説明

光触媒担持無機発泡体の製造方法

【課題】高い性能を有する光触媒担持無機発泡体を生産性良く製造できる方法を提供する。
【解決手段】無機発泡体原石と光触媒粒子とを混合機で撹拌して、無機発泡体原石の表面に光触媒粒子が仮固定されてなる混合物を作製する第1工程と、上記混合物の無機発泡体原石を焼成発泡処理することで、該無機発泡体原石を無機発泡体に変化させかつ該無機発泡体の表面に光触媒粒子を本固定する第2工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機発泡体の表面に光触媒粒子を担持固定してなる光触媒担持無機発泡体の製造方法に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂発泡体、ガラスビーズ、セラミック、無機発泡体等の基体に光触媒を担持してなる光触媒担持基体を水浄化材等として用いることが知られている。
【0003】
特に上記基体が、火山噴出物を焼成発泡処理して得られる無機中空バルーンのような無機多孔質材料(無機発泡体)であれば、その表面が空孔壁であることから、基体表面に光触媒を含浸充填させ易い。このことから、従来、無機発泡体の表面に光触媒が担持された光触媒担持無機発泡体を製造するには、まず、無機発泡体の表面に、光触媒含有懸濁液を塗布又は吹き付けることで付着含浸させる。その後、その懸濁液を付着含浸させた無機発泡体に対して乾燥処理を施すことで、光触媒担持無機発泡体を製造する。
【0004】
一方、例えば特許文献1には、火山ガラス質堆積物を原料とし、被覆酸化チタンの結晶サイズが10nm以下に制御された酸化チタン被覆微細中空ガラス球状体を製造する方法として、チタニウムイオン及びアルミニウムイオンを含有する酸水溶液に、火山ガラス質堆積物粉体を分散させた後、この懸濁液に炭酸水素塩水溶液を添加して、粉体表面に酸化チタン水和物及び酸化アルミニウム水和物を析出させ、次いで粉体を取り出し、洗浄、乾燥後に熱処理を施すようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−224576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、無機発泡体の表面に光触媒含有懸濁液を付着含浸させることで光触媒担持無機発泡体を製造する方法では、上記懸濁液が無機発泡体の表面付着時に塊になり易く、このため、光触媒を無機発泡体の表面全体に亘って均一に担持させることが難しいという問題がある。すなわち、光触媒が無機発泡体の表面全体に均一に担持されていないと、光触媒担持無機発泡体の性能(光触媒担持無機発泡体を水浄化材として用いる場合には、水浄化性能)が劣ってしまう。
【0007】
また、上記特許文献1の方法では、洗浄や乾燥工程が必要である上に、酸とアルカリとの中和反応で生じる塩素化合物や硫酸化合物等の反応副産物を除去又は処理する工程が必要になり、このため、生産性が非常に劣ってしまう。しかも、これらの工程を実行するための大掛かりな設備も必要となる。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高い性能を有する光触媒担持無機発泡体を生産性良く製造できる方法を提供しようとことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、無機発泡体の表面に光触媒粒子を担持固定してなる光触媒担持無機発泡体の製造方法として、無機発泡体原石と光触媒粒子とを混合機で撹拌して、無機発泡体原石の表面に光触媒粒子が仮固定されてなる混合物を作製する第1工程と、上記混合物の無機発泡体原石を焼成発泡処理することで、該無機発泡体原石を無機発泡体に変化させかつ該無機発泡体の表面に光触媒粒子を本固定する第2工程とを含むようにした。
【0010】
上記の方法により、第1工程で、無機発泡体原石と光触媒粒子とが混合機で撹拌(混合)され、これにより、無機発泡体原石の表面に光触媒粒子が軽い力で付着する等して仮固定される。混合機における撹拌速度(撹拌ブレードや混合機ケース等の回転速度)や撹拌時間を適切に設定することで、光触媒粒子を無機発泡体原石の表面全体に亘って略均一に仮固定することができる。こうして無機発泡体原石の表面に光触媒粒子が仮固定されてなる混合物が得られる。
【0011】
そして、第2工程で、混合物の無機発泡体原石が焼成発泡処理されることで、無機発泡体原石が発泡して無機発泡体に変化するとともに、この発泡時の無機発泡体の表面が緩くなることで、無機発泡体と上記仮固定されていた光触媒粒子とが融着に似たような作用で互いに結合されて、無機発泡体の表面に光触媒粒子が強い力で本固定される。このように、光触媒粒子を仮固定した無機発泡体原石を焼成発泡処理するだけで、無機発泡体の表面に光触媒粒子を担持固定してなる光触媒担持無機発泡体が得られる。
【0012】
上記混合機は、例えばヘンシェルミキサーのような汎用性の高いものを使用することができる。また、無機発泡体原石と光触媒粒子とを乾式又はそれに近い状態で撹拌することができるので、このようにすれば、焼成発泡処理前に乾燥処理を行う必要がない。さらに、第1工程での撹拌及び第2工程での焼成発泡処理以外に特別な処理を施す必要もない。
【0013】
したがって、大掛かりな設備を用いなくても、高い性能を有する光触媒担持無機発泡体を生産性良く製造することができ、よって、光触媒担持無機発泡体を安価に大量生産することができるようになる。
【0014】
上記光触媒担持無機発泡体の製造方法において、上記第1工程にて上記混合機で無機発泡体原石と撹拌する光触媒粒子の質量は、該無機発泡体原石の質量に対して0.1%〜20%であることが好ましい。
【0015】
これにより、混合機における撹拌負荷が比較的小さくて、省エネルギーでもって無機発泡体原石と光触媒粒子とを撹拌することができ、しかも、無機発泡体の表面に担持固定される光触媒粒子の量を、光触媒担持無機発泡体が高性能を発揮するのに適切な量とすることができるとともに、無機発泡体原石に仮固定されない余剰の光触媒粒子を少なくすることができる。
【0016】
上記光触媒担持無機発泡体の製造方法において、上記第1工程は、上記混合機に投入された無機発泡体原石に対して水を滴下しながら該無機発泡体原石を該混合機で撹拌した後に、該無機発泡体原石に対して光触媒粒子を散布しながら、無機発泡体原石と光触媒粒子とを該混合機で撹拌することで、上記混合物を作製する工程であることが好ましい。
【0017】
これにより、無機発泡体原石の表面が水に濡れることで、その表面に水を介して光触媒粒子を仮固定させ易くなる。しかも、光触媒粒子が塊になり難く、無機発泡体原石の表面全体により一層均一に仮固定される。したがって、より高性能かつ高品質な光触媒担持無機発泡体が生産性良く得られる。
【0018】
上記光触媒担持無機発泡体の製造方法において、上記第1工程は、上記混合機で無機発泡体原石と光触媒粒子とを撹拌した後に、該混合機に有機結合剤を投入して更に無機発泡体原石と光触媒粒子とを該混合機で撹拌することで、上記混合物を作製する工程であってもよい。
【0019】
このことで、光触媒粒子が有機結合剤で覆われて、この有機結合剤を介して光触媒粒子を無機発泡体原石の表面により確実に仮固定させることができるとともに、より多くの光触媒粒子を無機発泡体原石の表面に仮固定させることができる。有機結合剤は、第2工程における焼成発泡処理で焼失するため、有機結合剤による光触媒担持無機発泡体の性能低下はない。よって、高性能な光触媒担持無機発泡体が生産性良く得られる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の光触媒担持無機発泡体の製造方法によると、無機発泡体原石の表面に光触媒粒子を仮固定した後、その無機発泡体原石を焼成発泡処理することで、該無機発泡体原石を無機発泡体に変化させかつ該無機発泡体の表面に光触媒粒子を本固定するようにしたので、大掛かりな設備を用いなくても、高い性能を有する光触媒担持無機発泡体を生産性良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る光触媒担持無機発泡体の製造方法を詳細に説明する。
【0022】
上記光触媒担持無機発泡体は、無機発泡体の表面全体に光触媒粒子を担持固定してなるものであって、水浄化材等として用いられるものである。
【0023】
上記無機発泡体としては、シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、フライアッシュバルーン等が挙げられる。この無機発泡体は、シラス(白土を含む)、パーライト(真珠岩、黒耀岩、松脂岩)、軽石、ガラス粉砕物、フライアッシュ等のような無機発泡体原石を、焼成炉で焼成発泡処理することで得られるものである。
【0024】
上記光触媒粒子の材料は、特に限定されるものではなく、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム、酸化亜鉛、テルル化カドミウム、セレン化カドミウム、珪素、酸化鉄、硫化モリブデン又はこれらの混合系若しくは複合系である。特にアナターゼ型の光触媒であれば、光触媒の効果、つまり光触媒担持無機発泡体の性能(光触媒担持無機発泡体を水浄化材として用いる場合には、水浄化性能)が高くなって好ましい。また、易分散性を有するものが、後述の光触媒担持無機発泡体製造時において無機発泡体原石と光触媒粒子とを撹拌する際に光触媒粒子が均一に分散し易くなって好ましい。
【0025】
上記光触媒粒子の粒径は、無機発泡体の直径の1/10以下が好ましく、特に1/20程度が好ましい。具体的に光触媒粒子の粒径は、5nm〜200nm程度が好ましい。これは、粒径が小さすぎると、後述の如く光触媒担持無機発泡体を製造する際に、光触媒粒子が凝集し易くなって扱い難くなる一方、粒径が大きすぎると、後述の如く光触媒担持無機発泡体を製造した場合に、光触媒粒子の表面が無機発泡体に覆われてしまい、光触媒の効果が低下することになるからである。
【0026】
上記光触媒担持無機発泡体を製造するには、まず、無機発泡体原石と光触媒粒子とを用意する。無機発泡体原石の大きさは、特に限定されず、直径が10μm〜50μm程度の微細なものから、直径が0.5mm〜5mm程度の比較的大きなものまで使用可能である。無機発泡体原石が無機発泡体に変化したときの大きさと光触媒粒子の上記好ましい粒径とを考慮して適宜選択すればよい。
【0027】
そして、無機発泡体原石と光触媒粒子とを混合機に投入して撹拌(混合)する。これにより、無機発泡体原石の表面に光触媒粒子が軽い力で付着する等して仮固定される。このようにして、無機発泡体原石の表面に光触媒粒子が仮固定されてなる混合物を作製する。
【0028】
ここで、上記混合機は、無機発泡体原石と光触媒粒子とを均一に混合することが可能なものであれば特に限定されないが、ヘンシェルミキサーやボールミル等の簡便なものが好ましい。特にヘンシェルミキサーは、撹拌ブレードが比較的高速で回転するとともに、取り扱い性が良くて汎用性があるため、生産性良く光触媒担持無機発泡体を製造することができて好ましい。
【0029】
上記混合機で無機発泡体原石と共に撹拌する光触媒粒子の質量は、該無機発泡体原石の質量に対して0.1%〜20%であることが好ましい。これは、0.1%よりも少ないと、光触媒の効果が十分に得られない一方、20%よりも多いと、無機発泡体原石に仮固定されない余剰の光触媒粒子が多くなるからである。
【0030】
上記混合機での撹拌は、撹拌速度(ここでは撹拌ブレードの回転速度)を、撹拌ブレードの先端の移動速度に換算して5m/s〜300m/sとして1分〜10分間程度行うことが好ましい。すなわち、撹拌速度が5m/sよりも低速回転であると、混合機の槽内での無機発泡体原石と光触媒粒子との混合が均一にならず、このため光触媒粒子の無機発泡体原石への仮固定が十分になされない一方、300m/sよりも高速回転であると、無機発泡体原石が粉砕される可能性が高いので、撹拌速度を5m/s〜300m/sにすることが好ましい。また、撹拌時間が1分間よりも短いと、上記仮固定が十分になされない一方、10分間よりも長くしても、仮固定される光触媒粒子の量や均一性の向上が見られず、却って生産性が悪化するので、撹拌時間を1分〜10分間程度にすることが好ましい。
【0031】
次いで、上記作製した混合物を焼成炉に入れて、該混合物の無機発泡体原石を焼成発泡処理する。これにより、無機発泡体原石が無機発泡体に変化するとともに、この発泡時の無機発泡体の表面が緩くなることで、無機発泡体と上記仮固定されていた光触媒粒子とが融着に似たような作用で互いに結合されて、無機発泡体の表面に光触媒粒子が強い力で本固定される。こうして無機発泡体の表面に光触媒粒子を強固に担持固定してなる軽量で高強度な光触媒担持無機発泡体が得られる。
【0032】
上記焼成炉は特に限定されず、竪型や水平回転型等を適宜使用可能であるが、竪型焼成炉であれば、特に直径が10μm〜50μm程度の微細な無機発泡体原石を短時間で発泡させることができて好ましい。
【0033】
焼成温度は700℃〜1100℃が好ましい。ここで、無機発泡体原石の発泡倍率が高くなって無機発泡体の表面積が大きくなることで、光触媒担持無機発泡体が高い性能(水浄化性能等)を有することを設計上目指す場合には、高目の温度である900℃〜1100℃が好ましい一方、光触媒粒子がアナターゼ型である場合に、焼成によるルチルへの移転を抑えて高い性能(水浄化性能等)を有することを設計上目指す場合には、低目の温度である700℃〜900℃が好ましい。どちらの特性も生かすようにするには、例えば竪型焼成炉を用いて、800℃〜1000℃で数秒〜数十秒程度、焼成発泡処理するようにすればよい。
【0034】
したがって、本実施形態に係る光触媒担持無機発泡体の製造方法では、混合機及び焼成炉以外の特別な設備を用いる必要がなく、また、無機発泡体原石と光触媒粒子とを乾式で撹拌するので、混合物を焼成炉に入れる前に乾燥処理する必要がない。さらに、焼成炉で無機発泡体原石の発泡と光触媒粒子の無機発泡体への本固定とを同時に行うことができる。したがって、大掛かりな設備を用いなくても、高い性能を有する光触媒担持無機発泡体を生産性良く製造することができ、よって、光触媒担持無機発泡体を安価に大量生産することができるようになる。
【0035】
尚、無機発泡体原石の表面に光触媒粒子が仮固定されてなる混合物を作製する方法として、以下の方法を採用してもよい。
【0036】
すなわち、上記混合機に投入された無機発泡体原石に対して水を滴下しながら該無機発泡体原石を該混合機で撹拌した後に、該無機発泡体原石に対して光触媒粒子を散布しながら、無機発泡体原石と光触媒粒子とを該混合機で撹拌することで、上記混合物を作製する。上記無機発泡体原石に対して滴下する水のトータル質量は、上記混合機に投入された無機発泡体原石の質量に対して0%を超えかつ3%以下であることが好ましい。これは、3%を超えると、混合機の負担が大きくなることに加えて、無機発泡体原石及び光触媒粒子が水に濡れすぎることになるために、乾燥処理(乾燥工程)が必要となって、生産性の低下を招くことになるからである。また、水の滴下は複数回に分けて行うことが好ましい。この場合、1回当たりに滴下する水の質量は、上記トータル質量を、滴下回数で割った値とすることが好ましい。
【0037】
このように無機発泡体原石に対して水を滴下することで、無機発泡体原石の表面に水が付着して該表面が水に濡れた状態になる。これにより、無機発泡体原石の表面に水を介して光触媒粒子が付着し易くなって、無機発泡体原石の表面に光触媒粒子を仮固定させ易くなる。しかも、光触媒粒子が塊になり難く、無機発泡体原石の表面全体により一層均一に仮固定される。したがって、より高性能かつ高品質な光触媒担持無機発泡体が生産性良く製造することができる。
【0038】
或いは、混合機で無機発泡体原石と光触媒粒子とを撹拌した後に、該混合機に有機結合剤を投入して更に無機発泡体原石と光触媒粒子とを該混合機で撹拌することで、上記混合物を作製するようにしてもよい。上記有機結合剤は、例えばアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、澱粉等の既知のものでよい。上記混合機に投入する有機結合剤の質量は、該混合機に投入された無機発泡体原石の質量に対して0.1%〜5%程度が好ましい。
【0039】
このように有機結合剤と共に無機発泡体原石と光触媒粒子とを撹拌することで、光触媒粒子が有機結合剤で覆われて、この有機結合剤を介して光触媒粒子を無機発泡体原石の表面により強く仮固定させることができるようになる。こうして作製した混合物を焼成炉に入れて、該混合物の無機発泡体原石を焼成発泡処理すれば、有機結合剤が焼失して、無機発泡体の表面に光触媒粒子がより強く本固定される。このように有機結合剤が焼失するので、光触媒担持無機発泡体の性能が機結合剤により低下するようなことはない。
【0040】
或いは、無機発泡体原石と光触媒粒子を含む水溶液(光触媒粒子の分散性を高めるために分散剤を更に含むことが好ましい)とを混合機で撹拌して、上記混合物を作製するようにしてもよい。この場合、混合物を、焼成炉に入れる前に乾燥処理を行う必要がある。一方、上記のように無機発泡体原石と光触媒粒子とを乾式又はそれに近い状態(無機発泡体原石に対して滴下する水のトータル質量を、無機発泡体原石の質量に対して3%以下にする)で撹拌すれば、乾燥処理を行う必要がなくて非常に好ましい。
【0041】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0042】
ここで、具体的に実施した実施例及び比較例について説明する。
【0043】
(実施例1)
粒径25μmのシラス2kgと結晶子径30nm、比表面積52m/gの酸化チタン粒子90gとを、ヘンシェルミキサー内に投入し、該ヘンシェルミキサーで、シラスと酸化チタン粒子とを3分間撹拌混合して、シラス表面に酸化チタン粒子が仮固定されてなる混合物Aを作製した。尚、ヘンシェルミキサーの撹拌速度(撹拌ブレードの回転速度)は、撹拌ブレードの先端の移動速度に換算して30m/sとした。
【0044】
続いて、上記混合物Aを竪型焼成炉内に入れて、該混合物Aのシラスを760℃で焼成発泡処理した。これにより、そのシラスが粒径30μmのシラスバルーンに変化するとともに、そのシラスバルーンの表面に酸化チタン粒子が強固に本固定され、こうして光触媒担持無機発泡体Aを得た。
【0045】
上記光触媒担持無機発泡体Aを水中に入れて、42kHz発振で5分間、超音波洗浄を行った後、これをSEM(電界放射走査電子顕微鏡)で観察したところ、シラスバルーンの表面の略全体に亘って酸化チタン粒子が担持固定されていることが確認された。
【0046】
次いで、サンプル管にメチレンブルー水溶液(濃度0.01mmol/L)94gを入れ、そこに上記光触媒担持無機発泡体Aを0.05g投入して、その光触媒担持無機発泡体Aに対してブラックライト照射を5時間行ったところ、上記メチレンブルー水溶液が脱色された。これにより、光触媒担持無機発泡体Aによる汚染物質の分解機能(水浄化機能)が確認された。
【0047】
(実施例2)
次に、粒径25μmのシラス2kgをヘンシェルミキサー内に投入し、このシラスに対して水を滴下しながらシラスを該ヘンシェルミキサーで撹拌し、その後、このシラスに対して上記実施例1と同様の酸化チタン粒子40gを散布しながら、シラスと酸化チタン粒子とを該ヘンシェルミキサーで撹拌混合した。こうしてシラス表面に酸化チタン粒子が仮固定されてなる混合物Bを作製した。尚、ヘンシェルミキサーの撹拌速度は常に30m/s(撹拌ブレードの先端の移動速度)であり、水を滴下しながらのシラスの撹拌とシラスと酸化チタン粒子との撹拌とのトータル撹拌時間は5分間である。
【0048】
続いて、上記混合物Bを竪型焼成炉内に入れて、該混合物Bのシラスを760℃で焼成発泡処理した。これにより、そのシラスが粒径30μmのシラスバルーンに変化するとともに、そのシラスバルーンの表面に酸化チタン粒子が強固に本固定され、こうして光触媒担持無機発泡体Bを得た。
【0049】
上記光触媒担持無機発泡体Bを水中に入れて、42kHz発振で5分間、超音波洗浄を行った後、これをSEMで観察したところ、シラスの表面の略全体に亘って酸化チタン粒子が担持固定されていることが確認された。また、シラス表面における酸化チタン粒子の均一性(分散性)は、上記実施例1及び後述の実施例3よりも良好であった。
【0050】
(実施例3)
次に、粒径25μmのシラス2kgと上記実施例1と同様の酸化チタン粒子90gとを、ヘンシェルミキサー内に投入し、該ヘンシェルミキサーで、シラスと酸化チタン粒子とを1分間撹拌混合し、その後、シラスと酸化チタン粒子とを撹拌しながら、ヘンシェルミキサー内に、アクリルエマルジョン13gを希釈した水溶液50gを2分間滴下し、その後、該ヘンシェルミキサーで、更に無機発泡体原石と光触媒粒子とを2分間撹拌混合した。こうしてシラス表面に酸化チタン粒子が仮固定されてなる混合物Cを作製した。尚、ヘンシェルミキサーの撹拌速度は常に30m/s(撹拌ブレードの先端の移動速度)であり、無機発泡体原石と光触媒粒子とのトータル撹拌時間は5分間である。
【0051】
続いて、上記混合物Cを竪型焼成炉内に入れて、該混合物Cのシラスを760℃で焼成発泡処理した。これにより、そのシラスが粒径30μmのシラスバルーンに変化するとともに、アクリルが焼失して、そのシラスバルーンの表面に酸化チタン粒子が強固に本固定され、こうして光触媒担持無機発泡体Cを得た。
【0052】
上記光触媒担持無機発泡体Cを水中に入れて、42kHz発振で5分間、超音波洗浄を行った後、これをSEMで観察したところ、シラスの表面の略全体に亘って酸化チタン粒子が担持固定されていることが確認された。
【0053】
(比較例1)
上記実施例1で作製した混合物A(シラス表面に酸化チタン粒子が仮固定されてなるもの)を水中に入れて、42kHz発振で5分間、超音波洗浄を行った後、これをSEMで観察したところ、無機発泡体原石の表面において酸化チタン粒子が脱落している箇所がところどころ見られることが確認された。このことから、無機発泡体原石の表面に酸化チタン粒子を仮固定するだけでは、シラス表面への酸化チタン粒子の付着強度は弱いが、実施例1のように本固定すれば、付着強度が強くなることが分かる。
【0054】
(比較例2)
粒径40μmのシラス発泡体(シラスバルーン)10gに、酸化チタン粒子0.45gとアクリルエマルジョン0.13gとを含む水(光触媒含有懸濁液)8.85gを添加して混合することで、シラス発泡体表面に酸化チタン粒子を付着含浸させた光触媒担持無機発泡体Dを得た。
【0055】
そして、上記実施例1で行った分解機能の確認試験と同様に、サンプル管にメチレンブルー水溶液(濃度0.01mmol/L)94gを入れ、そこに上記光触媒担持無機発泡体Dを0.05g投入して、その光触媒担持無機発泡体Dに対してブラックライト照射を5時間行ったところ、上記メチレンブルー水溶液が脱色されたが、上記実施例1の光触媒担持無機発泡体Aほどは脱色されなかった。これは、光触媒担持無機発泡体Dの酸化チタン粒子がアクリルで覆われているためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、無機発泡体の表面に光触媒粒子を担持固定してなる光触媒担持無機発泡体の製造方法に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機発泡体の表面に光触媒粒子を担持固定してなる光触媒担持無機発泡体の製造方法であって、
無機発泡体原石と光触媒粒子とを混合機で撹拌して、無機発泡体原石の表面に光触媒粒子が仮固定されてなる混合物を作製する第1工程と、
上記混合物の無機発泡体原石を焼成発泡処理することで、該無機発泡体原石を無機発泡体に変化させかつ該無機発泡体の表面に光触媒粒子を本固定する第2工程とを含むことを特徴とする光触媒担持無機発泡体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の光触媒担持無機発泡体の製造方法において、
上記第1工程にて上記混合機で無機発泡体原石と共に撹拌する光触媒粒子の質量は、該無機発泡体原石の質量に対して0.1%〜20%であることを特徴とする光触媒担持無機発泡体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の光触媒担持無機発泡体の製造方法において、
上記第1工程は、上記混合機に投入された無機発泡体原石に対して水を滴下しながら該無機発泡体原石を該混合機で撹拌した後に、該無機発泡体原石に対して光触媒粒子を散布しながら、無機発泡体原石と光触媒粒子とを該混合機で撹拌することで、上記混合物を作製する工程であることを特徴とする光触媒担持無機発泡体の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の光触媒担持無機発泡体の製造方法において、
上記第1工程は、上記混合機で無機発泡体原石と光触媒粒子とを撹拌した後に、該混合機に有機結合剤を投入して更に無機発泡体原石と光触媒粒子とを該混合機で撹拌することで、上記混合物を作製する工程であることを特徴とする光触媒担持無機発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2012−45442(P2012−45442A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186865(P2010−186865)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】