説明

光触媒反応装置

【課題】光触媒反応を利用して空気等の流体の浄化を行なう光触媒反応装置に関し、
被処理物質と光触媒との接触効率を著しく向上させることができ、且つ装置を大型化しても処理効率を低下させることのない光触媒反応装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 処理すべき流体の流路を有する装置ボディ内に、光触媒を具備して形成された光触媒体と、該光触媒体に具備された光触媒を励起する光源とを具備し、且つ下記(A)の条件が満たされるように、前記光触媒体における光触媒が具備された面に前記流体を接触させるべく、前記光触媒体を流体に対して相対的に移動させる手段をさらに具備させたことを特徴とする。
0.00001(W/m)≦G・δ≦1.0(W/m) …(A)
(A)においてGは光照射密度を示し、δは光触媒体の光触媒が具備された表面近辺に生ずる境膜の厚さを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒反応装置、さらに詳しくは、光触媒反応を利用して空気等の流体の浄化を行なう光触媒排気処理装置等の光触媒流体浄化装置、光触媒反応を利用して脱臭を行なう光触媒脱臭装置、その他、光触媒反応を利用して各種の産業環境分野、生活環境分野等に適用される光触媒反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒反応を利用した光触媒技術は近年急速に普及し、光触媒排気処理装置、光触媒脱臭装置、その他、各種の産業環境分野、生活環境分野等に広く適用されている。従来、光触媒排気処理装置や光触媒脱臭装置等では、光触媒と排気中の被処理物質の接触を向上させるため、光触媒を具備する光触媒体の形状を凹凸やハニカム状、布状、多孔質状等の形状にして表面積を大きくし、また表面吸着を促進するために例えば活性炭やゼオライト等の物質吸着剤を光触媒の近くに配置している。たとえば下記特許文献1に係る発明は、空気清浄装置に関するものであるが、光触媒体の形状をハニカム状に形成し、活性炭を吸着させている。
【0003】
しかし、これらは吸着を促進する手段が主で、表面積を大きくしても照射された光は光触媒の表面の一部にしか届かないので、光触媒と空気との接触面積は大きくなっても、光源側表面の一部しか光触媒としては機能しない。すなわち光触媒反応では、上述のように光照射を行いながら触媒反応が行なう必要があるので、照射された光が光触媒の表面に届かなければ、触媒反応が生じないのである。また吸着剤を触媒の近くに配しても、光触媒は光吸着によって酸素や水をその表面に選択的に吸着し、光励起された光触媒表面上の電子を酸素等に供与し、活性酸素やスーパーオキシドを発生し、これら酸化物質によって、間接的に被処理物質を酸化するにすぎず、このような吸着剤が直接効率を上げることには寄与していない。
【0004】
また下記特許文献2に係る発明は、キセノン管を光源とする光触媒脱臭装置に関するものであるが、この特許文献2においても活性炭を吸着剤として用いている程度のものにすぎない。またキセノン管を光源とするので、コストが高くつくという問題点がある。
さらにキセノン管のような集光型の光源にした場合、一定の部分に光が集中し、この部分のみ極端に光密度が上がり、光密度が分散できるブラックライトや他の光源に比べ、量子効率が下がるという問題点がある。
【0005】
さらに下記特許文献3に係る発明はコロナ放電電極を光源とする光触媒反応装置に関するもの、下記特許文献4に係る発明はLEDを光源とする光触媒用光源に関するものであるが、光触媒と被処理物質の接触を向上させるような手段は、特に講じられていない。
【0006】
【特許文献1】特開2000−167353号公報
【特許文献2】特開2001−212216号公報
【特許文献3】特開2002−159829号公報
【特許文献4】特開平11−309202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、従来の光触媒反応装置に比べて被処理物質と光触媒との接触効率を著しく向上させることができ、しかも、装置を大型化しても処理効率を低下させることのない光触媒反応装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、請求項1記載の発明は、処理すべき流体の流路を有する装置ボディ1内に、光触媒を具備して形成された光触媒体3と、該光触媒体3に具備された光触媒を励起する光源2とを具備し、且つ下記(A)の条件が満たされるように、前記光触媒体3における光触媒が具備された面に前記流体を接触させるべく、前記光触媒体3を流体に対して相対的に移動させる手段をさらに具備させたことを特徴とする。
0.00001(W/m)≦G・δ≦1.0(W/m) …(A)
(A)においてGは光照射密度を示し、δは光触媒体の光触媒が具備された表面近辺に生ずる境膜の厚さを示す。
【0009】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の光触媒反応装置において、光照射密度が、G≧50(W/m2)となるように設定されていることを特徴とする。さらに請求項3記載の発明は、処理すべき流体の流路を有する装置ボディ1内に、光触媒を具備して形成された光触媒体3と、該光触媒体3に具備された光触媒を励起する光源2とを具備し、且つ前記光触媒体3における光触媒が具備された面に前記流体を接触させるべく、前記光触媒体3を流体に対して相対的に移動させる手段をさらに具備させ、しかも前記光触媒体3が板状に形成され且つ流体の流通方向と平行に配置されていることを特徴とする。また請求項4記載の発明は、請求項3記載の光触媒反応装置において、流体の流通方向と平行に配置された板状の光触媒体3の表面に凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0010】
さらに請求項5記載の発明は、処理すべき流体の流路を有する装置ボディ1内に、光触媒を具備して形成された光触媒体3と、該光触媒体3に具備された光触媒を励起する光源2とを具備し、且つ前記光触媒体3における光触媒が具備された面に前記流体を接触させるべく、前記光触媒体3を流体に対して相対的に移動させる手段をさらに具備させ、しかも前記光触媒体3には、流体を流通させる通孔8が流体の流通方向と平行に形成され、又は流体の流通方向に対して斜めに形成されていることを特徴とする。さらに請求項6記載の発明は、請求項5記載の光触媒反応装置において、通孔8を有する光触媒体3が、略ダンボール型又は略ハニカム型に形成されていることを特徴とする。また請求項7記載の発明は、請求項5又は6記載の光触媒反応装置において、光触媒体3の全体が略リング状又は略円盤状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
さらに請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の光触媒反応装置において、光触媒体3を流体に対して相対的に移動させる手段が、前記光触媒体3を回転させる手段であることを特徴とする。さらに請求項9記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の光触媒反応装置において、光触媒体3を流体に対して相対的に移動させる手段が、前記光触媒体3を振動させる手段であることを特徴とする。さらに請求項10記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の光触媒反応装置において、光触媒体3における光触媒が具備された面に対して直交する方向から光源2の光が照射されるように、前記光源2と光触媒体3とが配置されていることを特徴とする。
【0012】
さらに請求項11記載の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載の光触媒反応装置において、光源を発光ダイオードとすることを特徴とする。さらに請求項12記載の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載の光触媒反応装置において、光源をコロナ放電電極とすることを特徴とする。さらに請求項13記載の発明は、請求項12記載の光触媒反応装置において、光源をコロナ放電するための静電発生器が光触媒体3に一体的に設けられていることを特徴とする。さらに請求項14記載の発明は、請求項1乃至13のいずれかに記載の光触媒反応装置において、複数の装置ボディ1が流体の流通方向に対して直列に並設され、該直列に並設され後段側の装置ボディ1内における流体の不純物濃度が、前段側の装置ボディ1内における流体の不純物濃度より段階的に低くなるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
さらに請求項15記載の発明は、請求項1乃至14のいずれかに記載の光触媒反応装置において、装置ボディ1内を流通する流体と、光触媒体3における光触媒との接触速度が、変化するように構成されていることを特徴とする。さらに請求項16記載の発明は、請求項1乃至15のいずれかに記載の光触媒反応装置において、光触媒体3における、流体の流通方向と垂直な方向で且つ光源からの光線の照射方向にルーバーが取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
一般に触媒反応は、触媒表面と処理対象物が接触することによって進行し、反応物の吸着、表面反応、生成物の脱離という3つの過程を経て起る。それぞれの工程を単純化したものが素反応であり、他の素反応がそれより十分速い場合、最も遅い素反応がいわゆる律速段階である。実際の触媒反応では、反応物が触媒に近寄る段階が律速段階になることがよくある。反応物を攪拌したり、流動させたりしない場合、触媒に近づくためには拡散による他はない。拡散は、触媒反応に比べると一般に非常に遅い過程であり、触媒反応よりも前の段階が遅い場合が拡散律速である。
【0015】
光触媒反応においても、反応物が光触媒に吸着する段階が本来律速段階であるが、実際には反応物が光触媒に吸着する前であって、光触媒に近寄る段階が律速段階になることがある。このように反応物が光触媒に吸着する前に律速段階になると、反応物が光触媒に吸着するときの光触媒反応の反応速度が遅くなるので、反応物を攪拌したり、流動させたりする必要があるが、光触媒反応では、一般の触媒反応と異なり、光照射を行いながら攪拌や流動を実施する必要がある。
【0016】
実際の装置では、排気ガスが触媒表面を接触しながら流通する。対象ガスの接触速度を一定以上にすれば、光触媒体の表面から離れた空間では乱流となり空気成分は混合される。しかし、光触媒体の表面近くには、接触流速を上げていっても極めて薄い層流域が存在し、この層流部分及び乱流への遷移部分を含め境膜と呼ばれ、ここでは拡散律速が支配し、この部分の物質移動速度が全体の反応速度を支配することになる。
【0017】
ここでは濃度勾配が極めて大きく、物質移動は静止状態での拡散速度に近い状態となる。物質移動は次式(1)で示される。
X=(D/δ)(CX−CS) …(1)
【0018】
(1)式において、qXは物質フラックスと称されているもので、境膜に対して垂直に移動する単位面積当たりの物質移動速度である。またDは物質拡散係数、δは境膜厚さ、CXは境膜の外側の物質濃度、CSは触媒表面であって境膜の内側の物質濃度をそれぞれ示す。
【0019】
(1)式におけるDは物質固有のものであり、対象物質、流体によって定まる。またCXは処理対象の物質濃度であり、CSは触媒表面への到達物質及び光触媒の励起状態によって決まる。CX、CSが与えられた場合、境膜厚さδを薄くすれば物質移動量qXは増えることになる。
【0020】
また光触媒表面で処理される単位表面あたりの物質処理量qSは次式(2)で示される。
S=AΦG=f(CS)・G …(2)
Aは定数、Φは量子効率といわれるものである。ここで量子効率Φは、Φ=f(CS)で表わされ、グラフにおいて右向きに上昇する線を描くような関数である。
【0021】
境膜を通って供給される物質量と光触媒表面で処理される物質量が同じであるから、(1)、(2)式におけるqX=qSとすれば、
X=qS=(D/δ)(CX−CS)=f(CS)・G …(3)
【0022】
今、簡単にするため、f(CS)を、直線を描く関数とみなすと、次式(4)の近似式が得られる。
f(CS)=F・CS …(4)
この(4)式を上記(3)式に代入し、変形すると次式(5)が得られる。
【0023】
【数1】

【0024】
上記(2)、(4)、(5)式から、次式(6)が得られる。
【0025】
【数2】

【0026】
(6)式は、Gが大きい場合、q=(D/δ)・CXとなり、Gを増加してもフラックスは一定値に近づくことを意味し、いわゆる飽和現象が生じる。
一方、Gが小さい場合、q=FCX・Gとなり、フラックスは光照射密度に比例する。
装置としての見掛けの量子効率をΦXとして見てみると(2)式と同じく
【0027】
【数3】

【0028】
ここでBは定数であり、1/B=Gδ/D+1/Fとなる。
元々の定義に戻って整理すると、次式(7)が得られる。
【0029】
【数4】

【0030】
(7)式の意味は、分母の第2項を小さくすれば、装置としての効率が向上し、元々光触媒が持っている性能に近づくことを意味している。この式によって、光照射密度Gを上げてゆけば装置としての効率が低下することや、境膜厚さδを下げると、効率が上がることも説明できる。換言すれば、分母第2項=Gδ/Dが装置としての性能を決めているといえる。この中で、Dは物質によって決まる。たとえば排気処理装置の場合、空気に対する対象物質の物質拡散係数である。装置としては、Gδを設計値として取り上げることができる。
【0031】
たとえば、物質濃度CX、排気量Qと物質名が決まった場合、従来法ではΦXが決まる。
従って、総光入力=処理必要物質量×量子効率=排気量×出口濃度差×量子効率となる。
効率を維持したまま排気量を大きくした場合、光照射密度Gを維持すれば、排気量に比例した光触媒の面積が必要になり、光触媒の面積は莫大なものになる。しかし、効率を維持したままG値を大きくできれば装置は小さくなる。たとえば、効率を維持したまま光照射密度Gを5倍にすることができれば、装置面積は1/5にできる。そのためには、(7)式によれば、境膜厚さδを1/5にすればよいことになる。
【0032】
境膜厚さδについては、あらゆる場合についてわかっているわけではないが、乱流の場合に条件を限定すると、たとえば円筒や平板等では次式(8)の対数法則が成立すると言われる。(8)式において、Uは風速、νは動粘度係数である。またLは代表寸法といわれるもので、流体の流路の構造によって定められる。
δ=25L0.125(U/ν)-0.875 …(8)
【0033】
(8)式を、25℃の空気として動粘度係数を計算すると、
δ=0.001534・L0.125・U-0.875 …(9)
となる。つまり、境膜厚さは風速(この場合、触媒と空気の相対速度としてもよい)の0.875乗に反比例することになる。
【0034】
これら(8)、(9)式は一定条件下で成立するものであるが、代表寸法Lを含む数値を定数Cとみなし、さらに0.875という乗数をより一般化してαとすると、
δ=CU-α=C/Uα …(10)
すなわち、境膜厚さと風速との関係を示すより一般的な式(10)が得られることとなる。
【0035】
請求項1記載の発明は、これらのことに着目して、Gδを上記所定範囲内に設定したものである。本発明者等が鋭意研究した結果、排気装置等で触媒と流通する排気流を想定した、装置としての量子効率を低下させない観点からは、Gの最大値を300W/m2に設定し、δの最大値を3.3mm程度に設定した。従って、この設定値から算出されるG・δの最大値は、300W/m2×3.3mm(0.0033m)=1.0W/mとなる。一方、排気装置等で想定できるGの最小値を5W/m2に設定し、δの最小値を0.002mmに設定した。この設定値から算出されるG・δの値は、5W/m2×0.002mm(0.000002m)=0.00001W/mとなる。
また請求項2記載の発明では、比較的大型の装置を想定してG≧50(W/m2)となるように設定し、さらに請求項3以下の発明は、上記請求項1記載の発明をより具体化したものである。
【0036】
光照射密度Gの測定は、光源に対している光触媒体の面に沿って光強度計で測定するが、実際の光照射密度GSは触媒結晶の粒形状や触媒体の凹凸によって低減される。たとえば、ダンボール型のような円形の波状では見掛け平面の1.5倍の面積があり、実質上GS値は、G/1.5となる。ただし光触媒体を波状に形成すると、流体の流通方向と境膜の剥離現象との相関関係があり、たとえば上記のようなダンボール型の円形波状に
光触媒体が形成されている場合であっても、流体の流通方向と平行な通孔を有していると、境膜の剥離に影響を与えることがなく、GS値のみを下げることができる。従って、GSδ積は小さくなり、流体と光触媒との接触効率(装置の処理効率)が上がる。請求項3乃至7記載の発明は、このような観点からなされている。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、上述のように、処理すべき流体の流路を有する装置ボディ内に、光触媒を具備して形成された光触媒体と、該光触媒体に具備された光触媒を励起する光源とを具備し、且つ光触媒体における光触媒が具備された面に流体を接触させるべく、上記のようにGδの値が所定範囲内になるように、光触媒体を流体に対して相対的に移動させる手段をさらに具備させたものであるため、流体中の被処理物質と光触媒体に具備された光触媒との接触回数を多くすることができ、それによって被処理物質と光触媒との接触効率を従来に比べて著しく良好にすることができるという効果がある。
【0038】
また光触媒体を板状に形成し且つその板状の光触媒体を流体の流通方向と平行に配置し、或いは流体を流通させる通孔を流体の流通方向と平行又は流体の流通方向に対して斜めとなるように光触媒体に形成した場合には、そのような光触媒体を光源に極力近距離に配置させることができ、その分、光に影の部分が生じにくく、また光源からの光を強力に照射させることができるという効果がある。また光触媒体が板状である場合には、装置ボディ内により多くの光触媒体を配置することができ、さらに装置を小型化することも可能となる。
【0039】
特に、流体を流通させる通孔を流体の流通方向と平行又は流体の流通方向に対して斜めとなるように光触媒体を略ダンボール型又は略ハニカム型等に形成した場合には、光触媒体と流体との接触面積が非常に大きくなり、被処理物質と光触媒との接触効率が一層向上することとなる。
【0040】
さらに光触媒体を流体に対して相対的に移動させる手段として、光触媒体を回転させる手段や振動させる手段を採用した場合には、これらの簡易な手段によって光触媒と被処理物質の接触回数を増加させることができる。
また、相対的に移動させる手段として回転手段を用いた場合、蛍光灯状等の光源にありがちな照射光のムラや、風速のムラをなくすことができる。光触媒の分解工程では、酸化分解の途中に中間生成物が生じることがある。たとえばトルエンの分解過程で発生する安息香酸等であるが、酸化過程にムラがある場合、光が弱い或いは風速が遅い(境膜が厚い)部分に安息香酸が固着して、次の酸化分解過程へ進まなくなる。上記のような回転手段を採用した場合、光触媒と流体との相対速度が増加するので上記(10)式における風速値が増加することとなり、それによって(10)式における境膜厚さが薄くなり、上記のような中間生成物等の固着により酸化分解過程へ進まなくなるような支障が生ずるのを好適に防止することができる。
【0041】
特に、上記のように、通孔を流体の流通方向と平行又は流体の流通方向に対して斜めとなるように光触媒体を形成した上で、全体を略リング状又は略円盤状に形成し、上記のような光触媒体を回転する手段を採用した場合には、光触媒体と流体との接触面積を大きくする効果と、上記のような回転手段による効果との相乗効果が発揮され、被処理物質と光触媒との接触効率が著しく向上することとなる。
【0042】
さらに、光触媒体における光触媒が具備された面に対して直交する方向から光源の光が照射されるように構成した場合には、光は影の部分が生ずる可能性がより少なくなり、また光の照射もより強力となる。
【0043】
さらに、光源として発光ダイオードを用いた場合には、装置ボディ内により多くの光触媒体を配置することができ、これにより装置を軽量化、小型化することができる。また、光触媒体に電極を付け、光触媒体間にコロナ放電をさせれば、近紫外線が発生し、光触媒を励起できるので、光触媒と被処理物質との接触の効率化、装置の小型化に寄与することとなる。さらに発光ダイオードやコロナ放電を光源に用いた場合、光源の容積は小さくなるのみならず、光密度Gがさらに分散できるため、触媒面積を大きくとることができ、量子効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態について、図面に従って説明する。
【0045】
(実施形態1)
図1は、本発明の光触媒反応装置の一実施形態としての光触媒排気処理装置を示す概略斜視図である。本実施形態の光触媒排気処理装置は、図1に示すように、空気の流路を有する装置ボディ1内に、複数の光源2と、光触媒体3と、モータ4とを具備している。
【0046】
装置ボディ1は、図1においては概略的に且つ一部のみしか図示していないが、空気の流路は図1において上下方向に設けられている。光源2としては、本実施形態では蛍光灯型のブラックライトが用いられており、図1に示すように多数の光源が相互に平行になるように、上段と下段との横方向に配設されている。
【0047】
光触媒体3は、本実施形態では回転円盤状すなわち円形の板状に形成されており、その円形板状の光触媒体3の表裏略全面に光触媒が具備されている。本実施形態では、光触媒として酸化チタンが用いられている。そして、多数の光触媒体3が前記多数配置された光源2と光源2との間に配設されている。このように配設されている結果、各光触媒体3の両側に光源2が存在した状態となる。
【0048】
この場合において、光源2は小さな略棒状のブラックライトであり、光触媒体3は円形の板状のものであるので、光源2と光触媒体3とは装置ボディ1内の多数配設することができ、多数配設しても装置ボディ1が大型化することはない。
【0049】
モータ4は、図1に示すように、前記多数の光触媒体3のうちの一端部側の光触媒体3の略中心部に取り付けられている。そして図1には示されていないが、前記モータ4に同軸的に回転軸が設けられており、その回転軸を中心として同列に配設された多数の光触媒体3が回転駆動するように構成されている。
【0050】
本実施形態の光触媒排気処理装置は上述のような構成からなり、その光触媒排気処理装置を使用する場合には、図1の矢印に示すように、装置ボディ1の上側から下側に向かって空気を流通させる。
【0051】
そして、前記モータ4を駆動して多数の光触媒体3を回転させ、光源2からの光を光触媒体3に照射させる。この場合において、光触媒体3は光源2の両側の近傍に配置されているので、光源2からの光は、その近傍の両側で回転する光触媒体3の表裏全面に照射され、従って光触媒体3の表裏略全面に具備されている光触媒には、光が全体に効果的に照射されることとなる。
【0052】
また光触媒体3は回転しているので、空気との接触回数が非常に多くなり、いわゆる影となる部分が生ずることなしに光源2からの光が効率よく照射されることとなる。また本実施形態の装置においては、装置ボディ1内を流通する空気の風速を、光源2と光触媒体3との接触速度より小さめの範囲とすれば、接触速度は風速に影響されず、光触媒体3の回転速度に支配される。この点については後述の実施例で説明する。
【0053】
(実施形態2)
本実施形態も上記実施形態1と同様に光触媒排気処理装置の実施形態である。本実施形態では、図2に示すように光触媒体3が長方形の板状に形成されている。また光触媒体3を光源2に対して相対的に移動させる手段として、上記実施形態の回転する手段に代えて振動する手段を採用している。
【0054】
すなわち本実施形態では、図1に示すように光触媒体3の上部に振動駆動源としての
超音波振動子5が設けられている。この振動駆動源としては、超音波振動子5に代えて偏芯モータ等を用いることもできる。
【0055】
また本実施形態では、光源2が縦方向に配設されている。光源2の両側に光触媒体3が位置するように光源2と光触媒体3とが多数配置されており、この点で実施形態1と共通する。また光源2の種類も実施形態1と同様である。
【0056】
本実施形態では、図2の矢印に示すように、装置ボディ1の横方向に空気を流通させる。そして振動駆動源である超音波振動子5を駆動し、多数の光触媒体3を振動させ、光源2からの光を光触媒体3に照射させる。光源2からの光が、その近傍の両側で振動する光触媒体3の表裏全面に照射され、光触媒体3の表裏略全面に具備されている光触媒に光が効果的に照射される点は、上記実施形態1の回転手段の場合と同様である。
【0057】
(実施形態3)
本実施形態では、光源2として発光ダイオードを用いており、この点で蛍光灯型のブラックライトを用いていた実施形態1及び2と相違する。発光ダイオードの種類は問わないが、後述の実施例にも説明するように、光触媒である酸化チタンの吸収が現れる波長領域が紫外部であるので、紫外線発光ダイオードを使用するのが望ましい。本実施形態では、図3に示すように、光源2である発光ダイオードを板状面に多数具備させた多数の光源保持体6と、回転円盤状に形成された多数の光触媒体3とが交互に配設されている。
【0058】
光触媒体3を回転させる点は実施形態1と同様であり、回転駆動源としてモータ4を用いた点も実施形態1と同様である。
【0059】
本実施形態では、光源2として上記実施形態の蛍光灯型のブラックライトよりもはるかに小さい発光ダイオードを用いたため、多数設けられる光触媒体3の間隔を狭くすることができ、それによって装置全体を一層小型化することができる。また光源2の配置態様も、光触媒体3の円盤状に合致するようにすれば、上記実施形態1、2の蛍光灯型ブラックライトのように、光触媒体3が存在しないところに照射するようなこともなく、光密度も均一になるという利点がある。この結果、実施形態1、2に比べて光源2の寿命も長くなり、結果としてメンテナンスフリーが可能となる場合もある。
【0060】
(実施形態4)
本実施形態では、光源2として放電電極を用い、上記実施形態1乃至3とは光源2の種類が相違している。より具体的に説明すると、図4に示すように、針状電極からなる光源2が多数具備された光源保持体6と、回転円盤状に形成された多数の光触媒体3とが交互に配設されている。本実施形態では、光源保持体6にも光触媒が具備されている。
【0061】
光触媒体3の駆動源としてモータ4を用いた点は、実施形態3と同様である。
【0062】
本実施形態においては、コロナ放電をさせることによって、針状の放電電極からなる光源2の周囲が発光し、いわゆるコロナ発光が生じることとなる。光触媒体3に光が照射されることで光触媒が励起される点は、上記各実施形態と同様である。放電電極は他の部分と絶縁し、高電圧をかける。コロナ放電を受ける側の光触媒体3は、コロナ放電を発する側の光源保持体6と平行に配設することで安全性を維持することができる。
【0063】
(実施形態5)
本実施形態では、装置ボディ1を2台配設しており、1台の装置ボディ1のみを用いていた上記実施形態1乃至4の場合と相違する。図5(a)のように2台の装置ボディ1を並列的に設けることも可能であり、また図5(b)のように2台の装置ボディ1を直列的に設けることも可能である。
【0064】
装置ボディ1の数は、本実施形態のように2台に限らず、3台以上設けることも可能である。
【0065】
本実施形態では、複数台の装置ボディ1を設けたので、装置ボディ1内の被処理物質の濃度を低下させることができる。特に複数の装置ボディ1を直列的に設けた場合には、前段の装置ボディ1から後段の装置ボディ1にかけて段階的に被処理物質の濃度を低下させることができる。
【0066】
(実施形態6)
本実施形態では、図6乃至図8に示すように光触媒体3が略ダンボール型に形成されている。すなわち、同図に示すように、多数の波形状シート7aと多数の平面状シート7bとが交互に積層されて光触媒体3が構成されている。
【0067】
そして、前記波形状シート7aと平面状シート7bとの間の空間が、空気の流通方向に対して斜めとなるような多数の通孔8として形成されている。このような多数の通孔8を有する光触媒体3は、全体として図9に示すような略リング状に形成されている。
【0068】
このような略リング状の光触媒体3を回転させると、図7に示すように、空気は通孔8の一方の開口部9aから流入し、他方の開口部9bから排出される。このような略ダンボール型の光触媒体3の通孔8を通過する空気の見掛けの風速、すなわち空気と光触媒との相対的な速度は、その光触媒体3の回転速度によって決まる。
【0069】
この場合、光照射密度G(W/m2)は従来のハニカム型のものと変わらない。しかし、
光触媒体3を回転させることによって見掛けの風速U(m/s)は自由に変えられるので、上記(10)式によって示されれる境膜厚さδ=C/Uαは自由に変えられることとなる。通常、乱流の場合は、α=0.75程度とされている。
【0070】
本実施形態の上記のような略ダンボール型の構造で全体が略リング状の光触媒体3を回転させ、その回転速度を調整することで、見掛けの風速U(m/s)は、従来の光触媒体がハニカム型等に構成された装置の5〜20倍以上にとることも可能となり、その結果、上記(10)式から境膜厚さδ(mm)は1/10程度になる。従って、効率を同じとすれば、Gδ積は同じだから、Gは10倍程度高くとることが可能になる。装置を構成する場合、Gを10倍にとれるということは、同じ効率の装置の容積が1/10になることを意味する。
【0071】
尚、通孔8を有する光触媒体3の形状としては、上記のようなダンボール型のものの他、たとえば図10に示すように、断面が略六角形状の通孔8を有するハニカム型のようなものであってもよい。
【0072】
また全体の形状も、上記図9のような略リング状に限らず、略円盤状のものであってもよい。
【0073】
(その他の実施形態)
尚、本発明は、装置本体内を流通させる流体として空気を用いる場合について説明したが、空気以外の気体を用いることも可能である。さらに、後述する本発明における境膜厚さの概念に鑑みると、本発明においては流体として気体を用いることを主眼とするものではあるが、液体に本発明を適用することも可能である。
【0074】
また上記各実施形態では、光源2として、蛍光体型ブラックライト、発光ダイオード、放電電極等の光源を用いたが、光源2の種類はこれらに限定されるものではなく、これ以外の光源を用いることも可能である。
【0075】
さらに光触媒体3の形状も上記各実施形態の板状、円盤状、長方形状、略リング状等に限定されるものでない。また光触媒の種類も該実施形態の酸化チタンに限定されない。
【0076】
さらに、上記各実施形態では、光触媒反応装置を排気処理装置に用いる場合について説明したが、それ以外の脱臭装置、NOX分解装置、排気ガス処理装、液体処理装置等にも適用することが可能である。
【0077】
ところで、本発明においては、境膜厚さδとして速度境膜厚さ(「物質移動の基礎と応用」浅野康一著.丸善発行.P49〜50)を想定しており、流体の物質移動の境膜厚さとして、より一般的な概念として定義される濃度境膜厚さδCは、速度境膜厚さδと次の関係がある。
δC/δ=(Sc)-1/3 …(11)
【0078】
ここで速度境膜厚さとは、壁面からの位置関係を基にした速度分布に基づいた概念で、流体(空気)と壁面との摩擦力による速度が極めて遅い層の厚さを意味する。また上記(11)式において、Scはシュミット(Schmidt)数と称される無次元数で、次式で示される。
【0079】
Sc=ν/D …(12)
ここで、νは動粘性係数、Dは物質拡散係数である。
【0080】
物質拡散速度が空気のエネルギー移動より速い場合、濃度境膜厚さδCは速度境膜厚さδより薄くなるし、逆に物質拡散速度が空気のエネルギー移動より遅い場合、濃度境膜厚さδCは速度境膜厚さδより厚くなる場合もある。濃度境膜厚さδCと速度境膜厚さδとの差が問題になるのは、一般には流体が液体である場合であり、流体が気体の場合には、Sc≒1と考えてよいとされている(「物質移動の基礎と応用」浅野康一著.丸善発行.P49〜50)。
【0081】
さらに流体が空気で被処理物質が有機溶剤の場合は、その有機溶剤の種類によって物質拡散係数Dが異なるので、それに基づいて(Sc)-1/3 も異なるものとなるが、その(Sc)-1/3の範囲はせいぜい0.8〜1.4程度であり、δC≒δと近似しても、影響はほとんどないものと思われる。従って、いずれにしても排気処理装置や空気浄化装置等を主眼とする本発明において、上記(10)式を考慮してG・δの値を考察する上では、δC≒δと考えて問題はないものと思われる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0083】
(実施例1)
本実施例では、上記実施形態1の装置を用いて排気処理を行った。具体的には、直径350mmの円盤状の光触媒体3を24枚準備し、光源2である40Wのブラックライト14本を準備し、これら24枚の光触媒体3と14本の光源2とを、外形1.3m×0.5m×0.4mの大きさの装置ボディ1内に配設した。
【0084】
処理対象物質をトルエンとして、風量3m3/minの空気を装置ボディ1内に流通させた。出入口濃度比は0.2〜0.3であり、後述の図14のグラフから処理効率は70〜80%であることがわかった。
【0085】
(実施例2)
本実施例では、光触媒の処理効率について考察した。図12は、光密度を同一にして光触媒と空気を変化させた場合の効率の変化を示したグラフである。本実施例では、対象物質としてトリメチルベンゼンを用いた。図12にも示すように、風速が上がるにつれて処理効率も上がるが、風速が6m/s付近で処理効率はピークとなり、風速6m/sを超えると処理効率が低下した。従ってトリメチルベンゼンの場合は、風速6m/sが処理効率の最適点となることがわかった。尚、この最適点は、対象物質により変わる。
【0086】
ここで処理効率とは、光の量子効率を意味し、次の式で表される。
量子効率=(処理対象物質の分解量)/(光入力エネルギー)
より具体的には、この式の分母は光量子数であり、分子は物質分子数である。
【0087】
一般的な光触媒を移動させない触媒固定型の装置では、入り口/出口での対象物質濃度比は、効率を流量で除したものに比例し、風速を上げると効率は上がるが、ある所定量以上に風量が増加すれば、処理効率(量子効率)はかえって小さくなる。逆に風速を落とせば処理効率は落ちる。
【0088】
上記実施形態1のような装置を用いると、光触媒体3と光源2との接触速度より、空気の風速を小さい範囲に設定すれば、接触速度は風速に影響されず、光触媒体3の回転速度に支配される。従って好適な回転数を選定すれば、接触速度が最適となり、処理効率は図12における最適点を維持することができる。最適接触速度は処理対象物質、物質濃度により変わる。
【0089】
図12に示す現象は、光密度を一定にした場合、光触媒体3と、処理対象物質を含んだ空気の接触回数を向上すれば、処理効率(量子効率)が上がる、つまり光エネルギーの利用度が上がることを意味している。従って、光触媒体3を回転する手段以外に、上記実施形態2のように光触媒体3を振動することによっても同じ効果が得られるのである。
【0090】
尚、従来のように光触媒を固定的に使った場合でも、小型の室内循環式の空気清浄器であれば、ある程度適した接触速度にすることが可能であるが、産業排気のような場合は、風速に変化があり、上記図12に示す最適点を維持するのは困難である。この点、本発明のように光触媒体3を光源2に対して相対的に移動させる方法であると、接触速度を最適に維持することができ、高効率な光触媒排気処理装置を提供できることは、図12のグラフからも推定することができる。
【0091】
また図12から、たとえば風速が4m/sの場合と6m/sの場合とでは、2倍以上の処理効率が得られることがわかる。
【0092】
(実施例3)
本実施例では、コロナ放電による発光スペクトルについて検討した。図13はその発光スペクトルのチャートである。図13からも明らかなように、コロナ放電による発光スペクトルは、近紫外線領域すなわち300〜400nmの波長領域で複数の吸収ピークが認められ、酸化チタンの発光スペクトルにおける吸収ピークと略合致した。従って、このことから、実施形態4のようなコロナ放電電極を光源とした場合にも、酸化チタンを光触媒に使用することが有効であることが確認できた。
【0093】
(実施例4)
本実施例では、対象物質をトルエンとして、その量子効率を検討した。図14は、そのトルエンの濃度と量子効率との相関関係を示すグラフである。本実施例のグラフを利用して、対象物質がトルエンである場合に、装置ボディ1内のトルエンの濃度に基づいて、量子効率を求めることができる。
【0094】
たとえば図5(a)のように装置ボディ1を並列に配置した装置を用いて産業用排気を浄化する場合、装置ボディ1の入り口濃度が仮に300ppmであったとすると、2台の装置ボディ1が並列に配置されているので、装置内部ではおよそ150ppmの濃度となり、図14のグラフから量子効率は22%となる。
【0095】
また、たとえば図5(b)のように装置ボディ1を2段直列に配置した場合、1段目の装置ボディ1の入口濃度が300ppm、出口濃度が100ppm、2段目の装置ボディ1の入口濃度が100ppm、出口濃度が10ppmとすれば、1段目の装置ボディ1の量子効率(処理効率)は図14から60%となり、2段目の装置ボディ1の処理効率は10%となり、平均して45%と、装置ボディ1を上記のように並列に配置した場合の2倍以上の高い量子効率となる。従って、このことから、装置ボディ1が複数の場合、スペースの制約が許す限り、直列に配置する方が、処理効率が上がることが確認できた。
【0096】
(実施例5)
本実施例では、風速と濃度差との相関関係を検討した。図15はそのグラフであるが、
風速が所定値までは、濃度差は一定であるが、所定値を超えると急速に濃度差はなくなる。従って、風量にかかわらず、所要の濃度差を得るには、複数段の装置ボディを用いることになる。
【0097】
ところで、出入口濃度を考えると、図16のような一般的な処理装置では、一段で処理する場合を考えると、
分解率(処理効率)=(出口と入口の濃度差)/入口濃度
=(1/入口濃度)×(物質分解量/風量)
=(E/入口濃度)×(量子収率/風速)×(光入力/開口面積)…(13)
(13)式において、物質分解量=E×量子収率×光入力
ここでEは、定数で単位を合わせるためのものである。また(13)式の右辺の第2項は、図12のグラフの横軸/縦軸比を示し、右辺の第3項は光照射密度Gを示す。図12からも分かるように、風速を一定とすれば、第2項及び第3項は一定となり、条件を固定した場合、一定以上の値はとれない。
【0098】
これに対して本発明では、風量とは関係なく風速を変化させることができるので、上記(11)式の右辺第2項は、最適点にとることができ、効率のよい光触媒排気処理装置を構成できる。
【0099】
(実施例6)
本実施例では、上記実施形態1の装置を用いて、光照射密度と分解率、風速との相関関係を考察する試験を行なった。風速は13m/sと1m/sとの2種類で行なった。ブラックライトの本数を図1に示す装置よりも増やし、またインバーター調光方式で光密度を調節した。接触速度の調節は、円盤の回転数を変えることによって行なった。従って、触媒面積は一定である。入口濃度は100ppmとし、風量は0.5m3/minとした。出口濃度の測定結果を表1に示す。特にG値の高いところでは、大きな差が出る。
【0100】
【表1】

【0101】
表1及び図11からも明らかなように、風速が一定であれば、光照射密度が高いほど出口濃度が低くなり、分解率が良好であることがわかった。一方、光照射密度が同じであれば、風速が早い方が分解率が良好であることがわかった。このことは、上記(10)式から、境膜厚さが薄い方が分解率が良好であることを意味する。
【0102】
この結果、上記(7)式で考察したように、光照射密度と境膜厚さとの双方を考慮することに着目して分解率(処理効率)を高めるようにすることは、本実施例の試験結果と合致するものであった。また本実施例の試験結果では、いずれも一定以上の分解率が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】一実施形態としての光触媒排気処理装置の概略斜視図。
【図2】他実施形態の光触媒排気処理装置の概略斜視図。
【図3】他実施形態の光触媒排気処理装置の概略平面図。
【図4】他実施形態の光触媒排気処理装置の概略平面図。
【図5】他実施形態の光触媒排気処理装置の概略説明図。
【図6】他実施形態の光触媒体の概略平面図。
【図7】同光触媒体の概略断面図。
【図8】同光触媒体の概略斜視図。
【図9】同光触媒体の全体を示す概略斜視図。
【図10】他実施形態の光触媒体の概略斜視図。
【図11】光照射密度と分解率、風速との相関関係を示すグラフ。
【図12】トリメチルベンゼンの風速と量子効率との相関関係を示すグラフ。
【図13】放電電極の発光スペクトルを示すグラフ。
【図14】トルエンの濃度と量子効率との相関関係を示すグラフ。
【図15】風速と濃度差との相関関係を示すグラフ。
【図16】一般的な光触媒排気処理装置の概略斜視図。
【符号の説明】
【0104】
1…装置ボディ 2…光源
3…光触媒体 8…通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理すべき流体の流路を有する装置ボディ(1)内に、光触媒を具備して形成された光触媒体(3)と、該光触媒体(3)に具備された光触媒を励起する光源(2)とを具備し、且つ下記(A)の条件が満たされるように、前記光触媒体(3)における光触媒が具備された面に前記流体を接触させるべく、前記光触媒体(3)を流体に対して相対的に移動させる手段をさらに具備させたことを特徴とする光触媒反応装置。
0.00001(W/m)≦G・δ≦1.0(W/m) …(A)
(A)においてGは光照射密度を示し、δは光触媒体の光触媒が具備された表面近辺に生ずる境膜の厚さを示す。
【請求項2】
光照射密度が、G≧50(W/m2)となるように設定されている請求項1記載の光触媒反応装置。
【請求項3】
処理すべき流体の流路を有する装置ボディ(1)内に、光触媒を具備して形成された光触媒体(3)と、該光触媒体(3)に具備された光触媒を励起する光源(2)とを具備し、且つ前記光触媒体(3)における光触媒が具備された面に前記流体を接触させるべく、前記光触媒体(3)を流体に対して相対的に移動させる手段をさらに具備させ、しかも前記
光触媒体(3)が板状に形成され且つ流体の流通方向と平行に配置されていることを特徴とする光触媒反応装置。
【請求項4】
流体の流通方向と平行に配置された板状の光触媒体(3)の表面に凹凸が形成されている請求項3記載の光触媒反応装置。
【請求項5】
処理すべき流体の流路を有する装置ボディ(1)内に、光触媒を具備して形成された光触媒体(3)と、該光触媒体(3)に具備された光触媒を励起する光源(2)とを具備し、且つ前記光触媒体(3)における光触媒が具備された面に前記流体を接触させるべく、前記光触媒体(3)を流体に対して相対的に移動させる手段をさらに具備させ、しかも前記
光触媒体(3)には、流体を流通させる通孔(8)が流体の流通方向と平行に形成され、又は流体の流通方向に対して斜めに形成されていることを特徴とする光触媒反応装置。
【請求項6】
通孔(8)を有する光触媒体(3)が、略ダンボール型又は略ハニカム型に形成されている請求項5記載の光触媒反応装置。
【請求項7】
光触媒体(3)の全体が略リング状に形成されている請求項5又は6記載の光触媒反応装置。
【請求項8】
光触媒体(3)を流体に対して相対的に移動させる手段が、前記光触媒体(3)を回転させる手段である請求項1乃至7のいずれかに記載の光触媒反応装置。
【請求項9】
光触媒体(3)を流体に対して相対的に移動させる手段が、前記光触媒体(3)を振動させる手段である請求項1乃至7のいずれかに記載の光触媒反応装置。
【請求項10】
光触媒体(3)における光触媒が具備された面に対して直交する方向から光源(2)の光が照射されるように、前記光源(2)と光触媒体(3)とが配置されている請求項1乃至9のいずれかに記載の光触媒反応装置。
【請求項11】
光源(2)が発光ダイオードである請求項1乃至10のいずれかに記載の光触媒反応装置。
【請求項12】
光源(2)がコロナ放電電極である請求項1乃至10のいずれかに記載の光触媒反応装置。
【請求項13】
光源をコロナ放電するための静電発生器が光触媒体(3)に一体的に設けられている請求項12記載の光触媒反応装置。
【請求項14】
複数の装置ボディ(1)が流体の流通方向に対して直列に並設され、該直列に並設された後段側の装置ボディ(1)内における流体の不純物濃度が、前段側の装置ボディ(1)内における流体の不純物濃度より段階的に低くなるように構成されている請求項1乃至13のいずれかに記載の光触媒反応装置。
【請求項15】
装置ボディ(1)内を流通する流体と、光触媒体(3)における光触媒との接触速度が、
変化するように構成されている請求項1乃至14のいずれかに記載の光触媒反応装置。
【請求項16】
光触媒体(3)における、流体の流通方向と垂直な方向で且つ光源からの光線の照射方向にルーバーが取り付けられている請求項1乃至15のいずれかに記載の光触媒反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−216188(P2007−216188A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42371(P2006−42371)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(502224744)株式会社ソリトン (4)
【Fターム(参考)】