説明

光触媒性フィルター

【課題】光触媒活性はもとより、機械的強度、耐久性、耐熱性、耐腐食性に優れ、所望の寸法・形状に加工が容易な、空気浄化や水質改善などに最適な金属製の光触媒性フィルターを提供する。
【解決手段】金属細線製編成物に光触媒塗膜を複合化させた光触媒性フィルターであって、金属細線製編成物が、丸編み物を圧縮した平板状体を多層構造として、かつ見掛け密度が0.1〜0.6g/cm3であることを特徴とする。このとき、280〜2500nmの波長領域における光線透過率が5%以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浄化や水質改善などに最適な金属製の光触媒性フィルターであって、特に、光触媒を担持し得る表面積と光触媒を励起し得る光線の透過率とを十分に確保できるため光触媒活性が極めて良好にはたらく光触媒性フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光触媒性フィルターとして、i)紙、ii)ポリエステル繊維製不織布、iii)ガラス繊維製織布などに光触媒を担持させたものが利用されてきた。
ところが、これら従来品、例えばi)やii)の場合、可燃性であったり、耐久性の低さから建築部材や水質改善用途として不向きである、iii)の場合、使用後の廃棄が容易でない、などの問題があった。
【0003】
一方、酸化チタン等の触媒フィルターの基材として、セラミックス製多孔質体を使用する技術がある(特開2004−330121公報参照)。
このセラミックス製多孔質体は、例えば、1インチあたりのセル数が10〜15個のウレタンフォームを、予め耐圧容器内で一気に爆発させてセル膜を除去したり、または、アルカリ処理剤等でセル膜を除去した後、このウレタンフォームの骨格をセラミック原料で被覆し、焼結することで形成する方法、ハニカム等の円筒管内に、炭酸ガスを発生する発泡剤を添加したセラミック原料含有スラリーを充填した後、これを発泡、焼成することにより円筒管内に多孔質セラミックスを作製する方法、セラミック原料である金属を含有するゾルに圧力を加え、ノズルから押し出して繊維状とし、これをシート上に堆積させて三次元網目状構造物を作製する方法などから得られている。このように、いずれの方法においても、多孔質セラミックを製造するのがかなり煩雑であることに加えて、得られた多孔質体内部に酸化チタン等の触媒を担持させることが容易ではないとともに、酸化チタンを担持させた場合の光線透過性に劣るために光触媒作用を十分に発揮させることが困難であった。
【0004】
他方、金属に光触媒を担持させた光触媒性フィルターも検討されており、例えば、特開2003−70888公報には、紫外線照射手段(光源)の周囲に、金属線を3次元的に絡み合わせた金属タワシ様構造を設けることで、光が反射、干渉しあいながら進むため照射効率が向上し、表面積を大きくする旨が記載されている。
しかし、該構造では、光源と金属タワシ様構造が密接していない場合、例えば太陽光線を光源として利用する用途などにおいては、光線透過率が低すぎて所望の光触媒活性が得られず、内部の光触媒が無駄になってしまうものであった。さらに、金属タワシ様構造であるために金属線間隔等の調整が難しい物であり、用途が制限される物である。
【0005】
特開2004−16927公報では、金網やラス加工した金属板を積層させた触媒基材構造体に酸化チタンを含浸コーティングさせた排ガス浄化用触媒の製造法が提案されている。
しかし、この構造体では、金網を使用した場合には、セラミックス製多孔質体と同等の表面積は確保できず十分な光触媒活性が得られないものであり、ラス加工した金属板を使用した場合は、内部まで光源を到達させることが難しく、端部のみの光触媒しか活用することができない物であった。
【特許文献1】特開2004−330121公報
【特許文献2】特開2003−70888公報
【特許文献3】特開2004−16927公報
【特許文献4】特開2001−81653公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような現状を考慮し、光触媒活性はもとより、機械的強度、耐久性、耐熱性、耐腐食性に優れ、所望の寸法・形状に加工が容易な、空気浄化や水質改善などに最適な金属製の光触媒性フィルターを提供することを課題とする。
具体的には、光線透過率を十分に確保することでフィルターに担持させた光触媒を有効に活用できるものであり、セラミックス製多孔質体と同等以上の表面積を有する光触媒性フィルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、
前述のウレタンフォームのセルと同等の直径を有する、金属細線を編成物とする技術(特開2001−81653公報など参照)に着目し、
加工性に優れた金属細線製編成物による特定の多層構造に、光触媒塗膜を複合化することで、光触媒を担持する表面積と光触媒を励起する光線の透過率とを十分に確保でき、極めて良好な光触媒活性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の光触媒性フィルターは、金属細線製編成物に光触媒塗膜を複合化させたものである。よって、単なる金網ではなく、撓み性と裁断容易性とをもつ金属細線製編成物を用いることで、所望の寸法・形状に加工が容易な光触媒性フィルターとすることができる。
このような本願発明の金属細線製編成物に光触媒塗膜を複合化させた光触媒性フィルターでは、前記金属細線製編成物が、丸編み物を圧縮した平板状体を多層構造として、かつ見掛け密度が0.1〜0.6g/cm3である。これにより、一定以上の光線透過率を維持しつつ、セラミックス製多孔質体と同等以上の表面積の確保が確実となる。
このとき、280〜2500nmの波長領域における光線透過率が5%以上であることが好ましく、金属細線が、ステンレス鋼、アルミニウム又はその合金のいずれか1種以上からなり、かつその線径が0.1〜0.5mmであることがより好ましい。
また、本発明では、光触媒塗膜が、金属細線製編成物の表面に、可燃性シリカ化合物の空気中での燃焼により形成されたシリカ層上に、複合化されたものであってもよい。
【0009】
本発明の光触媒性フィルターは、金属細線製編成物に光触媒塗膜を複合化させることが重要である。
金属細線としては、空気中及び水中での一般的な条件下において腐食しないものであれば特に限定されず、ステンレス鋼、アルミニウム合金、表面が酸化処理され、アルミナを表面層とする金属アルミニウムである酸化アルミニウムなどが挙げられ、中でも、腐食性の面で、ステンレス鋼が好適である。
金属細線の線径については、光触媒フィルターの使用用途にもよるが、0.1〜0.5mm程度が好ましく、より好ましくは0.12〜0.25mmである。
【0010】
このような金属細線製の編成物は、筒状に編成された丸編み物を圧縮した平板状体を多層構造としたものである。丸編み物を圧縮した平板状体とは、筒状の編み物を一方または、対向する面から、圧縮して1枚の平板状にしたものである。
この平板状体を多層構造とする方法としては、一枚の平板状体をロール状に巻き取り、筒状の多層構造としてもよいし、または、一枚の平板状体のものを一定長さにプリーツ状に折り曲げて積層させた多層構造としてもよい。
あるいは、一枚の平板状体のものを一定の長さに裁断し、複数枚を重ねて多層構造としてもよいし、圧縮前の丸編み物を、筒の径が小さい物を内側、大きい物を外側に積み重ねてから平板状体に圧縮した多層構造としてもよい。このような多層構造とする場合には、丸編み物の編み目が異なるものを組み合わせることもできる。例えば、一定の長さの平板状体を複数枚重ねて多層構造とする場合は、外側になる平板状体に編み目の粗い物を使用し、内面になるほど編み目の細かい物を使用したり、積層体の外側になる部分または筒状の外周となる部分に編み目の粗いものを使用し、内側または内周となる部分に編み目の細かいものを使用する等である。編み目の異なるものを使用することで、外面から内面への光透過性を向上させると共に、フィルターとして必要表面積を確保することが容易となる。
【0011】
筒状の多層構造とした場合には、例えば透明のパイプ状樹脂成形体の内部に挿入し筒状のフィルターとしたり、筒状の多層構造の周囲に固定用の枠体を設けて筒状フィルターとすることができる。平板状の多層構造とした場合には、周囲を固定する枠体を設けることでフィルターとすることができる。
上記のように作成されたフィルターにおいて、多層構造部分の見掛け密度が0.1〜0.6g/cm3であることが重要である。
見掛け密度が、小さすぎると、光触媒を担持する表面積が小さいものとなるうえ、気体、または有機粒子等が、光触媒に接触せずに、一気に通過しやすくフィルター機能が低下するとともに、光触媒活性で分解することが難しくなる。また、見掛け密度が大きすぎると、表面積は増加するが、光線透過率が低下してしまい、十分な光触媒活性が得られないうえ、フィルターとして機能低下となるとともに、重くなり取り扱い性が低下してしまう。
【0012】
金属細線を丸編みする際の編み立て条件としては、3〜10ゲージが好ましく、より好ましくは5〜7ゲージである。本明細書においてゲージとは、メリヤス編みにおけるメリヤスの密度の単位であり、1インチあたりの針数を表す。
ゲージが小さすぎると、所望の見掛け密度が得られにくく、光触媒を担持する表面積が小さいものとなるうえ、光触媒機能及びフィルター機能も低下する。ゲージが大きすぎると、金属細線が通常の繊維と比較して柔軟性に劣るため、加工性や生産性が劣るものとなる。
【0013】
編み立て時の金属細線の本数については特に限定されないが、生産性を考慮すると、例えば、金属細線の径が0.25mm程度では1本で、0.05〜0.2mm程度の極細線では2〜3本の引き揃えで編んでもよい。
編み機については、金属細線の丸編みが支障なく編み立て可能であるならば、特に限定されず、公知の衣料品用編み機や公知の金網編み機におけるメリヤス編み機を用いればよい。中でも、密度調整が容易であったり、高い光線透過率を得ることができるため、シングルニット編み機が好ましい。
【0014】
本発明の金属細線製編成物は、このようにして得られた丸編み物を圧縮した平板状体を多層構造としたものであるが、圧縮の方法や程度としては、必要とされるフィルターとしての機能により、適宜設定される。通常使用されるものとして、圧縮した状態で丸編み物の両面が僅かに接しているような状態であることが、光線透過率や見掛け密度の面で好ましい。
前述したように、本発明の光触媒フィルターの形状は平板状体に限定されず、筒状体であってもよい。このような構成のものでは、筒状体の内部に光源を設置することで効率よく光触媒機能を発揮させられ得る。
【0015】
本発明の光触媒フィルターは、以上のような金属細線製編成物に、光触媒塗膜を複合化させたものだが、複合化は、金属細線の状態で行っても、丸編みした編成物に行っても、圧縮した平板状の状態で行っても、多層構造の状態で行ってもよい。但し、金属細線や丸編み編成物の状態で行うと、その後の編み段階や圧縮段階時に光触媒塗膜が欠落する可能性があり、積層状態であると均一な塗膜形成が難しくなる場合があるので、圧縮した平板状の状態で複合化することが好ましい。
金属細線製編成物に、光触媒塗膜を複合化させる方法については、特に限定されないが、例えばディップ法や、スプレーコーティング法等が挙げられる。ディップ法としては、例えば、光触媒微粒子を、必要に応じて溶媒やバインダー等と共に分散させた光触媒塗料溶液中に、金属細線等を浸漬させた後、遠心法などで脱液、60〜130℃で加熱して、製膜すればよい。
光触媒塗膜の厚みとしては、0.05〜10μm程度が好ましい。0.05未満であると光触媒の担持量が十分ではなく、10μmを超えてしまうと、余剰に光触媒を担持させることとなるとともに、過剰な光触媒塗膜により空隙率を低下させることとなり、フィルターとしての機能低下となるおそれがある。
金属細線製の編成物は、一般的に大量の油分が付着している。有機物が残留している場合、光触媒の機能が十分に発揮できないので、光触媒の複合化の前処理として完全に清浄化することが必要である。清浄方法としては、界面活性剤水溶液、アルカリ水溶液などの薬剤による洗浄、超音波洗浄、酸化洗浄、純水洗浄などが挙げられ、これらを適宜組み合わせて洗浄すればよい。
【0016】
本発明の光触媒性フィルターでは、金属細線製編成物の表面に光触媒塗膜を均一に形成するために、該金属細線製編成物の表面にシリカ層を形成し、この形成されたシリカ層上に光触媒塗膜が複合化されることが好ましい。
このシリカ層を形成する方法は、例えば、可燃性ガス(プロパンガス、都市ガス等)中に、イソプロピルアルコール等の低級アルコールと、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤とを含む溶液を混合し、金属細線の近傍で燃焼させて、金属細線表面にシリカ層を形成するものである。金属細線表面が、軽度の燃焼ガスによる加熱・酸化を受け、燃焼炎により完全に掃印されるので、たとえ金属細線表面にシリコーンゴム、フッ素樹脂などの微量な残留有機物があってもそれらが親水化され、金属細線表面へのシリカ層の均一な形成は容易に達成されえる。
また、アルキルシラン縮合塗膜層も上記のように形成したシリカ層と同様に使用することができる。アルキルシラン縮合塗膜層は、金属細線等をイソプロピルアルコール等の低級アルコールと、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤とを含む溶液を混合した溶液に含浸・乾燥させることで形成することができる。
上記のような方法により形成されるシリカ層(またはアルキルシラン縮合塗膜層)の厚みとしては、10〜30nm程度が好ましい。
【0017】
このように形成されたシリカ層上への、光触媒塗膜の複合化方法は、特に限定されないが、例えば、ディップ法、スプレーコーティング法などが好適に用いられる。ディップ法としては、例えば、光触媒微粒子を分散させた光触媒塗料溶液中に、シリカ層を設けた金属細線等を浸漬させた後、遠心法などで脱液、60〜130℃で加熱して、製膜すればよい。
光触媒塗膜の厚みとしては、0.05〜10μm程度が好ましい。0.05未満であると光触媒の担持量が十分ではなく、10μmを超えてしまうと、余剰に光触媒を担持させることとなるとともに、過剰な光触媒塗膜により空隙率を低下させることとなり、フィルターとしての機能低下となるおそれがある。
【0018】
光触媒としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化セリウム等の金属酸化物、硫化カドミウム、硫化亜鉛等の硫化物、などが挙げられるが、光触媒機能及び耐久性等の面から酸化チタンが好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ型、ブルカイト型等を1種以上用いてもよいし、アパタイト等の機能性物質に担持させた物であってもよい。光触媒のタイプとしては、用途及び光源に応じて、可視光線応答型、紫外線応答型を選択することができる。
臭気成分などの有害物質や微生物等は、光励起された光触媒の表面と接触することにより酸化分解される。
【0019】
本発明の光触媒性フィルターは、光触媒を励起し得る光線の透過性を十分に確保するため、280〜2500nmの波長領域における光線透過率が5%以上であることが好ましく、より好ましくは10%以上である。
なお、本願における光線透過率は、照度計(コニカミノルタ製 “T−10P”)にて、光源と照度計を一定間隔において、光源の照度を測定し、次に光源と照度計の間に、本願の光触媒性フィルターを設置し、照度を測定して、光線透過率をもとめたものである。
【0020】
光触媒性フィルターの厚みについては、一定以上の光線透過率を維持できる範囲内であれば用途等により適宜設定できるが、通常10〜30mm程度である。
耐久性や取り扱い性を考慮し、このようにして得られた光触媒性フィルターの周囲を金属製の型枠で固定したり、両面(最外層)を金網で補強してもよい。また、一定以上の光線透過率を維持できる範囲内で、フィルターの中間部に金属細線製不織布を挿入することもできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光触媒性フィルターは、一定の光線透過率と、セラミックス製多孔質体と同等以上の表面積とを有するので、通常の太陽光線を利用する用途においても(光源と密着させずとも)、光触媒活性に優れている。また、落下時に破損することもなく、機械的強度や耐久性に優れ、所望の寸法・形状に加工も容易であり、空気浄化や水質改善など多方面での用途に使用可能である。
さらに、本発明では、光触媒塗膜のプライマー層としてシリカ層を形成することで、金属細線表面に残留する有機物の除去にも効果的であり、作業効率や環境対策にも好都合である。
【実施例】
【0022】
実施例1〜8
<金属細線の編成および多層構造の形成>
表1に示す材質と線径(mm)を有する金属細線を予めポリエチレングルコールに浸漬したものを使用して、横編み機(島精機製)で表1に示す編み立て条件にて丸編み物を製造した。
次に、製品幅150mmとしたものを長さ250mmずつプリーツ状に繰り返し折り曲げて重ね、厚さ15mmの表1に示す層数の層構造品とした。
得られた金属細線製編成物の総重量(g)と見掛け密度(g/cm3)とを併せて表1に示す。
【0023】
<洗浄>
各金属細線製編成物の周囲をステンレス製コの字型型枠で固定すると共に、該編成物の両面を線径1.5mmステンレス製の開目12mmのクリンプ金網で補強したものを、40℃の洗浄液(大和化学工業(株)製 商品名“ダイソーパーRC150”の1g/L水溶液)にて洗浄した後、水洗し、十分に金属細線表面の挟雑物を除去した。
さらに、メタ珪酸ソーダ3%と3%過酸化水素水とを含む液に、常温で2時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄し、110℃の熱風にて通風乾燥した。
【0024】
<シリカ層(プライマー層)の形成>
プロパンガス中に、アミノプロピルトリエトキシシラン1%、イソプロパノール98.5%、水0.5%を含む溶液を混合したものを、上記のような洗浄工程を経た各編成物の近傍で、火炎放射により燃焼させ、金属細線表面にシリカ層を形成した。
【0025】
<光触媒塗膜の複合化>
シリカ層が形成された各編成物を、豊田通商(株)製 商品名“VcatIIF”4.4%、テトラエトキシシラン2.3%、イソプロピルアルコール93.3%を含む光触媒塗料液に浸漬し、軽く遠心法で脱液した後、130℃で乾燥し、光触媒途膜を複合化させ、光触媒性フィルターを得た。
【0026】
得られた光触媒性フィルターの光触媒性能および光透過性を下記の評価方法で評価した。結果を併せて表1に示す。
(1)光触媒性能:アセトアルデヒドガスを用いて光触媒性能を評価した。以下の評価試験方法に基づき、検知管内のガス濃度(初期濃度、60分後濃度、300分後濃度)を測定した。
(評価試験方法)試料へのプレ照射:1mW/cm2×6hrs
試料寸法:同上加工品
ガスバッグ容量:5L容量のテドラーバッグ
初期ガス濃度:20ppm
光源:蛍光灯(10000ルクス)
(2)光線透過率:照度計(コニカミノルタ製 T−10P)を使用し、光源から5cm離して照度計を設置し、ブランクの状態の照度1を測定し、次に照度計から1cm離して光触媒フィルターを置き、そのときの照度2を測定し、照度1と照度2との比率により光線透過率を求めた。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例9
実施例1において、プリーツ状に折り曲げる代わりに、ロール状に巻き取ることで筒状体の多層構造とし、実施例1と同様の評価方法で評価した。この結果を表2に示す。
【0029】
実施例10
実施例1で使用した可視光線応答型光触媒の代わりに、デグッサ社製 商品名“P25(紫外線応答型光触媒)”を使用して実施例1と同様の評価方法で評価した。この結果を表2に示す。
【0030】
実施例11
実施例1のシリカ層の形成において、アミノプロピルトリエトキシシラン1%、イソプロパノール98.5%、水0.5%を含む溶液に含浸し、軽く遠心法で脱液した後、130℃で乾燥することでシリカ層を形成したものを実施例11とし、実施例1と同様の評価方法で評価した。この結果を表2に示す。
【0031】
実施例12
実施例1のシリカ層の形成を全く行わず、光触媒塗膜を複合化したものを実施例12とし、実施例1と同様の評価方法で評価した。この結果を表2に示す。
【0032】
比較例1
実施例1で製造した金属細線製編成物の代わりに、20メッシュのステンレス製金網をプレーンな状態(圧縮したり折り曲げたりせずに単層構造のまま)で使用して実施例1と同様の評価方法で評価した。この結果を表2に示す。
【0033】
比較例2
実施例1で製造した金属細線製編成物を12枚重ねた多層構造としたものを使用して実施例1と同様の評価方法で評価した。この結果を表2に示す。
【0034】
比較例3
実施例1で製造した金属細線製編成物の代わりに、実施例1で用いた材質と線径(mm)を有する金属細線を3次元に絡み合わせてタワシ様構造としたものを使用して実施例1と同様の評価方法で評価した。この結果を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
実施例1〜12の光触媒性フィルターは、いずれも優れた光触媒性能を示し、しかも光線透過率が5%以上を保持している。実施例12においては、シリカ層を形成せずに光触媒塗膜を形成したために、塗膜が均一に形成されないためか、長期間使用すると光触媒性能が低下してしまった。
一方、金属細線製編成物ではなく、金属製金網の単層構造に光触媒を複合化させた比較例1のフィルターでは、見掛け密度が低いために光線透過率は高いものの、光触媒性能が劣るものとなった。実施例1の平板状体の積層枚数を2倍の12枚とした比較例2のフィルターでは、見掛け密度が高くなると共に、光線透過率が低くなり、光触媒性能が劣るものとなった。また、比較例3の金属細線を絡み合わせたタワシ様構造に光触媒を複合化させたフィルターでは、光線透過率が低いため、十分な光触媒性能とはならなかった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の金属製の光触媒性フィルターは、光触媒活性はもとより、機械的強度、耐久性、耐熱性、耐腐食性に優れているので、空気浄化や水質改善などの用途に好適に使用され得る。
例えば、空気浄化の用途としては、畜産関連脱臭、工場排気ガス浄化、トンネル内排気ガス浄化、居住空間、公共施設の喫煙室、病院手術室、施設園芸空間、水族館、動物園等が挙げられる。水質改善の用途としては、施設園芸の養液循環路、染色工場等の工場廃液、下水の高度処理等が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属細線製編成物に光触媒塗膜を複合化させた光触媒性フィルターであって、
前記金属細線製編成物が、丸編み物を圧縮した平板状体を多層構造として、かつ見掛け密度が0.1〜0.6g/cm3であることを特徴とする光触媒性フィルター。
【請求項2】
280〜2500nmの波長領域における光線透過率が5%以上であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒性フィルター。
【請求項3】
金属細線が、ステンレス鋼、アルミニウム又はその合金のいずれか1種以上からなり、かつ線径が0.1〜0.5mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の光触媒性フィルター。
【請求項4】
光触媒塗膜が、金属細線製編成物の表面に、可燃性シリカ化合物の空気中での燃焼により形成されたシリカ層上に、複合化されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光触媒性フィルター。

【公開番号】特開2010−58004(P2010−58004A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223620(P2008−223620)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【出願人】(708000878)株式会社コーディアルテック (5)
【Fターム(参考)】