説明

光硬化型インク組成物及びインクジェット記録方法

【課題】耐擦過性及び密着性に優れた光硬化型インク組成物を提供する。
【解決手段】ラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、ラジカル重合性の硬化性ワックスとを含む、光硬化型インク組成物。更に好ましくは、当該インク組成物100質量%に対し、前記ラジカル重合性の硬化性ワックスを0.5〜10質量%含む、光硬化型インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型インク組成物及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙などの被記録媒体に、画像データ信号に基づき画像を形成する画像記録方法として、種々の記録方法が利用されている。このうち、インクジェット記録方法は、安価な装置で、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、インクジェット記録方法は騒音が小さいため、画像記録方式として優れている。
【0003】
近年、プラスチック製の非吸収性被記録媒体の表面に印刷する際、ラジカル重合性化合物及び光重合開始剤を含有し、紫外線等の電磁波を照射すると硬化する、光硬化型のインクジェット記録用インクが使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ラジカル重合性化合物としてアクリル酸エステル及びN−ビニルカプロラクタムを用いた、紫外線硬化型インク組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第07/097049号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたインク組成物の硬化膜は耐擦過性に劣っており、その結果、画像を擦ると擦った部分が消えてしまうという問題があった。また、上記のインク組成物をプラスチック製の非吸収性被記録媒体の表面に印刷すると、密着性に劣るため、所望の部分への印刷が困難になったり、一旦印刷しても簡単に画像が消えたりしてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、耐擦過性及び密着性に優れた光硬化型インク組成物及びインクジェット記録方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、アクリル酸エステルやN−ビニルカプロラクタムなどのモノマーやウレタンアクリレートやポリエステルアクリレートなどのオリゴマーを含むラジカル重合性化合物及び光重合開始剤に加えて、ラジカル重合性の硬化性ワックスをインク組成物中に含有することで、耐擦過性及び密着性に優れた光硬化型インク組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は下記のとおりである。
[1]
ラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、ラジカル重合性の硬化性ワックスと、を含む、光硬化型インク組成物。
[2]
当該インク組成物100質量%に対し、前記ラジカル重合性の硬化性ワックスを0.5〜10質量%含む、[1]に記載の光硬化型インク組成物。
[3]
前記ラジカル重合性化合物は、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート及びN−ビニルカプロラクタムからなる群より選択される一種以上を含む、[1]又は[2]に記載の光硬化型インク組成物。
[4]
[1]〜[3]のいずれかに記載の光硬化型インク組成物を、インクジェット方式により、被記録媒体に印刷する印刷工程と、前記印刷工程により印刷された当該インク組成物を、360〜400nmの範囲にピーク波長を有する発光ダイオードの照射により硬化させる硬化工程と、を含む、インクジェット記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
[光硬化型インク組成物]
本発明の一実施形態は、光硬化性インク組成物に係る。当該光硬化型インク組成物は、ラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、ラジカル重合性の硬化性ワックスとを含む。
以下、本実施形態に係る光硬化型インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)に含まれる成分を説明する。
【0012】
〔ラジカル重合性の硬化性ワックス〕
本実施形態のインク組成物は、ラジカル重合性の硬化性ワックスを含むことにより、耐擦過性及び光沢性に優れた硬化塗膜を形成することができる。さらに、上記の硬化性ワックスの含有量が適当な範囲内で、ホモポリマーのガラス転移点が室温(25℃)以下であるモノマー(単量体)を併用することによって、上記の性能に加えて柔軟な硬化塗膜を得ることができる。さらに、また、上記の硬化性ワックスの含有量が適当な範囲内でN−ビニル化合物を使用することによって上記の性能に加えて優れた密着性を有する硬化塗膜を得ることができる。
ここで、本明細書における「ラジカル重合性の硬化性ワックス」とは、インク組成物を構成するモノマー及びオリゴマーを含むラジカル重合性化合物ならびに光重合開始剤と混和することができ、かつ、反応性基としてラジカル重合性基を有するワックスであって、ワックス同士で、又は、上記のラジカル重合性化合物とラジカル重合することができるワックスを意味する。なお、本明細書における「ワックス」という用語には、一般にワックス類と称される、天然材料及び合成材料が広く含まれる。
【0013】
上記の硬化性ワックスにはその構造中にラジカル重合性基を有する。ラジカル重合性基としては、後述する本実施形態のインク組成物の構成成分であるラジカル重合性化合物の反応性基と同様のものを有し、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、ビニル基、ビニルアミノ基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、プロペニル基及びビニリデン基からなる群から選択された基が挙げられる。好ましくはアクリロイル基、メタクリロイル基であり、より好ましくはアクリロイル基である。硬化性ワックスは、上記のラジカル重合性基をその構造中に少なくとも1個以上を有する。
上記の硬化性ワックスは、一般のワックスでその構造中に、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はグリシジル基等の官能基を持つものであれば、上記のラジカル重合性基を導入することで容易に合成できる。
【0014】
本実施形態のインク組成物をポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムやポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS、ポリスチレン等のボードに印刷すると、当該インク組成物中に混和していた上記の硬化性ワックスが印刷表面(インク表面)に移行し、そこに特定の波長(域)の紫外線を照射することによって印刷塗膜の表面に固定化された状態で硬化(重合)すると推察される。したがって、本実施形態のインク組成物は、耐擦過性及び光沢性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0015】
上記官能基のうちヒドロキシル基を有するワックスとして、特に限定されないが、例えばヒドロキシル末端ポリエチレンワックスが好ましく挙げられる。当該ワックスとして、例えば、化学式CH−(CH−CHOHで表される鎖長nの化合物又は鎖長nが互いに異なる化合物の混合物であって、その鎖長n(混合物の場合は平均の鎖長)が約16〜約50であるものと、同様の鎖長を有する線状低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。このワックスの市販品として、特に限定されないが、UNILIN(登録商標)シリーズの材料、例えばMn(数平均分子量)が各々375、460、550及び700g/モルにほぼ等しいUNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録商標)550及びUNILIN(登録商標)700が挙げられる。これらのワックスは全て、ベーカーペトロライト社(Baker-Petrolite Corpotion)から入手できる。
上記の末端ヒドロキシル基ポリエチレンワックスと当該ポリエチレンワックスのヒドロキシル基と当モル量よりも僅かに多い(1.1〜1.2倍量程度)アクリル酸をp−トルエンスルホン酸を触媒(一千〜数千ppm程度)として、重合禁止剤ヒドロキノンモノメチルエーテル(一千〜数千ppm程度)を添加し、脱水トルエン中で、空気気流下、80℃で還流しながら生成した水を除去してエステル化反応を進める。そして、生成水が理論量となった時点で反応を終了し、ガスクロマトグラフィー、FT−IR、NMR等で分析する。その後、水で洗浄して未反応のアクリル酸とp−トルエンスルホン酸を除去し、場合によっては水酸化ナトリウム水溶液でさらに洗浄して未反応のアクリル酸を除去し再度水で洗浄してエバポレーター等でトルエンを除去する。その後、脱水剤で微量に残存する水分を除去し、重合禁止剤ヒドロキノンモノメチルエーテルを500ppm程度添加して、目的とするラジカル重合性の硬化性ワックスを得ることができる。
【0016】
上記官能基のうちヒドロキシル基を有する化合物として、ゲルベアルコール(Guerbet alcohol、2,2−ジアルキル−1−エタノール)も好ましく挙げられる。典型的なゲルベアルコールとして、約16〜約36個の炭素を含有するものが挙げられる。ゲルベアルコールの市販品は、ニュージャージー州ニューアークのジャルケム・インダストリーズ社(Jarchem Industries Inc.)から入手できる。また、デラウェア州ニューカッスルのユニケマ社(Uniqema Chemicals Ltd.)から入手できるダイマージオールであるPRIPOL(登録商標)2033も上記ヒドロキシル基を有する混合物として使用可能である。このPRIPOL(登録商標)2033は、下記化学式:
【化1】


で表される化合物の異性体、並びに不飽和及び環式基を含んでもよいその他の枝分かれ異性体を含むC36ダイマージオール混合物である。このタイプのC36ダイマージオールについての更なる情報は、例えば、「Dimer Acids」(Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第8巻、第4編、1992年、223〜237ページ)に開示されている。これらのアルコールは、上述した方法で同様にラジカル重合性の硬化性ワックスを得ることができる。上記の硬化性ワックスとして、例えばワックス状のアクリレート又はメタクリレートが挙げられる。当該アクリレート又はメタクリレートの市販品として、例えば、UNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録商標)550及びUNILIN(登録商標)700のアクリレート又はメタクリレート(以上、ベーカーペトロライト社製)が挙げられる。
【0017】
上記官能基のうちカルボキシル基を有するワックスとして、カルボン酸末端ポリエチレンワックスも好ましく挙げられる。当該ワックスとして、例えば、化学式CH−(CH−COOHで表される鎖長nの化合物又は鎖長nが互いに異なる化合物の混合物であって、その鎖長n(混合物の場合は平均の鎖長)が約16〜約50であるものと、同様の鎖長を有する線状低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。このワックスの市販品として、特に限定されないが、Mnが各々約390、475、565及び720g/モルに等しいUNICID(登録商標)350、UNICID(登録商標)425、UNICID(登録商標)550及びUNICID(登録商標)700が挙げられる。また、当該ワックスとして、例えば、化学式CH−(CH−COOHで表される、n=14のヘキサデカン酸又はパルミチン酸、n=15のヘプタデカン酸、マルガリン酸又はダチュリン酸、n=16のオクタデカン酸又はステアリン酸、n=18のエイコサン酸又はアラキジン酸、n=20のドコサン酸又はベヘン酸、n=22のテトラコサン酸又はリグノセリン酸、n=24のヘキサコサン酸又はセロチン酸、n=25のヘプタコサン酸又はカルボセリン酸、n=26のオクタコサン酸又はモンタン酸、n=28のトリアコンタノン酸又はメリシン酸、n=30のドトリアコンタノン酸又はラッセル酸、n=31のトリトリアコンタノン酸、セロメリシン酸又はプシリン(psyllic)酸、n=32のテトラトリアコンタノン酸又はゲダ酸、n=33のペンタトリアコンタノン酸又はセロプラスチン酸が挙げられる。
上記のカルボン酸末端ポリエチレンワックスと当該ポリエチレンワックスのカルボン酸基と当モル量よりも僅かに多い(1.1〜1.2倍量程度)2−ヒドロキシエチルアクリレートをp−トルエンスルホン酸を触媒(一千〜数千ppm程度)として、重合禁止剤ヒドロキノンモノメチルエーテル(一千〜数千ppm程度)を添加して、脱水トルエン中で、空気気流下、80℃で還流しながら生成した水を除去してエステル化反応を進める。そして、生成水が理論量となった時点で反応を終了し、ガスクロマトグラフィー、FT−IR、NMR等で分析する。その後、水で洗浄して未反応の2−ヒドロキシエチルアクリレートとp−トルエンスルホン酸を除去し、エバポレーター等でトルエンを除去する。その後、脱水剤で微量に残存する水分を除去し、重合禁止剤ヒドロキノンモノメチルエーテルを500ppm程度添加して、目的とするラジカル重合性の硬化性ワックスを得ることができる。
【0018】
上記官能基のうちカルボキシル基を有する化合物として、ゲルベ酸(Guerbet acid、2,2−ジアルキルエタノール酸)も好ましく挙げられる。典型的なゲルベ酸として、16〜36個の炭素を含有するものが挙げられる。ゲルベ酸の市販品は、ジャルケム・インダストリーズ社から入手できる。また、ユニケマ社から入手できるPRIPOL(登録商標)1009も上記カルボキシル基を有する混合物として使用可能である。このPRIPOL(登録商標)1009は、下記化学式:
【化2】


で表される化合物の異性体、並びに不飽和及び環式基を含んでもよいその他の枝分かれ異性体を含むC36ダイマー酸混合物である。このタイプのC36ダイマー酸に関するさらなる情報は、例えば、上記の「Dimer Acids」に開示されている。これらのカルボン酸は、上述した方法で同様にラジカル重合性の硬化性ワックスを得ることができる。当該アルコールの市販品として、特に限定されないが、例えば、2−アリルオキシエタノール(シグマ アルドリッチ社(Sigma-Aldrich Co.)より入手可能)、下記化学式:
【化3】


で表される、TONE M−101(Rは水素原子、nは平均で1)、TONE M−100(Rは水素原子、nは平均で2)及びTONE M−201(Rはメチル基、nは平均で1)(以上、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)より入手可能)、並びに下記化学式:
【化4】


で表される、CD572(Rは水素原子、nは10)及びSR604(Rはメチル基、nは4)(以上、サートマー社(Sartomer Company, Inc.)より入手可能)が挙げられる。
【0019】
上記のラジカル重合性の硬化性ワックスは、上記インク組成物100質量%に対し、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%含まれる。硬化性ワックスの含有量が0.5質量%以上である場合、インク組成物を硬化して得られる硬化膜(以下、「塗膜」ともいう。)の耐擦過性が一層良好になる。一方、硬化性ワックスの含有量が10質量%以下である場合、上記塗膜の柔軟性が一層良好になる。
【0020】
〔ラジカル重合性化合物〕
本実施形態のインク組成物は、当該組成物の成分であるラジカル重合性化合物が特定の波長(域)の光照射によって発生した後述する光重合開始剤ラジカルによって連鎖的に反応することで、印刷媒体上で硬化する。上記のラジカル重合性化合物は、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、ビニル基、ビニルアミノ基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、プロペニル基、ビニリデン基、からなる群から選択された基を構造中に1個以上持つものであり、アクリロイル基、メタクリロイル基を構造中に持つものが好ましく、特にアクリロイル基が好ましく、単量体であるモノマーと二量体から数量体もしくは分子量が数千程度までのオリゴマーを含む。
【0021】
ラジカル重合性化合物のモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類、スチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン等のスチレン誘導体、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
ラジカル重合性化合物のオリゴマーの具体例としては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリウレタンメタクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、オリゴメタクリレート、アルキドメタクリレート、ポリオールメタクリレート等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、アクリロイル基を有するアクリル酸エステル類、N−ビニル化合物及びアクリロイルモルホリンが、光重合性に優れることから好ましい。
【0023】
単官能のアクリル酸エステルとしては、例えば、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ラクトン変性可とう性アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、及びイソボルニルアクリレート等が挙げられる。
【0024】
2官能のアクリル酸エステルとしては、例えば、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0025】
3官能以上のアクリル酸エステルとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0026】
さらに、インクの硬化塗膜の柔軟性を一層良好なものとするためには、ホモポリマーのガラス転移点が室温(25℃)以下であるモノマー(単量体)を併用することが好ましい。ホモポリマーのガラス転移点(Tg)が室温(25℃)以下であるモノマー(単量体)としては、例えば、フェノキシエチルアクリレート(Tg:−22℃)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(Tg:−25℃)、イソアミルアクリレート(Tg:−45℃)、ラウリルアクリレート(Tg:−30℃)、エトキシジエチレングリコールアクリレート(Tg:−50℃)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(Tg:−15℃)、イソデシルアクリレート(Tg:−60℃)、イソオクチルアクリレート(Tg:−54℃)トリデシルアクリレート(Tg:−55℃)、カプロラクトンアクリレート(Tg:−53℃)等が挙げられる。
一般に、高分子固体、特に無定形高分子固体において、温度を低温から高温へ上げていくと、わずかな変形に非常に大きな力の要る状態(ガラス状態)から小さな力で大きな変形が起こる状態へと急変する現象が起こるが、この現象の起こる温度をガラス転移温度(又はガラス転移点)という。一般には、熱走査型熱量計(Differential scanning calorimeter)による昇温測定によって得られた示差熱曲線において、吸熱ピークの底部から吸熱の開始点に向かって接線を引いたときのベースラインとの交点の温度がガラス転移温度とされる。本明細書におけるTgは、この定義に従ったものである。また、ガラス転移温度では弾性率、比熱、屈折率などの他の物性も急激に変化することが知られており、これらの物性を測定することによってもガラス転移温度が決定されることが知られている。
【0027】
上記のラジカル重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単官能モノマーの中でも、フェノキシエチルアクリレートは、低粘度(3〜5mPa・s)で、モノマーやオリゴマーとの相溶性に優れ、かつ、光重合開始剤の溶解性にも優れることから、好ましい。
また、塗膜に強靭性を与えるという点から、構造中に嵩高い構造を有する単官能モノマーが好ましく、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート及びジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートがより好ましい。
【0028】
さらに、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート及びジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートを適宜選択し組成比を制御することで、塗膜の物性を強靭で、且つ、剛直から柔軟までの幅広い特性を得ることができる。このような塗膜の性能は、フェノキシエチルアクリレートが10〜50質量%の範囲、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート及びジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートが10〜50質量%の範囲で、適宜、組成比を調整することで得ることができる。例えば、柔軟な塗膜はフェノキシエチルアクリレートを30〜50質量%、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート及びジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートを10〜30質量%とすることで得ることができる。
2官能モノマーのジメチロールトリシクロデカンジアクリレートは、その構造中に嵩高い構造と2個のアクリロイル基を持つことから、強靭で、かつ、耐水性、耐薬品性及び耐熱性に優れた塗膜を得ることができることから好ましい。
【0029】
また、本実施形態のインク組成物は、N−ビニル化合物を含有することが好ましい。N−ビニル化合物を含有することによって、インク組成物の硬化塗膜がポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS、ポリスチレン等のプラスチックスに対する接着性に優れたものとなる。N−ビニル化合物の中でも、プラスチックスに対する接着性に優れ、且つ、光重合性にも優れ、添加によってインク粘度の上昇がほとんどないN−ビニルカプロラクタムがより好ましい。N−ビニルカプロラクタムは、インク組成物中に1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%含まれる。インク組成物中に含まれるN−ビニルカプロラクタムが1質量%未満では接着性が劣り、10質量%を超えると塗膜が黄変する場合がある。
【0030】
上記のように、ラジカル重合性化合物は、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート及びN−ビニルカプロラクタムからなる群より選択される一種以上を含むことが好ましい。
また、上記のラジカル重合性化合物は、上記インク組成物中に、好ましくは70〜90質量%含まれる。
【0031】
ラジカル重合性化合物がウレタンアクリレートを含むことが好ましい。ウレタンアクリレートは単官能又は2官能以上の多官能のいずれであってもよい。ウレタンアクリレートは、その構造から高弾性率で高硬度で強靭な塗膜から柔軟で強靭な塗膜を得ることができることから好ましい。
プラスチック製の非吸収性被記録媒体の表面に形成されたインク組成物の硬化膜は、当該被記録媒体から剥離したり、クラックを生じたりしやすい。これらは、インク組成物の硬化膜の強靭性(タフネス)が劣る結果として生じる。そこで、インク組成物がウレタンアクリレートを含むことにより、強靭性(タフネス)を改善した硬化膜を形成でき、上記被記録媒体からの剥離やクラックを抑制することが可能となる。
【0032】
上記のウレタンアクリレートは、上記インク組成物中に、好ましくは0.5質量%以上5質量%未満、より好ましくは1〜3質量%含まれる。ウレタンアクリレートの含有量が0.5質量%以上5質量%未満の範囲でインクの硬化塗膜は強靭となり耐擦性が向上し、また、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS、ポリスチレン等のプラスチックスに対する密着性が向上する。一方、ウレタンアクリレートの含有量が5質量%以上である場合は、含有量が増すに従ってインクの粘度が急激に高くなる傾向があることからインクジェット用としては使用し難い。
【0033】
〔光重合開始剤〕
本実施形態のインク組成物に含まれる光重合開始剤は、紫外線の照射によって引き起こされる光重合によって、プラスチックスのフィルムやボード等の記録媒体の表面にインクジェット記録装置によって印刷した未硬化のインク組成物を硬化させるために用いられる。光重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤を使用することができる。
【0034】
上記の光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0035】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]2−モルフォリノプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾフィルフォーメート、アゾビスイソブチリロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド等が挙げられる。
【0036】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、チバ・ジャパン社(Ciba Japan K.K.)製)、DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)が挙げられる。
【0037】
光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記インク組成物は、その総量に対して、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは3〜10質量%の光重合開始剤を含む。上記の範囲内である場合、良好な硬化性が得られる。
【0038】
〔色材〕
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含んでもよい。上記色材は、顔料及び染料から選択されるが、耐光性の観点から顔料を使用することが好ましい。
【0039】
(顔料)
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。インク組成物中に、色材は、1〜10質量%含まれると好ましく、1〜5質量%含まれるとより好ましい。
【0040】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
【0041】
また、有機顔料として、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(たとえば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
更に詳しくは、ブラック用として使用される無機顔料として、以下のカーボンブラック、例えば、三菱化学製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、又はNo2200B等;コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、又はRaven700等;キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、又はMonarch 1400等;あるいは、デグッサ社製のColor Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、又はSpecial Black 4等を挙げることができる。
【0043】
イエロー有機顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1, C.I.Pigment Yellow 2, C.I.PigmentYellow 3, C.I.Pigment Yellow 4, C.I.PigmentYellow 5, C.I.Pigment Yellow 6, C.I.PigmentYellow 7, C.I.Pigment Yellow 10, C.I.PigmentYellow 11,C.I.Pigment Yellow 12, C.I.Pigment Yellow 13, C.I.Pigment Yellow 14, C.I.PigmentYellow 16, C.I.Pigment Yellow 17, C.I.PigmentYellow 24, C.I.Pigment Yellow 34, C.I.PigmentYellow 35, C.I.Pigment Yellow 37, C.I.PigmentYellow 53, C.I.Pigment Yellow 55, C.I.PigmentYellow 65,C.I.Pigment Yellow 73, C.I.Pigment Yellow 74, C.I.Pigment Yellow 75, C.I.PigmentYellow 81, C.I.Pigment Yellow 83, C.I.PigmentYellow 93, C.I.Pigment Yellow 94, C.I.PigmentYellow 95, C.I.Pigment Yellow 97, C.I.PigmentYellow 98, C.I.Pigment Yellow 99, C.I.PigmentYellow 108, C.I.Pigment Yellow 109, C.I.Pigment Yellow 110, C.I.PigmentYellow 113, C.I.Pigment Yellow 114, C.I.Pigment Yellow 117, C.I.PigmentYellow 120, C.I.Pigment Yellow 124, C.I.Pigment Yellow 128, C.I.PigmentYellow 129, C.I.Pigment Yellow 133, C.I.Pigment Yellow 138, C.I.PigmentYellow 139, C.I.Pigment Yellow 147, C.I.Pigment Yellow 151, C.I.PigmentYellow 153, C.I.Pigment Yellow 154, C.I.Pigment Yellow 167, C.I.PigmentYellow 172,C.I.Pigment Yellow 180等が挙げられる。
【0044】
マゼンタ有機顔料としては、C.I.Pigment Red 1, C.I.Pigment Red 2, C.I.PigmentRed 3, C.I.Pigment Red 4, C.I.PigmentRed 5, C.I.Pigment Red 6, C.I.PigmentRed 7, C.I.Pigment Red 8, C.I.PigmentRed 9, C.I.Pigment Red 10, C.I.PigmentRed 11, C.I.Pigment Red 12, C.I.PigmentRed 14, C.I.Pigment Red 15, C.I.PigmentRed 16, C.I.Pigment Red 17, C.I.PigmentRed 18, C.I.Pigment Red 19, C.I.PigmentRed 21, C.I.Pigment Red 22, C.I.PigmentRed 23, C.I.Pigment Red 30, C.I.PigmentRed 31, C.I.Pigment Red 32, C.I.PigmentRed 37, C.I.Pigment Red 38, C.I.PigmentRed 40, C.I.Pigment Red 41, C.I.PigmentRed 42, C.I.Pigment Red 48(Ca), C.I.PigmentRed 48(Mn), C.I.Pigment Red 57(Ca), C.I.Pigment Red 57:1, C.I.PigmentRed 88, C.I.Pigment Red 112, C.I.PigmentRed 114, C.I.Pigment Red 122, C.I.PigmentRed 123, C.I.Pigment Red 144, C.I.PigmentRed 146, C.I.Pigment Red 149, C.I.PigmentRed 150, C.I.Pigment Red 166, C.I.PigmentRed 168, C.I.Pigment Red 170, C.I.PigmentRed 171, C.I.Pigment Red 175, C.I.PigmentRed 176, C.I.Pigment Red 177, C.I.PigmentRed 178, C.I.Pigment Red 179, C.I.PigmentRed 184, C.I.Pigment Red 185, C.I.PigmentRed 187, C.I.Pigment Red 202 ,C.I.PigmentRed 209, C.I.Pigment Red 219, C.I.PigmentRed 224, C.I.Pigment Red 245,又はC.I.Pigment Violet 19, C.I.Pigment Violet 23, C.I.PigmentViolet 32, C.I.Pigment Violet 33, C.I.PigmentViolet 36, C.I.Pigment Violet 38, C.I.PigmentViolet 43, C.I.Pigment Violet 50等が挙げられる。
【0045】
シアン有機顔料としては、C.I.Pigment Blue 1, C.I.Pigment Blue 2, C.I.PigmentBlue 3, C.I.Pigment Blue 15, C.I.PigmentBlue 15:1, C.I.Pigment Blue 15:2, C.I.Pigment Blue 15:3, C.I.Pigment Blue 15:34, C.I.PigmentBlue 15:4, C.I.Pigment Blue 16, C.I.PigmentBlue 18, C.I.Pigment Blue 22, C.I.PigmentBlue 25, C.I.Pigment Blue 60,C.I.Pigment Blue 65, C.I.Pigment Blue 66, C.I.Vat Blue 4, C.I.Vat Blue 60 等が挙げられる。
【0046】
また、マゼンタ、シアン及びイエロー以外の有機顔料としては、例えば、C.I.Pigment Green 7, C.I.Pigment Green 10, C.I.PigmentBrawn 3, C.I.Pigment Brawn 5, C.I.PigmentBrawn 25, C.I.Pigment Brawn 26, C.I.PigmentOrange 1, C.I.Pigment Orange 2, C.I.PigmentOrange 5, C.I.Pigment Orange 7, C.I.PigmentOrange 13, C.I.Pigment Orange 14, C.I.PigmentOrange 15, C.I.Pigment Orange 16, C.I.PigmentOrange 24, C.I.Pigment Orange 34, C.I.PigmentOrange 36, C.I.Pigment Orange 38, C.I.PigmentOrange 40, C.I.Pigment Orange 43, C.I.PigmentOrange 63, 等が挙げられる。
【0047】
本実施形態においては、上記に挙げた有機顔料以外にも分散染料や油溶性染料等の水に不溶又は難溶の染料も好適に使用することができる。
【0048】
上記の顔料をインクジェット用記録用インクの色材として使用する場合には、平均粒子径は500nm以下が好ましく、より好ましくは200nm以下であり、さらに50〜100nmが好ましい。芯物質の平均粒子径が斯かる範囲にあると、インクジェット記録用インクは吐出安定性や分散安定性等の信頼性に効果が得られるとともに、高画質の画像を出力することができる。
【0049】
本実施形態のインク組成物は、上記に挙げた成分以外の成分を含んでもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、重合促進剤、熱重合禁止剤及び分散剤、並びにその他の添加剤が含まれる。
【0050】
〔光硬化型インク組成物の物性〕
本実施形態のインク組成物の耐擦過性の程度は、実用上の観点から、好ましくは数本の傷が付く程度であり、より好ましくは傷が無い程度である。ここで、本明細書における耐擦過性は、後記の実施例の項において行った方法により測定し評価する。
【0051】
本実施形態のインク組成物の密着性の程度は、実用上の観点から、好ましくは半分未満の面積において剥離が見られる程度であり、より好ましくは剥離が無いことである。ここで、本明細書における密着性は、後記の実施例の項において行った方法により測定し評価する。
【0052】
本実施形態のインク組成物の光沢性の程度は、実用上の観点から、光の反射が均等であって斑のない光沢が得られていることが好ましい。ここで、本明細書における光沢性は、後記の実施例の項において行った方法により測定し評価する。
【0053】
本実施形態のインク組成物の柔軟性の程度は、被記録媒体であるPETフィルムからの剥離又はクラックが実用上問題となる程度見られてもよい。だが、実用上の観点から、好ましくは剥離又はクラックが部分的に見られるが実用上の問題が無い程度であり、より好ましくは問題が無いこと、即ち剥離及びクラックが見られないことである。ここで、本明細書における柔軟性は、後記の実施例の項において行った方法により測定し評価する。
【0054】
このように、本実施形態によれば、軟質又は硬質の塗膜によらず、耐擦過性及び密着性に優れた光硬化型インク組成物が得られる。本実施形態のインク組成物は、柔軟性及び光沢性にも優れたものとなる。
【0055】
[記録方法]
本発明の一実施形態は、記録方法に係る。当該記録方法は、下記の印刷工程及び硬化工程を含む。
なお、本実施形態では、画像形成した後で硬化することにより、記録(印刷)が完了する。
【0056】
〔印刷工程〕
当該工程においては、上記の実施形態の光硬化型インク組成物をインクジェット記録装置で記録媒体に印刷する。本工程により画像形成がなされる。ここで、本実施形態における「画像形成」とは、インクジェット記録方法により、記録媒体に向けてインクをヘッドから吐出し、記録媒体にインク滴を着弾(付着)させることを指す。
【0057】
〔硬化工程〕
当該工程においては、上記印刷工程により印刷された上記インク組成物を、特定の波長(域)の光の照射により硬化させる。特定の波長(域)の光は、好ましくは紫外領域、より好ましくは360〜400nm、更に好ましくは380〜400nmである。ピーク波長が上記範囲内であると、硬化性が一層優れたものとなる。光源としては、例えば、水銀ランプやメタルハライドランプが広く知られている。その一方で、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的及び環境的にも非常に有用である。さらに、発光ダイオード(LED)及びレーザダイオード(LD)は小型、高寿命、高効率及び低コストであり、光硬化型インクジェット記録用光源として期待されている。これらの中でも、360〜400nmの範囲にピーク波長を有する発光ダイオード(LED)が好ましい。本工程により記録(印刷)が完了する。
【0058】
このように、本実施形態によれば、耐擦過性及び密着性に優れた記録物を得るための、インクジェット記録方法を提供することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0060】
[使用成分]
下記の実施例及び比較例において使用した成分は、以下のとおりである。
(単官能モノマー)
・フェノキシエチルアクリレート:ビスコート#192(大阪有機化学社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL INDUSTRY LTD.)製、表1ではPEAと略記した。)
・イソボルニルアクリレート:IBXA(大阪有機化学社製、表1ではIBXAと略記した。)
・ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート:FA−512AS(日立化成社(Hitachi Chemical Co., Ltd.)製、表1ではDCPOEAと略記した。)
・ジシクロペンテニルアクリレート:FA−511AS(日立化成社製、表1ではDCPAと略記した。)
・N−ビニルカプロラクタム:BASF社製、表1ではVCLと略記した。)
(2官能モノマー)
・ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート:EBECRYL IRR214K(ダイセル・サイテック社(DAICEL-CYTEC Company LTD.)製、表1では2MTCDAと略記した。)
・ウレタンアクリレート:エビクリル8402、ダイセル・サイテック社製、表1ではUAと略記した。
(重合促進剤)
・アミノアクリレート:EBECRYL7100(ダイセル・サイテック社製、表1ではEBECRYL7100と略記した。)
(光重合開始剤)
・IRGACURE 819(チバジャパン社製)
・DAROCURE TPO(チバジャパン社製)
・DETX−S(日本化薬社製、表1ではDETXと略記した。)
(スリップ剤)
・ラジカル重合性の硬化性ワックス(Curable Wax、UNILIN(登録商標)350、ベーカーペトロライト社(Baker-PetroliteCorpotion)製、表1ではCURと略記した。)
・酸化ポリエチレンワックス(新日本石油社製、表1ではPEOと略記した。)
・パラフィンワックス(HNP−0190、日本精鑞社(Nippon seiro co., ltd)製、表1ではHNPと略記した。)
(熱重合禁止剤)
・p−メトキシフェノール:関東化学社(KANTO CHEMICAL CO.,INC.)製、表1ではMPと略記した。)
(顔料)
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、チバジャパン社製、表1ではBLUE GLVOと略記した。)
(分散剤)
・Solsperse 36000 (LUBRIZOL社製、表1ではSOL36000と略記した。)
【0061】
[測定・評価方法]
下記の実施例及び比較例で得られた光硬化型インク組成物、又は当該インク組成物より得られた塗膜に対して、耐擦過性、密着性、柔軟性及び光沢性を、以下のようにして評価した。
【0062】
〔耐擦過性〕
まず、光硬化型インク組成物を充填したインクジェットヘッドの両端に395nmの紫外線を発光するLEDを装着したインクジェット記録装置を用いて、ポリ塩化ビニル製フィルム上に、印刷し、次いで、395nmの紫外線を500mJ/cmとなるように照射して、膜厚10μmの硬化膜(塗膜)を形成した。そして、上質紙(金菱)で得られた塗膜を1kg荷重で100回擦り、塗膜の表面状態を観察し、以下のように評価した。
・AA 変化が無かった、
・A 薄い擦り後は残ったが深い傷は無かった、
・B 数本レベルで傷が付いた、
・C Bレベル以上の傷が付いた。
【0063】
〔密着性〕
光硬化型インク組成物を充填したインクジェットヘッドの両端に395nmの紫外線を発光するLEDを装着したインクジェット記録装置を用いて、ポリ塩化ビニル製フィルム上に印刷し、次いで、395nmの紫外線を500mJ/cmとなるように照射して、膜厚10μmの硬化膜を形成した。得られた印刷塗膜にセロハンテープを接着させ、その後にこれを剥がした。その際の塗膜の剥離の有無及び剥離の程度を下記のランクA〜Cに分けることにより、密着性を評価した。
・A 剥離は無かった、
・B 半分未満の面積において剥離が見られた、
・C 半分以上の面積において剥離が見られた。
【0064】
〔柔軟性〕
光硬化型インク組成物を充填したインクジェットヘッドの両端に395nmの紫外線を発光するLEDを装着したインクジェット記録装置を用いて、ポリ塩化ビニル製フィルム上に印刷し、次いで、395nmの紫外線を500mJ/cmとなるように照射して、膜厚10μmの硬化膜を形成した。得られた塗膜を有するポリ塩化ビニル製フィルムを印刷面が凸となるように180°折り曲げた状態で24時間放置した。その際の塗膜の状態を下記のランクA〜Cに分けることにより、柔軟性を評価した。
・A 問題は無かった、即ち剥離及びクラックは見られなかった、
・B 剥離又はクラックが部分的に見られたが実用上の問題は無かった、
・C 剥離又はクラックが、実用上問題となる程度見られた。
【0065】
〔光沢性〕
光硬化型インク組成物を充填したインクジェットヘッドの両端に395nmの紫外線を発光するLEDを装着したインクジェット記録装置を用いて、ポリ塩化ビニル製フィルム上に印刷し、次いで、395nmの紫外線を500mJ/cmとなるように照射して、膜厚10μmの硬化膜を形成した。そして、当該記録物の表面の光沢を目視で観察した。この観察結果を下記のランクA及びBに分けることにより、光沢性を評価した。
・A 印刷面が均一に反射していて表面の光沢が高かった、
・B Aに比べて光沢が劣っていた、
・C 光沢がなかった。
【0066】
[実施例1〜11、比較例1〜3]
下記表1及び表2に記載の成分を、表1及び表2に記載の組成(単位:質量%)となるように配合し、これを高速水冷式撹拌機により撹拌することにより、シアン色の紫外線硬化型インク組成物を得た。評価結果を下記表1及び表2に示す。なお、表中の空欄部分は無添加を意味する。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
第1に、実施例及び比較例を対比すると、光硬化型インク組成物がラジカル重合性の硬化性ワックスを含むことにより、耐擦過性、密着性及び柔軟性に優れたインクジェット記録用インク組成物が得られることが明らかとなった。第2に、実施例1、2、3及び4と実施例5、6、7及び8とを各々対比すると、光硬化型インク組成物が一定量以上のラジカル重合性の硬化性ワックスに加えてウレタンアクリレートを含むことにより、柔軟性に優れたインク組成物が得られることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、ラジカル重合性の硬化性ワックスと、を含む、光硬化型インク組成物。
【請求項2】
当該インク組成物100質量%に対し、前記ラジカル重合性の硬化性ワックスを0.5〜10質量%含む、請求項1に記載の光硬化型インク組成物。
【請求項3】
前記ラジカル重合性化合物は、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート及びN−ビニルカプロラクタムからなる群より選択される一種以上を含む、請求項1又は2に記載の光硬化型インク組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化型インク組成物を、インクジェット方式により、被記録媒体に印刷する印刷工程と、
前記印刷工程により印刷された当該インク組成物を、360〜400nmの範囲にピーク波長を有する発光ダイオードの照射により硬化させる硬化工程と、を含む、インクジェット記録方法。

【公開番号】特開2011−168685(P2011−168685A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33238(P2010−33238)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】