説明

光波面の音響光学強度変調を行うための位相変調技術

音響光学変調器は、音響光学バルク媒体と、この音響光学バルク媒体に取り付けられ且つ電極の直線配列として形成されるトランスデューサとを有する。トランスデューサドライバは夫々の電極に接続され、夫々の電極は、音場の角運動量分布を変更し、光場と音場との間の位相整合を交互に許可及び抑制し、光波面の所望の強度変調を生ずるようコヒーレントに位相駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、光変調システム及び関連する構成要素に関し、より具体的に、音響光学効果により光ビームを変調する音響光学変調器及び同様の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
時々ブラッグセル(Bragg cells)とも呼ばれる音響光学変調器は、無線周波数にある音波を用いて光を回折し且つ偏移させる。斯かる装置は、しばしば、Qスイッチング、電気通信システムでの信号変調、レーザ走査及びビーム強度制御、周波数偏移、並びに分光システムでの波長フィルタリングに用いられる。音響光学変調器は、多くの他の用途で使用されてよい。
【0003】
斯かる音響光学装置で、時々RFトランスデューサとも呼ばれる圧電トランスデューサは、透明な光学材料(例えば、石英ガラス、水晶又は同様のガラス材料)としての音響光学媒体に固定されている。電気RF信号は、透明な媒体内で振動して音波を作り出すようトランスデューサを振動させて駆動する。これにより、光場の特性が光弾性効果を介して媒体において達成される。光弾性効果では、超音波の変調歪み場が音響光学バルク媒体の屈折率に結び付けられる。結果として、振幅における屈折率変化は音のそれに比例する。
【0004】
屈折率は、音響光学バルク媒体での周期的な膨張及び圧縮の面を動かすことによって変更される。入来する光は、ブラッグ回折に類似した、結果として生ずる周期的な指標変調及び干渉のために、散乱する。
【0005】
圧電トランスデューサは音波を生成することができ、光ビームは幾つかの次数に回折される。正弦波信号によりバルク媒体を振動させ、光が高い偏向効率をもたらすよう平面音波から第1の回折次数に反射されるように音響光学変調器を傾けることが可能である。
【0006】
音響光学装置で、光は、通常、1)偏向、2)強度、3)周波数、4)位相、及び5)偏光によって制御され得る。
【0007】
偏向を用いる音響光学変調器で、回折ビームは、音からの波長に関連する光の波長に依存する角度で現れる。しかし、強度によって光を制御する場合に、音によって回折される光の量は、回折ビームにおける光の強さを変調するよう音の強さに依存する。光に対して周波数制御を用いると、回折ビームの周波数は、光が移動面から散乱されるブラッグ回折と比較して、音波の周波数に等しい量だけドップラー偏移される。また、周波数偏移は、フォトン及びフォノンのエネルギ及び運動量(モーメント)が保存されるために、起こりうる。周波数偏移は、少なくとも20MHzから多くとも400MHzまで又は幾つかの場合においてより広い範囲を有して変化しうる。2つの音波は、物質中を反対方向に移動して、定在波を生じさせうる。これは、周波数を偏移させない。位相により光を制御するシステムで、回折ビームは、音波の位相によって偏移され得る。偏光によって光を制御するシステムで、共線(collinear)横断(transversal)音波は、偏光を変更するよう縦波に沿って直交する。このようにして、複屈折位相偏移が起こりうる。
【0008】
音響光学変調器は、それらが傾斜を変更可能な鏡及び他の機械的な装置よりも高速であるために、多くの用途で好ましい。音響光学変調器が既存の光ビームを偏移させるのに要する時間は、音波の通過時間に制限される。音響光学変調器は、しばしば、レーザが、通常ギガワットの範囲にある高いピーク電力でパルス出力ビームを生成するQスイッチで使用される。この出力は、連続波(CW(continuous wave))又は定出力モードを行うレーザよりも高い。
【0009】
音響光学変調器装置及び同様の音響光学システムの例は、同一出願人による米国特許第4,256,362号明細書(特許文献1)、米国特許第5,923,460号明細書(特許文献2)、米国特許第6,320,989号明細書(特許文献3)、米国特許第6,487,324号明細書(特許文献4)、米国特許第6,538,690号明細書(特許文献5)、米国特許第6,765,709号明細書(特許文献6)及び米国特許第6,870,658号明細書(特許文献7)に開示されており、これらの開示はその全文を参照により本願に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,256,362号明細書
【特許文献2】米国特許第5,923,460号明細書
【特許文献3】米国特許第6,320,989号明細書
【特許文献4】米国特許第6,487,324号明細書
【特許文献5】米国特許第6,538,690号明細書
【特許文献6】米国特許第6,765,709号明細書
【特許文献7】米国特許第6,870,658号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の音響光学装置は、通常、装置の動作における使用のために必要とされる必須の駆動電力を供給するよう大きく且つ高価なハイブリッド出力無線周波数(RF)増幅器の使用に頼っている。たいてい、より高い供給電圧が、ハイブリッド出力無線周波数増幅器の必要な出力インターセプト・ポイントを適応させるために印加される。これは、集積回路(IC)及び無線周波数増幅器の両方の必要条件を満たすよう付加的な及び/又はより高価な電源の使用をもたらす。
【0012】
従来の音響光学装置の他の用途で、通常、設計は、超音波歪み場をバルク媒体に導入するようバルク媒体に接合される1又はそれ以上のモノリシック構造の圧電プレートレットを組み込む。幾つかの例で、低コンプライアンス合金は、プレートレットと光バルク媒体との間の幅広いインピーダンス整合を適応させながら、より低い音響損失をもたらすインターフェースを提供するよう2つの構成要素を融合させる。低コンプライアンス・インターフェースによって結合されるプレートレット及び光学媒体についての異なる熱膨張係数(CTE)の組み合わせは、広範な温度条件に従う大きなプレートレット音響光学装置の破砕及び不具合を誘発する局所的な剪断(shear)CTE拡張不整合を引き起こすストレスの原因となる。このような広範な温度条件は、動作不可能な状態で、すなわち、サバイバビリティ保存温度で、又は高レベル信号状態の結果としての幾つかの場合に、起こりうる。
【0013】
音響光学装置を用いる幾つかの重要な用途は、光ビームの強度を変調する。この変調は、装置へのRF変調波形がオン(ON)及びオフ(OFF)にされる場合に導入される局所的な熱過渡のために、回折ビームの出力角度で小さな偏差を生じさせうる。このような熱過渡は、生成されうる焦点スポットの分解能に悪影響を与えうる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
音響光学変調器は、音響光学バルク媒体と、この音響光学バルク媒体に取り付けられ且つ電極の直線配列として形成されるトランスデューサとを有する。トランスデューサドライバは夫々の電極に接続され、これらの電極に接続される複数の増幅器を有し、これにより、夫々の電極は、音場の角運動量分布を変更し、光場と音場との間の位相整合を交互に許可及び抑制し、光波面の所望の強度変調を生ずるよう夫々の増幅器によってコヒーレントに位相駆動される。
【0015】
1つの側面で、前記トランスデューサドライバは、前記電極の直線配列に含まれる交互電極が位相を異にして駆動されるように前記電極に接続される。前記電極の直線配列は、相互嵌合構造及び非相互嵌合構造(interdigitated and non-interdigitated configuration)のうち1つで駆動されるように構成されてよい。
【0016】
更なる他の側面で、夫々の増幅器はモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)を有してよい。プレートレットは、前記電極と前記音響光学バルク媒体との間に位置付けられ得る。このプレートレットは、隣接する電極の夫々の交互相を伝える複数の圧電プレートレット・セグメントとして形成されてよい。
【0017】
前記トランスデューサドライバは、更に、各トランスデューサ素子に接続される直接デジタルシンセサイズ(DDS)回路として形成されてよい。このDDS回路は、複雑なプログラム可能ロジック装置を含む位相アキュムレータ及びメモリとして形成されてよい。デジタル−アナログ変換器(DAC)は、夫々のトランスデューサ素子増幅器に接続される。前記トランスデューサは、入射する光場と印加される音場との間の位相整合を抑制し且つ可能にするように位相コヒーレンスで動作してよい。
【0018】
また、方法に係る側面が記載される。
【0019】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付の図面に照らして考えられる場合に、発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の限定されない例に従う、トランスデューサに直線電極配列を用いる音響光学変調器のハイレベル・ブロック図である。
【図2】図1に示された限定されない例に従うトランスデューサ及び直線電極配列についての音響スペクトル性能を示すグラフである。
【図3】本発明の限定されない例に従う図1に示された直線電極配列を用いる音響光学変調器のエミッタ相ステップ及び周波数に対する位相の大きさを示すグラフである。
【図4】図1に類似する音響光学変調器の他の実施形態についての、本発明の限定されない例に従う音響光学バルク媒体及び接地面に取り付けられているセグメント化された圧電プレートレット配列を示すハイレベル・ブロック図である。
【図5】本発明の限定されない例に従うセグメント化された圧電プレートレットを形成するリダクション(reduction)前の圧電プレートレットを示す部分図である。
【図6】本発明の限定されない例に従うセグメント化された圧電プレートレットを形成するリダクション(reduction)後の圧電プレートレットを示す部分図である。
【図7】本発明の限定されない例に従う音響光学変調器の二相RF変調を可能にするRF変調及びパルス光強度変調のための非相互嵌合ドライブ接続を示す部分図である。
【図8】本発明の限定されない例に従う音響光学変調器の二相RF変調を可能にするRF変調及びパルス光強度変調のための相互嵌合ドライブ接続を示す部分図である。
【図9】音響光学変調器での二相RF変調の結果を示し且つ本発明の限定されない例に従う音響軸及び光軸を示すグラフである。
【図10】本発明の限定されない例に従う音響光学変調器での位相変調の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
様々な実施形態について、以下、好ましい実施形態が示されている添付の図面を参照して、より十分に記載する。多種多様な実施形態が挙げられてよく、記載される実施形態は、ここで挙げられる実施形態に限定されると解されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全且つ完璧であるように与えられ、当業者に適用範囲を十分に伝えうる。同じ参照符号は、全体を通して、同じ要素を参照する。
【0022】
図1は、本発明の限定されない例に従う音響光学変調器としての音響光学変調器20及び音響光学装置24のためのトランスデューサドライバ22を示すブロック図である。図1に示される音響光学変調器20は、装置の有用な動作に必要とされる必須の駆動電力を供給するよう大きく且つ高価なハイブリッド出力RF増幅器に頼る従来の音響光学変調器の欠点を解消する。斯かる先行技術の装置では、標準的に、通常回路の大部分に使用されるよりも高い供給電圧が、ハイブリッド出力RF増幅器の必要な出力インターセプト・ポイント(intercept point)を適応させるのに必要とされる。これは、ドライバ集積回路(IC)及びRF増幅器出力の電力要求及び供給電圧を満足するための付加的な且つより高価な電源につながる。
【0023】
音響光学変調器及び/又は同様の装置の動作のためにRF駆動励起を提供する目下のアプローチは、通常、適切に動作するために従来の音響光学変調器で使用されるコモン圧電電極に十分なRF電力を供給するようハブリッドRF増幅器の使用に頼る。全体のRF駆動電力要求は、求められている音響光学相互作用の特性によって決定される。これは、言い換えると、相互作用媒体で生ずるべき歪み場の振幅及び幾何学的な広がりを決定する。
【0024】
多くの音響光学変調器で、エミッタ(すなわち、電極)駆動電力及び動作キャリア周波数は、パルス超音波イメージングシステムとともに使用される旧来のビデオIC部品の使用を大いに妨げてきた。一般に、音響光学装置は、診断用超音波イメージングアレイ用途についてよりも著しく多い電流を供給可能な低インピーダンスのリニアソースを必要としてきた。ここで記載される本発明の実施形態で、トランスデューサ配列に関連する低コストのモノリシックRF(MMIC)部品の使用は、エミッタ電力及びインピーダンスの考えに一致した必要な光位相遅延を生ずるために必要とされる。音響光学装置のための他の位相配列アプローチは、トランスデューサ配列を駆動するために従来のRF増幅器システムを用いて、増大した帯域幅及び効率に関して得られる音響光学相互作用の利点に焦点を合わせている。
【0025】
本発明の限定されない例に従って、圧電発振器、例えば、トランスデューサは、電極構造26(図1)として形成され、一般にエミッタとも称される個々の電極28の離散直線配列に分けられている。夫々の個別電極28は、表されている低コストのモノリシックRF増幅器30によって駆動される。電極28の数は、通常、複数のモノリシック出力RF増幅器の使用をするのに必要とされる最大素子駆動電力を制限するように、適切な放射抵抗と一致するよう決定される。
【0026】
光と音との間の相互作用は統合的効果であるから、光場で生ずる位相遅延の振幅は、全てのエミッタ、すなわち、電極が高い同期性を保つ限り、単一の大きなトランスデューサの使用と等しい。各増幅器は必要なRF電力の一部しか供給しないので、供給電圧は、また、おおよそ、エミッタ、すなわち、電極の数の平方根によって、減少する。更に、従来のトランスデューサ電極の全体のキャパシタンスは、配列素子のキャパシタンス及び対応する放射抵抗がこの場合に全体の相互作用長さ(interaction length)とは無関係であることから、使用され得る相互作用領域の長さにおいてもはや制限因子とならない。
【0027】
この線形駆動システムの拡張は、実時間において各エミッタ駆動波形の振幅及び位相の両方を設定することができる、全体として参照符号32で表される駆動コントローラとしての直接デジタルシンセサイザ(DDS(direct digital synthesizer))とともに使用される場合に、複数のモノリシック増幅器30によって提供される。低コストのDDSIC部品、又は専用の位相アキュムレータ34及び高速メモリ回路36を用いることによって、正確な位相及び振幅の調整が各電極28に対して行われ、音響エネルギの大部分が単一のステアリング可能なボアサイト方向の放射ローブに向けられ得る。これは、入射光と音場との間の位相整合を保ち、散乱効率における有意な利得、偏向線形性、及び高分解調整可能なフィルタリングを達成する。音響光学変調器20は、また、後述されるように、光強度についての位相のみの変調(phase-only modulation)を実施してよい。
【0028】
音響光学装置のための位相配列アプローチを用いる幾つかのシステムは、従来の単一駆動アプローチを用いてこれらの利点に対処しており、2つの主たる放射ローブのうち1つを介して、又は困難なブレージングプロセス(blazing process)を用いる1つの主ローブへの二相エミッタ励起を用いることによって、部分的な位相整合をもたらす。いずれのアプローチも、大きな配列によって負わされる駆動手法又はインピーダンス制限に対処しない。斯かるシステムは、また、駆動回路によって導入される位相誤差の実時間補正、光強度についての専用の位相のみ変調、及び音響異方性の角度補償を操縦し及び提供する能力に対処しない。それらは、光システムでの幾何学的な欠陥によって導入される周波数アーティファクトに対する非線形走査に対処しない。
【0029】
システム20は、本発明の限定されない例に従って、必要な供給電圧を減らし且つ全体的な信頼性を高めながら、音響光学用途のためにより低コストの実施を提供し且つ必要なRF駆動波形を提供するよう、直線電極配列26とともに複数のモノリシックRF増幅器30を使用する。
【0030】
ドライバ22は、単一の主たる音響放射ローブの重み付け及び操縦を可能にし、増大した帯域幅、散乱効率、位相のみ変調を提供するよう、RF駆動波形の位相及び振幅を調整する。それはまた、システムハードウェアに内在する位相誤差及び非理想的な走査アーティファクトを補正する。
【0031】
記載されるドライバ22は、半導体マスク設備の製造供給源、レーザ設備についての相手方商標製品製造会社(OEM)並びに異なるテクノロジー及び政府カスタマによって使用されるシステムを含め、音響光学変調器及び関連する構成要素の設計に直接的に適用されてよい。それは、高分解能且つ低電力の音響光学調整可能フィルタ(AOTF(acoustic-optic tunable filters))の開発で使用されてよい。
【0032】
再び図1を参照して、音響光学変調器20のより詳細な構成要素について説明する。音響光学装置24は、本例でモノリシック圧電プレートレット40及び音響光学バルク媒体42の上に位置付けられている直線電極配列26を有する。電極20は、接地面43を介して音響光学バルク媒体42に接続する圧電プレートレット40の上に直線配列で形成されている。位相アキュムレータ34は、フラッシュ結合プログラム可能ロジック回路(CPLD(complex programmable logic device))として形成されてよく、位相アキュムレータ及び任意波形発生器として動作可能である。それは、表されている精密多重デジタル−アナログ変換器(DAC)44に信号を入力するとともに、n出力を有する高速メモリ配列36に信号を入力する。通常、フラッシュCPLD34は、離接的な表現又はより特殊化した論理を実施するロジックを有するマクロセルから形成されてよい。それは、プログラマブル・アレイ・ロジック(PLA)回路及びフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)回路から形成されてよい。
【0033】
DAC44は、上述されるように、夫々がモノリシック電力増幅器30及び夫々の電極28に接続される複数のアンチエイリアス・フィルタ/ゲイン回路46に入力する。電極28は、圧電プレートレット40及び音響光学バルク媒体42に接続する離散直線配列を形成する。このようにして、各電極は、低コストのモノリシックRF増幅器によって駆動される。システムクロックは、必要なクロック信号をCPLD34に供給するよう、クロックシンセサイザ及び乗算器回路48とともに使用されてよい。CPLD34は、また、高速変調器入力50としての信号を受信する。
【0034】
各電力増幅器28は、例えば、Sirenza Microdevices社のSBB−2089Z回路のような、高性能MMIC増幅器として形成されてよい。この装置は、温度にわたって安定した電流を供給し且つベータバリエーション(beta variations)を処理するようダーリントン構造及びアクティブ・バイアス・ネットワークを用いる高性能InGaP HBT MMIC増幅器である。それは5ボルト供給から動作することができる。それは、典型的なダーリントン増幅器と比較して、ドロッピング抵抗器を必要としない。それは、サイズが小さく且つ最小限しか余分の部品を必要としない高線形5ボルトゲインブロックアプリケーションを有する。それは内部で50オームと整合する。
【0035】
回路は、約50〜850MHzから動作することができ、カスケード可能であって且つアクティブバイアスをかけられる。それは、240MHzでIP3=42.8dBmを有して鉛不使用のRoHS準拠のパッケージングで利用可能である。他の仕様は、(a)500MHzでP1dB=20.8dBm、(b)単一の固定5ボルト供給、(c)ロバストな1000ボルトESD、クラス1C、(d)低熱抵抗(low thermal resistance)、及び(e)MSL1含水比(moisture rating)を含む。
【0036】
当然に、直接デジタルシンセシス(DDS)回路は、表されているものとは異なる部品を有してよいが、基本的に、クロック、位相アキュムレータ、メモリ及びDACを有しうる。例えば、後述される二相RF変調技術への適用のための幾つかの実施で、デュアル・チャネル又は2つの単一DDSICは、各配列の位相が後述されるように変化しうるように、2つの別個の相互嵌合線形トランスデューサ配列を形成するよう1又はそれ以上のクロック分配バッファICとともに使用されてよい。記載されるトランスデューサ配列に給電する複数の低コストのMMIC増幅器の使用をサポートするRFドライバの離散的な実装において、電子コントローラ又は他のシステムはメモリをデータで満たす。各データアイテムは、同時に、2進ワードとして信号の振幅を表す。位相アキュムレータとしてのカウンタは、データテーブルにおいて各アイテムを選択するよう、周波数リファレンスからパルスごとに一定数ずつ進んで、位相として出力することができる。DACは、このデータの列をアナログ波形に変換する。
【0037】
また、当然に、個々の集積回路(IC)は、個々のコアチップ機能に組み込まれた素子とともに使用され、複数のチップを使用してよい。如何なるシンセサイザも、コモンクロックシンセサイザ及び乗算器48に対して同期しうる。電力増幅器30は、複数のコヒーレントRFソースを提供する位相配列及びコヒーレントアプローチとして分配され使用されてよい。また、集積回路としての複数の直接デジタルシンセサイザ又は組み合わせを使用することが可能であり、それらは全てコモンクロックから自身のコモンコアロジックを導き出す。
【0038】
図2及び図3は、図1に表される音響光学変調器20の音響スペクトル及び隣接素子駆動位相性能を示すグラフである。上述されるように、変調器20は低コストのモノリシック増幅器を使用する。この増幅器は、名目上、電極によって定義される放射インピーダンスを有する負荷に適合する。全体的な配列サイズは、放射インピーダンスが適切な素子サイズを選択することによって調整され得るので、もはや、トランスデューサの全キャパシタンスによって制限されない。結果として、装置の電気的な帯域幅容量を改善するよう全体の放射抵抗を高めるために電極を区分化し又は反転させる必要はない。ビームのステアリングは、幾つかの場合に得られる散乱効率の大規模な増大を有して光と音場との間の位相整合を保つよう行われ得る。狭帯域スペクトルフィルタリングの改善が達成可能であり、熱制御のための後述される二相RF変調が可能である。システムは、幾つかの利用可能な設計に比べて高い信頼性及び簡易な設計を有する。
【0039】
図2は、DDS駆動回路22が生じさせる個々の電極の位相を変化させることによって起こる、音響光学バルク媒体としての水晶内部でのビーム・ステアリングを表すグラフである。上記のドライバは、音響光学バルク媒体の周囲でビームを操縦するために使用され得る。零放射輝度線の右側にある破線は、ビーム・ステアリングについて記載される関数を表す。
【0040】
図3は、ビームを光と音場との間で整合させた状態にするよう所与の周波数で適用されるべき隣接電極間の位相変化についての標準値を示すグラフである。
【0041】
図4、図5及び図6は、このようなシステムの温度信頼性を拡大するとともに、セグメント化された(トランスデューサ)圧電プレートレットを用いて過酷な環境下でのサバイバビリティ(survivability)を高める音響光学変調器を表す。図1に関して記載されるコモン電極は、図4、図5及び図6を参照して、同じ参照符号を付与されている。
【0042】
従来の音響光学装置は、一般的に、1又はそれ以上の圧電プレートレットを組み込む。これらのプレートレットは、超音波歪み場をバルク媒体に導入するよう適切な透明バルク媒体に接合されており、一般に当業者に知られている材料を用いて形成される。たいてい、低コンプライアンス合金接合が、インターフェースを提供するよう2つの構成要素を融合させる。これにより、プレートレットと光バルク媒体との間の幅広いインピーダンス整合を達成しながら低音響損失が実現可能である。通常、接地面が含まれる。低コンプライアンス・インターフェースによって結合されているプレートレット及び光バルク媒体の異なる熱膨張係数の組み合わせは、局所的な剪断(shear)CTE拡張不整合を引き起こすとともに、広範な温度条件に従う場合に大きなプレートレット及び音響光学装置の破砕及び不具合をもたらすストレスの原因となる。このような広範な温度条件は、動作不可能な状態で、すなわち、サバイバビリティ保存温度で、又は高レベル信号状態の結果として、起こりうる。
【0043】
非作動保存状態の間の音響光学装置のサバイバビリティ温度を広げるための幾つかの先行技術のアプローチは、クリティカルな装置インターフェースによって見られる温度変化を制限するよう能動的な温度抵抗ヒータ又は熱電ペルチェ装置を使用する。同様のアプローチは、入念な受動熱設計とともに、トランスデューサが動作することを許される温度極値(temperature extreme)を最小限とするよう装置のアクティブ動作の間も使用される。
【0044】
図4、図5及び図6に示される変調器は、セグメント化された圧電タイル50の配列に分けられたモノリシック圧電トランスデューサプレートレットを有する。結合の前に磨製圧電トランスデューサプレートレットに作られるファインカット(fine cut)51は、図6に示される適切な共振厚さへのプレートレットのリダクション(reduction)の後に現れる。当然に、電極は、配列として個々に駆動されても、又は電気的に接続されて、単一のモノリシックトランスデューサとして駆動されてもよい。
【0045】
トランスデューサプレートレット素子とバルク媒体としての基材との間の自由境界で通常発生しうる全体の差分伸長(differential elongation)はトランスデューサセグメントの個々の横径の低減のためにより小さいので、金属の真空合金化によって生成される拘束境界(constrained boundary)は、より大きい従来のトランスデューサ構造と比較される場合に、より小さい量の剪断ストレスを生ずる。結果として、これらの水晶材料の破断限界は、結合が形成された温度ほど所与の温度極値で達成される可能性が高くない。
【0046】
音響光学装置の温度信頼性を広げるこのアプローチは、事実上受動的であり、遭遇しうる極度の周囲温度にわたりサバイバビリティを高めるよう保存の間能動的なシステムを必要としない。また、熱的に発生するストレス、関連する破砕、及び層間剥離により装置結合の寿命を縮めるより高い電力の適用は、また、結合インターフェースで発生する全てのストレスの大きさの低減の恩恵を受ける。
【0047】
この構造は、様々なレーザ空洞装置及び中出力空冷Qスイッチ装置を含む音響光学変調器部品に適用されてよい。斯かる構造は、また、スペース・クオリフィケーション(space qualification)用途でも使用されてよい。
【0048】
図4は、音響光学バルク媒体42が、セグメント化された電極28と、トランスデューサプレートレットから生成されるセグメント化された圧電タイル50とを有する音響光学変調器20を示す。夫々の電極28及びタイル化されたトランスデューサプレートレット50は、図1に示され且つ電力増幅器及びドライバに対応するブロック22によって全体として表される他の回路部品とともに、夫々の電極増幅器30に接続されている。
【0049】
図5は、リダクション前のトランスデューサプレートレットを示し、一方、図6は、リダクション後のトランスデューサプレートレットを示す。
【0050】
トランスデューサプレートレットをセグメント化することによって、より大きい余地(room)が差分拡張に認められる。タイリング(“tiling”)によって適合されるより小さな距離は、ストレスの如何なる蓄積(“build-up”)も低減する。図5は、トランスデューサプレートレットがカッティング前に約0.030乃至約0.040インチであるようにリダクション前のトランスデューサプレートレットを示す。トランスデューサプレートレットが、関心のある周波数でおおよそ半分の波長音響厚さである共振厚さに低減され得るように、約0.002乃至約0.003インチ厚、すなわち、約50乃至約75ミクロンの深さでカットを予め定め又は事前にカットすることが可能である。通常、これは、所望の厚さとして約20乃至約50ミクロンであってよい。トランスデューサプレートレットが図6に示されるように小さくされる場合にカットを約50乃至約75ミクロン厚とすることによって、カットは所望の間隔にある。
【0051】
製造中に、多数の潜在的なトランスデューサプレートレットは、異なるトランスデューサプレートレットが使用され、共振厚さに低減され得ることを確かにするよう、約200乃至約150ミクロン、すなわち、0.004インチの深さにカットされてよい。
【0052】
如何なるカットもトランスデューサプレートレットが接着された後に行われる場合は、接地面は図らずもカットされることがあるので、接地面又はバルク媒体にトランスデューサプレートレットを接着する前にトランスデューサプレートレットをカットすることが望ましい。また、エッチ・イオン・ミル(etch ion mill)プロセス、マスク又はスパッタプロセス、及び微細形状ためのイオンビームプロセスを使用することも可能である。高調波SAW(harmonic saws)が、また、約0.003乃至約0.005インチである形状を得るために使用されてよい。
【0053】
製造中に、接地面は保護されるべきである。それは、他の部品とともにキャパシタのように動作し、カットされるべきではない。プレートレットのサイズに対する空隙のサイズは、幾つかの用途で重要でありうる。サイドローブが音響回折パターンにより発生するので、エネルギは、このような効果に対抗するようカットが電極の幅に対して小さい限り好ましくない角度で取り除かれ得る。
【0054】
図7乃至10は、光波面の音響光学強度変調を実行するためのRF位相変調技術の詳細を示す。図7及び図8で、電極は28で示されている。トランスデューサプレートレット40及び接地面43は、図1と同じようにバルク媒体42に取り付けられている。
【0055】
光ビームの強さを変調するために音響光学変調を用いる幾つかの用途について、回折ビームの出力角度における小さな偏差は、装置へのRF変調波形がオン及びオフにされる場合に導入される局所的な熱過渡によって生ずる。このような熱過渡は、動作において生成される焦点スポットの分解能に悪影響を与えうる。
【0056】
従来のRF変調波形により起こる角度偏移を安定させるための目下のアプローチは、水晶、すなわち、音響光学バルク媒体で生ずる温度効果の大きさ及び幾何学的変化を最小とするよう局所的な受動温度アプローチに依存する。能動的な分散型薄膜過熱アプローチも実施されており、これは、補償的な温度加熱を提供し且つトランスデューサで静的な温度場を発生させるよう入力RF装置信号の能動的なモニタリング及びアベレージングを必要とする。
【0057】
本発明の限定されない例に従って、一定RF電力の位相変調RF波形は、所望の光学変調を音響光学装置に与え、それによって、従来の駆動アプローチに関連するバルク媒体内の熱過渡の発生を削除し又は大いに低減する。
【0058】
本発明の限定されない例に従うシステム及び方法は、音場の角運動量分布を変更し且つ光場と音場との間の位相整合を交互に許可及び抑制するよう、直線電極配列のコヒーレント位相を使用する。これは、光波面についての所望の強度変調を与える。変調RF波形は、変調RF波形の標準的なオン・オフキーイングによって生ずる熱過渡が大いに削除され得るように、一定平均エンベローブ電力を有する。音響光学バルク媒体内の温度プロフィールは、各トランスデューサ電極での変換プロセスで発生する熱エネルギがRF波形の位相に依存しないので、原則的に固定されたままである。放射音響波面の音響減衰による音響光学バルク媒体内の熱源の影響は、場歪み分布に近い平均が原則的に固定されたままであるので、光学的に大いに平等になる。
【0059】
斯かるシステム及び方法は、半導体の製造及び検査で使用される単一又はマルチチャネル音響光学変調器及び関連する部品に適用されてよい。特に、角度偏差は、既存の32チャンネル音響光学変調器装置(例えば、フロリダ州メルボロンにあるハリス・コーポレーションによって製造されているモデルH−600シリーズ音響光学変調器等)で特性を示され、測定されている。
【0060】
図9は、等方性の音響光学相互作用のための波ベクトル図を示す。この場合に、トランスデューサのボアサイト方向の波ベクトルを伴う通常の位相整合条件は、入射光波の有効な回折をサポートするよう必要な寸法を有する超音波トランスデューサ配列を有する隣接したトランスデューサ素子の間に180度位相偏移を適用することによって損なわれる。
【0061】
図10は、トランスデューサ素子が同相であり且つ光の強い回折が起こる場合及び交互の素子の180度二相状態が適用される場合に、入射光に位相整合する音響エネルギを最小限とするトランスデューサ配列について計算される音響波ベクトルスペクトルを示すグラフである。素子の間隔の思慮深い選択及び位相誤差の入念な制御により、オフ状態の間に生ずる散乱の残留レベルは、オン状態のレベルを下回る許容レベル、通常30dBまで低減され得る。このコントラスト比は、光学媒体による光波面の残留散乱により音響光学変調について通常生ずるレベルと同程度か又はそれよりも良い。
【0062】
図7及び図8は、非相互嵌合システム(図7)及び相互嵌合システム(図8)を示す。当然に、両システムにおける温度制御のための位相変調は、交互電極の位相に適応しうる。音響光学トランスデューサのように、2つの交互のセクションは、音響光学バルク媒体で特定の放射ビームパターンを作り出すよう180度位相がずれて駆動される。相互嵌合システムにおいて示される正及び負の接続と、接地面接続としての第3の接続とがありうる。
【0063】
図9は、K空間ダイアグラムとしてのグラフを示す。K運動量ベクトルは位相整合を示す。入射光波ベクトル及び回折光波ベクトルは、等方性の音響光学バルク媒体においてKi及びKdとして表される。等方的な相互作用は円内の散乱を可能にし、光場と音場との間の位相整合をもたらす。
【0064】
図10に示されるように、零放射に関して真ん中にあるローブは、破線で示されるように電極構造内の交互に並んだ電極の位相が隣接する電極と180度位相を異にして駆動される場合に減少する。図10のグラフの中央部分に示されるように、エネルギは約30デシベル下がり、オン・オフ散乱モードと同様に振る舞う。このように、交互電極の位相が適用されてよい。
【0065】
配列全体が同相であった場合に、結果として得られる実線は光散乱を示す。このように、システムは、記載される位相配列システムで隣接電極の位相を変えることによって変調し又はオフする。このような変調方式は、増幅器が分配されないハイブリッド増幅器システムと比較してより低コストの増幅器の使用を直接的にサポートするとともに、より高出力の電界効果トランジスタ及びより高出力の出力段を必要としうる。これは、概して、熱放射を可能にするよう、増大したヒートシンク能力を必要としうる。それは、また、増幅器の出力インターセプト・ポイントがより高くなければならないために、より高い動作電圧を必要としうる。同時に、この変調方式は、夫々が、上述されるように光ビームの変調を行うよう、個別の位相制御を夫々が有する2つの相互嵌合トランスデューサを駆動する従来のハイブリッド増幅器の組を用いて実施されてよい。
【0066】
トランスデューサ配列を駆動するために複数の低コストの増幅器を使用する更なる利点は、より大きい小部分の帯域幅にわたって大きなトランスデューサを駆動する能力の改善を伴う。電極によって定義される放射インピーダンスは、全体のインピーダンスがキャパシタンスに反比例するために改善される。このように、上述されたようにセグメント領域を可能にすることによって、より小さい領域を有してキャパシタンスを押し下げることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響光学バルク媒体と、
前記音響光学バルク媒体に取り付けられ、電極の直線配列を有するトランスデューサと、
夫々の電極に接続され、前記電極に接続される複数の増幅器を有するトランスデューサドライバと
を有し、
夫々の電極は、音場の角運動量分布を変更し、光場と音場との間の位相整合を交互に許可及び抑制し、光波面の所望の強度変調を生ずるよう夫々の増幅器によってコヒーレントに位相駆動される、音響光学変調器。
【請求項2】
前記トランスデューサドライバは、前記電極の直線配列に含まれる交互電極が位相を異にして駆動されるように前記電極に接続される、請求項1記載の音響光学変調器。
【請求項3】
前記電極の直線配列は、相互嵌合構造及び非相互嵌合構造のうち1つで駆動されるように構成される、請求項2記載の音響光学変調器。
【請求項4】
夫々の増幅器はモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)を有する、請求項1記載の音響光学変調器。
【請求項5】
前記トランスデューサドライバは、入射する光場と印加される音場との間の位相整合を抑制し且つ可能にするよう夫々の電極素子に適切なフェージングを与える直接デジタルシンセサイザ(DDS)回路を更に有する、請求項1記載の音響光学変調器。
【請求項6】
光を変調する方法であって、
音響光学バルク媒体に取り付けられる電極の直線配列として形成される圧電トランスデューサを振動させるステップと、
音場の角運動量分布を変更し、光場と音場との間の位相整合を交互に許可及び抑制し、光波面の所望の強度変調を生ずるよう夫々の電極をコヒーレントに位相駆動するステップと
を有する方法。
【請求項7】
前記電極の直線配列内の交互電極を位相を異にして駆動するステップを更に有する請求項6記載の方法。
【請求項8】
相互嵌合構造及び非相互嵌合構造のうち1つで前記電極を駆動するステップを更に有する請求項7記載の方法。
【請求項9】
複数のモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)増幅器により夫々の電極を位相駆動するステップを更に有する請求項6記載の方法。
【請求項10】
夫々のMMIC増幅器に接続される直接デジタルシンセサイザ(DDS)回路により前記MMIC増幅器を制御するステップを更に有する請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−524032(P2010−524032A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502261(P2010−502261)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/059119
【国際公開番号】WO2009/009174
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(594071675)ハリス コーポレイション (287)
【氏名又は名称原語表記】Harris Corporation
【Fターム(参考)】