説明

光触媒の透明な膜における被覆剤として使用される溶液を生産する工程

本発明は、透明な光触媒の被覆物を得るために、基体に堆積させられることを目的とした鋭錐石の酸化チタンを含有する安定な溶液を生産する工程に関する。このような工程は、チタンの前駆体の材料、有機溶剤、酸性の試剤を含む初期の安定化した解膠させた溶液の調製、大量の水との該初期の溶液の混合を含み、得られた中間の溶液のpHは、3未満であり、その工程は、該中間の溶液及びそれの分散系に熱処理を施すこと、最終的に分散させられる最終的な溶液を得るための低い表面張力を備えた有機溶剤による水の交換を含む。本発明は、特に、高い光学的特性の光触媒の膜で熱に敏感な基体及び/又は透明な基体を被覆することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な光触媒の被覆物を生産するために、基体に、特に熱に敏感な基体に、堆積させられることを目的とした鋭錐石の酸化チタンを含有する安定な溶液を生産する工程に関する。鋭錐石の酸化チタンは、それの高い光触媒の活性について周知である。鋭錐石は、ある材料に被覆されると、この材料に自己洗浄性を提供する。加えて、この光触媒の被覆物を、有害な材料の除去、臭気物質の脱臭/分解、防染、殺菌剤の活性、滅菌…に使用することができる。
【0002】
また、本発明は、本発明による安定な溶液を生産する工程によって得られる溶液に、本発明によって得られる溶液を使用して基体を被覆する工程に、及び、このような工程によって得られる被覆された基体に関する。
【背景技術】
【0003】
光学的特性を与える光触媒の被覆物が、非晶質のゾル−ゲルのTiOの膜の熱的な結晶化によって容易に得られることは、周知である。このような結晶化は、通常、相対的に高い温度での分解後の熱処理を要求する。これは、融解石英又はミネラルガラスのような、適度に良好な熱安定性の支持体に対する光触媒の用途を規制する。重合体上に堆積させたTiOの膜の光触媒の性質は、ゾル−ゲルの文献では、めったに研究されてこなかった。重合体の支持体のような、熱に敏感な基体上におけるゾル−ゲルのTiOの膜の光触媒の性質を活用するために、低い温度の結晶化のアプローチは、必要である。
【0004】
特許文献1は、このようなアプローチを提案する。この文書においては、異なる目的及び効果を有する三つの発明が、与えられている。二つの第一の発明は、閉じた容器における熱処理によって鋭錐石の酸化チタンを得ることを提案する。これら二つの第一の発明は、主として、結晶化した粉末を得ることを目的とする。それにもかかわらず、被覆物は、光触媒の活性を証明する、得られるスラリーと共に実現されるが、これらの被覆物は、厚いと共に、被覆された基体の光学特性が保存されることを可能にしない。このような発明は、むしろ、セラミックの用途を対象としたものであり、結晶質の粉末は、溶液の熱処理の後に、遠心分離によって回収される。これらの二つの第一の発明におけるデータは、光学的特性の光触媒のTiOの膜の堆積と適合した安定な懸濁液のゾル−ゲルの調製に言及しなかった。
【0005】
第三の発明は、被覆可能な溶液を得るためのオゾン処理を行うことを提案する。この被覆可能な溶液は、光学的特性の被覆物を得ることを可能にする。それにもかかわらず、その光触媒の活性は、かなり弱いものであるように見える。それを高めるために、第一の二つの発明によって得られるいくらかのスラリーの添加が、提案されている。さらに、オゾンは、現場で製造される必要があり、それは、工業プロセスの安全に問題を引き起こす刺激性の酸化体であるので、このことが束縛であることを、強調する必要がある。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1167296号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低い温度で光触媒の膜を堆積させることを提案する。それは、結晶化したTiOの粒子の液体の懸濁液を調製する可能性に頼るものであり、そして、それら懸濁液を、スピンコーティング、浸漬被覆、又は溶射被覆のような伝統的な液相の堆積の技術を使用して、堆積させることができる。本発明の目的は、光触媒の効果を得るために被覆物の加熱を要求することなく、低い温度での熱処理のみを要求する、基体に直接的に堆積させることができる溶液を得る工程を提案することである。本発明は、オゾンも工業的な条件にあまり良好に適合したものではないどんな他の材料も使用しない。さらに、本発明は、柔軟な実験条件を可能にする短い工程を提案する。そして、本発明は、光触媒の膜で熱に敏感な材料を、その材料の光学的及び機械的特性を保存する一方で、被覆することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、透明な光触媒の被覆物を得るために、基体に堆積させられることを目的とした溶液を調製する工程は、チタンの前駆体の材料、有機溶剤、酸性の試剤を含む初期の安定化した解膠させた溶液を調製するステップ、得られる中間の溶液のチタンに対する水のモル比が0.8よりも大きいような様式で水と該初期の溶液を混合するステップを含み、該初期の溶液における該試剤の量は、該中間の溶液のpHが3未満であるようなものであり、その工程は、80℃と270℃との間の温度で該中間の溶液に熱処理を施すステップ、熱処理された溶液の分散、最終的な溶液を得るための低い表面張力を備えた有機溶剤による水の交換、該最終的な溶液の分散を含む。
【0008】
その結果として、本発明は、チタン種の加水分解及び縮合重合の反応によるTiOの懸濁液のゾル−ゲルの調製を提案する。該初期の溶液、中間の溶液、及び最終的な溶液のpH、(以下ではr比と表記する)チタンに対する水のモル比、チタンの前駆体の材料の希釈の程度の制御は、本発明に必須である。鋭錐石の酸化チタンを含有するこれらのTiOの懸濁液は、透明な光触媒の被覆物を得るために、基体に堆積させられることを目的とする。
【0009】
本発明の好都合な実施形態においては、特に、該初期の解膠させた溶液は、該初期の溶液において1より小さいチタンに対する水のモル比を有するために、水の存在によって、及び/又は、室温での該初期の溶液の熟成によって、安定化させられる。初期の溶液の安定化のこれらの手段は、初期の溶液の加熱を伴わず、該加熱は、沈殿又はゲル化の反応を有効に開始させることができるであろう。
【0010】
好適な実施形態においては、該初期の溶液における該試剤の量は、該中間の溶液のpHが、1と2との間にあるようなものである。このような条件において、溶液で起こる様々な反応の間の均衡は、本発明の目的に最適なものである。
【0011】
熱処理のステップの好適な実施においては、このステップは、閉じた容器における還流又はオートクレーブ処理によって実現される。都合良くは、熱処理は、140℃よりも低い温度で実行される。本発明による工程のこのような特徴は、基体における最終的に得られる溶液で実現される被覆物の最適な機械的特性を有することを可能にする。さらに、得られる中間の溶液のチタンに対する水のモル比は、都合良くは、基体における最終的に得られる溶液で実現される被覆物について最適な光触媒の性質を得るために、30よりも大きい。該分散のステップの少なくとも一つが、溶液の超音波処理によって実現されることは、好都合である。超音波の周波数は、凝集したTi種の間の結合を切断することに、特に効率的である。上記の与えられた工程による溶液の堆積によって得られる被覆物の光触媒の活性を増加させるために、再濃縮のステップが、より濃縮された最終的な溶液を得るために、交換のステップの後に実現される。
【0012】
そして、本発明は、また、鋭錐石の酸化チタンを含有する安定な溶液を生産する上述した工程によって得られるような分散した最終的な溶液を使用して光触媒の透明な層で基体を被覆する工程に関する。そして、このような工程によって、薄膜を、該最終的な溶液から室温で堆積させる。基体に被覆したとき、得られる被覆物は、熱処理されることを必要とすることなく、有効な光触媒の効果を与える。さらに、被覆物は、透明であると共に、良好な機械的性質を与える。被覆のステップを、基体において光触媒の材料のより厚い層を得るために、繰り返すことができ、このような厚い層は、より強い光触媒の性質を有する。
【0013】
また、本発明は、本発明による基体を被覆する工程によって得られる被覆された基体に関する。この基体を、任意の種類の熱に敏感な材料で、特に重合体の材料で、構成することができる。
【0014】
その結果として、本発明は、低い耐熱性を有する基体の被覆物にそれの主要な用途を見出す。このような被覆物が、透明であると、及び、それらが、被覆物が実現される基体の光学特性を保存することを可能にすると、本発明は、また、透明な基体に特に興味深いものである。透明な熱に敏感な材料は、本発明から最も利益を得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を、概略の図を参照して、詳細に記載することにする。
【0016】
本発明は、透明な光触媒の被覆物を得るために、基体上に堆積させられることを目的とした鋭錐石の酸化チタンを含有する安定な溶液を生産する工程に関する。このような工程は、チタンの前駆体の材料、有機溶剤、酸性の試剤を含む初期の安定化した解膠させた溶液の調製、大量の水と該初期の溶液を混合することを含み、得られた中間の溶液のpHは、3未満であり、その工程は、該中間の溶液及びそれの分散系に熱処理を施すこと、最終的に分散させられる最終的な溶液を得るための低い表面張力を備えた有機溶剤による水の交換を含む。本発明は、特に、熱に敏感な基体及び/又は透明な基体の光触媒の被覆物を可能にする。
【0017】
図1を参照して、溶液は、チタンの前駆体の材料、無水エタノール、及び酸性の試剤を含む初期の溶液ISOLから調製される。解膠の効果は、これらの解膠の効果が、酸性の条件で前駆体の材料を安定化させるので、初期の溶液を安定化させる。解膠の効果は、賛成の条件によって、すなわち、粒子間の自然な引力のファンデルワールス力を打ち消すと共に縮合重合の反応を阻害する、プロトン付加した加水分解した種の間の静電反発の機構によって、誘発される。実際に、安定化してないTi種は、一度それらが大量の水の存在下に置かれると、加水分解し、縮合重合し、及び沈殿又はゲル化を急速に遂げることができる。これは、透明な層を得るために被覆され得る溶液の生産に反する。速い縮合重合を予防する効率的な解膠を達成するために、室温での初期の溶液の熟成が、チタン種にプロトン付加するために、本発明によって提案される。この熟成の工程は、例えば60時間を要する。このような持続時間は、仮に解膠が正確に達成されてないとすれば大量の水と混合した後で急速に起こるであろう、ゲル化又は沈殿を予防することを可能にする、
初期の溶液を調製するステップの好都合な実施においては、該初期の解膠させた溶液は、該初期の溶液において1よりも小さいチタンに対する水のモル比を有するために、水の存在によって特に安定化させられる。この実施によれば、初期の溶液は、少量の水を含む。この少量の水は、解膠の良好な達成を可能にする。現実に、初期の溶液が、水を含有しないとき、ゲル化又は沈殿は、大量の水とのその後の混合の後に、溶液のその後の熟成の後でさえ、起こり得る。逆に、少量の水が、初期の溶液中に予め希釈されるとき、好ましくは0.8の、チタンに対する水のモル比で、沈殿は、適切な熟成及び大量の水のその後の添加の後で、観察されない。
【0018】
都合良くは、チタンの前駆体は、オルトチタン酸テトライソプロピル(TIPT)であるが、チタンを含む前駆体の材料は、徹底的ではなく、以下の金属の有機化合物及び無機化合物、金属アルコキシド類(チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラブトキシド…)、シュウ酸チタン、硝酸チタン、及び四塩化チタン、のいずれでもあり得る。
【0019】
都合良くは、酸性の試剤は、初期の溶液に添加される塩酸である。それにもかかわらず、例えば硫酸、硝酸、メタチタン酸…を含む任意の酸性の試剤を、本発明による溶液を生産するための工程で使用することができる。
【0020】
脱イオン水WTRとの混合のステップMIXは、中間の酸性の水溶液ASOLを得ることを可能にする。初期の溶液ISOLにおける酸性の試剤の量は、中間の酸性の溶液ASOLにおけるpHが、3よりも低く、好ましくは1と2との間の範囲にあるようなものである。それらの酸性の条件は、求核攻撃の機構を通じて加水分解の反応を触媒する。また、それらは、解膠の効果を通じて縮合重合の反応を遅延させる。両方の効果は、結晶質のTiOの粒子を形成することに要求される。実際に、チタンアルコキシド類のゾル−ゲルの転移の間に、加水分解及び縮合重合は、通常、同時に起こり、ASOL溶液中で不完全に加水分解されたTiO(OH)(OR)種をもたらす(ここでORは、加水分解されてない基を表す)。加水分解されてないアルコキシ基は、構造欠陥として作用する。これらの欠陥は、非晶質の酸化物の粒子に帰着する、熱処理のステップHTRの間におけるその後の結晶化を阻害する。非晶質のTiOの粒子が、どんな光触媒の活性も示さないことは、知られている。従って、結晶化を達成するために、縮合重合が、顕著に進行する前に、加水分解が、完全に進むことは、重要である。言い換えれば、均衡をとられた加水分解/縮合重合の反応の動力学が、必要とされる。この要求は、ゾル−ゲルの転移が、加水分解の反応を達成するために、並びに、加水分解の反応を触媒すると共に縮合重合の反応を遅延させる適切な酸性のpHの条件で、十分な量の水で達成されることを必要とする。このような条件において、アルコキシがないTiO(OH)のヒドロキシルの種が、ASOL溶液中で有効に形成される。
【0021】
これらの機構は、解膠の条件によって強く影響される。あまり縮合重合されないと共にこのようにあまり酸性でないヒドロキシルの種は、好ましくは、酸性の条件でプロトン付加される。その結果として、適切な酸性の条件は、短い架橋されたTi−O−Tiの鎖の安定化に有利である。逆に、ほとんど中性のpHの条件におけるチタンアルコキシド類の強いゾル−ゲル反応性により、密な三次元の粒子が、pHが3の値を超えるとすぐに、得られることが、観察される。Ti−O−Tiの鎖は、特に、2より低いpHで得られる。その結果として、本発明の好適な実施形態によれば、均衡がとられた加水分解及び解膠の効果は、好ましくは、1と2との間のpHについて得られる。pHが3より低い条件では、効率的な解膠により、ASOL溶液は、90以上のr比について完全に透明なままである。粘度における小さい増加のみが、短いと共にアルコキシがないTiO(OH)の鎖を生じさせる、限定されたゾル−ゲルの反応により、測定される。
【0022】
そして、酸性の溶液は、熱処理のステップHTRにおいて、例えば[80℃−270℃]の熱の範囲における数時間又は数日間の還流又はオートクレーブ処理によって、熱処理される。これは、TiOの微結晶を与える。実際上、還流又はオートクレーブ処理の間には、アルコキシがないTiO(OH)のヒドロキシル種が、純粋な酸化物のクラスターを形成するために、縮合重合すると共に架橋する。それらのクラスターは、ナノ結晶のその後の成長のための核生成サイトとして作用する。実際には、酸性の解膠の条件における水との混合によって誘発される短いTiO(OH)種は、より大きい粒子の成長よりもむしろ同様に分散した小さい微結晶の核生成に有利である。オートクレーブ処理及び還流の手順は、オゾンのような追加の試剤の使用なしに、自然の蒸気圧又は自然の雰囲気の下で、実行される。
【0023】
熱処理のステップの第一の好適な実施においては、熱処理は、還流によって行われる。溶液は、6時間の還流の後で急速に沈降するように見えると共に、それらは、例えば超音波攪拌のような強い分散手段による長い分散のステップの後で、再分散され得るのみである。
【0024】
熱処理のステップの第二の好適な実施においては、熱処理は、オートクレーブ処理によって実行される。オートクレーブ処理については、溶液ASOLは、例えば、管状の炉に置かれると共に熱的に調整されるステンレス鋼の閉じた容器中で、熱処理される。6時間のオートクレーブ処理の後で、厚いペーストを、生成するが、そのペーストを、超音波攪拌又は任意の他の攪拌手段による分散のステップDSP1において容易に分散させることができる。また、分散を、分散のステップDSP1を特に短くすることができるように、熱処理の間に開始することができる。分散の後で、懸濁液に多数の小さい粒子を含有する安定な溶液を、生成するが、その溶液は、沈降を遂げないか、又は非常に遅い沈降を遂げる。良好な安定化の特徴により、この溶液を、高いTIPT濃度で調製することができ、そして、それは、実験条件の広い範囲で柔軟に処理される。水中における初期の溶液の希釈と関連した、小さいpHの変動が、解膠の効果及びその後に溶液の挙動に影響を及ぼさないことに留意する必要がある。
【0025】
化学量論的な大過剰の水の存在で、ゾル−ゲルのTiOの粒子の結晶化は、熱力学よりもむしろ動力学によって支配され、オートクレーブ処理の条件は、特に、熱処理が十分な量の水及び適切な酸性のpHと共に行われることを条件として、ゾル−ゲルから誘導された鋭錐石の粒子の大きさ及び結晶化の程度に影響しない。
【0026】
それにもかかわらず、オートクレーブ処理の実験は、解凝集が、より高い温度及びより大きいr比又はより低いpHにおけるオートクレーブ処理の間に、より効率的に進行することを示す。これらの特徴は、より効率的な加水分解の条件及び解膠の条件に関係付けられる。酸性の条件で、均衡をとられた加水分解/解膠の条件によって誘発される結晶化は、不完全に加水分解されたTi−O−Tiの鎖で構成されるTiOの非晶質の網目構造の形成と競争する。これらの鎖は、微結晶をより強く結合させると共に分解されるためのより多くのエネルギー又はより長い解凝集の処理を要求する傾向がある。より低いrの比又はより高いpHでは、競争の機構を、より強い微結晶の結合を促進させる、鎖の形成に向かって偏らせる。逆に、加水分解及び解膠は、熱的に活性化させられると共に、より大きいr比及びより低いpHによって有利にされるが、そのpHは、容易に分散可能な微結晶の形成に向かってゾル−ゲルの反応を偏らせる。また、溶液のより長い熱処理は、より良好な解凝集を可能にする。第一のゾル−ゲルの反応は、顆粒状の凝集を促進させる、熱処理の第一の段階の間に起こる。その処理を続けると、解凝集は、熱処理によって誘発される液体の攪拌の効果の下で、部分的に起こる。また、解凝集は、おそらく、熱的に活性化させられる解膠の効果によっても促進させられる。還流と比較して、オートクレーブ処理は、組み合わせられた対流の効果及び圧力の効果により、より効率的な解凝集を促進させるが、その解凝集は、急速に沈降するのが観察されないと共に超音波処理又は任意の他の攪拌方法によって容易に安定化させられる、より安定な溶液を与える。そして、熱処理の分散の効果は、この安定化を達成することに関係し得る。
【0027】
水は、ディウェッティング効果により均質な膜の堆積にそれ自体を与えない高い表面張力の液体である。この理由のために、溶液の熱処理の後で、低い表面張力の溶剤SOLによる交換のステップEXCが、溶液に初期に存在する水WTRを取り除くために、行われる。交換のステップEXCは、古典的には、熱的な再濃縮のサブステップREC及び希釈のサブステップDILに存するが、そのサブステップRECの間に第一の溶剤(ここでは、水)が、蒸発させられ、そのサブステップDILの間に再濃縮された溶液が、第二の溶剤SOL(ここでは、例えばエタノール)に希釈される。交換のステップEXCを、任意の低い表面張力の液体で、特にアルコールで、実行することができる。エタノールを、例えば、希釈溶剤SOLとして使用するとき、溶液を、自由選択で、水−エタノールの共沸混合物の蒸発を通じて残りの水の除去を完了するために、図1に点線で表した再濃縮のサブステップREC’においてさらに再濃縮することができる。
【0028】
交換の手順EXCの後では、溶液中に形成される粒子は、沈降する傾向があることもあり、それは、新しい分散のステップDSP2を要求する。重ねて、それらの粒子は、いくつかの残存のTi−O−Tiの鎖によって部分的に結合した凝集したナノ微結晶からなる。これらの鎖を、超音波処理又は任意の他の分散方法によって切断することができる。多かれ少なかれ最終的な分散のステップDSP2は、オートクレーブ処理の温度及び持続時間、pH、及びr比に関して、効率的な微粒子の分散系を生産するために、及び、良好な膜の光学的特性を促進させるために、必要である。そして、TiOの粒子は、効率的に分散させられると共に、高い光学的特性の膜を、堆積させることができる。例として、約一時間の短い超音波処理は、1.5よりも低いpH及び30以上のr比で調製され、6時間の間、200℃でオートクレーブ処理され、エタノールで交換された溶液について十分である。
【0029】
解凝集の後で、プロトン付加されたTiOのナノ微結晶は、静電反発の効果を通じて溶液中で安定化させられる。このような条件は、沈降の欠如に有利であると共に、高い光学的特性の膜の再現可能な堆積が、同じ溶液を使用して数ヶ月の期間にわたって可能である。最終的な溶液は、都合良くは、堆積の前に攪拌される。
【0030】
そして、本発明の被覆の工程によれば、得られる最終的な溶液FSOLは、スピンコーティングによって室温で薄膜に堆積させられるが、それは、与えられた容積の溶液が、回転させられる基体上に急速に塗布されることを意味する。被覆の操作を、任意の既知のゾル−ゲルの堆積の方法を使用して、実行することができる。例えば、浸漬被覆、スピンコーティング、溶射被覆…。
【0031】
スピンコーティングの堆積については、液体の容積及び回転のスピードは、基体の大きさ又は性質に及び溶液の粘度に依存して、例えば、それぞれ、2μlから20μl及び2500回転毎分から6000回転毎分に調節される。堆積の後で、希釈溶剤は、急速に蒸発し、結晶質のTiOの膜をもたらす。日常の特性決定用のシリコンウェハ上に堆積を行うことができる。
【0032】
本発明の好適な実施形態によれば、その堆積は、ポリカーボナート(PC)の基体又はポリメチルメタクリラート(PMMA)の基体上で行われる。これは、熱に敏感な基体との被覆された膜の適合性のみならずUV/可視の透過度の測定によって被覆物の光学特性を検査することを可能にする。また、本発明に対してより関連性のあるものである、これらの種類の基体の光触媒の特性決定を有することは、関心があることである。様々な厚さを備えた膜は、多層の堆積の手順を使用して、堆積させられる。このような手順において、各々の単層は、例えば、次の層の堆積の前に、30秒の間、室温で乾燥することを許容されるか、又は、10秒の間、約100℃で空気中において熱処理される。自由選択で、その層を、膜の機械的特性を増加させるために、140℃よりも低い温度での熱処理に晒す追加のステップを、実行してもよい。その層の厚さを増加させることによって、この層の光触媒の活性を増加させることが、可能である。
【0033】
本発明の溶液を生産する工程によれば、沈降の工程を、小さい同様に分散した微結晶を使用することによって、排除することができる。その結果として、酸性の溶液を、高い光学的特性の光触媒の膜の堆積と適合した実験条件の広い範囲で処理することができるであろう。本発明によって得られる、異なる溶液から実現される被覆物について、同等の光触媒の活性が、得られる。膜の多孔率、微結晶の大きさ、及びミクロ微粒子の量に関して観察される小さい変動は、光触媒の性質には特に影響しないが、それらの性質は、膜の類似の結晶化の程度によって本質的に制御される。最後に、以後に記載する例は、適度に良好な機械抵抗を備えた膜が得られることを示す。
【実施例1】
【0034】
以後にいくつかの例を、それらの性質の特性決定と共に与える。膜のミクロ構造の性質、形態学的な性質、光学的な性質、及び光触媒の性質を、溶液の処理パラメータに関して研究する。堆積の直後に又は140℃までの温度での2時間の空気中におけるその後の熱処理の後に、膜を特性決定してきた。
【0035】
これらの特性決定については、TEMの調査は、薄膜の試料を解体することによって得られる、及び、炭素膜で被覆された銅の格子上に堆積させられる、小さい断片について実行される。試験体の大きい傾斜角(±45°)及び3.2Åの格子の外辺の分解能を可能にする配置でJEOL−200CX 顕微鏡が、使用される。Philips XL 30 走査型電子顕微鏡が、膜の表面の形態を研究するために、使用される。また、膜の表面の質は、光学顕微鏡(Leica DMLM)の暗視野像から分析される。透過度のFTIRスペクトルは、Bio−Rad FTS−165 分光器を使用して、4cm−1の分解能で[4000cm−1−250cm−1]のスペクトル域で記録される。スペクトルは、どんな浄化もなしに室内の雰囲気で記録されると共に300回の走査からなる。スペクトルは、Siの寄与を除去するために、試料のスペクトル(Siウェハ上への膜)からの裸の基体のスペクトルの減算の後に、分析される。シリコン上に堆積した膜の厚さ及び屈折率は、632nmの波長でGaertner L116B エリプソメーターを使用して、測定される。PC上に堆積した膜の可視の透過率のスペクトルは、Jasco V−530 分光光度計を使用して、[200nm−1100nm]の範囲で測定される。膜の機械的特性は、様々な荷重を使用するテーバー試験で比較的に試験される。
【0036】
光触媒の活性の測定については、Si又はPC上の膜を、リンゴ(ブタノール二)酸の水溶液に浸漬させると共に、Corning 0.52 フィルター(λ>340nm)を使用するPhilips HPK 125 UV−ランプによって提供されるUVの照射に対して異なる時間に室温で露出させる。少容積の溶液が、時間の関数としてリンゴ酸の濃度を測定するために、周期的に抜き取られる。リンゴ酸の分析は、SARASEP CAR−H カラム(溶離剤:HSO、5×10−2M、流量:0.7ml/分、λ=210nmでの検出)が備え付けられた“Waters 600”クロマトグラフを使用する液体クロマトグラフィー(HPLC)によって行われる。光触媒の活性は、リンゴ酸の消失の速度として識別される。リンゴ酸は、カルボン酸の模範の分子として選ばれるが、それらカルボン酸は、酸化崩壊の工程における中間生成物の主要な構成成分に対する最も良好な代表的なものである。
【0037】
与えられる例によれば、TIPTは、第一に、エタノールで希釈される(CTPT=0.4M)と共に、塩酸を使用して酸性の条件(pH=1.27)で解膠させられる。例えば、このような濃度及びpHを得るために、59.5mlのTPT及び190.5mlの無水エタノールを含有する溶液は、246.5mlの無水エタノール、2.3mlの36%HCl、及び1.2mlのHOを含有する溶液と、攪拌の下で混合される。500mlの容積が得られる。最適な安定化の効果を有するために、少量の水が、初期の溶液MSOLに存在すると共に、与えられる例は、CTPT=0.4M、pH=1.27、及びTIPTに対する水のモル比r=0.8の500mlの溶液を調製することを可能にする。与えられる例においては、初期の溶液は、水と混合される前に、およそ60時間の間、室温で熟成させられる。
【0038】
そして、この初期の溶液(例えば、150ml)は、例えば、磁気攪拌の下で、与えられた容積の水(例えば、30のr比及びCTPT=0.33mol/lを得るためには31.5ml)に、室温で滴の様式で添加される。実験的に、水中での混合のステップは、最終的なr比を0.8(追加の水無し)から90まで変動させるために、行われる。全ての結果として生じる溶液は、混合の後で、透明なままであった。水中での部分的な再希釈は、溶液のpH(又はTIPTの濃度)におけるわずかな増加(又は減少)を引き起こした。この研究で試験された、異なる溶液の最終的な組成を、以下の表に要約する。
【0039】
【表1】

そして、様々なr比を備えたこれらの溶液を、6時間の間、100℃で還流するか、又は100℃から200℃の範囲にわたる温度でオートクレーブ処理する。引用する数字で表した例において、約180mlのペーストが、熱処理の後に、得られる。オートクレーブ処理の後、このペーストを、還流の後では分散がより困難であった一方で、数十分の間の超音波処理又は磁気攪拌によって、容易に再分散させることができた。オートクレーブ処理された溶液に関する例は、以後に提供される。熱処理の後に、溶液を、エタノールで交換する。このステップは、溶液を10倍に第一の熱的に再濃縮し、18mlの濃縮された溶液に帰着することに存する。そして、溶液を、エタノールで10倍に希釈する。数字表した例において、162mlのエタノールを、18mlの濃縮した溶液に添加し、エタノール中での0.33mol/lのチタンの濃度を与える180mlの希釈された溶液に帰着する。交換の後に、エタノールの溶液を、再度、1時間の間、超音波処理する。0.8のr比を備えた溶液は、時間が経っても透明であると共に安定であるように見えた。全ての他の溶液は、オートクレーブ処理、交換、及びその後の超音波処理の後には、乳状になった。200℃でオートクレーブ処理された30のr比を備えた溶液は、沈降が、数ヶ月の期間の間、観察されなかったので、顕著に安定であるように見えた。他の溶液は、非常にゆっくりと沈降した。どの場合にも、良好な光学的な外観の膜を数ヶ月の溶液の熟成の期間にわたって再現可能に堆積させることを、堆積が可能にする前に、短い磁気攪拌の操作を行った。溶液の粘度が、磁気の攪拌又は超音波の攪拌と共に減少することが、観察されると共に、熟成された粘性の溶液は、数分間の攪拌の後に、それらの初期の粘度を回復する。溶液を十分な量の水と共に調製したことを条件として、ここで試験した実験条件の全範囲で、ナノ微結晶を、生成させる。
【0040】
図4は、様々なr比で調製され、6時間の間、100℃又は200℃でオートクレーブ処理された溶液から堆積させられた膜のFTIRスペクトルを示す。溶液B1(0.8のr比及び100℃におけるオートクレーブ処理)については、スペクトルは、1000cm−1と500cm−1との間に位置する数個の追加の狭帯域を伴った470cm−1を中心とする広帯域を示す。これは、TiOのオキソポリマーの、すなわち、鎖の末端のアルコキシ基又は水酸基を備えた非晶質のTiOの網目構造の、典型的なスペクトルであり、そのスペクトルは、低いr比の値について、オートクレーブ処理が、結晶化を与えないことを示す。15以上のr比については、440cm−1及び330cm−1の周囲における強度の良好に分解された帯域は、良好な類似の結晶化の程度を示す。これらの結晶化は、オートクレーブ処理の温度にもかかわらず、現れる。アルコキシ基はないが、微量の水を、FTIRによって検出することができた。
【0041】
30のr比及び1.35のpHで調製された溶液B3から堆積させ200℃でオートクレーブ処理された膜についてのSAEDパターン、暗視野及び明視野のTEM画像、及び高い分解能のTEM画像は、良好に結晶化された鋭錐石の粒子が、形成されてあったことを確認する。鋭錐石の微結晶は、大きさについて10nm以下であると共に等方的な形状を示すように見える。TiOの微粒子における光誘起される電荷の担体の発生を決定する良好な結晶化の程度の他に、小さい微結晶の大きさは、都合良くは、より大きい比表面積が、及びこのように物体とのより大きい接触面が、光触媒で分解されることを促進させることによって、膜の光触媒の活性に影響する別の因子である。
【0042】
図5a、5b、5cは、様々な溶液から堆積させた膜についてのUV/可視の透過度のスペクトルを示す。また、光学顕微鏡の暗視野の画像を、得てきたが、図には与えてない。以前に見てきたように、溶液は、様々なr比で調製され、200℃でオートクレーブ処理され、エタノールで交換され、その後、1時間の間、超音波処理される。図5aにおいて、90のr比(溶液B4)で、膜は、優れた光学的特性を示す。[500nm−1100nm]のスペクトル域で、透過度の最大は、裸の基体の透過度のスペクトルに密接に適合し、無視できる吸収及び散乱の光学的損失を示す。500nm以下で、透過度の損失は、約1%である。最終的な超音波処理が、1時間未満の間、行われるとき、より低い光学的特性が、観察される。1時間の超音波処理の後で、いくつかのミクロ微粒子を、光学顕微鏡写真に観察することができるが、それらは、量的に非常に少ないように、及び、散乱又は吸収の光学的損失における無視できる影響を有するように、見える。非常に少量のミクロ微粒子は別として、SEMの観察は、基体が、ナノ微結晶の小さい凝集体からなる、大きさが約100nmの微粒子で均質に被覆されたことを示す。もう一度、膜の光学的特性を、数ヶ月の期間の間、同じ溶液を使用して再現することができたことに留意することは、重要である。また、90のr比を備えた溶液が、付加的に二回再濃縮される(溶液B)とき、類似の光学的特性が、得られる。この場合には、最終的なCTPTは、0.24Mの代わりに、0.48Mである。このような濃縮された溶液は、多層の堆積の手順を単純化する一方で、より厚い膜を堆積させることを可能にする。
【0043】
ミクロ微粒子の量が、r比を減少させると共に増加することが、観察される。図5bにおいて、30のr比(1.35のpHを備えた溶液B3)では、この傾向は、限定されるように見えると共に、膜の光学的特性は、r=90(溶液B4)で観察されるものと同等のままである。図5cにおいて、r=15(溶液B2)では、膜は、より乏しい光学的特性を与える、より多数の且つより大きい微粒子を示す。また、光学的特性の変性が、より短い時間又はより低い温度のオートクレーブ処理の場合に、又は、より高いpHで調製された溶液について、観察されることに留意することができる。しかしながら、ここで研究したいずれの場合にも、膜は、最終的な超音波処理が、十分な時間の間、行われることを条件として、溶液B3及びB4について得られたものと類似の光学的特性に到達することができる。0.8のr比では、光学的特性が、非常に良好であるように見えるが、その場合には、結晶化が、起こらないことに留意する。
【0044】
90のr比を備えた溶液B4から堆積させた多層の厚い膜に亀裂を観察することが、可能である。このr比の値では、水は、交換のステップの間に溶液から完全には取り除かれない。蒸発は、エタノールよりも水についてゆっくりと進行するので、多層の堆積の手順の間に、水が、第一の堆積させた層から、その後の層の堆積の後に、蒸発することを続け、それは、一旦多層膜が、与えられた厚さを超えると、亀裂を生成させることは、ありそである。この仮定は、水の豊富な相と水の乏しい相との間の分離を示唆する、溶液が、時間と共に遅い液相の分離を遂げたという事実によって、確認された。一方、液相の分離は、30のr比、1.35のpHで調製されると共にその後に200℃でオートクレーブ処理される溶液については、観察されない。対応する膜は、亀裂を受けない。また、亀裂は、より低い温度で熱処理された又はより高いpH若しくはより低いr比で調製された溶液から堆積させた多層膜で観察され得る。このような条件は、あまり効率的でない加水分解を促進させると共に、このようにより多くの水が、溶液中に残留する。この問題は、その後の層の堆積の前に水を蒸発させることを可能にする、各々の単層の堆積の後における短い熱処理によって容易に解決される。例えば、110℃における熱処理は、各々の単層の堆積の後で、10秒の間、実行され、それは、厚さについて500nm以上の亀裂がない多層の被覆物を与える。
【0045】
要約するために、酸性の条件で解膠されたと共にその後に100℃−200℃でオートクレーブ処理された溶液は、良好な安定性を与えると共に、実験条件の大きい範囲に対して良好な光学的特性及び結晶化の程度の膜を与える。それにもかかわらず、溶液を調製しておいた後における適切に長い超音波処理の持続時間、及び/又は、多層の手順の間における低い温度での短い熱処理を提供することが、必要であることもある。図2において、多層膜の厚さは、30のr比及び1.35のpHで調製されたと共に200℃でオートクレーブ処理された溶液B3の場合に測定される。楕円偏光法の測定は、膜の厚さを、多層の堆積の手順を使用して、再現可能に制御することができたことを示す。膜の多孔率は、ローレンツ−ローレンツ関係を使用する、屈折率の楕円偏光法の測定から導出される。632nmでの屈折率が、1.70+/−0.05及び1.85+/−0.05であることが、測定され、それは、それぞれ、30及び90のr比を有する200℃でオートクレーブ処理された溶液について40%及び30%付近の体積多孔率を与える。1.95+/−0.05(25体積%の多孔率)及び2.00+/−0.05(20体積%の多孔率)の屈折率の値は、それぞれ、30及び90のr比を有する130℃でオートクレーブ処理された溶液について測定される。これらのデータは、より大量の水又はより低い熱処理の温度を使用して結晶化される溶液が、より密な膜を与えることを示す。よって、より密な膜は、より大きい耐引っ掻き性及び良好な付着性を示す。このような膜の耐引っ掻き性は、重合体の基体の耐引っ掻き性と同等であるか又はその耐引っ掻き性よりも良好であり、本発明によって堆積させられる膜は、それら基体に対して特に意図される。TiOの微結晶が、SiOの基材に埋め込まれるとき、さらにより良好な耐引っ掻き性が、到達されることに留意する必要がある。その目的のために、本発明によって調製されるTiOの溶液は、当技術のゾル−ゲル状態に従って調製されるSiOの溶液と混合される。そして、このように形成される混合された溶液は、堆積させられ、複合のTiO−SiOが混合した膜を与える。そして、それの機械抵抗を改善するために、複合の膜を、自由選択で、110℃前後の温度で熱処理することができ、それは、重合体の材料の熱的な安定性と適合するものである。また、任意の他の既知の低い温度の硬化処理、例えば、アンモニア性の蒸気下での硬化を、使用することができる。
【0046】
図3は、30のr比、1.35のpHで調製されたと共に200℃でオートクレーブ処理された溶液の光触媒の活性を図説する。ここで、リンゴ酸の光分解速度は、動力学的なゼロ次のものであるように見えた。図3は、光触媒の活性が、膜の厚さ、すなわち、単層の数と共に連続的に増加することを示す。類似の光触媒の活性は、上記の表に提案される、様々な条件で解膠させた溶液から堆積させたと共に[100℃−200℃]の熱の範囲でオートクレーブ処理された同等の厚さの結晶質の膜で測定された。良好な結晶化の程度及び小さい微結晶の大きさの他に、膜の多孔率は、膜の光活性に影響し得る別の因子である。一方では、膜の表面で吸着される、壊される液体又は気体の反応物は、光触媒の反応に伴ったより多量のTiOの粒子を含む、孔を通じて拡散することができる。他方では、多孔率は、また、限定要因である得るであろう。反応物と直接的に接触しないTiOの粒子は、電荷の担体の効率的な伝達が粒子の間で起こることを条件として、光触媒の工程に関係することができるかもしれない。高すぎる多孔率は、顆粒間の伝達を減少させ得ると共にこのように膜の光触媒の活性を限定し得るであろう。得られた膜の多孔率は、20体積%と40体積%との間の範囲にわたるが、それは、光触媒の活性についての優れた折衷であるように見える。本発明の実施は、光触媒の活性が、同等の厚さの異なる膜について類似であること、及び、この活性が、膜の厚さと共に増加すること、言い換えれば、膜の内側の部分が、リンゴ酸の光分解に寄与することを示す。この観察は、より厚い膜について、より強い触媒活性に到達することができることを暗示する。
【0047】
楕円偏光法の測定からの膜の厚さ及び多孔率の決定は、膜の比活性(TiOの粒子の量に関して規格化された活性)を決定することを可能にする。PC上に堆積させた膜の比活性は、シリカ上に堆積させた膜のものよりもわずかに弱いと共に、それは、膜が、110℃よりも高い温度で熱処理されるとき、減少する。逆に、それは、膜が110℃以下で熱処理されるとき、変化しないままである。この結果は、このような温度での膜の熱処理を、膜の光触媒の活性についてのどんな損失も無しに、機械抵抗を改善するために、使用することができることを示す。基体からの光触媒の層の汚染を回避するために、緩衝物の中間層の堆積もまた可能である。このような汚染は、重合体上に堆積させた膜の比活性が、シリカ上に堆積させた膜のものよりも弱い理由を、説明することができるであろう。実際に、UV放射に露出させた重合体を、直接的な光分解又は光触媒機構を通じて、膜−基体の界面で部分的に分解することができるが、それは、次には、膜を汚染すると共に、それの光触媒の活性を減少させる。そして、本発明による被覆の工程によってシリコンの基体上に堆積させた膜の比活性は、500℃で結晶化されたゾル−ゲルのTiOの膜について測定されたものと同等である。この特徴は、溶液の処理を通じて得られる結晶化の程度が、高い温度の膜の処理の後で得られるものと同等であることを証明する。要約するために、良好な光学的及び機械的な特性並びに良好な光触媒の性質が付与された膜を、重合体の基体又は任意の種類の熱に敏感な支持体上に堆積させることができる。実験条件の広い範囲における酸性の溶液から達成される、良好な程度の結晶化及び小さい粒子の大きさは、高い光触媒の効率及び良好な光学的な透明度を備えた膜の室温での堆積を促進させる。そして、被覆物の厚さを、基体の光学特性の劣化無しに、堆積させられる溶液のナノ微結晶の濃度を増加させることによって、又は、多層の堆積の手順を実現することによって、増加させることができる。厚さのこのような増加は、光触媒の活性を増加させる。濃縮された溶液の堆積は、堆積の手順の持続時間を低下させることを可能にする。それ以外には、膜の機械抵抗を、溶液の処理パラメータの調節を通じて、又は、透明なシリカの基材にTiOの微結晶を埋め込むことによって、自由選択で、その後に続けて、低い温度での熱処理又は任意の他の既知の低い温度の硬化の処理によって、改善することができる。これらの結果は、自己洗浄性の重合体又は熱に敏感な対象の使用を伴う新しい用途に対して門戸を開く。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による鋭錐石の酸化チタンを含有する溶液を生産する工程の異なるステップを説明する線図を示す。
【図2】単層の数対本発明によって堆積させられた多層膜の厚さの線図を示す。
【図3】膜の厚さ対リンゴ酸の光触媒性の分解速度を図説する。
【図4】本発明による溶液を生産する工程によって得られる溶液から堆積させられた膜のFTIRスペクトルを示す。
【図5】a、b、cは、本発明による溶液を生産する工程によって得られた三つの溶液から堆積させられた様々な厚さの多層膜についてのUV/可視の透過スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な光触媒の被覆物を得るために、基体に堆積させられることを目的とした鋭錐石の酸化チタンを含有する安定な溶液を生産する工程であって、
当該工程は、
チタンの前駆体の材料、有機溶剤、及び酸性の試剤を含む初期の安定化した解膠させた溶液を調製するステップ、並びに
得られる中間の溶液のチタンに対する水のモル比が0.8よりも大きいような様式で水と該初期の溶液を混合するステップ、
を含み、
該初期の溶液における酸性の試剤の量は、該中間の溶液のpHが3未満であるようなものであり、
当該工程は、
80℃と270℃との間の温度で該中間の溶液を熱処理するステップ、
該熱処理された中間の溶液を分散させるステップ、
最終的な溶液を得るために低い表面張力を備えた有機溶剤によって水を交換するステップ、及び
該最終的な溶液を分散させるステップ
を含む工程。
【請求項2】
前記初期の解膠させた溶液は、前記初期の溶液における1よりも小さいチタン対水のモル比を得るために、水の存在によって、特に安定化される請求項1に記載の工程。
【請求項3】
前記初期の解膠させた溶液は、室温での前記初期の溶液の熟成によって、特に安定化される請求項1又は2に記載の工程。
【請求項4】
前記初期の溶液における酸性の試剤の量は、前記中間の溶液のpHが、1と2との間にあるようなものである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の工程。
【請求項5】
熱処理のステップは、還流によって又はオートクレーブ処理によって、実行される請求項1乃至4のいずれか一項に記載の工程。
【請求項6】
熱処理のステップは、140℃よりも低い温度で実行される請求項1乃至5のいずれか一項に記載の工程。
【請求項7】
前記得られる中間の溶液のチタンに対する水のモル比は、30よりも大きい請求項1乃至6のいずれか一項に記載の工程。
【請求項8】
前記分散のステップの少なくとも一つは、前記溶液の超音波処理によって、実行される請求項1乃至7のいずれか一項に記載の工程。
【請求項9】
再濃縮のステップは、より濃縮された最終的な溶液を得るために、前記交換のステップの後で実行されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の工程。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の工程によって得られる溶液。
【請求項11】
光触媒の透明な層で基体を被覆する工程であって、
請求項10に記載の溶液を調製するステップ、及び
前記最終的な溶液で室温において該基体を被覆するステップ
を含む工程。
【請求項12】
前記被覆のステップより前にSiOのゾル−ゲルの溶液で前記調製される溶液を混合する混合のステップが、実行される請求項11に記載の基体を被覆する工程。
【請求項13】
前記被覆のステップは、光触媒の材料のより厚い層及びより大きい光触媒の活性を得るために、繰り返される請求項11又は12に記載の基体を被覆する工程。
【請求項14】
当該基体は、請求項11乃至13のいずれか一項に記載の工程に従って得られることを特徴とする光触媒の透明な層が提供された基体。
【請求項15】
当該基体は、熱に敏感な材料のものである請求項14に記載の基体。
【請求項16】
当該基体は、重合体の材料のものである請求項14又は15に記載の基体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−500211(P2006−500211A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539339(P2004−539339)
【出願日】平成15年9月15日(2003.9.15)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004141
【国際公開番号】WO2004/028973
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】