説明

光触媒、コーティング剤、内装材、及び光触媒の製造方法

【課題】 可視光の照射によっても有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する性能に優れた光触媒を提供することを課題としている。
【解決手段】 酸化タングステンに銅が担持されてなる銅担持酸化タングステンと酸化チタンとを含む光触媒などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒、該光触媒を含むコーティング剤、該光触媒を含む内装材、及び該光触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光が照射されることにより触媒作用を発揮する光触媒としては、様々な種類のものが知られている。例えば、紫外光よりエネルギーの小さい可視光の照射によっても触媒作用を発揮し、アセトアルデヒドなどの環境汚染物質を分解できる酸化タングステンが知られている。
【0003】
斯かる光触媒は、可視光の照射によっても比較的高い触媒作用を発揮するものの、必ずしも、アセトアルデヒドなどの有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する性能に優れるわけではない。
【0004】
これに対して、可視光の照射によっても有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する性能を高めるべく、酸化タングステンに白金などの金属が担持されてなる金属担持酸化タングステンを含む光触媒が提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、この種の光触媒においては、アセトアルデヒドなどの有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する性能が未だ満足できるものではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−160566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、可視光の照射によっても有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する性能に優れた光触媒が要望されている。
【0008】
本発明は、上記問題点、要望点等に鑑み、可視光の照射によっても有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する性能に優れた光触媒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明に係る光触媒は、酸化タングステンに銅が担持されてなる銅担持酸化タングステンと酸化チタンとを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る光触媒は、前記銅担持酸化タングステンと前記酸化チタンとを銅担持酸化タングステン:酸化チタン=3:7〜9:1の重量比で含むことが好ましい。斯かる範囲の重量比であることにより、光触媒は、可視光の照射によっても有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する性能がより優れたものになるという利点がある。
【0011】
本発明に係るコーティング剤は、前記光触媒を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る内装材は、前記光触媒を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る光触媒の製造方法は、酸化タングステンに銅が担持されてなる銅担持酸化タングステンと酸化チタンとに粉砕処理を施す粉砕処理工程を実施することを特徴とする。また、前記粉砕処理工程を溶媒の存在下で実施することが好ましい。
また、本発明に係る光触媒の製造方法は、前記粉砕処理工程で、前記銅担持酸化タングステン及び前記酸化チタンの両方の存在下で、互いに衝突することでせん断力を生じる粉砕媒体の衝突によって粉砕処理を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る光触媒は、可視光の照射によっても有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する性能に優れているという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】光触媒によって生成される二酸化炭素の生成速度を示すグラフ。
【図2】光触媒によって生成される二酸化炭素の生成速度を示すグラフ。
【図3】光触媒によって生成される二酸化炭素の生成速度を示すグラフ。
【図4】光触媒への光照射に伴うアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度の経時的な変化を表すグラフ。
【図5】光触媒への光照射によるアセトアルデヒド低減速度定数及び二酸化炭素生成速度を表すグラフ。
【図6】光触媒への光照射に伴うアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度の経時的な変化を表すグラフ。
【図7】光触媒への光照射によるアセトアルデヒド低減速度定数及び二酸化炭素生成速度を表すグラフ。
【図8】光触媒への光照射に伴うアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度の経時的な変化を表すグラフ。
【図9】光触媒への光照射に伴うアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度の経時的な変化を表すグラフ。
【図10】光触媒への光照射に伴うアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度の経時的な変化を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る光触媒の一実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態の光触媒は、酸化タングステンに銅が担持されてなる銅担持酸化タングステンと酸化チタンとを含むものである。好ましくは、酸化タングステン粒子に銅が担持されてなる銅担持酸化タングステン粒子と酸化チタン粒子とを含むものである。
【0018】
前記光触媒に前記銅担持酸化タングステンと前記酸化チタンとが含まれていることにより、可視光の照射によっても有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する性能が優れたものとなり得る。有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する性能が優れたものとなる原理は、解明されているわけではないが、銅担持酸化タングステンのバンド構造と酸化チタンのバンド構造の違いにより、光照射時における電子の授受が両化合物間で効率的に行われ、酸化還元反応が促進されていることによるものと考えられる。
【0019】
前記銅担持酸化タングステンは、化学式WO3で表される結晶を含有する酸化タングステンに、塩化銅などの銅化合物を担持させることなどにより、銅が担持されてなる。なお、前記銅担持酸化タングステンは、粒子状で前記光触媒に含まれていることが好ましい。
また、酸化タングステンの結晶構造としては、単斜晶系が好ましい。
【0020】
前記銅担持酸化タングステンにおける銅の含有量は、特に限定されるものではないが、0.0001〜3重量%であることが好ましい。斯かる含有量が0.0001重量%以上であることにより、触媒活性がより高まるという利点があり、3重量%以下であることにより、酸化タングステンの活性点が相対的に減少することが抑制され、銅担持による触媒活性をより得やすくなるという利点がある。
【0021】
前記銅担持酸化タングステン粒子の平均一次粒子径は、通常、10nm〜90nmであり、光照射による触媒作用がより高まるという点で、20nm〜60nmであることが好ましい。
【0022】
前記酸化チタンは、化学式TiO2で表される結晶を含有し、好ましくは、粒子状で前記光触媒に含まれている。
【0023】
前記酸化チタンの結晶の型としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型が挙げられる。なかでも酸化チタンの結晶の型としては、光照射による触媒作用に優れているという点で、アナターゼ型が好ましい。
【0024】
前記酸化チタンとしては、Ti及びO以外の元素を含有させる処理をした酸化チタン、斯かる処理をしていない酸化チタンが挙げられる。
【0025】
Ti及びO以外の元素を含有させる処理をした酸化チタンは、Ti及びO以外の元素を含むことにより波長400nm以上の可視光でも触媒作用を発揮し得るものであり、該酸化チタンとしては、例えば、窒素ドープ酸化チタン、硫黄ドープ酸化チタンなどが挙げられる。
Ti及びO以外の元素を含有させる処理をしていない酸化チタンは、通常、波長400nm以上の可視光では触媒作用を発揮しない。しかしながら、安価でありつつ、有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する優れた性能を前記光触媒に付与し得るという点で好ましい。即ち、前記酸化チタンとしては、波長400nm以上の可視光によって触媒作用を発揮しないものであっても好適に用いることができる。
【0026】
前記酸化チタン粒子の平均一次粒子径は、通常、5nm〜50nmであり、光照射による触媒作用がより高まるという点で、5nm〜40nmであることが好ましい。
【0027】
前記銅担持酸化タングステンと前記酸化チタンとの重量比は、銅担持酸化タングステン:酸化チタン=3:7〜9:1の重量比であることが好ましく、6:4〜9:1の重量比であることがより好ましく、6:4〜8:2の重量比であることがさらに好ましい。斯かる重量比であることにより、可視光が照射される条件下であっても、有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する光触媒の性能がより高まるという利点がある。
【0028】
なお、前記光触媒は、前記銅担持酸化タングステン及び前記酸化チタンのほかに、ケイ素、ジルコニウムなどの金属元素の酸化物を含み得る。
【0029】
次に、本発明に係る光触媒の製造方法の一実施形態について詳しく説明する。
【0030】
本実施形態の光触媒の製造方法は、酸化タングステンに銅が担持されてなる銅担持酸化タングステンと酸化チタンとに粉砕処理を施す粉砕処理工程を実施するものである。
【0031】
前記銅担持酸化タングステンは、酸化タングステンに銅を担持させることにより調製することができる。
【0032】
前記酸化タングステンは、例えば、金属タングステンを直接酸化することにより、又は、パラタングステン酸アンモニウム(APT)等のタングステン化合物を空気中で熱分解することにより、酸化タングステン粒子の態様で得ることができる。
また、前記銅担持酸化タングステンは、例えば、酸化タングステン粒子に硫酸銅や硝酸銅などの銅化合物の水溶液又はエタノール溶液を加えて混合し、水やエタノールを揮発させてから、焼成することにより、銅担持酸化タングステン粒子の態様で得ることができる。
なお、銅担持酸化タングステン粒子としては、市販されているものを用いることができる。
【0033】
前記酸化チタンは、例えば、オキシ硫酸チタン、硫酸チタン、オキシ塩化チタン、塩化チタンなどのチタン化合物の水溶液と、アンモニアやアミンなどの塩基とを反応させて得た生成物を焼成することにより酸化チタン粒子の態様で得ることができる。
なお、酸化チタン粒子としては、市販されているものを用いることができる。
【0034】
前記酸化チタンとしては、例えば、窒素がドープされてなる窒素ドープ酸化チタンを用いることもできる。
該窒素ドープ酸化チタンは、例えば、窒酸化チタン、酸化チタン、及び金属チタンのうち少なくとも1種をターゲット材料とし、この材料を窒素ガスを含む雰囲気中で蒸着又はイオンプレーティングした後、アンモニアガスを含む雰囲気中で400℃以上700℃以下の温度で熱処理すること、又は、酸化チタン又は含水酸化チタンを、アンモニアガスを含む雰囲気、窒素ガスを含む雰囲気、もしくは窒素ガス及び水素ガスの混合雰囲気中で熱処理すること等により調製することができる。
【0035】
前記光触媒の製造方法においては、前記粉砕処理工程の前に前記銅担持酸化タングステン及び前記酸化チタンのうちの少なくとも一方を溶媒に分散させて分散液を得る分散工程を実施することが好ましい。
また、前記光触媒の製造方法においては、該分散工程の後に、溶媒の存在下で前記銅担持酸化タングステンの粒子と酸化チタンの粒子とに粉砕処理を施す前記粉砕処理工程を実施することが好ましい。
また、前記光触媒の製造方法においては、該粉砕処理工程の後に、前記銅担持酸化タングステン又は前記酸化チタンの少なくともどちらか一方と前記溶媒とを含み粉砕処理が施されたスラリーと、前記粉砕媒体とを分離する分離工程を実施することができる。
その後、スラリーから前記溶媒を除去する溶媒除去工程を実施することが好ましい。なお、溶媒除去工程の前に、必要に応じてスラリー同士を混合することができる。
【0036】
具体的には、前記光触媒の製造方法においては、例えば、前記分散工程で、銅担持酸化タングステンの粒子と酸化チタンの粒子と溶媒とを混合した同時混合分散液を得ることができる。
次に、前記粉砕処理工程で、溶媒の存在下で粉砕媒体の衝突に伴うせん断力によって、銅担持酸化タングステン及び酸化チタンを含む同時混合分散液に粉砕処理を施すことができる。
その後、前記分離工程で、粉砕処理を施したスラリー(同時混合スラリー)と粉砕媒体とを分離し、さらに前記溶媒除去工程で、スラリーから溶媒を除去することができる。
【0037】
一方、これに対して、前記光触媒の製造方法においては、前記分散工程で、例えば、銅担持酸化タングステンの粒子と溶媒とを含む第1分散液と、酸化チタンの粒子と溶媒とを含む第2分散液とを調製することができる。
次に、前記粉砕処理工程で、銅担持酸化タングステンの粒子と溶媒とを含む第1分散液を粉砕処理して第1スラリーを調製し、また、前記酸化チタンの粒子と溶媒とを含む第2分散液を粉砕処理して第2スラリーを調製することができる。
その後、前記分離工程で、これら各スラリーと粉砕媒体とを分離した後に各スラリーを混合して混合スラリー(後混合スラリー)を調製し、さらに前記溶媒除去工程で、後混合スラリーから溶媒を除去することができる。なお、後混合スラリーに対しては、必要に応じて、後述する超音波照射による粉砕処理などの粉砕処理を施すこともできる。
【0038】
前記光触媒の製造方法においては、比較的少ない工程で光触媒を製造でき、しかも光触媒の触媒性能がより優れたものになり得るという点で、前記粉砕処理工程において、前記銅担持酸化タングステン及び前記酸化チタンの両方の存在下で、粉砕媒体の衝突に伴うせん断力によって同時混合分散液に粉砕処理を施すことが好ましい。
【0039】
前記分散工程では、銅担持酸化タングステン粒子又は酸化チタン粒子を溶媒に分散させる方法として、手撹拌による分散、ホモジナイザーによる分散などの方法を採用することができる。
【0040】
前記分散工程で用いる前記溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、又はアルコール、ケトンなどの有機溶媒等を用いることができ、取り扱いが容易である点、溶媒除去後に触媒作用に悪影響を及ぼしにくい点で、水を用いることが好ましい。
前記溶媒には、粒子の分散安定性を高めるべく、適宜、pH調整剤、分散剤(界面活性剤)等を添加することができる。
【0041】
前記粉砕処理工程における粉砕処理は、前記銅担持酸化タングステンと前記酸化チタンとをより小さくするために行う処理である。より具体的には、粒子状の銅担持酸化タングステンと酸化チタンとに施す粉砕処理は、前記銅担持酸化タングステンの粒子と酸化チタンの粒子とをより小さい粒子にするため、即ち、前記銅担持酸化タングステン及び前記酸化チタンの二次粒子をより小さい二次粒子にするために行う。
前記粉砕処理は、前記銅担持酸化タングステンと前記酸化チタンとに対してそれぞれ施すこともでき、また、前記銅担持酸化タングステン及び前記酸化チタンの両方に同時に施すこともできる。
【0042】
前記粉砕処理としては、例えば、互いに衝突することでせん断力を生じる粉砕媒体の存在下で粉砕媒体の衝突に伴うせん断力によって粉砕を行う粉砕処理、粒子同士の衝突力によって粉砕を行う粉砕処理、超音波洗浄機などを用いて超音波を照射することによって粉砕を行う粉砕処理、乳鉢と乳棒との間で生じる圧搾力により粉砕を行う粉砕処理などが採用され得る。
なかでも、前記粉砕処理としては、有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する光触媒の性能がより優れたものになり得るという点で、前記粉砕媒体の存在下で粉砕媒体の衝突に伴うせん断力によって粉砕を行う粉砕処理が好ましい。
また、前記粉砕処理としては、有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する光触媒の性能がより優れたものになり得るという点で、前記銅担持酸化タングステン及び前記酸化チタンの両方の存在下で行うものが好ましい。
具体的には、前記粉砕処理としては、前記銅担持酸化タングステン及び前記酸化チタンの両方の存在下で、互いに衝突することでせん断力を生じる粉砕媒体の衝突によって行うものが好ましい。
【0043】
前記粉砕処理工程では、溶媒が存在しない条件下で粉砕処理を行うこともできるが、有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する光触媒の性能がより優れたものになり得るという点で、溶媒の存在下で行う湿式粉砕処理をすることが好ましい。そして、前記粉砕処理工程においては、湿式粉砕処理により、より小さくなった粒子と溶媒とを含むスラリーをより確実に得ることができる。
【0044】
具体的には、前記粉砕処理工程では、前記粉砕媒体と前記溶媒との存在下で粉砕媒体の衝突に伴うせん断力によって前記銅担持酸化タングステンの粒子と酸化チタンの粒子とを粉砕する湿式粉砕処理を行うことが好ましい。
【0045】
前記湿式粉砕処理のうち、前記粉砕媒体の存在下で粉砕媒体の衝突に伴うせん断力によって粉砕を行う湿式粉砕処理としては、ビーズミルによる粉砕、湿式ボールミルによる粉砕などを採用することができる。
【0046】
前記湿式粉砕処理において用い得る前記粉砕媒体は、互いに衝突することでせん断力を生じるものであり、具体的には、ビーズミルによる粉砕においてはビーズが該当し、湿式ボールミルによる粉砕においてはボールが該当する。前記粉砕媒体の存在下で行う粉砕処理においては、ビーズなどの粉砕媒体同士が衝突する際に、粉砕媒体間にある二次粒子にせん断力がはたらき、二次粒子が粉砕されて、より粒子径の小さい二次粒子になり得る。
【0047】
また、前記湿式粉砕処理のうち、前記溶媒の存在下で粒子同士の衝突力によって粉砕を行う湿式粉砕処理としては、例えば、湿式ジェットミルによる粉砕などを採用することができる。該湿式粉砕処理においては、二次粒子が溶媒に分散されてなる分散液同士を衝突させることにより、二次粒子にせん断力などがはたらき、二次粒子が粉砕されて、より粒子径の小さい二次粒子になり得る。
【0048】
なかでも前記湿式粉砕処理としては、銅担持酸化タングステン粒子及び酸化チタン粒子の二次粒子径を小さくすることにより、紫外光の照射量が少ない条件下であっても有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解する光触媒の性能がより高まるという点、銅担持酸化タングステン粒子及び酸化チタン粒子の結晶構造に影響を与えにくいという点で、溶媒の存在下で粉砕媒体の衝突に伴うせん断力によって粉砕を行う湿式粉砕処理として、具体的には、ビーズミルによる湿式粉砕処理を採用することが好ましい。
【0049】
前記分離工程では、前記粉砕処理を施したスラリーと粉砕媒体とを分離する方法として、例えば、粉砕媒体が透過できずスラリーが透過できるメッシュ生地によってスラリーと粉砕媒体とを分離する方法などを採用することができる。
【0050】
前記溶媒除去工程では、前記スラリーから溶媒を除去する方法として、例えば、銅担持酸化タングステンと酸化チタンと溶媒とを含むスラリーを溶媒が揮発する温度に置く方法などを採用することができる。
【0051】
前記溶媒除去工程の後に得られた光触媒は、必ずしも焼成される必要はなく、焼成されなくとも光照射によって触媒作用を発揮し得る。前記光触媒は、製造時のコストを抑制できるという点で、焼成されることなく製造されることが好ましい。なお、焼成とは、有機物が分解し得る温度にまで加熱し、被焼成物を焼結させることであり、具体的には、例えば、酸素の存在下又は酸素の非存在下で被焼成物を200℃以上に加熱することである。
【0052】
本実施形態の製造方法で製造された光触媒は、例えば、太陽光、蛍光灯などの各種ランプからの光が照射される条件下で用いられ、光照射によって触媒作用を発揮し、アセトアルデヒドなどの有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解し得る。また、可視光の照射によっても同様に、有機性環境汚染物質を二酸化炭素にまで分解し得る。
【0053】
続いて、本発明のコーティング剤の一実施形態について説明する。
【0054】
本実施形態のコーティング剤は、前記光触媒を含んでいる。具体的には、本実施形態のコーティング剤は、例えば、前記光触媒と、液状塗料又は粉体塗料などの塗料とを混合してなる。
【0055】
前記塗料のベースとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトシキシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類の4官能性物質;アルコキシシランメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリプロキシシラン、エチルトリプロキシシラン等のアルコキシシラン類の3官能性物質といったシリコーン系のものが好適に用いられるが、それらに限定されるものではない。
前記塗料のベースとしては、他にも、カイナー型、ルミフロン型等のフッ素樹脂系のもの、水硬性石灰、ポルトランドセメント、アルミナセメント、混合セメント等の水硬化セメントや石灰、石こう等の気硬性セメントといったセメント系のもの、酢酸ビニル系、酢酸ビニル−アクリル系、エチレン−酢酸ビニル系、アクリル−スチレン系、アクリル系、エポキシ系、アルキド系、アクリル−アルキド系のもの等を用いることができる。
なお、前記塗料のベースは、1種が単独で、又は2種以上が組み合わされて用いられ得る。
前記塗料としては、前記塗料のベースが有機溶剤に溶解したもの、前記塗料のベースが水に分散された水性エマルジョンなどを用いることができる。
【0056】
前記コーティング剤は、例えば塗布対象物に塗布されることにより、前記光触媒を塗布対象物の表面付近に保持せしめることができる。該塗布対象物に前記コーティング剤が塗布されてなる光触媒部材は、可視光が照射されることによっても、空気中の有機性有害物質や有機性汚染物質等を二酸化炭素にまで分解することができる。
【0057】
前記コーティング剤は、従来公知の一般的な方法によって製造される。また、例えば、後述する内装材を形成させるために用いられる。
【0058】
さらに、本発明の内装材の一実施形態について説明する。
【0059】
本実施形態の内装材は、前記光触媒を含むものである。具体的には、例えば、壁材、壁紙、天井材、天井板、床材、カーテン、棚材、エアーフィルター等をはじめとする様々な部材の表面に前記光触媒を担持させてなる。なお、前記内装材に含まれる前記光触媒は、光触媒作用が発揮される量で用いられる。
【0060】
前記内装材に前記光触媒を担持させる方法としては、該光触媒を塗料中に分散させたコーティング剤を部材の表面に塗布する方法、樹脂性部材の表面層に配合する方法など、従来公知の様々な方法を採用することができる。
なお、内装材の耐久性を高める観点から、内装材における光触媒の一部が、光触媒作用の影響を実質的に受けない物質、例えば、シリカ等によりマスクされていてもよい。
【0061】
前記内装材は、前記光触媒を含有しているため、紫外光が少なく可視光が照射される環境下においても、優れた光触媒作用を示す。従って、前記内装材は、室内の有害物質を二酸化炭素にまで分解することができ、例えば、シックハウス症候群や化学物質アレルギー等を防止することができる。
【0062】
本実施形態の光触媒、コーティング剤、内装材、及び光触媒の製造方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の光触媒、コーティング剤、内装材、及び光触媒の製造方法に限定されるものではない。
また、一般の光触媒、コーティング剤、内装材、及び光触媒の製造方法において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
【実施例】
【0063】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
以下に示すようにして、光触媒を製造した。
[原料]
・銅担持酸化タングステン粒子:商品品番「HP−CW091」
(昭和タイタニウム社製)
二次粒子径 D10=0.493μm D50=5.294μm D90=22.03μm
・酸化チタン粒子:商品名「ST−01」(石原産業社製)
ドープ処理なし アナターゼ型結晶
二次粒子径 D10=1.559μm D50=7.088μm D90=22.71μm
[粒子径の測定方法]
原料粒子:粒度分布測定装置(機器名「マイクロトラックMT−3000」
日機装社製)で測定
原理:レーザー回折・散乱法
スラリー中の粒子:粒度分布測定装置(機器名「FPER−1000」
大塚電子社製)で測定
原理:動的光散乱法
測定条件(使用プローブ→濃厚系プローブ、測定時間→120秒、
ダストカット→有、カット回数→10回、
カットレベルUpper→20%、カットレベルLower→20%)
粒度分布の解析条件(散乱強度から求めた累積粒子径分布により、
D10,D50,及びD90を算出、
解析手法→Marquardt、解析幅設定→自動)
【0065】
上記の銅担持酸化タングステンと上記の酸化チタンとを銅担持酸化タングステン:酸化チタン=1:9の重量比で合計10重量%濃度となるようにホモジナイザーによって純水に分散させ、pHが4になるまで硝酸水溶液を加えつつ、同時混合分散液を調製し、分散工程を実施した。
次に、ビーズミルによって、同時混合分散液中の粒子の粒子径が下記に示す粒子径になるまで粉砕処理を行い、同時混合スラリーを得て粉砕処理工程を実施した。
そして、得られた同時混合スラリーをビーズと分離して分離工程を実施し、さらに同時混合スラリーを100℃の条件に置き、水を揮発させて溶媒除去工程を実施し、光触媒を製造した。
スラリー中の粒子径 D10=70.3nm D50=139.8nm D90=267.5nm
【0066】
(実施例2)
銅担持酸化タングステン:酸化チタン=3:7の重量比にした点以外は、実施例1と同様にして光触媒を製造した。
スラリー中の粒子径 D10=109.7nm D50=177.6nm D90=278.5nm
【0067】
(実施例3)
銅担持酸化タングステン:酸化チタン=5:5の重量比にした点以外は、実施例1と同様にして光触媒を製造した。
スラリー中の粒子径 D10=89.2nm D50=151.4nm D90=244.0nm
【0068】
(実施例4)
銅担持酸化タングステン:酸化チタン=7:3の重量比にした点以外は、実施例1と同様にして光触媒を製造した。
スラリー中の粒子径 D10=103.4nm D50=178.7nm D90=386.2nm
【0069】
(実施例5)
銅担持酸化タングステン:酸化チタン=9:1の重量比にした点以外は、実施例1と同様にして光触媒を製造した。
スラリー中の粒子径 D10=572.3nm D50=778.8nm D90=920.96nm
【0070】
(比較例1)
酸化チタンのみを10重量%になるように純水に分散させた点以外は、実施例1と同様にして光触媒を製造した。
スラリー中の粒子径 D10=24.2nm D50=45.0 nm D90=79.4 nm
【0071】
(比較例2)
銅担持酸化タングステンのみを10重量%になるように純水に分散させた点以外は、実施例1と同様にして光触媒を製造した。
スラリー中の粒子径 D10=81.2nm D50=128.3nm D90=203.1nm
【0072】
(比較例3)
下記の酸化タングステンのみを10重量%になるように純水に分散させた点以外は、実施例1と同様にして光触媒を製造した。
・酸化タングステン粒子:商品品番「WWO02PB」
(高純度化学社製) 担持元素なし
二次粒子径 D10=0.333μm D50=1.367μm D90=14.36μm
スラリー中の粒子径 D10=97.5nm D50=152.3nm D90=242.4nm
【0073】
(比較例4)
上記酸化タングステン(担持元素なし)と上記酸化チタン(ドープ処理なし)とを酸化タングステン:酸化チタン=7:3の重量比になるようにした点以外は、実施例1と同様にして光触媒を製造した。
スラリー中の粒子径 D10=124.7nm D50=262.7nm D90=565.8nm
【0074】
(実施例6)
上記の銅担持酸化タングステンを10重量%濃度となるようにホモジナイザーによって純水に分散させ、分散液A(第1分散液)を調製し分散工程を実施した。次に、分散液Aに対してビーズミルによる粉砕処理を施してスラリーA(第1スラリー)を得て、粉砕処理工程を実施した。
スラリー中の粒子径 D10=69.1nm D50=116.4nm D90=193.1nm(スラリーA)
一方、これとは別に上記の酸化チタンを10重量%濃度となるようにホモジナイザーによって純水に分散させ、分散液B(第2分散液)を調製し分散工程を実施した。次に、分散液Bに対してビーズミルによる粉砕処理を施してスラリーB(第2スラリー)を得て、粉砕処理工程を実施した。
スラリー中の粒子径 D10=24.2nm D50=45.0nm D90=79.4nm(スラリーB)
そして、スラリーAとスラリーBとをそれぞれビーズと分離して分離工程を実施した後、銅担持酸化タングステン:酸化チタン=1:9の重量比で合計10重量%濃度となるように混合し後混合スラリーを得て、さらに超音波洗浄機(「US−CLEANER」 AS ONE社製)を用いて10分間の粉砕処理を行った。
最後に、粉砕処理を行った後混合スラリーを100℃の条件に置き、水を揮発させて溶媒除去工程を実施し、光触媒を製造した。
【0075】
(実施例7)
銅担持酸化タングステン:酸化チタン=3:7の重量比になるようにスラリーAとスラリーBとを混合した点以外は、実施例6と同様にして光触媒を製造した。
【0076】
(実施例8)
銅担持酸化タングステン:酸化チタン=5:5の重量比になるようにスラリーAとスラリーBとを混合した点以外は、実施例6と同様にして光触媒を製造した。
【0077】
(実施例9)
銅担持酸化タングステン:酸化チタン=7:3の重量比になるようにスラリーAとスラリーBとを混合した点以外は、実施例6と同様にして光触媒を製造した。
【0078】
(実施例10)
銅担持酸化タングステン:酸化チタン=9:1の重量比になるようにスラリーAとスラリーBとを混合した点以外は、実施例6と同様にして光触媒を製造した。
【0079】
(実施例11)
上記の銅担持酸化タングステンを10重量%濃度となるようにホモジナイザーによって純水に分散させ、分散液C(第1分散液)を調製し、分散工程を実施した。次に、分散液Cに対してビーズミルによる粉砕処理を施してスラリーC(第1スラリー)を得て、粉砕処理工程を実施した。
スラリー中の粒子径 D10=24.2nm D50=116.4nm D90=193.1nm(スラリーC)
一方、これとは別に下記の窒素ドープ酸化チタンを10重量%濃度となるようにホモジナイザーによって純水に分散させ、分散液D(第2分散液)を調製し、分散工程を実施した。次に、分散液Dに対してビーズミルによる粉砕処理を施してスラリーD(第2スラリー)を得て、粉砕処理工程を実施した。
・窒素ドープ酸化チタン粒子:商品品番「TP−S201」(住友化学社製)
二次粒子径 D10=2.850μm D50=4.495μm D90=8.137μm
スラリー中の粒子径 D10=46.6nm D50=73.5nm D90=133.8nm(スラリーD)
そして、スラリーCとスラリーDとをそれぞれビーズと分離して分離工程を実施した後、スラリーCとスラリーDとを銅担持酸化タングステン:窒素ドープ酸化チタン=1:9の重量比で合計10重量%濃度となるように混合し後混合スラリーを得て、さらに超音波洗浄機を用いて上記と同様にして粉砕処理を行った。
最後に、粉砕処理を行った後混合スラリーを100℃の条件に置き、水を揮発させて溶媒除去工程を実施し、光触媒を製造した。
【0080】
(実施例12)
銅担持酸化タングステン:窒素ドープ酸化チタン=3:7の重量比になるようにスラリーAとスラリーBとを混合した点以外は、実施例11と同様にして光触媒を製造した。
【0081】
(実施例13)
銅担持酸化タングステン:窒素ドープ酸化チタン=5:5の重量比になるようにスラリーAとスラリーBとを混合した点以外は、実施例11と同様にして光触媒を製造した。
【0082】
(実施例14)
銅担持酸化タングステン:窒素ドープ酸化チタン=7:3の重量比になるようにスラリーAとスラリーBとを混合した点以外は、実施例11と同様にして光触媒を製造した。
【0083】
(実施例15)
銅担持酸化タングステン:窒素ドープ酸化チタン=9:1の重量比になるようにスラリーAとスラリーBとを混合した点以外は、実施例11と同様にして光触媒を製造した。
【0084】
(比較例5)
窒素ドープ酸化チタンのみを10重量%になるように純水に分散させた点以外は、実施例11と同様にして光触媒を製造した。
粒子径 D10=46.6nm D50=73.5nm D90=133.8nm
【0085】
(実施例16)
上記の銅担持酸化タングステン「HP−CW091」と上記の酸化チタン「ST−01」とを銅担持酸化タングステン:酸化チタン=7:3の重量比になるように乳鉢に入れ、乳棒を用いて人力により粉砕処理を行って粉砕処理工程を実施し、光触媒を製造した。レーザー回折・散乱法(機器名「MT−3000」)で測定した粒子径は、下記の通りであった。
粒子径 D10=1.178μm D50=4.596μm D90=17.23μm
【0086】
(実施例17)
上記の銅担持酸化タングステン「HP−CW091」と上記の酸化チタン「ST−01」とを銅担持酸化タングステン:酸化チタン=7:3の重量比で合計10重量%濃度になるようにスクリュー瓶中に純水で分散させ、分散工程を実施した。そして、スクリュー瓶ごと超音波洗浄機の中に30分間置き、超音波による粉砕処理を行って粉砕処理工程を実施した後、水を揮発させて溶媒除去工程を実施し、光触媒を製造した。レーザー回折・散乱法(機器名「MT−3000」)で測定した粒子径は、下記の通りであった。
粒子径 D10=0.673μm D50=5.009μm D90=17.93μm
【0087】
(実施例18)
以下に示すようにして、まず、分散工程を実施した。即ち、上記の銅担持酸化タングステン「HP−CW091」100gを純水900gに入れ、ホモジナイザーによって30分間撹拌し、分散液E(第1分散液)を調製した。
一方で、上記の酸化チタン「ST−01」100gを純水890g中に入れ、ホモジナイザーによって10分間撹拌した後、界面活性剤(商品名「ポイズ532A」花王社製)10gをさらに加え、ホモジナイザーによって20分間撹拌し、分散液F(第2分散液)を調製した。
次に、粉砕処理工程を実施した。即ち、分散液E及び分散液Fのそれぞれに対して粉砕媒体としてのビーズを加え、それぞれの分散液に対してビーズミルによる粉砕処理を20分間行ってスラリーE及びスラリーF(第1スラリー及び第2スラリー)を得た。なお、スラリーEは、スラリーAと同じものである。
スラリー中の粒子径 D10=69.1nm D50=116.4nm D90=193.1nm(スラリーE)
スラリー中の粒子径 D10=99.3nm D50=224.8nm D90=419.0nm(スラリーF)
続いて、各スラリーと粉砕媒体とを分離して分離工程を実施した後に、スラリーEとスラリーFとを銅担持酸化タングステンと酸化チタンとが銅担持酸化タングステン:酸化チタン=7:3の重量比になるように混合して後混合スラリーを調製し、さらにこの後混合スラリーに対して超音波洗浄機を用いた超音波による粉砕処理を上記と同様に10分間施した。
そして、超音波による粉砕処理を行った後混合スラリーを100℃に置き、水を揮発させることにより溶媒除去工程を実施し、光触媒を製造した。
【0088】
<光照射による光触媒作用の評価>
各実施例、各比較例で製造した光触媒を乳鉢と乳棒とによって粉砕して光触媒粉末を得て、該光触媒粉末を内径φ58mmのシャーレに0.1g入れ、さらに純水を適量入れて、粉末を均一に分散させた。その後、シャーレを100℃の条件下に置き、シャーレ内に光触媒膜を作製した。
光触媒膜が作製されたシャーレを2L容量のテドラーバッグに入れ、密閉し、その中に1Lの純空気を注入した。さらに、気体のアセトアルデヒドをおよそ100ppmの濃度になるように加えた。
アセトアルデヒドが光触媒粉末の表面へ吸着して平衡状態になることを待つため、16〜18時間、テドラーバッグを暗所に放置した後、昼光色蛍光灯(パナソニック社製 「FL20SS−ENW/18X」)を用いて光照射(1000ルクス コニカミノルタ社製「T−10」JIS AA級で測定)し、アセトアルデヒド及び二酸化炭素の量をガスクロマトグラフィー(「GC−9A」 島津製作所社製)によって測定し、時間の経過に伴う測定値を得た。
また、「N−169フィルター」(日東樹脂社製)を用いて昼光色蛍光灯の照射光における395nmより短波長側をカットした条件においても評価を行った。
そして、アセトアルデヒドの濃度を経時的に測定し、測定結果からアセトアルデヒド低減定数を算出した。また、二酸化炭素の濃度を経時的に測定し、測定結果から二酸化炭素生成速度を求めた。アセトアルデヒド低減定数及び二酸化炭素生成速度の算出方法の詳細は、以下の通りである。
[アセトアルデヒド低減定数の算出方法]
アセトアルデヒド低減速度は初期濃度に依存することから、初期濃度をキャンセルするため、時間に対する濃度の対数をプロットし、その直線領域で近似直線を引き、近似直線の傾きをアセトアルデヒド低減定数とした。単位は時間の逆数となる。
[二酸化炭素生成速度の算出方法]
初期に発生した二酸化炭素濃度のプロットの直線領域において、原点を通る近似直線を引き、その傾きを二酸化炭素生成速度とした。
なお、アセトアルデヒドが完全に二酸化炭素にまで分解すると、理論上約200ppmの二酸化炭素濃度になる。
【0089】
実施例1〜5及び比較例1,2について、上述の方法に従って、光照射による光触媒作用の評価を同時におこない、395nmより短波長側の光を含む条件下における二酸化炭素生成速度を比較したグラフを図1に示す。
同様にして、実施例6〜10及び比較例1,2について評価をおこなった結果を図2に示す。また、実施例11〜15及び比較例5,2について評価をおこなった結果を図3に示す。なお、図1〜図2においては、光触媒における銅担持酸化タングステン(Cu/WO3と表記)の割合が横軸に示されている。
【0090】
実施例4及び比較例2〜4の各光触媒について、上述の方法に従って、光照射による光触媒作用の評価を同時におこない、395nmより短波長側の光を含む条件下におけるアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度の経時的な変化を表すグラフをそれぞれ図4(a)、図4(b)に示す。また、上述の方法に従って求めたアセトアルデヒド低減定数、及び、二酸化炭素生成速度を表1に示す。また、アセトアルデヒド低減定数、及び、二酸化炭素生成速度をグラフ化したものをそれぞれ図5(a)、図5(b)に示す。
【0091】










【表1】

【0092】
また、実施例4及び比較例2〜4の各光触媒について、上述の方法に従って、光照射による光触媒作用の評価を同時におこない、395nmより短波長側の光をカットした条件下におけるアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度の経時的な変化を表すグラフをそれぞれ図6(a)、図6(b)に示す。また、上述の方法に従って求めたアセトアルデヒド低減定数、及び、二酸化炭素生成速度を表2に示す。また、アセトアルデヒド低減定数、及び、二酸化炭素生成速度をグラフ化したものをそれぞれ図7(a)、図7(b)に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
実施例4及び比較例1,2の各光触媒について、上述の方法に従って、光照射による光触媒作用の評価を同時におこない、395nmより短波長側の光を含む条件下におけるアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度の経時的な変化を表すグラフをそれぞれ図8(a)、図8(b)に示す。また、上述の方法に従って求めたアセトアルデヒド低減定数、及び、二酸化炭素生成速度を表3に示す。
【0095】
【表3】

【0096】
実施例4及び9の各光触媒について、上述の方法に従って、光照射による光触媒作用の評価を同時におこない、395nmより短波長側の光を含む条件下におけるアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度の経時的な変化を表すグラフをそれぞれ図9(a)、図9(b)に示す。また、上述の方法に従って求めたアセトアルデヒド低減定数、及び、二酸化炭素生成速度を表4に示す。
【0097】
【表4】

【0098】
また、実施例4,9,16〜18、比較例2の各光触媒について、光照射による光触媒作用の評価を同時に行った。ただし、評価においては、上述の方法と異なり、予め昼光色蛍光灯により4000ルクスで7日間以上の光照射を行い且つ斯かる期間中1又は2日おきにテドラーバック内の純空気を入れ換えることにより、粉末に残存する有機成分を除去したあと、2000ルクスの光照射で395nmより短波長側の光をカットした条件下におけるアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度の経時的な変化を測定した。
その結果を表すグラフをそれぞれ図10(a)、図10(b)に示す。また、上述の方法に従って求めたアセトアルデヒド低減定数、及び、二酸化炭素生成速度を表5に示す。
【0099】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化タングステンに銅が担持されてなる銅担持酸化タングステンと酸化チタンとを含むことを特徴とする光触媒。
【請求項2】
前記銅担持酸化タングステンと前記酸化チタンとを銅担持酸化タングステン:酸化チタン=3:7〜9:1の重量比で含む請求項1記載の光触媒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光触媒を含むことを特徴とするコーティング剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光触媒を含むことを特徴とする内装材。
【請求項5】
酸化タングステンに銅が担持されてなる銅担持酸化タングステンと酸化チタンとに粉砕処理を施す粉砕処理工程を実施することを特徴とする光触媒の製造方法。
【請求項6】
前記粉砕処理工程を溶媒の存在下で実施する請求項5記載の光触媒の製造方法。
【請求項7】
前記粉砕処理工程では、前記銅担持酸化タングステン及び前記酸化チタンの両方の存在下で、互いに衝突することでせん断力を生じる粉砕媒体の衝突によって粉砕処理を行う請求項6記載の光触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−101876(P2011−101876A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204545(P2010−204545)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】