光空間伝送装置
【課題】設置者が通信距離や通信空間の状況の変化等を意識することなく設置することが可能な光空間伝送装置を提供する。
【解決手段】光空間伝送装置は、第1の装置Aと第2の装置Bとの間で自由空間を伝播する光ビームにより光空間通信を行うシステムにおける第1の装置としての光空間伝送装置である。光空間伝送装置は、光ビーム11を射出するビーム射出部111〜115と、該ビーム射出部から、第2の装置に該光空間伝送装置に対する該第2の装置からの光ビーム10の向きを調整させるための調整ビームとして、第1の周期で振幅が変化する光ビームを射出させる制御手段110とを有する。制御手段は、調整ビームの第1の周期ごとの最大振幅を時間とともに変化させる。
【解決手段】光空間伝送装置は、第1の装置Aと第2の装置Bとの間で自由空間を伝播する光ビームにより光空間通信を行うシステムにおける第1の装置としての光空間伝送装置である。光空間伝送装置は、光ビーム11を射出するビーム射出部111〜115と、該ビーム射出部から、第2の装置に該光空間伝送装置に対する該第2の装置からの光ビーム10の向きを調整させるための調整ビームとして、第1の周期で振幅が変化する光ビームを射出させる制御手段110とを有する。制御手段は、調整ビームの第1の周期ごとの最大振幅を時間とともに変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自由空間を伝播する光ビームを用いて光空間通信を行う光空間伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の光空間伝送装置(以下、第1の装置という)と第2の光空間伝送装置(以下、第2の装置という)との間で光空間通信を行う場合、該通信を確立するために、第1の装置と第2の装置との光軸を互いに一致させる必要がある。
【0003】
第1及び第2の装置間で光軸を一致させるために、送信側装置では、受光側装置に送信側の装置に対する向きを調整させるための調整用光ビーム(以下、調整ビームという)を送信する。一方、受光側装置では、受光センサを使用して調整ビームを検出し、該調整ビームの到来方向、つまりは受光側装置の送信側装置に対する向きや受光側装置からの光ビームの射出方向の送信側装置に対するずれを求めている。
【0004】
このような調整ビームは、送信側装置から射出される、情報を通信するための主信号ビーム成分に対して調整ビーム成分として重畳される場合が多い。
【0005】
また、光空間伝送装置の設置を簡略化するために、設置者が通信距離を意識せずに設置可能な光空間伝送装置が望まれている。
【0006】
ここで、通信距離が長い場合には、光ビームの大気(霧や雨等)による減衰や拡散によって、受信側装置での受光レベルが低下する。このような通信状況においても、受信側装置で正常に調整ビーム成分を検出することができるようにするには、送信側装置における調整ビーム成分の出力レベルをできるだけ上げればよい。
【0007】
ただし、調整ビーム成分のレベルが高いと、調整ビーム成分と主信号ビーム成分との間で相互変調波が発生するおそれがあり、この影響によって主信号ビーム成分のS/N比が低下する。したがって、主信号ビーム成分にできるだけ影響を与えないように、調整ビーム成分の出力レベルをある程度以下に維持する必要がある。
【0008】
一方、通信距離が短い場合においては、受信側装置での受光センサが調整ビームの受光量が過剰となって飽和するおそれがある。受光センサが飽和すると、受信側装置の送信側装置に対する向きを検出することができない。したがって、調整ビームの出力レベルを受光センサが飽和しないレベルに抑えたり、光ビームの強度を減衰させる光アッテネータを用いたり、光ビームの拡がり角を大きくする等、受信側装置における調整ビームの受光レベルを下げる対策が必要となる。
【0009】
特許文献1には、設置時において通信距離に応じて調整ビームの出力レベルを増減させたり、通信が確立する前と後で調整ビームの出力レベルを変化させたりすることができる光空間伝送装置が開示されている。
【特許文献1】特許第3302141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1にて開示された光空間伝送装置では、設置後や通信確立後の調整ビームの出力レベルが一定と考えられる。このため、設置後や通信確立後の調整ビームの出力レベルの設定を、設置者が、通信距離や通信空間の状況の変化等を考慮して、最終的に調整する必要が生じる可能性が高い。
【0011】
そこで、本発明は、設置者が通信距離や通信空間の状況の変化等を意識することなく設置することが可能な光空間伝送装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面としての光空間伝送装置は、第1の装置と第2の装置との間で自由空間を伝播する光ビームにより光空間通信を行うシステムにおける第1の装置としての光空間伝送装置であって、光ビームを射出するビーム射出部と、該ビーム射出部から、第2の装置に該光空間伝送装置に対する該第2の装置からの光ビームの向きを調整させるための調整ビームとして、第1の周期で振幅が変化する光ビームを射出させる制御手段とを有する。そして、制御手段は、調整ビームの第1の周期ごとの最大振幅を時間とともに変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、設置者が通信距離や通信空間の状況の変化等を意識することなく光空間伝送装置を設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1には、本説明の実施例である光空間伝送装置により構成される光空間通信システムを示している。
【0016】
該システムは、通信距離Lを介して対向するように配置された第1の光空間伝送装置(以下、第1の装置という)Aと第2の光空間伝送装置(以下、第2の装置という)Bとにより構成されている。第1の装置Aと第2の装置Bとは、互いに同じ構成を有する。すなわち、以下では第1の装置Aの構成及び動作について説明するが、該構成及び動作は、第2の装置Bでも同じである。
【0017】
第1の装置Aにおいて、115は半導体レーザ素子により構成された発光素子(光源)であり、レーザ光を発振する。該レーザ光は、第1の偏光方向を有する直線偏光である。116は発光素子115から発散光として射出されたレーザ光を平行ビームに変換するコリメートレンズである。104はコリメートレンズ116からのレーザ光を、偏光分離面にて反射する偏光ビームスプリッタ104である。
【0018】
103は偏光ビームスプリッタ104からのレーザ光を反射するとともに、反射方向を変化させるようその向き(傾き)が制御される光軸調整ミラーである。102,101は光軸調整ミラー103で反射されたレーザ光をその発散角度を広げつつ送信光ビーム11として自由空間に射出する送受光レンズである。送信光ビーム11は、自由空間を伝播して第2の装置Bに入射する。
【0019】
第2の装置Bからも、同様の構成により光ビームが射出され、第1の装置Aに向かって自由空間を伝播してくる。該光ビームは、送信光ビーム11の偏光方向(第1の偏光方向)に対して直交する第2の偏光方向を有する直線偏光であり、受信光ビーム10として第1の装置Aの送受光レンズ101,102に入射する。送受光レンズ101,102に入射した受信光ビーム10は、光軸調整ミラー103で反射されて偏光ビームスプリッタ104の偏光分離面を透過し、光分割素子としてのハーフビームスプリッタ105に入射する。
【0020】
ハーフビームスプリッタ105に入射した受信光ビーム10のうち大部分は、該ハーフビームスプリッタ105で反射し、レンズ106により集光されて受光素子107に到達する。また、ハーフビームスプリッタ105に入射した受信光ビーム10のうち残りの部分は、該ハーフビームスプリッタ105を透過し、レンズ117により集光されて、受光センサとしての位置検出素子118に到達する。
【0021】
送受光レンズ101,102、光軸調整ミラー103、偏光ビームスプリッタ104、ハーフビームスプリッタ105、コリメートレンズ116及びレンズ106,118により、送受信光学系が構成される。
【0022】
また、発光素子115と、後述する主信号入力部113、パイロット信号発生部111、変調部112及び信号合成部114により、ビーム射出部としてのビーム送信部が構成される。さらに、受光素子107と、後述する受光制御部108及び受信信号出力部109により、ビーム受信部が構成される。また、位置検出素子118は、後述する角度補正量算出部119とともに、検出部及び光軸調整部を構成する。
【0023】
ビーム送信部において、主信号入力部113には、不図示の情報出力装置から、第2の装置Bに対して送信すべき情報を含む主信号(電気信号:以下、送信主信号という)が入力される。
【0024】
パイロット信号発生部111は、パイロット信号(電気信号としての調整信号)を出力する。パイロット信号は、第2の装置Bに、第1の装置Aに対する第2の装置Bからの受信光ビーム10の向きを調整させるためのパイロットビーム(調整ビーム)をビーム送信部から射出させるために、発光素子115にレーザ光を変調させるための信号である。該パイロット信号は、所定の周期(以下、第1の周期という)で振幅が変化する電気信号である。
【0025】
変調部112は、パイロット信号発生部111から出力されたパイロット信号を変調する。114は信号合成部であり、主信号入力部113からの送信主信号に、変調部112からのパイロット信号を合成(重畳)する。信号合成部114から出力された送信主信号とパイロット信号の合成信号は、発光素子115に入力される。発光素子115は、該合成信号に応じて発振(射出)するレーザ光を変調する。
【0026】
これにより、発光素子115(ビーム送信部)から、送信主信号に対応する光ビーム成分(主信号ビーム成分:以下、主信号ビームという)とパイロット信号に対応する光ビーム成分(以下、パイロットビームという)とが合成された送信光ビーム11が射出する。送信光ビーム11は、基本的に前述した第1の周期で振幅が変化する。主信号ビームは、送信主信号に含まれる情報に応じて変調される。また、パイロットビームは、変調部112によるパイロット信号の変調動作に応じて変調される。
【0027】
受信光ビーム10は、第2の装置Bから第1の装置Aに伝達すべき情報に対応して変調された主信号ビームと、第1の装置Aに、第2の装置Bに対する第1の装置Aからの送信光ビーム11の向きを調整させるためのパイロットビームとの合成ビームである。
【0028】
受光制御部108は、受光素子107の出力信号から主信号(電気信号:以下、受信主信号という)を抽出し、該抽出した受信主信号を受信信号出力部109に出力する。受信信号出力部109は、該受信主信号を不図示の外部装置に出力する。また、受光制御部108は、受光素子107における受光量を検出し、その結果をパイロット信号出力レベル制御部(制御手段)110に出力する。
【0029】
角度補正量算出部119は、位置検出素子118にて受光した第2の装置Bからのパイロットビームの受光位置に応じて、光軸調整ミラー103の角度を調節する。これにより、第1の装置Aの送受信光学系の光軸を、第2の装置Bの送受信光学系の光軸と一致させることができる。
【0030】
図10には、位置検出素子118の受光面を示している。位置検出素子118の受光面は、4つの受光領域118a〜118dに分割されている。パイロットビームは、受光面上にビームスポット1001を形成する。各受光領域は、その受光領域におけるビームスポット1001の受光面積(受光強度)に応じた信号を出力する。ビームスポットSが、例えば受光領域118b側に偏っている場合には、受光領域118bからの信号の出力レベルが他の受光領域118a,118c,118dからの信号の出力レベルよりも高くなる。このような場合、第1の装置Aからの送信光ビーム11の中心が、第2の装置Bの送受信光学系の光軸に対してずれていること(以下、このことを光軸ずれという)を示す。
【0031】
角度補正量算出部119は、受光領域118a〜118dからの信号の出力レベルが等しくなるように、すなわちビームスポット1001が位置検出素子118の受光面の中心に位置するように、光軸調整ミラー103の角度補正量を算出する。そして、該角度補正量を、後述するミラー駆動部に出力し、光軸調整ミラー103の角度を変更させる。これにより、第1の装置Aは、第2の装置Bに対する第1の装置Aからの送信光ビーム11の向きを調整し、送信光ビーム11の中心を第2の装置Bの送受信光学系の光軸に一致させる。以下の説明において、このような調整動作を、光軸調整ともいう。
【0032】
なお、送受信光学系は、位置検出素子118に向かう光軸と、発光素子115からの光軸と、受光素子107に向かう光軸とがすべて光学的に一致するように調整されている。このため、位置検出素子118の中心に受信光ビーム10のビームスポット1001が形成された状態では、受光素子107の中心にも受信光ビーム10の大部分が入射する。
【0033】
また、図1では、発光素子115からの送信光ビーム11の中心と、受信光ビーム10の中心とがずれているように記載されているが、これらは実際には互いに一致している。
【0034】
次に、パイロット信号出力レベル制御部110の動作について説明する。パイロット信号出力レベル制御部110は、受光制御部108で検出された受光量に応じて、以下の2つのモード(第1のモード及び第2のモード)で動作する。
【0035】
第1のモードは、パイロット信号の出力レベルを時間とともに(時間の経過とともに)変化させるモード(以下、光軸調整モードという)である。パイロット信号出力レベル制御部110が光軸調整モードで動作することで、ビーム送信部から射出される送信光ビーム11のうちパイロットビームの第1の周期ごとの最大振幅が時間とともに変化する。
【0036】
また、第2のモードは、パイロット信号の第1の周期ごとの最大振幅を時間とともに変化させずに一定に設定するモード(以下、通信モードという)である。パイロット信号出力レベル制御部110が通信モードで動作することで、送信光ビーム11のうちパイロットビームの第1の周期ごとの最大振幅も一定に維持される。
【0037】
ここで、図14Aには、光軸調整モードでのパイロット信号及びパイロット光ビームの波形の変化を示す。パイロット信号及びパイロット光ビームは、前述したように、第1の周期T1で振幅が変化する。光軸調整モードでは、パイロット信号出力レベル制御部110は、パイロット信号及びパイロットビームの第1の周期ごとの最大振幅が時間とともに変化するように、例えば第2の周期T2で変化するように変調部112を制御する。第2の周期T2は、第1の周期T2よりも長い周期(時間)である。パイロット信号及びパイロットビームの第1の周期ごとの最大振幅は、第2の周期T2で、特定レベル(例えば、最大レベル)から変化して該特定レベルに最初に戻る。
【0038】
図14Bには、通信モードでのパイロット信号及びパイロット光ビームの波形の変化を示す。この通信モードでも、パイロット信号及びパイロット光ビームは、第1の周期T1で振幅が変化する。ただし、通信モードでは、パイロット信号出力レベル制御部110は、パイロット信号及びパイロットビームの第1の周期ごとの最大振幅が時間とともに変化せずに一定に維持されるように変調部112を制御する。
【0039】
なお、以下の説明において、パイロット信号及びパイロットビームの第1の周期ごとの最大振幅を、それぞれの出力レベルという。
【0040】
次に、パイロット信号出力レベル制御部110におけるモード選択動作について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0041】
パイロット信号出力レベル制御部110は、ステップ202で、受光制御部108を通じて受光素子107における受光量を検出する。次に、ステップ203で、該検出受光量が、S/N比の劣化による受信主信号の誤検出が発生する値を基準として予め決められた所定の閾値(以下、最低受光量という)以下に低下したか否かを判定する。検出受光量が最低受光量以下である場合は、パイロット信号出力レベル制御部110は光軸調整モードに移行し、ステップ204でパイロット信号の出力レベルを時間ともに変化させる。
【0042】
ここで、本実施例では、最低受光量は、装置のばらつきを考慮して、受信主信号の誤検出が発生する値から3dB低い値までのいずれかの値に設定する。ただし、最低受光量がこの値に限定されるわけではい。
【0043】
一方、ステップ203において、検出受光量が最低受光量より高いと判定した場合は、パイロット信号出力レベル制御部110は、通信モードに移行し、ステップ205でパイロット信号の出力レベルを一定に維持する。
【0044】
このようなモード選択により、受信主信号の誤検出を防止しつつ、第1及び第2の装置A,B間での光軸ずれを良好に補正させる(光軸調整を行う)ことができる。
【0045】
なお、本実施例では、受光素子107における受光量の検出結果に応じて光軸調整モードと通信モードとを選択するが、位置検出素子118から出力された第2の装置Bからのパイロット信号のレベルに応じて光軸調整モードと通信モードとを選択してもよい。
【0046】
光軸調整モードでは、パイロット信号出力レベル制御部110は、以下の条件を満足するように変調部112を制御する。
【0047】
第1及び第2の装置A,Bの製品仕様により決定される両装置A,B間の最大通信距離を有効通信距離という。有効通信距離において、第1の装置Aでは、第2の装置Bに向けて射出されたパイロットビームが、第2の装置B側の位置検出素子(118)において正常に検出できる出力レベルを有することが重要である。このため、パイロット信号出力レベル制御部110は、パイロット信号が、そのような出力レベルを有するパイロットビームを射出させるために必要な出力レベルを有するように、変調部112に対してパイロット信号変調信号を出力する。
【0048】
つまり、パイロット信号出力レベル制御部110は、以下の条件を全て満たすパイロット信号を変調部112に生成させる。
【0049】
(1)有効通信距離内のすべての通信距離において、第2の装置Bにおける第1の装置Aからのパイロットビームの受光レベルを位置検出素子(118)で飽和を生じずに検出できる値とするような出力レベルを少なくとも含むパイロット信号。
【0050】
(2)有効通信距離内のすべての通信距離において、第2の装置Bにおける第1の装置Aからのパイロットビームの受光レベルを位置検出素子(118)の最低受光感度レベル以上とするような出力レベルを少なくとも含むパイロット信号。
【0051】
言い換えれば、パイロットビームの出力レベルを、後述する第1のレベル以上で、かつ第2のレベル以下のレベルを経るように変化させるように、変調部112にパイロット信号を生成させる。第1のレベルは、有効通信距離内のすべての通信距離において(特に、通信距離が第1の距離である場合に)、位置検出素子(118)が飽和するレベルよりも低い。また、第2のレベルは、有効通信距離内のすべての通信距離において(特に、通信距離が第1の距離よりも長い第2の距離である場合に)、位置検出素子(118)にてパイロットビームの検出が不能となるレベルよりも高い。
【0052】
(3)第2の装置B側の位置検出素子(118)の検出周期(第3の周期)に対して、より長い時間もしくはより長い周期、又は同期しない周期で出力レベルが変化するパイロット信号。
【0053】
つまり、パイロットビームの出力レベルが特定レベルから時間とともに変化して該特定レベルに最初に戻るまでの時間を、位置検出素子(118)の検出周期よりも長くする又は検出周期に同期しない時間とするように変調部112にパイロット信号を生成させる。
【0054】
なお、この場合、第2の装置B側の位置検出素子(118)の検出周期内(第3の周期内)において、パイロットビームの出力レベルを、少なくとも上記第1のレベル以上で、かつ上記第2のレベル以下のレベルを経るように変化させてもよい。
【0055】
有効通信距離の最短値及び最長値は、送信光ビーム11の拡がり角やパワー、第2の装置B側の位置検出素子(118)での有効受光レベル等の製品仕様によって決定される。本実施例では、有効通信距離の最短値を、装置の製造上のばらつき等を考慮したマージンをとり、受光量の過剰を原因とした主信号の誤検出が発生しない最も短い距離よりも長い距離に設定している。また。有効通信距離の最長値を、装置の製造上のばらつきや雨や霧等の大気中での減衰等を考慮したマージンをとり、受光量の不足を原因とした主信号の誤検出が発生しない最も長い距離よりも短い距離に設定している。
【0056】
次に、パイロット信号(つまりはパイロットビーム)の出力レベルの変化と位置検出素子118におけるパイロット信号の検出範囲との関係について説明する。
【0057】
図3には、第1の装置A側においてパイロットビームの出力レベルを連続的に変化させる場合における、第2の装置B側の位置検出素子(118)でのパイロットビームの受光レベルと、位置検出素子(118)のパイロットビームの検出範囲との関係を示す。横軸は通信距離を示し、縦軸は出力レベル及び受光レベルを示す。
【0058】
なお、本実施例では、パイロットビームをその出力レベルが正弦波状に連続的に変化する信号として説明しているが、ノコギリ波状や三角波状等、出力レベルが連続的に変化する波形であればどのような波形でもよい。
【0059】
図3に示すように、位置検出素子(118)でのパイロットビームの受光レベルは、大気の状態や通信空間(自由空間)の状況が同じであれば、光ビームの拡散等によって、通信距離が長くなるほど低下する。しかし、位置検出素子(118)によるパイロットビームの検出範囲(飽和レベルと最低受光感度レベル)は、通信距離にかかわらず常に一定である。このため、パイロットビームの出力レベルの変動幅は、有効通信距離のすべてにおいて、位置検出素子(118)でのパイロットビームの受光レベルが位置検出素子(118)の検出範囲に含まれるように設定される。これにより、位置検出素子(118)は、有効通信距離のすべてにおいて、パイロットビームを正常に検出することができる。
【0060】
なお、本実施例では、ある程度のマージンを持たせて、有効通信距離よりも長い通信距離(図中のパイロットビーム検出可能通信範囲)でも位置検出素子118でパイロットビームを正常に検出できるように、パイロットビームの出力レベルの変動幅を決めている。
【0061】
図4には、第1の装置A側においてパイロットビームの出力レベルを段階的に変化させる場合における、第2の装置B側の位置検出素子(118)でのパイロットビームの受光レベルと、位置検出素子(118)のパイロットビームの検出範囲との関係を示す。
【0062】
なお、図4では、パイロットビームの出力レベルを方形波状に変化させているが、出力レベルを段階的に切り換えるものであれば、どのような波形でもよい。
【0063】
また、変調部112が、パイロットビームの出力レベルを複数の出力レベルの中で切り換える機能を持ち、パイロット信号出力レベル制御部110からの指令に応じて該出力レベルを切り換えるようにしてもよい。このような構成によれば、パイロットビームの出力レベルを連続的に変化させる場合に比べて、簡易な構成でパイロットビームの出力レベルを変化させることができる。
【0064】
図4の条件では、段階的にパイロットビームの出力レベルが変化するため、位置検出素子(118)のパイロットビームの検出範囲は、上位レベルの検出可能範囲と下位レベルの検出可能範囲とを合わせた範囲となる。パイロットビームの出力レベルの変動幅の条件としては、図3に示したように連続的にパイロットビームの出力レベルを変化させる場合と同じである。
【0065】
ただし、連続的にパイロットビームの出力レベルを変化させる場合と異なり、位置検出素子(118)でのパイロットビームの受光レベルが段階的にしか変化しない。したがって、図5に示すように、パイロットビームの変動幅を大きくすると、位置検出素子(118)でパイロットビームを検出できない通信距離が発生する。有効通信距離の範囲が広く、パイロットビームの出力レベルの変動幅がある程度必要な場合は、図6に示すように、中位レベルのパイロットビームの出力レベルを設けるとよい。これにより、有効通信距離内のすべての通信距離で、位置検出素子(118)によりパイロットビームを正常に検出できるようになる。
【0066】
図6に示す例では、パイロットビームの出力レベルを3段階に切り換える場合を示したが、さらに多くの段階で切り換えることにより、位置検出素子(118)でパイロットビームを検出できる通信距離を長くすることができる。
【0067】
次に、パイロットビームの出力レベルの変動速度と位置検出素子(118)でのパイロットビームの検出タイミングについて説明する。
【0068】
先に説明した通り、パイロットビームの出力レベルは、有効通信距離内のすべての通信距離において、位置検出素子(118)でパイロットビームを正常に検出できるレベルを持つように変化する。このため、図7に示すように、位置検出素子(118)での検出タイミングがパイロットビームの出力レベルの変化の周波数よりも十分に遅い場合は、位置検出素子118で検出できる範囲内の出力レベルを有するパイロットビームを検出することができる。そのような検出タイミングを、図中にパイロットビーム検出可能ポイントとして示す。
【0069】
しかし、図8に示すように、位置検出素子(118)での検出タイミングによっては、上記のようなパイロットビームを検出できない可能性がある。そのような検出タイミングを、図中にパイロットビーム検出不可ポイントとして示す。このため、パイロット信号の変動周期は、パイロット信号の検出タイミングの周期よりも十分遅く設定するか、図9に示すように、互いに同期しない周波数(又は周期)を設定するとよい。
【0070】
以上により、有効通信距離内のすべての通信距離において、第1の装置Aからのパイロットビームを第2の装置B側の位置検出素子(118)で検出することができる。このことは、第2の装置Bからのパイロットビームを検出する第1の装置A側の位置検出素子118でも同じである。
【0071】
次に、光軸調整ミラー103の角度調節を行うミラー駆動部について、図11、図12及び図13を用いて説明する。
【0072】
図11において、光軸調整ミラー103は、チルト保持部材4によって保持されている。チルト保持部材4に設けられたチルト中心軸2は、パン保持部材5によって回転可能に支持されている。パン保持部材5に設けられたパン中心軸3は、支持部材10によって回転可能に支持されている。
【0073】
図12(a),(b)は、図11のY−Y’断面において、チルト保持部材4に連結されたチルトステージ6が駆動されたときに、光軸調整ミラー103がチルト方向に傾く様子を示す。チルトステージ6は、ボイスコイルモータ等のアクチュエータによって駆動される。
【0074】
チルトステージ6が距離A1又はA2だけ駆動されると、線バネにより形成されたチルト連結部材7が撓みながら光軸調整ミラー103をチルト方向に傾かせる。チルト連結部材7は、その軸方向には高い剛性を有し、軸方向の両端が光軸調整ミラー103とチルトステージ6に固定されている。このため、光軸調整ミラー103とチルトステージ6との間の動きには、がたや遅れは発生しない。また、チルト連結部材7は、軸方向以外の方向には低い剛性を有するため、撓んで変位を吸収することができる。
【0075】
チルト連結部材7が線バネにより形成されていることで、その撓みを復元する方向にはバネ力が発生するが、長さや線径を調節してチルトステージ6の駆動力に対してバネ力を小さくすることにより、バネ力に逆らってチルトステージ6を駆動することができる。
【0076】
図13(a),(b)は、図11のX−X’断面においてパンステージ8が駆動されたときに、光軸調整ミラー103がパン方向に傾く様子を示す。パンステージ8も、ボイスコイルモータ等のアクチュエータによって駆動される。
【0077】
パンステージ8が距離B1又はB2だけ駆動されると、線バネにより形成されたパン連結部材9が撓みながら光軸調整ミラー103をパン方向に傾かせる。パン連結部材9は、その軸方向には高い剛性を有し、軸方向の両端が光軸調整ミラー103とパンステージ8に固定されている。このため、光軸調整ミラー103とパンステージ8との間の動きには、がたや遅れは発生しない。また、パン連結部材8は、軸方向以外の方向には低い剛性を有するため、撓んで変位を吸収することができる。
【0078】
パン連結部材9が線バネにより形成されていることで、その撓みを復元する方向にはバネ力が発生するが、長さや線径を調節してパンステージ8の駆動力に対してバネ力を小さくすることにより、バネ力に逆らってパンステージ8を駆動することができる。
【0079】
以上のように構成されたミラー駆動部によって光軸調整ミラー103をチルト方向及びパン方向に傾かせることで、光軸調整ミラー103により反射した光ビームの光路を任意の方向に変えることかでき、第2の装置Bとの間での光軸ずれを補正することができる。
【0080】
なお、上述したミラー駆動部の構成は例に過ぎず、他の構成を用いてもよい。また、光軸調整ミラー103を固定のミラーとし、レンズ102をシフトさせる等の方法で光軸調整を行うことにしてもよい。
【0081】
また、第1の装置Aの全体の向きを変える駆動機構を設け、該駆動機構を動作させることで光軸調整を行ってもよい。
【0082】
次に、パイロットビームが位置検出素子118で飽和レベル以上又は最低受光感度レベル以下になった場合の位置検出素子118による検出結果の補間方法について説明する。
【0083】
パイロットビームの出力レベルは時間とともに変化する。このため、通信距離や大気の状態によっては、位置検出素子118でのパイロットビームの受光レベルが高すぎたり(受光量が過剰になったり)低すぎたり(受光量が不足したり)する。これにより、図7に示すように、位置検出素子118でパイロット信号を検出できない検出タイミング(パイロットビーム検出不可ポイント)が存在する。
【0084】
パイロットビーム検出不可ポイントでの光軸ずれの量は、パイロットビームの出力レベルが変化する周波数が光軸調整ミラー103の駆動スピードや装置の振動スピードより十分速い場合は、それほど変化していないと推測できる。このため、パイロットビーム検出不可ポイントよりもいくつかの検出タイミング前のパイロットビーム検出可能ポイント(第1の時点)にて位置検出素子118で検出したパイロットビームの検出結果をメモリに記憶させておく。そして、該記憶させた検出結果に基づいて、パイロットビーム検出不可ポイント(第2の時点)での光軸ずれ量を補間してもよい。
【0085】
しかし、パイロットビームの検出周期の2周期以上の時間の間、パイロットビームを検出できなかったような場合は、第2の装置Bとの通信が確立できなくなったと判断できる。このような場合は、光軸調整動作を停止させるとよい。
【0086】
また、パイロットビームの出力レベルが変換する周波数が、光軸調整ミラー103の駆動スピードや装置の振動スピードより十分遅い場合は、パイロットビーム検出不可ポイントで光軸ずれ量が変化している可能性がある。このため、パイロットビーム検出不可ポイントでは光軸調整動作を停止させてもよい。
【0087】
以上説明したように、本実施例によれば、設置者が通信距離や通信空間の状況の変化等を意識することなく第1の装置A(及び第2の装置B)を設置することができる。
【0088】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【0089】
なお、上記実施例では、パイロットビームの出力レベルを周期的に変化させる場合について説明したが、必ずしも周期的に変化させる必要はなく、不定期的(ランダム)に変化させてもよい。つまり、パイロットビームの出力レベルを時間とともに変化させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施例である光空間伝送装置を含む光空間伝送システムの構成を示す図。
【図2】実施例において、光軸調整モードと通信モードとを切り換えるための処理を示すフローチャート。
【図3】実施例において、連続的にパイロットビームの出力レベルを変化させたときの通信距離とパイロットビームの検出範囲との関係を示す図。
【図4】実施例において、段階的にパイロットビームの出力レベルを変化させたときの通信距離とパイロットビームの検出範囲との関係の例を示す図。
【図5】実施例において、段階的にパイロットビームの出力レベルを変化させたときの通信距離とパイロットビームの検出範囲との関係の他のを示す図。
【図6】実施例において、段階的に(3段階で)パイロットビームの出力レベルを変化させたときの通信距離とパイロットビームの検出範囲との関係を示す図。
【図7】実施例におけるパイロットビームの検出タイミングの例を示す図。
【図8】実施例におけるパイロットビームの検出タイミングの他の例を示す図。
【図9】実施例におけるパイロットビームの検出タイミングのさらに別の例を示す図。
【図10】実施例における位置検出素子を説明する図。
【図11】実施例におけるミラー駆動部の構成を示す図。
【図12】実施例におけるミラー駆動部の動作(チルト)を示す図。
【図13】実施例におけるミラー駆動部の動作(パン)を示す図。
【図14A】実施例における光軸調整モードでのパイロットビームの波形を示す図。
【図14B】実施例における通信モードでのパイロットビームの波形を示す図。
【符号の説明】
【0091】
107 受光素子
108 受光制御部
109 受信信号出力部
110 パイロット信号出力レベル制御部
111 パイロット信号発生部
112 変調部
113 光軸調整ミラー
114 信号合成部
115 発光素子
118 位置検出素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、自由空間を伝播する光ビームを用いて光空間通信を行う光空間伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の光空間伝送装置(以下、第1の装置という)と第2の光空間伝送装置(以下、第2の装置という)との間で光空間通信を行う場合、該通信を確立するために、第1の装置と第2の装置との光軸を互いに一致させる必要がある。
【0003】
第1及び第2の装置間で光軸を一致させるために、送信側装置では、受光側装置に送信側の装置に対する向きを調整させるための調整用光ビーム(以下、調整ビームという)を送信する。一方、受光側装置では、受光センサを使用して調整ビームを検出し、該調整ビームの到来方向、つまりは受光側装置の送信側装置に対する向きや受光側装置からの光ビームの射出方向の送信側装置に対するずれを求めている。
【0004】
このような調整ビームは、送信側装置から射出される、情報を通信するための主信号ビーム成分に対して調整ビーム成分として重畳される場合が多い。
【0005】
また、光空間伝送装置の設置を簡略化するために、設置者が通信距離を意識せずに設置可能な光空間伝送装置が望まれている。
【0006】
ここで、通信距離が長い場合には、光ビームの大気(霧や雨等)による減衰や拡散によって、受信側装置での受光レベルが低下する。このような通信状況においても、受信側装置で正常に調整ビーム成分を検出することができるようにするには、送信側装置における調整ビーム成分の出力レベルをできるだけ上げればよい。
【0007】
ただし、調整ビーム成分のレベルが高いと、調整ビーム成分と主信号ビーム成分との間で相互変調波が発生するおそれがあり、この影響によって主信号ビーム成分のS/N比が低下する。したがって、主信号ビーム成分にできるだけ影響を与えないように、調整ビーム成分の出力レベルをある程度以下に維持する必要がある。
【0008】
一方、通信距離が短い場合においては、受信側装置での受光センサが調整ビームの受光量が過剰となって飽和するおそれがある。受光センサが飽和すると、受信側装置の送信側装置に対する向きを検出することができない。したがって、調整ビームの出力レベルを受光センサが飽和しないレベルに抑えたり、光ビームの強度を減衰させる光アッテネータを用いたり、光ビームの拡がり角を大きくする等、受信側装置における調整ビームの受光レベルを下げる対策が必要となる。
【0009】
特許文献1には、設置時において通信距離に応じて調整ビームの出力レベルを増減させたり、通信が確立する前と後で調整ビームの出力レベルを変化させたりすることができる光空間伝送装置が開示されている。
【特許文献1】特許第3302141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1にて開示された光空間伝送装置では、設置後や通信確立後の調整ビームの出力レベルが一定と考えられる。このため、設置後や通信確立後の調整ビームの出力レベルの設定を、設置者が、通信距離や通信空間の状況の変化等を考慮して、最終的に調整する必要が生じる可能性が高い。
【0011】
そこで、本発明は、設置者が通信距離や通信空間の状況の変化等を意識することなく設置することが可能な光空間伝送装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面としての光空間伝送装置は、第1の装置と第2の装置との間で自由空間を伝播する光ビームにより光空間通信を行うシステムにおける第1の装置としての光空間伝送装置であって、光ビームを射出するビーム射出部と、該ビーム射出部から、第2の装置に該光空間伝送装置に対する該第2の装置からの光ビームの向きを調整させるための調整ビームとして、第1の周期で振幅が変化する光ビームを射出させる制御手段とを有する。そして、制御手段は、調整ビームの第1の周期ごとの最大振幅を時間とともに変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、設置者が通信距離や通信空間の状況の変化等を意識することなく光空間伝送装置を設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1には、本説明の実施例である光空間伝送装置により構成される光空間通信システムを示している。
【0016】
該システムは、通信距離Lを介して対向するように配置された第1の光空間伝送装置(以下、第1の装置という)Aと第2の光空間伝送装置(以下、第2の装置という)Bとにより構成されている。第1の装置Aと第2の装置Bとは、互いに同じ構成を有する。すなわち、以下では第1の装置Aの構成及び動作について説明するが、該構成及び動作は、第2の装置Bでも同じである。
【0017】
第1の装置Aにおいて、115は半導体レーザ素子により構成された発光素子(光源)であり、レーザ光を発振する。該レーザ光は、第1の偏光方向を有する直線偏光である。116は発光素子115から発散光として射出されたレーザ光を平行ビームに変換するコリメートレンズである。104はコリメートレンズ116からのレーザ光を、偏光分離面にて反射する偏光ビームスプリッタ104である。
【0018】
103は偏光ビームスプリッタ104からのレーザ光を反射するとともに、反射方向を変化させるようその向き(傾き)が制御される光軸調整ミラーである。102,101は光軸調整ミラー103で反射されたレーザ光をその発散角度を広げつつ送信光ビーム11として自由空間に射出する送受光レンズである。送信光ビーム11は、自由空間を伝播して第2の装置Bに入射する。
【0019】
第2の装置Bからも、同様の構成により光ビームが射出され、第1の装置Aに向かって自由空間を伝播してくる。該光ビームは、送信光ビーム11の偏光方向(第1の偏光方向)に対して直交する第2の偏光方向を有する直線偏光であり、受信光ビーム10として第1の装置Aの送受光レンズ101,102に入射する。送受光レンズ101,102に入射した受信光ビーム10は、光軸調整ミラー103で反射されて偏光ビームスプリッタ104の偏光分離面を透過し、光分割素子としてのハーフビームスプリッタ105に入射する。
【0020】
ハーフビームスプリッタ105に入射した受信光ビーム10のうち大部分は、該ハーフビームスプリッタ105で反射し、レンズ106により集光されて受光素子107に到達する。また、ハーフビームスプリッタ105に入射した受信光ビーム10のうち残りの部分は、該ハーフビームスプリッタ105を透過し、レンズ117により集光されて、受光センサとしての位置検出素子118に到達する。
【0021】
送受光レンズ101,102、光軸調整ミラー103、偏光ビームスプリッタ104、ハーフビームスプリッタ105、コリメートレンズ116及びレンズ106,118により、送受信光学系が構成される。
【0022】
また、発光素子115と、後述する主信号入力部113、パイロット信号発生部111、変調部112及び信号合成部114により、ビーム射出部としてのビーム送信部が構成される。さらに、受光素子107と、後述する受光制御部108及び受信信号出力部109により、ビーム受信部が構成される。また、位置検出素子118は、後述する角度補正量算出部119とともに、検出部及び光軸調整部を構成する。
【0023】
ビーム送信部において、主信号入力部113には、不図示の情報出力装置から、第2の装置Bに対して送信すべき情報を含む主信号(電気信号:以下、送信主信号という)が入力される。
【0024】
パイロット信号発生部111は、パイロット信号(電気信号としての調整信号)を出力する。パイロット信号は、第2の装置Bに、第1の装置Aに対する第2の装置Bからの受信光ビーム10の向きを調整させるためのパイロットビーム(調整ビーム)をビーム送信部から射出させるために、発光素子115にレーザ光を変調させるための信号である。該パイロット信号は、所定の周期(以下、第1の周期という)で振幅が変化する電気信号である。
【0025】
変調部112は、パイロット信号発生部111から出力されたパイロット信号を変調する。114は信号合成部であり、主信号入力部113からの送信主信号に、変調部112からのパイロット信号を合成(重畳)する。信号合成部114から出力された送信主信号とパイロット信号の合成信号は、発光素子115に入力される。発光素子115は、該合成信号に応じて発振(射出)するレーザ光を変調する。
【0026】
これにより、発光素子115(ビーム送信部)から、送信主信号に対応する光ビーム成分(主信号ビーム成分:以下、主信号ビームという)とパイロット信号に対応する光ビーム成分(以下、パイロットビームという)とが合成された送信光ビーム11が射出する。送信光ビーム11は、基本的に前述した第1の周期で振幅が変化する。主信号ビームは、送信主信号に含まれる情報に応じて変調される。また、パイロットビームは、変調部112によるパイロット信号の変調動作に応じて変調される。
【0027】
受信光ビーム10は、第2の装置Bから第1の装置Aに伝達すべき情報に対応して変調された主信号ビームと、第1の装置Aに、第2の装置Bに対する第1の装置Aからの送信光ビーム11の向きを調整させるためのパイロットビームとの合成ビームである。
【0028】
受光制御部108は、受光素子107の出力信号から主信号(電気信号:以下、受信主信号という)を抽出し、該抽出した受信主信号を受信信号出力部109に出力する。受信信号出力部109は、該受信主信号を不図示の外部装置に出力する。また、受光制御部108は、受光素子107における受光量を検出し、その結果をパイロット信号出力レベル制御部(制御手段)110に出力する。
【0029】
角度補正量算出部119は、位置検出素子118にて受光した第2の装置Bからのパイロットビームの受光位置に応じて、光軸調整ミラー103の角度を調節する。これにより、第1の装置Aの送受信光学系の光軸を、第2の装置Bの送受信光学系の光軸と一致させることができる。
【0030】
図10には、位置検出素子118の受光面を示している。位置検出素子118の受光面は、4つの受光領域118a〜118dに分割されている。パイロットビームは、受光面上にビームスポット1001を形成する。各受光領域は、その受光領域におけるビームスポット1001の受光面積(受光強度)に応じた信号を出力する。ビームスポットSが、例えば受光領域118b側に偏っている場合には、受光領域118bからの信号の出力レベルが他の受光領域118a,118c,118dからの信号の出力レベルよりも高くなる。このような場合、第1の装置Aからの送信光ビーム11の中心が、第2の装置Bの送受信光学系の光軸に対してずれていること(以下、このことを光軸ずれという)を示す。
【0031】
角度補正量算出部119は、受光領域118a〜118dからの信号の出力レベルが等しくなるように、すなわちビームスポット1001が位置検出素子118の受光面の中心に位置するように、光軸調整ミラー103の角度補正量を算出する。そして、該角度補正量を、後述するミラー駆動部に出力し、光軸調整ミラー103の角度を変更させる。これにより、第1の装置Aは、第2の装置Bに対する第1の装置Aからの送信光ビーム11の向きを調整し、送信光ビーム11の中心を第2の装置Bの送受信光学系の光軸に一致させる。以下の説明において、このような調整動作を、光軸調整ともいう。
【0032】
なお、送受信光学系は、位置検出素子118に向かう光軸と、発光素子115からの光軸と、受光素子107に向かう光軸とがすべて光学的に一致するように調整されている。このため、位置検出素子118の中心に受信光ビーム10のビームスポット1001が形成された状態では、受光素子107の中心にも受信光ビーム10の大部分が入射する。
【0033】
また、図1では、発光素子115からの送信光ビーム11の中心と、受信光ビーム10の中心とがずれているように記載されているが、これらは実際には互いに一致している。
【0034】
次に、パイロット信号出力レベル制御部110の動作について説明する。パイロット信号出力レベル制御部110は、受光制御部108で検出された受光量に応じて、以下の2つのモード(第1のモード及び第2のモード)で動作する。
【0035】
第1のモードは、パイロット信号の出力レベルを時間とともに(時間の経過とともに)変化させるモード(以下、光軸調整モードという)である。パイロット信号出力レベル制御部110が光軸調整モードで動作することで、ビーム送信部から射出される送信光ビーム11のうちパイロットビームの第1の周期ごとの最大振幅が時間とともに変化する。
【0036】
また、第2のモードは、パイロット信号の第1の周期ごとの最大振幅を時間とともに変化させずに一定に設定するモード(以下、通信モードという)である。パイロット信号出力レベル制御部110が通信モードで動作することで、送信光ビーム11のうちパイロットビームの第1の周期ごとの最大振幅も一定に維持される。
【0037】
ここで、図14Aには、光軸調整モードでのパイロット信号及びパイロット光ビームの波形の変化を示す。パイロット信号及びパイロット光ビームは、前述したように、第1の周期T1で振幅が変化する。光軸調整モードでは、パイロット信号出力レベル制御部110は、パイロット信号及びパイロットビームの第1の周期ごとの最大振幅が時間とともに変化するように、例えば第2の周期T2で変化するように変調部112を制御する。第2の周期T2は、第1の周期T2よりも長い周期(時間)である。パイロット信号及びパイロットビームの第1の周期ごとの最大振幅は、第2の周期T2で、特定レベル(例えば、最大レベル)から変化して該特定レベルに最初に戻る。
【0038】
図14Bには、通信モードでのパイロット信号及びパイロット光ビームの波形の変化を示す。この通信モードでも、パイロット信号及びパイロット光ビームは、第1の周期T1で振幅が変化する。ただし、通信モードでは、パイロット信号出力レベル制御部110は、パイロット信号及びパイロットビームの第1の周期ごとの最大振幅が時間とともに変化せずに一定に維持されるように変調部112を制御する。
【0039】
なお、以下の説明において、パイロット信号及びパイロットビームの第1の周期ごとの最大振幅を、それぞれの出力レベルという。
【0040】
次に、パイロット信号出力レベル制御部110におけるモード選択動作について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0041】
パイロット信号出力レベル制御部110は、ステップ202で、受光制御部108を通じて受光素子107における受光量を検出する。次に、ステップ203で、該検出受光量が、S/N比の劣化による受信主信号の誤検出が発生する値を基準として予め決められた所定の閾値(以下、最低受光量という)以下に低下したか否かを判定する。検出受光量が最低受光量以下である場合は、パイロット信号出力レベル制御部110は光軸調整モードに移行し、ステップ204でパイロット信号の出力レベルを時間ともに変化させる。
【0042】
ここで、本実施例では、最低受光量は、装置のばらつきを考慮して、受信主信号の誤検出が発生する値から3dB低い値までのいずれかの値に設定する。ただし、最低受光量がこの値に限定されるわけではい。
【0043】
一方、ステップ203において、検出受光量が最低受光量より高いと判定した場合は、パイロット信号出力レベル制御部110は、通信モードに移行し、ステップ205でパイロット信号の出力レベルを一定に維持する。
【0044】
このようなモード選択により、受信主信号の誤検出を防止しつつ、第1及び第2の装置A,B間での光軸ずれを良好に補正させる(光軸調整を行う)ことができる。
【0045】
なお、本実施例では、受光素子107における受光量の検出結果に応じて光軸調整モードと通信モードとを選択するが、位置検出素子118から出力された第2の装置Bからのパイロット信号のレベルに応じて光軸調整モードと通信モードとを選択してもよい。
【0046】
光軸調整モードでは、パイロット信号出力レベル制御部110は、以下の条件を満足するように変調部112を制御する。
【0047】
第1及び第2の装置A,Bの製品仕様により決定される両装置A,B間の最大通信距離を有効通信距離という。有効通信距離において、第1の装置Aでは、第2の装置Bに向けて射出されたパイロットビームが、第2の装置B側の位置検出素子(118)において正常に検出できる出力レベルを有することが重要である。このため、パイロット信号出力レベル制御部110は、パイロット信号が、そのような出力レベルを有するパイロットビームを射出させるために必要な出力レベルを有するように、変調部112に対してパイロット信号変調信号を出力する。
【0048】
つまり、パイロット信号出力レベル制御部110は、以下の条件を全て満たすパイロット信号を変調部112に生成させる。
【0049】
(1)有効通信距離内のすべての通信距離において、第2の装置Bにおける第1の装置Aからのパイロットビームの受光レベルを位置検出素子(118)で飽和を生じずに検出できる値とするような出力レベルを少なくとも含むパイロット信号。
【0050】
(2)有効通信距離内のすべての通信距離において、第2の装置Bにおける第1の装置Aからのパイロットビームの受光レベルを位置検出素子(118)の最低受光感度レベル以上とするような出力レベルを少なくとも含むパイロット信号。
【0051】
言い換えれば、パイロットビームの出力レベルを、後述する第1のレベル以上で、かつ第2のレベル以下のレベルを経るように変化させるように、変調部112にパイロット信号を生成させる。第1のレベルは、有効通信距離内のすべての通信距離において(特に、通信距離が第1の距離である場合に)、位置検出素子(118)が飽和するレベルよりも低い。また、第2のレベルは、有効通信距離内のすべての通信距離において(特に、通信距離が第1の距離よりも長い第2の距離である場合に)、位置検出素子(118)にてパイロットビームの検出が不能となるレベルよりも高い。
【0052】
(3)第2の装置B側の位置検出素子(118)の検出周期(第3の周期)に対して、より長い時間もしくはより長い周期、又は同期しない周期で出力レベルが変化するパイロット信号。
【0053】
つまり、パイロットビームの出力レベルが特定レベルから時間とともに変化して該特定レベルに最初に戻るまでの時間を、位置検出素子(118)の検出周期よりも長くする又は検出周期に同期しない時間とするように変調部112にパイロット信号を生成させる。
【0054】
なお、この場合、第2の装置B側の位置検出素子(118)の検出周期内(第3の周期内)において、パイロットビームの出力レベルを、少なくとも上記第1のレベル以上で、かつ上記第2のレベル以下のレベルを経るように変化させてもよい。
【0055】
有効通信距離の最短値及び最長値は、送信光ビーム11の拡がり角やパワー、第2の装置B側の位置検出素子(118)での有効受光レベル等の製品仕様によって決定される。本実施例では、有効通信距離の最短値を、装置の製造上のばらつき等を考慮したマージンをとり、受光量の過剰を原因とした主信号の誤検出が発生しない最も短い距離よりも長い距離に設定している。また。有効通信距離の最長値を、装置の製造上のばらつきや雨や霧等の大気中での減衰等を考慮したマージンをとり、受光量の不足を原因とした主信号の誤検出が発生しない最も長い距離よりも短い距離に設定している。
【0056】
次に、パイロット信号(つまりはパイロットビーム)の出力レベルの変化と位置検出素子118におけるパイロット信号の検出範囲との関係について説明する。
【0057】
図3には、第1の装置A側においてパイロットビームの出力レベルを連続的に変化させる場合における、第2の装置B側の位置検出素子(118)でのパイロットビームの受光レベルと、位置検出素子(118)のパイロットビームの検出範囲との関係を示す。横軸は通信距離を示し、縦軸は出力レベル及び受光レベルを示す。
【0058】
なお、本実施例では、パイロットビームをその出力レベルが正弦波状に連続的に変化する信号として説明しているが、ノコギリ波状や三角波状等、出力レベルが連続的に変化する波形であればどのような波形でもよい。
【0059】
図3に示すように、位置検出素子(118)でのパイロットビームの受光レベルは、大気の状態や通信空間(自由空間)の状況が同じであれば、光ビームの拡散等によって、通信距離が長くなるほど低下する。しかし、位置検出素子(118)によるパイロットビームの検出範囲(飽和レベルと最低受光感度レベル)は、通信距離にかかわらず常に一定である。このため、パイロットビームの出力レベルの変動幅は、有効通信距離のすべてにおいて、位置検出素子(118)でのパイロットビームの受光レベルが位置検出素子(118)の検出範囲に含まれるように設定される。これにより、位置検出素子(118)は、有効通信距離のすべてにおいて、パイロットビームを正常に検出することができる。
【0060】
なお、本実施例では、ある程度のマージンを持たせて、有効通信距離よりも長い通信距離(図中のパイロットビーム検出可能通信範囲)でも位置検出素子118でパイロットビームを正常に検出できるように、パイロットビームの出力レベルの変動幅を決めている。
【0061】
図4には、第1の装置A側においてパイロットビームの出力レベルを段階的に変化させる場合における、第2の装置B側の位置検出素子(118)でのパイロットビームの受光レベルと、位置検出素子(118)のパイロットビームの検出範囲との関係を示す。
【0062】
なお、図4では、パイロットビームの出力レベルを方形波状に変化させているが、出力レベルを段階的に切り換えるものであれば、どのような波形でもよい。
【0063】
また、変調部112が、パイロットビームの出力レベルを複数の出力レベルの中で切り換える機能を持ち、パイロット信号出力レベル制御部110からの指令に応じて該出力レベルを切り換えるようにしてもよい。このような構成によれば、パイロットビームの出力レベルを連続的に変化させる場合に比べて、簡易な構成でパイロットビームの出力レベルを変化させることができる。
【0064】
図4の条件では、段階的にパイロットビームの出力レベルが変化するため、位置検出素子(118)のパイロットビームの検出範囲は、上位レベルの検出可能範囲と下位レベルの検出可能範囲とを合わせた範囲となる。パイロットビームの出力レベルの変動幅の条件としては、図3に示したように連続的にパイロットビームの出力レベルを変化させる場合と同じである。
【0065】
ただし、連続的にパイロットビームの出力レベルを変化させる場合と異なり、位置検出素子(118)でのパイロットビームの受光レベルが段階的にしか変化しない。したがって、図5に示すように、パイロットビームの変動幅を大きくすると、位置検出素子(118)でパイロットビームを検出できない通信距離が発生する。有効通信距離の範囲が広く、パイロットビームの出力レベルの変動幅がある程度必要な場合は、図6に示すように、中位レベルのパイロットビームの出力レベルを設けるとよい。これにより、有効通信距離内のすべての通信距離で、位置検出素子(118)によりパイロットビームを正常に検出できるようになる。
【0066】
図6に示す例では、パイロットビームの出力レベルを3段階に切り換える場合を示したが、さらに多くの段階で切り換えることにより、位置検出素子(118)でパイロットビームを検出できる通信距離を長くすることができる。
【0067】
次に、パイロットビームの出力レベルの変動速度と位置検出素子(118)でのパイロットビームの検出タイミングについて説明する。
【0068】
先に説明した通り、パイロットビームの出力レベルは、有効通信距離内のすべての通信距離において、位置検出素子(118)でパイロットビームを正常に検出できるレベルを持つように変化する。このため、図7に示すように、位置検出素子(118)での検出タイミングがパイロットビームの出力レベルの変化の周波数よりも十分に遅い場合は、位置検出素子118で検出できる範囲内の出力レベルを有するパイロットビームを検出することができる。そのような検出タイミングを、図中にパイロットビーム検出可能ポイントとして示す。
【0069】
しかし、図8に示すように、位置検出素子(118)での検出タイミングによっては、上記のようなパイロットビームを検出できない可能性がある。そのような検出タイミングを、図中にパイロットビーム検出不可ポイントとして示す。このため、パイロット信号の変動周期は、パイロット信号の検出タイミングの周期よりも十分遅く設定するか、図9に示すように、互いに同期しない周波数(又は周期)を設定するとよい。
【0070】
以上により、有効通信距離内のすべての通信距離において、第1の装置Aからのパイロットビームを第2の装置B側の位置検出素子(118)で検出することができる。このことは、第2の装置Bからのパイロットビームを検出する第1の装置A側の位置検出素子118でも同じである。
【0071】
次に、光軸調整ミラー103の角度調節を行うミラー駆動部について、図11、図12及び図13を用いて説明する。
【0072】
図11において、光軸調整ミラー103は、チルト保持部材4によって保持されている。チルト保持部材4に設けられたチルト中心軸2は、パン保持部材5によって回転可能に支持されている。パン保持部材5に設けられたパン中心軸3は、支持部材10によって回転可能に支持されている。
【0073】
図12(a),(b)は、図11のY−Y’断面において、チルト保持部材4に連結されたチルトステージ6が駆動されたときに、光軸調整ミラー103がチルト方向に傾く様子を示す。チルトステージ6は、ボイスコイルモータ等のアクチュエータによって駆動される。
【0074】
チルトステージ6が距離A1又はA2だけ駆動されると、線バネにより形成されたチルト連結部材7が撓みながら光軸調整ミラー103をチルト方向に傾かせる。チルト連結部材7は、その軸方向には高い剛性を有し、軸方向の両端が光軸調整ミラー103とチルトステージ6に固定されている。このため、光軸調整ミラー103とチルトステージ6との間の動きには、がたや遅れは発生しない。また、チルト連結部材7は、軸方向以外の方向には低い剛性を有するため、撓んで変位を吸収することができる。
【0075】
チルト連結部材7が線バネにより形成されていることで、その撓みを復元する方向にはバネ力が発生するが、長さや線径を調節してチルトステージ6の駆動力に対してバネ力を小さくすることにより、バネ力に逆らってチルトステージ6を駆動することができる。
【0076】
図13(a),(b)は、図11のX−X’断面においてパンステージ8が駆動されたときに、光軸調整ミラー103がパン方向に傾く様子を示す。パンステージ8も、ボイスコイルモータ等のアクチュエータによって駆動される。
【0077】
パンステージ8が距離B1又はB2だけ駆動されると、線バネにより形成されたパン連結部材9が撓みながら光軸調整ミラー103をパン方向に傾かせる。パン連結部材9は、その軸方向には高い剛性を有し、軸方向の両端が光軸調整ミラー103とパンステージ8に固定されている。このため、光軸調整ミラー103とパンステージ8との間の動きには、がたや遅れは発生しない。また、パン連結部材8は、軸方向以外の方向には低い剛性を有するため、撓んで変位を吸収することができる。
【0078】
パン連結部材9が線バネにより形成されていることで、その撓みを復元する方向にはバネ力が発生するが、長さや線径を調節してパンステージ8の駆動力に対してバネ力を小さくすることにより、バネ力に逆らってパンステージ8を駆動することができる。
【0079】
以上のように構成されたミラー駆動部によって光軸調整ミラー103をチルト方向及びパン方向に傾かせることで、光軸調整ミラー103により反射した光ビームの光路を任意の方向に変えることかでき、第2の装置Bとの間での光軸ずれを補正することができる。
【0080】
なお、上述したミラー駆動部の構成は例に過ぎず、他の構成を用いてもよい。また、光軸調整ミラー103を固定のミラーとし、レンズ102をシフトさせる等の方法で光軸調整を行うことにしてもよい。
【0081】
また、第1の装置Aの全体の向きを変える駆動機構を設け、該駆動機構を動作させることで光軸調整を行ってもよい。
【0082】
次に、パイロットビームが位置検出素子118で飽和レベル以上又は最低受光感度レベル以下になった場合の位置検出素子118による検出結果の補間方法について説明する。
【0083】
パイロットビームの出力レベルは時間とともに変化する。このため、通信距離や大気の状態によっては、位置検出素子118でのパイロットビームの受光レベルが高すぎたり(受光量が過剰になったり)低すぎたり(受光量が不足したり)する。これにより、図7に示すように、位置検出素子118でパイロット信号を検出できない検出タイミング(パイロットビーム検出不可ポイント)が存在する。
【0084】
パイロットビーム検出不可ポイントでの光軸ずれの量は、パイロットビームの出力レベルが変化する周波数が光軸調整ミラー103の駆動スピードや装置の振動スピードより十分速い場合は、それほど変化していないと推測できる。このため、パイロットビーム検出不可ポイントよりもいくつかの検出タイミング前のパイロットビーム検出可能ポイント(第1の時点)にて位置検出素子118で検出したパイロットビームの検出結果をメモリに記憶させておく。そして、該記憶させた検出結果に基づいて、パイロットビーム検出不可ポイント(第2の時点)での光軸ずれ量を補間してもよい。
【0085】
しかし、パイロットビームの検出周期の2周期以上の時間の間、パイロットビームを検出できなかったような場合は、第2の装置Bとの通信が確立できなくなったと判断できる。このような場合は、光軸調整動作を停止させるとよい。
【0086】
また、パイロットビームの出力レベルが変換する周波数が、光軸調整ミラー103の駆動スピードや装置の振動スピードより十分遅い場合は、パイロットビーム検出不可ポイントで光軸ずれ量が変化している可能性がある。このため、パイロットビーム検出不可ポイントでは光軸調整動作を停止させてもよい。
【0087】
以上説明したように、本実施例によれば、設置者が通信距離や通信空間の状況の変化等を意識することなく第1の装置A(及び第2の装置B)を設置することができる。
【0088】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【0089】
なお、上記実施例では、パイロットビームの出力レベルを周期的に変化させる場合について説明したが、必ずしも周期的に変化させる必要はなく、不定期的(ランダム)に変化させてもよい。つまり、パイロットビームの出力レベルを時間とともに変化させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施例である光空間伝送装置を含む光空間伝送システムの構成を示す図。
【図2】実施例において、光軸調整モードと通信モードとを切り換えるための処理を示すフローチャート。
【図3】実施例において、連続的にパイロットビームの出力レベルを変化させたときの通信距離とパイロットビームの検出範囲との関係を示す図。
【図4】実施例において、段階的にパイロットビームの出力レベルを変化させたときの通信距離とパイロットビームの検出範囲との関係の例を示す図。
【図5】実施例において、段階的にパイロットビームの出力レベルを変化させたときの通信距離とパイロットビームの検出範囲との関係の他のを示す図。
【図6】実施例において、段階的に(3段階で)パイロットビームの出力レベルを変化させたときの通信距離とパイロットビームの検出範囲との関係を示す図。
【図7】実施例におけるパイロットビームの検出タイミングの例を示す図。
【図8】実施例におけるパイロットビームの検出タイミングの他の例を示す図。
【図9】実施例におけるパイロットビームの検出タイミングのさらに別の例を示す図。
【図10】実施例における位置検出素子を説明する図。
【図11】実施例におけるミラー駆動部の構成を示す図。
【図12】実施例におけるミラー駆動部の動作(チルト)を示す図。
【図13】実施例におけるミラー駆動部の動作(パン)を示す図。
【図14A】実施例における光軸調整モードでのパイロットビームの波形を示す図。
【図14B】実施例における通信モードでのパイロットビームの波形を示す図。
【符号の説明】
【0091】
107 受光素子
108 受光制御部
109 受信信号出力部
110 パイロット信号出力レベル制御部
111 パイロット信号発生部
112 変調部
113 光軸調整ミラー
114 信号合成部
115 発光素子
118 位置検出素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の装置と第2の装置との間で自由空間を伝播する光ビームにより光空間通信を行うシステムにおける前記第1の装置としての光空間伝送装置であって、
前記光ビームを射出するビーム射出部と、
該ビーム射出部から、前記第2の装置に該光空間伝送装置に対する該第2の装置からの光ビームの向きを調整させるための調整ビームとして、第1の周期で振幅が変化する前記光ビームを射出させる制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記調整ビームの前記第1の周期ごとの最大振幅を時間とともに変化させることを特徴とする光空間伝送装置。
【請求項2】
前記ビーム射出部は、
光源と、
該光源から射出される前記光ビームを変調するために該光源に入力される電気信号であって、前記第1の周期で振幅が変化する調整信号を発生する信号発生部と、
前記調整信号を変調する変調部とを有し、
前記制御手段は、前記調整信号の前記第1の周期ごとの最大振幅を時間とともに変化させるように前記変調部を制御することを特徴とする請求項1に記載の光空間伝送装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記調整ビームの前記第1の周期ごとの最大振幅を、該第1の周期よりも長い第2の周期で変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の光空間伝送装置。
【請求項4】
前記第2の装置は、該光空間伝送装置からの前記調整ビームを第3の周期で検出し、
前記制御手段は、前記調整ビームの前記第1の周期ごとの最大振幅が特定レベルから時間とともに変化して該特定レベルに最初に戻るまでの時間を、前記第3の周期よりも長くする又は前記第3の周期に同期しない時間とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光空間伝送装置。
【請求項5】
前記第2の装置は、該光空間伝送装置からの前記調整ビームを検出する受光センサを有し、
前記制御手段は、前記調整ビームの前記第1の周期ごとの最大振幅を、少なくとも第1のレベル以上で、かつ第2のレベル以下のレベルを経るように変化させ、
前記第1のレベルは、該光空間伝送装置と前記第2の装置との間の通信距離が第1の距離である場合に、前記受光センサが飽和するレベルよりも低く、
前記第2のレベルは、該光空間伝送装置と前記第2の装置との間の通信距離が前記第1の距離よりも長い第2の距離である場合に、前記受光センサにて前記調整ビームの検出が不能となるレベルよりも高いことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の光空間伝送装置。
【請求項6】
前記第2の装置の前記受光センサは、該光空間伝送装置からの前記調整ビームを第3の周期で検出し、
前記制御手段は、前記調整ビームの前記第1の周期ごとの最大振幅を、前記第3の周期内において、少なくとも前記第1のレベル以上で、かつ前記第2のレベル以下のレベルを経るように変化させることを特徴とする請求項5に記載の光空間伝送装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記調整ビームの成分と、前記第2の装置に対して情報を通信するための主信号ビーム成分とが重畳された前記光ビームを前記ビーム射出部から射出させ、
前記制御手段は、前記調整ビームの成分の前記第1の周期ごとの最大振幅を時間とともに変化させる第1のモードと、該調整ビームの成分の前記第1の周期ごとの最大振幅を一定とする第2のモードとを有し、
前記制御手段は、前記第2の装置における該光ビームの受光量が前記主信号ビーム成分の誤検出が発生するレベルに低下した場合は前記第1のモードで動作し、前記受光量が前記誤検出が発生するレベルより高い場合は第2のモードで動作することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の光空間伝送装置。
【請求項8】
前記第2の装置は、該光空間伝送装置に前記第2の装置に対する該光空間伝送装置からの前記光ビームの向きを調整させるための調整ビームとして、所定の周期で振幅が変化し、かつ該所定の周期ごとの最大振幅が時間とともに変化する光ビームを射出し、
該光空間伝送装置は、前記第2の装置からの調整ビームを検出する受光センサを有しており、
該光空間伝送装置は、
第1の時点において前記第2の装置からの調整ビームの前記受光センサによる検出結果を記憶し、
前記第1の時点よりも後の第2の時点において、前記受光センサにおける前記第2の装置からの調整ビームの受光量の過剰又は不足によって、該受光センサで前記第2の装置からの調整ビームを検出できない場合は、該第2の装置からの調整ビームの検出結果を前記記憶した検出結果を用いて補間することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の光空間伝送装置。
【請求項1】
第1の装置と第2の装置との間で自由空間を伝播する光ビームにより光空間通信を行うシステムにおける前記第1の装置としての光空間伝送装置であって、
前記光ビームを射出するビーム射出部と、
該ビーム射出部から、前記第2の装置に該光空間伝送装置に対する該第2の装置からの光ビームの向きを調整させるための調整ビームとして、第1の周期で振幅が変化する前記光ビームを射出させる制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記調整ビームの前記第1の周期ごとの最大振幅を時間とともに変化させることを特徴とする光空間伝送装置。
【請求項2】
前記ビーム射出部は、
光源と、
該光源から射出される前記光ビームを変調するために該光源に入力される電気信号であって、前記第1の周期で振幅が変化する調整信号を発生する信号発生部と、
前記調整信号を変調する変調部とを有し、
前記制御手段は、前記調整信号の前記第1の周期ごとの最大振幅を時間とともに変化させるように前記変調部を制御することを特徴とする請求項1に記載の光空間伝送装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記調整ビームの前記第1の周期ごとの最大振幅を、該第1の周期よりも長い第2の周期で変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の光空間伝送装置。
【請求項4】
前記第2の装置は、該光空間伝送装置からの前記調整ビームを第3の周期で検出し、
前記制御手段は、前記調整ビームの前記第1の周期ごとの最大振幅が特定レベルから時間とともに変化して該特定レベルに最初に戻るまでの時間を、前記第3の周期よりも長くする又は前記第3の周期に同期しない時間とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光空間伝送装置。
【請求項5】
前記第2の装置は、該光空間伝送装置からの前記調整ビームを検出する受光センサを有し、
前記制御手段は、前記調整ビームの前記第1の周期ごとの最大振幅を、少なくとも第1のレベル以上で、かつ第2のレベル以下のレベルを経るように変化させ、
前記第1のレベルは、該光空間伝送装置と前記第2の装置との間の通信距離が第1の距離である場合に、前記受光センサが飽和するレベルよりも低く、
前記第2のレベルは、該光空間伝送装置と前記第2の装置との間の通信距離が前記第1の距離よりも長い第2の距離である場合に、前記受光センサにて前記調整ビームの検出が不能となるレベルよりも高いことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の光空間伝送装置。
【請求項6】
前記第2の装置の前記受光センサは、該光空間伝送装置からの前記調整ビームを第3の周期で検出し、
前記制御手段は、前記調整ビームの前記第1の周期ごとの最大振幅を、前記第3の周期内において、少なくとも前記第1のレベル以上で、かつ前記第2のレベル以下のレベルを経るように変化させることを特徴とする請求項5に記載の光空間伝送装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記調整ビームの成分と、前記第2の装置に対して情報を通信するための主信号ビーム成分とが重畳された前記光ビームを前記ビーム射出部から射出させ、
前記制御手段は、前記調整ビームの成分の前記第1の周期ごとの最大振幅を時間とともに変化させる第1のモードと、該調整ビームの成分の前記第1の周期ごとの最大振幅を一定とする第2のモードとを有し、
前記制御手段は、前記第2の装置における該光ビームの受光量が前記主信号ビーム成分の誤検出が発生するレベルに低下した場合は前記第1のモードで動作し、前記受光量が前記誤検出が発生するレベルより高い場合は第2のモードで動作することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の光空間伝送装置。
【請求項8】
前記第2の装置は、該光空間伝送装置に前記第2の装置に対する該光空間伝送装置からの前記光ビームの向きを調整させるための調整ビームとして、所定の周期で振幅が変化し、かつ該所定の周期ごとの最大振幅が時間とともに変化する光ビームを射出し、
該光空間伝送装置は、前記第2の装置からの調整ビームを検出する受光センサを有しており、
該光空間伝送装置は、
第1の時点において前記第2の装置からの調整ビームの前記受光センサによる検出結果を記憶し、
前記第1の時点よりも後の第2の時点において、前記受光センサにおける前記第2の装置からの調整ビームの受光量の過剰又は不足によって、該受光センサで前記第2の装置からの調整ビームを検出できない場合は、該第2の装置からの調整ビームの検出結果を前記記憶した検出結果を用いて補間することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の光空間伝送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【公開番号】特開2010−166270(P2010−166270A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6198(P2009−6198)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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