説明

光触媒フィルタユニット

【課題】ヘキサメチルジシラザン及びトリメチルシラノール主体の汚染ガスを蓄積しても再放出せず、光触媒フィルタ上の堆積分解生成物を容易に除去出来、光源の寿命も長く、アルカリ系ガスにも強く、塩の付着を防護できる光触媒フィルタユニットを提供する。
【解決手段】両端に開口部2、2aを設けてなる機体3内に、光触媒フィルタ4、4aを少なくとも両開口部2、2aに面して設けると共に、両光触媒フィルタ4、4aの間に冷陰極蛍光ランプ5を設けてなり、この冷陰極蛍光ランプ5は、自身から照射する光触媒作用誘起光が透過自在のフッ素樹脂製チューブ6にて覆われていることで、光触媒フィルタ4、4aにて、ヘキサメチルジシラザン及びトリメチルシラノール主体の汚染ガスを分解し、その分解生成物の光触媒フィルタ4、4aへの付着を防ぎ、且つ容易に除去出来るので、上記課題を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームなどに設置して、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)や分解生成物であるトリメチルシラノール(TMS)を中心とした汚染物質を除去する光触媒フィルタユニットに関し、詳しくは、両端に開口部がある機体内に、光触媒フィルタを両開口部に面して設けると共に、これらの間に、光触媒反応誘起光が透過自在のフッ素樹脂製チューブで覆われている冷陰極蛍光ランプを設けてなる、光触媒フィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶、有機ELなどの製造工程は、汚染を極度に嫌うことから、クリーンルーム内で行われることが多い。このクリーンルームでは、種々の要因により侵入あるいは発生する汚染物質を、適切且つ高度に除去する必要がある。汚染物質は大別して微粒子とガスとがあり、汚染微粒子に対してはHEPAフィルタやULPAフィルタなどにより除去し、汚染ガスに対しては吸着フィルタなどにより除去している。この汚染ガス除去の吸着フィルタは、当然に吸着された汚染ガスが分解されないので蓄積して再放出することがあり、また、吸着フィルタは、その材料構成から自らが汚染源となるガスを放出する虞があり、さらに、その吸着量には限界があるから、所定の除去性能を維持するためには定期的な交換作業が発生し、且つ、交換した吸着フィルタの再生が困難であるため、そのまま廃棄することになって、ランニングコストが高くなる傾向にある。
【0003】
したがって、上述のような吸着フィルタの不都合さを解消するものとして、以下のようなものが知られている。
【特許文献1】 特開2000−300936号公報
【特許文献2】 特開2003−053194号公報
【特許文献3】 特開2006−255529号公報
【0004】
特許文献1は、汚染ガスの除去のために光触媒フィルタを使用し、その光触媒作用により汚染ガスを分解するものであり、吸着フィルタのように汚染ガスが蓄積して再放出する虞が無いものである。
【0005】
特許文献2は、光触媒フィルタがセラミック製あるいは金属製の基材上に酸化チタンなどの光触媒の膜を形成し、水洗可能なものとしたものである。すなわち、光触媒フィルタが有する光触媒作用により汚染ガスを分解した結果、光触媒フィルタ上に分解生成物、例えば、硫酸塩や硝酸塩などが堆積して、この分解生成物が光触媒作用を阻害する。したがって、その分解生成物を水洗などにより容易に除去出来るようにして、光触媒フィルタの性能を維持すると共に再生可能としたものである。
【0006】
特許文献3は、セラミック基材層及びこのセラミック基材層の表面に形成した光触媒層からなる光触媒フィルタと、該光触媒フィルタに隣接して配置し光触媒作用を誘起する光を照射出来る光源と、を備え、セラミック基材層はSiOを主成分とし且つAlを約21重量%含んで構成され、光触媒層はTiOを主成分とし且つSiOを含むと共に、光触媒層中におけるTiOに対するSiOの重量比率が約8:2とし、光触媒層の表面が弱酸性に調整してなるものである。これにより、光触媒層のSiO量が多くさらに弱酸性であるため、汚染ガスたるアンモニアガスなどの塩基性ガスの吸着、除去を選択的に高め、加えて光触媒フィルタ上に堆積した分解生成物は水洗いにより容易に除去できて、光触媒フィルタの性能を維持すると共に再生可能となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、光触媒フィルタの光触媒作用により汚染ガスを分解するので、汚染ガスが蓄積して再放出する虞が無いものの、汚染ガスの分解により生じた分解生成物が光触媒フィルタ上に堆積して、この分解生成物が光触媒作用を阻害し、性能の低下を招き光触媒フィルタの交換を余儀なくされ、しかも再生が著しく困難であるため、吸着フィルタの場合のようにランニングコストが高くなってしまう。
【0008】
特許文献2は、光触媒フィルタの光触媒作用により汚染ガスを分解するので、汚染ガスが蓄積して再放出する虞が無く、分解生成物が光触媒フィルタ上に堆積しても水洗いにより容易に除去出来る。しかし、半導体製造の前工程におけるリソグラフィ工程でウエーハ表面を疎水性にして、フォトレジスト(感光性樹脂)との密着性を高めるため、HMDS(ヘキサメチルジシラザンの略称)処理が行われるが、このHMDSは空気中の水分と反応しHMDSOに加水分解して、その際アンモニア(NH)を遊離生成し、さらに加水分解してTMS(トリメチルシラノール)を生成して、これらの物質はリソグラフィ工程で重大な阻害要因となる。しかし、この文献では、このHMDS処理に伴うHMDS、NH、TMSの光触媒作用による分解除去性能は、明らかでなく製品の歩留まり低下に陥りやすい。
【0009】
また、特許文献3は、光触媒フィルタにより汚染ガスを分解するから、汚染ガスが蓄積して再放出する虞が無く、分解生成物が光触媒フィルタ上に堆積しても水洗いにより容易に除去出来、NHの分解除去性能も良いものである。しかしながら、光源である熱陰極蛍光ランプは、寿命が比較的短く、ランプのガラスは、NHの存在に対し化学的に弱く、しかも空気中のSO2−やClと反応して生じた硫酸アンモニウムや塩化アンモニウムがガラス表面に付着すると、その分、光触媒作用誘起光の照射が弱くなり、熱陰極蛍光ランプの交換時にこれら付着アンモニウム塩が飛散し、汚染源となる虞がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、汚染ガスが蓄積して再放出する虞が無く、分解生成物が光触媒フィルタ上に堆積しても容易に除去出来、しかもリソグラフィ工程でのHMDS処理に伴うHMDS、NH、TMSの分解除去性能も良く、その上、光源の寿命が長く、アルカリ系ガスにも強く、発生した塩類の付着を防護することができる光触媒フィルタユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、請求項1記載の発明は、両端に開口部を設けてなる機体内に、光触媒フィルタを少なくとも前記両開口部に面して設けると共に、前記両光触媒フィルタの間に冷陰極蛍光ランプを設けてなる光触媒フィルタユニットであって、前記冷陰極蛍光ランプは、自身から照射する光触媒作用誘起光が透過自在のフッ素樹脂製チューブにて覆われてなり、空気中に含有するヘキサメチルジシラザン(HMDS)及びトリメチルシラノール(TMS)を主体的に除去することを特徴とする光触媒フィルタユニットである。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記冷陰極蛍光ランプと前記光触媒フィルタとの間に、1以上の光触媒フィルタと、該光触媒フィルタと同数の前記冷陰極蛍光ランプと、を交互に設置してなる光触媒フィルタユニットである。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記光触媒フィルタは、セラミック製の三次元網目構造多孔質体の表面に、表層形成用セラミックにより凸凹面を形成し、該凸凹面に光触媒を担持させてなる光触媒フィルタユニットである。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記光触媒フィルタの前記光触媒は、酸化チタンである請求項1、2または3記載の光触媒フィルタユニット。
【発明の効果】
【0015】
以上詳述したように、本発明によれば、以下のような効果がある。
請求項1記載の発明は、機体のいずれかの一方の開口部から機体内にヘキサメチルジシラザン(HMDS)及びトリメチルシラノール(TMS)を主体とする汚染ガスを含んでいる空気を流すと、一方の光触媒フィルタを通り、冷陰極蛍光ランプ近辺を通過して、さらに、他方の光触媒フィルタを通って、いずれかの他方の開口部から機体外に出る。その際、冷陰極蛍光ランプからの光触媒作用誘起光が照射されている双方の光触媒フィルタにより、直ちにHMDS及びTMSを主体的に分解除去し、且つHMDS及びTMSを主体とする汚染ガスの分解により、新たに生じた塩類などの分解生成物はフッ素樹脂製チューブによりガードされて、冷陰極蛍光ランプの表面に付着しない。したがって、HMDS及びTMSを主体とする汚染ガスが蓄積して再放出する虞が無く、その上、光源に冷陰極蛍光ランプを使用することで寿命が長く、しかもアルカリ系ガスに強く、発生した分解生成物の付着を防護することができる効果がある。
【0016】
請求項2記載の発明は、交互に設置した1以上の光触媒フィルタと冷陰極蛍光ランプとを、HMDS及びTMSを主体とする汚染ガス含有の空気が通過するから、その分、さらにHMDS及びTMSを主体とする汚染ガスを分解する。したがって、上記効果をなお一層高めることができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、セラミック製の三次元網目構造多孔質体の表面に、表層形成用セラミックにより凸凹面を形成し、その凸凹面に光触媒を担持させてあるから、表面積が飛躍的に広くなり、且つ凸凹面のアンカー効果により、光触媒が脱落しづらい。したがって、上記効果に加えて、光触媒フィルタの性能を向上させ且つ維持できると共に、再生可能となる効果がある。
【0018】
請求項4記載の発明は、光触媒が酸化チタンであると、高触媒効果を得て、HMDS及びTMSを主体とする汚染ガスを分解する。したがって、上記効果に加えて、リソグラフィ工程でのHMDS処理に伴うHMDS、NH、TMSの分解除去性能が良くなる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の実施の形態を示す光触媒フィルタユニットの平面図、図2は図1の光触媒フィルタユニットの一部破断した断面図、図3は図1の光触媒フィルタユニットの一部破断した断面図、図4は図1の光触媒フィルタユニットの光触媒フィルタの説明図、図5は空気清浄装置に本発明の光触媒フィルタユニットを組み込んだ状態の断面図である。図面において、光触媒フィルタユニット1は、両端に開口部2、2aを設けてなる機体3内に、光触媒フィルタ4、4aを少なくとも両開口部2、2aに面して設けると共に、両光触媒フィルタ4、4aの間に冷陰極蛍光ランプ5を設けてなり、この冷陰極蛍光ランプ5は、自身から照射する光触媒作用誘起光が透過自在のフッ素樹脂製チューブ6にて覆われてなって、空気中に含有するヘキサメチルジシラザン(HMDS)及びトリメチルシラノール(TMS)を主体的に除去するものである。
【0021】
なお、この光触媒フィルタユニット1では、冷陰極蛍光ランプ5と光触媒フィルタ4aとの間にさらに光触媒フィルタ4bと冷陰極蛍光ランプ5aとを設けて介在させ、開口部2から開口部2aまでの間に、光触媒フィルタ4、冷陰極蛍光ランプ5、光触媒フィルタ4b、冷陰極蛍光ランプ5a、光触媒フィルタ4aを介在させている。なお、光触媒フィルタ4、4a、4bは、仕切板9にて仕切られ設置されている。
【0021】
前記機体3は、直方体をなし、その両端に開口部2、2aがあり、それ以外は運転操作時は閉じている。機体3側部には冷陰極蛍光ランプ5に電気を供給する電源箱7が内蔵され、さらにメンテナンス上の必要性から側板8などが開放且つ閉鎖出来、光触媒フィルタ4、4a、4b及び冷陰極蛍光ランプ5、5aの取り外し、取り付けが容易に出来るような構造になっている。
【0022】
前記光触媒フィルタ4、4a、4bは、図4に示すように、セラミック製の三次元網目構造多孔質体10の骨格11の表面に、表層形成用セラミック粒子12を焼結して凸凹面13を形成し、この凸凹面13に光触媒を担持させたものである。この三次元網目構造多孔質体10の骨格11は、その径が100μmから1000μmの範囲であり、表層形成用セラミック粒子12は、その粒径が1μmから50μmの範囲であるから、三次元網目構造多孔質体10の骨格11上に、良好な凹凸面13が形成されて、充分な表面積を有することになり、冷陰極蛍光ランプ5による光触媒作用誘起光が、光触媒フィルタ4、4a、4b内部まで達して、高効率の光触媒作用を実現できる。
【0023】
前記光触媒は、アナターゼ型の酸化チタン(TiO)の微粉末であり、これを主成分としつつも、バインダーとしてSiOを約20%含有している。そして、この酸化チタンは、三次元網目構造多孔質体10の骨格11上の良好な凹凸面13に焼き付けられる。したがって、焼き付けられた酸化チタンは、凸凹面13のアンカー効果により脱落しづらい。このため、光触媒フィルタ4、4a、4bは、光触媒たる酸化チタンの脱落による性能低下と発塵とを防ぐことが出来て、その性能が向上し且つ維持できると共に、再生可能となる。なお、光触媒には酸化チタン以外にSiOも約20%含有しているため、光触媒の表面が弱酸性となり、アンモニアガスなどの塩基性ガスの吸着、分解を促進させることが出来る。
【0024】
前記冷陰極蛍光ランプ5、5aは、耐久性の観点(最大で3万時間)から優れているものの、使用によって、その表面のガラスに汚染ガス、特にアンモニアガスなどの存在下では、アンモニウム塩が付着して、自身から照射する光触媒作用誘起光、すなわち、紫外線の透過性が低下し、さらに、交換の際、アンモニウム塩などの付着物質が飛散し、汚染源になる可能性がある。このため、冷陰極蛍光ランプ5、5aは、フッ素樹脂製チューブ6にて覆われている。
【0025】
このフッ素樹脂製チューブ6は、ガス低透過性、換言すればガス低付着性であり、充分な高耐蝕性を有し、その上、冷陰極蛍光ランプ5、5aから照射される紫外線の透過性の高いものである。したがって、このフッ素樹脂製チューブ6により覆われた冷陰極蛍光ランプ5、5aは、空気中の汚染ガスにより直接侵されたり、汚染ガス及びそれに由来する汚染物質が付着したりせず、紫外線を安定して前記光触媒フィルタ4、4a、4bに供給でき、メンテナンスにおける冷陰極蛍光ランプ5、5aの交換時に、汚染ガス及びそれに由来する汚染物質を飛散させて、汚染源となることがほとんど無くなる。
【0026】
なお、フッ素樹脂製チューブ6の具体的な材質を例示すれば、以下のとおりである。すなわち、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、E/TFE(エチレン,テトラフルオロエチレン共重合体)、FEP(パーフルオロ(エチレン,ポロピレン),テトラフルオロエチレン,ヘキサフルオロエチレン共重合体)などである。入手面、コスト面からはPFA、PTFEなどが適している。
【0027】
上記した光触媒フィルタユニット1は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)及びトリメチルシラノール(TMS)を主体とする汚染ガスを含有している空気が流通している場所に、単独で使用しても良く、あるいは図4に示すような空気清浄装置20に組み込んで使用しても良い。この空気清浄装置20は、空気入口21及び空気出口22を備えた装置本体23内に、空気入口21から空気出口22に向かって順次、ファン24、プレフィルター25、光触媒フィルタユニット1及び後フィルタ26を設けてなる。そして、この空気清浄装置20は、半導体製造などのクリーンルームに設置される。
【0028】
次に、上記構成になる光触媒フィルタユニット1の作用について、前記空気清浄装置20に組み込んだ状態で説明する。
まず、空気清浄装置20に電源スイッチをオンし、冷陰極蛍光ランプ5、5aを点灯させた後、ファン24を駆動させると、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)及びトリメチルシラノール(TMS)を主体とする汚染ガスを含有する空気は、空気入口21から装置本体23内に導入され、プレフィルター25により汚染ガスを含有する空気中の比較的粒径の粗粒子や塵などが除去されて、次の光触媒フィルタユニット1内に侵入しないようにしている。そして、開口部2から光触媒フィルタユニット1内に入った空気は、順次光触媒フィルタ4、冷陰極蛍光ランプ5、光触媒フィルタ4b、冷陰極蛍光ランプ5a、光触媒フィルタ4bを通り、開口部2aから光触媒フィルタユニット1外に出る。
【0029】
汚染ガスを含有する空気が光触媒フィルタユニット1内を通過する過程で、冷陰極蛍光ランプ5、5aからの紫外線照射を受けて、光触媒フィルタ4、4a、4b上に発生している強い酸化分解作用を持つ活性酸素やOHラジカルにより、空気中のHMDS及びTMSを主体とする汚染ガスが分解され、除去されるのである。すなわち、光触媒フィルタ4にて分解除去できなかったHMDS及びTMSを主体とする汚染ガスは、次の光触媒フィルタ4aに分解除去され、それでも分解除去されなかったHMDS及びTMSを主体とする汚染ガスは、さらに光触媒フィルタ4bにて分解除去される。
【0030】
光触媒フィルタユニット1にて、HMDS及びTMSを主体とする汚染ガスをあらかた分解除去された空気は、後フィルタ26を通り空気出口22から空気清浄装置10外に出る。この後フィルタ26は、プレフィルター25よりも微細な粒子、例えば0.1μm程度の微細粒子を除去出来るものであり、光触媒フィルタユニット1を含めた上記空気清浄装置20に由来する塵を最終的に除去し、空気清浄装置20の設置場所であるクリーンルーム内にそれら塵を出さないようにしている。
【0031】
次に、本発明の光触媒フィルタユニット1の効果を以下の通り実証した。
〈試験例1〉
本発明の光触媒フィルタユニットに、濃度約50μg/mに調整したHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を風速0.5m/秒で流通させ、光触媒フィルタユニットの上流側及び下流側でそれぞれサンプリングを行い、これら上流側及び下流側でサンプリングしたガス中のHMDSを測定し、HMDSの除去性能を算定した。
実験装置は図5に示す通りである。
1.HMDSの測定
パーミエーターを使用しHMDSを発生させ、図6の実験装置の給気ファン手前で前処理された清浄空気と混合して光触媒フィルタユニットの上流側の濃度を約50μg/mに調整した。光触媒フィルタユニットに電源を入れて2時間後に、上流側及び下流側に接続している吸着管(活性炭充填)から吸引速度1L/分で通気し測定目的のガスを捕集した。吸着管で捕集したガスを有機溶剤で抽出し、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)で測定した。この測定では、TMS(トリメチルシラノール)、M2(ヘキサメチルジシロキサン)の標準物質の検量線を作成し、この検量線により抽出液中のTMS、M2濃度を求め、これにTMS、M2の抽出に用いた溶媒量を乗じ、TMS、M2質量を求め採気量で除することにより濃度を算出した。さらに、これらの濃度からHMDS濃度に換算した。
2.アンモニアの測定
光触媒フィルタユニットに電源を入れて2時間後に、上流側及び下流側に接続している2段連結インピンジャー(吸収液充填)から吸引速度2L/分で通気し測定目的のガスを捕集した。2段連結インピンジャーで捕集した後の吸収液を測定供試液とし、イオンクロマトグラフ(IC)で測定した。吸収液中の目的成分濃度に前処理液量を乗じ、、吸収液に捕集された目的成分質量を求め、これを採気量で除することにより、気中濃度を算出した。さらに、これらの濃度からHMDS濃度に換算した。
【0032】
〈試験例2〉
本発明の光触媒フィルタユニットに、濃度約50μg/mに調整したHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を風速0.35m/秒で流通させたこと以外、試験例1と同じ方法にてHMDSを測定した。
【0033】
〈対照例1〉
試験例1における本発明の光触媒フィルタユニットの代わりに、従来の光触媒フィルタユニットとしたこと以外、試験例1と同じ方法にてHMDS及びアンモニアを測定した。この従来品のセラミック製の三次元網目構造多孔質体は、炭化珪素(SiC)を主成分とし、光触媒は、酸化チタン(TiO)を主成分とし、TiOに対するSiOの重量比率α(SiO/TiO)を0.11として、光触媒の表面を中性に調整したものである。
【0034】
〈対照例2〉
対照例1の光触媒フィルタユニットに、濃度約50μg/mに調整したHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を風速0.35m/秒で流通させたこと以外、試験例1と同じ方法にてHMDSを測定した。
以上の結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1の結果によれば、試験例1及び2は、対照例1及び2に比較して、明らかにHMDS及びアンモニア共に除去効率が高く、本発明の優位性が証明された。
【0037】
以上、本発明の実施例1を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更・追加、各請求項における他の組み合わせにかかるものも、適宜可能であることが理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の光触媒フィルタユニットは、一旦捕捉した汚染ガスの再放出する虞が無く、汚染ガスを分解した後の分解生成物が光触媒フィルタ上に堆積しても容易に除去したいような場合に利用可能性が高く、特にリソグラフィ工程でのHMDS処理に伴うHMDS、NH、TMSの分解除去性能を向上させたく、しかも光源の寿命が長くアルカリ系ガスに強く、発生した塩類の付着を防護してメンテナンス性を高めたいような場合に、利用可能性が極めて高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】 本発明の実施の形態を示す光触媒フィルタユニットの平面図である(実施例1)。
【図2】 図1の光触媒フィルタユニットの一部破断した断面図である(実施例1)。
【図3】 図1の光触媒フィルタユニットの一部破断した断面図である(実施例1)。
【図4】 図1の光触媒フィルタユニットの光触媒フィルタの説明図である(実施例1)。
【図5】 空気清浄装置に本発明の光触媒フィルタユニットを組み込んだ状態の断面図である(実施例1)。
【図6】 本発明の光触媒フィルタユニットの効果を実証するための実験装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 光触媒フィルタユニット
2、2a 開口部
3 機体
4、4a、4b 光触媒フィルタ
5、5a 冷陰極蛍光ランプ
6 フッ素樹脂製チューブ
7 電源箱
8 側板
9 仕切板
10 三次元網目構造多孔質体
11 骨格
12 表層形成用セラミック粒子
13 凹凸面
20 空気清浄装置
21 空気入口
22 空気出口
23 装置本体
24 ファン
25 プレフィルタ
26 後フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に開口部を設けてなる機体内に、光触媒フィルタを少なくとも前記両開口部に面して設けると共に、前記両光触媒フィルタの間に冷陰極蛍光ランプを設けてなる光触媒フィルタユニットであって、前記冷陰極蛍光ランプは、自身から照射する光触媒作用誘起光が透過自在のフッ素樹脂製チューブにて覆われてなり、空気中に含有するヘキサメチルジシラザン(HMDS)及びトリメチルシラノール(TMS)を主体的に除去することを特徴とする光触媒フィルタユニット。
【請求項2】
前記冷陰極蛍光ランプと前記光触媒フィルタとの間に、1以上の光触媒フィルタと、該光触媒フィルタと同数の前記冷陰極蛍光ランプと、を交互に設置してなる請求項1記載の光触媒フィルタユニット。
【請求項3】
前記光触媒フィルタは、セラミック製の三次元網目構造多孔質体の表面に、表層形成用セラミックにより凸凹面を形成し、該凸凹面に光触媒を担持させてなる請求項1または2記載の光触媒フィルタユニット。
【請求項4】
前記光触媒フィルタの前記光触媒は、酸化チタンである請求項1、2または3記載の光触媒フィルタユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−208055(P2009−208055A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88449(P2008−88449)
【出願日】平成20年3月1日(2008.3.1)
【出願人】(307017121)株式会社 竹村製作所 (2)
【出願人】(508184631)ニップラテクノデバイス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】