説明

光硬化性組成物及びそれを用いた電子部品用ガスケット

【課題】適度な硬度を有しつつ、シール材としてのリワーク性を向上し得る光硬化性組成物及びそれを用いた電子部品用ガスケットを提供する。
【解決手段】光硬化性液状樹脂、(メタ)アクリレートモノマー及び光重合開始剤を含有する光硬化性組成物において、光硬化性液状樹脂が光硬化性官能基を含有する水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体からなり、且つ該光重合開始剤が少なくともアミノアセトフェノン系光重合開始剤を含有することを特徴とする光硬化性組成物及びそれを用いた電子部品用ガスケットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性液状樹脂、(メタ)アクリレートモノマー及び光重合開始剤を含有する光硬化性組成物及びそれを用いた電子部品用ガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シール材や接着材用に種々の光硬化性樹脂が開発されている。
例えば、特許文献1には、木工合板、家具、楽器等の木工製品の表面加工用のポリエーテルポリオール系光硬化性樹脂が開示されている。しかし、ポリエーテルポリオールは親水性が高く水蒸気透過性が大きいために水蒸気バリア性が要求されるシール材やガスケット材等への使用は不適当である。
また、特許文献2には、木工塗料用ポリエステルポリオール系光硬化性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、ポリエステルポリオールは高温高湿環境下ではポリエステル主鎖が加水分解劣化を受けるため、高温高湿環境にさらされるシール材、特にガスケット材等への使用は不適当である。
ところで、ハードディスク等の電子部品は、最終検査において、不良品が発生した場合はガスケット等によりシールされた部品のカバーをはずして不良部品を交換する、所謂リワークをする必要がある。このとき、ガスケット等のシール材がちぎれてしまうとカバーが再使用できなくなってしまう。一方、ガスケット等のシール材としてカバーを保持して密閉性を維持するための硬化性も要求されている。
上述の水蒸気透過性(低透湿性)あるいは接着性を改良するものとして、特許文献3〜6には、光硬化性の水添もしくは非水添液状ポリイソプレン又は光硬化性の水添もしくは非水添液状ポリブタジエンが提案されているが、リワーク性と硬化性の両立という観点での開発がなされていないのが実情である。
【0003】
【特許文献1】特開平5−202163号公報
【特許文献2】特開2000−219714号公報
【特許文献3】特開2002−371101号公報
【特許文献4】特開2005−60465号公報
【特許文献5】特開2006−298964号公報
【特許文献6】特開2007−39587号公報
【特許文献7】特公平1−53681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下で、適度な硬度を有しつつ、シール材としてのリワーク性を向上し得る光硬化性組成物を提供すること及びそれを用いた電子部品用ガスケットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、硬化後の光硬化性組成物の粘着性(タッキネス)を小さくし、且つ圧縮永久歪を小さくすることによりリワーク性を向上し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、光硬化性液状樹脂、(メタ)アクリレートモノマー及び光重合開始剤を含有する光硬化性組成物において、光硬化性液状樹脂が光硬化性官能基を含有する水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体からなり、且つ該光重合開始剤が少なくともアミノアセトフェノン系光重合開始剤を含有することを特徴とする光硬化性組成物、及びそれを用いてなる電子部品用ガスケットである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、適度な硬度を有しつつ、シール材としてのリワーク性を向上し得る光硬化性組成物を提供することができ、さらに、それを用いた電子部品用ガスケットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、光硬化性液状樹脂、(メタ)アクリレートモノマー及び光重合開始剤を含有する光硬化性組成物であって、光硬化性液状樹脂が光硬化性官能基を含有する水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体からなり、且つ該光重合開始剤が少なくともアミノアセトフェノン系光重合開始剤を含有することを特徴とする。
ここで、上記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体を構成する単量体の内、共役ジエン単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中では、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンが硬化後のゴム弾性確保の観点から好ましく、1,3−ブタジエンであることが特に好ましい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0008】
また、上記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体を構成する単量体の内、芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン又はパラメチルスチレンが硬化後のゴム物性の点で好ましく、スチレンであることが特に好ましい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0009】
光硬化性液状樹脂として光硬化性官能基を含有する水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体を用いることにより、適当な光重合開始剤との組み合わせにより、適度な硬度を有しつつ、硬化後の光硬化性組成物の粘着性(タッキネス)を小さくし、且つ圧縮永久歪を小さくすることが可能となり、シール材としてのリワーク性を向上することができる。
ところで、空気中に存在するシロキサンがガスケットに溶解・拡散し、ハードディスク(以下、HDDという)内部へと透過する事により、電子部品、特にHDDの表面にSiO2微細結晶を発生させ、HDD等の電子部品の品質に悪影響を与え、甚だしい場合にはHDD等の損傷を引き起こすことがある。これに対し、光硬化性水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体は、光硬化性水添液状ポリイソプレン又は光硬化性水添液状ポリブタジエンと比較して空気中に存在するシロキサンを溶解することが少ないので、HDD用のガスケットとしてシロキサン溶解によるHDD損傷を防ぐことができ、好ましい。
【0010】
本発明において、水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体が含有する光硬化性官能基は、光硬化性不飽和炭化水素基であることが好ましく、光硬化性不飽和炭化水素基が(メタ)アクリロイル基であることが特に好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基をいう。
【0011】
上記アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア369]、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア379]等が挙げられる。
アミノアセトフェノン系光重合開始剤は反応活性が高く、窒素原子の存在により光硬化性組成物の表面の酸素阻害を受けにくくするため、光硬化性組成物全体の硬化性を高めると共に、硬化後の光硬化性組成物の粘着性(タッキネス)を小さくし、且つ圧縮永久歪を小さくすることができる。これにより、本発明の光硬化性組成物は、シール材としてのリワーク性を向上することができる。
本発明の光硬化性組成物に配合される光重合開始剤量は、光硬化性液状樹脂及び(メタ)アクリレートモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜6質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは1〜4質量部である。
【0012】
本発明において、上記のアミノアセトフェノン系光重合開始剤は、所望により、他の光重合開始剤と併用しても良い。
他の光重合開始剤としては、分子内開裂型として、ベンゾイン誘導体類、ベンジルケタール類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア651]、α−ヒドロキシアセトフェノン類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:ダロキュア1173、イルガキュア184、イルガキュア127、イルガキュア2959]、アシルホスフィンオキサイド類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア819、イルガキュアTPO]等が挙げられ、水素引き抜き型として、ベンゾフェノン類とアミンとの組み合わせ、チオキサントンとアミンとの組み合わせ等が挙げられる。
【0013】
また、オリゴマー化したα−ヒドロキシアセトフェノンとして、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン][例えば、Lamberti S.p.A製、商品名:ESACURE KIP150等]、アクリレート化したベンゾフェノン類としてアクリル化ベンゾフェノン[例えば、ダイセル・ユー・シー・ビー(株)製、商品名:Ebecryl P136等]、イミドアクリレート等が挙げられる。
【0014】
さらに、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテル、ベンゾイルブチルエーテル、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマーと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンの混合物、イソプロピルチオキサントン、o−ベンゾイル安息香酸メチル及び[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン等も併用することができる。
【0015】
本発明の光硬化性組成物に用いられる(メタ)アクリレートモノマーは、硬化前の光硬化性組成物の粘度を低減するばかりでなく、硬化後の諸物性も改良する。すなわち、接着強度や低透湿性の向上、硬度や粘着性(タッキネス)の調節、Eb(伸び)及びTb(破断強度)の向上等を図ることができる。(メタ)アクリレートモノマーの分子量は、1,000未満のものが好ましく、150〜600のものがより好ましい。
(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタン(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びメトキシトリエチレングリコールアクリレート等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートをいう。
これらのうち、本発明においては、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート及びジシクロペンテニルアクリレートが好ましい。
【0016】
(メタ)アクリレートモノマーの配合量は、光硬化性液状樹脂と(メタ)アクリレートモノマーとを合わせて100質量部としたとき、質量部の比率(光硬化性液状樹脂/(メタ)アクリレートモノマー)が、(20/80)〜(100/0)であることが好ましく、(30/70)〜(90/10)であることがさらに好ましい。(メタ)アクリレートモノマーが10質量部以上であれば、光硬化性組成物の粘度低減効果を享受でき、押出し、吐出等をし易くなり、シール材等に形成し易くなる。また、70質量部以下であれば、該組成物の粘度が低くなり過ぎず、形成直後のシール材等が流下しにくくなる。さらに、硬化後のシール材等の接着強度や弾性も確保されるので、気密性が損なわれにくい。
【0017】
本発明の光硬化性組成物は、所望により、さらに揺変剤を含有しても良い。揺変剤を含有させることにより、光硬化性組成物の粘着性(タッキネス)をさらに小さくすることができる。
揺変剤には、有機系と無機系とがある。有機系揺変剤としては、水素添加ひまし油系、アマイド系、酸化ポリエチレン系、植物油重合油系、界面活性剤系があり、あるいはこれらを2種以上併用した複合系がある。水素添加ひまし油系揺変剤は、ひまし油(主成分がリシノール酸の不乾性油)に水素を添加することにより硬化しワックス状としたものであり、アマイド系揺変剤は、植物油脂肪酸とアミンにより合成され、アミド結合を有する化合物であるアマイドワックスである。具体的には、水添ひまし油[例えば、ロックウッド アディティブス(株)製、商品名:ADVITROL100、楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン305等]及びアマイドワックス[例えば、楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6500等]等が挙げられる。
また、無機系揺変剤としては、シリカ、ベントナイト、有機カップリング剤処理シリカ、有機カップリング剤処理ベントナイト及び極微細表面処理炭酸カルシウム等があり、あるいはこれらを2種以上併用した複合系がある。具体的には、乾式法により微粉化したシリカ微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル300等]、このシリカ微粉末をトリメチルジシラザンで変性した微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルRX300等]及び上記シリカ微粉末をポリジメチルシロキサンで変性した微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルRY300等]等が挙げられる。無機系揺変剤の平均粒径は、揺変性(チクソトロピー)付与の観点から、5〜50μmが好ましく、5〜12μmがより好ましい。
本発明の光硬化性組成物に配合される揺変剤の量は、光硬化性液状樹脂及び(メタ)アクリレートモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8質量部、さらに好ましくは1〜5質量部である。
【0018】
本発明の光硬化性組成物に用いられる光硬化性液状樹脂は、光硬化性官能基を含有する水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体であり、以下のように製造されることが好ましい。
(A)飽和炭化水素系溶媒中で、ジリチウム開始剤により共役ジエン単量体及び芳香族ビニル単量体を重合して、重量平均分子量5,000〜40,000及び分子量分布3.0以下を有する共役ジエン−芳香族ビニル共重合体を製造する段階と、
(B)前記共役ジエン−芳香族ビニル共重合体とアルキレンオキシドとを反応させて、共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオールを製造する段階と、
(C)前記共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオールに水素添加反応し、水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオールを製造する段階と、
(D)前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオールと光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させる段階とを
含むことを特徴とする光硬化性液状樹脂の製造方法である。
【0019】
まず、第一の段階(A)として、飽和炭化水素系溶媒中で、ジリチウム開始剤により共役ジエン単量体及び芳香族ビニル単量体を重合して、共役ジエン−芳香族ビニル共重合体(以下、「本発明に係る共重合体」ということがある)を製造する。本重合はリビングアニオン重合であるために、分子量及び分子量分布を制御して重合できる。分子量は、ジリチウム開始剤と上記単量体の量により所定の分子量の重合体を重合することが可能であり、特に重量平均分子量が5,000以上では、分子量分布が2以下の狭い重合体を得易い。また、所望により、ランダマイザーの存在下にアニオン重合をさせてもよい。
次に、第二の段階(B)として、上記の本発明に係る共重合体の、リビングアニオンである共重合体末端とアルキレンオキシドとを当量反応させることにより両末端に水酸基を有する共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオール(以下、「本発明に係る共重合体ポリオール」ということがある)を得ることができる。
さらに、第三の段階(C)として、主鎖に二重結合を有する本発明に係る共重合体ポリオールに水素添加反応(以下、水添反応という)を行うことにより、主鎖に不飽和二重結合を持たないか又は主鎖の不飽和二重結合が少ない水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオール(以下、「本発明に係る水添共重合体ポリオール」ということがある)を得ることができる。
第四の段階(D)として、上記のようにして得た本発明に係る水添共重合体ポリオールに、光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を反応させて、光硬化性官能基を含有する水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体が得られる。
【0020】
ジリチウム開始剤としては、特に限定されず公知のものを用いることができる。例えば、特許文献7には、モノリチウム化合物を第3級アミンの存在下に、二置換ビニル又はアルケニル基含有芳香族炭化水素と反応させてジリチウム開始剤を製造する方法が記載されている。
【0021】
ジリチウム開始剤を製造するときに用いられるモノリチウム化合物としては、エチルリチウム,n−プロピルリチウム,イソプロピルリチウム,n−ブチルリチウム,sec−ブチルリチウム,tert−ブチルリチウム,tert−オクチルリチウム,n−デシルリチウム,フェニルリチウム,2−ナフチルリチウム,2−ブチル−フェニルリチウム,4−フェニル−ブチルリチウム,シクロヘキシルリチウム,シクロペンチルリチウム等が挙げられるが、これらの中で、sec−ブチルリチウムが好ましい。
【0022】
ジリチウム開始剤を製造するときに用いられる第3級アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン等の低級脂肪族アミンやN,N−ジフェニルメチルアミン等が挙げられるが、特にトリエチルアミンが好ましい。
また、上記二置換ビニル又はアルケニル基含有芳香族炭化水素としては、例えば、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,4−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,3−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン、1,4−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン等が好ましく挙げられる。
【0023】
上記ジリチウム開始剤の調製、及び共重合体の製造において用いられる溶媒としては、反応に不活性な有機溶剤であればよく、脂肪族,脂環族,芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶媒が用いられ、例えば、n−ブタン、l−ブタン、n−ペンタン、l−ペンタン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、l−ブテン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、l−オクタン、メチルシクロペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ペンテン、2−ペンテン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等から1種あるいは2種選んで使用される。これらのうち、n−ヘキサン、シクロヘキサンが通常用いられる。
【0024】
また、上記の本発明に係る共重合体のリビングアニオンである末端と反応して、両末端に水酸基を生成するポリオール化反応に用いるアルキレンオキシドとして、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド等が挙げられる。このポリオール化反応は、重合反応直後に行うのが好ましい。
【0025】
上記ポリオール化反応により得られた本発明に係る共重合体ポリオールの重量平均分子量が5,000以上であれば架橋点間分子量を大きくすることができ、光硬化反応後、弾性率を低くかつ伸び大きくできるためゴム材料として好ましく、一方、重量平均分子量が40,000以下であれば、ジリチウム触媒で重合を行う際に、重合粘度が高くなりすぎず、重合プロセスとして固形分濃度を下げる必要がないので、低コストとなり好ましい。
また、分子量分布が3.0以下であると、低分子量成分や高分子量成分によるさまざまな影響を抑制することができる。特に、粘度は分子量の影響を大きく受けるため、分子量のわずかなブレは粘度バラツキとなる。狭い分子量分布の共重合体を合成できる本発明では、再現性良く同じ分子量の共重合体を得ることができるため、粘度を安定化させる効果が期待できる。本発明のような液状の材料は、ディスペンサー塗布を行う場合が多く、この場合、材料粘度のバラツキは塗布後の寸法にバラツキを生じるので、粘度の安定化は重要であり、分子量分布が3.0以下であることが好ましい。
【0026】
本発明に係る水添共重合体ポリオールを得るための水添反応は、有機溶媒中、水素加圧下で水添触媒の存在下で上記本発明に係る共重合体ポリオールに水素添加して行われる。この水添反応で用いる水添触媒は、パラジウム−カーボン、還元ニッケル、ロジウム系等不均一系触媒:または、ナフテン酸ニッケル、オクタン酸ニッケル等の有機ニッケル化合物あるいはナフテン酸コバルト、オクタン酸コバルト等の有機コバルト化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物もしくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムのような有機リチウム化合物を組合せた均一触媒が使用できる。共触媒として、テトラハイドロフラン、エチレグリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物を用いてもよい。また、他の水添反応方法としては、例えば上記水添前の本発明に係る共重合体を、ジシクロペンタジエニルチタンハライド、有機カルボン酸ニッケル、有機カルボン酸ニッケルと周期律表第I〜III 族の有機金属化合物からなる水素化触媒、カーボン、シリカ、ケイソウ土等で担持されたニッケル、白金、バラジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム金属触媒やコバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム錯体等を触媒として、0.1〜10MPa程度に加圧された水素下、あるいはリチウムアルミニウムハイドライド、p−トルエンスルホニルヒドラジドの存在下、もしくはZr−Ti−Fe−V−Cr合金、Zr−Ti−Nb−Fe−V−Cr合金、LaNi5 合金等の水素貯蔵合金の存在下、あるいは0.1〜10MPa程度に加圧された水素下で、水素化する方法、また、ジ−p−トリル−ビス(1−シクロペンタジエニル)チタニウム/シクロヘキサン溶液とn−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液を水素下で混合して得られる水素化触媒を用いて、0.1〜10MPa程度に加圧された水素下で、水素添加する方法等を挙げることができる。
【0027】
上述の各種水添触媒の中で、遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物の組み合わせからなるチーグラー系水添触媒又はパラジウム−カーボン系水添触媒が好ましい。
かかる遷移金属化合物としては、トリス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル 、トリス(アセチルアセトナート)鉄、トリス(アセチルアセトナート)クロム、トリス(アセチルアセトナート)マンガン、ビス(アセチルアセトナート)マンガン、トリス(アセチルアセトナート)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタン、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、ビス(トリフェニルホスフィン)コバルトジクロライド、ビス(2−ヘキサノエート)ニッケル 、ビス(2−ヘキサノエート)コバルト、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラエトキシド等が挙げられる。これらのなかでも、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、トリス(アセチルアセトナート)コバルトが高い水添活性の面から好ましい。
【0028】
また、チーグラー系水添触媒に用いられるアルキルアルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。これらの中でも、トリイソブチルアルミニウム 、トリエチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが水添活性の面から好ましく、トリイソブチルアルミニウムが最も好ましい。
【0029】
水添反応におけるチーグラー系水添触媒の使用形態に特に制限はないが、予め遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物とを反応させた触媒溶液を調製し、それを重合溶液に添加する方法を好ましく挙げることが出来る。かかる際に用いるアルキルアルミニウム化合物の量は、遷移金属化合物1molに対して0.2〜5molが好ましい。上記の触媒調製の反応は、−40〜100℃程度、好ましくは0〜80℃の温度範囲で行われ、反応時間は、通常1分から3時間の範囲である。
【0030】
また、水添反応は通常50〜180℃、好ましくは70〜150℃の温度で、また0.5〜10MPa程度、好ましくは1〜5MPaの水素圧で行われる。水添温度が50℃より低いと、また水素圧が0.5MPaよりも低いと触媒活性が低くなるため好ましくなく、水添温度が180℃を越えると触媒の失活、副反応等が起こりやすいため好ましくない。また通常、チーグラー系水添触媒は水添活性の極めて高い触媒であり、水素圧を10MPaよりも高くするのは必要性に乏しく装置上の負担が大きくなるので好ましくない。
【0031】
上記の本発明に係る水添共重合体ポリオールの末端に光硬化性官能基を導入するためには、その水添共重合体ポリオールに、光硬化性官能基含有化合物、好ましくは光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物、特に好ましくは(メタ)アクリロイル基含有化合物を反応させる。ここで、(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、アクリロイルオキシアルキルイソシアネートやメタクリロイルオキシアルキルイソシアネートが好ましく、これらとの反応により、上記の水添共重合体ポリオールは(メタ)アクリレート化される。
アクリロイルオキシアルキルイソシアネートとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられ、メタクリロイルオキシアルキルイソシアネートとしては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられる。
【0032】
本発明の光硬化性組成物においては、上記(メタ)アクリレートモノマーに加えて、又はその代替として、所望により、末端(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することができる。この末端(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することにより、光硬化性組成物の粘度を調節することができ、また、物理的には、硬度の低下、Eb(伸び)及びTb(破断強度)の向上等を図ることができる。なお、末端(メタ)アクリレートオリゴマーとは、片末端又は両末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有するオリゴマーをいう。
【0033】
末端(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリオール(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。または、イソシアネートと変性させ、末端の水酸基をアクリル酸でエステル化することもできる。ポリオール(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
本発明の光硬化性組成物に、所望により配合される末端(メタ)アクリレートオリゴマー量は、光硬化性液状樹脂及び(メタ)アクリレートモノマーの合計100質量部に対し、100質量部以下であることが好ましい。
【0034】
本発明の光硬化性組成物には、さらに、安定化剤等を加えてもよい。安定化剤としては、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート][例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:IRGANOX245、旭電化工業(株)製、商品名:アデカスタブAO−70等]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン[例えば、旭電化工業(株)製、商品名:アデカスタブAO−80等]等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
本発明の光硬化性組成物に配合される安定化剤量は、光硬化性液状樹脂及び(メタ)アクリレートモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量部、さらに好ましくは0.5〜2質量部である。
【0035】
さらに、本発明の光硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、密着性向上のための、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系炭化水素、ロジン誘導体等の各種粘着付与剤、チタンブラック等の着色剤等の添加剤を添加することができる。
【0036】
本発明の光硬化性組成物を活性エネルギー線の照射によって反応・硬化させて、硬化物を得ることができる。この硬化物のJIS−A硬度が60以下であれば十分なシール性を得ることができるので好ましい。同様な観点から、より好ましくは20〜60、さらに好ましくは25〜55、特に好ましくは30〜55である。
【0037】
本発明の光硬化性組成物を反応・硬化させるために用いられる活性エネルギー線とは、紫外線及び電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を指すが、本発明においては紫外線が好ましい。紫外線源としては、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波方式エキシマランプ等を挙げることができる。紫外線を照射する雰囲気としては、窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気あるいは酸素濃度を低下させた雰囲気が好ましいが、通常の空気雰囲気でも十分に硬化させることができる。照射雰囲気温度は、通常10〜200℃とすることができる。
また、光硬化樹脂は硬化後に再度活性エネルギー線を照射したり、熱を加えることにより性状を安定化させることもできる。
【0038】
本発明の光硬化性組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、各成分及び所望により用いられる添加剤成分を温度調節可能な混練機、例えば、一軸押出機,二軸押出機,プラネリーミキサー、二軸ミキサー、高剪断型ミキサー等を用いて混練することにより、製造することができる。
このようにして得られた光硬化性組成物を被着体に塗布し、エネルギー線照射により硬化させることにより、本発明の電子部品用ガスケット材、その他のシール材を製造することができる。被着体としては、例えば、硬質樹脂からなるものも使用することができるが、加工性等から金属製のものが好ましい。金属としては特に制限はなく、例えば、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム/亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、マグネシウム板、マグネシウム合金板等の中から、適宜選択して用いることができる。また、マグネシウムを射出成形したものも用いることができる。耐食性の点から、無電解ニッケルめっき処理を施した金属が好適である。この無電解ニッケルめっき処理方法としては、従来金属素材に適用されている公知の方法、例えば硫酸ニッケル,次亜リン酸ナトリウム,乳酸,プロピオン酸等を適当な割合で含有するpH4.0〜5.0程度で、かつ温度85〜95℃程度の水溶液からなる無電解ニッケルめっき浴中に、金属板を浸漬する方法等を用いることができる。
また、シール材の用途としては、HDD用等のガスケット、インクタンク用シール、液晶シール等が挙げられる。シール材の厚さは、用途により適宜選定することができるが、通常0.1〜2.0mm程度である。
【0039】
上記光硬化性組成物の被着体等の基材への配設又は塗布は、該組成物を必要に応じて温度調節し、一定粘度に調整した塗液を用いて任意の方法で行うことができ、例えばグラビアコート、ロールコート、スピンコート、リバースコート、バーコート、スクリーンコート、ブレードコート、エアーナイフコート、ディッピング、ディスペンシング、インクジェット等の方法を用いることができる。上記光硬化性組成物を配設又は塗布し、成形した後、エネルギー線を照射することにより塗布層を硬化させて、シール材を得ることができる。
シール材において、シール層の断面形状は、良好なシール性を確保しつつHDD等の電子機器又は印刷機器内のスペースを効率良く使用する観点から、シール層の幅1に対してシール層の高さが0.2〜2.0であることが好ましく、0.3〜2.0がより好ましい。一度で高さが得られない場合は複数回に分けて塗布することが出来る。この場合、一段配設又は塗布するごとにエネルギー線を照射して硬化させることも可能である。
本発明のシール材は、電子部品用ガスケット材として好適であり、特に、HDD用ガスケット材として好適である。また、本発明の組成物を任意の方法で配設又は塗布、成形することにより、HDD内の部品の押さえ材として好適に使用することができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、共役ジエン−芳香族ビニル共重合体の重量平均分子量及び分子量分布並びに硬化後の光硬化性組成物の硬度、粘着性、圧縮永久歪及びシロキサン溶解性は、下記の方法に従って測定した。
(1)重量平均分子量及び分子量分布
GPC法(Gel Permeation Chromatography)を用い、ポリスチレン換算により重量平均分子量及び分子量分布を得た。
(2)硬度
JIS K 6253:2006に準拠し、タイプAデュロメータにより硬化物の硬度を測定した。試験体として厚さが約1mmの硬化後の光硬化性組成物のシート6枚を積層し、厚さが約6mmのものを用いた。
(3)粘着性
厚さ約1mmの硬化後の光硬化性組成物のシートを作製し、タックメーターによりタッキネスを測定し、単位gfで表示した。
(4)圧縮永久歪
JIS K 6262:2006に準拠し、硬化後の光硬化性組成物の試料を100℃、圧縮率25%で24時間放置後、さらに室温にて24時間放置した後に測定した。
(5)シロキサン溶解性
厚さ約1mmのシートを成形、硬化させ、高温でベーキングした試験体A1と、試験体A1を室内で室温にて2週間放置した試験体A2とを、それぞれガスクロマトグラフ質量分析法(GC−MS)によりシロキサン量を測定した。{(試験体A2のシロキサン量)−(試験体A1のシロキサン量)}を溶解量とした。単位は、「μg/材料500mg当り」で表記した。
【0041】
製造例 光硬化性液状樹脂の製造
充分に脱水精製したシクロヘキサン溶媒中に、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン1モルを添加した後、トリエチルアミン2モル、sec−ブチルリチウム2モルを順次添加し、50℃で2時間撹拌して、ジリチウム重合開始剤を調製した。
アルゴン置換した7リットルの重合リアクターに、脱水精製したシクロヘキサン1.90kg、22.9質量%の1,3−ブタジエンモノマーのヘキサン溶液を2.00kg、20.0質量%のスチレンモノマーのシクロヘキサン溶液を0.765kg、1.6モル/リットルの2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンのヘキサン溶液を130.4ml添加した後、0.5モル/リットルのジリチウム重合開始剤を108.0ml添加して重合を開始させた。
重合リアクターを50℃に昇温しながら、1.5時間重合を行った後、1モル/リットルのエチレンオキシドのシクロヘキサン溶液を108.0ml添加し、さらに2時間撹拌した後、50mlのイソプロピルアルコールを添加した。共重合体のヘキサン溶液をイソプロピルアルコール中に沈殿させ、十分に乾燥させて共重合体ポリオールを得た。この共重合体ポリオールは両末端OH基スチレン−ブタジエン共重合体であり、スチレン分は25質量%であり、重量平均分子量は14,500、分子量分布は1.20であった。
【0042】
次に、共重合体ポリオール120gを、それぞれ、十分に脱水精製したヘキサン1リットルに溶解した後、予め別容器で調整したナフテン酸ニッケル、トリエチルアルミニウム、ブタジエンが1:3:3(モル比)の触媒液を共重合体溶液中のブタジエン部1,000モルに対してニッケル1モルになるように仕込んだ。密閉反応容器に水素を27,580hPa(400psi)に加圧添加して、110℃にて4時間水添反応を行った。その後、3モル/L濃度の塩酸で触媒残渣を抽出分離し、さらに遠心分離をして触媒残渣を沈降分離した。その後、水添共重合体ポリオールをイソプロピルアルコール中に沈殿させ、さらに十分に乾燥を行った。
十分に乾燥した水添共重合体ポリオール100gを、それぞれ、シクロヘキサンに溶解させ、40℃に保ち十分に撹拌しながら2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製:カレンズAOI)をゆっくり滴下した後、さらに4時間撹拌を行い、イソプロピルアルコールに沈殿させ乾燥させた。2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの添加量は、2.49gであった。以上のようにして、水添重合体ポリオールから光硬化性液状樹脂であるアクリロイル基含有水添スチレン−ブタジエン共重合体を得た。
【0043】
実施例1〜4及び比較例1〜7
上記の光硬化性液状樹脂を用い、表1及び表2に示す配合処方により、それぞれ、プラネタリーミキサーにて混練し実施例1〜4及び比較例1〜7の11種の光硬化性組成物を得た。得られた組成物を用い、上記の測定方法に規定した形状に製膜し、これにエネルギー線を照射して硬化物を得た。エネルギー線の光源にはメタルハライドランプを使用し、空気雰囲気下で照度約160mW/cm2(波長320〜390nm)、積算光量約9,000mJ/cm2の条件で照射を行った。得られた硬化物について上記の方法で硬度、粘着性、圧縮永久歪及びシロキサン溶解性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0044】
【表1】

[注]
光硬化性液状樹脂: 製造例により得られたアクリロイル基含有水添スチレン−ブタジエン共重合体
アクリレートモノマーA: イソボルニルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製、商品名:IBXA
揺変剤: 水添ひまし油、ロックウッド アディティブス(株)製、商品名:ADVITROL100、
光重合開始剤A: 2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア369
光重合開始剤B: 2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907
光重合開始剤C: 2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア127
光重合開始剤D: 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパンー1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:ダロキュア1173
光重合開始剤E: 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア184
光重合開始剤F: 2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア651
光重合開始剤G: オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、Lamberti S.p.A製、商品名:ESACURE KIP150
【0045】
【表2】

[注]
光硬化性液状樹脂、揺変剤及び光重合開始剤A〜Dは、表1と同じ。
アクリレートモノマーB: ジシクロペンタニルアクリレート、日立化成工業(株)製、商品名:FA−513A
【0046】
表1より明らかなように、本発明の実施例1〜4の光硬化性組成物はいずれも適度な硬度を有し、粘着性及び圧縮永久歪がいずれも小さかった。これら実施例1〜4の光硬化性組成物をディスペンサーによりHDD容器にディスペンシングした後、光硬化しガスケットを形成し、それらのガスケットのリワーク性を確認したところ、良好なリワーク性を示した。
一方、比較例1及び6の光硬化性組成物は、光硬化性組成物の表面は硬化するが、内部の硬化が不十分であった。そのため、光硬化性組成物の粘着性が小さかったが圧縮永久歪が大きく、リワーク性が不十分であった。
また、比較例2〜5及び7の光硬化性組成物は、粘着性が大きく、リワーク性が不十分であった。
さらに、水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体を用いた本発明の光硬化性組成物は、いずれもシロキサン溶解量が非常に小さく、HDD等の電子部品の品質保全に優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の光硬化性組成物は、各種用途のシール材として、例えば、電子部品用等のガスケット、インクタンク用シール、液晶シール等に好適に用いられ、特にHDD用ガスケットとして好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性液状樹脂、(メタ)アクリレートモノマー及び光重合開始剤を含有する光硬化性組成物において、光硬化性液状樹脂が光硬化性官能基を含有する水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体からなり、且つ該光重合開始剤が少なくともアミノアセトフェノン系光重合開始剤を含有することを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項2】
前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体を構成する共役ジエン単量体が1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンである請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体を構成する芳香族ビニル単量体がスチレン、α−メチルスチレン及び/又はパラメチルスチレンである請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
前記光硬化性官能基が、光硬化性不飽和炭化水素基である請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
前記光硬化性不飽和炭化水素基が(メタ)アクリロイル基である請求項4に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
前記アミノアセトフェノン系光重合開始剤が、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン及び2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノンからなる群から1種以上選択される光重合開始剤である請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
さらに、揺変剤を含有してなる請求項1〜6のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の光硬化性組成物を用いてなる電子部品用ガスケット。

【公開番号】特開2008−291126(P2008−291126A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138763(P2007−138763)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】