説明

光源装置及び光源装置のパージ方法

【課題】 光ファイバ増幅器を構成する光ファイバの被覆から発生するアウトガスによる紫外線の吸収が起こりにくい光源装置を提供する。
【解決手段】 電気系統格納部屋1には、ガス導入口2よりパージガスである窒素が供給され、フィルタ3を通った後、ガス供給管4を通して第1の格納部屋11aに供給されている。第1の格納部屋11aと第2の格納部屋11bとの間は隔壁7で区分され、隔壁7には開口8が設けられている。第1の格納部屋11a内をパージして乾燥状態に保ったパージガスは、開口8を通して第2の格納部屋11bに流入し、光ファイバの被覆から放出されるアウトガスを伴って排出管9を通って、電気系統格納部屋1内に入り、排出口10から排出される。排出管9を電気系統格納部屋1内に開放せず、電気系統格納部屋1内を通して直接排出口10に結合するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を光ファイバ増幅器によって増幅した後、波長変換結晶を使用した波長変換光学系により波長変換して出力する光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外レーザ光源装置としては、半導体レーザから放出されるレーザ光を、非線形光学素子である波長変換結晶を用いて高調波に波長変換することにより紫外光を形成して利用するものが、一般的に用いられている。一例として、波長1547nmの半導体レーザの光を、ファイバーアンプや半導体アンプなどで増幅し、その増幅した1547nmの基本波を、波長変換光学系により8倍波に波長変換し193nmの光を得るものがある。
【0003】
このような光源装置の例は、例えば特開2004−348066号公報(特許文献1)に記載されているが、その概要を簡単に説明する。
【0004】
図3は、レーザ光源の全体構成図であり、基本波発生部16、波長変換部17から構成されている。
【0005】
図4は基本波発生部16の構成の例を説明する図であり、主に基本波光源部18、EDF部19(Er3+添加光ファイバ)、励起用光源20から構成される。基本波光源となるDFBからは波長1547nmのパルス光が出力され、EDF部19により増幅される。EDF部19はEDF1、EDF2、EDF3の3段階のEDFから構成され、励起用光源20からそれぞれのEDFへ励起光が供給される。EDF3からの出力光が後に説明する波長変換部に入力される。
【0006】
図5に、波長変換光学系の1例の概要を示す。波長1547nmの基本波は、集光レンズ21により波長変換結晶(LBO)22に集光され、そのうちの一部が2倍波に変換される。波長変換結晶22からの出力光は、集光レンズ23により波長変換結晶(LBO)24に集光され、基本波と2倍波の一部が3倍波に変換される。波長変換結晶24からの出力光のうち、3倍波はダイクロイックミラー25で反射され、基本波と2倍波はダイクロイックミラー25を透過する。そして、透過した光のうち2倍波はダイクロイックミラー26で反射され、基本波はダイクロイックミラー26を透過する。
【0007】
ダイクロイックミラー26で反射された2倍波は、集光レンズ27により波長変換結晶(LBO)28に集光され、2倍波の一部が4倍波に変換される。波長変換結晶28の出力光は、シリンドリカルレンズ29、30を通って、ダイクロイックミラー31で反射されて波長変換結晶(BBO)32に集光される。
【0008】
一方、ダイクロイックミラー25で反射された3倍波は、コリメートレンズ33、集光レンズ34を通ってミラー35で反射され、ダイクロイックミラー31を透過して波長変換結晶32に集光される。波長変換結晶32では、入射した3倍波と4倍波の一部が7倍波に変換される。波長変換素子32の出力光は、シリンドリカルレンズ36、37を通ってダイクロイックミラー38で反射され、波長変換結晶39(CLBO)に集光される。
【0009】
ダイクロイックミラー26を透過した基本波は、ミラー41で反射され、コリメートレンズ42を通り、ミラー43、44で反射されて集光レンズ45を通り、ダイクロイックミラー38を透過して、波長変換結晶39に集光される。波長変換結晶39では、7倍波と基本波の一部が8倍波に変換され、波長193nmの紫外光として出力される。
【0010】
紫外線を発生する光源装置を使用する場合に、波長変換結晶の中には潮解性を有するものがあるので、乾燥したガスでパージを行うことにより、これらの波長変換結晶の潮解を防ぐことが行われている。又、これらの光源装置内で、光源装置を構成する物質からアウトガスが発生すると、このアウトガスが起因となり、紫外域の光学素子の透過率を低下させるという問題点がある。そのため、光源装置を構成する物質としてできるだけアウトガスを発生しない物質を使用している。
【0011】
【特許文献1】特開2004−348066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載されるような光ファイバ増幅器、配線等を使用した光源装置の場合、配線や光ファイバの被覆から比較的多量のアウトガスが発生することが避けられない。従来行われていた光源装置内のガスパージでは、このアウトガスが波長変換部に流入するのが避けられず、光源装置から発生する光量が低下する原因となっていた。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、光ファイバ増幅器を構成する光ファイバの被覆から発生するアウトガスによる光量低下が起こりにくい光源装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための第1の手段は、基本波光を発振する基本波光源と、前記基本波光を励起光により増幅する光ファイバ増幅器と、前記励起光を発振する励起用光源と、増幅された前記基本波光を波長変換結晶により波長変換する波長変換部と、前記波長変換部を格納する第1の格納部屋と、少なくとも前記光ファイバ増幅器を格納する第2の格納部屋と、パージ用ガスを前記第1の格納部屋に導入し、前記波長変換部のパージを行い、その後、前記第1の格納部屋から流出する前記ガスを前記第2の格納部屋に導いて前記光ファイバ増幅器のパージを行い、排出するガスパージ機構と、を有することを特徴とする光源装置である。
【0015】
前記課題を解決するための第2の手段は、基本波光を発振する基本波光源と、前記基本波光を波長変換結晶により波長変換する波長変換部と、アウトガスを発生する部材と、前記波長変換部を格納する第1の格納部屋と、前記部材を格納する第2の格納部屋と、パージ用ガスを前記第1の格納部屋に導入し、前記波長変換部のパージを行い、その後、前記第1の格納部屋から流出する前記ガスを前記第2の格納部屋に導いて前記部材のパージを行い、排出するガスパージ機構と、を有することを特徴とする光源装置である。
【0016】
前記課題を解決するための第3の手段は、紫外光発振部と、アウトガスを発生する部材と、前記紫外光発振部を格納する第1の格納部屋と、前記部材を格納する第2の格納部屋と、パージ用ガスを前記第1の格納部屋に導入し、前記紫外光発振部のパージを行い、その後、前記第1の格納部屋から流出する前記ガスを前記第2の格納部屋に導いて前記部材のパージを行い、排出するガスパージ機構と、を有することを特徴とする光源装置である。
【0017】
前記課題を解決するための第4の手段は、基本波光を発振する基本波光源と、前記基本波光を励起光により増幅する光ファイバ増幅器と、前記励起光を発振する励起用光源と、増幅された前記基本波光を波長変換結晶により波長変換する波長変換部と、を備えた光源装置のパージ方法であって、パージ用ガスを前記波長変換部に導入して当該波長変換部のパージを行い、その後、前記波長変換部から流出する前記ガスを前記光ファイバ増幅器に導いて排出することを特徴とする光源装置のパージ方法である。
【0018】
前記課題を解決するための第5の手段は、基本波光を発振する基本波光源と、前記基本波光を波長変換結晶により波長変換する波長変換部と、アウトガスを発生する部材と、を備えた光源装置のパージ方法であって、パージ用ガスを前記波長変換部に導入して当該波長変換部のパージを行い、その後、前記波長変換部から流出する前記ガスを前記部材に導いて排出することを特徴とする光源装置のパージ方法である。
【0019】
前記課題を解決するための第6の手段は、紫外光発振部と、アウトガスを発生する部材と、を備えた光源装置のパージ方法であって、パージ用ガスを前記紫外光発生部に導入して当該紫外光発生部のパージを行い、その後、前記紫外光発生部から流出する前記ガスを前記部材に導いて排出することを特徴とする光源装置のパージ方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光ファイバ増幅器を構成する光ファイバの被覆から発生するアウトガスによる素子の透過率の低下が起こりにくい光源装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態の1例である紫外線光源装置のガスパージ機構を示す概略図である。この紫外線光源装置は、図3、図4、図5に示したものと同じである。
【0022】
格納部屋11は開口8が形成された隔壁7で区切られ、第1の格納部屋11aと第2の格納部屋11bを構成する。第1の格納部屋11aには波長変換部5が格納され、第2の格納部屋11bには基本波発生部6(基本波光源、光ファイバ増幅器、励起用光源)が格納される。電気系統格納部屋1には、ガス導入口2とフィルタ3とガス供給管4と排出口10が設けられ、ガス供給管4は第1の格納部屋11aと繋がっている。排出管9は電気系統格納部屋1と第2の格納部屋11bとの双方に繋がっている。ガス導入口2よりパージガスである窒素が導入され、フィルタ3を介してガス供給管4を通って第1の格納部屋11a(波長変換部5)に供給される。
【0023】
第1の格納部屋11a(波長変換部5)内をパージして乾燥状態に保ったパージガスは、開口8を通して第2の格納部屋11b(基本波発生部6)に流入し、光ファイバの被覆等から放出されるアウトガスを伴って排出管9を通って、電気系統格納部屋1内に入り、排出口10から排出される。排出管9を電気系統格納部屋1内に開放せず、電気系統格納部1内を通して直接排出口10に結合するようにしてもよい。このようにすると、パージガスが電気系統格納部屋1の電気系統に入り込まないようにすることができる。電気系統格納部屋1からの複数の配線は、排出管9内を通っている。
【0024】
図1においては、ガス供給管4と排出管9とを別配管にして2本の配管を使用しているが、これらを1本の2重管から構成し、例えば供給ガスを内側配管、排出ガスを外側配管中を通すようにしてもよい。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態の他の例である紫外線光源装置のガスパージ機構を示す概略図である。この紫外線光源装置は、図3、図4、図5に示したものと同じである。図2において、図1に示された構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付してその説明を省略することがある。
【0026】
前述した一例のように第1の格納部屋11a及び第2の格納部屋11bが構成され、第1の格納部屋11aに波長変換部5が格納され、第2の格納部屋11bに基本波発生部6が格納されている点、及び電気系統格納部屋1にガス導入口2、フィルタ3、ガス供給管4が設けられている点は同じであるが、電気系統格納部屋1には排出口を設けず、第2の格納部屋11bに排出口13が設けられている点が異なる。
【0027】
また、ガス供給管4は第1の格納部屋11aに繋がり、配線用管12は、電気系統格納部屋1からガス供給管4を貫通して(一部分は、ガス供給管4内に配線用管12が設けられた二重構造)第2格納部屋11bに繋がっている。配線用管12には電気系統格納部屋1からの複数の配線が通線されている。配線用管12は、配線から放出されたガスが外に漏れない構造になっているので、アウトガスがパージガスに混入することがなく、パージガスのみが第1の格納部屋11a(波長変換部5)内に供給される。
【0028】
第1の格納部屋11a(波長変換部5)内をパージして乾燥状態に保ったパージガスは、開口8を通して第1の格納部屋11b(基本波発生部6)に流入し、配線から放出され配線用配管12を伝わって第2の格納部屋11bに流入するアウトガス、又は光ファイバの被覆から放出されるアウトガスを伴って基本波発生部6に設けられた排出口13から排出される。
【0029】
このようにすると、パージガス用の配管を1本にすることができる。この場合、パージガスである窒素が装置の外に漏れることになるが、光源装置が、空調設備の部屋に設置されるのであれば問題ない。
【0030】
また、図2では、配線用管12をガス供給管4内に設けて二重構造をとっているが、二重構造にせずにガス供給管4は第1の格納部屋11aに繋げ、配線用管12は第2の格納部屋11bに繋げてもよい。さらに、配線用管12を電気系統格納部屋1から第2の格納部屋11bに繋ぎ、ガス供給管4を配線用管12内に設け、配線用管12の側壁を貫通して第1格納部屋11aに繋げてもよい(一部分は、配線用管12内のガス供給管4が設けられた二重構造)。この場合の配線用管12は、一般的な電気配線用管(アウトガスが外に漏れる管)でよい。
【0031】
本発明の2つの実施形態では、第2の格納鄙屋11bに基本波発生部6を格納しているが、排出管9又は配線管12に配線を通線して基本波光源、或いは基本波光源及び励起用光源を電気系統格納部屋1に格納してもよい。
【0032】
本発明の2つの実施形態では、1つの格納部屋を開口が形成された隔壁により区切って第1の格納部屋と第2の格納部屋とを構成しているが、別々の2つの格納部屋(第1の格納部屋と第2の格納部屋)を通路で繋げた構成にしてもよい。
【0033】
また、本発明の2つの実施形態では、電気系統は電気系統格納部屋1に格納する例を説明したが、電気系統格納部屋1を設けず、電気系統及び基本波発生部6を第2の格納部屋11b内に格納してもよい。さらに、電気系統及び光ファイバ増幅器(カップラ等を含む)を第2の格納部屋11bに格納し、基本波光源、励起用光源は、部屋の密封状態を保持しつつ基本波光源及び励起用光源がカップラと接続できるような構造の第3の格納部屋に格納してもよい。少なくともアウトガス発生の原因であるとともに、光源装置の構造上波長変換部5と連続(隣接)関係にある光ファイバ増幅器を第2の格納部屋11bに格納していれば効果がある。
【0034】
これらの場合は、ガス導入口、フィルタ、ガス導入管等は、第1の格納部屋に設け、排出口、排出管等は第2の格納部屋に設ける。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態の1例である紫外線光源装置のガスパージ機構を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態の他の例である紫外線光源装置のガスパージ機構を示す概略図である。
【図3】レーザ光源の全体構成図である。
【図4】基本波発生部の構成の例を説明する図である。
【図5】波長変換光学系の1例の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1…電気系統格納部屋、2…ガス導入口、3…フィルタ、4…ガス供給管、5…波長変換部、6…基本波発生部、7…隔壁、8…開口、9…排出管、10…排出口、11…格納部屋、12…配線用管、13…排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波光を発振する基本波光源と、
前記基本波光を励起光により増幅する光ファイバ増幅器と、
前記励起光を発振する励起用光源と、
増幅された前記基本波光を波長変換結晶により波長変換する波長変換部と、
前記波長変換部を格納する第1の格納部屋と、
少なくとも前記光ファイバ増幅器を格納する第2の格納部屋と、
パージ用ガスを前記第1の格納部屋に導入し、前記波長変換部のパージを行い、その後、前記第1の格納部屋から流出する前記ガスを前記第2の格納部屋に導いて前記光ファイバ増幅器のパージを行い、排出するガスパージ機構と、
を有することを特徴とする光源装置。
【請求項2】
基本波光を発振する基本波光源と、
前記基本波光を波長変換結晶により波長変換する波長変換部と、
アウトガスを発生する部材と、
前記波長変換部を格納する第1の格納部屋と、
前記部材を格納する第2の格納部屋と、
パージ用ガスを前記第1の格納部屋に導入し、前記波長変換部のパージを行い、その後、前記第1の格納部屋から流出する前記ガスを前記第2の格納部屋に導いて前記部材のパージを行い、排出するガスパージ機構と、
を有することを特徴とする光源装置。
【請求項3】
紫外光発振部と、
アウトガスを発生する部材と、
前記紫外光発振部を格納する第1の格納部屋と、
前記部材を格納する第2の格納部屋と、
パージ用ガスを前記第1の格納部屋に導入し、前記紫外光発振部のパージを行い、その後、前記第1の格納部屋から流出する前記ガスを前記第2の格納部屋に導いて前記部材のパージを行い、排出するガスパージ機構と、
を有することを特徴とする光源装置。
【請求項4】
基本波光を発振する基本波光源と、
前記基本波光を励起光により増幅する光ファイバ増幅器と、
前記励起光を発振する励起用光源と、
増幅された前記基本波光を波長変換結晶により波長変換する波長変換部と、
を備えた光源装置のパージ方法であって、
パージ用ガスを前記波長変換部に導入して当該波長変換部のパージを行い、その後、前記波長変換部から流出する前記ガスを前記光ファイバ増幅器に導いて排出することを特徴とする光源装置のパージ方法。
【請求項5】
基本波光を発振する基本波光源と、
前記基本波光を波長変換結晶により波長変換する波長変換部と、
アウトガスを発生する部材と、を備えた光源装置のパージ方法であって、
パージ用ガスを前記波長変換部に導入して当該波長変換部のパージを行い、その後、前記波長変換部から流出する前記ガスを前記部材に導いて排出することを特徴とする光源装置のパージ方法。
【請求項6】
紫外光発振部と、
アウトガスを発生する部材と、
を備えた光源装置のパージ方法であって、
パージ用ガスを前記紫外光発生部に導入して当該紫外光発生部のパージを行い、その後、前記紫外光発生部から流出する前記ガスを前記部材に導いて排出することを特徴とする光源装置のパージ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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