説明

光触媒装置

【課題】全体的な光触媒の活性効率を向上させた光触媒装置を適切に実現する。
【解決手段】互いに向かい合う第1の面S1及び第2の面S2と、第1の面S1及び第2の面S2と略直交して立体を形成させる第3の面S3と、第1の面S1又は第2の面S2のうちの少なくとも一方の面S1に設けられた複数の突起部44a、44b、44c、44dと、を有し、第3の面S3に光が入射される基盤部材40a、40b、40c、40dと、少なくとも一方の面S1側に設けられ、第3の面S3に入射された光が複数の突起部44a、44b、44c、44dにより回折されて照射される光触媒層42a、42b、42c、42dと、をそれぞれ備え、第1の面S1及び第2の面S2と略直交する方向に一列に配置される複数の光触媒ユニット100a、100b、100c、100dを備えた光触媒装置200aを構成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
居住空間や作業空間における消臭(生活悪臭の低減、新建材からのVOC(Volatile Organic Compounds)ガス分解等)、抗菌(大腸菌、黄色ブドウ球菌、MRSA(Methicillin Resistant Staphylococcus Aureus)等に対する抗菌性)、防汚(手垢、指紋、煙草のヤニ汚れ等の低減)を目的として、光触媒物質により構成される光触媒装置が用いられている。尚、光触媒装置とは、バンドギャップ以上のエネルギーを有した光を照射してスーパーオキシドアニオンラジカル(O)やヒドロキシルラジカル(OH)といった活性酸素を誘起させるものである。この活性酸素によって、居住空間や作業空間に漂う悪臭や汚れ等の原因となる有機物が水(HO)又は二酸化炭素(CO)に分解され、前述した消臭、抗菌、防汚の目的を達成することができる。
【0003】
光触媒物質としては、酸化チタン等の酸化物半導体が一般的に用いられるが、この酸化物半導体は紫外線領域(波長200nm〜波長360nm)の光いわゆる紫外線が照射されたときに光触媒機能を発揮させる紫外光応答型光触媒物質である。このため、光触媒装置に向けて活性酸素を誘起させるべく紫外線を照射させる光源としては、主にUV(Ultraviolet)ランプが用いられている。
【0004】
例えば、低温雰囲気でも効果的に光触媒作用を得ることができる蛍光ランプ、光触媒装置、照明装置および物品が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
一方、UVランプ等の紫外線を放射させるための光源の中には、可視光領域(例えば波長380nm〜波長770nm)の光を放射するものが多い。そのような光源を利用する場合、エネルギー利用効率の観点から、可視光領域の光の有効利用が望まれている。そこで、図10に示す光触媒装置500のように、紫外線のみならず、自然光(太陽光)や安価な光源(一般の蛍光灯や白熱灯)から放射される可視光を照射させても光触媒機能を発揮することが可能な可視光応答型光触媒物質を用いた光触媒装置が開発されている。
【特許文献1】特開平9−129184号公報(第1−2頁、第1−13図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の光触媒装置は、紫外線や可視光の照射を待って、紫外線や可視光が照射された部分のみに光触媒機能を発揮させる受動的な使われ方をするものである。従って、光触媒装置が備える可視光応答型光触媒物質全てにわたって均一に紫外線や可視光が照射されず、光触媒装置全体の活性効率が低いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するための主たる本発明の光触媒装置は、互いに向かい合う第1の面及び第2の面と、前記第1の面及び前記第2の面と略直交して立体を形成させる第3の面と、前記第1の面又は前記第2の面のうちの少なくとも一方の面に設けられた複数の突起部と、を有し、前記第3の面に光が入射される基盤部材と、少なくとも前記一方の面側に設けられ、前記第3の面に入射された前記光が前記複数の突起部により回折されて照射される光触媒層と、をそれぞれ備え、前記第1の面及び前記第2の面と略直交する方向に一列に配置される複数の光触媒ユニットを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、全体的な光触媒の活性効率を向上させた光触媒装置を適切に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[実施例1]
===光触媒ユニットの構成===
本発明に係る光触媒ユニット100の構成を説明する。光触媒ユニット100は、可視光の自然な入射を待って光触媒機能を発揮させる受動的な使われ方をするものではなく、光触媒層42に対して積極的に可視光を当てて能動的に光触媒機能を発揮させる使われ方をするものである。具体的には、光源10により照射した可視光領域の光により光触媒層42に活性酸素を誘起させる。この活性酸素によって、居住空間や作業空間に気流にのって漂う有機物が水(HO)又は二酸化炭素(CO)に分解され、消臭、抗菌、防汚の目的を実現することができる。このような光触媒ユニット100は、空気清浄機、加湿器、エアコン等に搭載する部材として好適である。
【0009】
光触媒ユニット100の構成は、図1Aに示す平面図や図1Bに示す側面図に示されているように、光源10と、シート光SLを生成するためのシリンドリカルレンズ20、30と、光触媒層42が例えば積層等されて設けられている基盤部材40と、を備えて構成される。以下では、図2、図3を適宜参照しつつ、図1をもとに光触媒ユニット100の構成を逐次説明していく。尚、図2は後述のエンボス構造の基盤部材40の製造工程を示す図であり、図3は後述のシート光SLを生成する光学系について説明する図である。また、図1A、図1Bに示すX−Y−Z座標軸は、下面S2から上面S1へ向かう下面S2の法線方向をZ軸の正方向とし、側面S3から側面S5へ向かう側面S3の法線方向をX軸の正方向とし、側面S4から側面S6へ向かう側面S4の法線方向をY軸の正方向としている。図3に示すX−Y−Z座標軸についても同様である。
【0010】
===光触媒層===
光触媒ユニット100の一部を構成する光触媒層42について説明する。
光触媒層42は、可視光領域(例えば波長380nm以上波長780nm未満、基準波長400nmを超え770nm以下)において高い光触媒活性を持つ可視光応答型光触媒物質によって構成される。尚、可視光応答型光触媒物質とは、アナターゼ型、ルチル型、又はそれらの混晶である酸化チタン(TiO)を主成分とした紫外線応答型光触媒物質に対して、その結晶の酸素原子(O)の一部を窒素原子(N)で置換したもの、その結晶の格子間に窒素原子をドーピングしたもの、その結晶の多結晶集合体の粒界に窒素原子を配したもの、のうち少なくとも1種類以上のもので構成される。
【0011】
可視光応答型光触媒物質のベース材料となる紫外線応答型光触媒物資は、前述した酸化チタンの他に、酸化タングステン(WO)、酸化鉄(Fe)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化ニオブ(Nb、Nb)等の各種酸化物や、硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)等の硫化物、若しくはリン化ガリウム(GaP)、ガリウムヒ素(GaAs)、セレン化カドミウム(CdSe)等のうち少なくとも1種類以上の成分で構成してもよい。さらに、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)等の貴金属や、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)、コバルト(Co)等の遷移金属、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ルテチウム(Lu)等の希土類元素のうち少なくとも1種類を組み合わせもよい。これによって、光触媒活性がより向上することが知られている。
【0012】
本実施形態では、前述したとおり光触媒活性が高い酸化チタンを主成分として、紫外線応答型光触媒物質などの可視光応答型光触媒物質が構成されるものとする。尚、酸化チタンは水に溶けない性質があるので、可視光応答型光触媒物質をアルコール等に混合させて熱処理することで、基盤部材40に光触媒層42として形成させる。光触媒層42は、例えば単層とされてもよく、また、複数の層を有する例えば積層とされてもよい。
【0013】
===エンボス構造(凹凸構造)===
基盤部材40は、図1A、図1Bに示すように、互いに向かい合って平行な上面S1(第1の面)及び下面S2(第2の面)と、上面S1及び下面S2と略直交しており上面S1及び下面S2の周囲を取り囲む複数(4つ)の側面S3〜S6(第3の面)と、を有しており、例えば立体である直方体をした略板状本体を備えている。尚、基盤部材40の素材としては、本実施形態では透明なガラス素材を採用するが、その他にアクリル素材等の光を透過する素材であればよい。
【0014】
基盤部材40の上面S1の方には面全体にわたって配設された複数の突起部44を有する例えばエンボス構造(凸凹構造)を備えている。尚、この場合、基盤部材40の厚さ方向(Z軸方向)の強度を鑑みて、基盤部材40の下面S2の方を堅い板状の素材で固定することで、厚さ方向の強度を高くするのが好ましい。突起部44は、例えば略円柱状をした突出部44として形成されている。このように、基盤部材40の上面S1に設けた複数の突起部44を有する例えばエンボス構造によって、複数の突起部44による凸凹の分だけ、光触媒層42を形成させる基盤部材40の表面積が拡大され、単位面積当たりの光触媒活性を向上させることができる。勿論、基盤部材40の上面S1の方ではなく下面S2の方に複数の突起部44を設けて光触媒層42を形成させても、上記と同様の効果が得られる。
【0015】
例えばエンボス構造は、高精度な微細加工が可能な所謂電鋳技術によって実現できる。図2は、その電鋳技術による例えばエンボス構造の製造工程を説明する図である。同図に示すように、まず、エンボス構造などの凹凸構造をした基盤部材40の原型モデル142を製作し、更に原型モデル142をもとに電鋳母型となる入槽モデル144を製作する。そして、入槽モデル144の表面に導電部材146を塗布させる等の前処理を施した上で、電解質溶液が入った電鋳槽150に入れて電鋳処理を施す。尚、電鋳処理とは、目的の金属(今回の場合はガラス素材)のイオンを含んだ電解質溶液に電流を流して当該目的の金属を入槽モデル144の表面に析出させる処理のことである。この電鋳処理を実行した結果、入槽モデル144に型組されて基盤部材40が形成される。そして、入槽モデル144から基盤部材40を乖離することで、例えばエンボス構造の基盤部材40が得られる。
【0016】
===光源===
光触媒ユニット100に対して積極的にUVランプ光を照射させる方式の場合、効率の悪さから、無駄なエネルギーが失われる。そこで、本実施形態では、この欠点を補完する目的として、従来のUVランプと対比して、低コスト、長寿命且つエネルギー変換効率の高いレーザ光(LASER:light amplification by stimulated emission of radiation)および/またはLED光(LED:light emitting diode)の光源10を、光触媒ユニット100に照射させる光源として採用している。エネルギー変換効率の観点から言えば、次世代光ディスクの「HD DVD」(登録商標)規格や「Blu−ray Disc」(登録商標)規格で採用された青紫色レーザ光(例えば波長380nm以上450nm以下、基準波長405nm)を出射する青紫色半導体レーザ素子が好ましい。又は、エネルギー変換効率とコスト面とのバランスを考慮して、「DVD」(登録商標)規格で用いられる赤色レーザ光(波長630nm〜波長685nm)を出射する赤色半導体レーザ素子や、「CD」(「Compact Disc」(登録商標)の略称)規格で用いられる赤外線レーザ光(波長765nm〜波長830nm)を出射する赤外半導体レーザ素子を用いても良い。また、例えば波長380nm〜波長830nmの帯域のいずれかの領域波長を出射するLED発光素子や、基準波長400nmを超え770nm以下の帯域のいずれかの領域波長を出射するLED発光素子であってもよい。
【0017】
===シート光===
光源10から出射させる光は、基盤部材40の複数(4つ)の側面S3〜S6のうちいずれか一つに対して入射される。本実施形態の場合では、基盤部材40の側面S3を光の入射面としており、光源10から出射した光をシート光SL(帯状光束)に変形(整形)した上で、基盤部材40の側面S3に入射させる必要がある。そこで、図1A、図1B、図3に示すように、複数(2つ)のシリンドリカルレンズ20、30(第1のレンズ、第2のレンズ)を組み合わせて、光をシート光SLに変形させるための光学系が、光源10と基盤部材40との間に設けられている。尚、図3では、シート光の生成を説明する都合上、光源10と、2つのシリンドリカルレンズ20、30と、基盤部材40との間に空間が存在する場合を示しているが、実際には光触媒装置のコンパクト化や光の有効利用のために、図1A、図1Bに示すように、光源10と2つのシリンドリカルレンズ20、30と基盤部材40とは、それぞれ接着材で固定されているか若しくは補助的な部品を用いて一体化されている。
【0018】
詳述すると、シリンドリカルレンズ20、30は、例えば円柱を円柱軸の方向に真っ二つに割った形をした一方向のみに曲率を持つレンズである。本実施形態の場合、図3に示すように、シリンドリカルレンズ20の断面(平面)の方に光源10からの光を入射させる。この配置によって、シリンドリカルレンズ20は、光源10から出射した光を拡大させる機能を持つ。一方、シリンドリカルレンズ30は、自身の曲面がシリンドリカルレンズ20の曲面と向かい合うように配置する。この配置によって、シリンドリカルレンズ30は、シリンドリカルレンズ20により拡大されたレーザ光をシート光SLに変形させる機能を持つ。尚、シリンドリカルレンズ20、30両者の焦点距離とそれぞれの配置を変えることによって、シート光SLの幅Hや厚さTを基盤部材40の側面S3に応じた任意の長さに調整することができる。
【0019】
以上のように、本実施形態によれば、シート光SLを採用したことによって、簡易な光学系と最小限の焦点距離を実現し、光触媒ユニット100のコンパクト化を図ることができる。尚、シート光SLを生成するための光学系としては、上記のとおりシリンドリカルレンズ20、30を用いる手法の他に、例えば、ポリゴンミラーやガルバノミラーを用いて、光を当該ミラーで振って空間をスキャニングし、擬似的にシート光SLを生成する手法を採用してもよい。
【0020】
===フレネル回折===
シート光SLを基盤部材40の側面S3に入射させると、シート光SLは光触媒ユニット100の側面S3から側面S5(X軸の正方向)に向かって進行する。このシート光SLの進行過程で、上面S1に設けられた例えばエンボス構造の各突起部44の下面S2側とされる根元部近傍を光SLが通過すると、フレネル回折が誘発される。例えば、側面S3から側面S5に向かって進行するシート光SLは、複数の突起部44により例えば基盤部材40の下面S2側から上面S1側に向けて回折する。この結果、例えば複数の突起部44による回折光(面状光束)が、複数の突起部44を覆う光触媒層42に照射され、光触媒層42に活性酸素が誘起される。例えば、基盤部材40は、光触媒層42に向けて上面S1からの面状光束を照射させる面発光体として機能する。
【0021】
また、光触媒ユニット100の側面S3から側面S5(X軸の正方向)に向けて進行するシート光SLの進行過程において、上面S1に設けられた例えばエンボス構造の各突起部44の根元部近傍を光SLが通過すると、例えばフレネル回折が誘発される。例えば、側面S3から側面S5に向かって進行するシート光SLは、複数の突起部44の根元部により上面S1側の方向(略Z軸の正方向)に回折する。この結果、例えば複数の突起部44による回折光が、複数の突起部44を覆う光触媒層42に照射され、光触媒層42に活性酸素が誘起される。
【0022】
以上のように、例えばエンボス構造などの凹凸構造に起因したフレネル回折を利用することで、光触媒層42への光の照射に際して特別な光学系を設ける必要がなく、光触媒ユニット100のコンパクト化を実現することができる。
【0023】
===光触媒装置の全体構成===
光触媒ユニット100を用いた光触媒装置の例としては、例えば、空気清浄機、加湿器、エアコン等が対象となるが、以下の説明では空気清浄機を採りあげる。尚、空気清浄機とは、吸気口を通過した空気に含まれる悪臭や汚れ等の原因となる有機物を水(HO)又は二酸化炭素(CO)に分解し、その結果として浄化された空気を排気口へ排出する機能を有した装置である。
【0024】
図4は、空気清浄機とした場合の光触媒装置200aの内部構造を示した図である。同図4に示すように、光触媒装置200aは、吸気口と排気口とを有する箱状の筐体6と、筐体6の吸気口に取り付ける吸気フィルタ2と、筐体6の排気口に取り付ける排気ファン4と、筐体6の吸気口から排気口に至る空気経路上に設けた複数(4つ)の光触媒ユニット100a〜100dと、によって主に構成されている。尚、図1に示した例では、4つの光触媒ユニット100a〜100dを有する場合であるが、筐体6の内部の収容スペースに応じた光触媒ユニット100の個数であればよい。
【0025】
尚、同図に示すX−Y−Z座標軸は、紙面右方向をX軸の正方向、紙面裏から紙面表に向かう方向をY軸の正方向、紙面上方向をZ軸の正方向と定義している。尚、X軸の正方向は基盤部材40の側面S4から側面S6へ向かう側面S4の法線方向でもあり、Y軸の正方向は側面S3から側面S5へ向かう側面S3の法線方向でもあり、Z軸の正方向は基盤部材40の下面S2から上面S1へ向かう下面S2の法線方向でもある。図5〜図9に示すX−Y−Z座標軸についても同様である。
【0026】
筐体6は、Z軸の正方向側にある上面に吸気口が配設されており、その吸気口から吸気フィルタ2を介して筐体6の内部(Z軸の負方向)に向けて空気が吸気される。尚、吸気フィルタ2は、吸気口から筐体6の内部に吸気された空気に含まれる比較的大きな塵や埃を除去するものである。また、筐体6は、Z軸の負方向側にある下面に排気口が配設されており、その排気口から排気ファン4によって浄化された空気を排気させる。尚、排気ファン4は、吸気フィルタ2や、さらには光触媒装置200aによって浄化された空気を排気口から排気させるために回転駆動するファンである。
【0027】
筐体6の内部では、光触媒ユニット100a〜100dは、吸気口側に設けた光透過性の仕切り板50aと排気口側に設けた光透過性の仕切り板50eの間の空間内に、上面S1及び下面S2と略直交する方向(Z軸方向)に、一列に配置されている。尚、基盤部材40a〜40dそれぞれの側面S4、S6は筐体6のY軸側の側面にそれぞれ固着されることで、筐体6内部での光触媒ユニット100a〜100dの上記配置が維持されている。このような配置によって、光触媒ユニット100a〜100dそれぞれの面発光を互いに利用することができ、光触媒装置200a全体としての光の有効利用を図ることができる。また、この配置によって、光触媒装置200aのコンパクト化を実現しつつ、光触媒ユニット100a〜100dそれぞれに対して吸気された空気を満遍なく行き渡らせることができる。
【0028】
また、4つの光触媒ユニット100a〜100dのうち隣り合う2つの光触媒ユニット100として例えば光触媒ユニット100a、100bは、一方の光触媒ユニット100bの上面S1と他方の光触媒ユニット100aの下面S2とが互いに向かい合うべく配置されること、例えば、光触媒ユニット100a〜100d全ての上面S1及び下面S2が平行となる配置が好ましい。尚、光触媒ユニット100b、100cの配置と、光触媒ユニット100c、100dの配置についても同様である。
【0029】
この配置によって、例えば、光触媒ユニット100bの上面S1からの面発光が光触媒ユニット100aの下面S2に向けて照射される。例えば、光触媒ユニット100aの光触媒層42aは、光触媒ユニット100aの上面S1からの面発光のみならず、光触媒ユニット100bの上面S1からの面発光が照射されるので、光触媒層42bでの光の減衰を考慮しなければ2倍の光エネルギーを得ることができる。光触媒ユニット100b、100cの関係と、光触媒ユニット100c、100dの関係についても同様のことが言える。
【0030】
[実施例2]
図5は、本発明の第二実施形態に係る光触媒装置200bの内部構造を示した図である。図4に示した筐体6内部の気流の流れが得られる光触媒装置200aの他に、図4に示した自由な気流の流れに対して光透過性の仕切り板50b〜50dを追加して一定の制限を課した図5に示す光触媒装置200bが考えられる。光触媒装置200bの場合であっても光触媒装置200aと同様の効果を得ることができる。
【0031】
[実施例3]
図6は、本発明の第三実施形態に係る光触媒装置200cの内部構造を示した図である。図4に示した筐体6内部の気流の流れが得られる光触媒装置200aの他に、図4に示した自由な気流の流れに対して光透過性の仕切り板50b〜50dを追加して一定の制限を課した図6に示す光触媒装置200cが考えられる。例えば、図6に示す気流の流れは、吸気口から排気口へとジグザグに気流が流れて光触媒ユニット100a〜100dそれぞれの上面S1並びに下面S2上全てに満遍なく気流が流れるようにするために、仕切り板50a〜50eが、筐体6の一方(X軸の正方向側)の側面と他方(X軸の負方向側)の側面の互い違いに気流の流れ道を設けるように配置されている。光触媒装置200cの場合であっても光触媒装置200aと同様の効果を得ることができる。
【0032】
[実施例4]
図7は、本発明の第四実施形態に係る光触媒装置202の内部構造を示した図である。尚、図4〜図6に示した光触媒装置200a〜200cと相違する点は、基盤部材40a〜40dの上面S1及び下面S2の双方に突起部44を設けて光触媒層42a〜42dを形成させた両面型の光触媒ユニット102a〜102dを用いた点である。このように、両面型の光触媒ユニット102a〜102dを採用することで、単位面積当たりの光触媒活性を更に向上させることができる。
【0033】
また、光触媒ユニット102a〜102dは、上面S1及び下面S2と略直交する方向(Z軸方向)一列に、且つ、隣り合う2つの光触媒ユニット102として例えば光触媒ユニット102a、102bは、一方の光触媒ユニット102bの上面S1と他方の光触媒ユニット102aの下面S2とが互いに向かい合うべく配置される。光触媒ユニット102b、102cの配置と、光触媒ユニット102c、102dの配置についても同様である。
【0034】
以上の配置により、光触媒ユニット102a〜102dの互いに向かい合う面同士では一方の光触媒ユニットの面発光が他の光触媒ユニットの光触媒活性に利用されるという光の相乗効果が得られ、光触媒装置202全体としての光触媒の活性効率を向上させることができる。例えば、光触媒ユニット102aの下面S2からの面発光は、光触媒ユニット102aの下面S2に形成された光触媒層42aのみならず、光触媒ユニット102bの上面S1に形成された光触媒層42bに照射される。また、光触媒ユニット102bの上面S1からの面発光は、光触媒ユニット102bの上面S1に形成された光触媒層42bのみならず、光触媒ユニット102aの下面S1に形成された光触媒層42aに照射される。このように、光触媒ユニット102a、102b間で光の相乗効果が図られる。
【0035】
[実施例5]
図8は、本発明の第五実施形態に係る光触媒装置204の内部構造を示した図である。尚、図4〜図6に示した光触媒装置200a〜200cと相違する点は、光触媒装置204が具備する複数(4つ)の光触媒ユニット104a〜104d自体には光源が備わっておらず、1つの光源10を共用化して用いる点である。尚、光源10の共用化を図るために、光触媒装置204においては、光源10から出射した光を拡大させるビームエキスパンダ70(第3のレンズ)が、光源10から複数(4つ)の光触媒ユニット104a〜104dがそれぞれ具備するコリメータレンズ20a〜20dに至る光路上に配置されている。
【0036】
例えば、ビームエキスパンダ70によって拡大された光が、コリメータレンズ20a〜20dの各入射面にそれぞれ入射される。尚、ビームエキスパンダ70は、凹レンズと凸レンズを組み合わせた光学系として実現される。以上のように、1つの光源10を共用化したことに伴って、光触媒装置200a〜200cと同等の機能を具備し、且つ、光触媒装置200a〜200cと対比してシンプルで且つコンパクトな構成となる光触媒装置204を得ることができる。
【0037】
尚、光触媒ユニット104a〜104dは、本発明の第四実施形態に係る光触媒装置202と同様に、基盤部材40a〜40dの上面S1及び下面S2の双方に突起部44を設けて光触媒層42a〜42dを形成させた両面型にしてもよい。この結果、単位面積あたりの光触媒活性を向上できる。
【0038】
[実施例6]
図9は、本発明の第六実施形態に係る光触媒装置206の内部構造を示した図である。尚、図4〜図6に示した光触媒装置200a〜200cと相違する点は、本発明の第五実施形態と同様に、光触媒装置206が具備する複数(4つ)の光触媒ユニット104a〜104d自体には光源が備わっておらず、1つの光源10を共用化して用いる点である。但し、本発明の第五実施形態とは異なり、光源10の共用化を図るために、光源10より出射した光を傾き調整可能なミラー面で光路を切り替えて複数(4つ)の光触媒ユニット104a〜104dが個々に備えるコリメータレンズ20a〜20dに順に入射させていくMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)光スイッチ80を具備した点である。
【0039】
尚、MEMSとは、半導体プロセス技術を利用して電子と機械機構を融合させた微小な電気機械部品を実現する技術のことであり、この技術によって光路を切り替えるミラー部の小型化を図ったものがMEMS型光スイッチ80である。MEMS型光スイッチ80は、例えば略矩形状のフレームと一体化して形成されるマイクロミラー部と、マイクロミラー部の反射面とは反対に設けた電磁コイルと、電磁コイルに電流を流した際にマイクロミラー部を揺動させる方向にローレンツ力が生じるような磁界を発生させる永久磁石と、によって実現される。
【0040】
以上のように、1つの光源10を共用化したことに伴って、光触媒装置200a〜200cと同等の機能を具備し、且つ、光触媒装置200a〜200cと対比してシンプルで且つコンパクトな構成となる光触媒装置206を得ることができる。また、MEMS型光スイッチ80を用いたことによって、光源10から連続光ではなく間欠的に光を照射させる仕組みになるが、光を拡大する必要がなくなる分、より高い光エネルギー密度の光を入射することが可能となる。これによって、光触媒装置206全体の光触媒活性を向上させることができる。
【0041】
ところで、MEMS型光スイッチ80以外にも、光ファイバやプリズムを機械的に移動させて光路のスイッチングを行う機械型光スイッチや、光導波路型光スイッチを採用してもよい。尚、光導波路型光スイッチとは、シリコンウエハーやガラス基板上に複数本の石英系光導波路が形成されたPLC(Planar Lightwave Circuit)によって、分岐、合波、スイッチング等の処理を光のままで行う光スイッチのことである。
【0042】
また、光触媒ユニット104a〜104dは、本発明の第四実施形態に係る光触媒装置202と同様に、基盤部材40a〜40dの上面S1及び下面S2の双方に突起部44を設けて光触媒層42a〜42dを形成させた両面型にしてもよい。この結果、単位面積あたりの光触媒活性を向上できる。
【0043】
尚、仕切り部(仕切り板)50a〜50eの各表面や筐体6の内壁面に光触媒層を塗布しておくことで、光触媒装置200a、202b、200c、202、204、206全体としての光の利用効率を更に向上できることを付言しておく。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、前述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1A】本発明に係る光触媒ユニットの平面図である。
【図1B】本発明に係る光触媒ユニットの側面図である。
【図2】本発明に係るエンボス構造を持つ基盤部材の製造工程を示す図である。
【図3】本発明に係るシート光を生成するための光学系を示す図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る光触媒装置の内部構造を示した図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る光触媒装置の内部構造を示した図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る光触媒装置の内部構造を示した図である。
【図7】本発明の第四実施形態に係る光触媒装置の内部構造を示した図である。
【図8】本発明の第五実施形態に係る光触媒装置の内部構造を示した図である。
【図9】本発明の第六実施形態に係る光触媒装置の内部構造を示した図である。
【図10】従来の光触媒装置の機能を説明するための図である。
【符号の説明】
【0046】
2 吸気フィルタ
4 排気ファン
6 筐体
10 光源
20 シリンドリカルレンズ(第1のレンズ)
30 シリンドリカルレンズ(第2のレンズ)
40 基盤部材
42 光触媒層
44 突出部(突起部)
50 仕切り板(仕切り部)
70 ビームエキスパンダ(第3のレンズ)
80 MEMS型光スイッチ(光スイッチ)
100、102、104 光触媒ユニット
200a、202b、200c、202、204、206、500 光触媒装置
142 原型モデル
144 入槽モデル
146 導電部材
150 電鋳槽
S1 上面(第1の面)
S2 下面(第2の面)
S3、S4、S5、S6 側面(第3の面)
SL シート光(光)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに向かい合う第1の面及び第2の面と、前記第1の面及び前記第2の面と略直交して立体を形成させる第3の面と、前記第1の面又は前記第2の面のうちの少なくとも一方の面に設けられた複数の突起部と、を有し、前記第3の面に光が入射される基盤部材と、
少なくとも前記一方の面側に設けられ、前記第3の面に入射された前記光が前記複数の突起部により回折されて照射される光触媒層と、
をそれぞれ備え、前記第1の面及び前記第2の面と略直交する方向に一列に配置される複数の光触媒ユニットを備えたことを特徴とする光触媒装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光触媒装置において、前記略直交する方向に一列に配置された複数の前記光触媒ユニットのうち隣り合う2つの前記光触媒ユニットは、一方の前記光触媒ユニットの前記第1の面と他方の前記光触媒ユニットの前記第2の面とが互いに向かい合うべく配置されることを特徴とする光触媒装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光触媒装置において、前記複数の突起部は、前記第1の面及び前記第2の面の双方に備わっていることを特徴とする光触媒装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光触媒装置において、前記光をシート光に変形させて出射させる光学系を備えることを特徴とする光触媒装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光触媒装置において、
前記光学系は、
前記複数の光触媒ユニット毎に配設され、前記光を出射する光源と、
前記複数の光触媒ユニット毎に配設され、前記光源より出射した前記光を拡大させる第1のレンズと、
前記複数の光触媒ユニット毎に配設され、前記第1のレンズによって拡大された前記光を前記シート光に変形させる第2のレンズと、
を備えることを特徴とする光触媒装置。
【請求項6】
請求項4に記載の光触媒装置において、
前記光学系は、
前記複数の光触媒ユニットに共用化され、前記光を出射する光源と、
前記複数の光触媒ユニット毎に配設され、前記光源より出射した光を拡大させる第1のレンズと、
前記複数の光触媒ユニット毎に配設され、前記第1のレンズによって拡大された前記光を前記シート光に変形させる第2のレンズと、
を備えることを特徴とする光触媒装置。
【請求項7】
請求項4に記載の光触媒装置において、
前記光学系は、
前記複数の光触媒ユニットに共用化され、前記光を出射する光源と、
前記複数の光触媒ユニット毎に配設され、前記光源より出射した前記光を拡大させる第1のレンズと、
前記複数の光触媒ユニット毎に配設され、前記第1のレンズによって拡大された前記光を前記シート光に変形させる第2のレンズと、
前記複数の光触媒ユニットに共用化され、前記光源から出射した前記光を、前記複数の光触媒ユニットがそれぞれ備える前記第1のレンズに入射させる第3のレンズと、
を備えることを特徴とする光触媒装置。
【請求項8】
請求項4に記載の光触媒装置において、
前記光学系は、
前記複数の光触媒ユニットに共用化され、前記光を出射する光源と、
前記複数の光触媒ユニット毎に配設され、前記光源より出射した前記光を拡大させる第1のレンズと、
前記複数の光触媒ユニット毎に配設され、前記第1のレンズによって拡大された前記光を前記シート光に変形させる第2のレンズと、
前記複数の光触媒ユニットに共用化され、前記光源より出射した前記光の光路を切り替えて前記複数の光触媒ユニットがそれぞれ備える前記第1のレンズに入射させる光スイッチと、
を備えることを特徴とする光触媒装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−148654(P2009−148654A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326361(P2007−326361)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506243529)三洋メディアテック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】