説明

光源装置及びプロジェクター

【課題】蛍光体を有する基板の回転バランスが調整され、且つ小型化を図った光源装置及びプロジェクターを提供する。
【解決手段】蛍光体を有する基板と、前記基板の第1の面側に設けられ、前記基板を所定の回転軸の周りに回転駆動する駆動装置と、前記基板のバランスを調整するバランス調整部材と、前記蛍光体から射出される蛍光光が入射する光学系と、を備えた光源装置において、前記光学系は、前記第1の面と対向する前記基板の第2の面に対向するように設けられ、前記バランス調整部材は、前記第1の面に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置及びプロジェクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクターの高性能化に関して、広色域かつ高効率な光源装置として、レーザー光によって励起されて蛍光を発する蛍光体層が設けられ、モーター等の駆動装置によって回転駆動される蛍光回転板を備えたものが知られている。蛍光体層から射出された蛍光光は、蛍光回転板における駆動装置と反対側に近接して配置された光学系により所望の位置に集光されるようになっている。
【0003】
ところで、このような蛍光回転板は、良好な回転特性を得るべく、偏芯等を考慮した回転バランスの調整を行うことが望ましい。
例えば、下記の特許文献1には、カラーホイールを用いたプロジェクターにおいて、駆動装置により回転駆動するカラーホイールに対して回転バランスを取るための部材を設けることが開示されている。この技術においては、例えば、組み立て性の観点からカラーホイールにおける駆動装置と反対側の面にバランス取り部材が設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−325721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、上述したような蛍光体層を備える蛍光回転板に上記技術を組み合わせることで蛍光回転板の回転バランスを調整することも考えられる。しかしながら、このような組み合わせに係る構成においては、バランス調整部材と光学系とが干渉しないように蛍光回転板と光学系との間に空間を開ける必要があり、結果的に光源装置を十分に小型化することができなくなる可能がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、蛍光体を有する基板の回転バランスが調整され、且つ小型化を図った光源装置及びプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の光源装置は、蛍光体を有する基板と、前記基板の第1の面側に設けられ、前記基板を所定の回転軸の周りに回転駆動する駆動装置と、前記基板のバランスを調整するバランス調整部材と、前記蛍光体から射出される蛍光光が入射する光学系と、を備えた光源装置において、前記光学系は、前記第1の面と対向する前記基板の第2の面に対向するように設けられ、前記バランス調整部材は、前記第1の面に設けられることを特徴とする。
【0008】
本発明の光源装置によれば、基板における駆動装置が設けられた第1の面にバランス調整部材が配置されるので、バランス調整部材と光学系とが接触するのを防止できる。よって、基板と光学系とを近接した状態に配置することができるため、蛍光光の利用効率が高く、かつ小型化を実現した光源装置を提供できる。
【0009】
また、上記光源装置においては、前記蛍光体を励起する励起光を発する励起光源を更に備え、前記励起光は前記第1の面側から前記蛍光体に照射され、前記励起光の光軸方向から視て、前記バランス調整部材は、前記基板のうち前記励起光が照射される領域とは異なる領域に設けられていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、励起光が基板を透過する透過方式の光源装置において、励起光がバランス調整部材に照射されて蛍光体には照射されない、といった不具合の発生を防止することができる。そのため、励起光を蛍光体に対して効率的に照射することができる。
【0011】
また、上記光源装置においては、前記蛍光体を励起する励起光を発する励起光源を更に備え、前記励起光は前記第2の面側から前記蛍光体に照射され、前記蛍光光を反射する反射面が前記バランス調整部材と前記蛍光体との間に設けられていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、バランス調整部材の配置の自由度が高い。つまり、バランス調整部材の配置に関わらず、励起光を効率的に蛍光体層に照射することができる。そのため、バランス調整部材が駆動装置と接触しない限り、励起光入射領域とは無関係に、基板の第1の面の任意の場所にバランス調整部材を設けることができる。したがって、基板の回転バランスを高い精度で調整することができる。
【0013】
また、上記光源装置においては、前記励起光の光軸方向から視て、前記バランス調整部材は前記蛍光体と重なる領域に設けられていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、基板の小型化を図りつつ、基板の回転バランスを高い精度で調整することができる。
【0015】
また、上記光源装置においては、前記バランス調整部材は、前記基板と前記駆動装置との間に設けられていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、バランス調整部材が基板と駆動装置との間に設けられるので、励起光の光軸方向から視てバランス調整部材と駆動装置とを重なった状態に配置することができる。そのため、小型の基板を採用した場合でもバランス調整部材によってバランスを容易に調整することができる。
【0017】
本発明のプロジェクターは、上記の光源装置と、前記光源装置から射出された前記蛍光を画像信号で変調する光変調素子と、前記光変調素子により変調された前記蛍光を投射する投射光学系と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明のプロジェクターによれば、上述したように光学系と基板とが近接した状態に配置されることで小型化が図られた光源装置を備えるので、該光源装置自体を備えるプロジェクター自体も小型なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクターの光学系を示す模式図である。
【図2】第1実施形態に係る回転蛍光板の構成を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る回転蛍光板の要部構成を示す断面図である。
【図4】第1実施形態に係る回転蛍光板について基板の裏面側から視た構成を示す図である。
【図5】第2実施形態に係るプロジェクターの光学系を示す模式図である。
【図6】(a)、(b)は第2実施形態に係る回転蛍光板の要部構成を示す図である。
【図7】変形例に係る回転蛍光板の要部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造における縮尺や数等が異なっている。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の光源装置が適用された光源装置を含むプロジェクターの光学系を示す模式図である。図1に示すように、プロジェクター100は、光源装置10Aと、色分離導光光学系20と、光変調装置としての液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bと、クロスダイクロイックプリズム50及び投写光学系60と、を備えている。
【0022】
光源装置10Aは、光源10、第1集光レンズ55、回転蛍光板30、コリメート光学系85、第2集光レンズ90、ロッドインテグレーター80、及び平行化レンズ70を備えている。すなわち、光源装置10から射出される励起光ELの光路上には、第1集光レンズ55、回転蛍光板30、コリメート光学系85、第2集光レンズ90、ロッドインテグレーター80、平行化レンズ70がこの順に配置されている。コリメート光学系85は、本発明において蛍光体層から射出される蛍光光が入射する光学系を構成するものである。
【0023】
光源10は、例えば基台上に複数のレーザー光源(発光素子)が行方向及び列方向に沿って2次元配列されたレーザー光源アレイから構成されるものである。光源10は、後述する回転蛍光板30が備える蛍光物質を励起させる励起光ELとして、青色(発光強度のピーク:450nm付近)のレーザー光を射出する。なお、光源10から射出される励起光ELは、後述する蛍光物質を励起させることができる波長の光であれば、450nm以外のピーク波長を有する色光を射出する励起光源であっても構わない。
【0024】
図2は回転蛍光板30の構成を示す図である。
回転蛍光板30はいわゆる透過型の回転蛍光板であって、図2に示すように円板状の基板31と、該基板31を回転駆動するモーター33とを備えている。モーター33は本発明における駆動装置を構成するものである。基板31の表面34には、回転方向に沿って蛍光体層32が形成されている。なお、以下の説明においては、便宜上、基板31におけるモーター33が設けられている側の面を裏面35と称し、裏面35と対向する基板31の面を表面34と称する。ここで、基板31における表面34とは本発明の第2の面を構成するものであり、基板31における裏面35とは本発明の第1の面を構成するものである。
【0025】
蛍光体層32が形成されている領域は、励起光ELが入射する領域S(以下、励起光入射領域Sと称す場合もある)を含む。励起光ELは、基板31の裏面35側から基板31を介して蛍光体層32に入射する。基板31がモーター33によって、後述する回転軸33bの周りに回転駆動されることにより、励起光入射領域Sは、回転軸33bの周りを基板31に対して相対的に移動する。
【0026】
基板31は、励起光ELを透過する材料よりなる。基板31の材料としては、例えば、石英ガラス、水晶、サファイア、光学ガラス、透明樹脂等を用いることができる。図示していないが、基板31の蛍光体層32が設けられている面とは反対側の面には、誘電体多層膜が設けられている。誘電体多層膜はダイクロイックミラーとして機能するものであり、励起光ELである450nm付近の光は透過し、蛍光体層32から射出される蛍光の波長範囲(490nm〜750nm)を含む490nm以上の光は反射するようになっている。なお、基板31の形状は、円板状に限るものではない。
【0027】
基板31は、使用時において7500rpmで回転する。詳しい説明は省略するが、基板31の直径は50mmであり、基板31に入射する励起光ELの光軸が基板31の回転中心から約22.5mm離れた場所に位置するように構成されている。つまり、基板31は、励起光ELの集光スポットが約18m/秒で蛍光体層32上を移動するような回転速度で回転する。
【0028】
このような基板31では、蛍光体層32に励起光ELが入射されると、蛍光体層32の励起光入射領域Sに対応する部分が発熱する。そして、この発熱した部分(発熱部分)は、基板31が回転することにより、回転軸33bの周りを円を描いて移動し、再び、励起光入射領域Sに戻るというサイクルを繰り返す。これにより、発熱部分が移動の過程で冷却されるようにしている。
【0029】
光源装置10から射出されたレーザー光(青色光)は、励起光ELとして前記誘電体多層膜を介して裏面35側から蛍光体層32に入射し、蛍光体層32は励起光ELが入射する側とは反対側である表面34側に向けて蛍光(赤色光及び緑色光)を射出する。
【0030】
蛍光体層32は、蛍光を発する蛍光体からなる蛍光体粒子を有しており、励起光EL(青色光)を吸収し、概ね490〜750nmの蛍光に変換する機能を有する。この蛍光には、緑色光(波長530nm付近)及び赤色光(波長630nm付近)が含まれる。
【0031】
蛍光体粒子は、光源装置10から射出される励起光ELを吸収し、蛍光を発する粒子状の蛍光物質である。例えば、蛍光体粒子には、波長が約450nmの青色光によって励起されて蛍光を発する物質が含まれており、励起光ELの一部を、赤色の波長帯域から緑色の波長帯域まで含む光(黄色光)に変換して射出する。なお、励起光ELの一部は、上記黄色光に変換されない。すなわち、光源装置10からは赤色、緑色、青色を含む白色の蛍光光が射出されるようになっている。
【0032】
蛍光体粒子としては、通常知られたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体を用いることができる。例えば、平均粒径が10μmの(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ceで示される組成のYAG系蛍光体を用いることができる。なお、蛍光体粒子の形成材料は、1種であっても良く、2種以上の形成材料を用いて形成されている粒子を混合したものを蛍光体粒子として用いることとしても良い。
【0033】
コリメート光学系85は、回転蛍光板30と第2集光レンズ90との間の光(励起光EL及び蛍光)の光路上に配置されている。コリメート光学系85は、回転蛍光板30からの光の広がり抑える第1レンズ81と、第1レンズ81から入射される光を平行化する第2レンズ82と、各レンズ同士を固定するベース部83を含んで構成されている。第1レンズ81は、例えば凸のメニスカスレンズからなり、第2レンズ82は、例えば凸レンズからなる。コリメート光学系85は、回転蛍光板30からの光を略平行化した状態で第2集光レンズ90に入射させる。
【0034】
第2集光レンズ90は、例えば凸レンズからなる。第2集光レンズ90は、コリメート光学系85(第2レンズ82)を透過する光の光線軸上に配置され、コリメート光学系85を透過した光を集光する。
【0035】
第2集光レンズ90を透過した光は、ロッドインテグレーター80の一端側に入射する。ロッドインテグレーター80は、光路方向に延在する角柱状の光学部材であり、内部を透過する光に多重反射を生じさせることにより、第2集光レンズ90を透過した光を混合し、輝度分布を均一化するものである。ロッドインテグレーター80の光路方向に直交する断面形状は、液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bの画像形成領域の外形形状と略相似形となっている。ロッドインテグレーター80の他端側から射出された光は、平行化レンズ70により平行化され、光源装置10Aから射出される。
【0036】
色分離導光光学系20は、ダイクロイックミラー21、ダイクロイックミラー22、反射ミラー23、反射ミラー24、反射ミラー25及びリレーレンズ26を備えている。色分離導光光学系20は、光源装置10からの光を赤色光、緑色光及び青色光に分離し、赤色光、緑色光及び青色光のそれぞれの色光を照明対象となる液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bに導光する機能を有する。
【0037】
ダイクロイックミラー21、ダイクロイックミラー22は、基板上に、所定の波長領域の光を反射して、他の波長領域の光を透過させる波長選択透過膜が形成されたミラーである。具体的には、ダイクロイックミラー21は、青色光成分を透過させ、赤色光成分及び緑色光成分を反射する。ダイクロイックミラー22は、緑色光成分を反射して、赤色光成分を透過させる。
【0038】
反射ミラー23、反射ミラー24、反射ミラー25は、入射した光を反射するミラーである。具体的には、反射ミラー23は、ダイクロイックミラー21を透過した青色光成分を反射する。反射ミラー24、反射ミラー25は、ダイクロイックミラー22を透過した赤色光成分を反射する。
【0039】
ダイクロイックミラー21を透過した青色光は、反射ミラー23で反射され、青色光用の液晶光変調装置40Bの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー21で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー22でさらに反射され、緑色光用の液晶光変調装置40Gの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー22を透過した赤色光は、入射側の反射ミラー24、リレーレンズ26、射出側の反射ミラー25を経て赤色光用の液晶光変調装置40Rの画像形成領域に入射する。
【0040】
液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bは、通常知られたものを用いることができ、例えば、液晶素子41と液晶素子41を挟持する偏光素子42、偏光素子43とを有した、透過型の液晶ライトバルブ等の光変調装置により構成される。偏光素子42、偏光素子43は、例えば透過軸が互いに直交する構成(クロスニコル配置)となっている。
【0041】
液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bは、入射された色光を画像情報に応じて変調してカラー画像を形成するものであり、光源装置10Aの照明対象となる。これら液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G及び液晶光変調装置40Bによって、入射された各色光の光変調が行われる。
【0042】
例えば、液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bは、一対の透明基板に液晶を密閉封入した透過型の液晶光変調装置であり、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像情報に応じて、入射側の偏光素子42から射出された1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。
【0043】
クロスダイクロイックプリズム50は、偏光素子43から射出された色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム50は、4つの直角プリズムを貼り合せた平面視略正方形状をなしている。直角プリズムを貼り合せた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向が揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0044】
クロスダイクロイックプリズム50から射出されたカラー画像は、投写光学系60によって拡大投写され、スクリーンSCR上で画像を形成する。
【0045】
図3は回転蛍光板30の、基板31の回転中心を含む面で切断した断面図である。また、図4は回転蛍光板30について基板31の裏面側(蛍光体層32が設けられていない面側)から視た構成を示す図である。
図3に示すように、モーター33は、本体部33aと回転軸33bとを有している。また、基板31の裏面35にはハブ35aを有し、該ハブ35aに設けられた開口を介してモーター33の回転軸33bが基板31に取り付けられている。ハブ35aは基板31の裏面35の一部を構成するものである。モーター33は、本体部33aがハブ35aに当接した状態で基板31に対して取り付けられている。これにより、基板31の回転時にモーター33と基板31との間にガタツキが生じるのを防止している。
【0046】
回転蛍光板30においては、コリメート光学系85に対して多くの蛍光光を入射させるべく、基板31の偏芯等を考慮した回転バランスの調整を行っている。具体的に本実施形態に係る回転蛍光板30は、基板31の裏面35にバランス調整部材110を配置している。バランス調整部材110は、例えば接着剤等の樹脂材料から構成されており、基板31の裏面35に直接設けられている。なお、バランス調整部材110としては、樹脂材料に限定されることはなく、例えば金属部材を接着剤によって貼着したものを用いても構わない。また、バランス調整部材110の形状は任意である。
【0047】
図3、4に示すように基板31の裏面35を、バランス調整部材110を配置するための配置領域A1と、励起光ELが照射される照射領域A2とに仮想的に区分けすることができる。。配置領域A1は、基板31を裏面35側から視た際、モーター33の本体部33aの外周部を同心円状に囲んでいる。すなわち、配置領域A1は基板31の裏面35(ハブ35aを含む)における一部の領域である。バランス調整部材110は、配置領域A1内に配置され、本実施形態では例えば基板31の裏面35に対して2個配置している。なお、バランス調整部材110の数は、これに限定されることは無く、基板31の回転バランスに応じて適宜、1個或いは3個以上配置することができる。また、バランス調整部材110はハブ35a上に直接配置するようにしてもよい。
【0048】
また、照射領域A2は、上記配置領域A1の外周部を同心円状に囲んでいる。前述したように、励起光入射領域Sは、回転軸33bの周りを基板31に対して相対的に移動する。基板31を励起光ELの光軸方向から視た際、照射領域A2は基板31上での励起光入射領域Sの軌跡を含む。すなわち、配置領域A1に配置されたバランス調整部材110は、励起光ELの光軸方向から視て励起光ELが照射される領域とは異なる領域である。これにより、励起光ELがバランス調整部材110に照射されて蛍光体層32には照射されない、といった不具合の発生を防止することができ、励起光ELを蛍光体層32に対して効率的に照射することができる。
【0049】
ところで、蛍光体層32から射出される蛍光光はランバート発光するため、コリメート光学系85(第1レンズ81)によって蛍光光を効率的に取り込むためには、コリメート光学系85を蛍光体層32に近接した状態で対向するように配置する必要がある。本実施形態に係る光源装置10Aによれば、バランス調整部材110が基板31の表面34ではなく裏面35に設けられているため、コリメート光学系85を蛍光体層32(基板31の表面34)に近接した状態で対向するように配置することができる。具体的に本実施形態では、蛍光体層32とコリメート光学系85との間隔dは、例えば1mm程度に設定されている。これにより、光源装置10Aの小型化を実現できる。
【0050】
また、本実施形態に係るプロジェクター100によれば、コリメート光学系85と回転蛍光板30の基板31とが近接した状態に配置されることで小型化が図られた光源装置10Aを備えるので、該光源装置10A自体を備えるプロジェクター100自体も小型化することができる。
以上のように、プロジェクター100は、バランス調整部材110を備えることで回転蛍光板30の回転バランスが調整され、且つ小型化が図られた信頼性の高いものとなる。
【0051】
(第2実施形態)
続いて、本発明のプロジェクターの第2実施形態に係る構成について説明する。本実施形態と第1実施形態との違いは、光源装置の構成であり、それ以外の構成については同一である。そのため、以下の説明では、第1実施形態と同一の部材及び構成については同じ符号を付し、その詳細な説明については省略若しくは簡略化するものとする。
【0052】
図5は本実施形態に係るプロジェクター200の光学系を示す模式図である。本実施形態におけるプロジェクター200は、図5に示されるように、光源装置110Aと、色分離導光光学系20と、光変調装置としての液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bと、クロスダイクロイックプリズム50及び投写光学系60と、を備えている。
【0053】
光源装置110Aは、光源10、第1集光レンズ55、コリメートレンズ56と、回転蛍光板30と、モーター33と、ピックアップ光学系94と、ダイクロイックミラー91と、第2集光レンズ90と、ロッドインテグレーター80と、平行化レンズ70と、を備えている。
【0054】
ピックアップ光学系94は、単一または複数のレンズ、例えば、第1レンズ93と第2レンズ92とを備えている。ピックアップ光学系94は、光源10から射出された励起光ELを蛍光体層32上に集光する。さらに、蛍光体層32から射出された蛍光光がピックアップ光学系94に入射し、入射した蛍光光を略平行化する。なお、ピックアップ光学系94は、本発明において蛍光体層から射出される蛍光光が入射する光学系を構成するものである。
【0055】
光源10から射出された励起光ELは、第1集光レンズ55とコリメートレンズ56で一旦光束が細められる。その後、ダイクロイックミラー91にて90度光路が折り曲げられ、ピックアップ光学系94で回転蛍光板30の蛍光体層32上に集光される。本実施形態に係る光源装置110Aでは、基板31の第2の面側から励起光ELが蛍光体層32に入射し、蛍光体層32から発せられた蛍光光は基板31の第2の面側に設けられたピックアップ光学系94に向けて射出される。
【0056】
図6(a)は本実施形態における回転蛍光板30の、基板31の回転中心を含む面で切断した断面図であり、図6(b)は図6(a)における蛍光体層32の構成を示す拡大図である。本実施形態においても、基板31におけるモーター33が設けられている側の面を裏面35と称し、裏面35と対向する基板31の面を表面34と称する。表面34は本発明の第2の面を構成し、裏面35は本発明の第1の面を構成する。
【0057】
図6(a)、(b)に示すように、本実施形態に係る基板31は、蛍光体層32のピックアップ光学系94とは反対側に蛍光光を反射する反射面36を備えている。具体的に本実施形態では、反射面36が基板31の表面34に設けられ、蛍光体層32が反射面36の上に設けられている。
【0058】
反射面36は、例えばアルミ等の金属膜から構成されるものである。なお、第1実施形態と異なり、本実施形態においては、励起光ELは基板31を透過する必要が無いことから、基板31自体を光透過性を有する透明部材で構成する必要はない。本実施形態に係る基板31としては、例えばアルミ等の金属部材を用いて形成することができる。このように基板31自体を光反射性を備えた金属部材で構成し、基板31により上記反射面36を構成するようにしても構わない。
【0059】
本実施形態においても、ピックアップ光学系94に対して多くの蛍光光を入射させるべく、基板31の偏芯等を考慮した回転バランスの調整を行っている。具体的に本実施形態に係る回転蛍光板30は、基板31の裏面35にバランス調整部材110を配置している。
【0060】
本実施形態に係る光源装置110Aでは、基板31の第2の面側から励起光ELが蛍光体層32に入射するため、バランス調整部材110の配置の自由度が高い。つまり、バランス調整部材の配置に関わらず、励起光を効率的に蛍光体層に照射することができる。例えば、図6(a)に示したように、励起光ELの光軸方向から視て、バランス調整部材110を蛍光体層32と重なる領域に配置することができる。このように、バランス調整部材110がモーター33と接触しない限り、励起光入射領域Sとは無関係に、基板31の裏面35の任意の場所にバランス調整部材110を設けることができる。したがって、基板の回転バランスを高い精度で調整することができる。
【0061】
また、バランス調整部材110を図6(a)に示したように配置することによって、基板31の小型化を図りつつ、基板31の回転バランスを高い精度で調整することができる。
【0062】
前述したように、蛍光体層32から射出される蛍光光はランバート発光するため、ピックアップ光学系94(第1レンズ93)によって蛍光光を効率的に取り込むためには、ピックアップ光学系94を蛍光体層32に近接した状態で対向するように配置する必要がある。本実施形態に係る光源装置10Aによれば、バランス調整部材110が基板31の表面34ではなく裏面35に設けられているため、ピックアップ光学系94を蛍光体層32(基板31の表面34)に近接した状態で対向するように配置することができる。具体的に本実施形態では、蛍光体層32とピックアップ光学系94との間隔dは、例えば1mm程度に設定されている。これにより、蛍光光を効率的に利用することができるだけでなく、光源装置10Aの小型化を実現できる。
【0063】
また、本実施形態に係るプロジェクター200によれば、上記のように小型化が図られた光源装置110Aを備えるので、該光源装置110A自体を備えるプロジェクター200自体も小型化することができる。
以上のように、プロジェクター200は、バランス調整部材110を備えることで回転蛍光板30の回転バランスが調整され、且つ小型化が図られた信頼性の高いものとなる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。
【0065】
例えば、第1実施形態および第2実施形態においては、モーター33が基板31のハブ35aに当接した状態で取り付けられた場合を例に説明したが、モーター33とハブ35a(基板31の裏面35)との間に隙間を設けるようにしても構わない。そして、このようにして設けた隙間において、図7に示すようにバランス調整部材110をハブ35aに配置した構成を採用しても構わない。この構成によれば、励起光ELの光軸方向から視て、バランス調整部材110とモーター33とを互いに重なった状態に配置できる。そのため、小型の基板31を採用した場合であっても、バランスを良好に調整できるようにバランス調整部材110を配置するスペースを確保できる。さらに、第2実施形態で説明したように、励起光ELの光軸方向から視て、バランス調整部材110と蛍光体層32とが互いに重なるように配置してもよい。
【0066】
また、第1実施形態では、蛍光体層32を基板31の表面34に設けた場合を例に説明したが、蛍光体層32を基板31の裏面35に設けてもよい。
【0067】
また、第1実施形態および第2実施形態において、蛍光体粒子を含む蛍光体層32を基板31の上に設けていたが、蛍光体粒子が分散された基板を基板31として用いてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…光源、10A…光源装置、30…回転蛍光板、31…基板、32…蛍光体層、33…モーター、34…表面、35…裏面、35a…ハブ、36…反射面、85…コリメート光学系、94…ピックアップ光学系、100,200…プロジェクター、110…バランス調整部材、110A…光源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体を有する基板と、
前記基板の第1の面側に設けられ、前記基板を所定の回転軸の周りに回転駆動する駆動装置と、
前記基板のバランスを調整するバランス調整部材と、
前記蛍光体から射出される蛍光光が入射する光学系と、を備えた光源装置において、
前記光学系は、前記第1の面と対向する前記基板の第2の面に対向するように設けられ、
前記バランス調整部材は、前記第1の面に設けられることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記蛍光体を励起する励起光を発する励起光源を更に備え、
前記励起光は前記第1の面側から前記蛍光体に照射され、
前記励起光の光軸方向から視て、前記バランス調整部材は、前記基板のうち前記励起光が照射される領域とは異なる領域に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記蛍光体を励起する励起光を発する励起光源を更に備え、
前記励起光は前記第2の面側から前記蛍光体に照射され、
前記蛍光光を反射する反射面が前記バランス調整部材と前記蛍光体との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記励起光の光軸方向から視て、前記バランス調整部材は前記蛍光体と重なる領域に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記バランス調整部材は、前記基板と前記駆動装置との間に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出された前記蛍光を画像信号で変調する光変調素子と、
前記光変調素子により変調された前記蛍光を投射する投射光学系と、を備えることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−109283(P2013−109283A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256158(P2011−256158)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】