説明

光硬化型インク用容器およびインクパック

【課題】金属粒子を含む光硬化型インクを長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器およびインクパックを提供すること。
【解決手段】光硬化型インク用容器10は、金属粒子と重合性化合物と光重合開始剤とを含む光硬化型インク100を収容する容器であって、内部に、光硬化型インク100を収容可能な第1の空間21と、隔壁4を介して第1の空間21に隣接し、酸素含有ガスを収容した第2の空間22と、を有し、隔壁4が酸素透過性を有していることを特徴とするものである。これにより、第2の空間22から第1の空間21へと継続的に酸素が供給されるため、酸素による重合禁止効果が継続的に発揮され、光硬化型インク100の重合反応を長期にわたって防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型インク用容器およびインクパックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属光沢を有する印刷物を作製する際には、アルミニウム粒子等の金属粒子を含むインキによるグラビア印刷やスクリーン印刷等の他、金属箔を用いた箔押し印刷や熱転写印刷等が知られている。
しかしながら、これらの印刷法は、大規模または高価な装置が必要な上、印刷後に廃棄されるインキや金属箔も少なくないため、ランニングコストが高い。さらに印刷時の騒音が大きい等の課題も抱えている。
【0003】
近年、これらの課題を解消する印刷法としてインクジェット印刷の利用が拡大している。インクジェット印刷は、紙等の印刷面にインクを吐出し、定着させる方式であるため、インクの使用量が少ない。一方、インクを吐出するという原理上、インクの粘性を抑える必要がある。しかしながら、インクの粘性が低下することにより、吐出したインクが滲み易くなり、高精細な印字結果を得ることが難しくなる。特に、インクの吸収性が低い印刷面(例えば紙以外の媒体)に印刷するときには、その傾向が強くなるので、インクジェット印刷用のインクには十分な速乾性が求められる。
【0004】
そこで、上記の課題を解決すべく、光の照射により硬化する光硬化型インクが提案されている。例えば、特許文献1には、ビニルエーテル基含有アクリル酸エステル類からなる重合性化合物と、光重合開始剤とを含む紫外線硬化型インクジェットインク組成物が開示されている。光硬化型インクを吐出するとともに光を照射すれば、吐出された光硬化型インクが滲み始める前に硬化させることができるため、高精細な印字結果が得られる。
【0005】
このような背景から、インクジェット印刷により光硬化型インクを吐出することで金属光沢を有する印刷物を作製する技術の実用化が期待されており、金属成分を含む光硬化型インクの開発が進められている。この光硬化型インクには、金属粒子、重合性反応物、光重合開始剤等が含まれ、このインクから得られる印刷物は金属粒子に起因する光沢を有するものとなる。
【0006】
ところが、金属粒子を含む光硬化型インクは、その保存性において課題を抱えている。通常、金属粒子を含む光硬化型インクは、空気との接触を避けるため十分に脱気処理が施された上で、遮光された気密容器内に封入された状態で保存されるが、インク中に金属粒子が含まれていると、これが前述した重合性反応物の重合反応(硬化)を促進する触媒として機能するため、保存中にインクが硬化してしまう。しかも、この重合反応において、酸素は重合禁止効果を有するものであるため、気密性の高い容器内で脱気されたインクを保存した場合、酸素による重合禁止効果が阻害されてしまい、かえって重合反応が一層促進されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−280383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、金属粒子を含む光硬化型インクを長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器およびインクパックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の光硬化型インク用容器は、金属粒子と重合性化合物と光重合開始剤とを含む光硬化型インクを収容する容器であって、
内部に、前記光硬化型インクを収容可能な第1の空間と、隔壁を介して前記第1の空間に隣接し、酸素を含むガスを収容した第2の空間と、を有し、
前記隔壁が酸素透過性を有していることを特徴とする。
これにより、金属粒子を含む光硬化型インクを長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器が得られる。
【0010】
本発明の光硬化型インク用容器では、前記隔壁のJIS K 7126−2に準拠した方法により測定された酸素透過度は、1000[cc/m・day・atm]以上30000[cc/m・day・atm]以下であることが好ましい。
これにより、第1の空間に封入した光硬化型インクに対して必要かつ十分な量の酸素が長期にわたって供給され、著しい粘性の上昇を抑え得る十分な重合禁止効果が持続的に発揮される。その結果、光硬化型インクを長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器が得られる。
【0011】
本発明の光硬化型インク用容器では、前記隔壁は、ポリオレフィン系樹脂製のフィルムであることが好ましい。
これにより、ポリオレフィン系樹脂製のフィルムに加工等を施すことなくそのまま良好な隔壁として用いることができ、しかも、このフィルムは水蒸気透過性については比較的低いため、光硬化型インクの吸湿による変質、劣化を防止することができる。
【0012】
本発明の光硬化型インク用容器では、前記第1の空間および前記第2の空間は、外装の内部に設けられており、
前記外装は、樹脂製フィルムと遮光性を有する遮光膜とを含む積層構造になっていることが好ましい。
これにより、光硬化型インク用容器は、軽量化と、遮光性および遮蔽性とを高度に両立し得るものとなる。
本発明の光硬化型インク用容器では、前記遮光膜は、金属材料で構成されていることが好ましい。
これにより、遮光膜は、優れた遮光性と優れた遮蔽性とを併せ持つものとなる。
【0013】
本発明の光硬化型インク用容器では、前記隔壁は、前記第1の空間内に遊離するように設けられていることが好ましい。
これにより、光硬化型インク用容器は、光硬化型インクの取り出し容易性に優れたものとなる。
本発明の光硬化型インク用容器では、前記酸素を含むガスは、酸素濃度が20体積%以上100体積%以下であることが好ましい。
これにより、光硬化型インクをより長期にわたって安定的に保存することができる。
本発明の光硬化型インク用容器では、当該光硬化型インク用容器は、前記第1の空間と外部とを連通可能な開口部を備えていることが好ましい。
これにより、開口部を介して光硬化型インクを外部に取り出すことができ、開口部を閉じることで光硬化型インク用容器を気密的に封止することができる。
【0014】
本発明のインクパックは、本発明の光硬化型インク用容器の前記第1の空間に、脱気処理を施した前記光硬化型インクを封入してなることを特徴とする。
これにより、液滴吐出装置において安定的に吐出可能な光硬化型インクを封入し、このインクを長期にわたって安定的に保存可能なインクパックが得られる。
本発明のインクパックでは、前記第1の空間には実質的に隙間がないように前記光硬化型インクが封入されていることが好ましい。
これにより、脱気した光硬化型インク中に再び気体が巻き込まれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のインクパックの実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図2に示す実施形態の他の構成例である。
【図4】図2に示す実施形態の他の構成例である。
【図5】図2に示す実施形態の他の構成例である。
【図6】図2に示す実施形態の他の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
≪光硬化型インク用容器およびインクパック≫
まず、本発明の光硬化型インク用容器およびインクパックについて説明する。
図1は、本発明のインクパックの実施形態を示す斜視図、図2は、図1のA−A線断面図、図3〜6は、図2に示す実施形態の他の構成例である。
図1に示すインクパック1は、光硬化型インク用容器10内に光硬化型インク100を封入してなるものである。
このうち、光硬化型インク用容器10は、平面視で長方形をなす封筒状の外装2と、外装2の短辺の一部に設けられた開口部3と、を有している。
【0017】
外装2の内部は気密空間になっており、開閉可能な開口部3を介して外部と連通可能になっている。また、外装2の内部には、図2に示すように、外装2に固定された隔壁4が設けられている。外装2の内部空間20は、薄く広がった略直方体状をなしており、隔壁4はこの内部空間20の厚さを2つに分けるように配置されている。そして、隔壁4によって分けられた内部空間20のうち、開口部3を介して外部と連通可能になっているのが第1の空間21であり、外部と連通していないのが第2の空間22である。また、隔壁4は、酸素透過性を有している。
【0018】
ここで、第2の空間22には酸素を含むガス(以下、「酸素含有ガス」という。)が封入される一方、第1の空間21には光硬化型インク100が封入される。こうすると第2の空間22からは第1の空間21に対して継続的に酸素が供給されることとなる。これにより、光硬化型インク100には、酸素による重合禁止効果が継続的に付与されることとなり、保存中の硬化が防止される。その結果、金属粒子を含む光硬化型インク100を長期にわたって安定的に保存することができる。
【0019】
以下、光硬化型インク用容器10の各部について詳述する。
(外装)
外装2は、遮光性を有し、外気や水分等の侵入を防止する遮蔽性を有している。これにより、光硬化型インク用容器10は、外光の侵入を防止して光硬化型インク100の意図しない硬化を防止するとともに、内部空間20に水分等が侵入するのを防ぎ、水分による光硬化型インク100の変質、劣化を防止する。
【0020】
外装2は、例えば、樹脂製、金属製、セラミックス製、ガラス製等の硬質のケースで構成されたものでもよいが、好ましくは軟質のフィルムを含むものが用いられる。このフィルムは、好ましくは、樹脂製フィルムに遮光膜、遮蔽膜等を成膜した積層構造とされる。これにより、外装2は、光硬化型インク用容器10の軽量化に寄与するとともに、高度な遮光性と遮蔽性とを備えるものとなる。その結果、外装2は、光硬化型インク100の硬化と吸湿とを防止することができる。
【0021】
外装2に含まれる樹脂製フィルムとしては、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系フィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、メタキシレンアジパミドのようなポリアミド系フィルム、ポリアクリロニトリル系フィルム、ポリ(メタ)アクリル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム等が挙げられ、これらの1種または2種以上を積層した積層フィルムが用いられる。
【0022】
なお、樹脂製フィルムは、上記の各種フィルムにフィラーを分散させたものでもよい。フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク等が挙げられる。
また、外装2の平均厚さは、構成材料に応じて異なるものの、30μm以上300μm以下程度であるのが好ましく、50μm以上200μm以下程度であるのがより好ましい。外装2の平均厚さを前記範囲内とすることにより、外装2は、軽量化と機械的強度の向上とを高度に両立し得るものとなる。
【0023】
一方、遮光膜の構成材料としては、遮光性を有する材料であればよく、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、銀、スズ、金、鉛、またはこれらを含む合金、化合物等が挙げられる。なお、これらの材料を、各種蒸着法、各種塗布法で成膜したり、あるいは箔として積層すること等により、遮光膜を製造することができる。なお、これらの材料で構成された遮光膜は、遮蔽膜としての優れた機能も併せ持つ。
また、遮蔽膜の構成材料としては、ガスや水分等の透過を防止する遮蔽性を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムのような金属酸化物等が挙げられる。
遮光膜や遮蔽膜の平均厚さは、構成材料に応じて異なるものの、1μm以上100μm以下程度であるのが好ましく、3μm以上50μm以下程度であるのがより好ましい。
【0024】
また、外装2を前述したような積層構造にする場合、金属を含む層は最内層以外に配置されるのが好ましい。これにより、金属を含む層が光硬化型インク100に対して硬化触媒として機能するのを防止し、光硬化型インク100を長期にわたって安定的に保存することができる。
なお、上記の観点から、最内層には樹脂製フィルムが配置されるのが好ましく、金属を含む層については、耐擦性を確保する観点から最内層と最外層との間に配置されるのが好ましい。
また、外装2は、例えば図1、2に示すように、複数のフィルムを積層し、外縁部を接着または融着して封止することにより製造される。接着にはホットメルト接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤のような各種接着剤が用いられ、融着には熱溶着等が用いられる。
【0025】
(開口部)
開口部3は、第1の空間21の内部と外部とを連通するものであり、開閉自在に設けられている。具体的には、開口部3は、第1の空間21の内部と外部とを連通させる連通孔31を有する案内部32と、案内部32に着脱可能で連通孔31を開閉するキャップ33とを有している。案内部32の外表面と外装2とは接着または融着により封止されており、キャップ33を閉めると第1の空間21は気密的に封止される。一方、キャップ33を開けると、連通孔31を介して光硬化型インク100を外部に取り出すことができるようになる。
【0026】
なお、開口部3は、液滴吐出装置のインク供給系に接続されるよう構成されていてもよい。これにより、第1の空間21に封入された光硬化型インク100を、外気に触れることなく液滴吐出装置内に供給することができる。
開口部3の構成材料は、遮光性および遮蔽性を有する材料であればよく、例えば、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂、各種金属等が挙げられる。
また、これらの構成材料には、必要に応じて、染料、顔料等が含まれていてもよい。
【0027】
(隔壁)
隔壁4は、分子レベルで酸素(O)を透過する酸素透過性を有する一方、第1の空間21に封入した光硬化型インク100を保持するための不透液性を有している。このような隔壁4としては、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンビニルアセテートのようなポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリブタジエンフィルム等が挙げられ、これらの1種または2種以上を積層してなる積層フィルムが用いられる。
これらの中でも隔壁4としては、特にポリオレフィン系フィルムが好ましく用いられる。ポリオレフィン系フィルムは、それ自体が比較的高い酸素透過性を有するため、加工等を施すことなく用いることができ、しかも、水蒸気透過性については比較的低いため、光硬化型インク100の吸湿による変質、劣化を防止する。
【0028】
また、隔壁4として、通気性を高めるフィラーを添加したフィルムも用いることができる。このようなフィラーとしては、例えば、ゼオライト、多孔性セラミックスのような無機系多孔質粒子が挙げられる。これらのフィラーを用いることにより、フィルムの基材の種類によらず、酸素透過性を有する隔壁4を得ることができる。また、通気性を高めるフィラーを添加する場合、その添加量は、隔壁4中において0.5質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
【0029】
また、隔壁4には、貫通孔を形成したフィルムも用いられる。貫通孔の大きさは、必要な酸素透過度と光硬化型インク100を保持するために必要な不透液性とを両立する程度に適宜設定されるが、好ましくは10nm以下に設定される。貫通孔の大きさが前記範囲内であれば、透過した酸素の気泡が液滴吐出装置の吐出安定性を低下させるおそれが小さくなる。
【0030】
前述したように、隔壁4は酸素透過性を有しているが、その酸素透過度は、1000[cc/m・day・atm]以上30000[cc/m・day・atm]以下程度であるのが好ましく、2000[cc/m・day・atm]以上20000[cc/m・day・atm]以下程度であるのがより好ましい。隔壁4の酸素透過度を前記範囲内に設定することにより、第1の空間21に封入した光硬化型インク100に対して必要かつ十分な量の酸素が長期にわたって供給され、著しい粘性の上昇を抑え得る十分な重合禁止効果が持続的に発揮される。その結果、光硬化型インク100を長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器10が得られる。
【0031】
なお、酸素透過度が前記下限値未満である場合、十分な量の酸素が供給されないので、保存中の光硬化型インク100が硬化してしまうおそれがある。一方、酸素透過度が前記上限値を上回る場合、酸素供給量が多過ぎて、酸素による重合禁止効果が短時間しか維持されなかったり、光硬化型インク100が脱気されているにもかかわらず、著しく多くの酸素が溶存してしまい、インクジェット印刷における光硬化型インク100の吐出が不安定になるおそれがある。
また、上記の酸素透過度は、JIS K 7126−2に準拠した方法で測定される値であり、測定温度は25℃である。
【0032】
また、隔壁4の配置は、外装2の内部空間20を2つに分ける位置であれば、いかなる位置であってもよいが、本実施形態では前述したように、内部空間20を厚さ方向に分割するように配置されている(図2参照)。このような位置に隔壁4を配置することで、隔壁4は、図2に示す内部空間20においてとり得る最大の面積を確保することができる。これにより、光硬化型インク100と隔壁4とが接触する面積も最大限に確保することができるため、光硬化型インク100に対してムラなく均一に酸素を供給することができる。その結果、保存中の光硬化型インク100が一部でも硬化してしまうのを避けることができる。
【0033】
また、隔壁4を上記のように配置した結果、第2の空間22は光硬化型インク用容器10のほぼ全体にわたって設けられることとなる。このため、第2の空間22内に酸素含有ガスを封入したときには、第2の空間22が膨張し、第2の空間22が一定の剛性を有することとなる。これにより、光硬化型インク用容器10は、第1の空間21に光硬化型インク100を封入したときはもちろん、封入しなくても折れ曲がり難いものとなる。このため、光硬化型インク用容器10は、封入した光硬化型インク100を開口部3から滞りなく取り出し易い保形性の高いものとなる。また、光硬化型インク用容器10自体が自立し易いものとなるため、光硬化型インク用容器10の取り扱い性が向上になる。
【0034】
また、図2に示すインクパック1では、第1の空間21と外部との間に第2の空間22が配置されているため、第2の空間22が第1の空間21にとっての断熱層として機能する。このため、光硬化型インク100は外気温の影響を受け難くなり、外気温の変化に伴う粘性や特性の急激な変化から光硬化型インク100を保護することができる。その結果、光硬化型インク100の保存性がより向上し、かつ、光硬化型インク100を液滴吐出装置で吐出したときの吐出安定性が向上する。
【0035】
なお、隔壁4は、例えば、外装2に対して接着または融着により固定される。この際、酸素含有ガス中で接着または融着を行うことにより、第2の空間22内に酸素含有ガスを封入することができる。
光硬化型インク用容器10の内部空間20において、第2の空間22が占める割合は、光硬化型インク100の保存期間、隔壁4の酸素透過度等に応じて適宜設定されるが、好ましくは5体積%以上90体積%以下であるのが好ましく、10体積%以上80体積%以下であるのがより好ましい。
【0036】
(他の構成例)
なお、酸素含有ガスを封入する第2の空間22の配置や形状は特に限定されず、図2に示すような配置、形状であれば、最も簡単な構造で隔壁4の最大面積を確保することができるが、それ以外に図3〜6に示すような形状であってもよい。
このうち、図3に示すインクパック1は、光硬化型インク用容器10の内部空間20のほぼ中央部に第1の空間21が配置され、第1の空間21を挟むように2つの第2の空間22が配置されている以外は、図2に示すインクパック1と同様である。図3に示す形状であれば、2枚の隔壁4を用いることで、図2の場合よりも隔壁4の面積をさらに拡張することができ、光硬化型インク100に対してより均一にかつ効率よく酸素を供給することができる。また、光硬化型インク用容器10の自立性がより高められることから、光硬化型インク用容器10からの光硬化型インク100の取り出しや光硬化型インク用容器10の取り扱いがより容易になる。なお、このように第2の空間22は、必要に応じて2つ以上に分割されていてもよい。
【0037】
一方、図4に示すインクパック1は、光硬化型インク用容器10の内部空間20のほぼ中央部に第2の空間22が配置され、第2の空間22を取り囲むように第1の空間21が配置されている以外は、図2に示すインクパック1と同様である。このような構造であれば、第1の空間21から光硬化型インク100を取り出す際、光硬化型インク100の残量が少なくなるにつれて、第2の空間22により第1の空間21が押圧され易いという作用が生じる。このため、第1の空間21内に光硬化型インク100が残留し難く、無駄なく光硬化型インク100を取り出すことができる。また、このような構造であれば、隔壁4の長さを変えることのみで第2の空間22の容積を自在に調節し易いので、光硬化型インク100の保存期間の長さに応じて第2の空間22の容積を最適化し、同時に第1の空間21の容積を最大化し易いという利点がある。
【0038】
また、図5に示すインクパック1は、光硬化型インク用容器10の内部空間20のほぼ中央部に第1の空間21が配置され、第1の空間21を取り囲むように第2の空間22が配置されている以外は、図2に示すインクパック1と同様である。このような構造であれば、封入した光硬化型インク100を取り囲むように酸素含有ガスを分布させることができるので、光硬化型インク100の保存性を特に高めることができる。
【0039】
さらに、図3、5に示すインクパック1では、第2の空間22の内側に第1の空間21が配置されるよう構成されているため、第1の空間21に封入された光硬化型インク100の断熱性が特に向上する。
また、図6に示すインクパック1は、隔壁4が外装2から遊離するように設けられており、これにより内部空間20において第2の空間22が自由に移動し得るようになっている。すなわち、隔壁4は、それ自体が風船様の閉じた形状をなしており、その内部に第2の空間22を有している。
【0040】
このような形状の第2の空間22に酸素含有ガスを封入すると、比重の関係から、第2の空間22は内部空間20において常に鉛直上方に向かう浮力を受ける。このため、図6に示すように開口部3が鉛直下方に向くようにインクパック1を配置したとき、第2の空間22は開口部3とは反対側に向かう力を受けることとなる。その結果、第2の空間22は、内部空間20(第1の空間21)において、封入された光硬化型インク100を開口部3側に押しやるように移動することとなり、光硬化型インク100を取り出し易くなる。
【0041】
なお、前述した外装2の酸素透過度および水蒸気透過度は、それぞれできるだけ小さい方が好ましい。
具体的には、外装2の酸素透過度は、100[cc/m・day・atm]以下であるのが好ましく、50[cc/m・day・atm]以下であるのがより好ましい。これにより、第2の空間22から酸素が外部へと逃げてしまうのを防止して、光硬化型インク100の保存可能期間が短くなるのを防止することができる。
【0042】
一方、外装2の水蒸気透過度は、50[g/m・day]以下程度であるのが好ましく、30[g/m・day]以下程度であるのがより好ましい。これにより、外気から第1の空間21に水蒸気が透過し、光硬化型インク100が吸湿して変質、劣化を招くことが防止される。その結果、光硬化型インク100を長期にわたって安定的に保存することができる。
なお、上記の水蒸気透過度は、JIS K 7129に準拠した方法で測定される値であり、測定温度は25℃である。
【0043】
(酸素含有ガス)
第2の空間22に封入する酸素含有ガスは、酸素を含むガスであればいかなる種類のガスであってもよいが、好ましくは酸素濃度が20体積%以上100体積%以下であるガスとされ、より好ましくは30体積%以上100体積%以下であるガスとされる。酸素含有ガスの酸素濃度を前記範囲内にすることにより、光硬化型インク100をより長期にわたってより安定的に保存することができる。
【0044】
なお、酸素含有ガスを酸素と他の成分との混合ガスとする場合、他の成分としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。このうち、窒素が好ましく用いられる。隔壁4に用いられるような一般的なフィルムにおいて、窒素の透過性は酸素よりも数倍劣るため、酸素含有ガスとして酸素と窒素との混合ガスを用いた場合、酸素が優先的に隔壁4を透過し、窒素が選択的に第2の空間22に残存することとなる。したがって、混合ガス中の酸素濃度を適宜設定することで、第1の空間21に対する酸素供給速度を自在に調整することができ、かつ、混合ガスを用いたとしても酸素以外の成分が第1の空間21に供給されるのを抑制することができる。
【0045】
また、窒素が選択的に第2の空間22に残存することにより、第2の空間22に一定の剛性が付与され、これが長期にわたって保持されることとなる。このため、光硬化型インク用容器10の取り扱い性が向上し、これを長期にわたって維持することができる。さらに図6に示すインクパック1の場合は、第2の空間22に窒素が残存することにより、光硬化型インク100の取り出し容易性が持続する。
ただし、酸素含有ガスは、できるだけ水蒸気を含まないことが好ましい。具体的には、水蒸気濃度は0.1体積%以下であるのが好ましく、0.01体積%以下であるのがより好ましい。水蒸気がこれより多く含まれていると、隔壁4を介して水蒸気が第1の空間21に供給され、光硬化型インク100が変質、劣化するおそれがある。
【0046】
また、第2の空間22に封入する酸素含有ガスの圧力は、第1の空間21に光硬化型インク100を封入しない状態において、大気圧以上であるのが好ましく、1.1気圧(110kPa)以上であるのがより好ましい。第2の空間22の圧力を大気圧超にすることで、第2の空間22が一定の剛性を有するものとなり、光硬化型インク用容器10からの光硬化型インク100の取り出しや、光硬化型インク用容器10の取り扱いが容易になる。なお、上限値は特に設定されないが、好ましくは2気圧以下とされる。酸素含有ガスの圧力が前記上限値以下であれば、第1の空間21に対し長期にわたって継続的に酸素が供給されることとなり、光硬化型インク100の保存期間を特に長くすることができる。また、前記上限値以下であれば、多くの光硬化型インク用容器10の耐圧力以下となり、容器の破損を防止することができる。
【0047】
≪光硬化型インク≫
前述したように、インクパック1は、光硬化型インク用容器10内に光硬化型インク100を封入してなるものである。
光硬化型インク100は、例えば液滴吐出装置により吐出され、これを硬化させることで被膜を形成し得るインク組成物である。
このような光硬化型インク100は、金属粒子と重合性化合物と光重合開始剤とを含んでなるものである。
【0048】
以下、光硬化型インク100の各構成成分について説明する。
(金属粒子)
金属粒子としては、金属を含む粒子であればいかなるものでもよく、含まれる金属としては、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタン、銅のような金属の単体あるいはこれらの合金、混合物が挙げられる。また、光硬化型インク100中に含まれる金属粒子は、2種以上であってもよい。
また、金属粒子の形状としては、特に限定されず、略球状、平板状、針状等の形状が挙げられる。
なお、略球状の金属粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.5μm以上10μm以下であるのが好ましく、1μm以上5μm以下であるのがより好ましい。
また、平板状または針状の金属粒子の場合、平均長径が前記範囲内であるのが好ましい。
【0049】
また、金属粒子は、必要に応じて、表面に各種の表面処理を施したものでもよい。表面処理としては、例えば、各種カップリング剤、アルコキシシラン化合物を結合させる処理が挙げられる。
光硬化型インク100中の金属粒子の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であるのがより好ましい。
【0050】
(重合性化合物)
重合性化合物としては、単官能または多官能であるモノマーやオリゴマーが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸を含むものが好ましく用いられる。より具体的には、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルのような(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸を含むものが挙げられる。
光硬化型インク100中の重合性化合物の含有量は、40質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、45質量%以上75質量%以下であるのがより好ましい。
【0051】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、紫外線等のエネルギー線が照射されることにより、活性化してラジカルを生成するラジカル型光重合開始剤や、活性化して水素イオンを生成するカチオン型光重合開始剤等が挙げられる。
具体的には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドのようなアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、2,4−ジエチルチオキサントンのようなチオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。
光硬化型インク100中の光重合開始剤の含有量は、5質量%以上15質量%以下であるのが好ましく、8質量%以上12質量%以下であるのがより好ましい。
【0052】
(重合禁止剤)
光硬化型インク100は、必要に応じて、重合禁止剤を含んでいてもよい。重合禁止剤は、重合性化合物の重合反応に対し、禁止効果を有する化合物である。
具体的には、p−ハイドロキノン、p−メトキシフェノールのようなフェノール系の重合禁止剤、p−ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−ブチルベンゾキノンのようなキノン系の重合禁止剤等が挙げられる。
光硬化型インク100中の重合禁止剤の含有量は、0.05質量%以上1質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であるのがより好ましい。
【0053】
なお、重合禁止剤が作用するためには、酸素が必要になる場合が多い。したがって、重合禁止剤を含む光硬化型インク100を、空気との接触を避けた状態で保存した場合、重合禁止効果が働かず、保存中にインクが硬化してしまう。これに対し、重合禁止剤を含む光硬化型インク100を光硬化型インク用容器10内に封入することにより、重合禁止効果の発現に必要な酸素が継続的に供給されるため、重合禁止効果が長期にわたって発現し、重合禁止剤を含む光硬化型インク100を安定的に保存することができる。
【0054】
(その他の成分)
光硬化型インク100は、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、顔料や染料のような色材、レベリング剤、分散剤、重合促進剤、浸透促進剤、乾燥抑制剤、表面張力調整剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0055】
≪インクパックの製造方法≫
次に、本発明のインクパックの製造方法について説明する。この製造方法は、上述した光硬化型インク用容器10の第1の空間21に光硬化型インク100を封入し、インクパック1を得る方法である。
まず、第2の空間22に酸素含有ガスを封入した光硬化型インク用容器10を用意する。
【0056】
次いで、第1の空間21に光硬化型インク100を注入する。
注入する光硬化型インク100には、まず、脱気処理を施し、インク中に溶存する気体を排出する。脱気処理には、例えば、超音波脱気処理、減圧脱気処理、遠心脱気処理等の各種脱気処理の1つまたは複数を組み合わせて用いることができる。このような脱気処理を施すことにより、液滴吐出装置において光硬化型インク100を安定的に吐出することができる。
【0057】
次いで、第1の空間21内の空気を一旦吸引し、第1の空間21の容積をほぼゼロにした後、空気を巻き込まないように光硬化型インク100を注入する。そして、第1の空間21内に光硬化型インク100を充填し、開口部3のキャップ33を閉める。これにより、第1の空間21内に光硬化型インク100が封入される。この際、第1の空間21内において、光硬化型インク100が充填された空間以外に実質的に隙間が生じないように封入されるのが好ましい。これにより、脱気した光硬化型インク100中に再び気体が巻き込まれるのを防止することができる。また、隙間に含まれた成分が光硬化型インク100に意図しない作用を及ぼすことが防止されることにもなり、光硬化型インク100の保存性が向上する。
以上のようにしてインクパック1が得られる。
【0058】
この状態で光硬化型インク100を保存すれば、隔壁4を介して第2の空間22から第1の空間21へと継続的に酸素が供給されることとなる。酸素は、気泡としてではなく分子レベルのサイズで供給されるため、脱気した光硬化型インク100は、気泡を巻き込むことなく、酸素による重合禁止効果が働いて硬化反応が抑えられる。その結果、光硬化型インク100を長期にわたって安定的に保存することができる。
【0059】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の光硬化型インク用容器の構成は、上記のものに限定されず、第1の空間が複数に分割されていたり、開口部が複数個設けられていたりしてもよい。また、上記の実施形態では、内部空間が薄く広がった略直方体状をなす保存容器について説明したが、内部空間の形状はこのような形状に限らず、円柱状、楕円柱状、円錐状、角柱状、角錐状等であってもよい。
また、第2の空間にも開口部が設けられ、必要に応じて酸素含有ガスを補充したり、交換し得るよう構成されていてもよい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
1.インクパックの製造
(実施例1)
まず、図1、2に示すような光硬化型インク用容器を作製した。具体的には、下記の条件の酸素含有ガス中で、外装用フィルム2枚の間に隔壁用フィルム1枚を挟み、3枚のフィルムの外縁部を熱溶着により封止した。これにより光硬化型インク用容器の第2の空間内に酸素含有ガスを封入した。また、開口部は、第1の空間側に取り付け、熱溶着により封止した。これにより、封筒状の光硬化型インク用容器を得た。
なお、酸素含有ガスの条件および光硬化型インク用容器の構成は、以下の通りである。
【0061】
<酸素含有ガスの条件>
・酸素濃度 :100体積%
・圧力 :1.1気圧(110kPa)
<外装用フィルムの構成>
・層構成 :3層構造フィルム
第1層(最内層):ポリプロピレンフィルム(平均厚さ60μm)
第2層(中間層):アルミニウム層(平均厚さ10μm)
第3層(最外層):ナイロンフィルム(平均厚さ15μm)
・酸素透過度 :0[cc/m・day・atm]
・水蒸気透過度:0[g/m・day]
【0062】
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成
:低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、平均厚さ100μm、比重0.920)
・酸素透過度 :2000[cc/m・day・atm]
次に、第1の空間内に空気が入らないように、脱気処理を施した下記の成分を含む光硬化型インクを封入した。これにより、インクパックを得た。
【0063】
<光硬化型インクの組成>
・金属粒子(2質量%)
:平板状アルミニウム粒子(平均長径1μm、平均厚さ0.03μm)
・重合性化合物(合計87.6質量%)
:アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル((株)日本触媒製)
:フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
・光重合開始剤(合計10質量%)
:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、IRGACURE819)
:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、DAROCUR TPO)
:2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製、KAYACURE DETX−S)
・重合禁止剤(0.2質量%)
:p−メトキシフェノール
・レベリング剤(0.2質量%)
:シリコーン系表面調整剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−UV3500)
【0064】
(実施例2)
隔壁用フィルムの平均厚さを60μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成
:低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、平均厚さ40μm、比重0.920)
・酸素透過度 :5000[cc/m・day・atm]
【0065】
(実施例3)
隔壁用フィルムの平均厚さを20μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成
:低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、平均厚さ20μm、比重0.920)
・酸素透過度 :10000[cc/m・day・atm]
【0066】
(実施例4)
隔壁用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成
:超低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、平均厚さ100μm、比重0.910)
・酸素透過度 :7000[cc/m・day・atm]
【0067】
(実施例5)
隔壁用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成
:高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、平均厚さ100μm、比重0.950)
・酸素透過度 :600[cc/m・day・atm]
【0068】
(実施例6)
隔壁用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成 :二軸延伸ポリエステルフィルム(PET、平均厚さ100μm)
・酸素透過度 :20[cc/m・day・atm]
【0069】
(実施例7)
隔壁用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成 :無延伸ポリプロピレンフィルム(PP、平均厚さ100μm)
・酸素透過度 :1000[cc/m・day・atm]
【0070】
(実施例8)
隔壁用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成 :ポリスチレンフィルム(PS、平均厚さ100μm)
・酸素透過度 :1100[cc/m・day・atm]
【0071】
(実施例9)
隔壁用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成 :ポリメチルペンテンフィルム(PMP、平均厚さ40μm)
・酸素透過度 :40000[cc/m・day・atm]
【0072】
(実施例10)
隔壁用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成 :ポリメチルペンテンフィルム(PMP、平均厚さ100μm)
・酸素透過度 :15000[cc/m・day・atm]
【0073】
(実施例11)
第2の空間の圧力を1.2気圧(120kPa)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
(実施例12)
第2の空間の圧力を1気圧(100kPa)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
【0074】
(実施例13)
酸素含有ガスを、酸素濃度を50体積%の酸素−窒素混合ガスに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
(実施例14)
酸素含有ガスを、酸素濃度を20体積%の酸素−窒素混合ガスに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
【0075】
(実施例15)
酸素含有ガスを、酸素濃度を5体積%の酸素−窒素混合ガスに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
(実施例16)
図6に示すような光硬化型インク用容器を作製し、これを用いるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
【0076】
(比較例1)
光硬化型インク用容器において隔壁を省略した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
(比較例2)
隔壁用フィルムとして、酸素透過度が0[cc/m・day・atm]の外装用フィルムを用いるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
(参考例)
光硬化型インクとして金属粒子を含まないものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
【0077】
2.インクパックの評価
2.1.粘度評価
各実施例、各比較例および参考例で得られたインクパック中の光硬化型インクについて、加熱前後における粘度変化を以下のようにして評価した。
まず、各インクパック中の光硬化型インクの初期粘度をPhysica社製の粘度計MCR−300により測定した。
次いで、各インクパックを60℃の温度で5日間加熱した。そして、加熱後の光硬化型インクの粘度を再び測定した。その上で、加熱前の粘度(初期粘度)を1としたときの加熱後の粘度の相対値を算出し、これを以下の評価基準に基づいて評価した。
【0078】
<粘度の評価基準>
◎ :加熱後の粘度の相対値が1.1未満である
○ :加熱後の粘度の相対値が1.1以上1.5未満である
△ :加熱後の粘度の相対値が1.5以上2未満である
× :加熱後の粘度の相対値が2以上である
××:加熱途中で完全硬化してしまう
【0079】
2.2.硬化性評価
各実施例、各比較例および参考例で得られたインクパック中の光硬化型インクについて、加熱前後における硬化性変化を以下のようにして評価した。
まず、加熱前の各インクパック中の光硬化型インクをガラス基板上に滴下し、ピーク波長365nmの紫外線を照射して滴下した組成物が硬化するまでの時間を測定した。なお、照射強度は20mW/cmとした。
次いで、各インクパックを60℃の温度で5日間加熱した。そして、加熱後の光硬化型インクについて上述したようにして硬化時間を測定した。その上で、加熱前の硬化時間を1としたときの加熱後の硬化時間の相対値を算出し、これを以下の評価基準に基づいて評価した。
【0080】
<硬化時間の評価基準>
◎ :加熱後の硬化時間の相対値が1.1未満である
○ :加熱後の硬化時間の相対値が1.1以上1.5未満である
△ :加熱後の硬化時間の相対値が1.5以上2未満である
× :加熱後の硬化時間の相対値が2以上である
××:パック中でインクが硬化し、評価できない
【0081】
一方、別の各インクパックを60℃の温度で10日間加熱した。そして、上記と同様にして加熱後の硬化時間を評価した。
また、さらに別の各インクパックを60℃の温度で60日間加熱した。そして、上記と同様にして加熱後の硬化時間を評価した。
以上、2.1、2.2の評価結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
表1に示すように、各実施例で得られたインクパック中の光硬化性インク組成物は、長期の加熱処理を施したとしても、著しい粘度上昇を伴うことがなかった。また、加熱後のインクパックを液滴吐出装置のインク供給系に接続し、封入していたインク組成物の吐出を行ったところ、いずれのインクパックについても安定的に吐出可能であることが認められた。
また、参考例で得られたインクパック中の光硬化型インクには、金属粒子が含まれていないため、保存中の粘度上昇は生じなかった。そして、各実施例で用いた光硬化型インク用容器によれば、金属粒子を含む光硬化型インクを保存した場合でも、参考例と同程度の保存安定性を実現していることが認められた。
【0084】
一方、各比較例で得られたインクパックでは、加熱によりインク組成物に著しい粘度上昇が認められた。また、5日加熱後のインクパックを液滴吐出装置のインク供給系に接続し、封入していたインク組成物の吐出を行ったところ、ノズルのつまりが発生した。さらに、10日後にはパック中で完全に硬化してしまった。
また、各実施例および参考例で得られたインクパック中の光硬化性インク組成物は、いずれも10日間保存した後でも、保存前とほとんど変わらない優れた硬化性を示した。
一方、各比較例で得られたインクパック中の光硬化性インク組成物は、5日間保存したところ、硬化性の低下が認められた。
なお、実施例12、16および比較例1を除く各インクパックについては、光硬化型インクを吐出した後でもインクパックが自立性を備えていた。
【符号の説明】
【0085】
1…インクパック 10…光硬化型インク用容器 100…光硬化型インク 2…外装 20…内部空間 21…第1の空間 22…第2の空間 3…開口部 31…連通孔 32…案内部 33…キャップ 4…隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子と重合性化合物と光重合開始剤とを含む光硬化型インクを収容する容器であって、
内部に、前記光硬化型インクを収容可能な第1の空間と、隔壁を介して前記第1の空間に隣接し、酸素を含むガスを収容した第2の空間と、を有し、
前記隔壁が酸素透過性を有していることを特徴とする光硬化型インク用容器。
【請求項2】
前記隔壁のJIS K 7126−2に準拠した方法により測定された酸素透過度は、1000[cc/m・day・atm]以上30000[cc/m・day・atm]以下である請求項1に記載の光硬化型インク用容器。
【請求項3】
前記隔壁は、ポリオレフィン系樹脂製のフィルムである請求項1または2に記載の光硬化型インク用容器。
【請求項4】
前記第1の空間および前記第2の空間は、外装の内部に設けられており、
前記外装は、樹脂製フィルムと遮光性を有する遮光膜とを含む積層構造になっている請求項1ないし3のいずれかに記載の光硬化型インク用容器。
【請求項5】
前記遮光膜は、金属材料で構成されている請求項4に記載の光硬化型インク用容器。
【請求項6】
前記隔壁は、前記第1の空間内に遊離するように設けられている請求項4または5に記載の光硬化型インク用容器。
【請求項7】
前記酸素を含むガスは、酸素濃度が20体積%以上100体積%以下である請求項1ないし6のいずれかに記載の光硬化型インク用容器。
【請求項8】
当該光硬化型インク用容器は、前記第1の空間と外部とを連通可能な開口部を備えている請求項1ないし7のいずれかに記載の光硬化型インク用容器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の光硬化型インク用容器の前記第1の空間に、脱気処理を施した前記光硬化型インクを封入してなることを特徴とするインクパック。
【請求項10】
前記第1の空間には実質的に隙間がないように前記光硬化型インクが封入されている請求項9に記載のインクパック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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