説明

光照射装置及び光偏向液晶セルの製造方法

【課題】 液晶セルを用いて、入射光線の両方の偏光成分を偏向させることにより、光照射方向を変えることができる光照射装置を提供する。
【解決手段】 光照射装置は、所定方向に長いプリズムが形成されたプリズム層と、プリズム層上に形成された配向膜と、配向膜との界面で長軸方向がプリズム長さ方向に配向する液晶分子を有する液晶層とを含む第1の光偏向液晶セルと、所定方向に長いプリズムが形成されたプリズム層と、プリズム層上に形成された配向膜と、配向膜との界面で長軸方向がプリズム長さ方向に直交する方向に配向する液晶分子を有する液晶層とを含む第2の光偏向液晶セルとが、2層積層された構造を含み、さらに、光偏向液晶セルに電圧を印加する電圧印加装置と、光偏向液晶セルに光線を入射させる入射光学系とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置及び光偏向液晶セルの製造方法に関し、特に、液晶により光線の進行方向を偏向させる光偏向を行う光照射装置及びそれに用いる光偏向液晶セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具の一態様である車両用前照灯の光源として、例えばハロゲンランプなどの白熱電球、あるいはメタルハライドランプなどの高圧放電灯が知られている。
【0003】
近年、車両用前照灯の分野において、上述のような白熱電球や放電灯に替えて、発光ダイオード(LED)を光源として用いることが考えられている。LEDは、小型かつ軽量な光源であり、また、上記の従来の光源に対して高寿命かつ低消費電力であるので、新たな前照灯用光源として期待されている。
【0004】
ところで、車両用前照灯は、走行用配光とすれ違い用配光との2種類の配光を得ることが要求される。このような配光の切り替え方法には、例えば以下のような方法がある。
【0005】
第1の切り替え方法は、走行用配光に対応した光源とすれ違い用配光に対応した光源との2種類の光源を用いて、それぞれの配光に応じて光源を切り替えるものである。この方法は白熱電球を用いた前照灯でよく用いられている。
【0006】
また、第2の切り替え方法は、2種類の配光を切り替えるために可動式の遮光部を用いるものである。この方法は放電灯を用いた前照灯によく用いられている。
【0007】
しかしながら、これらの配光切り替え方法を用いた場合には、2種類の光源または可動式の遮光部を用意するため、前照灯全体としての構成要素が大きくかつ重量も嵩んでしまう。
【0008】
このような点の解決が期待される配光切り替え方法として、液晶光学素子を用いた方法が提案されている。例えば特許文献1は、一対の基板の一方の内面にプリズムを形成した液晶セルを用いて、光偏向を行う技術を開示する。電圧無印加状態と電圧印加状態とを切り替えて、液晶層の屈折率を切り替えることにより、光の進行方向を切り替える。
【0009】
しかし、特許文献1が開示する技術では、同文献の図10や、明細書の段落[0053]、[0016]等に示されているように、液晶セルに入射する光線の、偏光方向が相互に直交する2つの偏光成分うち、一方の偏光成分しか偏向させることができない。
【0010】
液晶の配向方向を直交させた液晶セルを2枚重ねることで、多くの光を一方向に曲げる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2に記載の方法では、全ての光を完全に曲げることはできず、直進する光が僅かながら残ってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−147377号公報
【特許文献2】特開2009−026641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、液晶セルを用いて、入射光線の両方の偏光成分を偏向させることにより、光照射方向を変えることができる光照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一観点によれば、光照射装置は、光線が入射する第1の光偏向液晶セルであって、相互に対向する一対の第1及び第2の透明基板と、前記第1及び第2の透明基板上に形成され、前記第1及び第2の透明基板間に電圧を印加する一対の第1及び第2の透明電極と、前記第1及び第2の透明基板の一方の上方に形成され、第1の方向に長いプリズムを有する第1のプリズム層と、前記第1のプリズム層上に形成される前記第1の方向に配向処理が施された第1の配向膜と、前記第1及び第2の透明基板間に挟まれ、前記第1の配向膜と接する界面で長軸方向が前記第1の方向に配向する液晶分子を有する第1の液晶層とを含む第1の光偏向液晶セルと、前記第1の光偏向液晶セルを透過した光線が入射する第2の光偏向液晶セルであって、相互に対向する一対の第3及び第4の透明基板と、前記第3及び第4の透明基板上に形成され、前記第3及び第4の透明基板間に電圧を印加する一対の第3及び第4の透明電極と、前記第3及び第4の透明基板の一方の上方に形成され、前記第1の方向に長いプリズムを有する第2のプリズム層と、前記第2のプリズム層上に形成される前記第1の方向と直交する第2の方向に配向処理が施された第2の配向膜と、前記第3及び第4の透明基板間に挟まれ、前記第2の配向膜と接する界面で長軸方向が前記第2の方向に配向する液晶分子を有する第2の液晶層とを含む第2の光偏向液晶セルと、前記第1〜第4の透明電極に電圧を印加する電圧印加装置と、前記第1の光偏向液晶セルに光線を入射させる入射光学系とを有する。
【0014】
本発明の他の観点によれば、光照射装置は、光線が入射する第1の光偏向液晶セルであって、相互に対向する一対の第1及び第2の透明基板と、前記第1及び第2の透明基板の一方の透明基板上に形成され、第1の方向に長いプリズムを有する第1のプリズム層と、前記第1のプリズム層上及び前記第1及び第2の透明基板の他方上に形成され、前記第1及び第2の透明基板間に電圧を印加する一対の第1及び第2の透明電極と、前記第1のプリズム層上に形成される第1又は第2の透明電極上に形成され、前記第1の方向に配向処理が施された第1の配向膜と、前記第1及び第2の透明基板間に挟まれ、前記第1の配向膜と接する界面で長軸方向が前記第1の方向に配向する液晶分子を有する第1の液晶層とを含む第1の光偏向液晶セルと、前記第1の光偏向液晶セルを透過した光線が入射する第2の光偏向液晶セルであって、相互に対向する一対の第3及び第4の透明基板と、前記第3及び第4の透明基板の一方の透明基板上に形成され、第1の方向に長いプリズムを有する第2のプリズム層と、前記第2のプリズム層上及び前記第3及び第4の透明基板の他方の透明基板上に形成され、前記第1及び第2の透明基板間に電圧を印加する一対の第3及び第4の透明電極と、前記第2のプリズム層上に形成される第3又は第4の透明電極上に形成され、前記第1の方向に直交する第2の方向に配向処理が施された第2の配向膜と、前記第3及び第4の透明基板間に挟まれ、前記第2の配向膜と接する界面で長軸方向が前記第2の方向に配向する液晶分子を有する第2の液晶層とを含む第2の光偏向液晶セルと、前記第1〜第4の透明電極に電圧を印加する電圧印加装置と、前記第1の光偏向液晶セルに光線を入射させる入射光学系とを有する。
【0015】
本発明のさらに他の観点によれば、光偏向液晶セルの製造方法は、一対の透明基板を用意する工程と、前記一対の透明基板間に電圧を印加する一対の透明電極を前記一対の透明基板上に形成する工程と、前記一対の透明基板の一方の上方に、第1の方向に長いプリズムを有するプリズム層を形成する工程と、前記プリズム層上に、前記第1の方向に配向処理が施された配向膜を形成する工程と、前記一対の透明基板を間隙を持って貼り合わせる工程と、前記一対の透明基板の間隙に、液晶を注入する工程とを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、液晶セルを用いて、入射光線の両方の偏光成分を偏向させることにより、光照射方向を変えることができる光照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の第1の実施例による光偏向液晶セルの概略断面図である。
【図2】図2は、プリズム層の概略斜視図である。
【図3】図3は、プリズム層の概略平面図である。
【図4】図4は、実施例の積層セルの写真である。
【図5】図5は、実施例の光照射装置を示す概略断面図である。
【図6】図6(A)及び(B)は、本発明の第1の実施例による積層セル25に円形の光束を照射する場合の、電圧のON/OFFによる光の投射像の変化の様子を表す概念図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施例による光偏向液晶セルの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
プリズム面上方に液晶層を配し、プリズム材料の屈折率と液晶分子の短軸方向の屈折率がほぼ等しく、液晶分子の長軸方向の屈折率は短軸方向の屈折率よりも高い場合を想定する。液晶分子の長軸方向の屈折率はプリズム材料の屈折率より高いので、光学的界面が形成される。
【0019】
液晶は細長い分子形状を有しており、ある方向の偏光(液晶分子の長軸方向)は曲げることができるが、他の方向の偏光(液晶分子の短軸方向)はそのまま通過する。結果的に曲げられた光は直線偏光状態を有している。従って、1枚の液晶セルでは半分の光のみしか制御することができない。
【0020】
そのため、本発明と同一発明者による特願2008−321402号の明細書の[発明を実施するための最良の形態]の項に記載された技術では、2枚の液晶セルを積層し、かつ入射光側の液晶セルから出射される光のうち液晶により曲げられていない光の偏光方向と平行になるように2枚目の液晶セルの入射光側の界面の配向状態を制御することにより、全ての光を制御可能である。
【0021】
しかしながら、上記の技術では、液晶により曲げられずに正面に残る光が僅かながら存在していた。この原因は、プリズム上に配向膜を形成することなく、プリズムに対して直接ラビング処理を行っていたが、ラビングされたプリズム材料では、液晶分子を配向させる配向規制力が十分でなく、全ての液晶分子がラビング方向に向いていないためであると考えられる。
【0022】
プリズム上に配向膜を形成することにより、配向規制力を十分なものにすることができるが、多くのプリズム用形成材料は耐熱性が低く、ポリイミド等からなる配向膜を形成する熱処理(180℃〜220℃)により、特性が劣化してしまう。そこで、本発明者は、配向膜を形成する熱処理においても特性が大きく変化しないプリズム用形成材料を実験により発見した。
【0023】
実験では、複数のプリズム用形成材料の熱処理(220℃で2時間)の前後での透過率の違いを調べた。その結果、紫外線(UV)硬化型のアクリル系樹脂は、短波長側でごく僅かに透過率の低下が見られるものの、ほぼ全可視波長域において熱処理前と同等の透過率を示した。UV硬化型のアクリル系樹脂は、耐熱性だけでなく、ガラスへの密着性も優れていると共に金属には密着しにくい(離型性が良い)という性質を有しており、本発明の実施例によるプリズムを形成する材料として好適である。
【0024】
なお、エポキシ系の樹脂も耐熱性に優れており、本発明の実施例によるプリズムを形成する材料として使用可能であると考えられる。また、ポリイミドも使用可能である。
【0025】
UV硬化型のアクリル系樹脂等の180℃以上の熱処理に対する特性(透過率)変化の少ない(180℃以上の熱処理が可能な)材料を用いることにより、従来では非常に困難であったポリイミド等からなるLCD用配向膜をプリズム上に形成できる。なお、本明細書において、「特性(透過率)変化の少ない」とは、特性(透過率)変化が熱処理前に比べて概ね2%以内である状態を示す。
【0026】
以下、UV硬化型のアクリル系樹脂等の180℃以上の熱処理に対する特性(透過率)変化の少ない材料(以下、単に耐熱性プリズム材料と呼ぶ)を用いてプリズムを形成する本発明の第1の実施例について説明する。第1の実施例では、一対のITO付ガラス基板の片方に耐熱性プリズム材料を用いてプリズムを形成し、当該プリズム上に配向膜を形成した液晶セル(第1及び第2の光偏向液晶セル)を作製して積層し、積層セルを作製した以下、第1及び第2の光偏向液晶セルの作製方法を説明するが、特に明記しない限り両液晶セルの作製方法は同様である。
【0027】
図1は、第1の実施例の光偏向液晶セルを概略的に示す厚さ方向断面図である。透明電極が形成された一対のガラス基板(透明電極2が形成されたガラス基板1、及び、透明電極12が形成されたガラス基板11)を用意した。ガラス基板1、11は、それぞれ、厚さ0.7mmtであり、材質は無アルカリガラスである。透明電極2、12は、それぞれ、厚さ150nmであり、材質はインジウムスズ酸化物(ITO)であり、所望の平面形状にパターニングされている。
【0028】
片側のガラス基板1の透明電極2上に、プリズム層3を形成した。プリズム層3は、ベース層3b上にプリズム3aが並んだ形状を有する。ベース層3bの厚さは、例えば30μm〜40μm程度である。
【0029】
図2は、プリズム層3の概略斜視図であり、右側部分にプリズム3aの断面形状の拡大図を示す。各プリズム3aは、頂角約75°、底角が約15°及び約90°の三角柱状であり、複数のプリズム3aが、プリズム長さ方向と直交する方向(この方向を、プリズム幅方向と呼ぶこととする)に、方向を揃えて並んでいる。プリズム3aの高さは約5.2μmであり、プリズム3aの底辺の長さ(プリズムのピッチ)は約20μmである。
【0030】
図3は、ガラス基板1上のプリズム層3の概略平面図である。プリズム層3の作製方法について説明する。プリズム層3の型が形成され、離型剤もしくはコーティング剤付きのプリズム金型上に、所定量の耐熱性プリズム材料3R(例えば、紫外線(UV)硬化型のアクリル系樹脂)を滴下し、その上の所定位置に、ガラス基板1(縦150mm×横150mm×厚さ0.7mmt)の透明電極2を置き、厚手の石英部材などを基板の裏側に配置して補強した状態でプレスを行った。金型のサイズ(プリズム形成領域のサイズ)は、縦80mm×横80mmである。
【0031】
プレスして1分以上放置し、耐熱性プリズム材料3Rを十分広げた後、ガラス基板1の裏側から紫外線を照射し、耐熱性プリズム材料3Rを硬化させた。紫外線の照射量は200mJ/cmとした。紫外線の照射量は、樹脂が硬化するように適宜設定すればよい。なお、ITOは紫外線を吸収するため、透明電極の膜厚が変われば紫外線照射量も変える必要があろう。
【0032】
耐熱性プリズム材料3Rの硬化後、石英、プレス治具などを取り外し、プリズム層3が形成されたガラス基板1を押し上げることにより、プリズム金型から剥離する。
【0033】
なお、プリズム層3の大きさは、耐熱性プリズム材料3Rの滴下量を調整することにより行う。滴下量を調整してプリズム形成領域全体A1(縦80mm×横80mm)のうちの必要な領域A2(縦60mm×横60mm)にプリズム層3を形成した。
【0034】
図1に戻って説明を続ける。プリズム層3上及びもう一方のガラス基板11の透明電極12上に、ポリイミド等により配向膜13を形成した。ここでは、日産化学製のSE−410をフレキソ印刷法で厚さ80nm形成して、180℃で1.5時間焼成を行った。焼成後、配向膜13にラビング処理を行った。配向膜13のラビング方向は、両ガラス基板を重ね合わせてセルを形成したとき、プリズム層3上の配向膜13ともう一方のガラス基板11の透明電極12上の配向膜13のラビング方向とがアンチパラレルとなるように定めた。
【0035】
第1の光偏向液晶セルのプリズム層3上の配向膜13へのラビング処理は、図2に示す方向x(第1の方向)で、プリズムの山が延在する方向(以下、単にプリズム方向と呼ぶ)と平行に液晶分子の長軸方向が並ぶように行った。なお、本明細書では、プリズム方向と平行に液晶分子の長軸方向が並ぶような処理を行ったものをプリズム方向と定義する。
【0036】
第2の光偏向液晶セルのプリズム層3上の配向膜13へのラビング処理は、図2に示す方向xから90°ずらした方向y(第2の方向)で、プリズム方向と直交して液晶分子の長軸方向が並ぶように行った。すなわち、図1の左側から右側にかけてラビングを行い、プリズム層3の断面図では、15°の鋭角側からプリズムを登っていくような形の方向にラビング処理を行った。
【0037】
つまり、第1の光偏向液晶セルのプリズム層3上の配向膜13へのラビング処理は、プリズム方向と平行に行い、第2の光偏向液晶セルのプリズム層3上の配向膜13へのラビング処理は、プリズム方向と直交になるように行った。
【0038】
次に、プリズム層3を形成した側のガラス基板1上に、ギャップコントロール剤を2wt%〜5wt%含んだメインシール剤16を形成した。形成方法として、スクリーン印刷やディスペンサが用いられる。プリズム層3のベース層(2μm〜30μm)とプリズムの高さ(0μm〜5μm)を含め液晶層15の厚さが、例えば10μm〜20μmとなるように、ギャップコントロール剤を選択した。なお、プリズム層3は位置によって高さが変化するので、それに応じて液晶層15の厚さも変化する。
【0039】
ここでは、ギャップコントロール剤として径が30μmの積水化学製のプラスチックボールを選択し、これを三井化学製のシール剤ES−7500に4wt%添加して、メインシール剤16とした。
【0040】
プリズムを形成しない側のガラス基板11上には、ギャップコントロール剤14として径が17μmの積水化学製のプラスチックボールを、乾式のギャップ散布機を用いて散布した。
【0041】
次に、両ガラス基板1、11の重ね合わせを行い、プレス機などで圧力を一定に加えた状態で熱処理することにより、メインシール剤を硬化させた。ここでは、150℃で3時間の熱処理を行った。
【0042】
このようにして作製された空セルに、液晶を真空注入して、液晶層15を形成した。実施例では、液晶として、Δεが正でΔn=0.298の大日本インキ化学工業製のものを用いた。
【0043】
液晶注入後、注入口にエンドシール剤を塗布し、封止した。封止後、120℃で1時間の熱処理を行い、液晶の配向状態を整えた。このようにして、2つの光偏向液晶セルを作製した。
【0044】
実施例の光偏向液晶セルにおいて、電圧無印加状態で、液晶分子の長軸がプリズム長さ方向に沿い、電圧印加により、液晶分子の長軸が基板法線方向に立ち上がる。実施例に用いた液晶は、電気ベクトルの振動方向が液晶分子の長軸方向に平行な偏光成分に対して、屈折率1.823を示し、電気ベクトルの振動方向が液晶分子の長軸方向に垂直な偏光成分に対して、屈折率1.525を示す。
【0045】
プリズム層3を構成するUV硬化型のアクリル系樹脂の屈折率は、1.51であり、電気ベクトルの振動方向が液晶分子の長軸方向に垂直な偏光成分に対する液晶の屈折率と同等である。なお、第1の材料の屈折率と第2の材料の屈折率との差が、第1の材料の屈折率または第2の材料の屈折率に対して3%以内(より好ましくは2%以内)であるとき、両材料の屈折率が同等であるとする。
【0046】
なお、プリズム形成用の金型にはエア抜き用の微小な溝を形成してもよい。また、金型と基板とは真空中で重ね合わせてもよい。なお、液晶の注入方法は真空注入に限らず、例えばOneDrop Fill(ODF)法を用いてもよい。
【0047】
なお、実施例の光偏向液晶セルでは、プリズムパターンより広く上下基板間で90°に交差した長方形状の電極パターンを用い、両基板側から端子を取り、また、メインシール部分で上下基板の電極が交差しないようにした。メインシール部分で上下基板の電極を交差させないことにより、短絡が抑制される。なお、片側から端子を取りたい場合は、メインシールに上下導通用の金ボールを添加する構造等とすればよい。
【0048】
図4は、第1の実施例の積層セル25の写真である。積層セル25は、第1及び第2の光偏向液晶セルを、面内でプリズムの長さ方向が平行となり、かつプリズムの向きが同じとなるように重ねたものである。また、両液晶セルとも、プリズム形成側の基板を下側、プリズムを形成しない基板を上側として重ねている。第1及び第2の光偏向液晶セルに同じ電圧を印加できるように、各セルの電極にピン端子をつなげて導通が取られている。
【0049】
さらに、積層セル25を光源と組み合わせて、車両の前照灯を想定した第1の光照射装置を作製した。
【0050】
図5は、第1の光照射装置を概略的に示す横方向断面図(上面断面図)である。光源21として、高輝度放電(HID)ランプを用いた。光源21から放出された光線が、楕円型リフレクタ22で反射され、楕円型リフレクタ22の焦点に配置されたシェード23に集光される。シェード23を透過した光線が、レンズ24でほぼ平行光にされて、実施例の積層セル25に入射する。積層セル25を経て、光照射装置から光が出射される。積層セル25への印加電圧を、電圧印加装置26が切り替える。なお、積層セル25は、第1の光照射装置を正面から見たときにプリズム方向が水平方向となるように、セットした。
【0051】
図6は、本発明の第1の実施例による積層セル25に円形の光束を照射する場合の、電圧のON/OFFによる光の投射像の変化の様子を表す概念図である。
【0052】
図6(A)に示すように、電圧OFF時には、光が直進してきれいなカットオフパターンが投影されていた。なお、これは車両の前照灯のロービームに相当する。迷光など余分な方向には光は散っていなかった。
【0053】
図6(B)に示すように、電圧ON時には、光(投影像)が上方向に平行移動した。角度では全体で約6°程度上方向に移動していた。明るさはほぼ同等であった。また、電圧OFF時のカットオフパターンと同じ位置にはカットオフパターンは全く残っておらず、積層セル25に入射した光は全て曲げられていたと考えられる。また、光(投影像)が上方向に平行移動しても、直進時と投影像の形が変化しておらず、そのままの形で平行移動した。
【0054】
なお、積層セル25をセットする向きを上下反転しても、上記と同様にハイビーム/ロービームの切り替えが可能であるが、フェールセーフ上は上記の状態が好ましい。
【0055】
上記の実験では、電圧を徐々に上げていく際、投影像は連続的に変化するのではなく、上下にやや広がりながら変化していき、高電圧印加(20V以上、交流150Hz)により、ようやく同じ大きさの像としてくっきり結像された。これは、基板上のITOと液晶層との間にプリズム層が存在しており、プリズム層は場所により厚さが異なるため、実質的に液晶にかかる電圧が場所により異なるためであると考えられる。
【0056】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例では、ITOパターンがプリズム層の下に形成されている場合について説明したが、第2の実施例では、プリズム層の上にITOパターンを形成する。従来のプリズム材料では、耐熱性が低く、プリズム層上にITOを形成することは困難であったが、本発明者は、第1の実施例で用いたUV硬化型のアクリル系樹脂等の180℃以上の熱処理に対する特性(透過率)変化の少ない材料(以下、単に耐熱性プリズム材料と呼ぶ)を用いてプリズムを形成し、当該プリズム層上にITOをスパッタし、問題なく液晶素子を形成できることを確認した。
【0057】
図7は、第2の実施例の光偏向液晶セルを概略的に示す厚さ方向断面図である。
【0058】
一対のガラス基板(ガラス基板51、及び、透明電極12が形成されたガラス基板61)を2セット用意した。ガラス基板51は、厚さ0.7mmtであり、材質はソーダライムガラスである。ガラス基板51、61は、それぞれ、厚さ0.7mmtであり、材質は無アルカリガラスである。透明電極12は、厚さ150nmであり、材質はインジウムスズ酸化物(ITO)である。
【0059】
まず、ガラス基板51上に、第1の実施例と同様の手法で図2及び図3に示すプリズム層3を形成する。例えば、プリズム層3の型が形成された金型上に、所定量の耐熱性プリズム材料3R(例えば、紫外線(UV)硬化型のアクリル系樹脂)を滴下し、その上の所定位置に、ガラス基板51(縦150mm×横150mm×厚さ0.7mmt)を置き、厚手の石英部材などを基板の裏側に配置して補強した状態でプレスを行った。金型のサイズ(プリズム形成領域のサイズ)は、縦80mm×横80mmである。プレスして1分以上放置し、耐熱性プリズム材料3Rを十分広げた後、ガラス基板51の裏側から紫外線を照射し、耐熱性プリズム材料3Rを硬化させ、プリズム層3とした。
【0060】
次に、プリズム層3上にITO膜52を形成する。まず、プリズム付きガラス基板51を洗浄機にて洗浄した。洗浄方法は、アルカリ洗剤を用いたブラシ洗浄、純水洗浄、エアーブロー、UV照射、IR乾燥の順に行った。なお、洗浄方法はこれに限るものではなく、高圧スプレー洗浄やプラズマ洗浄などを行ってもよい。
【0061】
プリズム層3上に直接ITO膜52を形成しても問題はないが、本実施例では、密着性を向上させるためSiO膜53をプリズム層3上に薄く形成した。SiO膜53の形成はスパッタ法(交流放電)を用いた。80℃に基板加熱し、50nmの厚さで形成した。
【0062】
引き続き、ITO膜52をSiO膜53上にスパッタ法(交流放電)を用いて形成した。100℃に基板加熱し、100nmの厚さで形成した。この時、SUSマスクなどを用いて余分な所にはITO膜が形成されないようにしてもよい。なお、スパッタ法に限らず、真空蒸着法、イオンビーム法、CVD法などの形成方法を用いることもできる。
【0063】
次に、ITO付きガラス基板61のITO膜をパターンニングした。ITO付きガラス基板61をガラス基板51と同様の手法で洗浄し、一般的なフォトリソグラフィ工程を用いてパターンニングを行った。ここでは、ITOのエッチング方法としてウェットエッチング(第二塩化鉄)を用いた。
【0064】
次に、プリズム付きガラス基板51とITO付きガラス基板61を洗浄機にて洗浄した。洗浄方法は、アルカリ洗剤を用いたブラシ洗浄、純水洗浄、エアーブロー、UV照射、IR乾燥の順に行った。なお、洗浄方法はこれに限るものではなく、高圧スプレー洗浄やプラズマ洗浄などを行ってもよい。
【0065】
プリズム層3上及びもう一方のガラス基板61の透明電極12上に、第1の実施例と同様に、ポリイミド等により配向膜13を形成した。配向膜13の形成方法、加熱処理及びラビング処理は第1の実施例と同様なので説明を省略する。
【0066】
次に、第1の実施例と同様に、プリズム層3を形成した側のガラス基板51上に、ギャップコントロール剤を2wt%〜5wt%含んだメインシール剤を形成すると共に、ガラス基板61上には、ギャップコントロール剤14として径が17μmの積水化学製のプラスチックボールを、乾式のギャップ散布機を用いて散布した。その後、両ガラス基板51、61の重ね合わせを行い、プレス機などで圧力を一定に加えた状態で熱処理することにより、メインシール剤を硬化させた。
【0067】
このようにして作製された空セルに、第1の実施例と同様に、液晶を真空注入して、液晶層15を形成した。実施例では、液晶として、Δεが正でΔn=0.298の大日本インキ化学工業製のものを用いた。液晶注入後、注入口にエンドシール剤を塗布し、封止した。封止後、120℃で1時間の熱処理を行い、液晶の配向状態を整えた。このようにして、2つの光偏向液晶セルを作製した。
【0068】
作製した2つの光偏向液晶セルを第1の実施例と同様に重ね合わせることにより、積層セルを作製し、これを光源と組み合わせて、車両の前照灯を想定した第2の光照射装置を作製した。光偏向液晶セルが第2の実施例のものとなっているのみで、構造は、図5に示す第1の光照射装置と同様である。
【0069】
第2の実施例でも、図6(A)に示すように、電圧OFF時には、光が直進してきれいなカットオフパターンが投影されていた。なお、これは車両の前照灯のロービームに相当する。迷光など余分な方向には光は散っていなかった。また、電圧ON時には、図6(B)に示すように、光(投影像)が上方向に平行移動した。角度では全体で約6°程度上方向に移動していた。明るさはほぼ同等であった。また、電圧OFF時のカットオフパターンと同じ位置にはカットオフパターンは全く残っておらず、積層セル25に入射した光は全て曲げられていたと考えられる。また、光(投影像)が上方向に平行移動しても、直進時と投影像の形が変化しておらず、そのままの形で平行移動した。なお、積層セル25をセットする向きを上下反転しても、上記と同様にハイビーム/ロービームの切り替えが可能であるが、フェールセーフ上は上記の状態が好ましい。
【0070】
第2の実施例を用いた実験では、電圧を徐々に上げていく際、投影像は連続的に変化した。その際、印加する電圧は5V程度で十分であった。これは、基板上のITOと液晶層との間にプリズム層が存在していないためで、直接液晶に電圧をかけられること、及びプリズムの形状によって液晶層の厚み(セル厚)が場所により変化するものの第2の実施例で用いたネマティック液晶のアンチパラレル配向は閾値がセル厚にほとんど依存しないためプリズム界面の屈折率変化が場所にほとんど依存しないためと考えられる。
【0071】
実験では2.5Vで像が徐々に変化を開始し、4Vで完全に移動した。その電圧の間では、像は同じ形のまま徐々に移動する様子が観察された。以上のことから、第2の実施例では、第1の実施例に比べて電圧を低くできると共に、連続的に配光を制御することができる。よって、オートレベリング機構にも対応可能である。
【0072】
以上説明したように、本発明の実施例による光照射装置は、機械的な作動部なしに、電圧オフとオンとで照射方向を変えることができる。なお、上記実施例では、電圧オフとオンとで照射方向を2方向に切り替える例を説明したが、中間調電圧を印加することにより、連続的に照射方向を制御することも可能である。また、第2の実施例では、照射方向を連続的に変化させることも可能である。
【0073】
また、液晶光学素子(積層セル)を透過する全ての光を曲げることができる。その角度は、セル構造(プリズム形状、液晶の屈折率異方性等)により制御可能な範囲が異なるが、実施例の構造で6°まで照射方向を変えられる。さらに、プリズムの傾斜角度を45°程度まで大きくすることにより、18°程度の角度範囲まで照射方向を変えられると見込まれる。自動車用の前照灯で求められている角度制御範囲は、ハイ/ロー切り替えで4〜5°程度、オートレベリングで3°程度、アダプティブフロントライティングシステム(AFS)で15°程度であるので、角度制御範囲について、実施例の光照射装置は充分な性能を有しているといえる。
【0074】
なお、上記実施例では、2つの光偏向液晶セルとも、プリズムを形成しない側の基板を光源に近い側に配置し、プリズム形成側の基板を光源から遠い側に配置したが、この逆の配置でも光偏向を行うことは可能である。
【0075】
なお、実施例の光偏向液晶セル、及びその積層セルは、偏光板を用いる液晶光学素子に比べ、高透過率である。各セルの光透過率として90%以上、反射防止コーティングにより95%以上が見込まれ、積層セルの光透過率としても80%〜90%が見込まれる。
【0076】
実施例の光照射装置は、機械的な作動部なしに、照射方向を変えることができる。なお、上記実施例では、電圧オフとオンとで照射方向を2方向に切り替える例を説明したが、中間調電圧を印加することにより、連続的に照射方向を制御することも可能である。
【0077】
なお、上記実施例では、三角柱状のプリズムを用い、底角として、15°及び90°であるものを用いたが、底角はこれに限らない。基板に垂直入射した光線について、基板から適当に緩い角度で立ち上がる斜面がプリズムを構成し、垂直に近い底角で立ち上がる面はプリズムを構成しない。このような構成により、各セルで一方向への偏向が容易になる。三角柱状のプリズム底角として、一方は5°〜60°の範囲とすることが好ましく、他方は85°〜95°の範囲とすることが好ましい。
【0078】
また、上記実施例では、三角柱状プリズムのピッチを20μmとした。プリズムのピッチは1μm〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0079】
なお、プリズムの形状は、実施例で示したものに限らず、例えば、断面形状がサインカーブ状でもよい。また、上面形状がストライプ状のものについて示したが、格子状、同心円状、楕円状、フレネルレンズ状、ドット状などでもよい。さらに、第1の液晶セルと第2の液晶セルとで異なる形状のプリズムを用いてもよい。
【0080】
なお、光照射装置に用いる光源として、HIDランプの他に、例えば、発光ダイオード(LED)、電界放射(FE)光源、蛍光灯等が考えられる。
【0081】
実施例の光照射装置は、例えば、自動車用(普通乗用車、軽自動車、トラック、バス等)の灯具(前照灯、補助灯、フォグランプ、コーナリングライト)や、二輪用(オートバイ、自転車等)の灯具(配光制御部)に応用できる。さらに、一般照明器具(屋内照明、街路灯、懐中電灯)等に応用することもできる。
【0082】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、液晶中に適量のカイラル剤を添加し、液晶層の捩れ角を180°×n倍にするな
ど、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0083】
1、11、51、61 ガラス基板
2、12、52 透明電極
3 プリズム層
3a プリズム
3b ベース層
13 配向膜
14 ギャップコントロール剤
15 液晶層
21 HIDランプ
22 楕円型リフレクタ
23 シェード
24 レンズ
25 積層セル
26 電圧印加装置
53 SiO

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線が入射する第1の光偏向液晶セルであって、
相互に対向する一対の第1及び第2の透明基板と、
前記第1及び第2の透明基板上に形成され、前記第1及び第2の透明基板間に電圧を印加する一対の第1及び第2の透明電極と、
前記第1及び第2の透明基板の一方の上方に形成され、第1の方向に長いプリズムを有する第1のプリズム層と、
前記第1のプリズム層上に形成される前記第1の方向に配向処理が施された第1の配向膜と、
前記第1及び第2の透明基板間に挟まれ、前記第1の配向膜と接する界面で長軸方向が前記第1の方向に配向する液晶分子を有する第1の液晶層と
を含む第1の光偏向液晶セルと、
前記第1の光偏向液晶セルを透過した光線が入射する第2の光偏向液晶セルであって、
相互に対向する一対の第3及び第4の透明基板と、
前記第3及び第4の透明基板上に形成され、前記第3及び第4の透明基板間に電圧を印加する一対の第3及び第4の透明電極と、
前記第3及び第4の透明基板の一方の上方に形成され、前記第1の方向に長いプリズムを有する第2のプリズム層と、
前記第2のプリズム層上に形成される前記第1の方向と直交する第2の方向に配向処理が施された第2の配向膜と、
前記第3及び第4の透明基板間に挟まれ、前記第2の配向膜と接する界面で長軸方向が前記第2の方向に配向する液晶分子を有する第2の液晶層と
を含む第2の光偏向液晶セルと、
前記第1〜第4の透明電極に電圧を印加する電圧印加装置と、
前記第1の光偏向液晶セルに光線を入射させる入射光学系と
を有する光照射装置。
【請求項2】
光線が入射する第1の光偏向液晶セルであって、
相互に対向する一対の第1及び第2の透明基板と、
前記第1及び第2の透明基板の一方の透明基板上に形成され、第1の方向に長いプリズムを有する第1のプリズム層と、
前記第1のプリズム層上及び前記第1及び第2の透明基板の他方上に形成され、前記第1及び第2の透明基板間に電圧を印加する一対の第1及び第2の透明電極と、
前記第1のプリズム層上に形成される第1又は第2の透明電極上に形成され、前記第1の方向に配向処理が施された第1の配向膜と、
前記第1及び第2の透明基板間に挟まれ、前記第1の配向膜と接する界面で長軸方向が前記第1の方向に配向する液晶分子を有する第1の液晶層と
を含む第1の光偏向液晶セルと、
前記第1の光偏向液晶セルを透過した光線が入射する第2の光偏向液晶セルであって、
相互に対向する一対の第3及び第4の透明基板と、
前記第3及び第4の透明基板の一方の透明基板上に形成され、第1の方向に長いプリズムを有する第2のプリズム層と、
前記第2のプリズム層上及び前記第3及び第4の透明基板の他方の透明基板上に形成され、前記第1及び第2の透明基板間に電圧を印加する一対の第3及び第4の透明電極と、
前記第2のプリズム層上に形成される第3又は第4の透明電極上に形成され、前記第1の方向に直交する第2の方向に配向処理が施された第2の配向膜と、
前記第3及び第4の透明基板間に挟まれ、前記第2の配向膜と接する界面で長軸方向が前記第2の方向に配向する液晶分子を有する第2の液晶層と
を含む第2の光偏向液晶セルと、
前記第1〜第4の透明電極に電圧を印加する電圧印加装置と、
前記第1の光偏向液晶セルに光線を入射させる入射光学系と
を有する光照射装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のプリズム層は、180℃以上の熱処理が可能な材料からなる請求項1又は2記載の光照射装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の光偏向液晶セルの面が地面に対して垂直であり、前記第1の方向が地面に対して平行である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のプリズム層は、5°〜60°の範囲の底角と85°〜95°の範囲の底角を持つ三角柱状のプリズムが方向を揃えて並んだ構造を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記第1のプリズム層の屈折率と、前記第1の液晶層の、電気ベクトルの振動方向が液晶分子の長軸方向に垂直な偏光成分に対する屈折率とが同等であり、前記第2のプリズム層の屈折率と、前記第2の液晶層の、電気ベクトルの振動方向が液晶分子の長軸方向に垂直な偏光成分に対する屈折率とが同等である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記第1及び第2のプリズム層は、屈折率が同等な透明材料で構成され、前記第1及び第2の液晶層は、電気ベクトルの振動方向が液晶分子の長軸方向に平行な偏光成分に対する屈折率が同等であり、電気ベクトルの振動方向が液晶分子の長軸方向に垂直な偏光成分に対する屈折率も同等である液晶材料から構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記入射光学系は、LED光源を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項9】
一対の透明基板を用意する工程と、
前記一対の透明基板間に電圧を印加する一対の透明電極を前記一対の透明基板上に形成する工程と、
前記一対の透明基板の一方の上方に、第1の方向に長いプリズムを有するプリズム層を形成する工程と、
前記プリズム層上に、前記第1の方向に配向処理が施された配向膜を形成する工程と、
前記一対の透明基板を間隙を持って貼り合わせる工程と、
前記一対の透明基板の間隙に、液晶を注入する工程と
を有する光偏向液晶セルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−81985(P2011−81985A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232308(P2009−232308)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】