説明

光硬化型接着剤組成物

【課題】低粘度で硬化性に優れ、ポリオレフィンと金属のような全く異なる被着体を接着した場合でも、剥離接着力に優れ、高温下でのせん断接着力にも優れる光硬化型接着剤組成物の提供。
【解決手段】オキセタニル基を有する化合物(A)、エポキシ基を有する化合物(B)、リン酸基を有するリン酸エステル化合物(C)、光カチオン重合開始剤(D)及び(C)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物(E)を含有する組成物であって、その硬化物の85℃1Hzにおける貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上である光硬化型接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属やプラスチック等の様々な被着体に対して、剥離接着力と高温でのせん断接着力に優れた、低粘度で硬化性に優れた光硬化型接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
透明性材料を生産ラインで接着する場合、光硬化型接着剤は、塗布工程では一液で安定でありながら、光を照射すると速やかに硬化するため、生産性や作業性を向上させるという長所を有している。そのため、透明性材料を生産ラインで接着する場合、使用される機会が増えてきている。
【0003】
光硬化型接着剤としては、(メタ)アクリレート系の組成物が、安価で化合物の種類も多い等の理由から、広く使用されている。ところが、(メタ)アクリレート系の光硬化型接着剤は、様々な被着体への接着力に劣ることが多かった。
【0004】
一方、エポキシ化合物等を含有する光カチオン硬化型接着剤は、(メタ)アクリレート系の光硬化型接着剤に比べて、金属やプラスチック等、様々な被着体への接着力に優れている(例えば特許文献1)。そのため、(メタ)アクリレート系光硬化型接着剤で接着力が不十分な場合、光カチオン硬化型接着剤を使用することがしばしばある。
ところが、光カチオン硬化型接着剤でも、十分な接着力を得ることが困難な場合がある。例えば、ポリオレフィンと金属のような全く異なる被着体を強く接着することや、剥離接着力とせん断接着力の両方を強くすることは、他の接着剤と同様、困難である。
剥離接着力とせん断接着力の両方に優れた光カチオン硬化型接着剤として、エポキシ樹脂、光カチオン重合開始剤、遅延剤、オキセタン樹脂、熱可塑性エラストマー、及びリン酸基又はカルボン酸基含有(メタ)アクリレートを含有する油面用光遅延硬化型接着剤が開示されている(特許文献2)。これは、光照射して速やかに硬化する接着剤ではないが、油の付着した金属に対しても、優れたせん断接着力と剥離接着力を有することが開示されている。しかしながら、接着剤が高温において柔軟であるため、高温下でのせん断接着力が不十分であった。又、熱可塑性エラストマーを含むため高粘度又はペースト状であることから、フィルムの接着のように低粘度の方が好ましい場合には、作業性の点で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−109780号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2007−56119号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、低粘度で硬化性に優れ、ポリオレフィンと金属のような全く異なる被着体を接着した場合でも、剥離接着力に優れ、高温下でのせん断接着力にも優れる光硬化型接着剤組成物を得るため、鋭意検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するためには、オキセタン化合物、エポキシ化合物、リン酸基を有するリン酸エステル化合物及び光カチオン重合開始剤を含む組成物に、さらにエチレン性不飽和基を有する化合物を含む組成物であって、得られる硬化物が特定の弾性率であるものが有効であることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物によれば、低粘度で硬化性に優れ、ポリオレフィンと金属のような全く異なる被着体を接着した場合でも、剥離接着力に優れ、高温下でのせん断接着力にも優れるものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、オキセタニル基を有する化合物(A)〔以下、(A)成分という〕、エポキシ基を有する化合物(B)〔以下、(B)成分という〕、リン酸基を有するリン酸エステル化合物(C)〔以下、(C)成分という〕、光カチオン重合開始剤(D)〔以下、(D)成分という〕、及び(C)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物(E)〔以下、(E)成分という〕を含有する組成物であって、その硬化物の85℃1Hzにおける貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上である光硬化型接着剤組成物に関する。
以下、それぞれの成分について説明する。
【0010】
1.(A)成分
(A)成分は、オキセタニル基を有する化合物である。
(A)成分としては、種々の化合物を使用することができる。それらの化合物について、以下の通り詳細に説明する。
【0011】
1−1.1個のオキセタニル基を有する化合物
1)一般式(1)で表される化合物
1個のオキセタニル基を有する化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物〔以下「化合物1」という〕等を挙げることができる。
【0012】
【化1】

【0013】
式(1)において、R1は、水素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、アリル基、アリール基を表し、R2は、アルキル基、アルケニル基、脂環式基、芳香環を有する基、水素原子、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基又はN−アルキルカルバモイル基を表す。
【0014】
1において、アルキル基としては、炭素数1〜6個のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等が挙げられる。フルオロアルキル基としては、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基が好ましい。
これらの中でも、R1がアルキル基の化合物が好ましく、より好ましくはメチル基及びエチル基等の低級アルキル基である。
【0015】
2において、アルキル基としては、炭素数1〜8個のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及び2−エチルヘキシル基等が挙げられる。アルキル基としては、置換基を有しても良く、当該置換基としては、アルコキシシリル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数2〜6個のアルケニル基が好ましく、具体的には、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基及び3−ブテニル基等が挙げられる。
脂環式基としては、シクロヘキシル基等が挙げられる。
芳香環を有する基としては、フェニル基、ビフェニル基、ベンジル基及びナフチル基等が挙げられる。これらの基は置換基を有してもよく、置換基としては、メチル基、エチル基及びt−ブチル基等のアルキル基;トリフルオロメチル基等のハロゲン置換アルキル基;メトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基;並びにフッ素原子及び臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基或いはブチルカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基或いはブトキシカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基が挙げられる。N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基或いはペンチルカルバモイル基等の炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基等が挙げられる。
【0016】
2)化合物1の好ましい例
化合物1としては、式(1)において、R1がアルキル基で、R2が芳香族基又は水素原子である化合物が、接着力に優れるという理由で好ましい。
【0017】
3)化合物1の具体例
化合物1としては、前記した通り、式(1)において、R1は、アルキル基が好ましく、より好ましくはエチル基を有するものである。当該化合物の好ましい具体例を以下に示す
【0018】
2がアルキル基である化合物の例としては、下記化合物が挙げられる。
【0019】
【化2】

【0020】
2がアルコキシシリル基を有するアルキル基である化合物の例としては、下記化合物が挙げられる。
【0021】
【化3】

【0022】
2がアルケニル基である化合物の例としては、下記化合物が挙げられる。
【0023】
【化4】

【0024】
2が芳香族基である化合物の例としては、下記化合物が挙げられる。
【0025】
【化5】

【0026】
2が脂環式基である化合物の例としては、下記化合物が挙げられる。
【0027】
【化6】

【0028】
2が水素原子である化合物の例としては、下記化合物が挙げられる。
【0029】
【化7】

【0030】
1−2.2個のオキセタニル基を有する化合物
1)一般式(2)で表される化合物
2個のオキセタニル基を有する化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物〔以下「化合物2」という〕等を挙げることができる。
【0031】
【化8】

【0032】
式(2)において、R1は、前記一般式(1)と同様の基であり、R3は、2価の基又は酸素原子を表す。
3の2価の基としては、−X−r3−Xで表される基が好ましい。Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、r3は、R3以外の2価の基である。
【0033】
3の2価の基としては、アルキレン基、ポリ(オキシアルキレン)基、ポリ(チオアルキレン)基、不飽和炭化水素基、置換基を含むアルキレン基、2価の脂環式基、2価の芳香族基、シリコーン骨格を有する2価の基及びカルボニル基等が挙げられる。
【0034】
2価の飽和炭化水素基としては、線状でも分枝状でも良く、炭素数2〜20のものが好ましい。具体例としては、エチレン基及び下記の炭化水素基等が挙げられる。2価の飽和炭化水素基としては、アルコキシ基を有しても良い。
【0035】
【化9】

【0036】
ポリ(オキシアルキレン)基としては、線状でも分枝状でも良く、具体例としては、ポリ(オキシエチレン)基及びポリ(オキシプロピレン)基等を挙げることができる。
2価の不飽和炭化水素基としては、線状でも分枝状でも良く、プロペニレン基、メチルプロペニレン基及びブテニレン基等が挙げられる。
置換基を含むアルキレン基としては、カルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基及びカルバモイル基を含むアルキレン基等が挙げられる。
【0037】
2価の脂環式基としては、例えば下記の基が挙げられる。
【0038】
【化10】

【0039】
2価の芳香族基としては、フェニレン基、2価のビフェニル基、2価のナフチル基、ジフェニルスルフィド基、下記式(3)及び式(4)で表される基が挙げられる。
【0040】
【化11】

【0041】
式(3)において、R4は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基である。
アルキル基としては、炭素数1〜4個のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜4個のものが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素原子及び臭素原子等が挙げられる。
【0042】
【化12】

【0043】
式(4)において、R5は、酸素原子、硫黄原子、NH、SO、SO2、C(CF32、メチレン基又はC(CH32である。
シリコーン骨格を有する2価の基としては、下記式(5)で表される基が挙げられる。
【0044】
【化13】

【0045】
式(5)において、R6はアルキル基又はアリール基を表し、R7は、アルキル基、アリール基又は下記式(6)で示される基を表す。nは、0〜2000の整数である。
【0046】
【化14】

【0047】
式(6)において、R8はアルキル基又はアリール基を表し、mは、0〜100の整数である。
【0048】
6、R7及びR8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基が好ましい。
【0049】
2)化合物2の好ましい例
化合物2としては、式(2)において、R1がアルキル基でR3が酸素原子の化合物が好ましく、又はR1がアルキル基でR3が−X−r3−Xで表される基で、かつ、Xが酸素原子、r3が2価の脂環式基又は2価の芳香族基である化合物が好ましい。
【0050】
これらの中で最も好ましい化合物は、低粘度であるため、下記化合物(2-1-1)及び(2-1-2)が挙げられる。
(2-1-1):R1;アルキル基、R3;酸素原子
(2-1-2):R1;アルキル基、R3;−X−r3−X、かつ、X;酸素原子、r3;フェニレン基又は式(3)においてR4が水素原子である基
2番目に好ましい化合物としては、下記化合物(2-2)が挙げられる。
(2-2):R1;アルキル基、R3;−X−r3−X、かつ、X;酸素原子、r3;2価のビフェニル基又は式(4)においてR5がメチレン基若しくはC(CH32
3番目に好ましい化合物としては、下記化合物(2-3)が挙げられる。
(2-3):R1;アルキル基、R3;−X−r3−Xで、かつ、X;酸素原子、r3;2価の脂環式基
【0051】
3)化合物2の具体例
化合物2としては、式(2)において、R1は、アルキル基が好ましく、より好ましくはエチル基を有するものである。
当該化合物の好ましい具体例を以下に示す
【0052】
まず、R3が酸素原子である化合物の例としては、下記化合物が挙げられる〔前記(2-1-1)に相当〕。
【0053】
【化15】

【0054】
次に、R3が−X−r3−Xで表される基である化合物を例示する。
この基において、Xが酸素原子の例について説明する。
【0055】
3がアルコキシ基を有するアルキレン基である化合物の例としては、下記化合物が挙げられる。
【0056】
【化16】

【0057】
3がポリ(チオアルキレン)基である化合物の例としては、下記化合物が挙げられる。
【0058】
【化17】

【0059】
3が2価の脂環式基である化合物の例としては、下記化合物〔前記(2-3)に相当〕が挙げられる。
【0060】
【化18】

【0061】
3が芳香族基の化合物の例としては、下記化合物が挙げられる。
まず、r3がフェニレン基である化合物の例としては、下記化合物〔前記(2-1-2)に相当〕が挙げられる。
【0062】
【化19】

【0063】
3が2価のビフェニル基である化合物の例としては、下記化合物〔前記(2-2)に相当〕が挙げられる。
【0064】
【化20】

【0065】
3がアルキル基に2個の芳香族基を有する2価の基である化合物の例としては、下記化合物〔前記(2-2)に相当〕が挙げられる。
【0066】
【化21】

【0067】
3が2価のナフチル基である化合物の例としては、下記化合物が挙げられる。
【0068】
【化22】

【0069】
3が式(3)で表される基である化合物の例としては、下記化合物〔前記(2-1-2)に相当〕が挙げられる。
【0070】
【化23】

【0071】
Xが硫黄原子の例について説明する。
3がジフェニルスルフィド基の化合物の例としては、下記化合物が挙げられる。
【0072】
【化24】

【0073】
1−3.3個以上のオキセタニル基を有する化合物
3個以上のオキセタニル基を有する化合物としては、下記一般式(10)で表される化合物等を挙げることができる。
【0074】
【化25】

【0075】
式(10)において、R1は、前記一般式(1)におけるものと同様の基である。
9は、炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は分枝状ポリシロキシ基を表す。jは、3又は4である。
【0076】
炭素数1〜12の分枝状アルキレン基としては、例えば下記式(11)〜(13)で示される基等が挙げられる。
【0077】
【化26】

【0078】
式(11)において、R10はメチル基、エチル基又はプロピル基等の低級アルキル基を表す。
【0079】
【化27】

【0080】
分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基としては、前記式(11)〜(13)において、ポリ(アルキレンオキシ)基を含む基等が挙げられる。アルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基等が挙げられる。アルキレンオキシ基の繰り返し数としては、1〜10が挙げられる。
【0081】
分枝状ポリシロキシ基としては、例えば下記式(14)で示される基等が挙げられる。
【0082】
【化28】

【0083】
式(10)において、R1は、アルキル基が好ましく、より好ましくはエチル基を有するものである。
当該化合物の好ましい具体例を以下に示す。
【0084】
9が炭素数1〜12の分枝状アルキレン基である化合物の例としては、下記化合物が挙げられる。
【0085】
【化29】

【0086】
又、前記以外にも、下記式で表される化合物を挙げることもできる。
【0087】
【化30】

【0088】
尚、上記式において、R1は前記一般式(1)と同様の基であり、Rは水素原子又はメチル基を意味する。nは1〜10の整数である。
【0089】
【化31】

【0090】
1−4.総括
本発明では、(A)成分として、2個以上のオキセタニル基を有する化合物を含有することが、高温でのせん断接着力を高くすることができ好ましい。
これらの中でも、2個のオキセタニル基を有する化合物及び3個のオキセタニル基を有する化合物がより好ましく、特に好ましくは2個のオキセタニル基を有する化合物である。
【0091】
又、(A)成分として、分子量が100〜1,000の化合物を含有することが、組成物を低粘度にする点で好ましい。
(A)成分の特に好ましい例としては、1,4−ビス{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、及び3−エチル−3{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}オキセタンが挙げられる。
【0092】
(A)成分の割合は特に限定するものではないが、硬化性と剥離接着力に優れる点で、組成物中に10〜90重量%とすることが好ましく、より好ましくは20〜80重量%である。
【0093】
2.(B)成分
(B)成分は、エポキシ基を有する化合物である。
本発明では、(B)成分として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を含有することが、高温でのせん断接着力が高いものとなるため好ましい。又、(B)成分のエポキシ基としては、グリシジルエーテルが、接着力に優れる点で好ましい。
【0094】
(B)成分の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、O−フタル酸ジグリシジルエステル、ポリブタジエンの内部エポキシ化物、ポリブタジエンの両末端グリシジルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体の内部エポキシ化物、スチレン−イソプレン共重合体の内部エポキシ化物、末端カルボン酸ポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂の付加反応物、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサン−カルボキシレート、1,2,8,9−ジエポキシリモネン等が挙げられる。
【0095】
(B)成分のより好ましい例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリジルエーテル等が挙げられる。これらの中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、硬化性と接着性の点で特に好ましい。
【0096】
(B)成分の割合は特に限定するものではないが、硬化性に優れる点で、組成物中に1〜80重量%とすることが好ましく、より好ましくは5〜50重量%である。
【0097】
3.(C)成分
(C)成分は、リン酸基を有するリン酸エステル化合物である。
【0098】
(C)成分としては、組成物への溶解性に優れるため、オルトリン酸の水素が1個の有機基で置換された下記式(1)で表される化合物〔以下(C-1)という〕、又はオルトリン酸の水素2個が有機基で置換された下記式(2)で表される化合物〔以下(C-2)という〕が好ましい。
【0099】
RO−PO−(OH)2 (1)
(RO)2−PO−(OH) (2)
【0100】
式(1)及び(2)において、Rは、アルキル基、アリール基、アラルキル基又は(メタ)アクリロイルオキシアルキル基を意味する。
【0101】
Rにおける、アルキル基、アリール基、アラルキル基及び(メタ)アクリロイルオキシアルキル基の具体例としては、以下の通りである。
アルキル基の例としては、炭素数1〜18のアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基である。
アリール基の例としては、フェニル基等が挙げられる。
アラルキル基の例としては、ベンジル基等が挙げられる。
(メタ)アクリロイルオキシアルキル基の例としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル基及び2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等が挙げられる。
【0102】
(C-1)及び(C-2)としては、Rが(メタ)アクリロイルオキシアルキル基である化合物が、せん断接着力や剥離接着力に優れるため好ましい。
より好ましくは、Rがメタクリロイルオキシアルキル基である化合物である。
【0103】
(C-1)及び(C-2)は、実際には混合物として市販されており、その割合としては(C-1)及び(C-2)の合計量を基準として、(C-1)20〜80モル%及び(C-2)80〜20モル%が好ましい。
【0104】
(C)成分の割合は、接着力及び組成物の保存安定性に優れる点で、組成物中に0.01〜5重量%とすることが好ましく、より好ましくは0.05〜2重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0105】
4.(D)成分
(D)成分は、光カチオン重合開始剤であり、光の照射によってカチオン重合させうる酸を発生する化合物である。光としては紫外線又は可視光が好ましい。
【0106】
具体的な例としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、セレニウム塩、ピリジニウム塩、フェロセニウム塩、ホスホニウム塩、及びチヲピリニウム塩等のオニウム塩が挙げられるが、より好ましくは、芳香族スルホニウム塩及び芳香族ヨードニウム塩である。又、アニオン成分としては、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、及びB(C654-などが挙げられるが、特に好ましくはPF6-、及びB(C654-である。
【0107】
市販の芳香族スルホニウム塩としては、ダウ・ケミカル(株)製のサイラキュアーUVI−6992及びUVI−6974や、旭電化工業(株)製のアデカオプトマーSP−150、SP−152、SP−170、及びSP−172、サンアプロ(株)製のCPI−100P及びCPI−101A等が挙げられる。
【0108】
市販の芳香族ヨードニウム塩としては、GE東芝シリコーン社製UV−9380C、ローディア社製PHOTOINITIATOR2074、和光純薬工業(株)製WPI−116及びWPI−113、日本曹達(株)製CI−5102等が挙げられる。
【0109】
(D)成分の割合は、光源の種類や照射量に応じて適宜調整できるが、硬化性及び硬化物の強靭性に優れる点で、組成物中に0.1〜15重量%とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。
【0110】
5.(E)成分
(E)成分は、(C)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物である。
(E)成分としては、エチレン性不飽和基を有する化合物であれば種々の化合物を使用することができる。
具体的には、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、N−ビニルピロリドン及びカプロラクタム等のビニル化合物及びビニルエーテル等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0111】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、多官能(メタ)アクリレートという〕が挙げられる。
1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する化合物;エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアリールアルキル(メタ)アクリレート:フェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、p−クミルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート等のフェノール系化合物のアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイルオキシアルキルヘキサヒドロフタルイミド等のイミド(メタ)アクリレート;並びに(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0112】
多官能(メタ)アクリレートとしては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド3モル付加物のトリ又はジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド3モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド3モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートからなるウレタン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートからなるウレタン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートからなるウレタン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートからなるウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド3モル付加物のジ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートからなるウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド3モル付加物のジ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートからなるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0113】
これらの中でも、組成物が硬化性、室温での剥離接着力及び高温でのせん断接着力に優れるものとなる点で、多官能(メタ)アクリレートが好ましく、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましく、1分子中に1個以上の環構造と2個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量100〜1,000の化合物がさらに好ましい。
さらに、多官能(メタ)アクリレートの中でも、組成物が硬化性、室温での剥離接着力、及び高温でのせん断接着力に特に優れるものとなる点で、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0114】
(E)成分の割合は、室温での剥離接着力と高温でのせん断接着力に優れる点で、組成物中に10〜70重量%であることが好ましい。
【0115】
6.(F)成分
(F)成分は、光ラジカル重合開始剤であり、光照射でラジカルを発生する化合物であれば種々の化合物が使用できる。光としては紫外線又は可視光が好ましい。
【0116】
(F)成分は、光カチオン重合開始剤である(D)成分に光照射されて発生するラジカルが、ラジカル重合性成分を十分な速度で重合させる場合には配合しなくてもよいが、ラジカル重合性成分の硬化性を高めたい場合には配合することが好ましい。又、ラジカル重合とカチオン重合に時間差を与えたい場合には、(D)成分とは吸収波長の異なる(F)成分を配合することが好ましい。例えば、接着力の向上などを目的として、ビスアシルホスフィンオキサイドのような可視光で分解する(F)成分と、紫外線で分解する(D)成分を配合し、可視光照射後に紫外線照射することによって、ラジカル重合完了後にカチオン硬化させることも可能である。
【0117】
(F)成分の具体例としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、オリゴ〔2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノン〕及び2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル〕−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン及び4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルファイド等のベンゾフェノン系化合物;メチルベンゾイルホルメート、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−〔2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ〕−エチルエステル及びオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−〔2−ヒドロキシ−エトキシ〕−エチルエステル等のα−ケトエステル系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;チタノセン系化合物;1−(4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフィニル)プロパン−1−オン等のアセトフェノン/ベンゾフェノンハイブリッド系光開始剤;1,2−オクタンジオン、1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム))等のオキシムエステル系光開始剤;並びにカンファーキノン等が挙げられる。
【0118】
(F)成分の割合は、硬化物の耐熱性等に優れる点で、組成物中に10重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0119】
7.その他の成分
本発明の組成物には、必要に応じて後記するその他の成分を配合することもできる。
【0120】
○ラジカル重合禁止剤
本発明の組成物には、組成物の貯蔵安定性を十分なものにするため、ラジカル重合禁止剤を添加することが好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、フェノチアジン、アルミニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、アンモニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン等が挙げられる。
【0121】
○酸化防止剤
本発明の組成物には、硬化物の経時安定性を高める目的で、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ラジカル重合禁止剤としての作用も含めて、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールや、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のヒンダードフェノール系酸化防止剤が特に好ましい。さらに、イオウ系二次酸化防止剤やリン系二次酸化防止剤を併用することもできる。
【0122】
○シランカップリング剤
本発明の組成物には、無機物に対する接着力を高める目的で、アルコキシシリル基と有機官能基を有する所謂シランカップリング剤を添加することができる。有機官能基としては、エポキシ基、オキセタニル基、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0123】
○ポリマー
本発明の組成物には、接着力を向上させるなどの目的で、ポリマーを配合することができる。本発明の組成物に配合するポリマーとしては、高温でのせん断接着力に優れる点で、Tgが80℃以上のポリマーが好ましい。好ましい具体的としては、メチルメタクリレート系のポリマーが挙げられる。
【0124】
○フィラー
本発明の組成物には、硬化収縮率を低減させたり、接着力を向上させるなどの目的で、フィラーを配合することができる。フィラーとしては、シリカ、アルミナ、タルク、粘土鉱物等が挙げられる。
【0125】
○イオン交換体
本発明の組成物には、電子・電気材料を接着した場合の腐食の防止策として、イオン交換体を配合することができる。好ましいイオン交換体としては、東亞合成(株)製の商品名であるIXE−530、IXE−550、IXE−633、IXE−700F等が挙げられる。
【0126】
上記の他にも、必要に応じて、HALS等の光安定剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、有機溶剤等を適宜添加することもできる。
【0127】
6.光硬化型接着剤組成物
本発明は、前記(A)〜(E)を必須として含有する組成物であって、その硬化物の85℃1Hzにおける貯蔵弾性率(以下、単に「85℃E’」という)が100MPa以上である光硬化型接着剤組成物である。
本発明では、硬化物の85℃E’が100MPa以上であることにより、高温でのせん断接着力に優れるという効果を奏する。硬化物の85℃E’としては、200MPa以上が好ましく、より好ましくは200〜3,000MPa、さらに好ましくは300〜1000MPaである。
【0128】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、常法に従い、必須成分又は/及び必要に応じてその他の成分を攪拌又は混合することにより得ることができる。
【0129】
7.使用方法
本発明の組成物は、種々の基材の接着に使用することができる。使用方法としては、常法に従えば良く、組成物を基材に塗布し、これと他の基材と貼り合せた後、光を照射する方法等が挙げられる。
【0130】
光としては、可視光線及び紫外線が挙げられ、硬化性に優れるため紫外線が好ましい。
好ましい光源の具体例としては、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波励起無電極水銀ランプ、キセノンランプ及び紫外線LED等が挙げられる。
【0131】
基材としては、プラスチック、ガラス、セラミックス及び金属等が挙げられる。
プラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及び環状ポリオレフィン(ノルボルネン及びテトラシクロドデセンや、それらの誘導体等の環状オレフィンから得られる樹脂)等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン及び塩素化ポリプロピレン等の塩素系プラスチック;ポリスチレン;セルロース系樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂);ポリメチルメタクリレート;ポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリビニルアルコール;及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。使用用途に応じて、表面に金属蒸着等の処理がなされているものも使用できる。
セラミックスとしては、シリコン、アルミニウム、亜鉛、インジウム、スズ、チタン、バリウム、ジルコニウム、セリウム、イットリウム等各種金属の酸化物、複合酸化物、窒化物等が挙げられる。
金属としては、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス等を挙げることができる。
【0132】
基材に対する塗工方法としては、従来知られている方法に従えばよく、ナチュラルコーター、ナイフベルトコーター、フローティングナイフ、ナイフオーバーロール、ナイフオンブランケット、スプレー、ディップ、キスロール、スクイーズロール、リバースロール、エアブレード、カーテンフローコーター及びグラビアコーター等の方法が挙げられる。
又、本発明の組成物の塗布厚さは、使用する基材及び用途に応じて選択すればよいが、好ましくは0.1〜1,000μmであり、より好ましくは1〜50μmである。
【0133】
本発明の組成物は、積層体の製造に好ましく使用でき、ラミネートの製造において通常行われている方法に従えばよい。
例えば、組成物を第1の基材に塗工し、これに第2の基材を貼り合わせた後、いずれかの基材の表面から活性エネルギー線の照射する方法等が挙げられる。この場合、第1の基材又は第2の基材の少なくとも一方を透明性のものを使用する。
【0134】
プラスチックフィルム等の可撓性を有する基材(以下、「可撓性基材」という)同士の接着においては、平面状態に限らず、曲面状態で接着を行うこともできる。即ち、可撓性基材を、凹状態又は凸状態に折り曲げ、この状態で本発明の組成物を塗工後、もう一方の可撓性基材を貼り合せ、活性エネルギー線を照射して接着する方法が挙げられる。
別の方法としては、可撓性基材を平面状態で本発明の組成物を塗工し、もう一方の可撓性基材を貼り合わせ、凹状態又は凸状態に折り曲げ、活性エネルギー線を照射して接着する方法が挙げられる。
平面状態で組成物を塗工する方法としては、前記した方法に従えば良い。曲面状態で組成物を塗工する方法としては、スプレーコーター、バーコーター及びマイクログラビアコーター等を使用する方法が挙げられる。
【0135】
この様にして得られた積層体は、自動車や建築物などの構造材料や、電子材料及び光学材料等の種々の使用できる。
【実施例】
【0136】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0137】
●実施例及び比較例における略号
実施例及び比較例における略号の意味を、以下に記載する。
【0138】
(A)成分
・XDO:1,4−ビス{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}ベンゼンを主成分とするキシリレン骨格を有する二官能オキセタン化合物、東亞合成(株)製アロンオキセタンOXT−121。
・DOX:3−エチル−3{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}オキセタン、東亞合成(株)製アロンオキセタンOXT−221。
【0139】
(B)成分
・jER−828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製jER−828。
【0140】
(C)成分
・2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、共栄社化学(株)製ライトエステルP−2M。
【0141】
(D)成分
・UVI−6992:トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートを主成分とする光カチオン重合開始剤の50%プロピレンカーボネート溶液、ダウ・ケミカル(株)製UVI−6992。
【0142】
(E)成分
・M−203S:トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−203S。
【0143】
(F)成分
・Irg184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、チバ(株)製イルガキュア184。
【0144】
<実施例1及び同2、比較例1〜5>
●接着剤組成物の調製
表1及び表2に示す成分を、はじめに(C)及び(D)成分以外を攪拌混合して溶解した後、(C)成分を添加・溶解し、最後に(D)成分を添加・溶解して光硬化型接着剤組成物を調製した。
尚、表中の配合組成の数値は、重量部数を表す。又、UVI−6992は(D)成分を50%含有する溶液であるため、UVI−6992の実際の量は、(D)成分とその他を合わせた5.5部である。
【0145】
【表1】

【0146】
【表2】

【0147】
●接着剤組成物の粘度測定
東機産業(株)製のE型粘度計により、25℃における粘度(mPa・s)を測定した。
【0148】
●硬化物の85℃E’の測定
日本ゼオン(株)製のシクロオレフィンポリマー(ZEONOR−1420、厚さ0.20mm)フィルムの上に厚さ50μmのPETフィルムの型枠を置き、枠内に接着剤組成物を入れ、前記したZEONORフィルムをラミネートして紫外線照射し、厚さ50μmの硬化物を作成した。紫外線照射は、フュージョン(株)製の無電極ランプ(Hバルブ)を使用し、ランプ高さは集光ミラーの焦点距離(10cm)とし、コンベア速度10m/分で2パス照射した(EIT社製のUV POWER PUCKのUV−A領域で、1J/cm2)。
得られた接着物を23℃50%R.H.の条件で1日放置した後、長さ45mm、幅9mmの短冊状に切り出し、SII社製のDMS−6100により、周波数1Hz、温度85℃におけるE’を測定した。
【0149】
●剥離接着力の評価
表1及び表2記載の組成物を、アルミ板〔(株)エンジニアリングテストサービス製、A1050P、アロジン1000処理〕にバーコータで5ミクロンに塗布し、コロナ処理延伸ポリプロピレンフィルム〔サントックス製、PA−21、40ミクロン厚〕をラミネートした後、紫外線照射した。
紫外線照射は、フュージョン(株)製の無電極ランプ(Hバルブ)を使用し、ランプ高さは集光ミラーの焦点距離(10cm)とし、コンベア速度10m/分で2パス照射した。得られた接着物を23℃50%R.H.の条件で1日放置した後、ポリプロピレンフィルムを1インチ幅の短冊状に切り出し、インストロン(株)製インストロン5560により、23℃50%R.H.の環境下、引張速度200mm/分で180°剥離試験を行った。
【0150】
●硬化性の評価
剥離接着力評価用の試験片のポリプロピレンフィルムの端の一部を、紫外線照射から10分後に剥離し、硬化しているかどうかを指触で確認した。硬化しているものを○、未硬化のものを×と評価した。
【0151】
●85℃せん断接着力の評価
(株)エンジニアリングテストサービス製ポリプロピレン板(厚さ1mm、1インチ幅)をコロナ処理し、これと1インチ幅のアルミ板とで、表1及び表2の組成物を挟んだ。挟んだ際の重ね合わせ長さは0.5インチとした。次いでポリプロピレン板の側より、剥離接着力評価用の試験片と同じ条件で紫外線照射した。
得られた接着物を23℃50%R.H.の条件で1日放置した後、加熱炉付きの引張試験機((株)東洋精機製作所製、ストログラフV20−C)により、85℃でのせん断接着力を、引張速度10mm/分で測定した。
【0152】
●評価結果
表3及び表4に、硬化前の接着剤組成物の粘度、硬化性、23℃での剥離接着力(N/インチ)、及び85℃でのせん断接着力(N/0.5平方インチ)を記載した。
尚、23℃での剥離接着力については、2.2N/インチ以上でポリプロピレンフィルムが破断したため、この場合は2.2N<と記載した。又、85℃でのせん断接着力については、260N以上でポリプロピレン板が伸びたため、この場合は260N<と記載した。
【0153】
【表3】

【0154】
【表4】

【0155】
実施例1及び同2の組成物は、低粘度で硬化性に優れ、室温での剥離接着力と高温でのせん断接着力のいずれも材料破壊であり、いずれの接着力にも優れるものであった。
一方、(C)成分を含まない比較例1及び同2の組成物は、剥離接着力が不十分なものであった。又、(E)成分を含まない比較例3の組成物は、85℃E’が100MPaに満たないものであり、剥離接着力とせん断接着力が、いずれも実施例の組成物より不十分なものであった。(A)成分を含まない比較例4の組成物は、剥離接着力が不十分なものであった。(A)、(B)及び(D)成分を含まない比較例5の組成物は、剥離接着力及びせん断接着力が不十分なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、被着体の少なくとも一方が透明な場合の接着用途に好適であり、低粘度、速硬化性、室温での剥離接着力、及び高温でのせん断接着力を必要とされる接着用途に対して、特に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタニル基を有する化合物(A)、エポキシ基を有する化合物(B)、リン酸基を有するリン酸エステル化合物(C)、光カチオン重合開始剤(D)及び(C)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物(E)を含有する組成物であって、その硬化物の85℃1Hzにおける貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上である光硬化型接着剤組成物。
【請求項2】
組成物中に、前記(A)〜(E)成分を以下の割合で含む請求項1記載の光硬化型接着剤組成物。
(A)成分:10〜90重量%
(B)成分:1〜80重量%
(C)成分:0.01〜5重量%
(D)成分:0.1〜15重量%
(E)成分:10〜70重量%
【請求項3】
さらに光ラジカル重合開始剤(F)を含有する請求項1又は請求項2に記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
組成物中に、前記(F)成分を10重量%以下の割合で含有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項5】
(C)成分が、1分子中にリン酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項6】
(A)成分が、1分子中に2個以上のオキセタニル基を有する化合物を含む請求項1〜請求項5のいずれかに記載の光硬化型接着剤組成物。

【公開番号】特開2010−275545(P2010−275545A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104142(P2010−104142)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】