説明

光触媒およびその製造方法

【課題】可視光照射下において優れた光触媒活性を有する光触媒およびその製造方法を提供する。
【解決手段】光触媒は、酸化チタンと、酸化チタンの表面に担持された金属と、を有し、酸化チタンの内部に、ルテニウム、クロム、ロジウムイリジウムおよびマンガンからなる群から選択される少なくとも一種の元素がドープされており、元素のドープ量は、酸化チタン1モルに対して、1.0×10−6モル以上6.5×10−4モル以下であり、前記金属は、銅、鉄または白金からなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物は、光触媒体として利用されている。
例えば、紫外光領域中の光触媒活性を向上させるために、酸化チタンの表面に、銅化合物を担持固定する技術がある。このような技術としては、非特許文献1に記載されている。
【0003】
一方、光触媒活性の利用波長を可視光の波長まで広げるために、酸化チタンの内部に、ルテニウムをドープする技術がある。このような技術としては、非特許文献2に記載されている。また、同様の目的のために、特許文献1では、イオン注入により、金属を酸化チタンの内部に含有させることが記載されている。同文献によれば、イオン注入により、酸化チタンの吸収スペクトル全体が、長波長側に移動することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2の請求項2には、光触媒粒子の内部及び/またはその表面に金属を含有すると記載されている。この記載によれば、金属が含有される場所として内部と表面とは同格に記載されている。このため、金属の状態については、内部と表面とで同じ態様であると考えられる。したがって、特許文献2に記載の光触媒粒子においては、金属の状態は、準位を形成せずに、その内部に単に含有されているものと言える。
特許文献3には、酸化チタンにセリウム等の金属イオンをドープして、価電子帯の電位を3V以上でかつ価電子帯と価電子帯から励起された電子の準位とのバンドギャップを3V以下とした金属イオンドープ酸化チタンの表面に銅ニ価塩および/あるいは鉄三価塩を担持した光触媒材料が記載されている。本特許文献3には、ドープ量は詳細に記載されておらず、実施例中に、酸化チタン粉末と酸化セリウムをモル比0.995:0.005で混合した旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−262482号公報
【特許文献2】特開平7−171408号公報
【特許文献3】特開2010−104913号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】H. Irie et al., J. Phys. Chem. C., 113,10761−10766(2009)
【非特許文献2】T. Ohno et al., Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry, 127, 107−110(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らが検討した結果、上記文献に記載の酸化チタンにおいては、銅化合物を酸化チタンの表面に担持する技術のみでは、可視光波長領域の光吸収が充分ではないため、光触媒活性が低く、一方、ルテニウムを酸化チタンの内部にドープする技術のみでは、光励起された電子を表面の還元サイトで充分に利用できないため、光触媒活性の効率が低いことが判明した。
更に、本発明者らが検討した結果、特定元素をドープした酸化チタンに特定金属を担持した光触媒において、ドープされる元素の酸化チタンに対するドープ割合(ドープ量)を従来知られていた量よりも極めて制限したある範囲の量とすると、光触媒活性が極めて顕著に向上することが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下を含む。
[1]
酸化チタンと、
前記酸化チタンの表面に担持された金属と、を有し、
前記酸化チタンの内部に、ルテニウム、クロム、ロジウム、イリジウムおよびマンガンからなる群から選択される少なくとも一種の元素がドープされており、前記元素のドープ量が、前記酸化チタン1モルに対して、1.0×10−6モル以上6.5×10−4モル以下であり、
前記金属は、銅、鉄または白金からなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む、光触媒。
[2]
前記金属の担持量が、前記酸化チタンの濃度1モルに対して、2.0×10−5モル以上3.0×10−2モル以下である、[1]に記載の光触媒。
[3]
前記金属に対する前記元素のモル比が、2×10−4以上13以下である、[1]または[2]に記載の光触媒。
[4]
前記酸化チタンは、ルチル型を含む、[1]から[3]のいずれか1項に記載の光触媒。
[5]
前記酸化チタンの比表面積が、1m/g以上100m/g以下である、[1]から[4]のいずれか1項に記載の光触媒。
[6]
前記酸化チタンの結晶子径が、5nm以上100nm以下である、[1]から[5]のいずれか1項に記載の光触媒。
[7]
下記の条件で算出した、単位時間あたりの二酸化炭素発生速度が、10ppm/h以上である、[1]から[6]のいずれか1項に記載の光触媒。
条件:前記光触媒は、Φ28mmのガラス製シャーレに300mg秤量し、使用する。基質にアセトアルデヒドを用い、アセトアルデヒド濃度100ppmの反応ガス(相対湿度50%に調湿したN/O=80/20の標準ガスに所定量のアセトアルデヒドを添加し、アセトアルデヒド濃度100ppmに調整する)600mlを1000mlのテドラーバッグ(洗浄済み、GLサイエンス社製)に仕込み、暗所で30min静置した後、可視光照射を開始する。照射光は、キセノン光源を使用し、カットフィルターを用い、λ<420nmの光をカットして、デジタル照度計でテドラーバッグのフィルムを一層通して照度10万Lxに調整した可視光照射を行い、光照射2時間後の二酸化炭素の発生量をメタナイザー付ガスクロマトグラフで定量し、前記発生量を用いて前記二酸化炭素発生速度を算出する。
[8]
酸化チタンの内部に、ルテニウム、クロム、ロジウム、イリジウムおよびマンガンからなる群から選択される少なくとも一種の元素をドープする工程と、
前記酸化チタンの表面に、銅、鉄または白金からなる群から選択される少なくとも一種の金属を担持する工程と、を含み、
前記元素のドープ量は、前記酸化チタン1モルに対して、1.0×10−6モル以上6.5×10−4モル以下である、光触媒の製造方法。
[9]
前記金属を担持する工程は、ルテニウム、クロム、ロジウム、イリジウムおよびマンガンからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む元素化合物を前記酸化チタンに混合する工程を有する、[8]に記載の光触媒の製造方法。
[10]
前記元素化合物を酸化チタンに混合する前記工程は、固相混合法を用いて混合する工程である、[9]に記載の光触媒の製造方法。
[11]
前記元素をドープする前記工程において、結晶子径が60nm以下の酸化チタンまたは非晶性の酸化チタンを用いる、[8]から[10]のいずれか1項に記載の光触媒の製造方法。
[12]
前記元素をドープする工程は、
前記元素を含む元素化合物を前記酸化チタンに混合する工程と、
混合する工程により得られた結果物を、500℃以上1100℃以下の温度で焼成する工程と、を含む、[8]から[11]のいずれか1項に記載の光触媒の製造方法。
[13]
[8]から[12]のいずれか1項に記載の製造方法により得られる、光触媒。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可視光照射下において優れた光触媒活性を有する光触媒およびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】Cr、Mn、Ru、Rh、Irドープ、ドープなしTiO(800℃焼成)におけるスペクトルデータを示す図である。
【図2】Cr50ppmドープTiO(800℃焼成)(試料1)を基準として、Cu担持後(光触媒1)、Fe担持後(光触媒5)、Pt担持後(光触媒6)のスペクトルデータを示す図である。
【図3】Cr50ppmドープTiO(800℃焼成)(試料1)、Cu0.1wt%担持/Cr50ppmドープTiO(800℃焼成)(光触媒1)、TiO(800℃焼成)(試料19)、Cu0.1wt%担持TiO(800℃焼成)(光触媒36)のスペクトルデータを示す図である。
【図4】可視光分解活性(CO発生速度)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の光触媒について説明する。
本発明の光触媒は、酸化チタンと、酸化チタンの表面に担持された金属と、を有し、酸化チタンの内部に、ルテニウム、クロム、ロジウム、イリジウムおよびマンガンからなる群から選択される少なくとも一種の元素がドープされており、前記金属は、銅、鉄または白金からなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む。
【0012】
以下、各構成について説明する。
本発明に係る酸化チタンは、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸などの各種の酸化チタンあるいは水酸化チタン、含水酸化チタン等、いずれもが使用可能である。このうち、光触媒活性に優れているルチル型酸化チタンが好ましい。また、本発明に係る酸化チタンとしては、少なくともルチル型酸化チタンを含む混合物でもよく、これらに非晶質の酸化チタンが少量含まれていてもよい。
さらに、本発明に係る酸化チタンとしては、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、スズからなる群から選択される少なくとも一種の元素の水酸化物あるいは酸化物で表面を処理された酸化チタン、複合化された酸化チタン等、いずれもが使用可能である。
【0013】
本発明に係る酸化チタンにおいては、ルチル型酸化チタンの含有量は、好ましくは30重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上である。ルチル型酸化チタンの含有量を上記範囲内とすることにより、光触媒活性に優れた光触媒が得られる。本発明に係るルチル型酸化チタンの含有量は、Multi Flex用X線発生装置(Cat.No.2013B303、リガク社製)を用いて、X線回折のピーク位置と各結晶の最強干渉線の面積比を計算して、求められる。
【0014】
本発明に係るルチル型酸化チタンの結晶子径は、好ましくは5〜100nmであり、より好ましくは10〜80nmであり、さらに好ましくは15〜60nmの範囲である(以下、「〜」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す)。ルチル型酸化チタンの結晶子径を上記範囲内とすることにより、光触媒活性に優れた光触媒が得られる。本発明に係るルチル型酸化チタンの結晶子径は、Multi Flex用X線発生装置(Cat.No.2013B303、リガク社製)を用いて、X線回折で求められる。
【0015】
本発明に係る元素は、酸化チタンの内部にドープされている。ここで、ドープするとは、準位を形成し、可視光を一定程度吸光する構造を実現するように含有させることをいう。すなわち、本発明に係る元素を酸化チタンの内部及び/またはその表面に含有させた状態で、加熱処理を行うことにより、本発明に係る元素が、酸化チタンの内部にドープされ、準位を形成し、酸化チタン由来の吸収帯とは、別の吸収帯を形成することができる。この点で、ドープと単なる含有とは異なる。また、固溶もドープの一態様であるが、固溶に限定されない。
このように、酸化チタンに特定元素をドープすることにより、本発明の光触媒において可視光の吸収を実現することができる。
【0016】
上述のように、特許文献1に記載の技術においては、イオン注入により、金属を酸化チタンのバルク表面から内部に含有させている。特許文献1の図1からも分かるように、酸化チタンの吸収スペクトル全体が長波長側に移動している。
これに対して、本発明においては、酸化チタン由来の吸収スペクトルは不変でありながら、長波長側に別の吸収帯が形成されている。この吸収帯は、特定元素のドープによって新たに形成された準位由来の吸収と考えられる。
このような酸化チタン由来の吸収帯とは、別の吸収帯を形成することにより、より可視光の吸収領域を広げることができる。これにより、広範囲の可視光を吸収できるので、光触媒活性に優れた光触媒が得られる。
【0017】
本発明に係る元素としては、ルテニウム、クロム、ロジウム、イリジウムおよびマンガン等が挙げられる。これら元素の酸化物は、いずれもルチル型構造をとることができる(この点については、例えば、「Helvetica Physica Acta, 1985, 58, 657−714, p611 Table2.1」に記載されている)。これらの元素は、ルチル型酸化チタンのチタンと同じ配位数をとることができ、かつ、チタンのイオン半径に近いため、ルチル型酸化チタンにドープされやすくなり、可視光の吸収量を増加させることができると考えられる。本発明に係る元素は、1種または2種以上を併用しても良い。
【0018】
また、本発明に係る元素のドープ量としては、酸化チタン1モルに対して、好ましくは1.0×10−6〜6.5×10−4モルであり、より好ましくは5.0×10−6〜5.0×10−4モルの範囲である。本発明に係る元素のドープ量を上記範囲内とすることにより、光触媒活性を顕著に向上させることができる。ここで、ドープ量としては、本発明の光触媒の製造工程におけるドープする元素の値を示す。
【0019】
また、本発明に係る元素のドープ量としては、酸化チタンの重量に対して、好ましくは1ppm〜1500ppmであり、より好ましくは5ppm〜800ppmの範囲である。例えば、クロムのドープ量としては、酸化チタンの重量に対して、好ましくは10ppm以上、より好ましくは20ppm以上である。本発明に係る元素の含有量を上記範囲内とすることにより、光触媒活性を顕著に向上させることができる。
【0020】
本発明に係る金属は、酸化チタンの表面に担持されている。このように、特定金属を担持することで、伝導帯に励起された電子は、担持した特定金属を媒介として酸素の還元反応を実現することができる。これは、光励起により生じた電子が、担持した金属に移行しやすくなり、正孔との電荷分離が容易になると同時に、担持金属において、電子が空気中の酸素を還元する反応を促進すると考えられる。ここで、表面に金属が担持されている状態においては、酸化チタンの外表面に金属が担持されており、とくに酸化チタンが細孔を有する場合には、酸化チタンの外表面および内表面に金属が担持されている状態を意味する。
また、表面に担持された金属は、例えば、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物又は酸化物等の状態で存在していることが好ましい。例えば、金属酸化物は、少なくとも1つの元素ドープ酸化チタンの外表面に接触していればよく、さらには、2以上の元素ドープ酸化チタンに接触してもよい(言い換えると、元素ドープ酸化チタン同士は、金属酸化物を介して結合していてもよい)。金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、5nm〜60nmの結晶子径を有することが好ましい。
【0021】
本発明に係る金属としては、銅、鉄、白金、これらの化合物(銅化合物、鉄化合物、白金化合物)等が挙げられる。これらの金属は、いずれも水溶液中における標準電極電位が酸素を還元可能な0〜1.2Vの範囲にある(この点については、例えば、「S.Higashimoto et al.,Applied Catalysis A:General,340,98−104(2008)」に記載されている)。これらの金属を用いることにより、光触媒活性の効率を向上させることができる。本発明に係る金属は、1種または2種以上を併用しても良い。
【0022】
本発明に係る金属の担持量としては、酸化チタン1モルに対し、金属元素に換算して、好ましくは2.0×10−5〜3.0×10−2モルであり、より好ましくは5.0×10−5〜2.5×10−2モルの範囲である。本発明に係る金属の担持量を上記下限値以上とすることにより、担持金属による光触媒活性の効率を向上させることができる。一方、本発明に係る金属の担持量を上記上限値以下とすることにより、担持した金属により酸化チタンの光吸収を阻害することを抑制することができる。
【0023】
本発明に係る金属の担持量としては、酸化チタンの重量に対し、金属元素に換算して、好ましくは0.001wt%〜5wt%であり、より好ましくは0.003wt%〜2wt%の範囲である。本発明に係る金属の担持量を上記範囲内とすることにより、光触媒活性の効率を向上させることができる。
【0024】
このように、本発明の光触媒は、ドープ元素と担持金属を両方備えている。しかも、本発明の光触媒は、ドープ元素のドープ量が酸化チタン1モルに対して、1.0×10−6モル以上6.5×10−4モル以下に制限されていることにより、従来技術にはない光触媒活性の向上が達成されている。
以下、本発明の光触媒の光触媒活性のメカニズムについての推察を述べる。
まず、(i)酸化チタンに特定元素をドープすることで、酸化チタンのバンドギャップ中の価電子帯上に新たな準位が形成される。これにより、可視光吸収量が増大し、酸化サイトが形成される。
一方、(ii)特定金属を担持することで、還元サイトが形成される。
このように、可視光を照射すると、特定元素の準位から伝導帯に電子が励起され、特定元素の準位に正孔が生成する。そして、特定元素の酸化サイトにおいては、基質の酸化反応を実現し、特定金属の還元サイトにおいては、伝導帯に励起された電子は、担持した特定金属を媒介として酸素の還元反応を実現することができる。これは、光励起により生じた電子が、担持した金属に移行しやすくなり、正孔との電荷分離が容易になると同時に、担持金属において、電子が空気中の酸素を還元する反応を促進すると考えられる。これにより、高い触媒効率の可視光応答型触媒が実現される。
【0025】
本発明の光触媒においては、担持金属(金属元素換算)に対するドープ元素のモル比が、好ましくは2×10−4以上13以下であり、より好ましくは、2×10−3以上10以下である。ドープ元素/担持金属のモル比を上記範囲内とすることにより、ドープ元素の含有量と担持金属の担持量とのバランスが向上し、光触媒活性を顕著に向上させることができる。
【0026】
また、本発明に係る光触媒の比表面積は、好ましくは1m/g以上100m/g以下であり、より好ましくは1m/g以上85m/g以下である。本発明に係る酸化チタンの比表面積が上記範囲内にある場合、良好な触媒活性が維持され得る。光触媒の比表面積は、一般的なBET法により算出することができる。
【0027】
本発明の光触媒においては、下記の条件で算出した、単位時間あたりの二酸化炭素発生速度が、好ましくは、10ppm/h以上であり、上限値については特に限定されないが、例えば、1000ppm/h以下である。条件:前記二酸化炭素発生速度は、光触媒をΦ28mmのガラス製シャーレに300mg秤量し、使用する。基質にアセトアルデヒドを用い、アセトアルデヒド濃度100ppmの反応ガス(相対湿度50%に調湿したN/O=80/20の標準ガスに所定量のアセトアルデヒドを添加し、アセトアルデヒド濃度100ppmに調整した)600mlを1000mlのテドラーバッグ(洗浄済み、GLサイエンス社製)に仕込み、暗所で30min静置した後、可視光照射を開始する。照射光は、キセノン光源(LA−410UV−3、ライトガイドはRLGB1−5L1000を使用、林時計工業社製)を使用し、カットフィルター(Y−44、旭テクノグラス社製)を用い、λ<420nmの光をカットして、デジタル照度計(IM−5、トプコンテクノハウス社製)でテドラーバッグのフィルムを一層通して照度10万Lxに調整した可視光を照射し、光照射2時間後の二酸化炭素の発生量をメタナイザー付ガスクロマトグラフ(GC−2014、島津製作所社製)で定量し、該発生量を用いて算出する。
このように、本発明の光触媒においては、420nm以上の可視光照射により、光触媒活性が得られる。
【0028】
次に、本発明の光触媒の製造方法について説明する。
本発明の光触媒の製造方法は、酸化チタンの内部に、ルテニウム、クロム、ロジウム、イリジウムおよびマンガンからなる群から選択される少なくとも一種の元素をドープする工程に続いて、酸化チタンの表面に、銅、鉄または白金からなる群から選択される少なくとも一種の金属を担持する工程、を含む。
【0029】
本発明の製造工程においては、ドープする工程は、元素または元素成分を含む化合物を、酸化チタンに混合させる工程と、得られた結果物を焼成する工程とを含む。ドープする工程により、元素ドープ酸化チタンが得られる。また、担持する工程は、金属または金属成分を含む化合物を元素ドープ酸化チタンに接触させる工程を含む。ここで、接触させる工程は、例えば、液体と固体とを混合する手法、又は固体同士を混合する手法を採用することができる。得られた結果物を乾燥させてもよい。このような担持する工程により、ドープ元素および担持金属を備える酸化チタンを含む光触媒が得られる。
【0030】
まず、元素または元素成分を含む化合物(以下、元素化合物と称する)を、酸化チタンに混合させる。元素を酸化チタンに混合するには、種々の方法を用いることができる。例えば、溶液中で混合する方法、気相中で混合する方法や固相中で混合する方法が用いられる。溶液混合方法としては、例えば、(1)元素化合物の存在下、必要に応じて結晶種の存在下、チタン化合物を加水分解あるいは中和する方法、(2)元素化合物の溶液に、酸化チタン粒子を浸漬する方法や酸化チタン粒子に元素化合物の溶液を含浸する方法、(3)元素化合物を酸化チタン粒子の懸濁液に加えた後、得られた化合物を加水分解、中和、または酸化する方法等がある。
【0031】
本発明の製造方法用いる元素としては、ルテニウム、クロム、ロジウム、イリジウムおよびマンガン等が挙げられる。また、元素化合物としては、これらの元素の、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、酸化物等の化合物が好ましい。
元素化合物の一例としては、例えば、塩化クロム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、ヨウ化ルテニウム、酸化ルテニウム(IV)、酢酸ロジウム、塩化ロジウム、臭化ロジウム、ヨウ化ロジウム、硝酸ロジウム、酸化ロジウム(III)、塩化イリジウム(III)、塩化イリジウム(IV)、臭化イリジウム(III)、臭化イリジウム(IV)、ヨウ化イリジウム(III)、ヨウ化イリジウム(IV)、酸化イリジウム(IV)等が挙げられる。
【0032】
また、チタン化合物としては、例えば、塩化チタン、有機チタン化合物、硫酸チタニル、硫酸チタン等を用いることができる。好ましくは、塩化チタンを用いることができる。
【0033】
上記(1)の混合方法では、予め元素化合物を加えたチタン化合物を用い、これを加水分解あるいは中和して、得られた結果物に硝酸、塩酸などの一塩基酸を添加して解膠したり、更に加圧下で水熱処理してもよい。
【0034】
また、チタン化合物の加水分解は、チタン化合物の水溶液の沸点温度以下で行うことが好ましい。また、中和に用いる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、アミン類等の種々の塩基が挙げられる。
【0035】
上記(2)および(3)の混合方法において、酸化チタン粒子は、種々の公知の方法で得ることができる。酸化チタン粒子を得る方法としては、例えば、(i)塩化チタン、有機チタン化合物、硫酸チタニル、硫酸チタン等のチタン化合物を、必要に応じて結晶種の存在下に加水分解する方法、(ii)上記チタン化合物に、必要に応じて結晶種の存在下に、アルカリを添加し、中和する方法、(iii)塩化チタン、有機チタン化合物等を気相酸化する方法、(iv)(i)〜(iii)で得られた酸化チタンを焼成、あるいは、酸化チタンの懸濁液を、必要に応じて酸またはアルカリを加え、水熱処理する方法等がある。
また、上記(2)および(3)の混合方法において、溶液や懸濁液としては、水、硝酸水溶液、塩酸水溶液、硫酸水溶液やアンモニア水溶液を用いてもよく、エタノール、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒を用いてもよい。好ましくは、水を用いることができる。
【0036】
上記酸化チタン粒子の結晶においては、X線回折で求められる結晶子径が、好ましくは60nm以下である。結晶子径が60nm以下とすることにより、最終的に得られる本発明の光触媒の光触媒活性を向上させることができる。酸化チタンの結晶粒子を所定径以下とすることにより、次の焼成工程で、酸化チタン結晶の内部に、元素を均一にドープすることができると考えられる。また、上記酸化チタン粒子としては、非晶性の酸化チタン粒子を用いてもよい。
【0037】
また、混合工程で得られた、元素を含有する酸化チタンを、必要に応じて、分別、洗浄、乾燥、粉砕する。分別は、通常のろ過や傾斜法等の方法によって行うことができる。乾燥は、任意の温度、圧力で行うことができるが、例えば室温(20℃)〜200℃の温度、常圧あるいは減圧下が適当である。
【0038】
また、本発明の製造方法においては、元素化合物、チタン化合物、酸およびアルカリ等の濃度や添加速度、加水分解反応や中和反応の温度、分散液中の酸化チタンの濃度等の条件は、特に制限がなく適宜設定することができる。
【0039】
このようにして調製された元素を含有する酸化チタンにおいては、この調製段階では、元素化合物と酸化チタンとの混合物あるいは、酸化チタン粒子の表面に元素の化合物が担持された状態であると考えられる。
【0040】
一方、気相混合方法としては、上記元素の塩化物を塩化チタンに添加し、これを高温気相酸化する方法がある。また、化学気相反応法(chemical vapor deposition;CVD)により、無機化合物や金属有機化合物を気化させ、気相中あるいは気相/基板界面での化学反応により、酸化チタン結晶の内部に、元素または元素化合物を含有する酸化チタンを製造することも可能である。
一方、固相混合方法としては、上記元素の化合物を酸化チタンに添加し、乳鉢、ブレンダーやジェットミルで混合する方法がある。
【0041】
続いて、元素を含有する酸化チタンを焼成する。元素を含有する酸化チタンには水分、硝酸、塩酸、硫酸などの酸、アンモニアなどのアルカリおよびエタノール、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒を含んでいてもよい。
焼成温度としては、例えば、500℃〜1100℃であり、好ましくは550℃〜1100℃であり、より好ましくは600℃〜1000℃、最も好ましくは650℃〜900℃である。
焼成温度を500℃以上とすることにより、光触媒活性を高くすることができる。これは、酸化チタン結晶内部への元素のドープが十分となり光触媒体の可視光吸収が大きくなる結果と考えられる。一方、焼成温度を1100℃以下とすることにより、光触媒活性を高くすることができる。これは、酸化チタンの結晶粒子径が大きくなりすぎて、光触媒体の表面積が小さくなることを抑制できるためであると考えられる。
また、焼成における昇温条件としては、特に限定されないが、例えば1h〜40hの間に、室温(20℃)から、500℃〜1100℃の温度領域までに昇温させてもよい。
また、焼成雰囲気としては、空気、酸素、水蒸気、窒素、アルゴン、ヘリウム、真空、窒素などの不活性ガスで希釈した水素雰囲気などが挙げられる。好ましくは、空気や酸素雰囲気で焼成することにより、光触媒活性を高くすることができる。これは、酸化チタンの酸素欠陥が減少するためであると考えられる。
【0042】
また、気相混合方法で得られた酸化チタン粉末はさらに、元素を酸化チタン結晶内部への含有を最適な状態とするため、必要に応じて、上記焼成条件で焼成してもよい。
【0043】
以上のようにして、元素がドープされた酸化チタンが得られる。
続いて、このドープ元素を備える酸化チタンの表面に、金属または金属成分を含む化合物(以下、金属化合物と称する)を少なくとも一種、担持させる。担持方法としては、各種の方法を用いることができる。一例としては、金属化合物の溶液に、元素がドープされた酸化チタン粒子または、この酸化チタン粒子を保持した支持体を浸漬する方法、元素がドープされたチタン化合物粒子の懸濁液または、このチタン化合物粒子を保持した支持体を入れた液に、金属化合物を添加し、溶液のpHを調整する方法等がある。これらの手法は、例えば、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩又は水酸化物である金属化合物に適用することが好ましい。混合方法としても、各種の方法を用いることができる。一例としては、元素がドープされた酸化チタン粒子と金属化合物を乳鉢で混合する方法(とくに、水等の液体を使用しないで、固体同士を混合する手法を用いてもよい。)、元素がドープされた酸化チタン粒子と金属化合物を水中で攪拌、水を蒸発乾固し混合する方法等がある。これらの手法は、例えば、酸化物である金属化合物に適用することが好ましい。
【0044】
金属化合物は、例えば、銅化合物、鉄化合物、白金化合物等を用いることができる。例えば、銅、鉄または白金の、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物、酸化物等が挙げられる。具体的には、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(II)、硝酸鉄(III)、酢酸鉄(II)、水酸化鉄(III)、硫酸銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(I)、ヨウ化銅(II)、硝酸銅(II)、酢酸銅(I)、酢酸銅(II)、水酸化銅(II)、塩化白金(II)、塩化白金(IV)、臭化白金(II)、臭化白金(IV)、ヨウ化白金(II)、ヨウ化白金(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)酸、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸、テトラクロロ白金(III)酸、酸化鉄(II)、酸化鉄(II、III)、酸化鉄(III)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化白金(IV)等が挙げられる。
【0045】
また、元素がドープされた酸化チタン懸濁液の濃度、pH、銅化合物、鉄化合物、白金化合物等の金属化合物を水溶液として用いる時の濃度、pH調整に用いる酸、塩基の濃度は適宜設定することができる。
【0046】
元素がドープされた酸化チタン懸濁液のpH調整に用いる酸、塩基としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、アミン類等の種々の塩基が挙げられる。
【0047】
以上のようにして、ドープ元素および担持した金属を備える酸化チタンが生成物として得られる。得られた生成物を本発明の光触媒として用いることができる。必要に応じて生成物を分別し、洗浄し、乾燥してもよい。分別は、通常のろ過や傾斜法などの方法によって行うことができる。乾燥は、任意の温度、圧力で行うことができるが、例えば20℃や室温(25℃)〜300℃の温度、常圧あるいは減圧下が適当である。その他の乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、風乾、減圧乾燥、加熱乾燥、噴霧乾燥、などが好適に利用できる。また、光触媒の用途によっては、乾燥工程を省略することも可能である。
【0048】
本発明の光触媒を、光触媒反応に実際に用いる場合、粒子状の光触媒、必要に応じて基材に固定したり、光触媒を成形・造粒して成形体として用いるのが便利である。基材としては例えば、金属、タイル、ホーロー、セメント、コンクリート、ガラス、プラスチック、繊維、木材、紙などの種々の材質で形成されたものである。基材の形状としては、例えば、板状、波板状、ハニカム状、球状、曲面状など種々の形状のものを用いることができる。このような基材に光触媒を固定化するには公知の方法、例えば、光触媒を基材表面に塗布あるいは吹きつけた後、乾燥、焼成する方法、光触媒とバインダとを含む塗液を基材表面に塗布あるいは吹きつけた後、乾燥、必要に応じて加熱する方法などで行うことができる。バインダとしては、無機系樹脂、有機系樹脂を用いることができ、光触媒反応により分解され難いバインダ、例えば、セメント、コンクリート、石膏、珪酸化合物、シリカ、ケイ素化合物、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などのバインダが好ましい。また、光触媒を成形して用いる場合には、必要に応じて粘土、珪藻土、有機系樹脂、無機系樹脂などのバインダと混合した後、任意の形状に成形することができる。
【0049】
また、使用環境に応じて、紫外光応答型光触媒など、他の光触媒と混合あるいは併用して用いることやゼオライト、シリカ、アルミナなどの吸着剤と混合あるいは併用して用いることも可能である。
【0050】
次に、本発明の光触媒の作用効果について説明する。
本発明の光触媒においては、酸化チタン結晶内部に元素がドープされている。これにより、可視光を吸収することができる。そして、酸化チタン表面に金属が担持されている。これにより、可視光照射によって生成した電子と正孔の再結合を抑制し、飛躍的に可視光照射下での光触媒機能を向上させることができる。
また、本発明の光触媒においては、コストのかかるイオン注入等の手法を用いず、可視光照射下において優れた光触媒活性を呈する光触媒を実現することができる。これにより、本発明の光触媒を、低コストで生産できる。
このため、本発明の光触媒の光触媒機能を利用した脱臭、殺菌など人体や生活環境に悪影響を及ぼす物質やその可能性がある物質の分解、浄化、除去、殺菌等、種々の用途に広く用いることができる。
【0051】
本発明の光触媒は、さらに具体的に次のような用途に用いることが可能である。但し、記載した用途は、適用可能な例であって、本発明を限定するものではない。例えば、本発明の光触媒の用途としては、家具、壁材、照明器具、浴室部材、洗面台用品、台所用品、使い捨て紙、自動車内装部材、その他屋内部材、歯科用材等の生活用部材に使用することができる
【実施例1】
【0052】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0053】
〔物性測定方法〕
各種元素の含有量は、ICP発光分析器(VISTA−PRO、SII社製)を用いて測定した。なお、含有量が少なくIPC発光分析法の検出下限以下であった試料7のCr量については、原料の酸化チタンを800℃で焼成した、焼成前後の酸化チタン重量減少率と試薬の添加量から計算した値を使用した。
酸化チタンの結晶型と各結晶の含有割合は、Multi Flex用X線発生装置(Cat.No.2013B303、リガク社製)を用いて、X線回折のピーク位置と各結晶の最強干渉線の面積比を計算し、表した。また、結晶粒子径は、X線回折の半値幅からシェラー(Scherrer)の式を用いて算出した。
実施例、比較例に示した試料、光触媒の紫外光〜可視光吸収スペクトルは、分光光度計(UV−2550、島津製作所社製)を用い、硫酸バリウムを対照として測定した。
【0054】
〔光触媒機能の評価〕
製造例で得られた試料、実施例、比較例で得られた光触媒の光触媒機能は以下のようにして調べた。
各試料、各光触媒300mgをΦ28mmのガラス製シャーレに秤量し、ブラックライトを2mW/cmの強度、48時間照射し、前処理を行い、シャーレを1000mlのテドラーバッグ(洗浄済み、GLサイエンス社製)へ装入した。次に、イオン交換水で湿度50%に調湿したN:O=80:20の標準ガスでガス置換を4回行った後、次に、イオン交換水で湿度50%に調湿したN:O=80:20の標準ガスに、アセトアルデヒドを添加、濃度を100ppmに調製したガス600mlを1000mlのテドラーバッグ(洗浄済み、GLサイエンス社製)へ導入、30分間暗所で静置した後、可視光照射を開始する。照射光は、キセノン光源(LA−410UV−3、林時計工業社製)を使用し、カットフィルター(Y−44、旭テクノグラス社製)を用い、λ<420nmの光をカットして、デジタル照度計(IM−5、トプコンテクノハウス社製)でテドラーバッグのフィルムを一層通して照度10万Lxに調整した可視光照射を行い、光照射2時間後の二酸化炭素の発生量をメタナイザー付ガスクロマトグラフ(GC−2014、島津製作所社製)で定量し、単位時間あたりの二酸化炭素発生速度として表した。
【0055】
〔元素ドープ酸化チタンの調製〕
【0056】
製造例1
酸化チタン(昭和タイタニウム社製:FP−6、結晶型:アナターゼ型、結晶子径:10nm)10.0gを300mlガラス製ビーカーに入れ、塩化クロム六水和物(CrCl・6HO)2.6mgをイオン交換水20mlに溶解した水溶液を加え、樹脂製薬さじで混合しペースト状とした。これを120℃の温度で5時間乾燥後、メノウ乳鉢で乾燥物を粉砕し、塩化クロムを含有させた酸化チタン粉末を得た。次に、塩化クロムを含有させた酸化チタン粉末10.0gを50mlアルミナるつぼに入れ、蓋をした後に、空気雰囲気下800℃の温度で3時間焼成(昇温速度100℃/hr、降温速度100℃/hr)した。焼成後の粉末をメノウ乳鉢で粉砕し、クロムドープ酸化チタン(試料1)を得た。
【0057】
製造例2〜6
焼成温度を変える他は、製造例1と同様の操作を行い、クロムドープ酸化チタン(試料2〜6)を得た。
【0058】
製造例7〜11
塩化クロム六水和物の添加量を変える他は、製造例1と同様の操作を行い、クロムドープ酸化チタン(試料7〜11)を得た。
【0059】
製造例12
塩化クロム六水和物に変えて、硝酸マンガン六水和物2.8mgを使用する他は、製造例1と同様の操作を行い、マンガンドープ酸化チタン(試料12)を得た。
【0060】
製造例13
塩化クロム六水和物に変えて、塩化ルテニウムn水和物(ルテニウム含有量40%)2.4mgを使用する他は、製造例1と同様の操作を行い、ルテニウムドープ酸化チタン(試料13)を得た。
【0061】
製造例14
塩化クロム六水和物に変えて、塩化ルテニウムn水和物(ルテニウム含有量40%)2.4mgを使用し、焼成温度他を700℃とする他は、製造例1と同様の操作を行い、ルテニウムドープ酸化チタン(試料14)を得た。
【0062】
製造例15
塩化クロム六水和物に変えて、硝酸ロジウム2.8mgを使用する他は、製造例1と同様の操作を行い、ロジウムドープ酸化チタン(試料15)を得た。
【0063】
製造例16
塩化クロム六水和物に変えて、塩化イリジウム3.2mgを使用する他は、製造例1と同様の操作を行い、イリジウムドープ酸化チタン(試料16)を得た。
【0064】
製造例17
酸化チタン(テイカ社製:MT−150A、結晶型:ルチル型、結晶子径:10nm)を使用する他は、製造例1と同様の操作を行い、クロムドープ酸化チタン(試料17)を得た。
【0065】
製造例18
酸化チタン(テイカ社製:MT−150A、結晶型:ルチル型、結晶子径:10nm)を使用し、焼成温度を400℃とする他は、製造例1と同様の操作を行い、クロムドープ酸化チタン(試料18)を得た。
【0066】
製造例19
塩化クロムを添加せず、イオン交換水のみを加える他は、製造例1と同様の操作を行い、酸化チタン(試料19)を得た。
【0067】
製造例20
酸化チタン(テイカ社製:MT−150A、結晶型:ルチル型、結晶子径:10nm)を使用し、塩化クロムを添加せず、イオン交換水のみを加える他は、製造例1と同様の操作を行い、酸化チタン(試料20)を得た。
【0068】
製造例21
製造例19で得られた酸化チタン(試料19)を10.0g使用する他は、製造例1と同様の操作を行い、クロムドープ酸化チタン(試料21)を得た。
製造例1〜21で得られた試料1〜21の調製条件および物性を表1に示した。
【0069】
製造例22
酸化チタン(昭和タイタニウム社製:FP−6、結晶型:アナターゼ型、結晶子径:10nm)10.0gと塩化ルテニウムn水和物(RuCl・nHO、ルテニウム含有量40%)2.6mgを250mlガラス製ミニボトル(アズワン株式会社製)に入れ、SUS304製カッター(アズワン株式会社製)を取り付けた後、オスターブレンダー(アズワン株式会社製)で5分間攪拌し、塩化ルテニウムを含有させた酸化チタン粉末を得た。次に、塩化ルテニウムを含有させた酸化チタン粉末10.0gを200mlアルミナるつぼに入れ、蓋をした後に、空気雰囲気下750℃の温度で3時間焼成(昇温速度100℃/hr、降温速度100℃/hr)した。焼成後の粉末をメノウ乳鉢で粉砕し、ルテニウムドープ酸化チタン(試料22)を得た。
【0070】
製造例23
表面をシリカ水和物もしくはシリカで処理されたケイ素処理酸化チタン(テイカ社製:MT−100WP、結晶型:ルチル型、結晶子径:11nm、TiO含有量:73wt%、SiO含有量:26wt%)10.0gと塩化ルテニウムn水和物(RuCl・nHO、ルテニウム含有量40%)2.0mgを250mlガラス製ミニボトル(アズワン株式会社製)に入れ、SUS304製カッター(アズワン株式会社製)を取り付けた後、オスターブレンダー(アズワン株式会社製)で5分間攪拌し、塩化ルテニウムを含有させたケイ素処理酸化チタン粉末を得た。次に、塩化ルテニウムを含有させたケイ素処理酸化チタン粉末10.0gを200mlアルミナるつぼに入れ、蓋をした後に、空気雰囲気下750℃の温度で3時間焼成(昇温速度100℃/hr、降温速度100℃/hr)した。焼成後の粉末をメノウ乳鉢で粉砕し、ルテニウムドープケイ素処理酸化チタン(試料23)を得た。ケイ素処理酸化チタンのTiO含有量は、ICP分析により算出した。
【0071】
〔光触媒の調製〕
【0072】
実施例1
100ml4つ口フラスコにイオン交換水42.5mlおよび製造例1で得られたクロム含有酸化チタン(試料1)を5.0g装入し10分間攪拌した後、0.1N塩酸水溶液を滴下し溶液のpHを4に調製し、次いで、塩化銅二水和物(CuCl・2HO)13.4mgをイオン交換水7.5mlに溶解した水溶液を滴下し、さらに0.1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下し溶液のpHを5に保ち、1時間攪拌した。1時間攪拌の後、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しpH7に中和後、ろ過し、洗浄水の導電率が1mS/m以下になるまでイオン交換水で洗浄を行った。得られたウエットケーキを、空気雰囲気下110℃で12時間乾燥後、メノウ乳鉢で粉砕し、表面に銅化合物を担持した光触媒(光触媒1)を得た。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0073】
実施例2〜4
塩化銅二水和物(CuCl・2HO)の添加量を変える他は実施例1と同様の操作を行い光触媒2〜4を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0074】
実施例5
100ml4つ口フラスコにイオン交換水42.5mlおよび製造例1で得られたクロム含有酸化チタン(試料1)を5.0g装入し10分間攪拌した後、1N塩酸水溶液を滴下し、溶液のpHを3に調製した。次いで、塩化鉄(III)(FeCl・6HO)24.2mgを0.1N塩酸7.5mlに溶解した水溶液を滴下し、さらに1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下し溶液のpHを2に保ち、1時間攪拌した。1時間攪拌の後、1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しpH7に中和後、ろ過し、洗浄水の導電率が1mS/m以下になるまでイオン交換水で洗浄を行った。得られたウエットケーキを、空気雰囲気下110℃で12時間乾燥後、メノウ乳鉢で粉砕し、表面に鉄化合物を担持した光触媒(光触媒5)を得た。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0075】
実施例6
塩化銅二水和物(CuCl・2HO)に変えて、塩化白金酸(IV)(HPtCl・6HO)13.3mgを使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒6を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0076】
実施例7
試料1に変えて試料2(900℃焼成試料)を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒7を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0077】
実施例8
試料1に変えて試料3(1000℃焼成試料)を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒8を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0078】
実施例9
試料1に変えて試料4(700℃焼成試料)を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒9を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0079】
実施例10
試料1に変えて試料5(600℃焼成試料)を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒10を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0080】
実施例11
試料1に変えて試料7(Cr含有量8.2×10−6mol/対TiOモル比)を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒11を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0081】
実施例12
試料1に変えて試料8(Cr含有量1.6×10−5mol/対TiOモル比)を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒12を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0082】
実施例13
試料1に変えて試料9(Cr含有量4.9×10−5mol/対TiOモル比)を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒13を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0083】
実施例14
試料1に変えて試料10(Cr含有量1.6×10−4mol/対TiOモル比)を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒14を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0084】
実施例15
試料1に変えて試料11(Cr含有量3.3×10−4mol/対TiOモル比)を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒15を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0085】
実施例16
試料1に変えて試料17(TiO原料銘柄:MT−150A)を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒16を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0086】
実施例17
試料1に変えて試料21を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒17を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表2に示した。
【0087】
実施例18
試料1に変えて試料13(800℃焼成、Ru含有量7.9×10−5mol/対TiOモル比)を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒18を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表3に示した。
【0088】
実施例19〜23
試料1に変えて試料14(700℃焼成、Ru含有量7.9×10−5mol/対TiOモル比)を使用し、塩化銅二水和物(CuCl・2HO)の添加量を変え、実施例1と同様の操作を行い光触媒19〜23を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表3に示した。
【0089】
実施例24〜28
試料1に変えて試料14(700℃焼成、Ru含有量7.9×10−5mol/対TiOモル比)を使用し、塩化鉄(III)(FeCl・6HO)の添加量を変える他は、実施例5と同様の操作を行い光触媒24〜28を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表3に示した。
【0090】
実施例29〜32
試料1に変えて試料14(700℃焼成、Ru含有量7.9×10−5mol/対TiOモル比)を使用し、塩化白金酸(IV)(HPtCl・6HO)の添加量を変える他は、実施例6と同様の操作を行い光触媒29〜32を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表3に示した。
【0091】
実施例33
試料1に変えて試料12(Mn含有量8.2×10−5mol/対TiOモル比)を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒33を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表3に示した。
【0092】
実施例34
試料1に変えて試料15(Rh含有量8.1×10−5mol/対TiOモル比)を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒34を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表3に示した。
【0093】
実施例35
試料1に変えて試料16(Ir含有量8.0×10−5mol/対TiOモル比)を使用する他は実施例1と同様の操作を行い光触媒35を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表3に示した。
【0094】
実施例36
試料1に変えて試料22(Ru含有量7.9×10−5mol/対TiOモル比)と塩化鉄(III)(FeCl・6HO)12.1mgを使用する他は実施例5と同様の操作を行い光触媒36を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表3に示した。
【0095】
実施例37
試料1に変えて試料23(Ru含有量7.9×10−5mol/対TiOモル比)、塩化鉄(III)(FeCl・6HO)9.0mgを使用する他は実施例5と同様の操作を行い光触媒37を調製した。調製条件、物性、活性評価結果を表3に示した。
【0096】
実施例38
試料22(Ru含有量7.9×10−5mol/対TiOモル比)5.0gと酸化銅(II)(アルドリッチ社製、ナノパウダー)25.0mgをアルミナ乳鉢で30分混合し、銅化合物を担持した光触媒(光触媒38)を得た。
【0097】
実施例39
試料22(Ru含有量7.9×10−5mol/対TiOモル比)5.0gと酸化鉄(III)(アルドリッチ社製、ナノパウダー)25.0mgをアルミナ乳鉢で30分混合し、鉄化合物を担持した光触媒(光触媒39)を得た。
【0098】
比較例1〜7
製造例1、12、13、15、16、17、19で得られた試料をそのまま使用して分解活性評価を行った。試料の物性および活性評価結果を表4に示した。
【0099】
比較例8
試料1に変えて試料19(TiO銘柄:FP−6、ドープ元素なし)を使用する他は、実施例1と同様の操作を行い、試料19に銅化合物を担持した光触媒36を得た。試料の物性および活性評価結果を表5に示した。
【0100】
比較例9
試料1に変えて試料20(TiO銘柄:MT−150A、ドープ元素なし)を使用する他は、実施例1と同様の操作を行い、試料20に銅化合物を担持した光触媒37を得た。試料の物性および活性評価結果を表5に示した。
【0101】
比較例10
試料1に変えて試料19(TiO銘柄:FP−6、ドープ元素なし)を使用し、塩化銅二水和物に変えて塩化鉄(III)六水和物24.2mgを使用する他は、実施例1と同様の操作を行い、試料19に鉄化合物を担持した光触媒38を得た。試料の物性および活性評価結果を表5に示した。
【0102】
比較例11
試料1に変えて試料19(TiO銘柄:FP−6、ドープ元素なし)を使用し、塩化銅二水和物に変えて塩化白金酸(IV)六水和物13.3mgを使用する他は、実施例1と同様の操作を行い、試料1に白金化合物を担持した光触媒39を得た。試料の物性および活性評価結果を表5に示した。
【0103】
比較例12
400℃で焼成して製造した試料6(TiO銘柄:FP−6、Cr含有量8.2×10−5mol/対TiOモル比)を使用する他は、実施例1と同様の操作を行い、試料6に銅化合物を担持した光触媒40を得た。試料の物性および活性評価結果を表5に示した。
【0104】
比較例13
400℃で焼成して製造した試料18(TiO銘柄:MT−150A、Cr含有量8.2×10−5mol/対TiOモル比)を使用する他は、実施例1と同様の操作を行い、試料18に銅化合物を担持した光触媒41を得た。試料の物性および活性評価結果を表4に示した。
【0105】
比較例14
特許文献3に記載の光触媒を調製した。酸化チタン(テイカ社製:MT−150A、結晶型:ルチル型、結晶子径:10nm)19.99gと酸化セリウム(和光純薬工業社製)0.22g(モル比0.995:0.005)をアルミナ乳鉢で1時間混合し、酸化チタンと酸化セリウムの混合粉末を得た。次に、酸化チタンと酸化セリウムの混合粉末10.0gを50mlアルミナるつぼに入れ、空気雰囲気下1200℃の温度で5時間焼成(昇温速度100℃/hr、降温速度100℃/hr)した。焼成後の粉末は、灰色に着色し、目的とするセリウムドープ酸化チタンを得ることができなかった。再度調製しても、焼成後の粉末は灰色に着色したため、焼成温度を800℃へ下げることとした。すなわち、焼成温度を800℃に変える他は、上記と同様の操作を行い、セリウムドープ酸化チタン(試料24)を得た。焼成後の粉末は、うす黄色に着色していた。
そして、このセリウムドープ酸化チタン5.0gおよび蒸留水45.0mlを100ml4つ口フラスコに装入し、10分間攪拌した後、次いで、塩化銅二水和物(CuCl・2HO)13.4mgを添加し、オイルバスで90℃に加熱して、1時間攪拌した。1時間攪拌の後、ろ過し、洗浄水の導電率が1mS/m以下になるまで蒸留水で洗浄を行った。得られたウエットケーキを、空気雰囲気下110℃で12時間乾燥後、メノウ乳鉢で粉砕し、表面に銅化合物を担持した光触媒(光触媒42)を得た。
【0106】
比較例15
試料22に変えて試料19(TiO銘柄:FP−6、ドープ元素なし)を使用する他は、実施例38と同様の操作を行い、試料19に銅化合物を混合した光触媒43を得た。
【0107】
比較例16
試料22に変えて試料19(TiO銘柄:FP−6、ドープ元素なし)を使用する他は、実施例39と同様の操作を行い、試料19に鉄化合物を混合した光触媒44を得た。
【0108】
本発明の実施例1〜実施例39は、優れた光触媒活性が得られることが分かった。一方、金属を担持しない比較例1〜7では、光触媒活性が得られなかった。また、元素をドープしない比較例8〜11、15及び16では、光触媒活性が得られなかった。また、比較例14では、ドープ元素がCeであるために、光触媒活性が不十分であった。また、比較例12及び13では、焼成温度が低すぎて、元素のドープが不十分なために、光触媒活性が得られなかったと考えられる。
【0109】
また、図4は、左から、比較例7(TiO(ルチル))、比較例8(Cu担持/TiO(ルチル))、比較例1(CrドープTiO)、実施例1(Cu担持/CrドープTiO)の単位時間あたりの二酸化炭素発生速度を表す。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
【表4】

【0114】
【表5】

【0115】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【0116】
この出願は、平成22年6月10日に出願された日本特許出願特願2010−132706を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンと、
前記酸化チタンの表面に担持された金属と、を有し、
前記酸化チタンの内部に、ルテニウム、クロム、ロジウム、イリジウムおよびマンガンからなる群から選択される少なくとも一種の元素がドープされており、
前記元素のドープ量が、前記酸化チタン1モルに対して、1.0×10−6モル以上6.5×10−4モル以下であり、
前記金属は、銅、鉄または白金からなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む、光触媒。
【請求項2】
前記金属の担持量が、前記酸化チタン1モルに対して、2.0×10−5モル以上3.0×10−2モル以下である、請求項1に記載の光触媒。
【請求項3】
前記金属に対する前記元素のモル比が、2×10−4以上13以下である、請求項1または2に記載の光触媒。
【請求項4】
前記酸化チタンは、ルチル型を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の光触媒。
【請求項5】
前記酸化チタンの比表面積が、1m/g以上100m/g以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の光触媒。
【請求項6】
前記酸化チタンの結晶子径が、5nm以上100nm以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の光触媒。
【請求項7】
下記の条件で算出した、単位時間あたりの二酸化炭素発生速度が、10ppm/h以上である、請求項1から6のいずれか1項に記載の光触媒。
条件:前記光触媒は、Φ28mmのガラス製シャーレに300mg秤量し、使用する。基質にアセトアルデヒドを用い、アセトアルデヒド濃度100ppmの反応ガス(相対湿度50%に調湿したN/O=80/20の標準ガスに所定量のアセトアルデヒドを添加し、アセトアルデヒド濃度100ppmに調整する)600mlを1000mlのテドラーバッグ(洗浄済み、GLサイエンス社製)に仕込み、暗所で30min静置した後、可視光照射を開始する。照射光は、キセノン光源を使用し、カットフィルターを用い、λ<420nmの光をカットして、デジタル照度計でテドラーバッグのフィルムを一層通して照度10万Lxに調整した可視光照射を行い、光照射2時間後の二酸化炭素の発生量をメタナイザー付ガスクロマトグラフで定量し、前記発生量を用いて前記二酸化炭素発生速度を算出する。
【請求項8】
酸化チタンの内部に、ルテニウム、クロム、ロジウム、イリジウムおよびマンガンからなる群から選択される少なくとも一種の元素をドープする工程と、
前記酸化チタンの表面に、銅、鉄または白金からなる群から選択される少なくとも一種の金属を担持する工程と、を含み、
前記元素のドープ量は、前記酸化チタン1モルに対して、1.0×10−6モル以上6.5×10−4モル以下である、光触媒の製造方法。
【請求項9】
前記金属を担持する工程は、ルテニウム、クロム、ロジウム、イリジウムおよびマンガンからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む元素化合物を前記酸化チタンに混合する工程を有する、請求項8に記載の光触媒の製造方法。
【請求項10】
前記元素化合物を酸化チタンに混合する前記工程は、固相混合法を用いて混合する工程である、請求項9に記載の光触媒の製造方法。
【請求項11】
前記元素をドープする前記工程において、結晶子径が60nm以下の酸化チタンまたは非晶性の酸化チタンを用いる、請求項8から10のいずれか1項に記載の光触媒の製造方法。
【請求項12】
前記元素をドープする工程は、
前記元素を含む元素化合物を前記酸化チタンに混合する工程と、
混合する工程により得られた結果物を、500℃以上1100℃以下の温度で焼成する工程と、を含む、請求項8から11のいずれか1項に記載の光触媒の製造方法。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか1項に記載の製造方法により得られる、光触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−16697(P2012−16697A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127744(P2011−127744)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、循環社会構築型光触媒産業創成プロジェクト事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】