説明

光照射モジュール、および印刷装置

【課題】
紫外線硬化型インクの硬化時に酸素阻害の影響を受け難い硬化が可能な光照射モジュールおよび印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の光照射デバイスは、基体と、該基体の上面に縦横の並びに配列された複数の発光素子と、該発光素子を覆うように設けられた、該発光素子で発する光を外部へ出射するための複数のレンズとを備えており、該複数のレンズは、複数の第1レンズと、該第1レンズよりも前記対象物の前記光照射装置に対する移動方向の下流側に位置する複数の第2レンズとを備え、該第2レンズを介して出射される光の光軸は、前記基体の上面の法線に対して前記移動方向の上流側に向かって傾いていることから、前記複数の発光素子から照射される紫外線の照度のピーク位置が対象物の光照射デバイスに対する移動方向の上流側に位置させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型樹脂や塗料の硬化に使用される光照射モジュールおよび印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線照射装置は、医療やバイオ分野での蛍光反応観察、殺菌用途、電子部品の接着や紫外線硬化型樹脂およびインクの硬化などを目的に広く利用されている。特に電子部品の分野などで小型部品の接着等に使われる紫外線硬化型樹脂の硬化や、印刷の分野で使われる紫外線硬化型インキの硬化などに用いられる紫外線照射装置のランプ光源には高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどが使用されている。
【0003】
近年、世界規模で地球環境負荷の軽減が切望されていることから、比較的長寿命、省エネルギーおよびオゾン発生を抑制することができる紫外線発光素子をランプ光源に採用する動きが活発になってきている。
【0004】
ところが、紫外線発光素子の照度は比較的低いため、例えば特許文献1に記載されているように、複数の発光素子を一つの基板に搭載したデバイスを用意し、複数のデバイスを支持体に搭載した構成のモジュールが一般的に使用され、紫外線硬化型インクの効果に必要な光量を確保している。
【0005】
しかしながら、紫外線発光素子をランプ光源とした面発光型の紫外線照射装置では、紫外線硬化型インクを硬化させるに従来より多くの光量が必要となるという問題があった。その理由は、一般的に紫外線硬化型インクは紫外線硬化時に酸素阻害の影響を受けることが一般的に知られているが、紫外線発光素子をランプ光源とした場合には、従来の高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどに比べて、特定波長の紫外線のみが照射されることから、酸素阻害の影響をより受けやすいためだと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−244165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、紫外線硬化型インクは硬化時に酸素阻害の影響を受け難い光照射モジュール、および印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光照射デバイスは、相対的に移動する対象物に光を照射するための光照射装置であって、基体と、該基体の上面に縦横の並びに配列された複数の発光素子と、該発光素子を覆うように設けられた、該発光素子で発する光を外部へ出射するための複数のレンズとを備えており、該複数のレンズは、複数の第1レンズと、該第1レンズよりも前記対象物の前記光照射装置に対する移動方向の下流側に位置する複数の第2レンズとを備え、
該第2レンズを介して出射される光の光軸は、前記基体の上面の法線に対して前記移動方向の上流側に向かって傾いていることを特徴とする。
【0009】
また、複数の前記第2レンズを介して出射される光の光軸の傾きは、前記移動方向の上
流側から下流側に向かって漸次大きくなっていることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記第2レンズの各々は前記各発光素子に対応して設けられており、前記第2レンズの各々の平面視における中心は、対応する前記発光素子の平面視における中心に対して前記移動方向の上流側に位置していることを特徴とする。
【0011】
また、前記第2レンズの各々は前記各発光素子に対応して設けられており、前記第2レンズの各々の平面視における中心の、対応する前記発光素子の平面視における中心に対する前記移動方向の上流側へのずれ量が、前記移動方向の上流側から下流側に向かって漸次大きくなっていることを特徴とする。
【0012】
さらに、前記第2レンズの各々は複数の発光素子に対応して設けられており、前記第2レンズの各々の平面視における中心は、対応する前記複数の発光素子の平面視における配置の中心に対して前記移動方向の上流側に位置していることを特徴とする。
【0013】
また、前記第2レンズの各々は複数の発光素子に対応して設けられており、前記第2レンズの各々の平面視における中心の、対応する前記複数の発光素子の平面視における配置の中心に対して前記移動方向の上流側へのずれ量が、前記移動方向の上流側から下流側に向かって漸次大きくなっていることを特徴とする。
【0014】
さらに、前記第2レンズの平面方向の断面の中心は、前記第2レンズの下面から上面に向かって漸次、前記移動方向の上流側に位置していることを特徴とする。
【0015】
また、前記第2レンズの平面方向の断面の中心の、前記第2レンズの下面から上面に向かう前記移動方向の上流側へのずれ量は、前記移動方向の上流側から下流側に向かって漸次大きくなっていることを特徴とする。
【0016】
さらに、前記第1レンズを介して出射される光の光軸は、前記基体の上面の法線に対して平行かまたは前記移動方向の下流側に傾いていることを特徴とする。
【0017】
また、放熱用部材に光照射デバイスが複数載置されていることを特徴とする光照射モジュールを提供する。
【0018】
また、記録媒体に対して印刷を行なう印刷手段と、印刷された前記記録媒体に対して光を照射する光照射モジュールとを有することを特徴とする印刷装置を併せて提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光照射モジュールによれば、基体と、該基体の上面に縦横の並びに配列された複数の発光素子と、該発光素子を覆うように設けられた、該発光素子で発する光を外部へ出射するための複数のレンズとを備えており、該複数のレンズは、複数の第1レンズと、該第1レンズよりも前記対象物の前記光照射装置に対する移動方向の下流側に位置する複数の第2レンズとを備え、該第2レンズを介して出射される光の光軸は、前記基体の上面の法線に対して前記移動方向の上流側に向かって傾いていることから、前記複数の発光素子から照射される紫外線の照度のピーク位置が対象物の光照射デバイスに対する移動方向の上流側に位置させることができる。その結果、紫外線硬化型インクの硬化時に酸素阻害の影響を受け難い硬化が可能な光照射モジュールが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光照射モジュールの平面図である。
【図2】図2(a)は、図1に示した光照射モジュールにおける1I−1I線に沿った断面図である。図2(b)は、図1に示した光照射モジュールにおける1II−1II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、対象物の移動方向に対する照度の分布を説明する模式図である。
【図4】図4は、図1に示した光照射モジュールを用いた印刷装置の上面図である。
【図5】図5は、図4に示した印刷装置の側面図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施形態に係る光照射モジュールの光学レンズ17を介して出射される光の光軸を説明する図である。
【図7】図7は、発光素子の配置の中心を説明する図である。
【図8】図8(a)は、本発明の他の実施形態に係る光照射モジュールの光学レンズ17bの断面形状を説明するための図である。図8(b)は、図8(a)に示す光学レンズ17bの断面中心の位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の光照射モジュール、および印刷装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(光照射モジュールの実施形態)
図1や図2に示す光照射モジュール1は、紫外線硬化型インクを使用するオフセット印刷装置やインクジェット印刷装置等の印刷装置に組み込まれ、記録媒体に紫外線硬化型インクを被着した後に紫外線を照射することで紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線照射モジュールの紫外線発生光源として機能する。
【0023】
光照射モジュール1は、第1主面11aに複数の開口部12を有する基体10と、各開口部12内に設けられた複数の接続パッド13と、基体10の各開口部12内に配置され、接続パッド13に電気的に接続された複数の発光素子20と、各開口部12内に充填され、発光素子20を被覆する複数の封止材30と、各開口部12に対応して発光素子20を覆うように配設された複数の光学レンズ17と、第1の接着剤60を介して基体10に取着される放熱用部材110とを備えている。
【0024】
基体10は、第1の絶縁層41および第2の絶縁層42が積層されてなる積層体40と、発光素子20同士を接続する電気配線50と、を備え、第1主面11a側から平面視して略矩形状を成しており、該第1主面11aに設けられた開口部12内で発光素子20を支持している。
【0025】
第1の絶縁層41は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、およびガラスセラミックスなどのセラミックス、ならびにエポキシ樹脂、および液晶ポリマー(LCP)などの樹脂、などによって形成される。
【0026】
次に、電気配線50は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銅(Cu)等の導電性材料により所定のパターンに形成されており、発光素子20への電流または発光素子20からの電流を供給するための給電配線として機能する。
【0027】
次に、第1の絶縁層41上に積層された第2の絶縁層42には、該第2の絶縁層42を貫通する開口部12が形成されている。
【0028】
開口部12は、各々の形状が発光素子20の載置面よりも基体10の第1主面11a側で開口面積が広くなるように、その内周面14が傾斜しており、平面視すると、例えば、略円形の形状を成している。なお、開口形状は円形に限られるものではなく、略矩形の形状でもよい。
【0029】
このような開口部12は、その内周面14で発光素子20の発する光を上方に反射し、光の取り出し効率を向上させる機能を有する。
【0030】
光の取り出し効率を向上させるため、第2の絶縁層42の材料として、紫外線領域の光に対して、比較的良好な反射性を有する多孔質のセラミック材料、例えば酸化アルミニウム質焼結体、酸化ジルコニウム質焼結体、および窒化アルミニウム質焼結体により形成することが好ましい。また、光の取り出し効率を向上させるという観点では、開口部12の内周面14に金属製の反射膜を設けてもよい。
【0031】
このような開口部12は、基体10の第1主面11aの全体に渡って縦横の並びに配列されている。例えば、千鳥格子状に配列し、このような配列にすることによって発光素子20をより高密度に配置することが可能となり、単位面積当たりの照度を高くすることが可能となる。ここで、千鳥格子状に配列するとは、斜め格子の格子点に配置することと同義である。
【0032】
なお、単位面積当たりの照度が十分確保できる場合には、正格子状等に配列してもよく、配列形状に制限を設ける必要はない。
【0033】
以上のような、第1の絶縁層41および第2の絶縁層42からなる積層体40を備えた基体10は、第1の絶縁層41や第2の絶縁層42がセラミックスなどから成る場合、次のような工程を経て製造される。まず、従来周知の方法により製作された複数のセラミックグリーンシートを準備する。開口部12に相当するセラミックグリーンシートには開口部に対応する穴をパンチング等の方法により形成する。次に、内部配線60となる金属ペーストをグリーンシート上に印刷(不図示)した上で、該印刷された金属ペーストがグリーンシートの間に位置するようにグリーンシートを積層する。この電気配線50となる金属ペーストとしては、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、および銅(Cu)などの金属を含有させたものが挙げられる。次に、上記積層体を焼成することにより、グリーンシートおよび金属ペーストを併せて焼成することによって、電気配線50および開口部12を有する基体10を形成することができる。
【0034】
また、第1の絶縁層41や第2の絶縁層42が樹脂から成る場合、基体10の製造方法は、例えば、次のような方法が考えられる。まず、熱硬化型樹脂の前駆体シートを準備する。次に、電気配線50となる金属材料からなるリード端子を前駆体シート間に配置させ、かつリード端子を前駆体シートに埋設させるように複数の前駆体シートを積層する。このリード端子の形成材料としては、例えばCu、Ag、Al、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金、およびFe−Ni合金などの金属材料が挙げられる。そして、前駆体シートに開口部12に対応する穴をレーザー加工やエッチング等の方法により形成した後、これを熱硬化させることにより、基体10が完成する。
【0035】
一方、基体10の開口部12内には、発光素子20に電気的に接続された接続パッド13と、該接続パッド13に半田、金(Au)線、アルミ(Al)線等の接合材15により接続された発光素子20と、発光素子20を封止する封止材30とが設けられている。
【0036】
接続パッド13は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、および銅(Cu)などの金属材料から成る金属層により形成されている。なお、必要に応じて、金属層上に、ニッケル(Ni)層、パラジウム(Pd)層、および金(Au)層などを更に積層しても良い。かかる接続パッド13は、半田、金(Au)線、アルミ(Al)線等の接合材15により発光素子20に接続される。
【0037】
また、発光素子20は、例えば、GaAsやGaN等の半導体材料からなるp型半導体
層およびn型半導体層等をサファイア基板等の素子基板21上に積層してなる発光ダイオードや、半導体層が有機材料からなる有機EL素子等により構成されている。
【0038】
この発光素子20は、発光層を有する半導体層22と、基体10上に配置された接続パッド13に半田、金(Au)線、アルミ(Al)線等の接合材15を介して接続されたAg等の金属材料から成る素子電極23、24とを備えており、基体10に対してワイヤボンディング接続されている。そして、発光素子20は、素子電極23、24間に流れる電流に応じて所定の波長をもった光を所定の輝度で発し、その光を素子基板21を介して外部へ出射する。なお、素子基板21は、省略することが可能なのは周知の通りである。また、発光素子20の素子電極23、24と接続パッド13との接続は、接合材15に半田等を使用して、従来周知のフリップリップ接続技術により行なってもよい。
【0039】
本実施形態では、発光素子20が発する光の波長のピークスペクトルが、例えば250〜395〔nm〕以下のUV光を発するLEDを採用している。つまり、本実施形態では、発光素子20としてUV−LED素子を採用している。なお、発光素子20は、従来周知の薄膜形成技術により形成される。
【0040】
そして、かかる発光素子20は、上述した封止材30によって封止されている。
【0041】
封止材30は、光透過性の樹脂材料等の絶縁材料より形成されており、発光素子20を良好に封止することにより、外部からの水分の浸入を防止したり、あるいは、外部からの衝撃を吸収し、発光素子20を保護する。
【0042】
また、封止材30は、発光素子20を構成する素子基板21の屈折率(サファイアの場合:1.7)と空気の屈折率(約1.0)の間の屈折率を有する材料、例えばシリコーン樹脂(屈折率:約1.4)等より形成されることで、発光素子20の光の取り出し効率を向上させることができる。
【0043】
かかる封止材30は、発光素子20を基体10上に実装した後、シリコーン樹脂等の前駆体を開口部12に充填し、これを硬化させることで形成される。
【0044】
そして、光学レンズ17は、上述の封止材30上に第2の接着剤70を介して発光素子20を覆うように配設される。本実施形態の光照射デバイスでは、光学レンズ17に平凸レンズを用いている。つまり、本実施形態の光学レンズ17は一方主面が凸状に、他方主面が平面状を成しており、他方主面から一方主面に向かって断面積は小さくなる。
【0045】
光学レンズ17は、例えばシリコーンなどによって形成され発光素子20から照射される光を集光する機能を有する。なお、光学レンズの材質としては、上に述べたシリコーン以外にウレタン、エポキシなどの熱硬化性樹脂、またはポリカーボネート、アクリルなどの熱可塑性樹脂などのプラスチック並びにサファイア並びに無機ガラスなどが挙げられる。
【0046】
また、光学レンズ17は、対象物の移動方向の上流側に位置する複数の第1光学レンズ17aと、対象物の移動方向の下流側に位置する複数の第2光学レンズ17bとで構成されている。そして、光学レンズ17aの平面視における中心と発光素子20の平面視における中心は略一致している。つまり、光学レンズ17aを介して発光素子20より出射される光の光軸は基体10の第1主面11aの略法線方向となる。
【0047】
一方、光学レンズ17bの平面視における中心は、発光素子20の平面視における中心に対して、対象物の移動方向の上流側に位置している。つまり、光学レンズ17bを介し
て発光素子20より出射される光の光軸は、第1主面11aの法線方向に対して対象物の移動方向の上流側に向かって傾いている。本実施形態では、光学レンズ17aの平面視における中心と、発光素子20の平面視における中心とのずれ量は全て同じとなっており、よって光学レンズ17bを介して発光素子20より出射される光の光軸は、第1主面11aの法線方向に対して全て同じ傾きとなっている。
【0048】
このような構成とすることで、従来の光照射モジュールでは、図3の点線で示すように、対象物に対する移動方向の照度のピークが光照射モジュールの略中央に位置するのに対して、本実施形態の光照射モジュールでは、図3の実線で示すように照度のピークが光照射モジュールの対象物に対する移動方向の上流側に位置する。
【0049】
紫外線硬化型インクを硬化させるためには、一定以上の紫外線照射エネルギーが必要になる。紫外線照射エネルギーは、紫外線照度と紫外線照射時間の積で求められ、図3の点線または実線と図3のグラフの下側の水平軸で囲まれる領域の面積に相当する。
【0050】
したがって、本実施形態の光照射モジュールでは、紫外線硬化型インクが被着された対象物が光照射領域に進入してから紫外線硬化型インクが硬化するまでに要する時間を従来の光照射モジュールに対して短くすることが可能になる。
【0051】
つまり、紫外線硬化型インクの紫外線照射による硬化は、空気中の酸素により障害を受けること(酸素阻害)が一般的に知られているが、本実施形態の光照射モジュールによれば、紫外線硬化型インクに紫外線が照射されてから硬化されるまでの時間を比較的短くすることができることから、酸素阻害を受け難い硬化が可能となる。
【0052】
そして、基体10にシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの第1の接着剤60を介して放熱用部材110が取着されている。放熱用部材110は、基体10の支持体として機能する。
【0053】
この放熱用部材110の形成材料としては、熱伝導率の大きい材料が好ましく、例えば種々の金属材料、セラミックス、樹脂材料が挙げられる。本実施形態の放熱用部材110は、銅によって形成されている。
【0054】
(印刷装置の実施形態)
本発明の印刷装置の実施形態として、図4および図5に示した印刷装置200を例に挙げて説明する。この印刷装置200は、記録媒体250を搬送するための搬送機構210と、搬送された記録媒体250に印刷を行うための印刷機構としてのインクジェットヘッド220と、印刷後の記録媒体250に対して紫外光を照射する、上述した光照射モジュール1と、該光照射モジュール1の発光を制御する制御機構230と、を備えている。
【0055】
搬送機構210は、記録媒体250をインクジェットヘッド220、光照射モジュール1の順に通過するように搬送するためのものであり、載置台211と、互いに対向配置され、回転可能に支持された一対の搬送ローラ212とを含んで構成されている。この載置台211によって支持された記録媒体250を一対の搬送ローラ212の間に送り込み、該搬送ローラ212を回転させることにより、記録媒体250を搬送方向へ送り出すためのものである。
【0056】
インクジェットヘッド220は、搬送機構210を介して搬送される記録媒体250に対して、感光性材料を付着させる機能を有している。このインクジェットヘッド220は、この感光性材料を含む液滴を記録媒体250に向けて吐出し、記録媒体250に被着させるように構成されている。本実施形態では、感光性材料として紫外線硬化型インクを採
用している。この感光性材料としては、紫外線硬化型インクの他に、例えば感光性レジスト、光硬化型樹脂などが挙げられる。
【0057】
本実施形態では、インクジェットヘッド220としてライン型のインクジェットヘッドを採用している。このインクジェットヘッド220は、ライン状に配列された複数の吐出孔220aを有しており、この吐出孔220aから紫外線硬化型インクを吐出するように構成されている。インクジェットヘッド220は、吐出孔220aの配列に対して直交する方向に搬送される記録媒体250に対して、吐出孔220aよりインクを吐出させ、記録媒体にインクを被着させることにより、記録媒体に対して印刷を行う。
【0058】
なお、本実施形態では、印刷機構として、ライン型のインクジェットヘッドを例に挙げたが、これに限られるものではなく、例えば、シリアル型のインクジェットヘッドを採用していてもよいし、ライン型又はシリアル型の噴霧ヘッドを採用してもよい。さらに、印刷機構として、記録媒体250の静電気を蓄え、かかる静電気で感光性材料を付着させる静電式ヘッドを採用してもよいし、記録媒体250を液状の感光性材料に浸して、かかる感光性材料を付着させる浸液装置を採用してもよい。さらに、印刷機構として刷毛、ブラシ、およびローラを採用してもよい。
【0059】
印刷装置200において光照射モジュール1は、搬送機構210を介して搬送される記録媒体250に付着した感光性材料を感光させる機能を担っている。この光照射モジュール1は、インクジェットヘッド220に対して搬送方向の下流側に設けられている。また、印刷装置200において発光素子20は、記録媒体250に付着した感光性材料を露光する機能を担っている。
【0060】
制御機構230は、光照射モジュール1の発光を制御する機能を担っている。この制御機構230のメモリには、インクジェットヘッド220から吐出されるインク滴を硬化するのが比較的良好になるような光の特徴を示す情報が格納されている。この格納情報の具体例を挙げると、吐出するインク滴を硬化するのに適した波長分布特性、および発光強度(各波長域の発光強度)を表す数値が挙げられる。本実施形態の印刷装置200では、この制御機構230を有することによって、制御機構230の格納情報に基づいて、複数の発光素子20に入力する駆動電流の大きさを調整することもできる。このことから、印刷装置200によれば、使用するインクの特性に応じた適正な光量で光を照射することができ、比較的低エネルギーの光で、インク滴を硬化させることができる。
【0061】
この印刷装置200では、搬送機構210が記録媒体250を搬送方向に搬送している。インクジェットヘッド220は、搬送されている記録媒体250に対して紫外線硬化型インクを吐出して、記録媒体250の表面に紫外線硬化型インクを付着させる。このとき、記録媒体250に付着させる紫外線硬化型インクは、全面付着であっても、部分付着であっても、所望パターンでの付着であってもよい。この印刷装置200では、記録媒体250に付着した紫外線硬化型インクに光照射モジュール1の発する紫外線を照射して、紫外線硬化型インクを硬化させている。
【0062】
本実施形態の印刷装置200は、光照射モジュール1の有する効果を享受することができる。本実施形態の印刷装置200では、光照射モジュール1の有する光学レンズ17が、対象物の移動方向の上流側に位置する複数の第1光学レンズ17aと、対象物の移動方向の下流側に位置する複数の第2光学レンズ17bとで構成されており、光学レンズ17bの平面視における中心は、発光素子20の平面視における中心に対して、対象物の移動方向の上流側に位置していることから、光学レンズ17bを介して発光素子20より出射される光の光軸は、第1主面11aの法線方向に対して対象物の移動方向の上流側に向かって傾いており、紫外線硬化型インクが被着された対象物が光照射領域に進入してから紫
外線硬化型インクが硬化するまでに要する時間を従来の光照射モジュールに対して短くすることが可能になる。結果として、したがって、本実施形態の印刷装置200では、紫外線硬化型インクの硬化の際、酸素阻害を受け難い硬化が可能となる。
【0063】
以上、本発明の具体的な実施形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、本実施形態の光照射モジュール1の光学レンズ17bの平面視における中心と、発光素子20の平面視における中心とのずれ量は光学レンズ17bの全てにおいて一定であるが、図6に示すように、光学レンズ17bの平面視における中心と発光素子20の平面視における中心とのずれ量は、対象物の移動方向に対する上流側から下流側に向かって漸次大きくなっていてもよい。このような構成とすることで、対象物に対する移動方向の照度のピークが、光照射モジュールの対象物に対する移動方向の上流側にさらに位置し、酸素阻害をさらに受け難い硬化が可能となる。
【0065】
また、本実施形態の光照射モジュール1では、光学レンズ17に対応する発光素子20は一つであるが、複数の発光素子20を一つの光学レンズ17で覆っていてもよい。この場合には、複数の発光素子20の平面視における配置の中心に対して、該複数の発光素子20に対応する光学レンズ17bの平面視における中心が対象物の移動方向の上流側に位置するようにすればよい。
【0066】
ここで、配置の中心とは、図7(a)〜(c)に示すように、複数の発光素子のうち外周に位置する発光素子の各々の中心を結んでできる図形の図心をいう。図7(a)〜(c)のように複数の発光素子が規則正しく配列され、各発光素子からの発光強度が等しい場合には、配置の中心は、複数の発光素子の光学レンズ17を介さない場合の発光強度のピーク位置とは平面視すると略一致する。
【0067】
複数の発光素子の配列が不規則であったり、発光素子間の発光強度が異なっていたりする場合には、発光強度のピーク位置の複数の発光素子への投影点を配置の中心と考えればよい。
【0068】
また、光学レンズ17bに対応する発光素子20が一つの場合と同様、光学レンズ17bの各々の平面視における中心の、対応する前記複数の発光素子20の平面視における配置の中心に対する前記移動方向の上流側へのずれ量が、前記移動方向の上流側から下流側に向かって漸次大きくなっている方が好ましい。
【0069】
さらに、光学レンズ17bの平面方向の断面の中心は、図8(a)、(b)に示すように光学レンズ17bの下面から上面に向かって漸次、前記移動方向の上流側に位置していてもよい。このような構成とすることで、光学レンズ17bの下面の中心と、発光素子20の中心とを平面視において略一致させながら、光軸を第1主面11aの法線に対して対象物に対する移動方向の上流側に傾けることができる。よって、光学レンズ17bの中心を発光素子20の中心からずらすことなく光軸を傾けることができるので、発光素子20や光学レンズ17bを比較的高密度で実装した場合であっても、効率的に光学素子20の光学17bを介して発せられる光の光軸を傾けることができる。
【0070】
また、複数の発光素子20を一つの光学レンズ17が覆っている場合に、光学レンズ17bの平面方向の断面の中心が図8(a)、(b)に示すように、光学レンズ17bの下面から上面に向かって漸次(O1→O2→O3)、前記移動方向の上流側に位置していてもよい。
【0071】
また、印刷装置200の実施形態は、以上の実施形態に限定されない。例えば、軸支されたローラを回転させ、このローラ表面に沿って記録媒体を搬送する、いわゆるオフセット印刷型のプリンタであってもよく、同様の効果を奏する。
【0072】
本実施形態では、インクジェットヘッド220を用いた印刷装置200に光照射モジュール100を適用した例を示しているが、この光照射モジュール100は、例えば対象体表面にスピンコートした光硬化樹脂を硬化させる専用装置など、各種類の光硬化樹脂の硬化にも適用することができる。また、光照射モジュール100を、例えば、露光装置における照射光源などに用いてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 光照射モジュール
10 基体
11a 第1主面
12 開口部
13 接続パッド
14 内周面
15 接合材
17 光学レンズ
20 発光素子
21 素子基板
22 半導体層
23、24 素子電極
30 封止材
40 積層体
41 第1の絶縁層
42 第2の絶縁層
50 第1の接着剤
60 伝熱部材
70 第2の接着剤
110 放熱用部材
200 印刷装置
210 搬送機構
211 載置台
212 搬送ローラ
220 インクジェットヘッド
220a 吐出孔
230 制御機構
250 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に移動する対象物に光を照射するための光照射装置であって、
基体と、該基体の上面に縦横の並びに配列された複数の発光素子と、該発光素子を覆うように設けられた、該発光素子で発する光を外部へ出射するための複数のレンズとを備えており、
該複数のレンズは、複数の第1レンズと、該第1レンズよりも前記対象物の前記光照射装置に対する移動方向の下流側に位置する複数の第2レンズとを備え、
該第2レンズを介して出射される光の光軸は、前記基体の上面の法線に対して前記移動方向の上流側に向かって傾いていることを特徴とする光照射デバイス。
【請求項2】
複数の前記第2レンズを介して出射される光の光軸の傾きは、前記移動方向の上流側から下流側に向かって漸次大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の光照射デバイス。
【請求項3】
前記第2レンズの各々は前記各発光素子に対応して設けられており、前記第2レンズの各々の平面視における中心は、対応する前記発光素子の平面視における中心に対して前記移動方向の上流側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の光照射デバイス。
【請求項4】
前記第2レンズの各々は前記各発光素子に対応して設けられており、前記第2レンズの各々の平面視における中心の、対応する前記発光素子の平面視における中心に対する前記移動方向の上流側へのずれ量が、前記移動方向の上流側から下流側に向かって漸次大きくなっていることを特徴とする請求項3に記載の光照射デバイス。
【請求項5】
前記第2レンズの各々は複数の発光素子に対応して設けられており、前記第2レンズの各々の平面視における中心は、対応する前記複数の発光素子の平面視における配置の中心に対して前記移動方向の上流側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の光照射デバイス。
【請求項6】
前記第2レンズの各々は複数の発光素子に対応して設けられており、前記第2レンズの各々の平面視における中心の、対応する前記複数の発光素子の平面視における配置の中心に対して前記移動方向の上流側へのずれ量が、前記移動方向の上流側から下流側に向かって漸次大きくなっていることを特徴とする請求項5に記載の光照射デバイス。
【請求項7】
前記第2レンズの平面方向の断面の中心は、前記第2レンズの下面から上面に向かって漸次、前記移動方向の上流側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の光照射デバイス。
【請求項8】
前記第2レンズの平面方向の断面の中心の、前記第2レンズの下面から上面に向かう前記移動方向の上流側へのずれ量は、前記移動方向の上流側から下流側に向かって漸次大きくなっていることを特徴とする請求項7に記載の光照射デバイス。
【請求項9】
前記第1レンズを介して出射される光の光軸は、前記基体の上面の法線に対して平行かまたは前記移動方向の下流側に傾いていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光照射デバイス。
【請求項10】
放熱用部材に請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光照射デバイスが複数載置されていることを特徴とする光照射モジュール。
【請求項11】
記録媒体に対して印刷を行なう印刷手段と、
印刷された前記記録媒体に対して光を照射する請求項10に記載の光照射モジュールとを有することを特徴とする印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−245750(P2012−245750A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121154(P2011−121154)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】