説明

光硬化性コーティング組成物、オーバープリント及びその製造方法

【課題】表面平滑性に優れる光硬化性コーティング組成物、並びに、前記光硬化性コーティング組成物を使用して、表面平滑性及び非タック性に優れたオーバープリント及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマー、(B)光重合開始剤、及び、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物を含有することを特徴とする光硬化性コーティング組成物、並びに、前記光硬化性コーティング組成物を使用したオーバープリント及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性コーティング組成物、オーバープリント及びその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、電子線、紫外線等の活性放射線の照射により硬化可能な光硬化性コーティング組成物に関する。特に、平版、凸版、凹版、スクリーン印刷、インクジェット、電子写真等の方法でインク及び/又はトナーを印刷基材(受像基材)上に配置して作成した画像に対してコーティングを行うための光硬化性コーティング組成物に関する。さらに詳しくは、電子写真法により印刷されたトナーベースの印刷物をコーティングするために特に好適に用いることができる光硬化性オーバープリント組成物(overprint compositions)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線硬化型の印刷用インキ、塗料、コーティングに利用できる、活性放射線硬化型組成物が多数開発され、現在それらの普及が図られている。しかし、硬化性、表面平滑性、強度、保存安定性等の全てにおいて満足する光硬化性組成物を得ることは難しい現状にある。
特に、電子写真法のようなトナーベースの画像は、画像表面にフェザーオイル層が存在する場合には、所望の性能を得ることが一層難しい。
電子写真法のような、トナーベースの画像を発生させる通常の方法においては、潜像保持体表面、例えば感光体(photoreceptor)に均一に帯電させることによって、静電荷を潜像保持体表面に形成させる。次いで、その均一帯電させた領域を、原稿の画像に対応する活性化照射のパターンにより選択的に電荷を逃がす。その表面に残る潜像電荷パターンは、照射に暴露されなかった領域に対応する。次いで、その感光体を、トナーを含む1つ又は複数の現像ハウジングに通すことにより、トナーが、静電引力によって電荷パターンで付着するので、その潜像電荷パターンが可視化される。次いでその現像された画像を、画像形成表面に定着させるか、又は、印刷基材、例えば紙に転写させ、適切な定着技術によりそれに定着させて、電子写真印刷物、すなわちトナーベースの印刷物が得られる。
【0003】
印刷物を保護するための公知の方法としては、印刷物にオーバープリントコーティングを施すことが提案されている。例えば、特許文献1及び2には、電子写真法のような、トナーベースの画像の上に、透明トナーを転写した後に定着を行い、表面を被覆する方法が提案されている。
また、特許文献3には、紫外線などによって硬化させることが可能な液膜コーティングを施し、光によってコーティング成分を重合(架橋)させることにより、オーバープリントコーティングを施す方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−70647号公報
【特許文献2】特開2003−241414号公報
【特許文献3】特開昭61−210365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、表面平滑性に優れる光硬化性コーティング組成物、並びに、前記光硬化性コーティング組成物を使用して、表面平滑性及び非タック性に優れたオーバープリント及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記に記載の<1>、<6>又は<7>により達成された。好ましい実施態様である<2>〜<5>とともに以下に記す。
<1> (A)環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマー、(B)光重合開始剤、及び、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物を含有することを特徴とする光硬化性コーティング組成物、
<2> 前記環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーが、環状炭化水素基を有するモノマー単位、及び、下記式(1)で表されるモノマー単位を少なくとも有する上記<1>に記載の光硬化性コーティング組成物、
【0007】
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の一価炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数6〜10のアリーロキシ基を表し、R3は水素原子又は一価の有機基を表し、mは1〜6の整数を表し、nは2〜1,000の整数を表す。)
【0008】
<3> 可視域に実質的に吸収を有しない上記<1>又は<2>に記載の光硬化性コーティング組成物、
<4> オーバープリント用である上記<1>〜<3>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物、
<5> 電子写真印刷物のオーバープリント用である上記<1>〜<4>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物、
<6> 電子写真印刷物上に上記<1>〜<5>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有するオーバープリント、
<7> 印刷基材上に電子写真印刷して電子写真印刷物を得る工程、該電子写真印刷物上に上記<1>〜<5>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、該コーティング組成物を光硬化する工程、を含むオーバープリントの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面平滑性に優れる光硬化性コーティング組成物、並びに、前記光硬化性コーティング組成物を使用して、表面平滑性及び非タック性に優れたオーバープリント層を有するオーバープリント及びその製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の光硬化性コーティング組成物(以下、単に「コーティング組成物」ともいう。)は、(A)環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマー、(B)光重合開始剤、及び、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物を含有することを特徴とする。
本発明のオーバープリントは、電子写真印刷物上に上記の光硬化性コーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有する。
本発明のオーバープリントの製造方法は、印刷基材上に電子写真印刷して電子写真印刷物を得る工程、該電子写真印刷物上に上記の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、該コーティング組成物を光硬化する工程、を含む。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
(光硬化性コーティング組成物)
本発明の光硬化性コーティング組成物は、(A)環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマー、(B)光重合開始剤、及び、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物を含有することを特徴とする。
本発明の光硬化性コーティング組成物は、可視域に実質的に吸収を有しないことが好ましい。「可視域に実質的に吸収を有しない」とは、400〜700nmの可視域に吸収を有しないか、又は、光硬化性コーティング組成物として支障のない程度の吸収しか可視域に吸収を有しないことを意味する。具体的には、コーティング組成物の5μm光路長の透過率が、400〜700nmの波長範囲において、70%以上、好ましくは80%以上であることを意味する。
本発明の光硬化性コーティング組成物は、オーバープリント用として好適に使用することができ、電子写真印刷物のオーバープリント用として特に好適に使用することができる。
本発明の光硬化性コーティング組成物は、画像部がトナー分の厚みを有する電子写真印刷物に対してオーバープリント層を形成する場合においても、非タック性及び表面平滑性に優れ、艶や光沢のあるオーバープリントを与え、視覚的に従来からの銀塩写真プリントに近い印象を与えることができる。
また、本発明の光硬化性コーティング組成物は、画像表面にフェザーオイル層が存在するトナー画像であっても、非タック性と表面平滑性に優れ、艶や光沢があり、反りの少ない柔軟性に富む画像印刷物を与え、視覚的に銀塩写真プリントに近いオーバープリントを得ることができる。
【0012】
(A)環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマー
本発明の光硬化性コーティング組成物は、環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーを少なくとも含有する。
本発明に用いることができる環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、環状炭化水素基を1つ以上有し、かつ、ケイ素原子を含有するポリマーであり、上記以外には特に制限はない。
【0013】
環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーにおける環状炭化水素基は、炭化水素環(脂環、芳香環、縮合環、橋かけ環等)から1以上の水素原子を除いた基であればよく、一価の基であっても、二価以上の基であってもよい。
また、前記環状炭化水素基は、導入可能な炭素に置換基を有していてもよい。
導入することができる置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アミノ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、ニトロ基等が例示できる。
【0014】
前記環状炭化水素基としては、脂環炭化水素基及び芳香環炭化水素基が好ましく例示でき、脂環炭化水素基がより好ましく例示できる。
前記環状炭化水素基を構成する環は、3〜7員環であることが好ましく、4〜7員環であることがより好ましく、5又は6員環であることが最も好ましい。
前記脂環炭化水素基は、二重結合を含んでいてもよい。
前記脂環炭化水素基を構成する環は、単環であっても、複数の環が縮環した縮合環であっても、橋かけ環であってもよいが、縮合環又は橋かけ環であることが好ましく、橋かけ環であることがより好ましい。
また、橋かけ環の中でも、ビシクロ環又はトリシクロ環がより好ましく、さらに環の骨格内に二重結合を有するものが特に好ましい。
なお、本発明におけるビシクロ環又はトリシクロ環とは、鎖式構造まで開くのに必要な環原子間結合の切断の数が3回の場合をトリシクロ環、2回の場合をビシクロ環といい、そのような環構造をそれぞれ、トリシクロ環、ビシクロ環という。
前記芳香環炭化水素基を構成する環は、単環であっても、複数の環が縮環した縮合環であってもよい。
また、前記環状炭化水素基を構成する環は、芳香環と脂環とが縮合した環であってもよい。
【0015】
前記環状炭化水素基を構成する環を形成する原子には、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子が含まれていてもよいが、炭素原子、又は、酸素原子及び炭素原子からなる環が好ましく、炭素原子からなる環がより好ましい。
前記脂環炭化水素基を構成する環を形成する炭素原子数は、6〜18であることが好ましく、7〜12であることがより好ましい。
前記脂環炭化水素基を構成する環には、導入可能な場合には置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜4程度の比較的短鎖のアルキル基が好ましく挙げられ、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0016】
前記環状炭化水素基を構成する環としては、以下に示す(R−1)〜(R−8)の構造であることが好ましい。なお、本発明では、化学式において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
【0017】
【化2】

【0018】
これらの中でも、(R−3)、(R−5)、(R−7)又は(R−8)が特に好ましい。
【0019】
環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーにおける環状炭化水素基は、前記ポリマー中の側鎖に有することが好ましく、前記ポリマー中の側鎖の末端に有することがより好ましい。
環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、環状炭化水素基を1種のみ有していても、2種以上有していてもよい。
また、環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、下記に示す式(A)で表されるケイ素原子を含む基を少なくとも有することが好ましい。
【0021】
【化3】

(式(A)中、R及びR’はそれぞれ独立に、水素原子、一価炭化水素基、アルコキシ基又はアリーロキシ基を表し、pは1以上の整数を表す。)
【0022】
式(A)におけるR及びR’はそれぞれ独立に、水素原子、一価炭化水素基、アルコキシ基又はアリーロキシ基を表し、水素原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は、炭素数6〜20のアリーロキシ基であることが好ましく、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であることがより好ましく、炭素数1〜20のアルキル基であることがさらに好ましい。
前記一価炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基等が例示できる。
また、前記アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。前記アルキル基は、分岐を有していても、環を形成していてもよい。
また、前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることがさらに好ましい。前記アルコキシ基のアルキル部分は、分岐を有していても、環を形成していてもよい。
また、前記アリーロキシ基としては、炭素数6〜20のアリーロキシ基であることが好ましく、炭素数6〜10のアリーロキシ基であることがより好ましく、フェノキシ基であることがさらに好ましい。
式(A)におけるpは1以上の整数を表し、1以上2,000以下の整数であることが好ましく、1以上1,000以下であることがより好ましい。
また、式(A)で表されるケイ素原子を含む基は、−Si(CH32−O−、又は、ポリジメチルシロキサン基であることが好ましい。
【0023】
また、環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、下記に示す式(B)又は式(C)で表されるケイ素原子を含む基を少なくとも有することがより好ましく、下記に示す式(B)で表されるケイ素原子を含む基を少なくとも有することがさらに好ましい。
【0024】
【化4】

(式(B)及び式(C)中、R及びR’はそれぞれ独立に、水素原子、一価炭化水素基、アルコキシ基又はアリーロキシを表し、RB及びRCは、水素原子又は一価の有機基を表し、pは1以上の整数を表す。)
【0025】
式(B)におけるR、R’及びpは、前記式(A)におけるR、R’及びpと同義であり、好ましい範囲も同様である。
また、式(C)におけるR及びR’は、前記式(A)におけるR及びR’と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(B)及び式(C)におけるRB及びRCはそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表す。
一価の有機基としては、特に制限はなく、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましい。
また、式(B)におけるRBは、水素原子、一価炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、又は、これらの基を1個以上のフッ素原子により置換した基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は、これらの基を1個以上のフッ素原子により置換した基であることがより好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数1〜20のアルキル基を1個以上のフッ素原子により置換した基であることがさらに好ましく、炭素数1〜20のアルキル基であることが特に好ましい。
また、式(C)におけるRCは、水素原子、一価炭化水素基、又は、これらの基を1個以上のフッ素原子により置換した基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は、これらの基を1個以上のフッ素原子により置換した基であることが好ましく、炭素数1〜20のアルキル基であることがより好ましい。
また、前記アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましい。前記アルキル基は、分岐を有していても、環を形成していてもよい。
また、前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることがさらに好ましい。前記アルコキシ基のアルキル部分は、分岐を有していても、環を形成していてもよい。
また、前記アリーロキシ基としては、炭素数6〜20のアリーロキシ基であることが好ましく、炭素数6〜10のアリーロキシ基であることがより好ましく、フェノキシ基であることがさらに好ましい。
また、式(B)で表されるケイ素原子を含む基は、ポリジメチルシロキサン基を含む基であることが好ましく、末端にアルキル基を有するポリジメチルシロキサン基を含む基であることがより好ましい。
また、式(C)で表されるケイ素原子を含む基は、トリアルキルシリルオキシ基であることが好ましく、トリメチルシリルオキシ基であることがより好ましい。
【0026】
本発明に用いることができる環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、付加重合により重合した付加重合系樹脂であることが好ましく、ラジカル重合により重合したラジカル重合系樹脂であることがより好ましい。
また、環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、ケイ素原子を含む基を有するモノマーと、環状炭化水素基を有するモノマーとの共重合体であることが好ましい。
【0027】
環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、環状炭化水素基を有するモノマー単位、及び、下記式(1)で表されるモノマー単位を少なくとも有することが好ましい。
【0028】
【化5】

(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10の一価炭化水素基を表し、R3は水素原子又は一価の有機基を表し、mは1〜6の整数を表し、nは2〜1,000の整数を表す。)
【0029】
式(1)におけるR2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10の一価炭化水素基を表し、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
式(1)におけるR3は水素原子又は一価の有機基を表し、水素原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は、これらの基を1個以上のフッ素原子により置換した基であることが好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数1〜20のアルキル基を1個以上のフッ素原子により置換した基であることがより好ましく、炭素数1〜20のアルキル基であることが特に好ましい。
式(1)におけるmは1〜6の整数を表し、2〜6の整数であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。
式(1)におけるnは2〜1,000の整数を表し、4〜800の整数であることが好ましく、6〜600の整数であることがより好ましい。
nが2以上であると、コーティング組成物の表面エネルギーが大きく低下し、表面平滑性の向上に大きく寄与することができる。また、上記範囲であると、環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーによって優れた表面平滑性が得られる。
また、環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、前記式(1)で表されるような、ケイ素原子を含むモノマー単位を1種単独で有していてもよいし、2種以上有していてもよい。
【0030】
環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーの製造に使用するケイ素原子を有するモノマーとしては、特に制限はないが、ケイ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物及び/又はケイ素原子を有する(メタ)アクリルアミド化合物であることが好ましく、ケイ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましく、下記式(1−1)で表されるモノマーであることがさらに好ましい。
【0031】
【化6】

【0032】
式(1−1)におけるR1、R2、R3、m及びnは、前記式(1)におけるR1、R2、R3、m及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0033】
また、環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、ケイ素原子を含むモノマー単位を、全モノマー単位中、1〜60モル%の範囲で有していることが好ましく、3モル%〜50モル%の範囲で有していることがより好ましく、5〜40モル%の範囲で有していることがさらに好ましい。ケイ素原子を含むモノマー単位の含有量が1モル%以上であると、所望の表面平滑性が得られる。また、ケイ素原子を含むモノマー単位の含有量が60モル%以下であると、環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーの溶解性が十分である。
【0034】
環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、下記式(2)で表される環状炭化水素基を有するモノマー単位を少なくとも有することが好ましい。
【0035】
【化7】

【0036】
式(2)におけるR6は、炭素数1〜4の炭化水素基又は水素原子を表し、メチル基又は水素原子であることが好ましい。
式(2)におけるZは、二価の連結基又は単結合を表し、酸素原子、−CO−、−S−、−NR7−、炭素数1以上のアルキレン基、又は、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましい。
なお、ここでR7は、水素原子又は炭素数1以上のアルキル基を表し、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基及びn−ノニル基などが好ましく挙げられ、メチル基、エチル基及びブチル基がより好ましく挙げられる。
前記アルキレン基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜4であることが特に好ましい。
アルキレン基として具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基及びノニレン基などが好ましく挙げられ、メチレン基、エチレン基、プロピレン基及びブチレン基がより好ましく挙げられる。
また、前記アルキル基、及び、前記アルキレン基は直鎖であっても、分岐を有していてもよい。
前記2以上組み合わせた基としては、メチレン基からなるアルキレン鎖中にエーテル結合(−O−)を有する基が好ましく、アルキレン基の両末端にエーテル結合(−O−)を有する基が特に好ましい。
式(2)におけるLは、環状炭化水素基を表し、前記環状炭化水素基を構成する環が縮合環又は橋かけ環であることが好ましい。
【0037】
環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーの製造に使用する環状炭化水素基を有するモノマーとしては、特に制限はないが、環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物、環状炭化水素基を有する(メタ)アクリルアミド化合物及び/又はスチレン誘導体であることが好ましく、環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
【0038】
環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、前記環状炭化水素基を有するモノマー単位を、1種単独で有していても、2種以上有していてもよく、また、ケイ素原子を含むモノマー単位と同一のモノマー単位、すなわち、環状炭化水素基及びケイ素原子を含むモノマー単位であってもよい。
また、環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、前記式(1−1)で表されるモノマー及び下記式(2−1)で表されるモノマーを少なくとも共重合したポリマーであることが好ましく、前記式(1−1)で表されるモノマー及び下記式(2−1)で表されるモノマーのみを共重合したポリマーであることがより好ましい。
【0039】
【化8】

【0040】
式(2−1)におけるR6、Z及びLは、前記式(2)におけるR6、Z及びLと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0041】
本発明において、好適に用いることのできる環状炭化水素基を有するモノマーの具体例〔例示化合物(B−1)〜(B−31)、(b−1)〜(b−38)、(C−1)、(C−2)、及び、(D−1)〜(D−20)〕を以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。また、各例示化合物において立体異性体が存在する場合は、それらのいずれを用いてもよく、また、立体異性体の混合物を用いてもよい。なお、下記具体例中、Meはメチル基を表す。
【0042】
【化9】

【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
【化12】

【0046】
【化13】

【0047】
【化14】

【0048】
【化15】

【0049】
また、環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、環状炭化水素基を有するモノマー単位の含有量が、全モノマー単位中、20〜99モル%であることが好ましく、30〜97モル%であることがより好ましい。環状炭化水素基を有するモノマー単位の含有量が20モル%以上であると、ポリマーのガラス転移点(Tg)が低下し、表面ベトツキ抑制の性能に優れる。また、99モル%以下であると、ポリマーの表面エネルギーが適度であり、コーティング組成物の表面平滑性が優れる。
【0050】
環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、ケイ素原子を含むモノマー単位、及び、環状炭化水素基を有するモノマー単位以外に、他のモノマー単位を有していてもよい。
他のモノマー単位としては、公知のモノマーより形成されるモノマー単位であればよく、公知のラジカル重合性モノマーより形成されるモノマー単位であることが好ましく、(メタ)アクリレート化合物、及び/又は、(メタ)アクリルアミド化合物より形成されるモノマー単位であることがより好ましい。
【0051】
環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーの製造に用いることができるモノマーとしては、特に限定はないが、ラジカル重合性モノマーであることが好ましく、エチレン性不飽和結合を有するモノマーであることがより好ましい。
ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0052】
具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート等のメタクリル誘導体、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年、大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー社);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知の単官能ラジカル重合性モノマーを用いることができる。
【0053】
また、環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーは、下記式(3)で表されるポリマーであることが好ましい。
【0054】
【化16】

(式(3)中、RSiはケイ素原子を含む基を表し、RCaは環状炭化水素基を含む基を表し、RNはケイ素原子及び環状炭化水素基を含まない有機基を表し、Rx、Ry及びRzはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、xは1〜60を表し、yは20〜99を表し、zは0〜79を表し、また、x+y+z=100である。)
【0055】
式(3)におけるRSiは、ケイ素原子を含む基を表し、式(A)で表されるケイ素原子を含む基を少なくとも有する基であることが好ましく、式(B)又は式(C)で表されるケイ素原子を含む基を少なくとも有する基であることがより好ましい。
式(3)におけるRCaは、環状炭化水素基を含む基を表す。前記環状炭化水素基は、脂環炭化水素基及び芳香環炭化水素基が好ましく、脂環炭化水素基がより好ましく、ビシクロ環又はトリシクロ環から水素電子を1つ除いた基であることがさらに好ましい。
式(3)におけるRNは、ケイ素原子及び環状炭化水素基を含まない有機基を表し、−COORD、又は、−CONHRDであることが好ましい。前記RDは、ケイ素原子及び環状炭化水素基を含まない一価の有機基を表し、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
式(3)におけるおけるx、y及びzは、各モノマー単位のモル比を表し、x+y+z=100とする。
式(3)におけるxは、1〜60を表し、3〜50が好ましく、5〜40がより好ましい。
式(3)におけるyは、20〜99を表し、30〜97が好ましい。
式(3)におけるzは、0〜79を表し、0〜20であることが好ましく、0であることがより好ましい。
式(3)における各モノマー単位はそれぞれ、1種単独で有していても、2種以上を有していてもよい。
また、式(3)で表されるポリマーの末端は、水素原子であることが好ましい。
【0056】
本発明において、好適に用いることのできる、環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。なお、下記具体例において、各モノマー単位の括弧に付記されている数字は、ポリマー中の各モノマー単位のモル比を表す。
【0057】
【化17】

【0058】
【化18】

【0059】
【化19】

【0060】
【化20】

【0061】
【化21】

【0062】
【化22】

【0063】
また、本発明の光硬化性コーティング組成物における環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーの含有量は、表面ベトツキ抑制、及び、表面平滑性の観点から、光硬化性コーティング組成物全体の重量に対して、0.0001〜40重量%の範囲であることが好ましく、0.001〜20重量%の範囲であることがより好ましい。
【0064】
環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーの重量平均分子量としては、3,000〜300,000であることが好ましく、4,000〜100,000であることがより好ましく、5,000〜50,000であることがさらに好ましい。
また、環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーのガラス転移点(Tg)としては、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。また、350℃以下であることが好ましい。
【0065】
(B)光重合開始剤
本発明のコーティング組成物は、光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を使用することができる。本発明において、ラジカル光重合開始剤を使用することが好ましい。
本発明のコーティング組成物に使用する光重合開始剤は、活性放射線による外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。活性放射線には、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。使用する波長は特に限定されないが、好ましくは200〜500nmの波長領域であり、より好ましくは200〜450nmの波長領域である。
【0066】
本発明で好ましく使用できるラジカル光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに、(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
透明性の観点から好ましい光重合開始剤としては、光重合開始剤を3g/cm2の厚みで製膜した際に、400nmの波長の吸光度が0.3以下の化合物であることが好ましく、0.2以下の化合物であることがより好ましく、0.1以下の化合物であることがさらに好ましい。
上記の中でも、好ましい光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物が挙げられる。
本発明における光重合開始剤は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0067】
本発明における光重合開始剤の含有量は、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物の総量に対して、0.01〜35重量%であることが好ましく、0.1〜30重量%であることがより好ましく、0.5〜30重量%であることがさらに好ましい。
また、光重合開始剤は、後述する増感剤を用いる場合、増感剤に対して、光重合開始剤:増感剤の重量比で、200:1〜1:200であることが好ましく、50:1〜1:50であることがより好ましく、20:1〜1:5であることがさらに好ましい。
【0068】
本発明において、上記のカチオン重合性化合物と併用するカチオン光重合開始剤(光酸発生剤)としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(例えば、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページを参照することができる。)。
本発明に好適なカチオン光重合開始剤の例を以下に挙げる。
すなわち、第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。第3に、ハロゲン化水素を光により発生するハロゲン化物も用いることができる。第4に、鉄アレーン錯体を挙げることができる。
上記如きカチオン光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物
本発明のコーティング組成物は、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物を含有する。
本発明に用いることができるエチレン性不飽和結合を有する化合物は、ラジカル重合又はカチオン重合可能な化合物であれば、特に限定されない。
【0070】
本発明におけるラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であれば、どのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。
ラジカル重合性化合物は、1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。反応性、物性などの性能を制御する点から、2種以上のラジカル重合性化合物を併用することが好ましい。
【0071】
ラジカル重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和結合を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0072】
具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年、大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー社);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性乃至架橋性のモノマー、オリゴマー、及びポリマーを用いることができる。
【0073】
また、ラジカル重合性化合物としては、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特開平9−134011号等の各公報に記載されている光重合性組成物に用いられる光硬化型の重合性化合物材料が知られており、これらも本発明のコーティング組成物に適用することができる。
【0074】
さらに、ラジカル重合性化合物として、ビニルエーテル化合物を用いることも好ましい。好適に用いられるビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度の観点から、ジビニルエーテル化合物又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、ジビニルエーテル化合物が特に好ましい。ビニルエーテル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0075】
本発明の用いることができる他の重合性化合物としては、(メタ)アクリル系モノマー若しくはプレポリマー、エポキシ系モノマー若しくはプレポリマー、又は、ウレタン系モノマー若しくはプレポリマー等の(メタ)アクリル酸エステル(以下、適宜、「アクリレート化合物」ともいう。)が好ましく用いられる。さらに好ましくは、下記化合物である。
【0076】
すなわち、2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、ノニルフェノールエチレンオキサイド(EO)付加物アクリレート、変性グリセリントリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(PO)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、ラクトン変性可撓性アクリレート、ブトキシエチルアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ラクトン変性アクリレート等が挙げられる。
【0077】
また、ここに列挙されているアクリレート化合物は、反応性が高く、粘度が低く、印刷基材への密着性に優れる。
【0078】
本発明において、非タック性(表面ベトツキ)、透明性をより改善するためには、式(I)で示される化合物と、前述のエチレン性不飽和結合を有する化合物に記載の中でも、多官能アクリレート化合物とを併用することが好ましい。
多官能アクリレートとしては、ビスフェノールAエポキシジアクリレートやトリプロピレングリコールジアクリレートを特に好ましく例示できる。
また、多官能エチレン性不飽和化合物を使用する場合、多官能エチレン性不飽和化合物の含有量としては、コーティング組成物の全重量に対し、5〜80重量%であることが好ましく、40〜70重量%であることがより好ましい。上記範囲であると、非タック性に優れる。
なお、本発明において、種々の目的に応じて、ラジカル重合性化合物とラジカル光重合開始剤との組み合わせの他、これらと共に、下記に示すようなカチオン重合性化合物とカチオン光重合開始剤とを併用した、ラジカル・カチオンのハイブリッド型コーティング組成物としてもよい。
【0079】
本発明に用いることができるカチオン重合性化合物としては、光酸発生剤から発生する酸により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。
使用するカチオン重合性化合物が、エチレン性不飽和結合を有しない場合は、エチレン性不飽和結合を有する化合物とエチレン性不飽和結合を有しないカチオン重合性化合物とを併用する。
カチオン重合性化合物としては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0080】
また、カチオン重合性化合物としては、例えば、カチオン重合系の光硬化性樹脂に適用される重合性化合物が知られており、最近では400nm以上の可視光波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化性樹脂に適用される重合性化合物として、例えば、特開平6−43633号、特開平8−324137号の各公報等に公開されている。これらも本発明のコーティング組成物に適用することができる。
【0081】
本発明の光硬化性コーティング組成物における(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物の含有量は、硬化性と表面平滑性の観点から、コーティング組成物全体の重量に対して、10〜97重量%の範囲であることが好ましく、30〜95重量%の範囲がより好ましく、50〜90重量%の範囲であることが特に好ましい。
また、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物は、1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
<増感剤>
本発明のコーティング組成物には、前記光重合開始剤の活性放射線の照射による分解を促進させるために増感剤を添加することができる。
増感剤は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、光重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用を生じ、これにより光重合開始剤の化学変化、すなわち、分解、ラジカル、酸又は塩基の生成を促進させるものである。
また、本発明に用いることのできる増感剤は、本発明のコーティング組成物をオーバープリントに使用した際に、着色等の影響が小さい化合物又は量を使用することが好ましい。
本発明における増感剤の含有量は、コーティング組成物の全重量に対して、0.001〜5重量%であることが好ましく、0.01〜3重量%であることがさらに好ましい。この添加量であると、硬化性が向上し、着色の影響が少ない。
【0083】
増感剤は、使用する光重合開始剤に開始種を発生させる活性放射線の波長に応じた化合物を使用すればよいが、一般的なコーティング組成物の硬化反応に使用されることを考慮すれば、好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)、ベンゾフェノン類(例えば、ベンゾフェノン)等が挙げられる。
【0084】
より好ましい増感剤の例としては、下記式(II)〜(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0085】
【化23】

【0086】
式(II)中、A1は硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0087】
【化24】

【0088】
式(III)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−又は−S−を表す。また、Wは式(II)に示したものと同義である。
【0089】
【化25】

【0090】
式(IV)中、A2は硫黄原子又はNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0091】
【化26】

【0092】
式(V)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−又は−NR62−又は−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
【0093】
【化27】

【0094】
式(VI)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子又はNR67を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及び、R65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0095】
式(II)〜(VI)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。なお、下記具体例におけるPhは、フェニル基を表し、Meはメチル基を表す。
【0096】
【化28】

【0097】
【化29】

【0098】
<共増感剤>
本発明のコーティング組成物は、共増感剤を含有することもできる。
本発明において共増感剤は、増感剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、又は、酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられる。
具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が例示できる。
【0099】
共増感剤の別の例としてはチオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特表昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられる。
具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が例示できる。
【0100】
また別の例としては、アミノ酸化合物(例えば、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例えば、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例えば、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(例えば、ジエチルホスファイト等)、特開平8−54735号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0101】
<界面活性剤>
本発明のコーティング組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。また、前記界面活性剤として有機フルオロ化合物やポリシロキサン化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。これらの中でも、界面活性剤としては、ポリジメチルシロキサンが好ましく例示できる。
これらの界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0102】
<その他の成分>
本発明のコーティング組成物には、必要に応じて、他の成分を添加することができる。その他の成分としては、例えば、重合禁止剤、溶剤、無機粒子、有機粒子等が挙げられる。
重合禁止剤は、保存性を高める観点から添加され得る。重合禁止剤は、本発明のコーティング組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
アエロジル(デグサ社製二酸化ケイ素粒子)のような無機粒子や、架橋したポリメチルメタクリレート(PMMA)のような有機粒子を本発明のコーティング組成物に添加して、意図的に表面光沢を下げたオーバープリント層又はオーバープリントを形成することができる。
【0103】
本発明のコーティング組成物が放射線硬化性コーティング組成物であることに鑑み、塗布後に速やかに反応しかつ硬化し得るよう、本発明のコーティング組成物は溶剤を含まないことが好ましい。しかし、コーティング組成物の硬化速度等に影響がない限り、所定の溶剤を含めることができる。
本発明において、溶剤としては、有機溶剤が使用でき、硬化速度の観点から水は実質的に添加しないことが好ましい。有機溶剤は、印刷基材(紙などの受像基材)との密着性を改良するために添加され得る。
有機溶剤を使用する場合も、その量は少ないほど好ましく、本発明のコーティング組成物全体の重量に対し、0.1〜5重量%であることが好ましく、0.1〜3重量%であることがより好ましい。
【0104】
この他に、必要に応じて公知の化合物を本発明のコーティング組成物に添加することができる。
例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類等を適宜選択して添加することができる。
【0105】
また、ポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート(PET)等の印刷基材への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤー(粘着付与剤)を含有させることも好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6頁に記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、エチレン性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
【0106】
<光硬化性コーティング組成物の性質>
本発明の光硬化性コーティング組成物における好ましい物性について説明する。
光硬化性コーティング組成物として使用する場合には、塗布性を考慮し、25〜30℃における粘度が、5〜100mPa・sであることが好ましく、7〜75mPa・sであることがより好ましい。
本発明の光硬化性コーティング組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。
25℃〜30℃における粘度を上記の値に設定することにより、非タック性に優れ(表面ベトツキがなく)、表面平滑性に優れたオーバープリント層を有するオーバープリントが得られる。
本発明の光硬化性コーティング組成物の表面張力は、16〜40mN/mであることが好ましく、18〜35mN/mであることがより好ましい。
【0107】
(オーバープリント及びその製造方法)
本発明のオーバープリントは、印刷物上に本発明のコーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有する。
前記オーバープリントとは、電子写真印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、平版印刷、凹版印刷又は凸版印刷等の印刷方法により得られた印刷物の表面上に、少なくとも1層のオーバープリント層を形成したものである。
本発明のオーバープリントにおけるオーバープリント層は、印刷物の一部に形成しても、印刷物の表面全体に形成してもよく、また、両面印刷物の場合には印刷基材の両方側全面に形成することが好ましい。また、前記オーバープリント層は、印刷物における印刷されていない部分に形成してもよいことは言うまでもない。
本発明のオーバープリントに使用する印刷物は、電子写真印刷物であることが好ましい。電子写真印刷物上に本発明のコーティング組成物の硬化層であるオーバープリント層を形成することにより、非タック性、表面平滑性、光沢性に優れ、視覚的に銀塩写真プリントに類似したオーバープリントを得ることができる。
また、本発明のオーバープリントは、非タック性に優れるため、複数作製した本発明のオーバープリントを重ねて長期間保存しても、オーバープリント同士が張り付いたりせず、保管性に優れる。
本発明のオーバープリントにおけるオーバープリント層の厚みは、1〜10μmであることが好ましく、3〜6μmであることがより好ましい。
【0108】
本発明のオーバープリントの製造方法は、印刷基材上に印刷して印刷物を得る工程、前記印刷物上に本発明の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、前記光硬化性コーティング組成物を光硬化する工程、を含むことが好ましい。
また、本発明のオーバープリントの製造方法は、潜像担持体の上に静電潜像を発生させる工程と、前記静電潜像をトナーにより現像する工程と、現像された静電画像を印刷基材へ転写させ電子写真印刷物を得る工程と、前記電子写真印刷物上に本発明の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、前記光硬化性コーティング組成物を光硬化する工程とを含むことがより好ましい。
前記印刷基材としては、特に制限はなく、公知のものを使用することができるが、受像用紙であることが好ましく、普通紙又はコート紙であることがより好ましく、コート紙であることがさらに好ましい。コート紙としては、両面コート紙が、フルカラー画像を美しく両面印刷できるので好ましい。印刷基材が紙又は両面コート紙である場合、好ましい坪量は20〜200g/m2であり、より好ましい坪量は40〜160g/m2である。
【0109】
電子写真法における画像を現像させるための方法に特に制限はなく、当業者には公知の方法から任意に選択することができる。例えば、カスケード法、タッチダウン法、パウダー・クラウド(powder cloud)法、磁気ブラシ法などが挙げられる。
また、現像された画像を印刷基材に転写させるための方法としては、コロトロン又はバイアスロールを使用する方法が例示できる。
電子写真法における画像を定着させるための定着工程(fixing step)は、各種適切な方法により実施することができる。例えば、フラッシュ定着、加熱定着、加圧定着、蒸気定着(vapor fusing)などが挙げられる。
電子写真法による画像形成方法、装置及びシステムとしては、特に制限はないが、公知のものを使用することができる。具体的には、以下の米国特許に記載されているようなものである。
米国特許第4,585,884号明細書、米国特許第4,584,253号明細書、米国特許第4,563,408号明細書、米国特許第4,265,990号明細書、米国特許第6,180,308号明細書、米国特許第6,212,347号明細書、米国特許第6,187,499号明細書、米国特許第5,966,570号明細書、米国特許第5,627,002号明細書、米国特許第5,366,840号明細書;米国特許第5,346,795号明細書、米国特許第5,223,368号明細書、及び、米国特許第5,826,147号明細書。
【0110】
光硬化性コーティング組成物を塗布するためには、通常使用される液膜コーティング装置(liquid film coating device)を使用することができる。具体的には、ロールコーター、ロッドコーター、ブレード、ワイヤバー、浸漬(dips)、エアナイフ、カーテンコーター、スライドコーター、ドクターナイフ、スクリーンコーター、グラビアコーター、オフセットグラビアコーター、スロットコーター、及び、押出しコーターなどが例示できる。それらの装置は、通常と同じようにして使用することができるが、例えば、ダイレクトロールコーティング及びリバースロールコーティング(direct and reverse roll coating)、ブランケットコーティング(blanket coating)、ダンプナーコーティング(dampner coating)、カーテンコーティング、平版コーティング、スクリーンコーティング、及び、グラビアコーティングなどがある。好ましい実施の態様においては、本発明のコーティング組成物の塗布及び硬化は、2台又は3台のロールコーターとUV硬化ステーションを使用して実施する。
また、本発明のコーティング組成物の塗設時や硬化時においては、必要に応じ、加熱を行ってもよい。
本発明のコーティング組成物の塗布量の典型的なレベルは、単位面積当たりの重量で表して、1g/m2〜10g/m2の範囲であることが好ましく、3g/m2〜6g/m2であることがより好ましい。
また、本発明のオーバープリントにおけるオーバープリント層の形成量は、単位面積当たり、1g/m2〜10g/m2の範囲であることが好ましく、3g/m2〜6g/m2であることがより好ましい。
【0111】
本発明のコーティング組成物に含まれる重合性化合物の重合を開始させるために使用するエネルギー源としては、例えば、スペクトルの紫外線又は可視光線の波長を有する放射線のような、化学線作用のある(actinic)もの(活性放射線)が挙げられる。活性放射線の照射による重合は、重合の開始及び重合速度の調節に優れる。
好適な活性放射線照射源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンフィラメントランプ、レーザー、太陽光などが挙げられる。
【0112】
紫外線照射(UV光照射)の下で、高速コンベヤ(好ましくは、20〜70m/分)を用いた中圧(medium pressure)水銀ランプによる照射が好ましく、その場合UV光照射は、波長200〜500nmで、1秒未満の間与えることが好ましい。高速コンベヤの速度を15〜35m/分とし、波長200〜450nmのUV光を10〜50ミリ秒(ms)間照射するのがより好ましい。UV光源の発光スペクトルは通常、UV重合開始剤の吸収スペクトルと重なっている。場合によっては使用される硬化装置(curing equipment)としては、UV光を焦点に集めたり拡散させたりする反射板や、UV光源により発生する熱を除去するための冷却システムなどがあるが、これらに限定される訳ではない。
【実施例】
【0113】
以下に示す実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例における形態に限定されるものではない。
【0114】
<ポリマー(P−1)の合成>
ポリジメチルシロキサン末端がメタクリルオキシプロピル基で修飾されたモノマー(MCR−M11、Gelest社製)(0.2モル)、FA−513A(日立化成工業(株)製)(0.8モル)及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製)(0.04モル)の、1−メトキシ−2−プロパノール(300g)溶液を、窒素気流下、80℃の1−メトキシ−2−プロパノール(300g)中に4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに85℃で3時間撹拌し、ポリマー(P−12)を得た。このポリマー(P−1)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定したところ、重量平均分子量は2.2万であった。さらに得られたポリマー(P−1)はNMRにより構造を同定した。
【0115】
【化30】

【0116】
【化31】

【0117】
上記と同様の方法により、ポリマー(P−2)〜(P−22)、及び、比較用のポリマー(Z−2)〜(Z−5)を合成した。
【0118】
【化32】

【0119】
(実施例1)
以下の成分を撹拌機により撹拌し、光硬化性コーティング組成物を得た。
・トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業(株)) 40重量%
・トリプロピレングリコールジアクリレート(アルドリッチ社製) 20重量%
・アクリル酸ドデシル(東京化成工業(株)) 20重量%
・IRGACURE 907(チバスペシャルティケミカルズ社製) 15重量%
・ベンゾフェノン(東京化成工業(株)) 3重量%
・ポリマー(P−1) 2重量%
【0120】
<表面平滑性(レベリング性)評価>
富士ゼロックス(株)製デジタルプリンター(DC8000)で両面コート紙に出力した電子写真印刷物に対して、シナノケンシ(株)製UVニスコーター(SG610V)を用いて5g/m2の膜厚で片面にコーティングを行い、コーティングされた印刷物表面のタテスジ発生状態を目視にて評価した。評価基準を以下に示す。
◎:タテスジなし
○:少しタテスジが残る
×:著しくタテスジが見られる
【0121】
<非タック性(表面ベトツキ抑制)評価>
富士ゼロックス(株)製デジタルプリンター(DC8000)で両面コート紙に出力した電子写真印刷物に対して、コーティング組成物が膜厚5g/m2となるように片面にバーコートで塗布を行い、得られた塗布膜に対して、浜松ホトニクス(株)製UVランプ(LC8)を用いて、1.0W/cm2の照度で120mJ/cm2露光を行い、オーバープリントのサンプルを作製した。露光後の非タック性を触感で評価した。評価基準を以下に示す。
◎:ベトツキなし
○:ほぼベトツキなし
×:ベトツキあり
【0122】
上記の方法にて評価した結果、実施例1の光硬化性コーティング組成物は、表面平滑性は○、非タック性は○であった。
【0123】
(実施例2〜10、及び、比較例1〜5)
ポリマー(P−1)を表1に記載のポリマーにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法で光硬化性コーティング組成物を作製した。また、実施例1と同様に性能評価を行った。
【0124】
(比較例6)
ポリマー(P−1)(2重量%)及びアクリル酸ドデシル(20重量%)の代わりに、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業(株))を22重量%(全体で62重量%)用いた以外は、実施例1と同様の方法で光硬化性コーティング組成物を作製した。また、実施例1と同様に性能評価を行った。
【0125】
【表1】

【0126】
なお、表1に記載のZ−1は、アルドリッチ社製ポリジメチルシロキサンである。
【0127】
(実施例11)
A4サイズの両面コート紙(坪量100g/m2)上の両面に各数コマずつのフルカラー画像を電子写真印刷した20枚の印刷物を作製し、その印刷物の両面に、前記の実施例1〜10にて作製した光硬化性コーティング組成物をそれぞれ、実施例1と同様の方法で、5g/m2の塗布量になるように塗布した後、紫外線を照射してオーバープリントを作製した。これらを製本して表紙と共に写真アルバムとしたところ、銀塩写真プリントと同様の視認性が得られる写真アルバムが得られた。
【0128】
(実施例12)
A3サイズの両面コート紙(坪量100g/m2)10枚の両面に献立写真を含むフルカラー画像とテキストを電子写真印刷した。これらの印刷物の両面に、前記の実施例1〜10にて作製した光硬化性コーティング組成物をそれぞれ、実施例1と同様の方法で、片面5g/m2の塗布量になるように塗布した後、紫外線を照射して両面オーバープリントを作製した。これらを綴じてレストランメニューとしたところ、銀塩写真プリントと同様の視認性が得られるレストランメニューが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマー、
(B)光重合開始剤、及び、
(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物を含有することを特徴とする
光硬化性コーティング組成物。
【請求項2】
前記環状炭化水素基を有する含ケイ素ポリマーが、環状炭化水素基を有するモノマー単位、及び、下記式(1)で表されるモノマー単位を少なくとも有する請求項1に記載の光硬化性コーティング組成物。
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の一価炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数6〜10のアリーロキシ基を表し、R3は水素原子又は一価の有機基を表し、mは1〜6の整数を表し、nは2〜1,000の整数を表す。)
【請求項3】
可視域に実質的に吸収を有しない請求項1又は2に記載の光硬化性コーティング組成物。
【請求項4】
オーバープリント用である請求項1〜3いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物。
【請求項5】
電子写真印刷物のオーバープリント用である請求項1〜4いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物。
【請求項6】
電子写真印刷物上に請求項1〜5いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有するオーバープリント。
【請求項7】
印刷基材上に電子写真印刷して電子写真印刷物を得る工程、
前記電子写真印刷物上に請求項1〜5いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、
前記光硬化性コーティング組成物を光硬化する工程、を含む
オーバープリントの製造方法。

【公開番号】特開2009−80296(P2009−80296A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249419(P2007−249419)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】