説明

光硬化性接着剤による接着方法およびこれを用いた光学式ロータリーエンコーダ

【課題】光を透過する被接合部品において、硬化光を効率良く光硬化性接着剤に到達させ、照射装置の硬化光出力を大きくすることなしに良好な接着を実現することである。
【解決手段】少なくとも一方が透明な被接合部品を光硬化性接着剤で他方の被接合部品に接合する光硬化性接着剤による接着方法であって、透明な被接合部品の表面に、ブリュースター角θの入射角で硬化光を照射し、被接合部品間にある光硬化性接着剤を硬化し、被接合部品どうしを接着するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤を硬化させる光を透過するとともに反射する被接合部品を光硬化性接着剤で接着する方法およびこれを用いた光学式ロータリーエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性接着剤による接着は、製品の組み立て効率の向上を目的として用いられている。しかし、光硬化性接着剤は、硬化光に暴露されて硬化するので、一般的に、光硬化性接着剤は、硬化光に対して透明な被接合部品の接着に用いられている。
例えば、UV硬化性接着剤での接着により、光を透過する樹脂材料でなるコード板に回転軸を固定した光学式ロータリーエンコーダがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、光硬化性接着剤を硬化光に対して不透明な被接合部品の接着に用いた場合の硬化方法として、重ねあわせた被接合部品間にある光硬化性接着剤層に、その端部から硬化光を照射して光硬化性接着剤層を硬化させて接着する方法が提案されている。
その例として、遮光用薄膜の符号化パターンが形成された円板部材と不透明な金属ハブ部材との間に充填された光硬化性接着剤の端面部分に対して斜め方向から、硬化光を照射する方法で、円板部材と金属ハブ部材とが接着されたロータリーエンコーダがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−108984号公報(第5頁、第3図)
【特許文献2】特開2008−002970号公報(第4頁、第2図、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の光硬化性接着剤の接着方法およびこの接着方法を用いて組み立てられる光学式ロータリーエンコーダでは、硬化光に対する被接合部品の透明性が高い場合は、十分な硬化光が接着剤層に到達でき、良好な接着が可能であるが、被接合部品の反射率が大きいと、多くの硬化光が反射され、接着剤層に到達する硬化光が少なくなり、光硬化性接着剤の硬化が不十分となり、良好な接着が得られないとの問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の光硬化性接着剤の接着方法およびこの接着方法を用いて組み立てられる光学式ロータリーエンコーダでは、被接合部品である円板部材と金属ハブ部材との間に充填された光硬化性接着剤層に、その端面部分から斜め方向に硬化光である紫外線を照射し、硬化光が光硬化性接着剤層を伝播することにより、光硬化性接着剤を硬化させて接着するものであり、照射装置からの硬化光の大半が、接着剤の硬化に利用されることなく、エネルギー効率が良くないとの問題があった。また、硬化光が光硬化性接着剤層を伝播するにつれ減衰するため、位置によって硬化の進展度合いが異なり、接着信頼性に問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、光を透過するとともに反射する被接合部品であっても、多くの硬化光を効率良く光硬化性接着剤に到達させることができる接着方法、および、この接着方法で組み立てられた、光硬化性接着剤で部品が良好に接着されている高信頼性の光学式ロータリーエンコーダを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わる光硬化性接着剤による接着方法は、少なくとも一方が透明な被接合部品を光硬化性接着剤で他方の被接合部品に接合する光硬化性接着剤による接着方法であって、透明な被接合部品の表面に、ブリュースター角θの入射角で硬化光を照射し、被接合部品間にある光硬化性接着剤を硬化し、被接合部品どうしを接着するものである。
【0009】
本発明に係わる第1の光学式ロータリーエンコーダは、透明であり且つ一方の円板面にドーナツ板状の変調パターンが設けられたコードディスクと、コードディスクの一方の円板面の反対側にある他方の円板面に光硬化性接着剤で接着されたボスとを備えた光学式ロータリーエンコーダであって、一方の円板面における変調パターンの内周側に硬化光暴露部が設けられ、硬化光暴露部の表面に、断面が二等辺三角形であり且つ頂角が略(180°−2θ)である複数のV字状突起部が形成されており、V字状突起部の斜面に、入射角が略θで入射された硬化光により、硬化光暴露部と対向するコードディスクにおける他方の円板面の部分とボスとの間の上記光硬化性接着剤を硬化し、コードディスクとボスとが接着されたものである。
【0010】
本発明に係わる第2の光学式ロータリーエンコーダは、透明であり且つ一方の円板面にドーナツ板状の変調パターンが設けられたコードディスクと、コードディスクの一方の円板面の反対側にある他方の円板面に光硬化性接着剤で接着されたボスとを備えた光学式ロータリーエンコーダであって、変調パターンが、コードディスクの中心から、放射状に設けられた複数のV字状突起部と、V字状突起部の間の平坦部とで形成されており、変調パターンの内周側の領域が硬化光暴露部となっており、V字状突起部が、断面が二等辺三角形であり且つ頂角が略(180°−2θ)となっており、V字状突起部の斜面に、入射角が略θで入射された硬化光により、硬化光暴露部と対向するコードディスクにおける他方の円板面の部分とボスとの間の光硬化性接着剤を硬化し、コードディスクとボスとが接着されたものである。
【0011】
本発明に係わる第3の光学式ロータリーエンコーダは、ボスと一体に成形され且つ一方の円板面に変調パターンが設けられたコードディスクと、ボスの中心の孔に光硬化性接着剤で接着された回転軸とを備えた光学式ロータリーエンコーダであって、ボスが、コードディスクの一方の円板面側から突出した第1のボス突出部と、一方の円板面の反対側にある他方の円板面側から突出した第2のボス突出部とを有し、少なくとも一方のボス突出部の外周面に、断面が三角形である複数のV字状突起部が形成されており、コードディスクを回転することにより、所定の時間間隔で、V字状突起部の斜面に、入射角が略θで入射された硬化光により、ボスの孔の内周面と回転軸との間の光硬化性接着剤を硬化し、ボスと回転軸とが接着されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係わる光硬化性接着剤による接着方法は、少なくとも一方が透明な被接合部品を光硬化性接着剤で他方の被接合部品に接合する光硬化性接着剤による接着方法であって、透明な被接合部品の表面に、ブリュースター角θの入射角で硬化光を照射し、被接合部品間にある光硬化性接着剤を硬化し、被接合部品どうしを接着するものであり、硬化光の表面反射を低減できるので、光硬化性接着剤による良好な接着を実現できる。また金属膜付きの透明物質は、従来、光硬化性接着剤による接着が困難であったが、本発明によれば容易に接着できる。
【0013】
本発明に係わる第1の光学式ロータリーエンコーダは、透明であり且つ一方の円板面にドーナツ板状の変調パターンが設けられたコードディスクと、コードディスクの一方の円板面の反対側にある他方の円板面に光硬化性接着剤で接着されたボスとを備えた光学式ロータリーエンコーダであって、一方の円板面における変調パターンの内周側に硬化光暴露部が設けられ、硬化光暴露部の表面に、断面が二等辺三角形であり且つ頂角が略(180°−2θ)である複数のV字状突起部が形成されており、V字状突起部の斜面に、入射角が略θで入射された硬化光により、硬化光暴露部と対向するコードディスクにおける他方の円板面の部分とボスとの間の上記光硬化性接着剤を硬化し、コードディスクとボスとが接着されたものであり、コードディスクとボスとの良好な接着を実現し、信頼性に優れた光学式ロータリーエンコーダを得ることができる。
【0014】
本発明に係わる第2の光学式ロータリーエンコーダは、透明であり且つ一方の円板面にドーナツ板状の変調パターンが設けられたコードディスクと、コードディスクの一方の円板面の反対側にある他方の円板面に光硬化性接着剤で接着されたボスとを備えた光学式ロータリーエンコーダであって、変調パターンが、コードディスクの中心から、放射状に設けられた複数のV字状突起部と、V字状突起部の間の平坦部とで形成されており、変調パターンの内周側の領域が硬化光暴露部となっており、V字状突起部が、断面が二等辺三角形であり且つ頂角が略(180°−2θ)となっており、V字状突起部の斜面に、入射角が略θで入射された硬化光により、硬化光暴露部と対向するコードディスクにおける他方の円板面の部分とボスとの間の光硬化性接着剤を硬化し、コードディスクとボスとが接着されたものであり、硬化光照射装置の硬化光出力を大きくすることなしに、コードディスクとボスとの良好な接着を実現し、信頼性に優れた光学式ロータリーエンコーダを得ることができる。
【0015】
本発明に係わる第3の光学式ロータリーエンコーダは、ボスと一体に成形され且つ一方の円板面に変調パターンが設けられたコードディスクと、ボスの中心の孔に光硬化性接着剤で接着された回転軸とを備えた光学式ロータリーエンコーダであって、ボスが、コードディスクの一方の円板面側から突出した第1のボス突出部と、一方の円板面の反対側にある他方の円板面側から突出した第2のボス突出部とを有し、少なくとも一方のボス突出部の外周面に、断面が三角形である複数のV字状突起部が形成されており、コードディスクを回転することにより、所定の時間間隔で、V字状突起部の斜面に、入射角が略θで入射された硬化光により、ボスの孔の内周面と回転軸との間の光硬化性接着剤を硬化し、ボスと回転軸とが接着されたものであり、ボスと回転軸との良好な接着を実現し、信頼性に優れた光学式ロータリーエンコーダを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】表面反射が大きい透明物質へ入射する光の反射と屈折とを説明する図である。
【図2】図1における入射光の入射角度と透明物質の反射率の関係を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係わる光硬化性接着剤による接着方法に用いられる被接合部品の第1の突起部を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係わる光硬化性接着剤による接着方法に用いられる被接合部品の第2の突起部を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係わる光学式ロータリーエンコーダの正面断面模式図である。
【図6】図5に示す光学式ロータリーエンコーダの変調パターンを矢印Aの方向から見た図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係わる光学式ロータリーエンコーダのコードディスクにおける第2のV字状突起部を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態4に係わる光学式ロータリーエンコーダの正面断面模式図である。
【図9】図8に示す光学式ロータリーエンコーダにおけるコードディスクの変調パターンを矢印Bの方向から見た図である。
【図10】本発明の実施の形態5に係わる光学式ロータリーエンコーダの正面断面模式図である。
【図11】図10に示す光学式ロータリーエンコーダにおけるボスの部分を矢印Cの方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、表面反射が大きい透明物質へ入射する光の反射と屈折とを説明する図である。
図1に示すように、例えば、入射光33が、屈折率nの大気32中から屈折率nの透明物質31へ、入射角度αで入射すると、入射光33の一部は反射光33bとして、透明物質31の表面から反射され、残りが屈折光33aとして、透明物質31内を透過する。
【0018】
図2は、図1における入射光の入射角度と透明物質の反射率の関係を示す図である。
図2は、透明物質がクロム膜であり、入射光の波長が355nmの場合である。
図2に示すように、入射光33は、p偏光(電界成分が入射面に平行な光)成分の反射率とs偏光(電界成分が入射面に垂直な光)成分の反射率とが、入射角度αとともに変化している。特に、p偏光成分は、反射率が最小となる角度があり、この角度はブリュースター角(θと記す)と呼称されている。
【0019】
本発明の実施の形態1に係わる光硬化性接着剤による接着方法(接着方法と記す)は、2個の被接合部品の内の少なくともいずれか一方が、大きな表面反射を有する透明物質であり、大きな表面反射を有する透明物質の被接合部品の表面に、θの入射角で硬化光を照射し、被接合部品間にある光硬化性接着剤を硬化して接着する方法である。
【0020】
本実施の形態の接着方法は、被接合部品の接着剤層と接する面の反対側の表面に、θの入射角で硬化光を照射し、入射させるので、大きな表面反射を有する被接合部品の表面における、入射光のp偏光成分の反射率が小さくなり、光硬化性接着剤へ到達する硬化光量が多くなる。
大きな表面反射を有する被接合部品としては、例えば、膜厚数十nm程度の金属膜が付いたガラスや樹脂製品が挙げられる。
【0021】
例えば、(a)大きな表面反射を有する透明物質の被接合部品と不透明な部材の被接合部品との接合の場合、(b)大きな表面反射を有する透明物質の被接合部品と表面反射の小さな部材の被接合部品との接合であり、表面反射の小さな部材側からの硬化光の照射が不可能な場合、(c)大きな表面反射を有する透明物質の被接合部品どうしの接合の場合、であっても、大きな表面反射を有する透明物質でなる被接合部品の表面へ、硬化光の照射が可能であれば、この表面に、θの入射角で硬化光を照射し、入射することにより、硬化光におけるp偏光成分の表面反射を低減できるので、従来は光硬化性樹脂による接着ができなかった大きな表面反射を有する透明物質を接着することができる。
【0022】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係わる光硬化性接着剤による接着方法は、被接合部品である大きな表面反射を有する透明物質の表面に、斜面を有する複数の突起部が形成されており、この突起部が形成された表面へ、突起部の斜面に対して、θの入射角で硬化光を照射して、光硬化性接着剤を硬化させる以外、実施の形態1の光硬化性接着剤による接着方法と同様である。
【0023】
図3は、本発明の実施の形態2に係わる光硬化性接着剤による接着方法に用いられる被接合部品の第1の突起部を説明する図である。
図3に示す、被接合部品35表面における第1の突起部39は、断面が二等辺三角形であるV字状突起部であり、被接合部品35の表面に連続して形成されている。
【0024】
図3に示す、第1の突起部39の頂角βと被接合部品35の上方から垂直に照射される硬化光の第1の突起部39の斜面39aへの入射角γとの関係は、以下のとおりである。
β/2=90°−γ (1)
β=2(90°−γ) (2)
=180°−2γ (3)
すなわち、第1の突起部39の頂角βは、180°−2γである。
本実施の形態では、第1の突起部39の斜面39aに対し、入射角γがθで硬化光5が照射されるので、第1の突起部39の頂角βは、(180°−2θ)である。
【0025】
図4は、本発明の実施の形態2に係わる光硬化性接着剤による接着方法に用いられる被接合部品の第2の突起部を説明する図である。
図4に示す、被接合部品35表面における第2の突起部40は、断面が直角三角形である鋸歯状突起部であり、被接合部品35表面に連続して形成されている。
本実施の形態では、第2の突起部40の斜面40aに対し、入射角がθで硬化光5が照射されるので、図4に示すように、第2の突起部40の頂角は、(90°−θ)である。
【0026】
本実施の形態の光硬化性接着剤による接着方法は、表面に連続して、頂角が(180°−2θ)であるV字状突起部、あるいは、頂角が(90°−θ)である鋸歯状突起部を、形成した被接合部品が用いられているので、被接合部品の表面に対して垂直に硬化光を照射して、突起部の斜面へ、硬化光をθの入射角で入射するので、硬化光のp偏光成分の表面反射を低減でき、硬化光照射装置の硬化光出力を大きくすることなしに、光硬化性接着剤による良好な接着を実現でき、照射装置のコストの増大を防止できる。
【0027】
実施の形態3.
図5は、本発明の実施の形態3に係わる光学式ロータリーエンコーダの正面断面模式図である。
図5に示すように、本実施の形態の光学式ロータリーエンコーダ100は、一方の円板面に変調パターン8を有するコードディスク4と、変調パターン8が設けられた面の反対側の他方の円板面に光硬化性接着剤3で接着されたボス2と、ボス2の中心に設けられた孔とコードディスク4の中心に設けられた孔とに挿通された回転軸1とを備えている。そして、ボス2の部分が、回転軸1に固定されている。
【0028】
また、本実施の形態の光学式ロータリーエンコーダ100は、変調パターン8に光を投射する投光部6と、変調パターン8で反射され、光強度が変調された光を受光する受光部7とを備えている。
本実施の形態では、投光部6には、LD(Laser Diode)もしくはLED(Light Emitting Diode)等の素子が用いられており、受光部7には、PD(Photo Diode)等の素子が用いられている。
【0029】
コードディスク4には、透明な樹脂やガラスが用いられ、成形によって形成される。
コードディスク4の一方の円板面に設けられた変調パターン8は、コードディスク4と同心円で且つドーナツ板形状である。
また、コードディスク4の一方の円板面における変調パターン8の内側部分は、光硬化性接着剤3へ照射される硬化光5が透過する、硬化光暴露部8aである。
【0030】
ボス2には、コードディスク4における硬化光暴露部8aと対向する、他方の円板面との接着部に光硬化性接着剤3を溜める溝(接着剤貯留溝と記す)2aが設けられ、光硬化性接着剤が保持されている。
ボス2に接着剤貯留溝2aが設けられていると、光硬化性接着剤3が不必要な部分に広がっていくのを防止でき、光硬化性接着剤3の塗工が容易になる。
【0031】
変調パターン8は、蒸着により薄い金属膜で形成されている。
図6は、図5に示す光学式ロータリーエンコーダの変調パターンを矢印Aの方向から見た図である。
図6に示すように、変調パターン8は、コードディスク4の中心から、放射状に設けられた第1のV字状突起部9と、第1のV字状突起部9の間の平坦部10とで形成されている。
【0032】
次に、投光部6からの光が、コードディスク4の変調パターン8で、変調される機構について説明する。
図6に示すように、投光部6からの投射光6aのうち、変調パターン8の平坦部10で反射された光(平坦部反射光と記す)6bは受光部7に入射するが、第1のV字状突起部9で反射された光(突起部反射光と記す)6cは受光部7へは入射しない。したがって、回転軸1が回転、すなわちコードディスク4が回転すると、変調パターンの平坦部10と第1のV字状突起部9の配置に従い、受光部7に入射する光強度が変調される。
【0033】
また、硬化光暴露部8aには、ボス2の接着剤貯留溝2aと対向する部分に、断面が二等辺三角形の複数の第2のV字状突起部11が形成されている。
図7は、本発明の実施の形態3に係わる光学式ロータリーエンコーダのコードディスクにおける第2のV字状突起部を説明する図である。
【0034】
図7に示すように、第2のV字状突起部11は、その頂角が、略(180°−2θ)となっている。すなわち、第2のV字状突起部11の斜面が、コードディスク4の上方から垂直に照射される硬化光5の入射角が略θとなるように、傾斜している。
上記したように、θは、コードディスクの材質と硬化光の波長で決まる硬化光におけるp偏光成分の反射率を最小とする入射角であるブリュースター角である。
【0035】
本実施の形態の光学式ロータリーエンコーダ100では、断面が二等辺三角形である第2のV字状突起部11の頂角βが、略(180°−2θ)となっており、コードディスク4における第2のV字状突起部11の斜面への、硬化光5の入射角βが略θであるので、硬化光5におけるp偏光成分の硬化光暴露部8aでの反射が最小となり、光硬化性接着剤3へ照射される硬化光5の光量が大きい。
【0036】
実施例1.
次に、本実施の形態の光学式ロータリーエンコーダを、実施例を挙げて説明する。
例えば、クロム蒸着膜に波長365nmの紫外線を照射した場合のθは75°であるので、コードディスク4に、一方の面にクロム蒸着膜を形成したガラス板を用いた場合、硬化光暴露部8aに、頂角が略30°である二等辺三角形の第2のV字状突起部11を形成すると、十分な硬化光を光硬化性接着剤に照射でき、安定した接着を実現できる。
【0037】
本実施例では、光源には、Nd:YAGレーザー(波長1064nm)の3次高調波を用い、半波長板を介してp偏光成分を最大にしたものを用いた。クロム蒸着膜は、膜中でのレーザー光が吸収され、伝播方向に急速に減衰するため、膜厚は50nm以下としている。
【0038】
本実施の形態の光学式ロータリーエンコーダ100は、コードディスク4の硬化光暴露部8aにおけるボス2の接着剤貯留溝2aと対向する部分に、頂角βが、略(180°−2θ)である二等辺三角形の断面形状を有する第2のV字状突起部11が設けられており、第2のV字状突起部11の斜面11aに、入射角が略θで硬化光5が入射されて、光硬化性接着剤3を硬化し、コードディスク4とボス2とが、光硬化性接着剤3で接着されたものであり、コードディスクとボスとの良好な接着を実現し、信頼性に優れた光学式ロータリーエンコーダを得ることができる。
【0039】
実施例1の光学式ロータリーエンコーダは、第2のV字状突起部の表面には薄い金属膜が設けられており、この金属膜におけるθで決まる頂角を有する第2のV字状突起部を備えたコードディスクが用いられているが、本実施の形態の光学式ロータリーエンコーダは、第2のV字状突起部の表面に薄い金属膜が設けられていなく、コードディスク本体の材質におけるθで決まる頂角を有する第2のV字状突起部を備えたコードディスクを用いたものであっても良い。
また、本実施の形態では、ボス2に接着剤貯留溝2aが設けられているが、コードディスクの硬化光暴露部8aと対向するボス2の部分に光硬化性接着剤層を形成できれば、接着剤貯留溝2aはなくても良い。
【0040】
実施の形態4.
図8は、本発明の実施の形態4に係わる光学式ロータリーエンコーダの正面断面模式図である。
図8に示すように、本実施の形態の光学式ロータリーエンコーダ200も、実施の形態3の光学式ロータリーエンコーダ100と同様、一方の円板面に変調パターン18を有するコードディスク14と、変調パターン18が設けられた面の反対側の他方の円板面に光硬化性接着剤3で接着されたボス2と、ボス2の中心に設けられた孔とコードディスク14の中心に設けられた孔とに挿通された回転軸1とを備えている。そして、ボス2の部分が、回転軸1に固定されている。
【0041】
また、本実施の形態の光学式ロータリーエンコーダ200も、変調パターン18に光を投射する投光部6と、変調パターン18で反射され、光強度が変調された光を受光する受光部7を備えている。投光部6に用いられる素子、および、受光部7に用いられる素子も、実施の形態3のものと同様である。
また、図8に示すように、本実施の形態では、コードディスク14の変調パターン18における内周側の領域が、硬化光暴露部18aとなっている。
【0042】
ボス2には、コードディスク14における硬化光暴露部18aと対向する、他方の円板面との接着部に接着剤貯留溝2aが設けられ、光硬化性接着剤3が保持されている。
ボス2に接着剤貯留溝2aが設けられていると、光硬化性接着剤3が不必要な部分に広がっていくのを防止でき、光硬化性接着剤3の塗工が容易になる。
【0043】
図9は、図8に示す光学式ロータリーエンコーダにおけるコードディスクの変調パターンを矢印Bの方向から見た図である。
図8に示すように、変調パターン18は、コードディスク14の中心から、放射状に設けられた複数のV字状突起部19と、V字状突起部19の間の平坦部20とで形成されている。
【0044】
また、図8に示すように、V字状突起部19は、断面が二等辺三角形であり、頂角βが略(180°−2θ)となっている。
すなわち、本実施の形態では、V字状突起部19の斜面19aは、コードディスク14の上方から垂直に照射される硬化光5の斜面19aへの入射角が、コードディスクの材質と硬化光の波長で決まるp偏光成分の反射率を最小にする、略θとなるように傾斜している。
【0045】
本実施の形態の光学式ロータリーエンコーダ200は、変調パターン18の断面が二等辺三角形であるV字状突起部19の頂角βが、略(180°−2θ)であり、変調パターン18の硬化光暴露部18aおけるV字状突起部19の斜面19aに、入射角が略θで硬化光5が入射されて、光硬化性接着剤3を硬化し、コードディスク14とボス2とが光硬化性接着剤3で接着されたものである。
また、本実施の形態では、ボス2に接着剤貯留溝2aが設けられているが、変調パターンの硬化光暴露部18aと対向するボス2の部分に光硬化性接着剤層を形成できれば、接着剤貯留溝2aはなくても良い。
【0046】
本実施の形態の光学式ロータリーエンコーダ200は、コードディスク14の変調パターン18の表面には、金属膜が設けられているが、硬化光5をV字状突起部19の斜面19aに、金属膜と硬化光の波長から決まるp偏光成分の反射率を最小にする略θで、硬化光が入射されるので、光硬化性接着剤に、硬化光を十分に照射でき、コードディスクとボスとの良好な接着を実現し、信頼性に優れた光学式ロータリーエンコーダを得ることができる。
金属膜には、例えば、膜厚が50nm以下のクロム蒸着膜が用いられる。
【0047】
実施の形態5.
図10は、本発明の実施の形態5に係わる光学式ロータリーエンコーダの正面断面模式図である。
図10に示すように、本実施の形態の光学式ロータリーエンコーダ300は、一方の円板面に変調パターン8が設けられたコードディスク24が、ボス22と一体に成形されているものである。
【0048】
ボス22は、コードディスク24の内周側にあり、コードディスク24の各円板面から、これらの円板面の垂直方向に突出している。ボス22の突出部は、コードディスク24の一方の円板面側の第1のボス突出部22aと、一方の円板面の反対側の他方の円板面側の第2のボス突出部22bとがある。
【0049】
また、ボス22の中心には孔が設けられており、この孔に回転軸21が挿入され、ボス22の第2のボス突出部22bの部分が、光硬化性接着剤3で、回転軸21に接着固定されている。
本実施の形態では、第2のボス突出部22bの内周面と対向する回転軸の部分に接着剤貯留溝21aが設けられており、ここに回転軸21にボス22を接着固定する光硬化性接着剤3が保持される。
回転軸21に接着剤貯留溝21aが設けられていると、光硬化性接着剤3が不必要な部分に広がっていくのを防止でき、光硬化性接着剤3の塗工が容易になる。
【0050】
図11は、図10に示す光学式ロータリーエンコーダにおけるボスの部分を矢印Cの方向から見た図である。
図11に示すように、ボス22における第2のボス突出部22bの外周面の軸方向に、断面が三角形である複数のV字状突起部29が形成されている。
【0051】
本実施の形態では、接着剤貯留溝21aに光硬化性接着剤3を保持した回転軸21にボス22がはめ合わされ、回転軸21を回転しながら、回転軸21の軸方向に対する垂直方向から第2のボス突出部22bの外周面に硬化光5を照射することにより、V字状突起部29の斜面29aへの硬化光5の入射角が、コードディスクの材質と硬化光の波長で決まるp偏光成分の反射率を最小にするθとなる状態が、所定の時間間隔で発生される。
【0052】
本実施の形態の光学式ロータリーエンコーダ300は、第2のボス突出部22bの外周面の軸方向に、複数のV字状突起部29が形成され、回転軸21を回転することにより、所定の時間間隔で、V字状突起部29の斜面29aに、入射角が略θで硬化光5が入射されて、光硬化性接着剤3を硬化し、ボス22と回転軸21とが光硬化性接着剤3で接着されたものである。
【0053】
本実施の形態の光学式ロータリーエンコーダ300は、回転軸21の接着剤貯留溝21aと対向する第2のボス突出部22bの外周面に、三角形の断面形状を有するV字状突起部29が形成されており、V字状突起部29の斜面29aに、所定の時間間隔で、入射角が略θで硬化光5が入射されて、光硬化性接着剤3を硬化し、ボス22と回転軸21とが接着されたものであるので、ボスと回転軸との良好な接着を実現し、信頼性に優れた光学式ロータリーエンコーダを得ることができる。
【0054】
本実施の形態では、第2のボス突出部22bの内周面と対向する回転軸21の部分に接着剤貯留溝21aが設けられ、第2のボス突出部22bの外周面にV字状突起部29が形成されているが、接着剤貯留溝を第1のボス突出部22aの内周面と対向する回転軸の部分に設け、第1のボス突出部22aの外周面に、三角形の断面形状を有するV字状突起部を軸方向に形成しても良い。
【0055】
また、接着剤貯留溝を、第1のボス突出部22aと第2のボス突出部22bとの各内周面と対向する回転軸の部分に設け、第1のボス突出部22aと第2のボス突出部22bとの各外周面に、三角形の断面形状を有するV字状突起部を軸方向に形成しても良い。
また、回転軸の部分に接着剤貯留溝21aを設けているが、回転軸21とボス22の内周部分に光硬化性接着剤層を形成できれば、接着剤貯留溝21aはなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係わる光学式ロータリーエンコーダは、光学式ロータリーエンコーダを組み立てるのに用いられる光硬化性接着剤が確実に硬化され、光学式ロータリーエンコーダの部品が良好に接着されたものであり、信頼性が要求される制御装置に用いられる。
【符号の説明】
【0057】
1 回転軸、2 ボス、2a 接着剤貯留溝、3 光硬化性接着剤、
4 コードディスク、5 硬化光、6 投光部、6a 投射光、6b 平坦部反射光、
6c 突起部反射光、7 受光部、8 変調パターン、8a 硬化光暴露部、
9 第1のV字状突起部、10 平坦部、11 第2のV字状突起部、11a 斜面、
14 コードディスク、18 変調パターン、18a 硬化光暴露部、
19 V字状突起部、19a 斜面、20 平坦部、21 回転軸、
21a 接着剤貯留溝、22 ボス、22a 第1のボス突出部、
22b 第2のボス突出部、24 コードディスク、29 V字状突起部、
29a 斜面、31 透明物質、32 大気、33 入射光、33b 反射光、
33a 屈折光、35 被接合部品、39 第1の突起部、39a 斜面、
40 第2の突起部、40a 斜面、
100,200,300 光学式ロータリーエンコーダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な被接合部品を光硬化性接着剤で他方の被接合部品に接合する光硬化性接着剤による接着方法であって、上記透明な被接合部品の表面に、ブリュースター角θの入射角で硬化光を照射し、上記被接合部品間にある上記光硬化性接着剤を硬化し、上記被接合部品どうしを接着する光硬化性接着剤による接着方法。
【請求項2】
上記一方の透明な被接合部品の表面に、斜面を有する複数の突起部を形成し、上記突起部の斜面に、θの入射角で硬化光を照射することを特徴とする請求項1に記載の光硬化性接着剤による接着方法。
【請求項3】
上記斜面を有する突起部が、断面が二等辺三角形であるV字状突起部であり、上記V字状突起部の頂角が(180°−2θ)であり、上記V字状突起部の斜面に、θの入射角で硬化光を照射することを特徴とする請求項2に記載の光硬化性接着剤による接着方法。
【請求項4】
上記斜面を有する突起部が、断面が直角三角形である鋸歯状突起部であり、上記鋸歯状突起部の頂角が(90°−θ)であり、上記鋸歯状突起部の斜面に、θの入射角で硬化光を照射することを特徴とする請求項2に記載の光硬化性接着剤による接着方法。
【請求項5】
透明であり且つ一方の円板面にドーナツ板状の変調パターンが設けられたコードディスクと、上記コードディスクの一方の円板面の反対側にある他方の円板面に光硬化性接着剤で接着されたボスとを備えた光学式ロータリーエンコーダであって、
上記一方の円板面における上記変調パターンの内周側に硬化光暴露部が設けられ、上記硬化光暴露部の表面に、断面が二等辺三角形であり且つ頂角が略(180°−2θ)である複数のV字状突起部が形成されており、
上記V字状突起部の斜面に、入射角が略θで入射された硬化光により、上記硬化光暴露部と対向する上記コードディスクにおける他方の円板面の部分と上記ボスとの間の上記光硬化性接着剤を硬化し、上記コードディスクと上記ボスとが接着された光学式ロータリーエンコーダ。
【請求項6】
透明であり且つ一方の円板面にドーナツ板状の変調パターンが設けられたコードディスクと、上記コードディスクの一方の円板面の反対側にある他方の円板面に光硬化性接着剤で接着されたボスとを備えた光学式ロータリーエンコーダであって、
上記変調パターンが、上記コードディスクの中心から、放射状に設けられた複数のV字状突起部と、上記V字状突起部の間の平坦部とで形成されており、上記変調パターンの内周側の領域が硬化光暴露部となっており、上記V字状突起部が、断面が二等辺三角形であり且つ頂角が略(180°−2θ)となっており、
上記V字状突起部の斜面に、入射角が略θで入射された硬化光により、上記硬化光暴露部と対向する上記コードディスクにおける他方の円板面の部分と上記ボスとの間の上記光硬化性接着剤を硬化し、上記コードディスクと上記ボスとが接着された光学式ロータリーエンコーダ。
【請求項7】
上記ボスの、コードディスクの他方の円板面と対向する部分に、光硬化性接着剤を溜める接着剤貯留溝が設けられていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の光学式ロータリーエンコーダ。
【請求項8】
ボスと一体に成形され且つ一方の円板面に変調パターンが設けられたコードディスクと、上記ボスの中心の孔に光硬化性接着剤で接着された回転軸とを備えた光学式ロータリーエンコーダであって、
上記ボスが、上記コードディスクの一方の円板面側から突出した第1のボス突出部と、上記一方の円板面の反対側にある他方の円板面側から突出した第2のボス突出部とを有し、少なくとも一方のボス突出部の外周面に、断面が三角形である複数のV字状突起部が形成されており、
上記コードディスクを回転することにより、所定の時間間隔で、上記V字状突起部の斜面に、入射角が略θで入射された硬化光で、上記ボスの孔の内周面と上記回転軸との間の上記光硬化性接着剤を硬化し、上記ボスと上記回転軸とが接着された光学式ロータリーエンコーダ。
【請求項9】
上記回転軸の、ボスの孔の内周面と対向する部分に、光硬化性接着剤を溜める接着剤貯留溝が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の光学式ロータリーエンコーダ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−96706(P2013−96706A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236579(P2011−236579)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】