説明

光触媒発泡壁紙

【課題】エンボス加工等による光触媒粒子の埋没を防ぎ、優れた有機揮発性物質の分解性能を有する光触媒発泡壁紙を提供すること。
【解決手段】基材と、オレフィン系樹脂及び/又はアクリル系樹脂を含む発泡樹脂組成物を発泡させてなる発泡樹脂層と、フィルム層と、光触媒を含む光触媒層とをこの順に有する光触媒発泡壁紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒発泡壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅部材から発生するホルムアルデヒドなどの有機揮発性物質に起因するシックハウスの問題や、あるいはペット臭や生活臭などの問題が注目されるようになり、壁紙などの建築内装材の性能として、有機揮発性物質の分解性能、悪臭防止、あるいはダニや細菌の発生防止に対するニーズが高まっている。特に、住宅内装部材での有機揮発性物質の分解を検討した場合、内装部材として最も広い面積を有する壁面にその機能を持たせることが有効であると考えられ、壁紙に光触媒を利用することが研究されている。
【0003】
また、壁紙などの建築内装材は、室内の居住空間としての快適性を高める為に高い意匠性が求められる。特に立体的な意匠を持たせるためには、柔軟性のみでなく高度に発泡させ得る材料が有利となる。こうした要求に応える材料として、塩化ビニル樹脂層上に印刷などして絵柄層を設けたもの、あるいは、さらに前記塩化ビニル樹脂層を発泡させると共にエンボス加工を施すなどして凹凸模様を施したものが広く用いられている(例えば、特許文献1)。
【0004】
このような背景から、発泡させた塩化ビニル樹脂層を有する発泡壁紙において光触媒を用いる試みがなされたが、塩化ビニル樹脂層に用いられる可塑剤が光触媒表面に付着し、光触媒による十分な効果が得られないということがわかってきた。そこで、発泡オレフィン系樹脂層上に非発泡オレフィン系樹脂層を積層させて、該非発泡オレフィン系樹脂層上に可視光型光触媒と無機バインダーからなる可視光型光触媒層を形成した壁紙が提案されている(特許文献2)。これにより、光触媒が分解性能を発現する構成とはなったものの、後工程でのエンボス加工による光触媒粒子の埋没、直接接触する樹脂部位の分解等、それに伴う大気中有機揮発性物質の分解性能低下については課題が残った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−260287号公報
【特許文献2】特開2010−084448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、エンボス加工等による光触媒粒子の埋没を防ぎ、優れた有機揮発性物質の分解性能を有する光触媒発泡壁紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により解決できることを見出した。すなわち本発明は、
基材と、発泡樹脂層と、フィルム層と、光触媒を含む光触媒層とをこの順に有する光触媒発泡壁紙であって、
該発泡樹脂層がオレフィン系樹脂及び/又はアクリル系樹脂を含む発泡樹脂組成物を発泡させてなるものである、光触媒発泡壁紙
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光触媒発泡壁紙は、フィルム層を設けることでエンボス加工等による光触媒粒子の埋没が抑えられ、エンボス加工後においても優れた有機揮発性物質の分解性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の光触媒発泡壁紙の実施形態の一つの断面を示す模式図である。
【図2】図2は、実施例及び比較例における湿式分解性能試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の光触媒発泡壁紙は、基材と、オレフィン系樹脂及び/又はアクリル系樹脂を含む発泡樹脂組成物を発泡させてなる発泡樹脂層と、フィルム層と、光触媒を含む光触媒層とをこの順に少なくとも有する。本発明の光触媒発泡壁紙は、上述した基材、発泡樹脂層、フィルム層、及び光触媒層に加え、必要に応じて、それら以外の層を更に有していてもよい。本発明の光触媒発泡壁紙は、基材と発泡樹脂層との間に非発泡樹脂層(後述の非発泡樹脂層Bと区別するために「非発泡樹脂層A」と呼ぶ)をさらに有することが好ましい。また、本発明の光触媒発泡壁紙は、発泡樹脂層とフィルム層との間に非発泡樹脂層(前述の非発泡樹脂層Aと区別するために「非発泡樹脂層B」と呼ぶ)をさらに有することが好ましい。
【0011】
以下に、本発明の光触媒発泡壁紙の構成について図1を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の光触媒発泡壁紙の一つの好ましい実施形態の断面を示す模式図であり、当該実施形態において光触媒発泡壁紙1は、基材2、非発泡樹脂層3A、発泡樹脂層4、非発泡樹脂層3B、絵柄層5、接着剤層6、フィルム層7及び光触媒層8をこの順に有し、その表面に凹凸模様9を有するものである。なお、本発明は当該実施形態に限定されるわけではない。
【0012】
[基材2]
本発明で用いられる基材2は、通常壁紙として用いられるものであれば、特に限定されず、例えば裏打紙、難燃紙、合成樹脂シート、織布、不織布、編布等を用途に応じて適宜選択することができる。なかでも、スルファニル酸グアナジンやリン酸グアナジン等の水溶性難燃剤を含浸させたパルプ主体の難燃紙、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機質剤を混抄した無機質紙等の通常壁紙用裏打紙、またはこれを用いた裏打材等が、好ましく用いられる。裏打紙は、カール防止の観点より、水中伸度2%以下であるものが好ましく、1.8%以下であるものがより好ましく用いられる。なお、水中伸度はJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.27:2000に準拠して測定された値である。
【0013】
これらの材料は、それぞれ単独で使用してもよいが、紙同士の複合体等、任意の組み合わせによる積層体であってもよく、必要に応じて難燃剤、無機質剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色剤、サイズ剤、定着剤等を適宜添加してもよい。
また、基材2の厚さは、特に制限はないが、秤量が50〜300g/m2程度、好ましくは55〜160g/m2の範囲である。特に、壁紙施工時の下地の凹凸を拾う、いわゆる不陸が目立たなくするには、60〜160g/m2の範囲が好ましい。
【0014】
[基材2:片艶裏打紙]
基材2としては、JIS P8119に準拠して測定される表面平滑度が40秒以下である片艶裏打紙も、生産安全性の観点から、好ましく用いられる。ここで、表面平滑度が大きいほど、表面平滑性が高いことを示す。また、この片艶裏打紙は、カール防止の観点より、水中伸度1.5%以下であることが好ましく、1.2%以下であることがより好ましい。
【0015】
この片艶裏打紙は、紙の抄造工程においてヤンキードライヤーを用いて乾燥させることによって、製造される。該片艶裏打紙は、紙シートが伸びた状態のまま平滑な表面を有するヤンキードライヤー表面を写し取るようにして乾燥されるので、片面が非常に高い表面平滑性を有する。このようにして得られる片艶裏打紙を壁紙に用いると、壁紙施工時に糊を塗布しても、壁紙のカールはほとんど生じない。これは、片艶裏打紙が伸びた状態のまま乾燥されることで、糊を塗布しても伸びが生じないためと考えられる。
【0016】
上記の片艶裏打紙は、木材パルプを使用して抄紙することが好ましいが、木材パルプ以外の非木材パルプ、有機合成繊維、無機繊維等を使用することも可能である。なお、本発明の効果が損なわれない範囲内で、難燃剤、無機質剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色剤、サイズ剤、定着剤等を適宜添加してもよい。
また、ヤンキードライヤーによる乾燥条件は、特に限定されるものではないが、一般に、水分が30〜70質量%の湿紙シートを80〜140℃のヤンキードライヤーシェルに接触させ、水分が3〜10質量%程度になるまで乾燥させるのが好ましい。
本発明の発泡壁紙の基材として片艶裏打紙を用いる場合は、その上層部となる発泡樹脂層等は、片艶裏打紙のいずれの面にも制限なく設けられるが、艶を有さない面に上層部を設けると、糊の塗布量を削減することが可能となるので好ましい。
【0017】
[基材2:裏打材−1]
基材2としては、層間強度が12〜40N/mである裏打材−1も好ましく用いられる。該裏打材の層間強度は、好ましくは12〜25N/mであり、より好ましくは12〜20N/mである。裏打材の層間強度が上記範囲内にあれば、壁紙の施工時に、壁紙に糊を塗布して引っ張ることによって壁紙が破れることがなく、壁紙を良好に貼着することができる。また、壁紙の剥離が裏打材の層間で起こりやすくなり、剥離の際に剥離界面のばらつきが生じることもない。このように、新たな壁紙を貼付する際の施工性が良好となる。
【0018】
裏打材−1の材質としては、上記の裏打紙を好ましく用いることができる。また、裏打材−1は、カール防止の観点より、水中伸度が1.5%以下であることが好ましく、1.2%以下であることがより好ましい。
【0019】
層間強度の測定は以下の方法による。
発泡壁紙の両面に30mm幅のクラフトテープ(積水化学工業(株)製)を貼り付け、長さ250mm、幅15mmに裁断して試験片を得る。縦方向の層間強度を測定する場合は縦目に、横方向の層間強度を測定する場合は横目に試験片を作成する。次いで、クラフトテープを引っ張り、試験片の剥離挙動を目視にて評価する。クラフトテープを引っ張る機械としては、JIS P−8113(紙及び板紙の引っ張り強さ試験方法)に規定される試験機を用いる。
【0020】
裏打材の層間強度を制御する方法としては種々あり、抄紙方法による制御、叩解による制御、乾燥紙力増強樹脂の添加量の制御などにより行うことができる。より具体的には、抄紙方法による制御としては、例えば、裏打ち紙としてツインワイヤ抄紙機を用いて両面脱水法にて製紙した紙を用いることで層間強度を弱めることができる。また、叩解はシートの密度を増加させ、繊維が伸張できる空間を減少させ、このことによって繊維間の結合を増加させる。従って叩解の条件を緩やかにすること、回数を減らすことで層間強度を弱めることができる。さらに、通常は、乾燥紙力の増強のためにアクリルアミド系樹脂などが添加されるが、この含有量を低減させることで層間強度を弱めることができる。なお、乾燥紙力増強樹脂の添加量による制御は、叩解による制御に比較して、微細繊維の発生量の低下、多孔性等の性質、見かけ比重に対する強度の比などの基材の物理的性質を変化させることがなく好適である。
これらの制御方法を組み合わせることで、裏打材の層間強度を上記の好ましい範囲に制御することができる。
【0021】
[基材2:裏打材−2]
また、基材2としては、クラーク剛度が好ましくは75%以下であり、より好ましくは70%以下である裏打材−2も好ましく用いられる。裏打材のクラーク剛度が上記の範囲内にあれば、施工時の折れじわの発生を抑制することができる。ここで、クラーク剛度の測定は、JIS P−8143に準拠したものである。
【0022】
裏打材−2の材質としては、上記の裏打紙を好ましく用いることができる。また、裏打材−2は、カール防止の観点より、水中伸度が1.5%以下であることが好ましく、1.2%以下であることがより好ましい。
【0023】
裏打材のクラーク剛度を制御する方法としては、裏打材の厚さ、パルプの叩解の度合い、パルプの繊維長を制御する方法などがある。紙のこわさは坪量が一定の場合、紙の厚さの3乗に比例して増大する傾向にあるため、紙の厚さを調整する方法が効果的である。また、叩解はシートの密度を増加させ、繊維が伸張できる空間を減少させ、このことによって繊維間の結合を増加させるため、こわさを増大させる。従って叩解の条件を緩やかにすること、回数を減らすことでクラーク剛度を弱めることができる。さらにパルプの繊維長については、長繊維パルプの紙よりも短繊維パルプの紙の方が、こわさが大きい傾向にある。従って、より長繊維パルプの紙を選択することでクラーク剛度を弱めることができる。
これらの制御方法を組み合わせることで、裏打材のクラーク剛度を本発明で特定する範囲に制御することができる。
【0024】
[非発泡樹脂層3A、非発泡樹脂層3B]
本発明において、光触媒発泡壁紙1は、好ましくは非発泡樹脂層3A及び/又は非発泡樹脂層3Bを有する。非発泡樹脂層3A及び3Bは、絵柄層5に用いられるインキ組成物が発泡樹脂層4を経由して基材2中に浸透することを抑制することができる。また、非発泡樹脂層3Aは、基材2と発泡樹脂層4との間に設けられて、発泡樹脂層4と基材2との接着力を向上させることができる。製造安定性の観点からは、非発泡樹脂層3A及び非発泡樹脂層3Bの両方を有することが好ましい。
非発泡樹脂層3A及び3Bは同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0025】
[非発泡樹脂層3A及び3B:樹脂]
非発泡樹脂層3A及び3Bを構成する樹脂としては、特に制限はないが、オレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂単体及び各種共重合体樹脂を挙げることができ、なかでもオレフィン系樹脂が好ましい。
オレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のオレフィンの単独重合体及び各種共重合体、炭素数が4以上のαオレフィンの共重合体(線状低密度ポリエチレン)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ないしはアイオノマー、またはこれらの1種ないしそれ以上からなる混合樹脂を挙げることができる。なかでも特に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)の少なくとも1種が好ましい。EVA及びEMMAは特に限定されず、公知又は市販のものを使用することができる。特に、EVAは、酢酸ビニル成分(VA成分)が15〜30質量%であるものが好ましい。また、EMMAは、メタクリル酸メチル成分(EMA成分)が15〜30質量%であるものが好ましい。
【0026】
[非発泡樹脂層3A及び3B:各種添加剤]
また、非発泡樹脂層3A及び3Bは、各種添加剤を必要に応じて含有することができる。例えば、無機充填剤を入れて増量効果を付与したり、難燃剤を入れて難燃性を付与することもできる。また、架橋する場合は、発泡樹脂層で用いられる架橋助剤を配合することもできる。
無機充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の粉末(粒子)のほか、マイカ、シリカ、アルミナ、ケイソウ土、ケイ砂、シラスバルーンのような無機質中空体等が挙げられる。
【0027】
難燃剤としては、例えば尿素等の窒素化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物(特に結晶水を持つ化合物)、自消性を有するリン又はハロゲン元素を含む難燃剤等が適している。特に水酸化物のような化合物を配合することにより、燃焼分解時に結晶水の気化熱で難燃化を図ることができる。また、オレフィン系樹脂100質量部に対して、窒素化合物とリン化合物からなる混合難燃化合物が25〜100質量部配合されていると好ましい。その理由としては、オレフィン系樹脂との相溶性が良好となり、熱安定性も良くなるからである。
【0028】
オレフィン系樹脂に柔軟性、耐衝撃性、易接着性を付与する目的で各種ゴム類を添加することもできる。
ゴム類としては、例えばジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィンエラストマー等が挙げられる。このなかでも水素添加ジエン系ゴムが好ましい。水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるもので、本発明においてはオレフィン系樹脂の改質材として、使用される。オレフィン系樹脂の結晶化を抑え、柔軟性、透明性を高める役割がある。また、一般にオレフィン系樹脂にジエン系ゴムを添加するとジエン系ゴムの二重結合のため、耐候性・耐熱性はジエン系ゴム無添加のオレフィン系樹脂より低下するが、本発明では、ジエン系ゴムの二重結合を水素で飽和させるため、オレフィン系樹脂の耐候性、耐熱性の低下も無く良好なものとなる。
【0029】
ジエン系ゴムとしては、例えばイソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム等が挙げられる。本発明の目的からは、特にスチレン・ブタジエンゴム等が好ましい。
ゴム類の添加量としては、特に限定されないが、通常はオレフィン系樹脂100質量部に対し、1〜90質量部程度とすれば良い。
【0030】
また、顔料を添加して透明着色又は不透明着色を施す方法が挙げられる。顔料としては、公知又は市販のものを制限なく使用することができる。例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブリーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む)、アルミニウム、真鍮等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。これらは、用途に応じて、透明着色顔料又は不透明着色顔料のいずれかを選択することができる。これら顔料は、粉末又は鱗片状箔片として添加、分散すれば良い。
【0031】
[非発泡樹脂層3A及び3Bの形成]
非発泡樹脂層3A及び3Bは、上記のような樹脂等を含む非発泡樹脂組成物を、例えばエマルジョン化してエマルジョン組成物としたもの、又はペレット化したものを、コンマコーター法や、Tダイによる押出製膜法、カレンダー製膜法、接着剤を用いるドライラミネートによる方法等の公知の方法によって形成することができる。ここで、エマルジョン化は通常なされる方法ですることができ、エマルジョン組成物は例えば、非発泡樹脂組成物中の熱可塑性樹脂を乳化重合法等によりエマルジョン化した後に、その他の成分を所定量加えて得ることができる。
【0032】
非発泡樹脂組成物は、表面特性を向上させる目的で、架橋処理をしてもよい。架橋処理の方法は限定されないが、電離放射線による架橋処理(硬化処理)が好ましい。例えば、基材上に上記非発泡樹脂組成物による層を形成し、発泡適性粘土の温度範囲を広くするために、電子線等の電離放射線を照射して架橋させる。これにより、生産性が安定するうえ、非発泡樹脂層3A及び3Bの表面は硬くなり、表面特性が向上する。非発泡樹脂組成物を架橋処理する場合、非発泡樹脂組成物には架橋剤を好ましく含有させることができる。架橋剤としては、上記の非発泡樹脂層を構成する樹脂を架橋させるものであれば、特に制限なく用いることができる。
なお、ここで言う電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含むものである。紫外線源としては、例えば超高圧水銀燈、高圧水銀燈、低圧水銀燈、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等の光源を用いることができる。また、電子線源としては、例えばコックロフトワルトン型、パンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いればよい。照射線量としては、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
非発泡樹脂層3A及び3Bの厚みは、優れた表面特性を得て、エンボス加工による壁紙の凹凸追従性を確保する目的より、3〜50μmが好ましく、より好ましくは10〜20μmである。
【0033】
また、非発泡樹脂層3A及び3Bは、上記の樹脂からなる透明又は不透明な市販のフィルムを使用することもできる。市販されるフィルムとしては、オレフィン系樹脂フィルム、ウレタン系又はアクリル系コート剤でコートしたオレフィン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルム、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフロロエチレン等のフッ素系樹脂フィルム等のフィルムが挙げられる。なかでも、オレフィン系樹脂が好ましく、耐汚染性、耐擦傷性、耐薬品性等の性能に優れ、エンボス加工において優れた凹凸追従性を示す、すなわち縦方向の引張伸度が十分大きく、電離放射線により崩壊することなく、製造コストが安く、また燃焼時の煙濃度が少ないエチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムが特に好ましい。
非発泡樹脂層3A及び3Bに市販のフィルムを用いる場合、その厚みは、3〜50μmであることが好ましく、10〜20μmがより好ましい。フィルムの厚みが上記範囲内であれば、該フィルムの製造上の制約をうけることなく、また、優れた表面特性を得ることができ、エンボス加工による壁紙の凹凸追従性を確保することができる。
【0034】
[発泡樹脂層4]
発泡樹脂層4は、オレフィン系樹脂及び/又はアクリル系樹脂を含む発泡樹脂組成物を発泡させてなるものである。前記発泡樹脂組成物は、好ましくは発泡剤、無機充填剤、その他の各種添加剤を必要に応じて含む。
発泡樹脂層4を設けることで、光触媒発泡壁紙1に難燃性を付与することができる。
【0035】
[発泡樹脂層4:オレフィン系樹脂]
発泡樹脂組成物に含まれるオレフィン系樹脂はオレフィン成分を含む樹脂であり、オレフィンの単独重合体樹脂や2種類以上のオレフィン同士の共重合体樹脂だけでなく、オレフィン成分と他のモノマー成分との共重合体樹脂も包含される。
オレフィン系樹脂の中でも、エチレン系樹脂であることが好ましい。エチレン系樹脂としては例えば、エチレン単独重合体樹脂(PE);エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA);エチレン−メチルアクリレート共重合体樹脂(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂(EEA)、炭素原子数3〜5のエチレン−アルキルアクリレート共重合体樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂(EMMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)等のエチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂が挙げられる。
これらの中でも、環境保護の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、及びエチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂がより好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(EMMA)の少なくとも1種を用いることがさらに好ましい。
エチレン系樹脂以外のオレフィン系樹脂としては、例えば、プロピレン系樹脂、ブテン系樹脂、ペンテン系樹脂などが挙げられる。
オレフィン系樹脂は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0036】
[発泡樹脂層4:アクリル系樹脂]
発泡樹脂組成物に含まれるアクリル系樹脂は(メタ)アクリル成分を含む樹脂であり、(メタ)アクリル成分(即ち、(メタ)アクリル酸又そのエステル)の単独重合体樹脂や2種類以上の(メタ)アクリル成分同士の共重合体樹脂だけでなく、(メタ)アクリル成分と他のモノマー成分との共重合体樹脂も包含される。
アクリル系樹脂としては例えば、アクリル酸メチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸エチル樹脂等の単独重合体樹脂;エチレン−メチルアクリレート共重合体樹脂(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂(EEA)、炭素原子数3〜5のエチレン−アルキルアクリレート共重合体樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂(EMMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)等のエチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂が挙げられる。
アクリル系樹脂は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0037】
[発泡樹脂層4:発泡剤]
発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどの無機発泡剤、N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミド、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどのニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウム・アゾジカルボキシレートなどのアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物、カルシウムアジド、4,4'−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホニルアジドなどのアジド化合物などが挙げられる。低コストであるとともに、分解熱が小さく、難燃性かつ自己消化性に優れ、水に安定であり、無毒であり、熱分解型化学発泡剤が分解温度以下での加工処理が可能であることから、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド等のアゾ化合物の熱分解型発泡剤が好適である。
【0038】
発泡剤の添加量としては、要求される意匠性により適宜決めればよいが、発泡樹脂層4を構成するオレフィン系樹脂及び/又はアクリル系樹脂100質量部に対して、0.5〜15質量部が好ましい。なお必要に応じて、一層の発泡効果を挙げるために発泡剤の分解を促進する発泡助剤を併用することができる。その発泡助剤としては使用する発泡剤の種類により異なるが、例えば発泡剤としてアゾジカルボンアミドを用いる場合には発泡助剤として酸化亜鉛、硫酸鉛、尿素、ステアリン酸亜鉛等が用いられる。
【0039】
[発泡樹脂層4:無機充填剤]
発泡樹脂層4に用いる無機充填剤は、特に制限はなく、様々なものを用いることができる。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、フライアッシュ、脱水汚泥、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、焼成タルク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスフレーク、ガラスバルーン、シリカ、製鉄スラグ、銅、鉄、酸化鉄、カーボンブラック、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、セメント、ガラス粉末、珪藻土、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、水和アルミニウム、水和石膏、ミョウバン、等が挙げられる。なかでも、分解温度が低く、吸熱量が大きく、低コストであることから水酸化アルミニウムが好適である。なお、これら無機充填剤は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0040】
これら無機充填剤の多くは、本発明の発泡壁紙に難燃性を付与する効果を有し、かつ、多量に配合された場合にはその効果は一層増大する。無機添加剤の使用量は、発泡壁紙の難燃性を十分得る目的から、発泡樹脂層4を構成するオレフィン系樹脂及び/又はアクリル系樹脂100質量部に対して、100質量部以上であることが好ましい。
本発明において用いる無機充填剤の平均粒径は、5〜25μmが好ましく、5〜15μmがさらに好ましい。
【0041】
これらの無機充填剤はそのまま使用してもよいが、無機充填剤を予めシラン系、チタネート系、アルミネート系、ジルコアルミニウム系等のカップリング剤、りん酸系、脂肪酸系等の界面活性剤、油脂、ワックス、ステアリン酸、シランカップリング剤等により処理してもよい。
【0042】
また、発泡樹脂層4を構成する発泡樹脂組成物は、要求される物性に応じて、各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば防カビ剤、防虫剤、防腐剤、抗菌剤、希釈剤、消臭剤、光安定剤、可塑剤などが挙げられる。
【0043】
[発泡樹脂層4:形成方法]
発泡樹脂層4は、発泡樹脂組成物を用いて未発泡樹脂層を形成する工程、及び該未発泡樹脂層を発泡させる工程、を経て形成される。
未発泡樹脂層の形成は、非発泡樹脂層3A及び3Bと同様の方法により行うことができる。また、架橋処理を行うことができるのも、非発泡樹脂層3A及び3Bと同様である。Tダイによる押出製膜法を採用する場合、非発泡樹脂層3A及び/又は非発泡樹脂層3Bと、未発泡樹脂層との形成は、別々に行ってもよいし、同時に行ってもよい。同時に押出製膜する場合、各層に対応する溶融樹脂を同時に押出製膜することにより、複数層の同時形成が可能となるマルチマニホールドタイプのTダイ等が用いられる。
なお、未発泡樹脂層の形成にTダイによる押出製膜法を採用した場合、発泡樹脂組成物に好ましく含有される無機充填剤が、押出成形機の押出口(いわゆるダイス)に残存しやすく、無機充填剤の残渣(いわゆる目やに)がシート表面の異物となりやすい傾向がある。このような場合、非発泡樹脂層3A及び非発泡樹脂層3Bの両方を設けることが好ましい。このような構成にすれば、目やにの発生は、二層の非発泡樹脂層3A及び3Bで未発泡樹脂層を挟んで同時形成することで、抑制することが可能となり、優れた製造安定性が得られる。
【0044】
未発泡樹脂層は、公知の発泡処理の方法により発泡させることができ、例えば発泡加熱炉を用いて、180〜240℃程度の温度条件で発泡させることができる。発泡処理は、未発泡樹脂層として発泡樹脂組成物を製膜した後であれば特に制限なく行うことができるが、通常光触媒層8を設けた後に行う。
また、発泡樹脂層4の厚みについては、特に制限されず、所望の特性等に応じて適宜設定することができるが、製膜状態において(即ち、未発泡樹脂層の厚みで)50〜300μmが好ましく、発泡後の状態において(即ち、発泡樹脂層4の厚みで)350〜1200μmが好ましい。また、発泡樹脂層4の形成にあたっての、発泡倍率も、特に制限されないが、通常は3〜7倍程度であればよい。発泡倍率が上記範囲内であれば、良好な表面強度、加工性等を得ることができる。
【0045】
[絵柄層5]
本発明において、光触媒発泡壁紙1は、絵柄層5を有してもよい。絵柄層5は、基材2に装飾性を与えるものであり、図1に示されるように好ましくは発泡樹脂層4とフィルム層7との間に積層される層である。
絵柄層5は、一般的にはグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷等、周知の印刷方法により形成することができる。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワークなどの模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
【0046】
絵柄層5の形成に用いられるインキ組成物としては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂などを1種単独で又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが用いられる。
絵柄層5は厚さ1〜20μm程度が好ましい。
【0047】
[接着剤層6]
本発明において、光触媒発泡壁紙1は、接着剤層6を有してもよい。フィルム層7と発泡樹脂層4との接着性が低い場合、例えば上記のエチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムを用いた場合は、必要に応じて両層間に接着剤層6を設けることが好ましい。接着剤層6に用いられる接着剤としては、特に制限はないが、製造工程の観点より感熱接着剤が好ましい。感熱接着剤とは、一般に常温では固体であり、加熱により溶融又は軟化して接着性を発現し、冷却すると固化して強固に接着する性質を有する熱可塑性樹脂を主要成分とする接着剤のことをいう。これを適当な溶剤に溶解、もしくは加温により溶融させて、被接着体の一方又は両方の接着面に塗布し、両者を重ね合わせて加熱加圧することにより接着させるものである。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−オレフィン系共重合体樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂、アイオノマー系樹脂、オレフィン−αオレフィン系共重合体樹脂などの易接着樹脂単体、及びオレフィン系樹脂やアクリル系樹脂、フィルム層の主成分となる熱可塑性樹脂とのブレンド品などが好ましく挙げられる。
【0048】
接着剤層6は、層間接着力の向上を図ることを目的に、必要に応じて基材2と発泡樹脂層4との層間に設けることもできる。また、接着剤層6を設ける以外に、層間接着力を向上させるために、所望により、基材2の表面に片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
【0049】
[フィルム層7]
本発明の光触媒発泡壁紙1は、フィルム層7を有する。発泡樹脂層4と光触媒層8の間にフィルム層7を設けることで、フィルム層7より下側(基材2側)に位置する発泡樹脂層4等に光触媒が埋没するのを防ぎ、発泡樹脂層4等を光触媒による分解から保護し、光触媒の活性の低下を抑制することができる。即ち、本発明の光触媒発泡壁紙1に優れた有機揮発性物質等の分解性能を付与するものである。さらに、耐汚染性、耐セロファンテープ性、耐擦傷性、耐薬品性などの表面性能を付与することも可能である。
【0050】
フィルム層7を構成する樹脂としては、特に制限はないが、オレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂などの熱可塑性樹脂単体及び各種共重合体樹脂を好ましく挙げることができる。これらのなかでも、本発明の壁紙に耐汚染性、耐セロファンテープ性、耐擦傷性、耐薬品性などの表面性能を付与し、エンボス加工を施す場合には優れた凹凸追従性を付与し、燃焼時の煙濃度が少なく、かつ製造コストを安価におさえる観点から、オレフィン系樹脂が好ましく、オレフィンの単独重合体樹脂及びエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂がより好ましい。
【0051】
フィルム層7に用いられるフィルムの厚みは、5〜25μmであることが好ましく、5〜15μmがより好ましい。フィルムの厚みが上記範囲内であれば、該フィルムの製造上の制約をうけることなく、またエンボス加工による壁紙の凹凸追従性を確保することができる。
【0052】
[光触媒層8]
本発明の光触媒発泡壁紙1は、光触媒を含む光触媒層8を有する。光触媒層8は光触媒発泡壁紙1に優れた有機揮発性物質等の分解性能を付与することができる。
光触媒としては、公知の光触媒を制限なく用いることができる。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、硫化カドミウム、窒素(N)ドープした酸化チタン、硫黄(S)ドープした酸化チタンなどが好ましく挙げられる。これらのうち、室内などの用途を考慮すると、蛍光灯や白熱球などの室内灯から照射される可視光領域の光により光触媒作用を発現する可視光応答型光触媒が好ましく、酸化タングステン、硫化亜鉛、硫化カドミウム、窒素(N)ドープした酸化チタン、硫黄(S)ドープした酸化チタンが好ましく、窒素(N)ドープした酸化チタン、硫黄(S)ドープした酸化チタンがより好ましい。
【0053】
光触媒層8は、好ましくは上記の光触媒を含むコーティング剤を塗布し、乾燥などを行うことにより形成することができる。該コーティング剤としては、光触媒層8の密着強度あるいは光触媒層8の強度を向上させる観点から、光触媒と、有機溶剤や水などの溶媒及び無機バインダーを含んだものが好ましく挙げられる。無機バインダーは、光触媒作用により分解されないシリカ結合を有するシリカ化合物、例えばシランカップリング剤といったアルコキシシラン化合物及びその加水分解物や縮合物のほか、シリコーンワニスなどが好ましく挙げられる。
【0054】
コーティング剤中の光触媒の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、5〜10質量%がさらに好ましい。光触媒の含有量が上記範囲内であれば、コーティング剤の塗布性が良好となり、光触媒層8の透明性が低下することもない。
また、コーティング剤中の無機バインダーの含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。無機バインダーの含有量が上記範囲内であれば、コーティング剤の安定性が良好となり、光触媒の性能を阻害することがない。
【0055】
光触媒層8の厚さは、0.5〜5μmの範囲内が好ましく、0.5〜2μmの範囲内がより好ましい。光触媒層8の厚さが上記範囲内であれば、光触媒の性能が十分に得られ、層の強度も良好となる。
【0056】
[中間層]
本発明において、光触媒発泡壁紙1は光触媒層8とフィルム層7との間に、中間層(図示せず)を有してもよい。中間層は、シリカ粒子とバインダーを含有することが好ましいが、シリカ粒子は含有していなくてもよい。
中間層を設けることで、光触媒層8とフィルム層7の密着性が向上するとともに、エンボス加工による光触媒機能の低下をさらに抑制することができる。特に、シリカ粒子を含有する中間層を設けた場合には、バインダーから突出したシリカ表面上の光触媒粒子は、シリカ粒子の存在によりエンボス加工による埋没が抑えられ、光触媒機能の低下を抑制する効果に優れる。シリカ粒子のBET比表面積は140m2/g以上であることが好ましく、Sが大きいほどシリカ表面上に存在する光触媒粒子の量が増えるために好ましい。本発明のシリカ粒子の粒径は、好ましくは平均粒子径が1μm〜7μmであり、より好ましくは2.5μm〜5μmである。なお、ここで言う平均粒子径はレーザー法で測定したものである。
【0057】
本発明に含まれるバインダーは、壁紙製膜における200℃以上の高温への耐熱性を有し、フィルム層7及び光触媒層8との密着性が得られるものであれば、特に限定されず、公知の有機バインダー、無機バインダー、有機・無機ハイブリッド系を用いることができる。密着性の観点からは有機バインダーが好ましい。具体例としては、特開2009−84446に記載のカルボキシル基含有樹脂やオキサゾリン基含有樹脂が挙げられる。また、特開2002−248715[0028]に記載の高弾性のポリエステル樹脂と不飽和ポリエステル樹脂の混合物、高弾性のアクリル樹脂、高弾性のウレタン樹脂等が挙げられる。
【0058】
中間層の塗布量としては、特に限定されないが、好ましくは0.2〜5g/m2、より好ましくは0.5〜2g/m2である。なお、本明細書において「塗布量」とは、特に断りの無い限り、乾燥後の質量を指す。
【0059】
本発明の中間層は、フィルム層7上に、中間層コーティング液を塗布した後、乾燥させることにより形成することができる。
中間層コーティング液は、上述したシリカ粒子とバインダーに加えて、溶媒を含む。前記溶媒は、特に限定されず、例えば、水;エタノール、メタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類と水との混合溶媒のような水性媒体;などが挙げられる。これらの中でも特に、水が好ましい。
本発明の中間層コーティング液を用いて中間層を形成するに際しては、例えば、スピンコート、ディップコート、ドクターブレード、スプレーまたはハケ塗りなど従来公知の方法により中間層コーティング液を塗布し、その後、中間層コーティング液中の溶媒を除去しうる温度で加熱すればよい。
【0060】
[凹凸模様9]
本発明において、光触媒発泡壁紙1は、意匠性に優れたものとするために凹凸模様9を有することが好ましい。図1に示される凹凸模様9は、好ましくは製造過程にある壁紙がいずれかの手段によってエンボス可能な温度となっているときに、光触媒層8の上面、すなわち最外層側からエンボス版で加熱加圧することにより形成することができる。エンボス版で加熱加圧することにより形成される凹凸は、その最深部分は、発泡樹脂層4の上面に達するものである。凹凸模様9の形成には、周知の枚葉、もしくは輪転式のエンボス機が好ましく用いられ、凹凸模様9の形状としては、木目版導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝などがある。
【0061】
[製造方法]
本発明の光触媒発泡壁紙1は、例えば以下の製造方法によって製造されるが、これによって制限されるものではない。
フィルム層7の一方の面に必要に応じて接着剤層6を構成する樹脂を塗布し、さらに光触媒層コーティング剤を塗布・乾燥させて、光触媒層8を有するシートを得る。また、基材2上に塩化ビニル樹脂、可塑剤、その他発泡剤、無機充填剤、添加剤を含む発泡樹脂組成物をコンマコーター法にてコーティングし、さらに絵柄層5を形成するインキ組成物をグラビア印刷により塗布した後、加熱発泡炉を用いて220〜250℃程度で前記発泡樹脂組成物を発泡させて発泡樹脂層4を形成して基材シートを得る。次いで、該基材シートを冷却した後、150℃程度まで再加熱してから、前記光触媒層8を有するシートの最外層側よりエンボス版が形成された冷却ロール(光触媒層を有するシート側)と加圧ロール間を通すことで両シートを熱圧着し、凹凸模様9を形成した後、冷却することで、光触媒層8から発泡樹脂層4にかけて凹凸模様9を形成した本発明の光触媒発泡壁紙を得ることができる。なお、前記のように、接着剤層6は必要に応じて、所望の層間に設けることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの例によってなんら限定されるものではない。
【0063】
(1)壁紙の作成
[実施例1]
公知のTダイ押出機を用いて、いずれもエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用して、非発泡樹脂層A/未発泡樹脂層/非発泡樹脂層Bの順に、各層の厚みが10μm/80μm/10μmになるように製膜して3層から成る積層体Aを得た。
前記非発泡樹脂層A及び前記非発泡樹脂層Bには以下の(a−1)非発泡樹脂組成物を用い、前記未発泡樹脂層には以下の(b−1)発泡樹脂組成物を用いた。
(a−1)非発泡樹脂組成物:
・エチレン−酢酸ビニル系共重合体(住友化学(株)製、商品名:エバテートCV5053)
(b−1)発泡樹脂組成物:
・エチレン−酢酸ビニル系共重合体(住友化学(株)製、商品名:エバテートCV5053)、100質量部
・発泡剤(永和化成製、商品名:ADCA#3)、4質量部
・炭酸カルシウム(白石工業製、商品名:ホワイトンH)、30質量部
・二酸化チタン(顔料)(デュポン製、商品名:タイピュアR−108)、20質量部
・光安定剤((株)ADEKA製、商品名:OF−101)、1質量部
・架橋剤(JSR(株)製、商品名:オブスターJVA−702)、1質量部
【0064】
次に、前記積層体Aの非発泡層樹脂層A面に裏打ち紙(米秤量60g/m2、興人(株)製、WK−FKKD)を積層して積層体Bを得た。その後、積層体Aの表面強度の向上を図る目的で、積層体Bに対して200kV、5Mradにて電子線照射を行なった。
次いで、グラビア印刷により、積層体Bの非発泡層樹脂層B面に水性インキ(大日精化工業(株)製、商品名:ハイドリック)を用いて布目模様(絵柄層)を印刷し、積層体Cを得た。
【0065】
一方、フィルム層として予め接着剤が塗布されたエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂((株)クラレ製、商品名:エバールフィルムHF−ME、厚み:12μm、エチレン含有量:44mol%)を用い、該フィルム層の上面(接着剤が塗布されていない側)に可視光型酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115)を乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布、乾燥して光触媒層を形成し、積層体Dを得た。
上記の積層体Cを、加熱発泡炉を用いて230℃で加熱することにより、未発泡樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成させて積層体Eを得た後、当該積層体Eを上記の積層体Dと同時にエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する壁紙を得た。
【0066】
[実施例2]
非発泡樹脂層Bに以下の(a−2)非発泡樹脂組成物を用い、未発泡樹脂層には以下の(b−2)発泡樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で壁紙を得た。
(a−2)非発泡樹脂組成物:
・エチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポン ポリケミカル(株)製、商品名:ニュクレルN1535)
(b−2)発泡樹脂組成物:
・エチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポン ポリケミカル(株)製、商品名:ニュクレルN1535)、100質量部
・発泡剤(永和化成製、商品名:ADCA#3)、4質量部
・炭酸カルシウム(白石工業製、商品名:ホワイトンH)、30質量部
・二酸化チタン(顔料)(デュポン製、商品名:タイピュアR−108)、20質量部
・光安定剤((株)ADEKA製、商品名:OF−101)、1質量部
・架橋剤(JSR(株)製、商品名:オブスターJVA−702)、1質量部
【0067】
[実施例3]
非発泡樹脂層Bに上記(a−2)非発泡樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で壁紙を得た。
【0068】
[実施例4]
非発泡樹脂層Bに以下の(a−3)非発泡樹脂組成物を用い、未発泡樹脂層には以下の(b−3)発泡樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で壁紙を得た。
(a−3)非発泡樹脂組成物:
・低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名:ペトロセン202)
(b−3)発泡樹脂組成物:
・低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名:ペトロセン202)、50質量部
・超低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名:LUMITAC54−1)、50質量部
・発泡剤(大塚化学(株)製、商品名:ユニフォームウルトラAZ3050)、4質量部
・軽質炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名:Brilliant−15、平均粒径:0.15μm)、40質量部
・二酸化チタン(顔料)(デュポン製、商品名:タイピュアR−108)、30質量部
・発泡助剤((株)ADEKA製、商品名:アデカスタブOF−101)、5質量部
・架橋助剤(JSR(株)製、商品名:オプスターJUA702)、1質量部
【0069】
[実施例5]
非発泡樹脂層A及び非発泡樹脂層Bに上記(a−3)非発泡樹脂組成物を用い、未発泡樹脂層に上記(b−3)発泡樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で壁紙を得た。
【0070】
実施例1〜5で得た壁紙の、非発泡樹脂層A(基材側)、発泡樹脂層及び非発泡樹脂層B(フィルム層側)に含まれる樹脂を以下の表1にまとめた。
【0071】
【表1】

【0072】
[比較例1]
実施例1と同様の非発泡樹脂組成物と発泡樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法で積層体Cを作製した。次いで、積層体Cの絵柄層上に、可視光型酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115)を乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布、乾燥して光触媒層を形成し、積層体Fを得た。該積層体Fを加熱発泡炉を用いて230℃で加熱することにより、未発泡樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成させた後、エンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する壁紙を得た。
【0073】
(2)壁紙の評価
実施例及び比較例で得られた壁紙について、以下の方法で評価した。
(光触媒湿式分解性能試験)
実施例及び比較例で得られた光触媒発泡壁紙を5cm×10cmの大きさに裁断し、壁紙試験片とした。該試験片を、内容量5リットル(L)のテドラーバック内に挿入し、5Lの合成空気〔(窒素:酸素)容積比:4/1、RH50%〕をテドラーバック内に送り込み、ブラックライト2mW/cm2で16時間初期化処理を行った。
その後、テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度が20ppmとなるように1体積%のアセトアルデヒド0.94mlをテドラーバック内に送り込み、ブラックライト1mW/cm2を照射して、アセトアルデヒドによる湿式分解性能試験を実施した。テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度(ppm)の経時変化はガスクロマトグラフィーにより測定した。測定結果を表2及び図2に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
表2及び図2によれば、実施例1〜5で得られた壁紙は、ブラックライトの照射時間の経過とともにアセトアルデヒド濃度が減少し、優れた分解性能を有していることが示された。一方、フィルム層を有しない比較例1の壁紙は、十分な分解性能を示すことはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、優れた有機揮発性物質等の分解性能を発揮する光触媒発泡壁紙を得ることができる。この光触媒発泡壁紙は、壁紙などの建築内装材として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0077】
1 壁紙
2 基材
3A、3B 非発泡樹脂層
4 発泡樹脂層
5 絵柄層
6 接着剤層
7 フィルム層
8 光触媒層
9 凹凸模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、オレフィン系樹脂及び/又はアクリル系樹脂を含む発泡樹脂組成物を発泡させてなる発泡樹脂層と、フィルム層と、光触媒を含む光触媒層とをこの順に有する光触媒発泡壁紙。
【請求項2】
前記光触媒が、可視光応答型光触媒である請求項1に記載の光触媒発泡壁紙。
【請求項3】
前記フィルム層を構成する樹脂が、オレフィン系樹脂である請求項1又は2に記載の光触媒発泡壁紙。
【請求項4】
前記フィルム層を構成するオレフィン系樹脂が、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂である請求項3に記載の光触媒発泡壁紙。
【請求項5】
前記発泡樹脂組成物が、前記オレフィン系樹脂及び/又はアクリル系樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒発泡壁紙。
【請求項6】
前記発泡樹脂組成物が、前記オレフィン系樹脂及び/又はアクリル系樹脂として、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の光触媒発泡壁紙。
【請求項7】
前記発泡樹脂組成物が、前記オレフィン系樹脂及び/又はアクリル系樹脂として、エチレン単独重合体樹脂を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の光触媒発泡壁紙。
【請求項8】
前記基材と前記発泡樹脂層との間に、非発泡樹脂層Aをさらに有する、請求項1〜7のいずれかに記載の光触媒発泡壁紙。
【請求項9】
前記発泡樹脂層と前記フィルム層との間に、非発泡樹脂層Bをさらに有する、請求項1〜8のいずれかに記載の光触媒発泡壁紙。
【請求項10】
凹凸模様を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の光触媒発泡壁紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−201023(P2012−201023A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68662(P2011−68662)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】