説明

光発電用途向け原料の浄化および圧縮の方法

帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を、光起電力用途向けに利用可能な多結晶−多重結晶シリコンインゴットを成形するためのるつぼの充填材料を調製するための供給材料として再利用するためのプロセスを提供する。このプロセスは複数のステップであり、大部分の作業が不活性雰囲気下で実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末屑を、光起電力産業およびマイクロエレクトロニクス産業の両方に対して、光起電力用途向けに利用可能な多結晶(polycrystalline)−多重結晶(multi−crystalline)シリコンインゴットを成形するためのるつぼの充填材料を調製するための供給材料として再利用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電力技術(PV)は、十分に確立した、高信頼、再生可能、かつ環境上安全なクリーンな電気エネルギーの供給源であり、光起電力産業は、数十ギガワット/年のさらなる電力を加えることが予期される。
【0003】
これまでのところ、光起電力産業は、太陽電池用の供給材料として、高純度電子グレードポリシリコンの余剰能力および電子グレードシリコン単結晶産業からの再利用された屑(インゴットの先端/末端および崩壊したウェーハ)を用いてきて、ある程度依然として用いているが、競争力のないコストで、シリコン多結晶の限定的な信頼性の低い可用度といった生来の不都合を伴っている。
【0004】
光起電力産業がマイクロエレクトロニクス産業より速く成長しているので、シリコン原料はより希薄で、より高価になった。光起電力用途向けシリコンの不足を克服するために、ソーラーグレードシリコンを供給することができる以下の技術が開発されており、少なくとも部分的には既に用いられている。
−マイクロエレクトロニクス産業によって要求されるものほど厳格でないが光起電力産業の要件によく一致した品質特性を有する多結晶を提供することにより製作コストを低減することを目標とした、トリクロロシランによる電子グレードシリコン用の化学物質生産プロセスの機構への転換
−冶金シリコンの直接浄化
−石英の炭素の熱還元
【0005】
しかし、これらの補助的技術は、すでに成長しており、さらに1年につき25%から30%の見積率で成長することになるソーラーグレードシリコンの増大する需要を満たすには不十分である。結論として、マイクロエレクトロニクスおよび光起電力の両市場に供給するのに十分なポリシリコンの生産能力がない。
【0006】
さらなるポリシリコン生産能力を導入することにより、これらの新規の需要に合わせて市場が調整しているという事実にもかかわらず、新規の生産能力が、増大している要求に対応することができるまで、次の数年にわたってシリコン供給材料の不足が続くことになる。
【0007】
ソーラーグレードポリシリコンの入手可能性は、2010年まで光起電力の成長傾向と一致しないであろうと推定されている。この状況の結果として、ソーラーグレードシリコンの新規または代替の供給源を見いだすことに緊急の必要性がある。
【0008】
光起電力産業向けの競争力のある価格でのソーラーグレードシリコンの深刻な不足のために、光起電力およびエレクトロニクスの産業における機械的作業でカーフとして生じるシリコン粉末屑(マイクロメートルサイズのシリコン粉末)の回収および再利用のための技法の開発が進められている。
【0009】
実際、微細なシリコン粉末として回収することができるシリコンカーフは、太陽電池を製造するプロセスで原料として供給されるシリコン全体の約35%に達すると推定されている。
【0010】
PVおよびマイクロエレクトロニクスの製造からのシリコン廃棄物の再利用は、太陽エネルギー開発およびいくつかの切断機器生産者のための欧州および政府官庁の両方を含むいくつかの研究プロジェクトの対象である。
【0011】
シリコン粉末回収プロセスが解決しなければならない主要な課題は、以下の通りである。
a)帯鋸およびグラインダの廃水あるいは線鋸作業から排出されたスラリから生じるケーキまたはスラッジから、シリコンカーフを効果的に分離すること
b)作業の期間中、カーフの酸化および水素の発生を回避すること
c)光起電力産業によって要求されるレベルで金属不純物を効率的に除去すること
d)回収されたカーフを溶解するときの、粒子サイズが小さく低密度であることならびに表面酸化状態に起因した深刻な困難さ
【0012】
機械的作業から結晶シリコン金属カーフを回収して前記回収された結晶シリコンカーフを溶解する方法に関して、経済的かつ環境面で安全な十分に満足すべき解決策はこれまで見いだされていない。
【0013】
今日の産業が直面する課題のポイントa)に関して、薄層のPVセルを製造するために線鋸作業からのシリコンを再利用する方法を開示している米国特許出願第2003/0041895号について説明する。
【0014】
シリコンカーフを回収してPV用途からの材料を得る方法は、
a)市販のスラリ回復システムによって、シリコンスラリをシリコンスラッジへと凝縮するステップと、
b)泡沫浮選(または他の分離濃縮技法)および界面活性剤によって前記スラッジからシリコンカーフを回収するステップと、
c)シリコンカーフの成形材料を作製するために、浮選または他の濃縮方法によって得られたシリコンカーフを有機結合剤と混合するステップと、
d)シリコンカーフの成形材料を薄層のPVセル形態へと成形するステップと、
e)結合剤を除去し、結合剤を含まない構造体を焼結して、最終高密度形態にするステップとから成る。
【0015】
米国特許出願第2003/0041895号は、商業システムおよびシリコン浮選により、線鋸スラリからのシリコンカーフの回収に関するものであり、最終目標は、光起電力セルを構築するのに直接用いられるシリコン薄層構造体を焼結によって得ることである。この発明は、シリコン酸化の可能性が高いという問題を扱わず、最終製品の純度にも取り組んでいない、といったことは言及すべき点である。供給材料および作製される製品に関して、この方法は柔軟性が低いという欠点を有する。この出願では、帯鋸およびグラインダなどのシリコンの機械的作業から生じるシリコンカーフの回収について考慮されていない。
【0016】
シリコンの酸化回避を意味するポイントb)、および回収されたシリコンの中の汚染物質レベルに関するポイントc)に関して、この文献は十分な解決策を提供していない。
【0017】
まさにこのポイントにおいて、半導体産業でシリコンを洗浄するのに一般に用いられる方法を列挙しておきたい。
a)ピラニアエッチング:HSOとHとが4:1、90℃で、主として有機汚染物質を除去するのに用いられる。
b)フッ化水素酸:シリコン表面の酸化物を、HF希釈溶液または緩衝HF溶液によって除去するものであるが、脱イオン化水でシリコンを洗う、もしくは洗浄した表面を空気に露出すると、直ちに固有の酸化物層が(約15オングストロームの厚さで)成長する。
c)標準洗浄剤2(SC−2):これは、異なる比で混合されたHCl、H、HOに基づくものであり、その主要な目的は、金属汚染の除去である(この目的に推奨される比は、HCl:H:HO=1:1:5である)。
d)標準洗浄剤1(SC−1):これは、異なる比で混合されたNHOH、H、HOに基づくものであり、標準的な構成は70℃で1:1:5であって、その主要な目的は多価の金属イオンの除去である。
e)RCA湿式洗浄プロセス:これは、70℃のSC−1およびSC−2の両方を含み、SC−1はアンモニアによって多くの多価の金属イオンと複合体を形成し、一方SC−2は、そのHCl成分によってアルカリおよび遷移金属を除去する。
【0018】
これら全ての方法は、以下の理由で、2つの列挙された課題が解決されない。
a)この方法は、微粉末でなく標準的なウェーハ、シリコンチャンクまたはシリコンロッドに適用され、このことは、シリコン微粉末は、はるかに高い比表面積を有し、一般にそれが金属のツールおよび配管に接しているために、一般にシリコンのウェーハまたはチャンクより高い金属汚染レベルを示すので、決定的である。
b)列挙された全てのプロセスは、HF処理を含む処理されたシリコンの酸化を引き起こす。
【0019】
これと共に、浄化(金属汚染)および酸化物除去の主題に取り組もうとする文献について論じておきたい。
【0020】
米国特許出願第2006/0042539号は、硝酸およびフッ化水素酸の混合物による多結晶シリコンチャンクの予備エッチングの後に適用される純水洗浄方法を提供する。
【0021】
提案された方法の除去効果は、特定のタイプの金属イオンに対して、逆浸透処理およびイオン交換処理を組み合わせることによって浄化された純水を用いることにより、非常に改善される。
【0022】
最後のステップが清浄水を用いた洗浄であるために、この発明は、最終製品上の酸化物層の除去を保証しない。その上、この方法は、より困難な粉末(マイクロ粉末およびサブマイクロ粉末)ではなくシリコンのチャンクにのみ用いられる。
【0023】
中国特許第1947870号は、不合格になったシリコン部片を再利用するために、それらの表面から汚染物質を除去する洗浄方法に関するものである。アルカリ溶液にシリコン屑部片を浸漬するステップと、浄水でフラッシングするステップと、乾燥するステップと、第2のアルカリ溶液に浸漬するステップと、浄水でフラッシングするステップと、乾燥するステップと、HClおよびHを含む溶液に浸漬するステップと、圧縮空気で泡立たせるステップと、浄水で洗ってから焼成するステップとが説明されている。この特許では、不合格になったシリコン廃品材料の表面から、一般に個別のサイズを有する汚れおよび汚染物質を除去することを特許請求している。他方では、使用される化学物質のタイプおよび最後に適用される焼成が、酸化物の形成を引き起こす。
【0024】
中国特許第1947869号は、不合格になったシリコン材料を再利用するために、それらの表面から不純物を除去する洗浄方法を提供しており、この方法は、不合格になったシリコン材料を、フッ化水素酸と硝酸との混合溶液に浸漬するステップと、浄水で数回洗うステップと、浄水に浸漬するステップと、洗い流す水の導電率を測定するステップと、焼成して乾燥させるステップなどを含む。この特許では、表面上の酸化物の高度な含有量のために、列挙された課題が解決されない。適用領域が本出願で論じられるものとは非常に異なるので、このことは主な関心事ではない。
【0025】
国際公開第2006126365号は、高レベルの表面品質を有する半導体用途向けのCZシリコン単結晶の製造において溶解するための原料として用いる、もしくは太陽電池用途に用いるのに適する多結晶シリコンを洗浄する方法を提供する。
【0026】
提案されたプロセスの利点には、洗浄コストの低下、ならびにシリコン損失、廃棄化学物質の処分に関する環境問題、およびNOxガスの低減がある。この特許の欠点は、この方法がチャンクには適するが、粉末またはカーフに対しては歩留まりが非常に劣るために適しないという事実によるものである。
【0027】
プロセスステップは、汚染された酸化物を除去するために多結晶シリコンをフッ化水素酸で洗浄し、続いてフッ素−窒素の混合物(fluor−nitric mixture)を用いて軽度にエッチングする(light etching)、あるいは、より好ましくは、多結晶シリコンの表面上に著しい汚染を残すことなく酸化膜を成長させるために、多結晶シリコンを、炉の中で水蒸気を含むクリーンガスを用いて処理するものである。
【0028】
国際公開第2006126365号のプロセスの目的はシリコン表面上に酸化物層を成長させることであり、一方、本発明のプロセスは、表面酸化物および金属汚染のないシリコン粉末を提供することを特許請求する。
【0029】
韓国特許出願第20020065105号は、高純度シリカを得る目標で、鋸プロセスの廃水から収集されたシリコン粒子を再利用する方法を提供する。
【0030】
アセトンによる洗浄ステップを含む同発明の目的は、最終製品として高純度シリカゾルを得ることである。
【0031】
韓国特許出願第20020065105号および本発明は、シリコン切断プロセスの廃水から収集されたシリコン粉末である同一の供給材料に関係するが、韓国特許出願第20020065105号の目的はシリカゾルの製造であり、本発明の目的は太陽電池の分野で溶解する用途向けの浄化されたシリコン粉末の製造であって異なるものである。
【0032】
台湾特許第279393号は、攪拌システムの支援のもとで、所定の温度で熱した酸溶液を用いてタンクの中で所定の期間にわたって処理することによる、シリコン粉末を浄化する方法を提供する。
【0033】
次いで、この粉末を酸溶液から分離して第2の酸または複数の酸の腐食処理を施すことができ、太陽電池向けに基板として用いられることになるシリコン材料用の高純度のシリコン粉末を得る。
【0034】
攪拌システムは、機械的システムならびに超音波ベースのシステムであり得る。
【0035】
台湾特許第279393号によって説明された洗浄プロセスは、シリコンから表面酸化物を除去するだけではないエッチングを施すために「酸腐食」の複数のステップを用いるが、このことは、いくらかのフッ化水素酸が酸化剤と混合されていることを意味しており、一方、本発明のプロセスは、表面酸化物および金属を除去するだけである。
【0036】
台湾特許第279393号によって説明された洗浄プロセスは、加熱システムおよび超音波攪拌システムの支援のもとで遂行されるが、一方本発明によって請求されるプロセスは室温で実行される。
【0037】
台湾特許第279393号で特許請求されたプロセスは、本発明の目標のうちの1つである、表面酸化物のないシリコン粉末を提供するという目標を有しない。
【0038】
課題D)に関して、これは、シリコン粉末の溶解処理で直面する可能性のある困難に関するものであるが、高純度電子グレードポリシリコンを製造するのに用いられる流体ベッドプロセスの副産物として、もしくは元素シリコンおよび塩化水素を用いるクロロシランの調製から反応残留物として生じる高純度の極微細シリコン粉末を圧縮することによって、シリコンペレットを作製するプロセスを説明している米国特許第7,175,685号に言及する。
【0039】
圧縮の目標は、溶解用途向けのシリコンペレットを作製することである。
【0040】
そのために、添加物および結合剤を含まない制御された量のシリコン粉末を、ペレットダイの中へ供給し、室温および高圧で圧縮して、シリコンの理論密度の約50%から75%の密度ならびに所定のサイズおよび重さを有するペレットを得る。
【0041】
米国特許第7,175,685号は、高純度電子グレードポリシリコンの製造に用いられる流体ベッドプロセスからの副産物として入手可能な極微細シリコン粉末の回収、および高純度シリコンインゴットの製造向けのシリコンペレットを直接作製するための前記シリコン粉末の再利用に関する。同特許では、本発明が取り組むことを意味する、プロセスから生じる微粉の溶解に対する解決策を提供していない。本発明は、むしろ、シリコンの機械的作業からカーフとして派生するシリコン粉末屑の回収および再利用に関する。
【0042】
米国特許出願第2007014682号は、高純度シリコン粉末を、定義された幾何学的形式および形状へと圧縮および高密度化する方法を説明しており、そのために、高純度シリコン粉末は、まず選択された結合剤と混合され、機械設備で所望の形状に圧縮される。
【0043】
結合剤は、個別のステップまたは後続の焼結作業との組合せのいずれかで除去される。
【0044】
この特許出願は、高純度電子グレードポリシリコンを製造するのに用いられる流体ベッドプロセスの副産物として、もしくは元素シリコンおよび塩化水素を用いるクロロシランの調製から反応残留物として生じる高純度の極微細シリコン粉末の回収、および光起電力産業で供給材料として用いられるペレットを直接作製するための前記シリコン粉末の再利用に関する。したがって、供給材料ならびに検討される課題は、本発明が取り組むものと完全に異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】米国特許出願第2003/0041895号明細書
【特許文献2】米国特許出願第2006/0042539号明細書
【特許文献3】中国特許第1947870号明細書
【特許文献4】中国特許第1947869号明細書
【特許文献5】国際公開第2006126365号
【特許文献6】韓国特許出願第20020065105号公報
【特許文献7】台湾特許第279393号明細書
【特許文献8】米国特許第7,175,685号明細書
【特許文献9】米国特許出願第2007014682号明細書
【特許文献10】国際公開第2007/065766号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0046】
前述のように、本発明は、帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を、光起電力産業およびマイクロエレクトロニクス産業の両方に対して、光起電力用途向けに利用可能な多結晶−多重結晶シリコンインゴットを成形するためのるつぼの充填材料を調製するための供給材料として再利用するためのプロセスを説明する。
【0047】
非常に一般的な言い方で、このプロセスは、
a)帯鋸/線鋸、濾過による研削作業、および排出されたスラリの処理によって、シリコン粉末を回収するステップと、
b)非酸化環境における調整のステップと、
c)フッ化水素酸を用いる処理ステップと、
d)塩酸ならびに/あるいはフッ化水素酸および過酸化水素を用いる処理ステップと、
e)フッ化水素酸を用いる第2の処理ステップと、
f)圧縮ステップに対する調製ステップと、
g)シリコンを圧縮するステップとを特徴とする。
【0048】
以下において、プロセスのステップをより詳細に説明する。
【0049】
ほとんどの場合、調整は、脱イオン化水(DI water)および非酸化性酸を加えることによって行われる。エタノールまたはアセトン、あるいは強酸(HPOを除く)と混合可能な任意の他の有機溶剤を用いたシリコンの調整も、HCl/水の中での調整の有無にかかわらず、用いることができる。非酸化性酸は、とりわけHCl、HSO、モノカルボン酸およびジカルボン酸である。
【0050】
ケーキおよび/またはスラッジの再スラリ化(Re−slurry)は、
(シリコン含有量):(HCl)=(1):(0.05〜0.5)
という重量比の配合および処理条件を用いることにより、脱イオン化水および塩酸で行われる。
【0051】
次のステップはフッ化水素酸を用いた前記スラリの処理であり、
(シリコン含有量):(HCl):(HF)=(1):(0.05〜0.5):(0.01〜1)
という重量比を得るような量のフッ化水素酸を加える。
【0052】
処理の後、スラリが濾過され、濾過ケーキが脱イオン化水で洗われ、その後、このケーキが、再スラリ化するために脱イオン化水で処理される。
【0053】
前記スラリを、塩酸および過酸化水素で、
(シリコン含有量):(HCl):(H)=(1):(0.05〜0.5):(0.05〜0.2)
という重量比の配合を用いて処理する。
【0054】
処理の後、スラリが濾過され、濾過ケーキが脱イオン化水で洗われ、次いで、脱イオン化水を用いて再スラリ化される。
【0055】
HCl/Hを用いる処理の代わりに、HF/Hを用いてもこのステップを実行することができる。より詳細には、スラリを、フッ化水素酸および過酸化水素で、
(シリコン含有量):(HF):(H)=(1):(0.01〜0.1):(0.05〜0.5)
という重量比の配合を用いて処理する。
【0056】
その後、脱イオン化水を用いた再スラリ化のステップを行い、次いで、
(シリコン含有量):(HF)=(1):(0.05〜0.15)
という重量比でフッ化水素酸を用いて前記スラリを処理する。
【0057】
処理の後にスラリを濾過し、その後、シリコン粒子の酸化を防止するために、酸性のケーキを真空/窒素の下で乾燥する。「ウェットケーキ」を得るために、アルコールを用いて酸性ケーキを処理することもできることを強調しておきたい。
【0058】
プロセスの最後に、溶解/成形の充填材料の調製が行われ、これと共に、3つの方法を提案する。第1の方法は、輸送および溶解に即応可能な任意の産業上利用可能な成形るつぼの内部で、浄化して乾燥されたシリコンカーフに直接適用される、シリコン粉末の真空−窒素圧縮プロセスに基づくものである。
【0059】
第2の方法は、回収、浄化、および乾燥されたシリコン粉末の、産業上利用可能な、結合剤を含まない圧縮プロセスによる圧縮プロセスであり、同プロセスは、シリコン成形の充填材料として適切な圧縮されたシリコンのペレットまたはディスクを結果として有する。
【0060】
第3の方法は、るつぼの中へ直接成形することができる素地をもたらすゾル−ゲルベースの方法に関するものである。
【0061】
本発明で説明される技法は、図1によるものであり得、以下のように要約される。
1.1 光起電力産業およびマイクロエレクトロニクス産業のシリコンの機械的操作の廃水、および懸濁化剤と研磨材とを分離した後に排出される線鋸のスラリから生じるケーキまたはスラッジからシリコン粉末を回収する(図1の区分Aを参照されたい)。
1.2 シリコン粉末の安全な搬送および貯蔵のために、粉末の酸化を制御するように、回収されたシリコン粉末の化学的調整を行う(図1の区分Aを参照されたい)。
1.3 回収して調整されたシリコン粉末の表面不純物を汚染除去する(図1の区分Bを参照されたい)。
1.4 第1の圧縮方法:標準サイズの成形るつぼの内部で直接、圧縮されたシリコン粉末充填材料を調製するために、真空−窒素高密度化プロセスを用いて浄化されたシリコン粉末を処理する。
詳細には、この方法は、以下のステップを特徴とする。
a)乾燥したシリコン粉末を、窒素雰囲気下に維持された工業標準成形るつぼの中に加える
b)乾燥したシリコン粉末で満たされたるつぼを、(20〜60)kPaの範囲の真空値に達するまで真空下に置く
c)室温の窒素流によって、シリコン粉末で満たされたるつぼを含む環境の真空を解放して、圧力を約1バールの値まで上昇させるシリコン粒子を通る窒素の経路において、窒素が、シリコン粒子に対して抗力効果を引き起こし、シリコン粉末の均一な圧縮をもたらす(初期体積の60%〜70%まで縮小させる)(図1の区分Cを参照されたい)。
1.5 第2の圧縮方法:シリコンペレットまたはディスクを調製するために、浄化されたシリコン粉末を、産業上利用可能な、結合剤なしの圧縮プロセスで処理する。詳細には、このステップは、充填材料を調製するためのこの圧縮プロセスに対する供給物として、窒素下の乾燥したシリコン粉末が用いられる。酸化を防止するために窒素下に保たれた乾燥したシリコン粉末は、結着剤なしでシリコンのペレットまたはディスクを作製するのに、供給材料として産業上利用可能な圧縮プロセスのうちの1つに用いられ得る(図1の区分Cを参照されたい)。
1.6 第3の圧縮方法:ゾル−ゲル技法によって浄化されたシリコン粉末から、素地を調製する。
【0062】
ゾル−ゲルベースの方法は、乾燥粉末または(アルコールによる)湿式粉末のいずれもが適する唯一の方法である。ゾル−ゲルベースの方法は、アルコール含有材料または乾燥粉末の両方の供給物を用いることができるので、次いで、供給物を、シランを含むアルコールの溶液と混合し、次いで攪拌下に維持するステップに基づくものである。このようにして形成された素地は、次いで、有機含有量のレベルがシリコン精錬業者によって規定された要件に準拠するまで、乾燥される(図1の区分Cを参照されたい)。
【0063】
本発明の、以下で説明されるシリコン粉末圧縮プロセスの有効性は、用いられるプロセスに従って、多種多様であり、以下に示すとおりである。
a)ゾル−ゲルベースの圧縮:本体の密度は0.9〜1.4g/cmの範囲である。
b)真空−窒素圧縮プロセス:圧縮後のシリコン粉末の体積は初期容積の60%〜70%になり、密度は0.8〜1.0g/cmの範囲内で増加する。
c)タブレット化する圧縮プロセス:ペレットの最終密度は、元素シリコンの密度の約60〜70%である。
【0064】
ゾル−ゲルによる圧縮ステップは、型の中で直接行われ得ることを強調しておきたい。一旦シリコンが型の中で圧縮されると、圧縮されたシリコンがるつぼの中に移送され、あるいは、るつぼの中でプロセスを直接実行する可能性を除外するものではない。
【0065】
前述のように、シリコンは、圧縮ステップの後に、ほとんどの場合純シリカで作製されたるつぼ内で溶解される。そのような溶解ステップを遂行する際に、操作員が直面することがある問題は、シリコンとシリカとの間の熱係数に関する差によるものであり、これは、シリカるつぼの損傷および漏れの原因となる、るつぼ内応力をもたらす恐れがある。シリコンの熱膨張係数は約1×10−6であるが、シリカの場合は0.55×10−6である。これは、るつぼをその最大容量で満たす圧縮方法に関して特に起こり得る。
【0066】
この課題に対する可能な解決法は、るつぼの内側の型を使用することである。より詳細には、シリコンが溶解することにより、るつぼ型に対して応力を引き起こすのを回避するために、圧縮ステップが完了する前に空洞を生成することを提案する。空洞は、国際公開第2007/065766号で説明されたものに類似の方法で、内側の型によって生成されることになり、同特許文献には、ゾル−ゲル技法によるシリカガラスの成形に適切な内側の型が列挙されている。生成された空洞は、シリコンが膨張する空間を与えて、るつぼに対して応力を生成させないための「緩衝域」として働く。
【0067】
ここで、内側の型の特徴についてのさらにいくつかの洞察を示す。内側の型は、溶解ステップの前に、圧縮ステップが終了したときに取り出すことができるが、圧縮されたシリコンが型に付着する問題には特別の注意を払う必要がある。特に型が堅い場合には機械的抜出しにより、もしくは膨張式の型が使用されている場合には型から空気を抜くことにより、あるいは型を溶解して溶融物を(吸引して)抜き取ることにより、型を除去することができる。内側の型は、とりわけ、プラスチック、ガラス、金属、ろうおよびシリカガラスで作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明によるプロセスの概観図である。
【図2】図1における区分A(パート1)の拡大図である。
【図3】図1における区分B(パート2)の拡大図である。
【図4】図1における区分B(パート3)の拡大図である。
【図5】図1における区分C(パート4)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下の実施例は例示であり、特許請求の範囲に記述される本発明を限定するものとみなされるべきではない。
【0070】
[実施例1]
ステップ1(添付図のA1)
濾過ケーキを塩酸の希釈液で洗浄し、シリコン粉末が水と反応して水素を生成するのを防止するために(3.5〜4.5)のpHに維持する。
【0071】
濾過ケーキの水分含有量は、一般に20%〜60%の範囲である。
【0072】
ステップ2(添付図のB,1)
回収されたシリコン粉末を、濾過からのケーキまたは遠心処理からのスラッジまたは乾燥粉末として再スラリ化へ送り、脱イオン化水および塩酸を加えることによって再スラリ化作業を行い、再スラリ化で用いる化学物質の比は、以下のように、重量比で、(シリコン含有量):(HCl)=(1):(0.2)と示される。
【0073】
スラリの密度を200〜400g/lの範囲内に調整するような量の脱イオン化水を加える。
【0074】
ステップ3(添付図のB,2)
ステップ2から生じるスラリを、反応器R1に送り(図を参照されたい)、次いで、
(シリコン含有量):(HCl):(HF)=(1):(0.2):(0.5)
という重量比を得るような量でフッ化水素酸と混合する。
【0075】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲に密度を制御するように調整される。
【0076】
ステップ3の処理条件は以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0077】
処理の後、スラリを濾過へ送り、結果として生じるシリコンケーキを脱イオン化水で洗浄する。
【0078】
ステップ4(図のB,3)
ステップ3で反応器から生じるスラリを、
(シリコン含有量):(HCl):(H)=(1):(0.2):(0.1)
という重量比を得るような量で塩酸および過酸化水素と混合する。
【0079】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲にスラリ密度を制御するように調整する。
【0080】
ステップ4の処理条件は、以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0081】
処理の後、スラリを濾過し、濾過ケーキを脱イオン化水で洗浄し、濾過からの液体ならびにHClおよびHを含む洗液を、水溶液中にCa(OH)を含む中和タンクへと送る。
【0082】
このプロセスステップは、脱イオン化水を用いたシリコンケーキの再スラリ化で終了する。
【0083】
ステップ5(図のB,4)
反応器R3から生じるスラリを、
(シリコン含有量):(HF)=(1):(0.1)
という重量比を得るような量で再びフッ化水素酸と混合する。
【0084】
処理条件は以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0085】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲にスラリ密度を制御するように調整する。
【0086】
処理の後、スラリを濾過し、フッ化水素酸によって濡れた濾過ケーキをケーキ乾燥ステップへと直接送り、一方で、フッ化水素酸を含む濾過および洗浄からの液体は中和タンクへと送る。
【0087】
ステップ6(図のB,5)
プロセスステップ(図のB,4を参照されたい)からのシリコンケーキを、水分および空気によるシリコン粒子の酸化を防ぐために、HFによって酸性に保ち、真空下で乾燥する。
a)真空値は、窒素雰囲気内で20mBarである
b)温度はRF加熱によって70℃である
c)乾燥サイクルの最後で、真空は窒素雰囲気の中で解放される
【0088】
ステップ7(ゾル−ゲル法)
0.7gのテトラメトキシシランを5gのエタノールおよび1gの水と混合し、こうして得られた溶液を、テトラメトキシシランの完全な加水分解が起きる(溶液が完全に透明になる)まで攪拌し続ける。次いで、14gのシリコン粉末をシランベースの事前混合物に加え(重量比1:0.49)、攪拌し続ける。こうして得られたスラッジを、次いで型の中に注ぐ。全てのプロセスは窒素下で行う。乾燥段階を開始する前に、サンプルは、素地を固結させるために室温で密閉容器内に維持される。
【0089】
次いで、シリコン体を、換気されたフード下で3日間乾燥する。この生成物は、説明された処理によって、シリコン生成物中のSiOの含有量が0.5重量パーセントしか増加しないことがX線回折分光法によって示されることを特徴とする。
【0090】
この実施例で説明されたプロセスの利点は、成形るつぼの内部に素地が既に得られているということであり、この素地が、処理による機械的ストレスに耐え、さらなる処理なしで、容易に梱包および輸送することができ、かつ溶解するための最終鋳造設備内で直接使用することができることを意味する。
【0091】
[実施例2]
ステップ1(添付図のA1)
濾過ケーキを塩酸の希釈液で洗浄し、シリコン粉末が水と反応して水素を生成するのを防止するために(3.5〜4.5)のpHに維持する。
【0092】
濾過ケーキの水分含有量は、一般に20%〜60%の範囲である。
【0093】
ステップ2(添付図のB,1)
回収されたシリコン粉末を、濾過からのケーキまたは遠心処理からのスラッジまたは乾燥粉末として再スラリ化へ送り、脱イオン化水および塩酸を加えることによって再スラリ化作業を行い、再スラリ化で用いる化学物質の比は、以下のように、重量比で、(シリコン含有量):(HCl)=(1):(0.2)と示される。
【0094】
スラリの密度を200〜400g/lの範囲内に調整するような量の脱イオン化水を加える。
【0095】
ステップ3(添付図のB,2)
ステップB,1で既に塩化水素が加えられているので、ステップ2から生じるスラリは酸性であり、これを反応器R1に送り、次いで、
(シリコン含有量):(HCl):(HF)=(1):(0.2):(0.5)
という重量比を得るような量のフッ化水素酸を加える。
【0096】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲に密度を制御するように調整する。
【0097】
ステップ3の処理条件は、以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0098】
処理後にスラリを濾過へ送り、結果として生じるシリコンケーキを脱イオン化水で洗浄し、脱イオン化水で200〜400g/lの密度の範囲に調整して再スラリ化し、反応器R3へと送る。
【0099】
ステップ4(図のB,3)
反応器R2から生じるスラリ(2)には、
(シリコン含有量):(HF):(H)=(1):(0.4):(0.15)
という重量比を得るような量でフッ化水素酸および過酸化水素を加える。
【0100】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲にスラリ密度を制御するように調整する。
【0101】
処理条件は以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0102】
処理の後、スラリを濾過し、濾過ケーキを脱イオン化水で洗浄し、濾過からの液体ならびにHFおよびHを含む洗液を、中和タンクへと送る。
【0103】
プロセスステップ(B3)は、脱イオン化水を用いたシリコンケーキの再スラリ化で終了し、スラリの密度を200〜400g/lの範囲内に調整する(スラリ3)。
【0104】
ステップ5(図のB,4)
反応器R3から生じるスラリには、
(シリコン含有量):(HF)=(1):(0.1)
という重量比を得るような量で再びフッ化水素酸を加える。
【0105】
処理条件は以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0106】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲のスラリ密度を制御するように調整する。
【0107】
処理の後、スラリを濾過し、フッ化水素酸によって濡れた濾過ケーキをケーキ乾燥ステップへと直接送り、一方で、フッ化水素酸を含む濾過および洗浄からの液体を中和タンクへと送る。
【0108】
ステップ6(図のB,5)
プロセスステップ(B,4)からのシリコンケーキを、水分および空気によるシリコン粒子の酸化を防ぐために、HFによって酸性に保ち、真空下で乾燥する。
a)真空値は、窒素雰囲気内で20mBarである
b)温度はRF加熱によって70℃である
c)乾燥サイクルの最後で、真空を窒素雰囲気の中で解放する
【0109】
ステップ7(ゾル−ゲル法)
0.7gのテトラメトキシシランを5gのエタノールおよび1gの水と混合し、こうして得られた溶液を、テトラメトキシシランの完全な加水分解が起きる(溶液が完全に透明になる)まで攪拌し続ける。次いで、14gのシリコン粉末をシランベースの事前の混合物に加え(重量比1:0.49)、攪拌し続ける。こうして得られたスラッジを、次いで型の中に注ぐ。全てのプロセスが窒素下で行われる。乾燥段階を開始する前に、サンプルは、素地を固結させるために室温で密閉容器内に維持される。次いで、シリコン本体を、換気されたフード下で3日間乾燥する。この生成物は、説明された処理のために、シリコン生成物中のSiOの含有量が0.5重量パーセントしか増加しないことを示したX線回折分光法によって特徴付けられている。
【0110】
この実施例で説明されたプロセスの利点は、成形るつぼの内部に素地が既に得られているということであり、この素地が、非常に安定性があって機械的ストレスに耐えることができ、さらなる処理なしで、容易に梱包および輸送することができ、かつ溶解するための最終鋳造設備内で直接使用することができる。
【0111】
[実施例3]
ステップ1(添付図のA1)
濾過ケーキを塩酸の希釈液で洗浄し、シリコン粉末が水と反応して水素を生成するのを防止するために(3.5〜4.5)のpHに維持する。
【0112】
濾過ケーキの水分含有量は、一般に20%〜60%の範囲である。
【0113】
ステップ2(添付図のB,1)
回収されたシリコン粉末を、濾過からのケーキまたは遠心処理からのスラッジまたは乾燥粉末として再スラリ化へ送り、脱イオン化水および塩酸を加えることによって再スラリ化作業を行い、再スラリ化で用いる化学物質の比は、以下のように、重量比で、(シリコン含有量):(HCl)=(1):(0.2)と示される。
【0114】
スラリの密度を200〜400g/lの範囲内に調整するような量の脱イオン化水を加える。
【0115】
ステップ3(添付図のB,2)
ステップB,1で既に塩化水素が加えられているので、ステップ2から生じるスラリは酸性であり、これを反応器R1に送り、次いで、
(シリコン含有量):(HCl):(HF)=(1):(0.2):(0.5)
という重量比を得るような量のフッ化水素酸を加える。
【0116】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲に密度を制御するように調整する。
【0117】
ステップ3の処理条件は、以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0118】
処理後にスラリを濾過へ送り、結果として生じるシリコンケーキを脱イオン化水で洗浄し、脱イオン化水で200〜400g/lの密度の範囲に調整して再スラリ化し、反応器R3へと送る。
【0119】
ステップ4(図のB,3)
反応器R2から生じるスラリ(2)には、
(シリコン含有量):(HF):(H)=(1):(0.4):(0.15)
という重量比を得るような量でフッ化水素酸および過酸化水素を加える。
【0120】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲にスラリ密度を制御するように調整する。
【0121】
処理条件は以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0122】
処理の後、スラリを濾過し、濾過ケーキを脱イオン化水で洗浄し、濾過からの液体ならびにHFおよびHを含む洗液を中和タンクへ送る。
【0123】
プロセスステップ(B3)は、脱イオン化水を用いたシリコンケーキの再スラリ化で終了し、スラリの密度を200〜400g/lの範囲内に調整する(スラリ3)。
【0124】
ステップ5(図のB,4)
反応器R3から生じるスラリには、
(シリコン含有量):(HF)=(1):(0.1)
という重量比を得るような量で再びフッ化水素酸を加える。
【0125】
処理条件は以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0126】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲にスラリ密度を制御するように調整する。
【0127】
処理の後、スラリを濾過し、フッ化水素酸によって濡れた濾過ケーキをケーキ乾燥ステップへ直接送り、一方で、フッ化水素酸を含む濾過および洗浄からの液体は中和タンクへ送る。
【0128】
ステップ6(図のB,5)
水分および空気によるシリコン粒子の酸化を防ぐようにHFによって酸性に保たれたプロセスステップ(B,4)からのシリコンケーキを、エタノールと水との重量比が95:5のアルコール溶液で洗浄する。
【0129】
ステップ7(ゾル−ゲル法)
0.7gのテトラメトキシシランを5gのエタノールおよび1gの水と混合し、こうして得られた溶液を、テトラメトキシシランの完全な加水分解が起きる(溶液が完全に透明になる)まで攪拌し続ける。次いで、ステップ6から生じる17gのウェットシリコンをシランベースの事前の混合物に加え(重量比1:0.49)、攪拌し続ける。こうして得られたスラッジを、次いで型の中に注ぐ。全てのプロセスが窒素下で行われる。乾燥段階を開始する前に、サンプルは、素地を固結させるために室温で密閉容器内に維持される。次いで、シリコン本体を、換気されたフード下で3日間乾燥する。この生成物は、説明された処理のために、シリコン生成物中のSiOの含有量が0.5重量パーセントしか増加しないことを示したX線回折分光法によって特徴付けられている。
【0130】
この実施例で説明されたプロセスの利点は、成形るつぼの内部に素地が既に得られているということであり、この素地が、非常に安定性があって機械的ストレスに耐えることができ、さらなる処理なしで、容易に梱包および輸送することができ、かつ溶解するための最終鋳造設備内で直接使用することができる。
[実施例4]
【0131】
ステップ1(添付図のA1)
濾過ケーキを塩酸の希釈液で洗浄し、シリコン粉末が水と反応して水素を生成するのを防止するために(3.5〜4.5)のpHに維持する。
【0132】
濾過ケーキの水分含有量は、一般に20%〜60%の範囲である。
【0133】
ステップ2(添付図のB,1)
回収されたシリコン粉末を、濾過からのケーキまたは遠心処理からのスラッジまたは乾燥粉末として再スラリ化へ送り、脱イオン化水および塩酸を加えることによって再スラリ化作業を行い、再スラリ化で用いる化学物質の比は、以下のように、重量比で、(シリコン含有量):(HCl)=(1):(0.2)と示される。
【0134】
スラリの密度を200〜400g/lの範囲内に調整するような量の脱イオン化水を加える。
【0135】
ステップ3(添付図のB,2)
ステップB,1で既に塩化水素が加えられているので、ステップ2から生じるスラリは酸性であり、これを反応器R1に送り、次いで、
(シリコン含有量):(HCl):(HF)=(1):(0.2):(0.5)
という重量比を得るような量のフッ化水素酸を加える。
【0136】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲に密度を制御するように調整する。
【0137】
ステップ3の処理条件は、以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0138】
処理後にスラリを濾過へと送り、結果として生じるシリコンケーキを脱イオン化水で洗浄して、脱イオン化水で200〜400g/lの密度の範囲に調整して再スラリ化し、反応器R3へ送る。
【0139】
ステップ4(図のB,3)/ケースB
反応器R2から生じるスラリ(2)には、
(シリコン含有量):(HF):(H)=(1):(0.4):(0.15)
という重量比を得るような量でフッ化水素酸および過酸化水素を加える。
【0140】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲にスラリ密度を制御するように調整する。
【0141】
処理条件は以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0142】
処理の後、スラリを濾過し、濾過ケーキを脱イオン化水で洗浄し、濾過からの液体ならびにHClおよびHを含む洗液を、(Ca(OH)を含む)中和タンクへ送る。
【0143】
プロセスステップ(B3)は、脱イオン化水を用いたシリコンケーキの再スラリ化で終了し、スラリの密度を200〜400g/lの範囲内に調整する(スラリ3)。
【0144】
ステップ5(図のB,4)
反応器R3から生じるスラリには、
(シリコン含有量):(HF)=(1):(0.1)
という重量比を得るような量で再びフッ化水素酸を加える。
【0145】
処理条件は以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0146】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲にスラリ密度を制御するように調整する。
【0147】
処理の後、スラリを濾過し、フッ化水素酸によって濡れた濾過ケーキをケーキ乾燥ステップへ直接送り、一方で、フッ化水素酸を含む濾過および洗浄からの液体は中和タンクへ送る。
【0148】
ステップ6(図のB,5)
プロセスステップ(B,4)からのシリコンケーキを、水分および空気によるシリコン粒子の酸化を防ぐために、HFによって酸性に保ち、真空下で乾燥する。
a)真空値は、窒素雰囲気内で20mBarである
b)温度はRF加熱によって70℃である
c)乾燥サイクルの最後で、真空を窒素雰囲気の中で解放する
【0149】
ステップ7(真空−窒素法)
このプロセスは、プロセスステップ(B,5)から生じる、酸化物のない、乾燥したシリコン粉末を圧縮する方法を説明するものであり、この方法は、この場合窒素である気体が、真空環境中に維持されている乾燥したシリコン粒子のかたまりを通過するときの高密度化能力に基づくものである。
【0150】
窒素を選択するのは、シリコン粒子のいかなる酸化も回避する必要があるためである。
【0151】
圧縮のプロセス、ステップの説明は以下の通りである。
a)乾燥したシリコン粉末を、窒素環境下に維持された工業標準成形るつぼの中に注ぐ
b)乾燥したシリコン粉末で満たされたるつぼを、30kPaの範囲の真空値に達するまで真空下に置く
c)室温の窒素流によって、圧力が1バールの値へ上昇するまで、シリコン粉末で満たされたるつぼを含む環境の真空を解放する
【0152】
シリコン粒子を通る窒素の経路において、窒素が、シリコン粒子に対して抗力効果を引き起こし、シリコン粉末の均一な圧縮をもたらす(初期体積の60%〜70%まで縮小させる)。
【0153】
[実施例5]
ステップ1(添付図のA1)
濾過ケーキを塩酸の希釈液で洗浄し、シリコン粉末が水と反応して水素を生成するのを防止するために(3.5〜4.5)のpHに維持する。
【0154】
濾過ケーキの水分含有量は、一般に20%〜60%の範囲である。
【0155】
ステップ2(添付図のB,1)
回収されたシリコン粉末を、濾過からのケーキまたは遠心処理からのスラッジまたは乾燥粉末として再スラリ化へ送り、脱イオン化水および塩酸を加えることによって再スラリ化作業を行い、再スラリ化で用いる化学物質の比は、以下のように、重量比で、(シリコン含有量):(HCl)=(1):(0.2)と示される。
【0156】
スラリの密度を200〜400g/lの範囲内に調整するような量の脱イオン化水を加える。
【0157】
ステップ3(添付図のB,2)
ステップB,1で既に塩化水素が加えられているので、ステップ2から生じるスラリは酸性であり、これを反応器R1に送り、次いで、
(シリコン含有量):(HCl):(HF)=(1):(0.2):(0.5)
という重量比を得るような量のフッ化水素酸を加える。
【0158】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲に密度を制御するように調整する。
【0159】
ステップ3の処理条件は、以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0160】
処理後にスラリを濾過へ送り、結果として生じるシリコンケーキを脱イオン化水で洗浄し、脱イオン化水で200−400g/lの密度の範囲に調整して再スラリ化して、反応器R3へ送る。
【0161】
ステップ4(図のB,3)/ケースB
反応器R2から生じるスラリ(2)には、
(シリコン含有量):(HF):(H)=(1):(0.4):(0.15)
という重量比を得るような量でフッ化水素酸および過酸化水素を加える。
【0162】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲にスラリ密度を制御するように調整する。
【0163】
処理条件は以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0164】
処理の後、スラリを濾過し、濾過ケーキを脱イオン化水で洗浄し、濾過からの液体ならびにHClおよびHを含む洗液を中和タンクへ送る。
【0165】
プロセスステップ(B3)は、脱イオン化水を用いたシリコンケーキの再スラリ化で終了し、スラリの密度を200〜400g/lの範囲内に調整する(スラリ3)。
【0166】
ステップ5(図のB,4)
反応器R3から生じるスラリには、
(シリコン含有量):(HF)=(1):(0.1)
という重量比を得るような量で再びフッ化水素酸を加える。
【0167】
処理条件は以下の通りである。
a)攪拌は連続的に行う
b)温度は20〜40℃である
c)処理時間は1時間である
【0168】
脱イオン化水は、200〜400g/lの範囲にスラリ密度を制御するように調整する。
【0169】
処理の後、スラリを濾過し、フッ化水素酸によって濡れた濾過ケーキをケーキ乾燥ステップへ直接送り、一方で、フッ化水素酸を含む濾過および洗浄からの液体は中和タンクへ送る。
【0170】
ステップ6(図のB,5)
プロセスステップ(B,4)からのシリコンケーキを、水分および空気によるシリコン粒子の酸化を防ぐために、HFによって酸性に保ち、真空下で乾燥する。
a)真空値は、窒素雰囲気内で20mBarである
b)温度はRF加熱によって70℃である
c)乾燥サイクルの最後で、真空を窒素雰囲気の中で解放する
【0171】
ステップ7(ペレット化/タブレット化の方法)
酸化を防止するために窒素下に保たれた乾燥シリコン粉末は、結着剤なしで、供給材料として産業上利用可能な圧縮プロセスのうちの1つに用いられ得る。
【0172】
本発明のセクション(4.2)に従ってシリコン粉末に適用されるフッ化水素酸を用いる化学洗浄は、室温における高圧によって圧縮されたシリコンのペレットまたはディスクの製造に適する酸化物を含まないシリコン粒子をもたらす。
【0173】
このプロセスで得られるペレットの密度は、元素シリコンの密度の約60〜70%であり、これらは、成形用途向けの充填材料を調製するために、単独で、あるいはシリコンナゲットと混合して用いることができる。
【符号の説明】
【0174】
A1 ステップ1
B,1 ステップ2
B,2 ステップ3
B,3 ステップ4
B,4 ステップ5
B,5 ステップ6
R1 反応器
R2 反応器
R3 反応器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を、光起電力用途向けに利用可能な多結晶−多重結晶シリコンインゴットを成形するためのるつぼの充填材料を調製する供給材料として再利用するためのプロセスであって、
a.帯鋸/線鋸、濾過による研削作業、および排出されたスラリの処理によって、シリコン粉末を回収するステップと、
b.非酸化環境における調整のステップと、
c.フッ化水素酸を用いる処理ステップと、
d.塩酸および/またはフッ化水素酸ならびに過酸化水素を用いる処理ステップと、
e.フッ化水素酸を用いる第2の処理ステップと、
f.圧縮ステップに対する調製ステップと、
g.前記シリコン粉末を圧縮するステップとを特徴とするプロセス。
【請求項2】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、シリコンカーフの濾過または遠心凝集によって回収されたケーキおよび/またはスラッジの酸化を防止するための化学的調整であるステップb)を、鉱酸、モノカルボン有機酸およびジカルボン有機酸などの非酸化性酸によって、−0.5から5.5の間、より好ましくは3から5の間のpHで遂行することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、シリコンカーフの濾過または遠心凝集によって回収されたケーキおよび/またはスラッジの酸化を防止するための化学的調整であるステップb)を、アセトン、エーテル、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メタノール、ブタノールなどの酸に反応しない有機溶剤を用いて遂行することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、シリコンカーフの濾過または遠心凝集によって回収されたケーキおよび/またはスラッジの酸化を防止するための化学的調整であるステップb)を、アセトン、エーテル、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メタノール、ブタノールなどの酸に反応しない有機溶剤中で調整する最初のステップと、それに続く、鉱酸、モノカルボン有機酸またはジカルボン有機酸であり得る有機酸などの非酸化性酸の中で調整するステップとの2つのステップで遂行することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、フッ化水素酸を用いる処理のステップc)を、SiとHFとの重量比を(1):(0.01〜1)として遂行することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、処理d)を、Si:HCl:Hの重量比を(1):(0.05〜0.5):(0.05〜0.2)として遂行することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、処理d)を、Si:HF:Hの重量比を(1):(0.01〜0.1):(0.05〜0.5)として遂行することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、処理e)を、Si:HFの比を(1):(0.05〜0.15)として遂行することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、処理f)を、不活性ガスまたは真空の下で遂行し、温度を100℃まで昇温することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、処理f)を、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メタノール、エーテルまたはそれらの混合物などの有機溶剤でシリコンケーキを洗浄することにより遂行することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、圧縮ステップg)を、型の中で遂行することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、前記型が、シリカ製るつぼであり得ることを特徴とする請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、前記型が、除去することができる内側の型を有し得ることを特徴とする請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、前記型が膨張可能であり得ることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、前記型が、水溶性かつ/またはエタノール可溶性かつ/またはアセトン可溶性であり得ることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、前記型が、150℃より低い融点によって特徴付けられ得ることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項17】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、処理g)を、
a)乾燥したシリコン粉末を、窒素雰囲気下に維持された工業標準成形るつぼの中に加えるステップと、
b)前記乾燥したシリコン粉末で満たされた前記るつぼを、(20〜60)kPaの範囲の真空値に達するまで真空下に置くステップと、
c)室温の窒素流によって、前記シリコン粉末で満たされた前記るつぼを含む環境の前記真空を解放して、圧力を約1バールの値まで上昇させるステップであって、シリコン粒子を通る窒素流の経路において、窒素が、前記シリコン粒子に対して抗力効果を引き起こし、前記シリコン粉末の均一な圧縮をもたらすステップとに従って遂行することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
帯鋸および他のシリコンの機械的作業から回収されたシリコン粉末を再利用するためのプロセスであって、処理g)を、前記乾燥したシリコン粉末をタブレット化またはペレット化することにより遂行することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−527279(P2011−527279A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516969(P2011−516969)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058931
【国際公開番号】WO2010/003456
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(510178138)
【Fターム(参考)】