説明

光源装置

【課題】 棒状ランプを液体により冷却しつつも、簡単に取り出し交換できる光源装置を提供すること。
【解決手段】 冷却ジャケット4の内部に高圧放電ランプ3が挿通され、冷却ジャケット4を保持固定するOリング51aと、高圧放電ランプ3を保持固定するOリング51bとを備えたベース5が両端に取り付けられた棒状ランプ2と、中央に貫通孔75が形成された継手側金具71と、該貫通孔75に対向するように配置された受け手側金具72とよりなり、棒状ランプ2を囲繞して保持する表面に弾性体76、79が設けられた保持部7と、保持部7の貫通孔75を挿通し、ベース5に接続する継手6と、を有し、冷却ジャケット4と高圧放電ランプ3との間に冷却液が流過することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状ランプを液体によって冷却する光源装置に関し、特に、ランプを支持する保持部に特徴を有し、容易に棒状ランプを交換できる光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線照射により材料が反応することを利用した装置が多数提案されている。例えば、ディスプレイパネルの組立工程において、2枚の光透過性基板を貼り合わせる際に、接着剤として紫外線硬化性接着剤を用い、紫外線を照射して貼り合わせる技術が採用されている。特開2004−12664に記載のディスプレイパネル貼り合わせ装置では、ワークの全面に一括して照射できるように、ワークの長さに対応した長さの棒状ランプを、ワークの幅に対応した本数だけ並べて光照射部が構成されている。棒状ランプとしては、棒状の高圧水銀ランプやメタルハライドランプが用いられている。
【0003】
ディスプレイパネルは急激に大型化しているため、ワークの全面に一括して照射するためには複数の棒状ランプを並べなければならず、それらの棒状ランプから多大な熱も放出される。過熱されると棒状ランプの放電容器を構成するガラスが破損してしまうため、点灯時には棒状ランプを冷却している。棒状ランプからの熱を除去するためには、一般に空冷が採用されているが、放出される熱量が多いため、冷却機構のための配管も大掛かりなものとなっている。
【0004】
そこで、空冷よりも冷却効率の高い水やアルコールなどの液体によって熱を除去すれば、冷却機構を小型化できると考えられる。しかしながら、波長が例えば350nm〜450nmの紫外線を含む光を放出するランプは、放電容器の内部に水銀が封入されているため、冷却効果の高い液体冷却では、局所的に過冷却してしまう部分が生じやすく、水銀の未蒸発により照度が低下する恐れがある。
一方、特開2008−146962には、液体によって冷却しつつも、過冷却を防止して水銀の未蒸発を原因とする照度低下を防ぎ、安定した出力を長時間にわたって得ることができる高圧放電ランプが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−12664号公報
【特許文献2】特開2008−146962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、紫外線照射装置では、棒状ランプが寿命になると、装置から棒状ランプを取り出して交換して使用している。空冷により冷却していたときは、保持部から棒状ランプを取り出すだけで容易に交換できていたが、液体により冷却していると、棒状ランプの周りを冷却液が漏れないように覆っているため、簡単に取り出すことができないという問題が生じた。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、棒状ランプを冷却液により冷却しつつも、簡単に取り出し交換できる光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願第1の発明は、冷却ジャケットの内部に高圧放電ランプが挿通され、前記冷却ジャケットを保持固定するOリングと、前記高圧放電ランプを保持固定するOリングとを備えたベースが両端に取り付けられた棒状ランプと、中央に貫通孔が形成された継手側金具と、該貫通孔に対向するように配置された受け手側金具とよりなり、前記棒状ランプを囲繞して保持する表面に弾性体が設けられた保持部と、前記保持部の貫通孔を挿通し、ベースに接続する継手と、を有し、前記冷却ジャケットと高圧放電ランプとの間に冷却液が流過することを特徴とする。
また、本願第2の発明は、本願第1の発明において、前記保持部の継手側金具は、貫通孔を挟んで両側に弾性体が配置され、前記受け手側金具は、継手側金具の両側の弾性体の間に受け手側金具の弾性体が配置されていることを特徴とする。
また、本願第3の発明は、本願第1の発明において、前記継手は、配管が着脱可能に接続されるワンタッチ継手であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願第1の発明に係る光源装置によれば、冷却ジャケットと高圧放電ランプとの間に冷却液を通していても、保持部を使って継手から配管を着脱することによって、棒状ランプを容易に交換することができる。
そして、保持部は、継手を挟んで両側に継手側金具が配設されているため、ベースに引張力がかかっても、継手側金具の両側に均等に分配される。また、ベースに押し付ける方向に力がかかっても、保持部の受け手側金具が貫通孔に対向するように配置されているので、均等に分配されて伝わる。そのため、一方のOリングに偏った力がかかって他方のOリングが浮いてしまうようなことがなく、継手を引き抜いたときに液体が漏れるようなことがない。
【0010】
本願第2の発明に係る光源装置によれば、貫通孔を挟んで両側に弾性体を配置し、継手側金具の両側の弾性体の間に受け手側金具の弾性体を配置することで、より確実に、どちらか一方のOリングに偏った力がかからないようにできる。
【0011】
本願第3の発明に係る光源装置によれば、冷却液の配管を着脱する際にベースに引張力や押圧力がかかっても、力が均等に分配されて液漏れが発生しないので、冷却液を通して冷却していてもワンタッチ継手を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】紫外線照射装置に用いられる光源装置を示す説明図
【図2】棒状ランプの一端を拡大して示す断面図
【図3】保持部を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、紫外線照射装置に用いられる光源装置1を示す説明図である。
光源装置1には、円筒状の冷却ジャケット4の内部に、高圧放電ランプ3が挿通され、両端にベース5が取り付けられて棒状ランプ2が配置されている。冷却ジャケット4は、高圧放電ランプ3から放射される紫外線を透過する材料、例えば石英ガラスにより構成されている。ベース5は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の樹脂よりなり、継手6が取り付けられている。継手6は、通称「ワンタッチ継手」と呼ばれ、押し引きして容易に着脱できるものであり、高圧放電ランプ3の管軸に対して垂直方向からベース5に取り付けられるように構成されている。
【0014】
棒状ランプ2は、ベース5を保持部7で支持することによって装置に固定されている。保持部7は、継手側金具71と、受け手側金具72とよりなり、両金具によりベース5を囲繞して保持している。継手側金具71は、継手6の周りを囲うように配置されるように構成され、受け手側金具72は、継手6のベース5との接続部に対向する位置に配置されるように構成されている。
【0015】
棒状ランプ2の点灯時には、図示しないポンプによって、継手6から冷却ジャケット4の内部に冷却液が供給される。冷却液は、例えば5L(リットル)/minの流量で水が循環させられる。冷却液は、一方の継手6から、高圧放電ランプ3の外管31の外周面に沿って軸方向に流過して高圧放電ランプ3全体を冷却した後、他方の継手6から排出される。
【0016】
図2は、棒状ランプ2の一端を拡大して示す断面図である。
ベース5は、円筒状の部材であり、高圧放電ランプ3および冷却ジャケット4を、管軸が水平方向に伸びる姿勢で保持している。ベース5の高圧放電ランプ3の中央側の一端で、Oリング51aを介して冷却ジャケット4の外周面が保持固定されている。
冷却ジャケット4とベース5との隙間に、Oリング51aに続いて、MCナイロンよりなる帯リング状の押し込み部材54aが入れられ、ステンレスよりなるリング状の押え部材55aがネジ52止めによって取り付けられる。ネジ52を締めることによって、押え部材55aが押し込み部材54aを内部に押し、押し込み部材54aによってOリング51aが潰れて奥に押し込まれる。このようにして、冷却ジャケット4とベース5との隙間から冷却液が漏れないように密閉して接続される。
【0017】
同様にして、ベース5の高圧放電ランプ3の外方側の他端でも、Oリング51bを介して高圧放電ランプ3の外周面が保持固定されている。棒状ランプ2とベース5との隙間に、Oリング51bに続いて押し込み部材54bが入れられ、押え部材55bがネジ52止めによって取り付けられている。
【0018】
ベース5の外周面の一部に、内側まで貫通する孔53が設けられ、高圧放電ランプ3と冷却ジャケット4との隙間に形成された流路につながっている。ベース5の孔53に継手6が接続されて、流路に冷却液を供給または排出できるように構成されている。
【0019】
高圧放電ランプ3は、石英ガラスよりなる直管状の外管31の内部に、終端が封止されて縮径された石英ガラスからなる直管状の内管32が配置されて構成されている。内管32の内部に、タングステンからなる棒状の電極33が配置され、金属箔34を介して外部リード36に電気的に接続されている。金属箔34は、モリブデンよりなり、内管32に形成されたロッド状の封止部35に埋設されており、電極33が配置されている内側を気密空間としている。外部リード36は、封止部35の外端より軸方向外方に突出して伸びており、外管31との間に接着剤により固定されたセラミックベース37に支持されて、ベース5の外部から給電できるように構成されている。
【0020】
内管32の気密空間には、例えば1mg/mm3以上の水銀が封入されると共にアルゴンガスなどの希ガスが適宜の量で封入されている。気密空間を構成する内管32は、外管31に覆われているため、冷却液によって直接には冷却されない。そのため、内管32の気密空間は、水銀の未蒸発が発生するような低い温度にまでは下がらない。高圧放電ランプ3を内管32と外管31により構成し、外管31の外周面を液体により冷却することによって、気密空間を適切な温度に保つことができる。
【0021】
さらに詳細には、気密空間は、中央部の温度が高くなりやすく、両端部ではそれほど温度が高くなりにくい特性がある。そのため、液体により積極的に冷却すると、両端部だけが局所的に水銀が蒸発しない温度にまで下がってしまう恐れがある。この点を考慮し、中央部では外管31と内管32を密接して配置し、冷却効果が内管32に十分に伝わるようにして内管32が過熱により破損しないようにし、両端部では内管32が縮径されて外管31と内管32との間に空隙を設けて冷却作用を弱め、水銀の未蒸発を発生させないようにしている。
【0022】
図3は、保持部7を示す斜視図である。
保持部7は、例えばアルミニウムのような金属により形成され、板状の継手側金具71と、コ字状の受け手側金具72とよりなり、ネジ73止めにより両金具が接続されている。継手側金具71は、受け手側金具72と対向する表面が、樋状に切削74されて、ベース5の外周面に沿うように加工されている。樋状切削面74の中央から裏面に向かって貫通する断面円形の貫通孔75が形成されており、この貫通孔75に継手6が挿入されてベース5と接続される。樋状切削面74における貫通孔75を挟んで両側に、帯状の弾性体76がベース5の周方向に沿って円弧状に配設されている。
【0023】
受け手側金具72は、継手側金具71の樋状切削面74が形成されていない平坦面77に接続するようにネジ73止めされており、樋状切削面74がのびる方向に対して直交するように掛け渡している。受け手側金具72はコ字状部材であるが、継手側金具71と向かい合う内表面が円弧状に切削78されて、ベース5の外周面に沿うように加工されている。受け手側金具72は、継手側金具71の貫通孔75に対向する位置に接続され、円弧状切削面78に帯状の弾性体79が円弧に沿うように2本配設されている。継手側金具71の貫通孔75を挟んで両側に配置された弾性体76の間に、受け手側金属の弾性体79がベース5の周方向に沿って円弧状に配置されている。
【0024】
光源装置1に装着された棒状ランプ2は、冷却液を供給する流路を継手6で分離し、保持部7のネジ73を緩めることによって容易に取り外すことができる。また、保持部7に棒状ランプ2を装着し、継手6を取り付けることで容易に取り付けることもできる。保持部7を使って継手6から配管を着脱することによって、棒状ランプ2を容易に交換することができる。
【0025】
しかしながら、棒状ランプ2は保持部7に支持された状態で、冷却液用の配管が接続された継手6を押し引きして着脱するため、着脱時にベース5に力が加わってしまう。配管を継手6から取り外すときは、継手6から配管を引き抜くため、ベース5を引っ張る方向に力が働く。ベース5にかかる力は保持部7に伝わるが、継手6を挟んで両側に継手側金具71が配設されているため、両側に力が均等に分配される。保持部7に引っ張り力が均一にかかるため、継手6を挟んで一方の側面に配置された冷却ジャケット4を保持固定するOリング51aと、継手6を挟んで他方の側面に配置された高圧放電ランプ3を保持固定するOリング51bとにかかる力は略均等になる。その結果、一方のOリング51aに力が偏ってかかって、他方のOリング51bが浮いてしまうようなことがなく、継手6を引き抜いたときに冷却液が漏れることがない。
【0026】
また、配管を継手6に取り付けるときは、継手6に配管を押し込むため、ベース5に押し付ける方向に力が働く。2つのOリング51a、bのほぼ中間に受け手側金具72が配設されているため、ベース5にかかる力は、均等に分配されて保持部7に伝わる。保持部7には均一に押圧力がかかるため、ベース5にも力が略均一に伝わり、冷却ジャケット4を保持固定するOリング51aと、高圧放電ランプ3を保持固定するOリング51bとにかかる力は略均等になる。その結果、一方のOリング51a、bに力が偏ってかかって、他方のOリング51a、bが浮いてしまうようなことがなく、継手6を取り付けたときに冷却液が漏れるようなことがない。
【0027】
また、継手6に配管を押し込んだ反動でベース5に力がかかり、棒状ランプ2の位置が変わってしまう恐れがある。しかし、保持部7の内表面に弾性体76、79が配設されているので、その弾性により、配管の接続前後における棒状ランプ2の位置変動を抑えることができる。
また、石英ガラスにより形成された冷却ジャケット4と高圧放電ランプ3とをベース5が固定しているので、ベース5に局所的に強い力がかかると、冷却ジャケット4または高圧放電ランプ3に力が伝わって破損する恐れがある。しかし、ベース5と接触する保持部7の内表面に弾性体76、79が配設されているので、保持部7にかかった力が分散してベース5に伝わり、局所的に力がかからず、棒状ランプ2を破損しない。また、棒状ランプ2の製作のばらつきも、弾性体76、79を挟むことによって許容できるため、保持部7で両端を押さえつけても、棒状ランプ2にせん断応力が生じない。
【0028】
また、ベース5は、Oリング51a、bにより冷却ジャケット4と高圧放電ランプ3との間から液漏れしないように固定しているため、力が均一にかかるように水平に保持されなければならないが、ベース5と接触する保持部7の内表面に弾性体76、79が配設されているので、多少の誤差は許容できる。そのため、棒状ランプ2の交換に特殊な技能は必要とせず、どんな作業者でも液漏れさせずに容易に交換することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 光源装置
2 棒状ランプ
3 高圧放電ランプ
4 冷却ジャケット
5 ベース
6 継手
7 保持部
31 外管
32 内管
33 電極
51a、51b Oリング
71 継手側金具
72 受け手側金具
75 貫通孔
76、79 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ジャケットの内部に高圧放電ランプが挿通され、前記冷却ジャケットを保持固定するOリングと、前記高圧放電ランプを保持固定するOリングとを備えたベースが両端に取り付けられた棒状ランプと、
中央に貫通孔が形成された継手側金具と、該貫通孔に対向するように配置された受け手側金具とよりなり、前記棒状ランプを囲繞して保持する表面に弾性体が設けられた保持部と、
前記保持部の貫通孔を挿通し、ベースに接続する継手と、を有し、
前記冷却ジャケットと高圧放電ランプとの間に冷却液が流過することを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記保持部の継手側金具は、貫通孔を挟んで両側に弾性体が配置され、
前記受け手側金具は、継手側金具の両側の弾性体の間に受け手側金具の弾性体が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記継手は、配管が着脱可能に接続されるワンタッチ継手であることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−244963(P2010−244963A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94750(P2009−94750)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】