説明

光波長変換素子の製造方法およびその製造装置

【課題】分極反転核を均一で高密度に生成することで、分極反転領域の寸法を制御し易い光波長変換素子の製造方法およびその製造装置を提供する。
【解決手段】強誘電体結晶基板の裏側面に裏面電極を形成する裏面電極形成工程300と、前記強誘電体結晶基板の表側面に微細ラインパターンを有する微細電極を形成する微細電極形成工程301と、前記強誘電体結晶基板の前記表側面をエッチングして前記微細ラインパターン部分に溝を形成するエッチング工程302と、前記裏面電極と前記微細電極との間に電圧を印加する第1分極反転工程303と、前記微細電極を除去する微細電極除去工程304と、複数の前記溝を覆うように周期的な複数の周期電極を形成する周期電極形成工程305と、前記裏面電極と前記周期電極との間に前記第1分極反転工程の電圧とは逆極性の電圧を印加する第2分極反転工程306とを備える光波長変換素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光波長変換素子の製造方法およびその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LiNbO、LiTaOなどの強誘電体結晶の誘電分極方向を周期的に180度反転(分極反転)させることにより擬似的に位相整合をさせる方法は、擬似位相整合(QPM:Quasi Phase Matching)と呼ばれている。上記技術により、安価なレーザー光源を用いて、より高い周波数のレーザー光を得ることが可能になる。
分極反転領域を形成する方法としては、Ti拡散法、電子ビーム照射法、電圧印加法などさまざまな手法が研究開発されてきている。電圧印加法による分極反転では、電極のエッジ部分から分極反転の核が発生し、その分極反転核を起点として、強誘電体基板の第1面(+Z面)から第2面(−Z面)に渡り分極反転領域が貫通し、その後、分極反転領域が結合し、分極反転領域の形成が完了する(非特許文献1を参照)。分極反転核は電極のエッジ部分から発生するため、分極反転幅全体を反転させようとすると分極反転領域が電極の外側まで広がってしまう問題があった。また、分極反転幅の広がりを考慮して事前に電極幅を狭くしておく方法はあるが、電極のエッジ部分から分極反転核が発生するのは変わらないので分極反転領域の寸法を制御することが難しかった。そこで、特許文献1は、強誘電体から成る基板の一方の表面を所定の粗さに加工した後その加工表面に第1の金属電極を形成する第1の金属電極形成工程と、前記基板の前記第1の金属電極が形成された面と反対の面の全体表面を覆うように第2の金属電極を形成する第2の金属電極形成工程と、前記第1の金属電極と前記第2の電極との間に電界を印加して前記基板に分極反転部を形成する分極反転形成工程とからなる光波長変換素子の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−309828号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】栗田直 他9名「LiNbO3の分極反転における選択的核成長法I〜動機とその背景化〜」、第49回応用物理学関係連合講演会予稿集(2002年3月 27a−ZS−9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、分極反転させない領域の分極方向の均一性は、最初の強誘電体結晶基板の品質に依存する点や分極反転核の形成位置の制御のし易さの点で問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、発明者は、分極反転核の均一性が分極反転領域の寸法精度に影響すると考え、本発明を考案した。本発明は、分極反転核を均一で高密度に生成することで、分極反転領域の寸法を制御し易い光波長変換素子の製造方法およびその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の光波長変換素子の製造方法は、強誘電体結晶基板の裏側面に裏面電極を形成する裏面電極形成工程と、前記強誘電体結晶基板の表側面に微細ラインパターンを有する微細電極を形成する微細電極形成工程と、前記強誘電体結晶基板の前記表側面をエッチングして前記微細ラインパターン部分に溝を形成するエッチング工程と、前記裏面電極と前記微細電極との間に電圧を印加する第1分極反転工程と、前記微細電極を除去する微細電極除去工程と、複数の前記溝を覆うように周期的な複数の周期電極を形成する周期電極形成工程と、前記裏面電極と前記周期電極との間に前記第1分極反転工程の電圧とは逆極性の電圧を印加する第2分極反転工程とを備えたことを特徴とする。
【0008】
上記の製造方法によれば、分極反転領域の寸法精度が向上した光波長変換素子を製造することができる。
【0009】
なお、前記裏面電極形成工程と前記微細電極形成工程の順番を逆にしてもよい。
【0010】
上記の製造方法において、前記微細電極形成工程の溝は、電子ビーム(EB)で作成され、残留した微細電極部分の電極幅が20nmから100nmのライン状電極パターンであり、前記溝の深さが20nmから100nmであることが望ましい。
【0011】
この方法によれば、微細電極の無くなった微細ラインパターン領域だけがフッ酸あるいはフッ硝酸によってエッチングされるので、複数の微細なライン状の溝を形成することができる。そして、溝深さを20〜100nmとすることによって、微細電極パターンへのダメージを少なくすることができ、微細なエッチングパターンを形成できる。そのライン状の溝によって周期分極反転時の核生成密度を向上でき、周期的な分極反転領域の寸法精度を向上させることが可能となる。
【0012】
さらに、前記微細電極の長手方向と前記周期電極の長手方向とが並行であることが望ましい。この方法によれば、直線性の良い周期分極反転を形成することが可能となる。
【0013】
前記強誘電体結晶基板は、マグネシウムをドープしたニオブ酸リチウム、あるいはマグネシウムをドープしたタンタル酸リチウムであることが望ましい。また、マグネシウムをドープしないニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムでも良い。
【0014】
また、上記の製造方法の例として、マグネシウムをドープしたニオブ酸リチウム、あるいはマグネシウムをドープしたタンタル酸リチウムを用いた場合、強誘電体結晶基板の前記裏側面を結晶の+Z面側とし、前記表側面を結晶の−Z面側とし、前記エッチング工程は、フッ酸あるいはフッ硝酸を用いて前記表側面をエッチングすることを特徴とする。
【0015】
上記の強誘電体結晶基板は、弗酸あるいは弗硝酸によって−Z面だけエッチングされるので、微細ラインパターンの溝を結晶基板の−Z面に形成している。エッチング工程後、結晶基板の分極方向を全面反転して元々の+Z面と−Z面を入れ換えることによって、エッチング工程によって形成した微細な凹凸パターンが+Z面となり、この後の第2分極反転工程によって微細な凹凸パターンから分極反転の核が形成されることとなる。
【0016】
また、本発明の光波長変換素子製造装置は、強誘電体結晶基板の裏側面に裏面電極を形成する裏面電極形成装置と、前記強誘電体結晶基板の表側面に微細ラインパターンを有する微細電極を形成する微細電極形成装置と、前記強誘電体結晶基板の前記表側面をエッチングして前記微細ラインパターン部分に溝を形成するエッチング装置と、前記裏面電極と前記微細電極との間に電圧を印加する第1電圧印加装置と、前記微細電極を除去する微細電極除去装置と、複数の前記溝を覆うように周期的な複数の周期電極を形成する周期電極形成装置と、前記裏面電極と前記周期電極との間に前記第1電圧印加装置の電圧とは逆極性の電圧を印加する第2電圧印加装置とを備えることを特徴とする。
【0017】
上記の製造装置によれば、分極反転領域の寸法精度が向上した光波長変換素子を製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、全面分極反転されたことで最初の強誘電体結晶基板の分極が不均一であっても均一性を担保することができると共に、分極反転核の形成位置が制御されるために、分極反転核を均一で高密度に生成することができ、分極反転領域の寸法を制御し易いので、均一性が高い分極反転領域を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態における光波長変換素子の製造方法のフロー図
【図2】本発明の実施形態における電極形成装置通過後の強誘電体結晶基板の断面図
【図3】本発明の実施形態における微細電極形成工程の現像装置による処理後の強誘電体結晶基板の断面図
【図4】本発明の実施形態における微細電極形成工程の電極エッチング装置による処理後の強誘電体結晶基板の断面図
【図5】本発明の実施形態における微細電極形成工程後の強誘電体結晶基板の断面図
【図6】本発明の実施形態におけるエッチング工程後の強誘電体結晶基板の断面図
【図7】図6の上面図
【図8】本発明の実施形態における第1分極反転工程後の強誘電体結晶基板の断面図
【図9】本発明の実施形態における微細電極除去工程後の強誘電体結晶基板の断面図
【図10】本発明の実施形態における周期電極形成工程の内、絶縁膜パターンを形成した後の強誘電体結晶基板の上面図
【図11】本発明の実施形態における周期電極形成工程の内、絶縁膜パターンと周期電極を形成した後の強誘電体結晶基板の断面図
【図12】本発明の実施形態における第2分極反転工程初期の強誘電体結晶基板の断面図
【図13】本発明の実施形態における第2分極反転工程後の強誘電体結晶基板の断面図
【図14】比較例における分極反転構造が形成された後の断面図
【図15】本発明の実施形態における光波長変換素子製造装置のシステム構成図
【図16】図13の微細電極形成装置の内部を詳細に示した図
【図17】図13の絶縁膜パターン形成装置の内部を詳細に示した図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。
【0021】
本実施例では強誘電体結晶基板としてMgドープした定比組成のニオブ酸リチウム(LiNbO)を用いた。基板の大きさは、直径3インチ、厚さ0.5mmを用いた。
【0022】
図1は本発明の実施例における光波長変換素子の作製工程を示したものである。本発明の実施形態の1つである光波長変換素子の製造方法では、強誘電体結晶基板の裏側面に裏面電極を形成する裏面電極形成工程300と、前記強誘電体結晶基板の表側面に微細ラインパターン10を有する微細電極を形成する微細電極形成工程301と、前記強誘電体結晶基板の前記表側面をエッチングして前記微細ラインパターン10部分に溝を形成するエッチング工程302と、前記裏面電極と前記微細電極との間に電圧を印加する第1分極反転工程303と、前記微細電極を除去する微細電極除去工程304と、複数の前記溝を覆うように周期的な複数の周期電極を形成する周期電極形成工程305と、前記裏面電極と前記周期電極との間に前記第1分極反転工程の電圧とは逆極性の電圧を印加する第2分極反転工程306とを順に実行する。なお、裏面電極形成工程300と微細電極形成工程301の順番は、逆にしてもよい。
【0023】
図2から13は、各工程での強誘電体結晶基板の断面図や上面図を示したものである。図15から17は、本発明の実施形態における光波長変換素子製造装置のシステム構成図である。図中において、各装置で処理された強誘電体結晶基板は、矢印で示された次の装置へ順次搬送される。この光波長変換素子製造装置は、基板洗浄装置110、電極形成装置120,180、微細電極形成装置130、エッチング装置140、電圧印加装置150,190、電極除去装置160、絶縁膜パターン形成装置170、及びダイシング装置180を備える。
【0024】
そして、図16に示すように、微細電極形成装置130は、EBレジスト膜塗布装置131、プリベーク炉132、EB描画装置133、PEベーク炉134、現像装置135、ポストベーク炉136、電極エッチング装置137を備えている。
【0025】
そして、図17に示すように、絶縁膜パターン形成装置170は、基板乾燥装置171、フォトレジスト膜塗布装置172、プリベーク炉173、露光装置174、現像装置175、ポストベーク炉176を備えている。
【0026】
現像装置135、175は、現像液を保持している容器を有しており、この容器内に強誘電体結晶基板1を所定の間浸漬させることにより、EB描画やフォトで感光後のレジスト膜を現像する。現像後の強誘電体結晶基板1は、純水で洗浄された後、エアーガン又はスピンドライヤーを用いて乾燥させた。なお現像装置135、175は、上記した処理を自動で行うものであっても良いし、マニュアル操作で行うものであっても良い。
【0027】
電極形成装置120,180は、例えば蒸着装置やスパッタリング装置である。
【0028】
電圧印加装置150,190は、強誘電体結晶基板1に形成された電極に電圧を印加する装置であり、高電圧電源を有している。
【0029】
以下に、各部のより具体的な説明をする。
【0030】
基板洗浄装置110では、強誘電体結晶基板1をアセトン洗浄後、純水洗浄し、そして乾燥させた。
【0031】
電極形成装置120では、第1面1−2(+Z面側)と第2面1−3(−Z面側)に、Cr層(10nm)とAu層(40nm)をこの順に蒸着して表面電極2と裏面電極3を作成した。Cr層上にAu層を形成するのは、後述する弗酸あるいは弗硝酸によるエッチング工程でCr層が腐食されることを抑制するためである。
【0032】
微細電極形成装置130では、電子ビーム(EB)描画装置を用いたパターニング技術によって第2面1−3(−Z面側)の電極の一部を除去して微細ラインパターン10を作り、微細電極パターン2−2を形成した。図16を参照して、微細電極形成装置130の工程のより詳細な内容を以下に説明する。
【0033】
まず、EBレジスト膜塗布装置131で、基板の第1面1−2の電極上にEBレジスト液(例えば、東京応化工業製OEBR-CAP112PM)をスピンコートで塗布した。そして、プリベーク炉132にて130℃でプリベークを行い、EBレジスト膜11を形成した。その後、この処理と同様に、第2面1−3にもEBレジスト膜12をスピンコートで塗布した後、130℃でプリベークを行った。EBレジスト膜塗布装置131とプリベーク炉132との間を基板が往復することを避けるために、これらの装置をそれぞれ2つずつ用意して、直列配列にしてもよい。
【0034】
EB描画装置133では、電子ビームでスキャンして、図3のような複数のラインが平行に並ぶ微細ラインパターン10の露光パターンをEBレジスト膜12に露光した。なお、第2面1−3にEBレジスト膜12を塗布前に、必要に応じて導電性水溶液をスピンコートによって塗布しても良い。微細ラインパターン10の長さ方向は、結晶のY軸と並行になるように形成した。電子ビーム照射の範囲は、上面から見ると、図7の溝5部分の位置に相当する。具体的には、EBレジスト膜12がある部分とEBレジスト膜12が無い部分がそれぞれ等幅になるように(例えば、50nm間隔)、ストライプ状の微細ラインパターン10になるように電子ビームを照射した。
【0035】
その後、PEベーク炉134にて、110℃で露光後ベーク(PEB)を実施した。そして、現像装置135では、EBレジストを現像し、EBレジスト膜12を得る。PEベーク炉の目的は、EB露光後のレジスト内での化学反応を進めるための熱処理を実施する炉であり、この工程を実施しないと、現像が全くできなくなる。EB露光時間を長くすればある程度現像できるようになるが、露光時間がかなり長くなってしまう。
【0036】
次に、ポストベーク炉136にて、100℃でポストベークし、その後、電極エッチング装置137にてEBレジストの無い領域に露出しているAu層をAuエッチング液によって除去し、それによって露出したCr層をCrエッチング液によって除去した。その後、EBレジスト剥離液によって、EBレジスト膜11,12を除去し、図5、図7に示す構造を作製した。微細電極パターン2は図7に示したように、繋がって1つの電極を形成するようにした。
【0037】
このようにして微細電極パターン2の形成が完了する。微細電極部分の電極幅は、20nmから100nmのライン状電極パターンであることが望ましく、電子ビームの照射における寸法条件によって制御できる。なお、上記のプリベークやPEベークやポストベークの時間は、用いる装置によって適宜調整する。上記のプリベークやPEベークやポストベークの雰囲気は空気である。
【0038】
その後、エッチング装置140では、微細電極パターン12形成した強誘電体結晶基板1を室温で3分程度弗硝酸に浸漬して、電極の無い開口部分に露出している強誘電体結晶基板1の第2面1−3の表面をエッチングして溝5を形成した。エッチングによって形成された溝の深さは50nm程度である。溝の深さは、20nmから100nmであることが望ましく、エッチング条件を適宜変更することで制御できる。
【0039】
その後、電圧印加装置150では、図8に示すように、裏面電極3をプラスの電位、微細電極パターン2をマイナスの電位として、1.5kV、1msのパルスを2万回印加して、下向きの分極方向を上向きに全面反転させた。高電圧パルスの印加条件は、分極方向が全面反転して、かつ結晶が破壊されない条件であればよく、適宜変更可能である。
【0040】
分極方向を全面反転させた後、電極除去装置160では、微細電極パターン2を、Auエッチング液とCrエッチング液によって除去した(図9)。このとき、裏面電極3をエッチングしないように、あらかじめテープ等によって保護しておく。
【0041】
次に、絶縁膜パターン形成装置170では、+Z面に変化した第2面1−3に絶縁膜パターン6を形成した。より詳細な内容を図17に示した。
まず、基板乾燥装置171では、基板を乾燥ベークした。
次に、フォトレジスト膜塗布装置172では、まず、ヘキサメチルジシラザン処理(OAP処理とも呼ばれる。東京応化工業社製OAP(商品名))をした後、第2面1−3にフォトレジスト(例えば、東京応化工業製OFPR−800)をスピンコートで塗布した。次に、プリベーク炉173で、基板を90℃でプリベークした。その後、露光装置174で、マスクアライナーなどの露光機によって所望のパターンをフォトレジストに感光させた。その後、現像装置175で、現像を行い、次に、ポストベーク炉176で、基板を130℃でポストベークした。これらの処理によって周期分極反転パターンに相当する絶縁膜パターン6の形成を行った。
【0042】
実施例で形成した絶縁膜パターン6は、レジストが無い部分が3μmで、周期が6.8μmのストライプ状のラインパターンを形成した。そのラインパターンの長さ方向は、弗硝酸エッチングによって形成した溝5と並行になるよう(結晶のY軸と並行になるように)形成した(図10の平面図を参照)。本実施例では、レジストが無い部分が3μmであるので、その幅の中には30本程度の溝5があることになる。なお、図を簡略化するために、図11〜図13には、1つの絶縁膜6でカバーされる溝5が2本であるようにしか図示していないが、本来は、多数の溝5が存在する。
【0043】
次に、電極形成装置180では、図11に示すように、蒸着装置を用いて、絶縁膜パターン6を覆うように強誘電体結晶基板の表側面1−3の全面に周期電極7を形成した。本実施例ではCr(厚さ200nm)を用いた。絶縁膜で覆われる部分と覆われていない部分を任意の周期性を持って形成することで、強誘電体結晶基板の表側面1−3と周期電極7が接する通電領域と絶縁膜パターン6で覆われる非通電領域の周期的なパターンを作っている。
【0044】
次に、電圧印加装置190では、図12,13に示すように、強誘電体結晶基板1の第2面1−3と第1面1−2の間に、第2面1−3が正電圧となるように高電圧パルスを印加した。高電圧パルスの印加条件として、実施例では裏面電極3をマイナスの電位、周期電極7をプラスの電位として、1.3kV、1msのパルスを4万回印加した。図12に示すように、溝5の下から反転核が発生し、最終的には図13に示すように周期分極反転パターンを形成した。
【0045】
次に、ダイシング装置200では、基板の裏面にダイシングテープを貼り付け、そして、基板を擬似位相整合素子単位に個片化する。なお、ダイシング装置180で先に個片化してから、電圧印加装置190による処理を行っても良い。
【0046】
本発明の実施例の場合(図13)は、後述の比較例と比較すると、周期電極7の下には溝5が多数存在するために、そこから分極反転核が効率良く均一に多数発生した効果によって、アスペクト比が高い分極反転が形成され、比較例に比べ反転領域の広がりを抑制し、制御性を向上させることが可能となった。溝5の間隔が20nmより小さい場合には、弗酸あるいは弗硝酸エッチングの際、電極下への回り込みによって近傍の溝5同士が結合してしまい、効果が小さくなった。また、例えば、分極反転周期が6.8μmの場合には、溝5の間隔を100nmより大きくすると分極反転の核密度が低下してしまい、溝の効果が小さくなってしまう。ただし、分極反転周期が6.8μmより大きい場合には、それに比例して溝5の間隔を100nmより広げても効果は得られる。溝5の深さは、近傍の溝5との間隔と同じ程度が良い。
(比較例)
比較例の断面図を図14に示す。比較例の製造方法は、実施例の方法から、微細電極形成工程301から微細電極除去工程304を除いたものである。具体的には、基板は、基板洗浄装置110を通過後、電極形成装置120で裏面電極(比較例の場合、第2面1−3:−Z面に形成する)のみ形成した。その後、絶縁膜パターン形成装置170以降の工程は、実施例と同じ工程である(絶縁膜パターン6と周期電極7は第1面1−2:+Z面に形成する)。比較例の場合、電極7が無いレジスト膜6の下内部まで分極反転が進行し、分極反転領域が広がってしまい、隣接する領域とかなり接近してしまう。
【符号の説明】
【0047】
1 強誘電体結晶基板
1−2 強誘電体結晶基板の第1面
1−3 強誘電体結晶基板の第2面
2 表面電極
2−2 微細電極パターン
3 裏面電極
4−1,4−2 分極方向
5 溝
6 絶縁膜パターン
7 周期電極
10 微細ラインパターン
11,12 EBレジスト膜
110 基板洗浄装置
120,180 電極形成装置
130 微細電極形成装置
131 EBレジスト膜塗布装置
132 プリベーク炉
133 EB描画装置
134 PEベーク炉
135 現像装置
136 ポストベーク炉
137 電極エッチング装置
140 エッチング装置
150,190 電圧印加装置
160 電極除去装置
170 絶縁膜パターン形成装置
171 基板乾燥装置
172 フォトレジスト膜塗布装置
173 プリベーク炉
174 露光装置
175 現像装置
176 ポストベーク炉
200 ダイシング装置
105,190 電圧印加装置
300 裏面電極形成工程
301 微細電極形成工程
302 エッチング工程
303 第1分極反転工程
304 微細電極除去工程
305 周期電極形成工程
306 第2分極反転工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電体結晶基板の裏側面に裏面電極を形成する裏面電極形成工程と、
前記強誘電体結晶基板の表側面に微細ラインパターンを有する微細電極を形成する微細電極形成工程と、
前記強誘電体結晶基板の前記表側面をエッチングして前記微細ラインパターン部分に溝を形成するエッチング工程と、
前記裏面電極と前記微細電極との間に電圧を印加する第1分極反転工程と、
前記微細電極を除去する微細電極除去工程と、
複数の前記溝を覆うように周期的な複数の周期電極を形成する周期電極形成工程と、
前記裏面電極と前記周期電極との間に前記第1分極反転工程の電圧とは逆極性の電圧を印加する第2分極反転工程と
を備えたことを特徴とする光波長変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記裏面電極形成工程と前記微細電極形成工程の順番を逆にした請求項1に記載の光波長変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記微細電極形成工程の溝は電子ビームで作成され、残留した微細電極部分の電極幅が20nmから100nmのライン状電極パターンであることを特徴とする請求項1または2に記載の光波長変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記溝の深さが20nmから100nmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光波長変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記微細電極の長手方向と前記周期電極の長手方向とが並行であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光波長変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記強誘電体結晶基板が、マグネシウムをドープしたニオブ酸リチウム、あるいはマグネシウムをドープしたタンタル酸リチウムであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光波長変換素子の製造方法。
【請求項7】
強誘電体結晶基板の前記裏側面を結晶の+Z面側とし、前記表側面を結晶の−Z面側とし、
前記エッチング工程は、フッ酸あるいはフッ硝酸を用いて前記表側面をエッチングすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光波長変換素子の製造方法。
【請求項8】
強誘電体結晶基板の裏側面に裏面電極を形成する裏面電極形成装置と、
前記強誘電体結晶基板の表側面に微細ラインパターンを有する微細電極を形成する微細電極形成装置と、
前記強誘電体結晶基板の前記表側面をエッチングして前記微細ラインパターン部分に溝を形成するエッチング装置と、
前記裏面電極と前記微細電極との間に電圧を印加する第1電圧印加装置と、
前記微細電極を除去する微細電極除去装置と、
複数の前記溝を覆うように周期的な複数の周期電極を形成する周期電極形成装置と、
前記裏面電極と前記周期電極との間に前記第1電圧印加装置の電圧とは逆極性の電圧を印加する第2電圧印加装置と
を備えることを特徴とする光波長変換素子製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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