説明

光照射装置及び光照射治療・予防装置

【課題】本発明は一光源にて複数の照射面に対応することができる、光照射装置及び光照射治療・予防装置を得る。
【解決手段】本発明の光照射装置1は、被写体に対して光を放射する光源2と、該光源2から放射される放射光を被写体に向けて反射する反射傘10と、該反射傘10から反射された反射光を透過させて被写体に照射する照射部材4と、を備える光照射装置1であって、前記光源2は、照射部材4の各照射面14,16の一端側から光を放射し、前記反射部材3は、光源2から放射される放射光を照射部材4の第1の照射面14に反射する第1反射領域15と、光源2から放射されて間接的に到達した光を照射部材4の第2の照射面16に反射する第2反射領域17と、前記放射光を第2反射領域17に誘導する第3反射領域18と、を備える構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体に対して光を均一に照射可能な光照射装置及び光照射治療・予防装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被写体を照射するための光照射装置として、様々なものが提案されている。その中に、一様に配置されて面状に広がりのある被写体に対応して、面状の照射部材(照射面)を有する光照射装置がある。
【0003】
この照射部材を有する光照射装置として、省エネルギーや省スペース、小型化などの要求に応じて、特許文献1にあるような自動販売機用照明器具が提案されている。
【0004】
特許文献1にある自動販売機用照明器具は、縦横に配列された複数の商品見本に対して近接して配置された平面状の拡散パネルと、この拡散パネルの商品見本の反対側(裏側)に対向して配置された平面状の反射シートと、拡散パネルと反射シートとの両一側端側に配置された光源とを有する。反射シートは、拡散パネルとの距離が光源から離れていくにつれて近くなるように、拡散パネルに対して傾けて配置されている。
【0005】
この自動販売機用照明器具は、拡散パネルの全面に対して一側端側に配置された光源からの光を反射シートで反射し、光源から離れていくにつれて反射シートから拡散パネルまでの距離が近くなることによって光路長を短くして、光源から離れることにより照度が低下することのないように配慮された設計となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−282725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この自動販売機用照明器具は、光源から反射部材に放射される光の光路長を制御して、拡散パネル上の照度が均一になるように設計されている。しかし、この自動販売機用照明器具は、被写体を一方側から照射することにのみ対応したものである。例えば、掌の表及び裏を同時に照射するためには、この自動販売機用照明器具を掌の両面にそれぞれ対向させて配置することになる。
【0008】
このような構成では、当然にその部品点数も増え、その消費エネルギーも増加するため、一光源にて複数の照射面に対応することが望まれている。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑み、一光源にて複数の照射面に対応することができる、光照射装置及び光照射治療・予防装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光照射装置は、被写体に対して光を放射する光源と、該光源から放射される放射光を被写体に向けて反射する反射部材と、該反射部材から反射された反射光を透過させて被写体に照射する照射面を少なくとも2面有する照射部材と、を備える光照射装置であって、前記光源は、照射部材の各照射面の一端側から光を放射し、前記反射部材は、光源から放射される放射光を照射部材の第1の照射面に反射する第1反射部と、光源から放射されて間接的に到達した光を照射部材の第2の照射面に反射する第2反射部と、前記放射光を第2反射部に誘導する第3反射部と、を備えるという構成を有している。
【0011】
かかる構成によれば、照射部材は、照射面を複数有し、それぞれの照射面に光源から放射される放射光の一部を第3反射部により間接的に第2反射部に誘導して、第1反射部及び第2反射部のいずれかで放射光を反射してそれぞれに対応する照射面から被写体に照射することができ、一光源にて複数の照射面に対応することができる。
【0012】
また、請求項2記載の発明において、前記第1反射部と前記第2反射部とは、それぞれ対向して配置され、前記第3反射部は、光源から放射され第1反射部に向かう放射光の光路上の一部を遮り、第2反射部に当該放射光を誘導することが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、光源から放射され第1反射部に向かう放射光は、第1の照射面から照射し、第3反射部で第1反射部への光路を遮られた放射光の一部は、第2反射部に誘導され、第2の照射面から照射され、それぞれに対応する照射面から被写体に同時に照射することができる。
【0014】
また、請求項3記載の発明において、前記照射部材は、当該照射部材を透過する透過光の透過角度が当該照射部材への入射角度より小さい角度で屈折するように形成されることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、照射部材から照射される光は、照射面の光源側に照射され、すなわち、外側に広がらないように照射することができる。
【0016】
また、本発明の光照射治療・予防装置は、上記いずれかの光照射装置から照射される光を生体の特定部位に照射することにより、治療又は予防する光照射治療・予防装置であって、光源から放射されて照射部材から照射される光の光路上に配置され、光源から放射される放射光のうち、波長が566.5nm以上780nm以下の範囲内の放射光を透過させる波長透過手段を更に備え、該波長透過手段を透過させた透過光を生体の特定部位に照射可能であるという構成を有している。
【0017】
かかる構成によれば、照射部材は、照射面を複数有し、それぞれの照射面に光源から放射される放射光の一部を第3反射部により間接的に第2反射部に誘導して、第1反射部及び第2反射部のいずれかで放射光を反射してそれぞれに対応する照射面から被写体に照射することができ、一光源にて複数の照射面に対応することができる。
【0018】
波長透過手段は、本願出願人によって発見された炎症性サイトカインの産生を抑制する働きを有する波長が566.5nm以上780nm以下の範囲内の放射光を透過させる。波長透過手段が透過する上限値である780nmの波長は、可視光(線)の上限値であり、炎症性サイトカインの産生を抑制する一方、疾患の罹患を予防したい部位又は罹患した部位(当該部位と医学的に関連があるため当該部位の治療に効果がある部位を含む。以下同じ)に照射する際の熱的影響を最小限に抑えることができる技術的意味を有する値である。当該装置は、各種疾患(例えば、炎症や肌荒れなど)を予防したい部位又は罹患した部位に波長透過手段から透過した透過光を照射することにより、炎症性サイトカインの産生を抑制することができる。そして、炎症性サイトカインの産生が抑制されることによって、例えば、炎症性疾患は、その罹患が予防され、罹患時の症状が軽減され、又は、炎症性疾患が抑制される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光照射装置及び光照射治療・予防装置によれば、一光源にて複数の照射面に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は、波長ごとの血管内皮細胞増殖因子(hVEGF)の産生量を示すグラフ、(b)は、波長ごとの炎症性サイトカインの産生比を示すグラフ
【図2】本発明の実施形態に係る光照射治療・予防装置の制御回路図
【図3】同実施形態に係る光照射治療・予防装置の外観図
【図4】同実施形態に係る光照射治療・予防装置の光学系の断面図
【図5】同実施形態に係る光照射治療・予防装置に用いたバンドパスフィルタ(波長透過手段)の透過光の分光特性を示すグラフ
【図6】同実施形態に係る光照射治療・予防装置のブロック図
【図7】本発明の第2実施形態に係る光照射治療・予防装置の光照射装置の断面図
【図8】本発明の第3実施形態に係る光照射治療・予防装置の光照射装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る光照射治療・予防装置について、図面を参酌しつつ、説明する。まず、同実施形態に係る光照射治療・予防装置が産生を抑制する炎症性サイトカインの働きについて、図1(a)及び図1(b)を参酌しつつ説明する。
【0022】
炎症性サイトカインは、生体内の多彩な細胞間情報を担う可溶性タンパク質の総称であるサイトカインの一種である。特に、炎症性サイトカインは、生体内における様々な炎症症状を引き起こす原因因子として関与し、活性化マクロファージや活性化血管内皮細胞から産生される。
【0023】
具体的に例示すると、炎症性サイトカインには、実験等で検証された代表的な炎症性サイトカインである、(h)VEGF(血管内皮細胞増殖因子、Vascular Endothelial Growth Factor)、TNFα(腫瘍壊死因子、tumor necrosis factor−α)、IL−1β(インターロイキン1β、interleukin−1β)、IFNγ(インターフェロンγ、interferonγ)、IL−6(インターロイキン6、interleukin−6)、IL−12a(インターロイキン12a、interleukin−12a)などが分類される。
【0024】
本願出願人は、この炎症性サイトカインが放電管から照射される照射光の特定の波長でhVEGFの産生量が他の波長と比較して強く抑制されることを発見した。
【0025】
すなわち、図1(a)に示すように、キセノン放電管を発光させてヒト表皮細胞に照射した照射光を半値幅40nmのバンドパスフィルタで所定の中心波長ごとに分光し、中心波長毎のhVEGFの産生量を比較した結果、中心波長600nm〜中心波長700nmの間で産生量が最も少なくなることがわかった。
【0026】
また、図1(b)に示すように、同じくキセノン放電管を発光させてヒト表皮細胞に照射した照射光を半値幅40nmのバンドパスフィルタで所定の中心波長ごとに分光し、中心波長毎の炎症性サイトカインの産生比(照射しない場合を基準とした比率)を比較した結果、中心波長650nmで最も低くなる(強く抑制される)ことがわかった。なお、図1(b)で示す照射光の波長ごとの炎症性サイトカインの産生比は、照射光を照射しなかった場合を基準(「1」とした)とした相対的な値で示されている。各炎症性サイトカインの産生比は、波長ごとに、左からTNFα、IL−1β、IFNγ、IL−6、IL−12aの順にその産生比の結果を示す。
【0027】
また、炎症性サイトカインは、生体において多種類のサイトカインが複雑なネットワークを形成しながら、全体として方向性のある活性を発揮する。炎症性サイトカインは、同じく血球から産生され、炎症を抑制する活性を有する抗炎症性サイトカインとのバランスが崩れることにより、炎症反応の過剰な疾患状態を惹起させる。なお、抗炎症性サイトカインの一つであるIL−4(インターロイキン1α、interleukin−4)には、効果がない(産生が抑制されない)ことも実験等から判明している。
【0028】
そして、この炎症性サイトカインの産生を抑制することにより、新規メカニズムの炎症性疾患治療が可能となる。
【0029】
次に、本発明の第1実施形態に係る光照射治療・予防装置について、図2〜図6を参酌しつつ説明する。同実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、主に、炎症性疾患の罹患を予防し又は罹患時の当該疾患の症状を軽減する予防治療を受ける被治療者や、炎症性疾患を抑制することにより炎症性疾患の治療を受ける被治療者(患者)などの治療を受けるために当該装置を使用する使用者に光を照射する光照射装置の一例である。
【0030】
同実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、図2で図示する光照射治療・予防装置の制御回路図に示されているように、被写体に対して光を放射する光源2と、該光源2から放射される放射光を被写体に向けて反射する反射部材3と、該反射部材3から反射された光を透過させて被写体に照射する照射部材4と、光源2から放射される放射光のうち波長が特定の範囲内の放射光を透過させる波長透過手段5と、光源2の発光を制御する発光制御手段6と、光源2及び発光制御手段6に電気を供給する電源供給手段7と、光源2、反射部材3、照射部材4、波長透過手段5、発光制御手段6及び電源供給手段7を収納するとともに、波長透過手段5から透過された透過光を使用者の予防したい部位又は罹患した部位(特定部位)に照射可能な構造を有する装置本体8(図3参照)と、を備える。
【0031】
本実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、図4に示すように、光源2と反射部材3の一部(以下、この反射部材3の一部以外の残りの部分を、単に「反射部材3」と称する)とが一体に構成される光源ユニット9を備える。光源ユニット9は、光源2と、光源2から放射される放射光を一方に向けて反射する反射傘10と、波長透過手段5に向けて入射する入射光の入射角度を整合するために、反射傘10の開口部に取り付けられるフレネルレンズ11と、を備える。
【0032】
光源ユニット9は、フレネルレンズ11から照射される照射光が照射部材4の一端側から照射されるように、略平面状に形成された照射面を延長させた面より照射部材4の被写体側に光源2が配置されるように位置している。
【0033】
光源2は、炎症性サイトカインの産生を抑制するために使用者の生体の予防したい部位又は罹患した部位に照射する光源となる。光源2は、例えば、キセノン放電管やハロゲン放電管などの(閃光)放電管であって、特に、本実施形態では、キセノン放電管を用いる例を説明する。
【0034】
反射傘10は、照射部材4(照射面)に接する接線A(すなわち、照射部材4の照射面を延長させた面)より照射部材4の被写体側と反対側(装置内側)に向かう放射光を照射部材4に反射する第1反射板(本願発明に係る第1反射部)12と、被写体側に向かう放射光を第1反射板12及び反射部材3に反射する第2反射板13(本願発明に係る第2反射部)と、を備える。第1反射板12は、照射部材4に面するように配置され、第2反射板13は、照射部材4に面しないように配置され、第1反射板12に面するように配置される。例えば、被写体側に向かう放射光(図4の線B)は、光源2から第2反射板13で反射し、第2反射板13からフレネルレンズ11,波長透過手段5を透過し、反射部材3で反射して、照射部材4に入射される。
【0035】
すなわち、光源2は、照射部材4の照射面に接する接線Aより被写体側に配置される。なお、光源2を照射部材4の照射面に接する接線Aより被写体側に配置するのは、光源2から放射される放射光が照射面に直接入射する直接光が入射しないようにするためである。当該直接光の一部が照射面に入射することを無視できる、若しくは、考慮する必要のなく、その一部の直接光が照射面に入射し、残りの直接光が入射しないのであれば、接線Aより被写体側と反対側に配置されることを妨げるものではない。このような場合も本願発明の「光源2は、照射部材4の照射面に接する接線Aより被写体側に配置される」ものと解する。
【0036】
フレネルレンズ11は、波長透過手段5が入射角依存性を有するフィルタを用いる場合に用いられ、光源2から入射される入射角度が使用する波長透過手段5の許容可能な角度以内となるように設けられている。なお、フレネルレンズ11は、例えば、入射角依存性がない色ガラスフィルターなどを用いる場合であれば、省略することもできる。
【0037】
反射部材3は、波長透過手段5を透過した透過光が使用者の予防したい部位又は罹患した部位に照射されるように、光源2から略全方位に放射される放射光の照射範囲を制御する。本実施形態に係る反射部材3は、光源ユニット9の反射傘10に加えて、光源2から放射される放射光を照射部材4の第1の照射面14に反射する第1反射領域(本願発明に係る第1反射部)15と、光源2から放射されて間接的に到達した光を照射部材4の第2の照射面16に反射する第2反射領域(本願発明に係る第2反射部)17と、放射光を第2反射領域17に誘導して到達させる第3反射領域(本願発明に係る第3反射部)18と、を備える。
【0038】
第1反射領域15は、照射部材4の第1の照射面14に面して配置され、反射光が透過する照射部材4の位置が光源2から遠くなるほど光源2と照射部材4の第1の照射面14との間の光路長が短くなるように配置される。第1反射領域15は、光源ユニット9の第1反射板12から略連続して形成され、第1の照射面14の光源2側と反対側まで設けられている。
【0039】
第2反射領域17は、照射部材4(第1の照射面14及び第2の照射面16)を挟んで反対側に配置され、第1反射領域15と対向するように配置される。第2反射領域17も照射部材4の第2の照射面16に面して配置され、反射光が透過する照射部材4の位置が光源2から遠くなるほど光源2と照射部材4の第2の照射面16との間の光路長が短くなるように配置される。
【0040】
第3反射領域18は、光源2から放射され第1反射領域15に向かう放射光の光路上の一部を遮り、第2反射領域17に当該放射光を誘導する。第3反射領域18は、光源ユニット9のフレネルレンズ11を透過して第1反射領域15に向かう放射光の光路上の一部に配置されるプリズム19と、該プリズム19で反射又は屈折された光を第2反射領域17に反射させる反射部20と、を備える。
【0041】
プリズム19は、直角三角柱形状をしており、光源ユニット9のフレネルレンズ11から透過される光の第1の照射面14側の半分を覆うように配置され、第1反射領域15と第2反射領域17とに光源2からの光を分配する。プリズム19は、フレネルレンズ11から透過される光が入射される直角な面である入射面21と、入射面21から入射された光の一部を第2反射領域17に向けて反射する傾斜した面である反射面22と、反射面22で反射された光を略屈折することなく透過させる入射光に対して直角な面である透過面23と、を備える。入射面21と透過面23とは直交しており、反射面22は、入射面21及び透過面23に対して45度傾斜している。
【0042】
反射部20は、プリズム19により反射された光を第2反射領域17に反射すべく、プリズム19の反射面22と略平行な反射面24と、プリズム19から第2反射領域17に反射して誘導する誘導面25と、を備える。
【0043】
照射部材4は、それぞれ対向して配置される第1の照射面14と第2の照射面16とを備える。各照射面14,16は、当該照射部材4を透過する透過光の透過角度が当該照射部材4への入射角度より小さい角度で屈折するように形成される。すなわち、各照射面14,16の被写体側と反対側の面(被写体と面していない面)に、入射角度より小さい角度で屈折するようにそれぞれ微少なプリズム26,…,27,…が複数形成されている。
【0044】
波長透過手段5は、光源2から放射されて照射部材4から照射される光の光路上に配置される。本実施形態に係る波長透過手段5は、第3反射領域18のプリズム19の入射面21より光源2側に配置される。
【0045】
波長透過手段5は、光源2から放射された放射光の、1以上の特定の波長、又は、1以上の特定範囲の波長の放射光のみを透過する光学フィルタである。本実施形態に係る光学フィルタは、特定範囲の波長(帯)の放射光のみを選択的に透過するバンドパスフィルタ(干渉フィルタ)を例に説明する。
【0046】
波長透過手段5は、波長が566.5nm以上780nm以下の範囲内の放射光を透過させる。図5に図示する各バンドパスフィルタを透過した透過光の分光特性(分光透過率)のグラフからわかるように、この波長範囲の下限値は、(図5の実線Cでその分光特性を示す)中心波長600nmのバンドパスフィルタCを透過する透過光の透過率が最大となる波長(実線C上のb点に対応する波長566.5nm)の透過率の2分の1(半分)となる短波長側の波長(実線C上のa点に対応する波長)である。上限値は、可視光の最大波長である。
【0047】
前述のとおり、中心波長600nmのバンドパスフィルタCは、図1(a)で示すとおり、hVEGFの産生量を抑制する働きがある波長を透過する光学フィルタである。また、この中心波長600nmのバンドパスフィルタCより短波長側の(図5の実線Bでその分光特性を示す)中心波長500nmのバンドパスフィルタBは、図1(a)で示す結果より、hVEGFの産生量を抑制する効果が低いと考えられる。よって、中心波長600nmのバンドパスフィルタCの短波長側の波長aは、炎症性サイトカインを抑制する働きがある下限値であると評価できる。
【0048】
また、近赤外線(波長780nm超)は、使用者に照射する際に熱的な影響が大きいため、波長透過手段5は、この近赤外線に至るまでの可視光線(波長780nm以下)の上限値を上限とされている。
【0049】
また、波長透過手段5は、好ましくは、波長が566.5nm以上746nm以下の範囲内の放射光を透過させるようにしてもよい。この波長範囲の上限値は、(図5の実線Eでその分光特性を示す)中心波長700nmのバンドパスフィルタEを透過する透過光の透過率が最大となる波長(実線E上のd点に対応する波長676.5nm)の透過率の2分の1(半分)となる長波長側の波長(実線E上のf点に対応する波長)である。
【0050】
前述のとおり、中心波長700nmのバンドパスフィルタEは、図1(a)で示すとおり、hVEGFの産生量が抑制する働きがある波長を透過する光学フィルタである。また、この中心波長700nmのバンドパスフィルタEより長波長側の(図5の実線Fでその分光特性を示す)中心波長880nmのバンドパスフィルタFは、図1(a)で示す結果より、hVEGFの産生量を抑制する効果が低いと考えられる。よって、中心波長700nmのバンドパスフィルタEの長波長側の波長(実線E上のf点に対応する波長)は、炎症性サイトカインを抑制する働きがある値であると評価できる。
【0051】
なお、波長780nmも、中心波長880nmのバンドパスフィルタFを透過する透過光の波長よりも短波長側であるため(実線E上のg点に対応する波長)、この波長の照射光を照射することによる炎症性サイトカインの抑制効果を否定するものではなく、その働きが高く評価できるというものである。
【0052】
また、波長透過手段5は、より好ましくは、波長が600nm以上700nm以下の範囲内の放射光を透過させるようにしてもよい。図1(a)で示すとおり、hVEGFの産生量を抑制することができる波長の透過光を透過する光学フィルタである中心波長600nm及び700nmのバンドパスフィルタC,Eの中心波長(実線C上のc点に対応する波長及び実線E上のe点に対応する波長)を用いることにより、更に炎症性サイトカインが高く抑制できる。
【0053】
また、前述のとおり、図1(b)でその抑制効果のある(図5の実線Dでその分光特性を示す)中心波長650nmのバンドパスフィルタDを透過する透過光の波長の範囲が、中心波長600nmと中心波長700nmのバンドパスフィルタC,Eの間に位置しており、その波長の範囲がそれぞれの波長の範囲と重なっていることから、中心波長600nm〜中心波長700nmのバンドパスフィルタC〜Eを透過する波長の透過光に抑制効果があると考えられる。なお、図5の実線Aは、光学フィルタを透過させていない状態の透過光の分光特性である。
【0054】
発光制御手段6は、図6に示す制御ブロック図に示されるように、光源2の発光条件の設定を受け付けるとともに自己診断及びその自己診断結果に対応する機能を有する発光制御部28と、その動作状態を表示する動作表示手段29と、を備える。
【0055】
発光制御部28は、具体的には、光源2を1回又は複数回に分けて閃光発光させたり、所定の発光間隔で発光制御させたり、複数回に分けて閃光発光させる場合は、更に、光源2が放射する放射エネルギーを所定の放射エネルギー以下に抑えて閃光発光させるなどの様々な発光パターンで光源2を発光制御する。
【0056】
動作表示手段29は、図3に示すように、照射可能状態を表示する照射状態表示用LED30と、故障が発生していることを報知して使用者に警告する警告用LED31と、次の照射可能状態になるまでの待ち時間を表示する待ち時間表示用ディスプレイ(7セグメントディスプレイ)32と、を備える。なお、動作表示手段29の各構成は、LEDや7セグメントディスプレイである例を示したが、これに限定されず、各種ランプや液晶ディスプレイなどであってもよく、また、外部端末の表示部に表示されるものであってもよい。
【0057】
照射状態表示用LED30は、照射光の照射の準備が完了したときに緑色点灯して表示する。照射状態表示用LED30は、具体的には、光源2の充電が完了したときや、前の照射からの待ち時間(30秒)経過後に点灯する。
【0058】
警告用LED31は、電源供給手段7が異常(電圧異常、充電異常等)となったときや、装置本体8の内部の温度が上昇したときなどに赤色点灯して表示する。警告用LED31は、1回の照射終了後30秒間は、次の照射を開始させないため、その期間にも点灯する。
【0059】
待ち時間表示用ディスプレイ32は、照射可能な状態を「00」で表示する。待ち時間表示用ディスプレイ32は、照射可能な状態までの待ち時間を「00」以外の数値で表示し、「00」までカウントダウンすることで表示する。また、待ち時間表示用ディスプレイ32は、故障発生時、その発生した故障を対応する識別番号で表示する故障表示用ディスプレイとしても機能する。
【0060】
電源供給手段7は、図2に示すように、光源2の発光エネルギーを蓄える蓄電手段33と、該蓄電手段33を充電する充電回路34と、蓄電手段33に電気を供給する電源部35と、該電源部35のオン・オフを切り替える電源スイッチ36(図3も参照)と、を備える。電源供給手段7は、光源2以外にも、発光制御手段6の電源としても用いられる。
【0061】
蓄電手段33は、例えば、光源2を発光させるのに必要な電気容量を有し、光源2と並列に接続される主コンデンサである。充電回路34は、電源部35を介して供給される電気を蓄電手段33に充電する。電源部35は、例えば、プラグ受け(電源コンセント)に接続して電気の供給を受け付けるためのプラグ37(図3参照)と電源ケーブル38(図3参照)と、を備える。なお、電源部35は、電池又は充電池などを備えるものであってもよい。
【0062】
装置本体8は、図3に示すように、少なくとも一つの開口を有する略直方体形状に形成されており、光源2、反射部材3、照射部材4、波長透過手段5、発光制御手段6、電源供給手段7などを内蔵させるケーシングである。この装置本体8は、一方の面(以下、「前面」と称する)に形成された開口部39から使用者の手を挿入して、手の甲に特定範囲の波長の光を照射するための台である載置部40と、該載置部40内で照射される照射光が開口部39から漏れることを防止する漏光防止手段41と、光源2等で高温となる内部を冷却するための冷却手段42と、持ち運ぶために把持する取手43と、を備える。
【0063】
載置部40は、開口部39から挿入された使用者の手の位置を位置決めするためのガイド44と、使用者の手が所定の位置に配置され、照射可能な状態になっていることを検出する自動開始用センサ45と、を備える。
【0064】
ガイド44は、各指を挿入可能な間隔を空けて並列に複数配置される。自動開始用センサ45は、具体的には赤外線LEDと赤外フォトトランジスタとを有し、赤外線LEDから発光された光を赤外線フォトトランジスタで受光し、所定時間(例えば、2秒以上)その受光を遮ることにより感知する。すなわち、自動開始用センサ45は、使用者が挿入した手によって赤外線LEDと赤外線フォトトランジスタとの間の光が遮断されることにより、手が挿入されたことを検出する。発光を終了して、再び、赤外線LEDから照射された光を赤外線フォトトランジスタが検出するまで、発光が開始されない。
【0065】
漏光防止手段41は、内部で照射される光が開口部39から漏れないように光を遮断する遮光カバーである。漏光防止手段41は、使用者の手を挿入可能なスペースを残して開口部39の上半分を塞ぐように開口部39に配置される。漏光防止手段41は、具体的には、減光フィルタ(NDフィルタ)や遮蔽板である。
【0066】
冷却手段42は、冷却ファン(図示せず)で熱源を冷却し、装置本体8の後部(上面後端)に設けられた排気口46,…から高温の空気を排気する。なお、冷却手段42は、空冷方式に限定されるものではなく、その用途又は冷却容量などによって水冷方式としてもよい。
【0067】
次に、本発明の実施形態に係る光照射治療・予防装置1について、説明する。
【0068】
まず、電源スイッチ36をオンにし、照射状態表示用LED30が緑色点灯するのを確認してから、開口部39から手を挿入し、ガイド44,…間に指を挿入して載置部40の所定位置に手を配置する。使用者の手がガイド44,…に収まると、自動開始用センサ45が感知し、発光制御手段6が光源2を発光させて光を放射させる。
【0069】
光源2から放射された光のうち、照射部材4の第1の照射面14に接する接線Aより被写体側と反対側に向かう光(主入射光)は、反射傘10の第1反射板12を反射して又は第1反射板12を介することなく直接、フレネルレンズ11を第1反射領域15又は照射部材4に向かって透過する。また、光源2から放射された光のうち、照射部材4の第1の照射面14に接する接線Aより被写体側(外側)に向かう光(主入射光から外れた離散光)は、反射傘10の第2反射板13を反射して又は更に反射傘10の第1反射板12を反射してフレネルレンズ11を第1反射領域15又は照射部材4に向かって透過する。
【0070】
フレネルレンズ11を透過した光のうち、波長透過手段5を透過し、第3反射領域18に入射して、反射面22で第2反射領域17に向かって反射された光は、プリズム19の透過面23を略散乱することなく透過し、反射部20の反射面24で第2反射面17に反射する。そして、第2反射面17で照射部材4の第2の照射面16に入射し、第2の照射面16のプリズム27,…で光源2側に屈折させて、外側(光源2と反対側)に光が漏れにくいように第2の照射面16に対向する被写体に照射される。フレネルレンズ11を透過した残りの光は、そのまま第1反射領域15に反射されて照射部材4の第1の照射面14に照射され、又は、直接照射部材4の第1の照射面14に照射される。照射部材4の第1の照射面14に照射された光は、第1の照射面14のプリズム26,…で光源2側に屈折させて、第1の照射面14に対向する被写体に照射される。
【0071】
なお、本実施形態に係る光照射治療・予防装置1では、光源2から放射される放射光の一部は、反射部材3の第3反射領域18がその光路上に配置されていない場合において、反射傘10(第1反射板12及び第2反射板13)及び反射部材3(第1反射領域15、第2反射領域17)で反射されることなく、直接照射部材4に照射可能となっている。これは、光源2が照射部材4の第1の照射面14に接する接線Aより照射部材4の被写体側の反対側近傍に配置されているためである。しかし、この照射部材4に直接照射される放射光は、無視できる又は考慮する必要のない程度の照度であり、本実施形態の場合は特に、照射部材4の第1の照射面14に設けられたプリズム26,…や反射部材3の第3反射領域18によって結果的に第1の照射面14から直接照射される照度が抑えられている。このような場合、光源2が照射部材4の第1の照射面14に接する接線Aより被写体側に配置されているのと同様の効果を有しており、よって、本願発明の「光源2は、照射部材4の第1の照射面14に接する接線Aより被写体側に配置されている」ものと解する。
【0072】
このように、光源2は、放射した光を照射部材4の照射面14,16に直接入射しないように配置することができる。よって、この照射面14,16には、光源2から放射されて反射傘10及び反射部材3に反射された光が入射されることになる。この照射部材4に入射する光は、光源2から放射されて、照射部材4の第1の照射面14に接する接線Aより被写体側と反対側に向かう光を、反射傘10の第1反射板12又は反射部材3の第1反射領域15に反射させて照射面14,16に入射させ、照射部材4の第1の照射面14に接する接線Aより被写体側(外側)に向かう光(主入射光から外れた離散光)を、反射傘10の第2反射板13で反射傘10の第1反射板12又は反射部材3に反射させて照射面14,16に入射させる。離散光は、主入射光と比較して反射傘10の第2反射板13を迂回させた分、その光路長が余計に長くなり、反射傘10の第1反射板12で主入射光に合流させても、照度が強くなりすぎることはない。このようにして、光源2から放射される放射光を照射面14,16に反射傘10の第1反射板12及び第2反射板13で漏れなく誘導し、照射面14,16で均一に照射することができる。
【0073】
照射部材4は、二つの照射面14,16を有し、それぞれの照射面14,16に光源2から放射される放射光の一部を第3反射領域18により第2反射領域17に誘導して、第1反射領域15及び第2反射領域17のいずれかで放射光を反射してそれぞれに対応する照射面14,16から被写体に照射することができ、一光源にて複数の照射面14,16に対応することができる。
【0074】
また、光源2から放射され第1反射領域15に向かう放射光のうち、第3反射領域18のプリズム19で第1反射領域15への光路を遮られた放射光の一部は、第2反射領域17に誘導され、第2の照射面16から照射される。光源2から放射され第1反射領域15に向かう放射光のうち、残りの光は、そのまま、第1の照射面14から照射される。よって、光源2から放射され第1反射領域15に向かう放射光は、それぞれに対応する照射面14,16から被写体に同時に照射することができる。
【0075】
照射部材4から照射される光は、照射面14,16にプリズム26,27が形成されているため、照射面14,16の光源側に照射され、すなわち、外側に広がらないように照射される。
【0076】
光源2から放射されて反射部材3の第1反射領域15(及び第2反射領域17)で反射された光は、その光源2から距離が離れることによる照度の低下を光路長を短くすることにより補うことができるため、照射部材4の照射面14,16で照度の均一化をすることができる。
【0077】
波長透過手段5は、本願出願人によって発見された炎症性サイトカインの産生を抑制する働きを有する波長が566.5nm以上780nm以下の範囲内の放射光を透過させる。波長透過手段5が透過する上限値である780nmの波長は、可視光(線)の上限値であり、炎症性サイトカインの産生を抑制する一方、疾患の罹患を予防したい部位又は罹患した部位(当該部位と医学的に関連があるため当該部位の治療に効果がある部位を含む。以下同じ)に照射する際の熱的影響を最小限に抑えることができる技術的意味を有する値である。当該装置は、各種疾患(例えば、炎症や肌荒れなど)を予防したい部位又は罹患した部位に波長透過手段5から透過した透過光を照射することにより、炎症性サイトカインの産生を抑制することができる。そして、炎症性サイトカインの産生が抑制されることによって、例えば、炎症性疾患は、その罹患が予防され、罹患時の症状が軽減され、又は、炎症性疾患が抑制される。
【0078】
次に、本発明の第2実施形態に係る光照射治療・予防装置について、図7を参酌しつつ説明する。なお、同実施形態に係る光照射治療・予防装置は、第1実施形態に係る光照射治療・予防装置1の基本構成を同一とするものであるため、これらの説明を省略するとともに、相違する構成に新たに符号をふり、これらの構成を中心に説明する(以下に続く実施形態においても同様とする)。
【0079】
反射部材3の第3反射領域47は、第1実施形態に係るプリズム19の反射面22から反射部20の反射面24まで同一の屈折率で連続して成形された略平行四辺形の断面形状部分のプリズム48である。プリズム48は、第1実施形態に係るプリズム19と同様に、入射面21と、(第1)反射面22と、反射部20の反射面24と対向して略平行な面で第2反射領域17に反射する第2反射面49と、入射面21と略平行な面で第2反射面49で反射された光を略散乱することなく第2反射領域17に向けて透過させる透過面50と、を備える。
【0080】
このような構成によっても、第1実施形態に係る光照射治療・予防装置1と同様に、フレネルレンズ11を透過した光のうち、第3反射領域18に入射して、第1反射面22で第2反射領域17に向かって反射された光は、プリズム48の第2反射面49で反射し、透過面50を略散乱することなく透過して第2反射領域17を介して第2の照射面16に照射させることができる。
【0081】
次に、本発明の第3実施形態に係る光照射治療・予防装置について、図8を参酌しつつ説明する。同実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、第3反射領域51が第1反射領域15の光源2側の端に照射部材4の照射面14に向かって突出して形成された直角三角形状の断面形状の部分である反射突部52である。
【0082】
反射突部52は、波長透過手段5に対向する面が第1実施形態に係るプリズム19の反射面22と同一の傾きになるように配置される。反射突部52は、照射部材4側に波長透過手段5の第1反射領域15側の約半分を遮るまで突出させている。すなわち、反射突部52は、波長透過手段5を透過する光のうち、第1反射領域15側の約半分を通過する光を第2反射領域17に反射するよう配置されている。
【0083】
このような構成によっても、光源2から放射され第1反射領域15に向かう放射光のうち、第3反射領域51の反射突部52で第1反射領域15への光路を遮られた放射光の一部は、第2反射領域17に誘導され、第2の照射面16から照射される。すなわち、放射光の一部は、第3反射領域51の反射突部52で反射部20の反射面24に向けて反射し、該反射面24で第2反射領域17に反射することにより、第2の照射面16から照射される。また、光源2から放射され第1反射領域15に向かう放射光のうち、残りの光は、そのまま、第1の照射面14から照射される。よって、光源2から放射され第1反射領域15に向かう放射光は、それぞれに対応する照射面14,16から被写体に同時に照射することができる。
【0084】
なお、本発明に係る光照射治療・予防装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0085】
例えば、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、手に照射する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、炎症性サイトカインの産生の抑制を予防したい他の生体の部位又は罹患した他の生体の部位に照射するようにしてもよく、その生体の部位は、肩や腰、足、全身などどのような場所に照射されるような場合であってもよい。また、人間に照射する場合に限定されるものではなく、人間以外の動物などの生体に対し、治療のために光を当該特定部位に照射するようにしてもよい。これらの場合は、本実施形態に係る光照射治療・予防装置1の構造に限定されず、適宜、照射する生体の特定部位に適した構造とすることを妨げるものではない。
【0086】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、上記治療・予防目的に炎症性サイトカインの産生の抑制を予防したい生体の部位又は罹患した生体の部位に照射する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、照射部材から照射される照射光が被写体に対して略均一に照射することができるため、上記用途以外にも、一般的な照明、例えば、看板の照明や自動販売機の商品陳列棚の照明、液晶ディスプレイなどのバックライトなどのように、一様に整列又は配置される被写体に対して効率よく均一に照明する必要のある光照明装置、特に面照明装置として用いてもよい。上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1では、波長透過手段5を備える例を説明したが、面照射装置として用いる場合、波長透過手段5を備えなくてもよいし、または、照射する被写体に合わせて異なる周波数の光を透過する波長透過手段5を備えてもよい。
【0087】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、波長透過手段5にバンドパスフィルタを用いる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ショートパスフィルタ(長波長カットフィルタ)とロングパスフィルタ(短波長カットフィルタ)との組み合わせにより、入射された入射光の特定範囲の波長を選択して透過させるものであってもよい。
【0088】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、円筒形状の閃光放電管を1本若しくは2本用いる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、光源は、軸方向に直列に配列された2以上の(閃光)放電管又は直線状に配列させた複数のLEDであってもよく、照射部材の幅方向の延長に対応するようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、照射部材4を照射面が平面形状である例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、照射部材の照射面は、奥行き方向に対して丸みを帯びた円弧状であってもよいし、半円状であってもよい。この場合、光源は、照射部材の照射面の光源側端部に接する接線より被写体側に配置されることが好ましい。
【0090】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、照射部材4の照射面14,16に拡散性のない例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、照射部材の照射面は、拡散性を有する拡散パネルを用いてもよい。
【0091】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、一つの光源2に対して照射部材4の照射面14,16が二つである例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、光照射装置は、一つの光源2に対して複数の照射面を有し、反射部材の第3反射領域が増加する照射面ごとに設けられて、各照射面に光を誘導するようにしてもよい。
【0092】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、反射部材3の第3反射領域18,47,51が、光源2から放射されて第1反射領域15に照射される光のうち、照射部材4側の約半分を遮り、又は、反射部材3の第1反射領域15側の約半分を遮る例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、照射部材4の第1の照射面14から照射される照射量と第2の照射面16から照射される照射量との関係を変更させる場合であれば、反射部材の第3反射領域が、光源2から放射されて第1反射領域15に照射される光のうち、照射部材4側又は反射部材3の第1反射領域15側を遮る量を変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明に係る光照射装置及び光照射治療・予防装置は、光源が照射部材の各照射面の一端側から光を放射し、反射部材が光源から放射される放射光を照射部材の第1の照射面に反射する第1反射部と、光源から放射されて到達した光を照射部材の第2の照射面に反射する第2反射部と、前記放射光を第2反射部に誘導する第3反射部と、を備える構成を有することによって、一光源にて複数の照射面に対応することができることが必要な用途にも適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 治療・予防装置
2 光源(放電管)
3 (第1実施形態の)反射部材
4 照射部材
5 波長透過手段
9 光源ユニット
10 反射傘(反射部材の一部)
12 第1反射板(第1反射部)
13 第2反射板(第2反射部)
14 第1の照射面
15 第1反射領域(第1反射部)
16 第2の照射面
17 第2反射領域(第2反射部)
18 (第1実施形態の)第3反射領域(第3反射部)
19 (第1実施形態の第3反射領域の)プリズム
20 反射部
21 入射面
22 反射面
23 (第1実施形態の)透過面
24 反射面
25 誘導面
26 (第1の照射面の)プリズム
27 (第2の照射面の)プリズム
47 (第2実施形態の)第3反射領域
48 (第2実施形態の第3反射領域の)プリズム
49 第2反射面
50 (第2実施形態の)透過面
51 (第3実施形態の)第3反射領域
52 反射突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に対して光を放射する光源と、該光源から放射される放射光を被写体に向けて反射する反射部材と、該反射部材から反射された反射光を透過させて被写体に照射する照射面を少なくとも2面有する照射部材と、を備える光照射装置であって、前記光源は、照射部材の各照射面の一端側から光を放射し、前記反射部材は、光源から放射される放射光を照射部材の第1の照射面に反射する第1反射部と、光源から放射されて間接的に到達した光を照射部材の第2の照射面に反射する第2反射部と、前記放射光を第2反射部に誘導する第3反射部と、を備えることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記第1反射部と前記第2反射部とは、それぞれ対向して配置され、前記第3反射部は、光源から放射され第1反射部に向かう放射光の光路上の一部を遮り、第2反射部に当該放射光を誘導する請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記照射部材は、当該照射部材を透過する透過光の透過角度が当該照射部材への入射角度より小さい角度で屈折するように形成される請求項1又は請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光照射装置から照射される光を生体の特定部位に照射することにより、治療又は予防する光照射治療・予防装置であって、光源から放射されて照射部材から照射される光の光路上に配置され、光源から放射される放射光のうち、波長が566.5nm以上780nm以下の範囲内の放射光を透過させる波長透過手段を更に備え、該波長透過手段を透過させた透過光を生体の特定部位に照射可能であることを特徴とする光照射治療・予防装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−200469(P2012−200469A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69241(P2011−69241)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】