。この光機能触媒剤を含む袋を日中の光の当たる窓辺にアルミ箔を敷きその上に乗せた。
【0025】
分解脱臭の効果を見るために、和室6畳の部屋でタバコを1本吸い部屋を密閉した。部屋の空気は攪拌せず自然対流で、約4時間後にタバコを吸わない女性に臭気をチェックしてもらったところ、匂いは感じられなくなっていた。
比較テストは、日照条件が類似の日に光機能触媒剤を使用しないで同じ部屋で同様にタバコを1本吸い、同様に部屋を密閉じ、空気は自然対流だけで攪拌はしなかった。8時間後に同じ女性に臭気の確認をしてもらったところわずかに匂いが残っていた。
【実施例2】
【0026】
この発明の第2の実施形態を図2に示す。紫外線透過型の透明なメタクリル樹脂の板で幅50mm、高さ50mm、長さ200mmの両端開放の角型の筒を作り、その中に図1の実施形態で述べた光機能触媒剤を80g入れ、両端を秤量150g/mのガラスクロスで封をした。これを直射日光の当たる窓辺にアルミ箔を下敷きにして寝かせた。図1の実施形態で同様に6畳の和室にタバコ1本の煙を閉じ込め、扇風機で試料に空気を送るように攪拌した。この場合は約90分で臭気を感じなくなった。
【実施例3】
【0027】
この発明の第3の実施形態を図3に示す。装置は下部に通気孔を設けた箱の中段に10wの殺菌灯を設け、その上部に横木でささえた金網を置き、その金網の上に図1の実施形態で述べた光機能触媒剤75gを入れたガラスクロスの角型の袋を置き、その上に通気孔を開け排気フアンを取り付けた。なお、この装置の開口部以外の内側はすべてアルミ箔を張り、殺菌灯の紫外線が箱内でよく反射するようにした。殺菌灯と光機能触媒剤の入った角型の袋との並行距離は3mmとした。
【0028】
この装置を約6.3m×15.8m×3.2mの比較的空気の動かない部屋で同時に5本のタバコを吸った後、装置を稼動させた。部屋は約2時間で臭気を感じられなくなった。この大きさの部屋は通常はたばこ5本の喫煙があると12時間以上臭気が残る。以上の点から本装置はタバコの分解脱臭に著しい効果を認めた。
【実施例4】
【0029】
この発明の第4の実施形態を図4に示す。10Wの殺菌灯の蛍光管の周りに、図1の実施形態で述べた封筒に150gの光機能触媒剤を入れ、この角型の袋を殺菌灯の蛍光管の長手方向全周囲に覆いかぶせるように取り付けた。袋と殺菌灯との間には空気の流通を良くするために1〜3mmの空隙を設けた。また蛍光管を覆う封筒の外側を真鍮の金網で押さえ蛍光管に固定し、さらに蛍光管の下から送風機で風を送れる構造とした。
【0030】
これを約3.6m×8m×3mの厨房内の天井に2本吊り下げ厨房内のてんぷら臭や食品の匂いの除去状況を確認した。通常、換気扇が止まる夜間から明け方にかけて、調理臭が漂うが、本装置を用いる事によって換気扇が止まる時間帯でも、調理臭がほとんど感じられなくなった。2次的効果として構造上、殺菌灯を直視することによる目の災害を防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の第1の実施形態を立面断面図に示す。
【図2】この発明の第2の実施形態を立面断面図に示す。
【図3】この発明の第3の実施形態を一部立面断面、一部立面図外観図示す。
【図4】この発明の第4の実施形態を一部立面断面、一部立面図外観図示す。
【符号の説明】
【0032】
10:和紙の袋
11:光機能触媒剤
12:光機能触媒剤入り和紙製袋
13:アルミ反射シート
14:メタクリル樹脂
15:ガラスクロス
16:殺菌灯
17:金網
18:吸気孔
19:送排気フアン
20:置き台のレベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
秤量15g/m以上80g/m以下の紙もしくは不織布、織布、あるいは秤量100g/m以上600g/m以下のガラスクロス、ガラスマットで袋状にしたものに、光機能触媒剤の粉末もしくは顆粒を入れる方法。
【請求項2】
両端開放のガラス管、石英管または紫外線透過型メタクリル樹脂の管内に光機能触媒剤を入れたガラスの両端を秤量15g/m以上80g/m以下の紙、もしくは不織布、織布、あるいは秤量100g/m以上600g/m以下のガラスクロス、ガラスマットで両端とも覆う方法。
【請求項3】
内部に殺菌灯を納めた箱の仲に請求項1を収め、箱は吸気または排気がなされる構造とした方法。
【請求項4】
殺菌灯の管外周と請求項1の覆いとの間は部分的または全体的に0.1mmから30mmの空隙をもうける方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−313375(P2007−313375A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142221(P2006−142221)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(504212194)
【出願人】(501363327)
【Fターム(参考)】