説明

光触媒膜付蛍光ランプの製造方法及び光触媒膜付蛍光ランプ

【課題】光触媒効果が大きく、光触媒膜の強度が大きい光触媒膜付蛍光ランプとその製造方法を提供する。
【解決手段】蛍光管をほぼ垂直に保持して上方から光触媒を分散させたスラリーをフローコート法で塗布、乾燥させて下層膜を形成する。次に、蛍光管の上下を逆にして、同様に上方から光触媒を分散させたスラリーをフローコート法で塗布、乾燥させて上層膜を形成する。この光触媒膜付蛍光ランプは、消臭効果が大きく、光触媒膜の強度が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭効果を有する光触媒膜付蛍光ランプの製造方法及び光触媒膜付蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプのガラス管の外表面に光触媒膜を形成し、蛍光ランプの紫外線で光触媒を励起させて蛍光ランプに付着した有機物を分解するとともに消臭作用も行わせるようにした光触媒膜付蛍光ランプは公知である。
【0003】
このような光触媒膜付蛍光ランプの製造方法として、蛍光ランプの上方から光触媒を分散させたスラリーを流延塗布して乾燥させる、いわゆるフローコート法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、このフローコート法による光触媒膜付蛍光ランプの製造方法では、スラリーが乾燥するまでの間に、流延塗布されたスラリーが自重で下方に移動して上端部で300μm程度、下端部で600μm程度と上下で膜厚に違いがでてしまうという問題がある。
【0005】
ところで、本発明者らの実験によれば、消臭効果は光触媒膜の膜厚に依存し、フローコート法で形成された片端側が薄くなった光触媒膜では、消臭機能が充分に発揮されないことがわかった。
【0006】
すなわち、図4は、光触媒膜の一定量を均一に塗布した20Wの直管型蛍光ランプ4本を並列してその近傍に上部開放容器に収容したホルムアルデヒドの一定量を配置し、これらの外周を密閉容器で覆った後、ホルムアルデヒドを加熱して気化させ、光触媒膜付蛍光ランプを点灯して気中のホルムアルデヒドを分解させたときの1時間後の雰囲気中のホルムアルデヒドの残存率を測定した実験結果である。この実験結果が示すように、光触媒膜の膜厚がほぼ1/4の厚さになるとホルムアルデヒドの残存率はほぼ3倍になってしまう。なお、図4における膜厚ctwt(mg)は、ランプ1本あたりの光触媒膜の重量である。
【0007】
このような問題に対して、同方向に塗り重ねて多層化する方法も考えられるが、このような方法だと、蛍光ランプの一端側の膜厚が厚くなり、膜強度が低下する。
【特許文献1】特開平11−283563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、上記した従来の問題のない消臭機能に優れた光触媒膜付蛍光ランプの製造方法及び該製造方法により得られる光触媒膜付蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の光触媒膜付蛍光ランプの製造方法は、蛍光ランプをほぼ垂直に保持し、その上方より光触媒を分散させたスラリーを流延塗布し乾燥させて下層膜を形成する下層膜形成工程と、下層膜の形成された前記蛍光ランプの上下を逆にしてほぼ垂直に保持し、前記下層膜上に前記スラリーを流延塗布し乾燥させて上層膜を形成する上層膜形成工程とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の光触媒膜付蛍光ランプの製造方法は、請求項1記載の光触媒膜付蛍光ランプの製造方法において、前記光触媒が、平均粒子径1〜100nmの酸化チタンを主成分とすることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3記載の光触媒膜付蛍光ランプは、蛍光ランプの外周に光触媒膜を有する光触媒膜付蛍光ランプにおいて、前記光触媒膜は、前記蛍光ランプ上に形成された下層膜と前記下層膜上に直接被覆された上層膜とからなり、かつ前記下層膜は、前記蛍光ランプの一端側から他端側に向けて膜厚が漸減し、前記上層膜は、前記蛍光ランプの下層膜の膜厚が厚い側の端部から他端側に向けて膜厚が漸増しており、前記光触媒膜の膜厚が前記蛍光ランプの全長に亘ってほぼ等しくされていることを特徴とする。
【0012】
本発明の対象となる蛍光ランプは、蛍光を発する発光部と発光部を包囲する直管型の透明なバルブを具備するものである。
【0013】
本発明における蛍光ランプのバルブの材質は、ソーダライムガラス、鉛ガラスなどが用いられるが透光性であればセラミックスなどであってもよい。
【0014】
本発明における蛍光ランプとしては、蛍光体として3波長発光形蛍光体やカルシウムハロ燐酸塩蛍光体のような白色蛍光体を用いたものが主として対象になるが、近紫外線を発生する蛍光体を用いたものであってもよい。
【0015】
本発明に使用される光触媒としては、例えば酸化チタンからなる可視光反応型光触媒微粒子及び紫外光反応型光触媒微粒子を使用することができる。
【0016】
本発明に使用される光触媒としては、平均粒子径が1〜100nm、好ましくは10〜50nmの酸化チタンの微粒子が適している。平均粒径が1nm未満の酸化チタンは製造が困難であり、平均粒径が100nmを超える酸化チタンでは比表面積が小さくなるため十分な分解活性が得にくくなる。
【0017】
光触媒膜には、光触媒微粒子の微粒子相互間を結着して光触媒膜の機械的強度を高めるために、適当な結着剤が適量混合される。このような結着剤としては、例えばシリコーン樹脂、SiO、ZrO、及びAlなどの一種または複数種が挙げられる。これらの結着剤は、光触媒微粒子の微粒子相互間を良好に結着させ、しかも紫外光及び可視光に対する透過率が高いので光触媒膜の分解活性を阻害しない。
【0018】
結着剤の配合量は、多すぎると光触媒微粒子が結着剤中に埋没されて光触媒作用を発揮し難くなり、また少なすぎると、所要の結着力が得られなくなるので、光触媒微粒子に対して質量比で1〜30%の範囲、好ましくは7〜15%の範囲とする。このように光触媒に結着剤を配合することにより、強い分解活性を維持しながら機械的強度の強い光触媒膜を形成することができる。
【0019】
これらの光触媒及び結着剤は、酢酸ブチルアルコール−ブチルアルコール混合溶媒のような有機溶媒に分散されて3〜5%程度の濃度のスラリーに調整される。
【0020】
蛍光ランプへのスラリーの塗布は、口金取付け前、口金取付け後のいずれでも行うことができるが、口金取付け前にスラリーを塗布すると塗膜が乾燥するまで口金を取付ける工程に移れないので製造が煩雑になる。
【0021】
スラリーの塗布にあたっては、口金部分にスラリーが付着しないように、口金部分に適当なカバーをすることが望ましい。
【0022】
本発明においては、まず、蛍光ランプの一端を、例えば回転する吊り下げ装置で垂直に保持し回転させつつ、その上部からスラリーを流しかけ、外周に満遍にスラリーが塗布されたところで、10〜20分間自然乾燥させて下層膜を形成させる。次に、蛍光ランプの上下を逆にして吊り下げ装置に保持させ、同様の操作でスラリーを塗布して自然乾燥させて上層膜を形成させる。
【0023】
しかる後、そのまま、蛍光ランプを乾燥室に搬入し、150〜180℃で10〜20分間乾燥させて本発明の蛍光ランプが完成する。
【0024】
このようにして製造された蛍光ランプの下層膜及び上層膜は、それぞれスラリーの塗布時に上側だった端部の膜厚が下側だった端部の膜厚のほぼ1/2の厚さであり、上下層が積層された状態で、ほぼ600nm〜1μmの均一な厚さの強度の高い多層膜となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の光触媒膜付蛍光ランプによれば、ランプ両管端部の膜厚差がなく、光触媒膜を二重に積層して厚膜化させたので、光触媒効果を増進させることができ、また、二層化により、光触媒膜の強度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施例に係る光触媒膜付蛍光ランプの製造方法を模式的に示す図である。図2は、光触媒膜塗布後の蛍光ランプ1の両管端部を模式的に示す一部拡大断面図、図3は図2の(a)部及び(b)部の一部拡大断面図である。
【0027】
以下、実施例について説明する。
まず、TiO2微粒子及びSiO2微粒子を10:1の質量比で酢酸ブチルアルコール−ブチルアルコールの混合溶媒に分散させて4%濃度のスラリーを調製した。
【0028】
次に、図1に示すように、放電媒体が封入されて口金1aが両端部に被着された蛍光ランプ1を口金1a上にカバー2で被覆して回転保持装置3に垂直に保持させ、蛍光ランプ1を中心に回転させつつ、ノズル4の先端から光触媒膜を分散させたスラリーを流出させて外面全体にスラリーを塗布した。その後、この状態で15分間回転を続け、乾燥させて、図3に示すような下層膜5aを形成させた。次に、蛍光ランプ1を回転保持装置3から外して上下を逆にして保持させ、同様の操作を繰返して図3に示すような上層膜5bを形成した。
【0029】
しかる後、下層膜5a、上層膜5bの形成された蛍光ランプ1を乾燥装置(図示せず)に搬入し、170℃で15分間乾燥させて光触媒膜付蛍光ランプを得た。
【0030】
得られた光触媒膜付蛍光ランプの両管端部の光触媒膜の膜厚差は最大でも5%以内であり、蛍光ランプ1の全長にわたる膜厚は、750μmでほぼ均一であった。
【0031】
このときの蛍光ランプ1の両管端部における光触媒膜を図2と図3を用いて詳しく説明する。
【0032】
図2に示すように、蛍光ランプ1の全長に亘って、光触媒膜5がコーティングされている。次に、図2における(a)部と(b)部に形成された下層膜5aを、図3を用いて比較すると、(a)部から(b)部にかけて下層膜5aが漸減している。また、上層膜5bについては、(a)部から(b)部にかけて漸増し、蛍光ランプに塗布された光触媒膜5の膜厚としては、全体としてほぼ均一な厚さである。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態の記載内容に限定されるものではなく、構造や材質、各部材の配置等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の光触媒膜付蛍光ランプは、例えば、住宅やオフィスなどの居住空間の照明及び空気浄装置等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例に係る光触媒膜付蛍光ランプの製造方法を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る光触媒膜付蛍光ランプの要部を示す一部拡大断面図である。
【図3】図2の(a)部及び(b)部を拡大して模式的に示す一部拡大断面図である。
【図4】光触媒膜付蛍光ランプの光触媒膜の厚さと消臭効果の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0036】
1…蛍光ランプ、1a…口金、2…カバー、3…回転保持装置、4…ノズル、5…光触媒膜、5a…下層膜、5b…上層膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光ランプをほぼ垂直に保持し、その上方より光触媒を分散させたスラリーを流延塗布し乾燥させて下層膜を形成する下層膜形成工程と、
下層膜の形成された前記蛍光ランプの上下を逆にしてほぼ垂直に保持し、前記下層膜上に前記スラリーを流延塗布し乾燥させて上層膜を形成する上層膜形成工程と
を有することを特徴とする光触媒膜付蛍光ランプの製造方法。
【請求項2】
前記光触媒は、平均粒子径1〜100nmの酸化チタンを主成分とすることを特徴とする請求項1記載の光触媒膜付蛍光ランプの製造方法。
【請求項3】
蛍光ランプの外周に光触媒膜を有する光触媒膜付蛍光ランプにおいて、
前記光触媒膜は、前記蛍光ランプ上に形成された下層膜と前記下層膜上に直接被覆された上層膜とからなり、かつ前記下層膜は、前記蛍光ランプの一端側から他端側に向けて膜厚が漸減し、前記上層膜は、前記蛍光ランプの下層膜の膜厚が厚い側の端部から他端側に向けて膜厚が漸増しており、前記光触媒膜の膜厚が前記蛍光ランプの全長に亘ってほぼ等しくされていることを特徴とする光触媒膜付蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−92968(P2006−92968A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278249(P2004−278249)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】