説明

光触媒部材の再生方法

【課題】光触媒部材をエネルギー的に効率よく再生する。
【解決手段】塩素系または酸素系の酸化剤を含んだ洗浄液で光触媒部材を洗浄した後に放置し、その後、この光触媒部材を水ですすいだ後に乾燥させる。前記洗浄液で光触媒部材を洗浄する前に前記光触媒部材を水で洗浄するとよい。前記塩素系の酸化剤としては次亜塩素酸ナトリウムが挙げられる。前記酸素系の酸化剤としては過炭酸ナトリウムまたは過酸化水素が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光触媒部材の汚れ成分を除去して光触媒部材を再生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン光触媒は空気中や水中の有害物質を分解する浄化作用や抗菌作用、防汚作用を有することが知られている。半導体としての性質を有する前記光触媒にそのバンドギャップ以上のエネルギーを有する光を照射すると、価電子帯から伝導体に電子が励起され、電子−正孔対が生成する。これらが光触媒の表面に拡散して、表面吸着水と反応し、OHラジカルなどの活性酸素種が生成する。活性酸素種や正孔などが光触媒表面に吸着または衝突した有害物質を分解する。酸化チタンのバンドキャップは約3eVであり、約400nm以下の波長の光を照射することで光励起反応が起こり、有害物質を分解することができる。
【0003】
光触媒を利用した装置としては例えば特許文献1に開示された空気調和装置が挙げられる。この空気調和装置は熱交換器の構成要素である複数のフィン及び冷媒流通管の表面に光触媒を設け、この光触媒にブラックライトからの紫外線による光励起反応を起こさせ、煙草のヤニ(タール)を分解除去している。
【特許文献1】特開平10−249209号公報(段落0055〜0066)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化チタン光触媒部材を空気清浄装置や脱集装置に利用して、タバコから発するガスやヤニを除去した場合、前記光触媒部材の表面にヤニ成分などが付着し、前記部材の表面が被覆されていると光触媒による有害物質の分解能力が低下する。一旦、ヤニが付着しても、例えば特許文献1の空気調和装置のように清浄な環境中で紫外光を照射すればヤニ成分は分解し、有害物質の分解能力が回復する。
【0005】
しかしながら、前記空気調和装置は、ヤニを除去する場合でも数日間にわたって紫外光を照射しなければならず、メンテナンス性に劣る。ヤニが付着した光触媒部材を一旦水で洗浄し、前記部材の表面に付着したヤニを多く除去してから、紫外光を照射することで性能回復までの時間を短縮できる。その場合でも、半日程度、紫外光を照射する必要があり、光照射のためにエネルギーやスペースを確保しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、前記課題を解決するための光触媒部材の再生方法は、塩素系または酸素系の酸化剤を含んだ洗浄液で光触媒部材を洗浄した後に放置し、その後、この光触媒部材を水ですすいだ後に乾燥させる。光触媒部材の表面に残留している汚れ成分が前記酸化剤によって汚れ成分が酸化分解される。酸化分解された汚れ成分は水によって洗浄除去される。
【0007】
前記光触媒部材の再生方法において、前記洗浄液で光触媒部材を洗浄する前に前記光触媒部材を水で洗浄するとよい。光触媒部材に物理吸着した汚れ成分が洗浄液中に拡散し、汚れ成分が除去されやすくなる。
【0008】
前記光触媒部材の再生方法において、前記酸素系の酸化剤を含んだ洗浄液を用いる場合、前記洗浄液を加熱するようにするとよい。塩素系の酸化剤を含んだ洗浄液と同等の洗浄効果が得られる。
【0009】
前記塩素系の酸化剤としては次亜塩素酸ナトリウムが挙げられる。前記酸素系の酸化剤としては過炭酸ナトリウムまたは過酸化水素が挙げられる。以上の酸化剤の供給源としては一般家庭で使用される市販の酸素系または塩素系の洗剤が挙げられる。前記供給源は入手及び取り扱いが容易である。
【発明の効果】
【0010】
したがって、以上の発明によれば光照射法を適用するに必要がないので光触媒部材をエネルギー的に効率よく再生できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
鋭意研究の末、従来の光照射法を用いなくても酸化チタン光触媒部材の表面に付着した汚れ成分を除去して前記光触媒部材の性能を回復させる方法が創作される至った。以下、発明に係る光触媒部材の再生方法について説明する。尚、発明で対象とする光触媒部材は酸化チタン光触媒に限定されず、酸化チタンに貴金属を担持した複合化合物の光触媒や親水性を有した他の光触媒部材も含む。
【0012】
発明に係る光触媒部材の再生方法は酸化剤を含んだ洗浄液で光触媒部材を洗浄した後に放置し、その後、この光触媒部材を水ですすいだ後に乾燥させる。
【0013】
前記酸化剤を含んだ洗浄液は塩素系または酸素系の酸化剤を含んだものが用いられる。塩素系または酸素系の酸化剤以外のものを含んだ洗浄液例えば過硫酸塩、過ホウ酸塩を含んだ洗浄液(例えばスモーカーズポリデントの水溶液)では光触媒部材の浸漬時間を1日(24時間)にすると浸漬時間が1時間である場合と比べるとヤニ成分に起因する色や臭いが低減するものの完全に脱色及び脱臭できないことが試験的に明らかとなっている。また、リモネン及び界面活性剤を含んだ洗浄液(例えば、オレンジソル製のディゾルビット(登録商標)やダイキョー製のオレンジエース27)を用いた場合も光触媒部材の汚れ成分の脱色及び脱臭の効果が得られないことが試験的に確認されている。尚、発明に係る洗浄液には塩酸、クエン酸等に例示される洗浄助剤が適宜添加される。
【0014】
前記塩素系の酸化剤としては次亜塩素酸ナトリウムが挙げられる。塩素系の酸化剤を含んだ洗浄液を用いると汚れ成分の色と臭いの除去に優れ、新品の光触媒部材とほぼ同等のレベルまで除去できる。
【0015】
前記酸素系の酸化剤としては過炭酸ナトリウムまたは過酸化水素が挙げられる。酸素系の酸化剤を含んだ洗浄液を用いた場合、常温での汚れ成分の色と臭いの除去効果は塩素系の酸化剤を含んだ洗浄液よりも劣るものの、加熱工程を経ると塩素系の酸化剤を含んだ洗浄液と同等に洗浄効果が高まる。
【0016】
汚れ成分であるヤニ成分が付着した光触媒部材を発明に係る酸化剤を含んだ洗浄液に浸漬すると、前記ヤニ成分と酸化剤とが反応してヤニ成分が分解し、光触媒部材の表面を清浄な状態に回復させることができる。ヤニ成分の付着量が多いと酸化剤が全てのヤニ成分を分解するまでに消費されてしまい、清浄な表面まで回復させることができなくなる。ヤニ成分の付着量の多い場合には、前述のように予め水のみで洗浄し、ヤニ成分の多くを予め除去しておくことが重要である。逆に、ヤニ成分の付着量が少ない場合には、予め水で洗浄する必要がなく、酸化剤を含んだ洗浄液に浸漬するだけで光触媒の表面を清浄な状態に回復することができる。
【0017】
また、光触媒部材は酸化剤を含んだ洗浄液で洗浄する前に水を用いた前洗浄工程に供するとよい。この前洗浄工程ではヤニ成分が付着した光触媒部材が水に10分〜1時間程度浸漬される。使用する水は精製水などの純水の他に水道水や井戸水を用いてもよい。水に浸漬すると、光触媒部材に付着したヤニ成分の一部またはほとんどが水に溶解し、除去される。これは光触媒部材の表面にヤニ成分が付着しても、単に物理吸着しているだけなので、前記表面の水酸基に水分子が入り込み、ヤニ成分が水中に拡散するためである。但し、水に浸漬しただけではヤニ成分を完全に除去することはできず、光触媒部材の表面に一部覆った状態で残留する。水触媒部材を一旦水から引き上げ、水をよく切る。その後、今度は水に酸化剤を含む洗剤を溶解した洗浄液に光触媒部材を浸漬する。ここで使用する水も精製水などの純水の他に水道水や井戸水を用いてもよい。
【0018】
以下に発明に係る実施例を示す。実施例では光触媒部材としてセラミックフィルタの表面に酸化チタン光触媒をコートした光触媒フィルタが採用されているが、発明に係る光触媒部材の形態は実施例の形態に限定することなく、ガラス板や金属板の表面に光触媒をコートして成る部材や布などに光触媒を固定化して成る部材なども適用できる。
【0019】
[実施例1]
次亜塩素酸ナトリウム溶液による洗浄効果を調べるために、光触媒フィルタを用いた洗浄試験を実施した。光触媒フィルタは、発泡体構造のセラミック担体に酸化チタン光触媒をコートしたもので、空隙がランダムに配列して三次元構造を有する。80×80×8mmの寸法に形成した光触媒フィルタを煙草の煙に曝して前記フィルタの表面にヤニ成分を付着させた。前記光触媒フィルタはヤニが付着する前はほぼ白色で、匂いもほとんどしなかったが、ヤニが付着すると、黄色に呈し、煙草臭ははっきりと感じられた。次に、ビーカーに水道水1Lを入れ、約5%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(花王製,キッチンハイター)を10mL添加し、濃度500ppmの次亜塩素酸ナトリウムス水溶液を得た。そして、この水溶液に前記ヤニを付着させた光触媒フィルタを1時間浸漬させた。その後、この光触媒フィルタを前記溶液から引き上げ、水を切った後にビーカー内に新しく入れられた1Lの水道水に漬けてすすぎ洗いした。このすすぎ液から光触媒フィルタを取り出し、同様にして3回すすぎ洗いを行った。洗い終えた光触媒フィルタは乾燥機内で60℃、10時間の条件で乾燥させた。
【0020】
[実施例2]
実施例1と同様にしてヤニ成分を付着させた光触媒フィルタを得た。そして、実施例1と同様に500ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液1Lを調製した。この水溶液に前記ヤニを付着させた光触媒フィルタを2枚同時に浸漬した。この場合、光触媒フィルタ1枚あたりの洗浄液の量は実施例1の半分の0.5Lになったことになる。前記洗浄液に1L浸漬した後、光触媒フィルタを一旦引き上げた。次に、別のビーカーに新たに500ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を実施例1と同様の方法で調製し、この水溶液に前記引き上げた光触媒フィルタのうち1枚を浸漬させた。1時間の浸漬の後、実施例1と同様の方法で3回すすぎ洗いをし、乾燥させた。
【0021】
[実施例3]
実施例2で500ppmの洗浄液に2枚同時に浸漬して引き上げた2枚のうち1枚を実施例3で使用した。実施例3では2回目の洗浄で実施例2よりも濃度の高い1000ppmの洗浄液を使用し、浸漬時間も長めに設定した。ビーカー中に水道水1Lを入れ、約5%の次亜塩素酸ナトリウム溶液(花王製,キッチンハイター)を20mL添加し、濃度1000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製した。この1000ppmの洗浄液に光触媒フィルタを20時間浸漬した。浸漬の後、実施例1と同様の方法で3回すすぎ洗いをし、乾燥させた。
【0022】
[実施例4]
実施例1と同様にしてヤニを付着させた光触媒フィルタを得た。実施例4では次亜塩素酸ナトリウム水溶液で洗浄する前に水道水による前洗浄を行った。ビーカー中に水道水1Lを入れ、前記ヤニを付着させた光触媒フィルタを1時間浸漬させた。この光触媒フィルタを水道水から引き上げた。次いで、別のビーカーに水道水1Lを入れ、約5%の次亜塩素酸ナトリウム溶液(花王製,キッチンハイター)を5mL添加し、濃度250ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た。この250ppmの洗浄液に前記引き上げた光触媒フィルタを1時間浸漬した。浸漬後、実施例1と同様の方法で3回すすぎ洗いし、乾燥させた。
【0023】
[実施例5]
実施例1と同様にしてヤニ成分を付着させた光触媒フィルタを得た。ビーカーに水道水1Lを入れ、過炭酸ナトリウム入り洗剤(日東紡製のふきん専用洗剤)を10g添加して、過炭酸ナトリウムを含んだ洗浄液を得た。そして、水道水による前洗浄を経た光触媒フィルタを前記洗浄液に1時間浸漬した。次いで、この光触媒フィルタを入れたままの洗浄液を40℃に加熱し、さらに2時間放置した。その後、実施例1と同様の方法で3回すすぎ洗いし、乾燥させた。
【0024】
[実施例6]
実施例1と同様にしてヤニ成分を付着させた光触媒フィルタを得た。ビーカーに水道水1Lを入れ、過酸化水素入り洗剤(ライオン製の手間なし直効きブライト)を20mL添加して過酸化水素を含んだ洗浄液を得た。この洗浄液に水道水による前洗浄を経た光触媒フィルタを1時間浸漬した。その後、実施例1と同様の方法で3回すすぎ洗いをし、乾燥させた。
【0025】
[比較例]
実施例1と同様にしてヤニ成分を付着させた光触媒フィルタを得た。比較例では、水道水のみによる洗浄を行った。ビーカー中に水道水1Lを入れ、前記ヤニを付着させた光触媒フィルタを1時間浸漬させた。浸漬後、実施例1と同様の方法で3回すすぎ洗いし、乾燥させた。
【0026】
[脱色効果及び脱臭効果の評価]
実施例1〜実施例4及び比較例の再生方法で洗浄した光触媒フィルタについて、目視で色を観察、また臭いを感覚し、未使用の光触媒フィルタと比較して、付着したヤニ成分の色や匂いがどの程度除去されたかを判定した。その結果を表1に示した。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例1の洗浄条件では脱色効果及び脱臭効果に優れ、色、臭い共に未使用品と同等レベルまで除去され、ヤニ成分による着色と臭いがなくなった。このことから次亜塩素酸ナトリウム溶液に1時間漬け置きするだけで簡単に煙草のヤニ成分による着色と臭いが除去できることが明らかとなった。
【0029】
実施例2及び実施例3では、1回目の洗浄では光触媒フィルタ1枚あたりの洗浄液の量が実施例1の半分となっていたが、その場合には色や臭いが残留し、十分な脱色効果と脱臭効果が得られなかった。その原因として、光触媒フィルタに付着したヤニ成分の全てを分解するだけの次亜塩素酸ナトリウムの量がなく、ヤニ成分を完全に分解しきれなかったことによるものと考えられた。実際に、実施例2及び実施例3で、次亜塩素酸ナトリウム溶液を取り替えて2回目の洗浄を行うと、色と臭いと共に未使用品と同等レベルまで除去され、ヤニ成分による着色と臭いがなくなった。したがって、色と臭いを完全に除去するには、ヤニ成分に見合う量の次亜塩素酸ナトリウムが必要なことが明らかとなった。また、実施例3では、次亜塩素酸ナトリウムの量は実施例2の2倍で、浸漬時間も20時間と長く設定したが、実施例2及び実施例3では同じように脱色効果と脱臭効果にすぐれていたので、次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度に適性値があり、浸漬時間は1時間程度で十分であると考えられた。
【0030】
実施例4では、予め水道水のみを洗浄してから、実施例2の1回目と同じ条件で次亜塩素酸ナトリウム溶液による洗浄を行った。この場合、脱色効果と脱臭効果に優れ、色と臭いともに未使用品と同等レベルまで除去された。
【0031】
一方、実施例5及び実施例6では、実施例1〜実施例4に比べると色と臭いがやや残り、完全に除去することができなかったが、洗浄前に比べると色や臭いが低減されており、過炭酸ナトリウムや過酸化水素を含む洗浄液がヤニ成分の除去に有効であることが明らかとなった。そして、これらの実施例の場合には洗浄液の加熱によって洗浄効果を高めることが確認された。
【0032】
実施例2の1回目の洗浄効果と、実施例4の洗浄効果の比較から、予め水で洗浄して、光触媒フィルタに付着したヤニ成分をある程度除去しておくことで、次亜塩素酸ナトリウム溶液による洗浄での次亜塩素酸ナトリウムの量を少なくすることでき、洗浄剤の節減ができることが明らかとなった。酸化チタン光触媒の表面に付着したヤニ成分は光触媒表面に単に物理吸着しているだけなので、光触媒表面の水酸基に水分子が入り込み、ヤニ成分が水中に拡散するため、水洗浄のみでも付着したヤニ成分をある程度除去でき、次亜塩素酸ナトリウムの必要量を少なくすることができる。このように、光触媒表面の性質に着目し、予め水で洗浄することで洗浄剤である次亜塩素酸ナトリウムの量が少なくても十分な脱色効果と脱臭効果が得られることが見出された。
【0033】
[ガス浄化能力の回復]
次に、次亜塩素酸ナトリウム溶液で洗浄されたときに光触媒フィルタのガス浄化能力が回復するかどうかを調べた。ガス浄化試験は酢酸ガスを対象に有効容積0.5m3のアクリル試験室内で行った。試験室内に予め空気浄化装置をセットしておき、ガラスシャーレをホットプレートで加熱しながら酢酸99%溶液を20μL滴下し、45秒間酢酸ガスを発揮させた。3分間ファンで攪拌した後、空気浄化装置の運転を開始した。空気浄化装置には、実施例2の再生方法で洗浄した光触媒フィルタを予めセットし、運転開始と共に光触媒フィルタに紫外線LEDで光照射しながら、空気を接触させた、運転開始直前と各サンプリング時間にガス検知管(ガステック(登録商標)検知管、81L)を用いて試験室内の酢酸濃度を測定した。酢酸濃度の時間変化から浄化性能を評価した。比較のために、未使用の光触媒フィルタと、ヤニを付着させて洗浄していない洗浄前の光触媒フィルタを用いて、同様のガス分解試験を行った。
【0034】
図1は未使用、洗浄前、洗浄後の光触媒フィルタによる酢酸ガスの除去試験の結果に基づく酢酸濃度の経時的変化を示す。
【0035】
未使用の光触媒フィルタでは、初期10ppmから60分の処理時間で1ppm程度まで濃度が低下しているが、ヤニ成分が付着した洗浄前の光触媒フィルタでは60分で5ppm程度までしか濃度が低下していないことがわかる。このことからヤニ成分が付着することで、光触媒フィルタによるガス浄化能力が低下していることがわかる。
【0036】
一方、図1の特性図から明らかなように次亜塩素酸ナトリウム溶液で洗浄した洗浄後の光触媒フィルタでは、初期10ppmから60分の処理時間で1ppm程度まで濃度が低下し、未使用の光触媒フィルタとほぼ同じ除去曲線が得られた。このことからヤニが付着することで、光触媒フィルタのガス浄化能力は低下するが、次亜塩素酸ナトリウム溶液で洗浄することでヤニ成分を除去でき、浄化能力を未使用の光触媒フィルタのレベルまで回復できることが明らかとなった。
【0037】
以上の結果から塩素系または酸素系の酸化剤を含む洗浄剤を溶解させた洗浄液を用いた光触媒の再生方法によると、付着したヤニ成分による色や臭いの除去に優れ、光触媒を簡便に再生できることが明らかとなった。塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)、または酸素系(過炭酸ナトリウムまたは過酸化水素)の酸化剤は一般家庭で使用されているもの適用すればよいので、特別な薬剤を使用しなくても光触媒を簡便に再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】未使用、洗浄前、洗浄後の光触媒フィルタによる酢酸ガスの除去試験の結果に基づく酢酸濃度の経時的変化。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素系または酸素系の酸化剤を含んだ洗浄液で光触媒部材を洗浄した後に放置し、その後、この光触媒部材を水ですすいだ後に乾燥させることを特徴とする光触媒部材の再生方法。
【請求項2】
前記洗浄液で光触媒部材を洗浄する前に前記光触媒部材を水で洗浄することを特徴とする請求項1に記載の光触媒部材の再生方法。
【請求項3】
前記酸素系の酸化剤を含んだ洗浄液を用いる場合、前記洗浄液を加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の光触媒部材の再生方法。
【請求項4】
前記塩素系の酸化剤は次亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の光触媒部材の再生方法。
【請求項5】
前記酸素系の酸化剤は過炭酸ナトリウムまたは過酸化水素であることを特徴とする請求項1または2に記載の光触媒部材の再生方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−142753(P2009−142753A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322763(P2007−322763)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】