説明

光記録媒体及び光記録媒体の製造方法

【課題】反射型ホログラム層が内部に形成されている光記録媒体において、記録用レーザ光照射時に、焦点位置とその他の部分における吸収が大きく異なるようにしてコントラストを形成する。
【解決手段】光記録媒体10は、記録層14が、厚さ方向に複数の反射型ホログラム層12から形成されていて、この反射型ホログラム層内の1部の消衰係数が、他の部分の消衰係数よりも大きくなるようにし、これによって、吸収増加部位でのレーザ集光による吸収熱を利用して、ホログラム回折条件を効率良く変化させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型ホログラム層内における微小局所変性として、情報を記録するようにした光記録媒体及び光記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録層内の複数の深さ位置に形成されたフォーマットホログラム層を有するホログラフィ書込み媒体に対して、所望書込み位置に高パワーのレーザビームを焦点合わせすることによってフォーマットホログラム層の選択的な局所変性領域を形成して情報を記録できるようにしたデバイスが開示されている。
【0003】
この情報の記録は、高パワーの記録用レーザ光の照射によって、フォーマットホログラム層の局所における反射型ホログラムの回折条件を破壊することによって、周囲部分よりも反射特性が悪い局所変性領域を形成するものである。
【0004】
ところが、フォーマットホログラム層における、記録用レーザ光の焦点位置以外の箇所においても、反射型ホログラムの回折条件が破壊されてしまうことがあり、正確に情報を記録することができない場合があるという問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特表2002−502057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、内部に、1又は複数の反射型ホログラム層が形成されている光記録媒体であって、記録用レーザ光照射時におけるその焦点位置での吸収が、他の部分よりも大きくなるようにした光記録媒体及びその光記録媒体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、次のような実施例によって解決される。
【0008】
(1)記録層が反射型ホログラム層から形成されていて、前記反射型ホログラム層内における局所変性として情報が記録される光記録媒体であって、記録用レーザ光照射時における吸収熱によって、焦点位置ではホログラム回折条件が変化し、非焦点位置ではホログラムが維持される熱閾値を有する材料により前記反射型ホログラム層が構成されていて、前記記録層における前記反射型ホログラム層の一部分の消衰係数kが、その他の部分の消衰係数kに比較して大きくされて、吸収コントラスト層が形成されていることを特徴とする光記録媒体。
【0009】
(2)記録層が、厚さ方向に複数の反射型ホログラム層から形成されていて、前記反射型ホログラム層内における局所変性として情報が記録される光記録媒体であって、記録用レーザ光照射時における吸収熱によって、焦点位置ではホログラム回折条件が変化し、非焦点位置ではホログラムが維持される熱閾値を有する材料により前記反射型ホログラム層が構成されていて、前記記録層における前記反射型ホログラム層の一部分の消衰係数kが、その他の部分の消衰係数kに比較して大きくされて、吸収コントラスト層が形成されていることを特徴とする光記録媒体。
【0010】
(3)前記記録層は、記録用レーザ光の波長に吸収を有するモノマーを導入したフォトポリマーから構成されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の光記録媒体。
【0011】
(4)前記モノマーは、前記記録用レーザ光照射時における吸収熱により熱分解する成分因子が修飾されていることを特徴とする(3)に記載の光記録媒体。
【0012】
(5)フォトンモードで光学特性が変化する材料であって、記録用レーザ光照射時における吸収熱によって、焦点位置ではホログラム回折条件が変化し、非焦点位置ではホログラムが維持される熱閾値を有する材料により記録層を形成する工程と、この記録層内に、2光束干渉定在波を集光露光することにより反射型ホログラムを記録する過程を同焦点面に均一間隔で繰返して反射型ホログラム層を形成するとともに、前記2光束干渉定在波の焦点深さを変更することにより、前記と同様の反射型ホログラム層を、記録層の厚さ方向に複数層形成する行程と、を有してなり、前記材料は、反射型ホログラム層の一部分の消衰係数kが、その他の部分の消衰係数kに比較して大きくされて、吸収コントラスト層が形成されることを特徴とする光記録媒体の製造方法。
【0013】
(6)前記記録層を形成する工程は、記録用レーザ光の波長に吸収を有するモノマーを用いてフォトポリマーを作成する行程と、このフォトポリマーをディスク状に形成する工程と、を含むことを特徴とする(5)に記載の光記録媒体の製造方法。
【0014】
(7)前記モノマーを用いてフォトポリマーを作成する行程の前に、モノマーに、熱分解し易い成分因子を修飾若しくは、熱分解し易い色素を導入する行程を有することを特徴とする(6)に記載の光記録媒体の製造方法。
【0015】
(8)前記反射型ホログラム層の形成時に、前記2光束干渉定在波によって、前記モノマーを重合し移動させて、層内に吸収コントラスト層を形成することを特徴とする(6)又は(7)に記載の光記録媒体の製造方法。
【0016】
(9)前記吸収コントラスト層を、前記反射型ホログラム層形成のレーザ光と同一波長又は異なる波長のレーザ光を用いてポストキュアして固定化することを特徴とする(8)に記載の光記録媒体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る光記録媒体は、反射型ホログラム層が、熱閾値を有する材料によって構成され、記録用レーザ光照射時におけるその焦点位置では吸収熱によりホログラム回折条件が変化し、非焦点位置ではホログラムが維持されるので、情報を正確に記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に示されるように、この発明の実施例に係る光記録媒体10は、ディスク状に形成され、その内部には、図2に示されるように、厚さ方向に複数の反射型ホログラム層12が形成されてなる記録層14を有している。
【0019】
反射型ホログラム層12を構成する材料は、記録用レーザ光照射時における吸収熱によって、焦点位置ではホログラム回折条件が変化し、非焦点位置ではホログラムが維持される熱閾値を有する材料とされている。
【0020】
例えば、この材料は、記録用レーザ光の波長に吸収を有するモノマーを導入したフォトポリマーから構成されている。ここで、前記モノマーは、記録用レーザ光照射時における吸収熱により熱分解する成分因子が修飾され、あるいは、熱分解し易い色素が導入されている。
【0021】
次に、上記光記録媒体を製造する過程について図3を参照して説明する。
【0022】
図3において、ステップ101では記録用レーザ光の波長に吸収を有するモノマーに、熱分解し易い成分因子を修飾する。
【0023】
前記モノマーとしては、例えば記録用レーザ光の波長に吸収を有するアクリル系、アクリルアミド系のものを用い、同様にレーザ波長に吸収を有する色素を用いる。
【0024】
次のステップ102において、上記モノマーを用いてフォトポリマーを作成し、ステップ103において、フォトポリマーをディスク状に形成する。
【0025】
ステップ104では、ステップ103において形成されたディスク状媒体内に、図2に示されるように、一対のレーザ光15A、15Bからの2光束干渉定在波を集光露光することで、反射型ホログラム層12を形成する。
【0026】
この反射型ホログラム層12の形成過程においては、焦点面に均一な間隔で露光を繰返す結果、図に示されるように、密(ホログラムの明部)の位置にモノマーが移動(重合に伴う分子移動)する為に光吸収材の偏析が生じ、その部分の消衰係数が、疎(ホログラムの暗部)の部分、更にはホログラムが形成されていない層に比較して大きくなる。従って、ホログラム層内に吸収の異なるコントラスト層(吸収コントラスト層)が形成される。
【0027】
次のステップ105では、前記2光束干渉定在波の焦点深さを変更することによって前記と同様の反射型ホログラム層12を記録層14の厚さ方向に複数層形成する。
【0028】
ステップ106では、上記形成された吸収コントラスト層をホログラム形成時におけるレーザ光の波長と同一波長又は他の波長のレーザ光を照射してポストキュアをすることにより固定化する。
【0029】
ステップ107では、上記固定化時に必要であれば、反射型ホログラムが形成されていない層の余分な吸収を除去するためにアニールや紫外線照射を行って、吸収コントラストを更に増幅する。これにより光記録媒体10が完成する。
【0030】
完成した光記録媒体10の反射型ホログラム層12に、記録用レーザ光MLを照射すれば、その焦点部位が熱吸収により局所変性領域16となり、情報を記録できる(図4参照)。
【0031】
この場合、例えば、開口数NA=0.85の対物レンズ18を用いて、盤面パワー20mW〜100mWの記録用レーザ光を所定位置に集光照射し、10〜100ns照射で、集光部分の温度上昇が50℃〜250℃となるようにする。この発生した熱により、記録用レーザ光の焦点位置では、反射型ホログラムのマトリックスが溶解若しくは吸収成分自身の分解を起こして、反射型ホログラムの回折条件が変化し局所変性領域16となる。又、非焦点位置での反射型ホログラム層では、吸収熱が閾値よりも小さいのでホログラムの回折条件が変化することがなく、ホログラムが維持される。これにより、光記録媒体10の情報記録を終了する。
【0032】
再生用レーザ光RLを照射したとき、局所変性領域16では反射率が低く、その他の部分(例えば図4において符号17で示される領域)では、ホログラム回折条件が維持されているので反射率が変わらず、これにより情報を読み取ることができる。
【0033】
なお、上記実施例において、反射ホログラム層は複数層あるが、本発明はこれに限定されるものでなく、単層の反射ホログラム層を有する光記録媒体にも適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1に係る光記録媒体を示す斜視図
【図2】同光記録媒体にフォーマットホログラム層を形成する過程を模式的に示す図1のII−II線に沿う拡大断面図
【図3】同実施例の光記録媒体製造過程を示すフローチャート
【図4】同光記録媒体に情報を記録する過程がこれを再生する過程を模式的に示す断面図
【符号の説明】
【0035】
10…光記録媒体
12…反射型ホログラム層
14…記録層
15A、15B…レーザ光
16…局所変性領域
18…対物レンズ
ML…記録用レーザ光
RL…再生用レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録層が反射型ホログラム層から形成されていて、前記反射型ホログラム層内における局所変性として情報が記録される光記録媒体であって、
記録用レーザ光照射時における吸収熱によって、焦点位置ではホログラム回折条件が変化し、非焦点位置ではホログラムが維持される熱閾値を有する材料により前記反射型ホログラム層が構成されていて、前記記録層における前記反射型ホログラム層の一部分の消衰係数kが、その他の部分の消衰係数kに比較して大きくされて、吸収コントラスト層が形成されていることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
記録層が、厚さ方向に複数の反射型ホログラム層から形成されていて、前記反射型ホログラム層内における局所変性として情報が記録される光記録媒体であって、
記録用レーザ光照射時における吸収熱によって、焦点位置ではホログラム回折条件が変化し、非焦点位置ではホログラムが維持される熱閾値を有する材料により前記反射型ホログラム層が構成されていて、前記記録層における前記反射型ホログラム層の一部分の消衰係数kが、その他の部分の消衰係数kに比較して大きくされて、吸収コントラスト層が形成されていることを特徴とする光記録媒体。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記記録層は、記録用レーザ光の波長に吸収を有するモノマーを導入したフォトポリマーから構成されていることを特徴とする光記録媒体。
【請求項4】
請求項3において、
前記モノマーは、前記記録用レーザ光照射時における吸収熱により熱分解する成分因子が修飾されていることを特徴とする光記録媒体。
【請求項5】
フォトンモードで光学特性が変化する材料であって、記録用レーザ光照射時における吸収熱によって、焦点位置ではホログラム回折条件が変化し、非焦点位置ではホログラムが維持される熱閾値を有する材料により記録層を形成する工程と、
この記録層内に、2光束干渉定在波を集光露光することにより反射型ホログラムを記録する過程を同焦点面に均一間隔で繰返して反射型ホログラム層を形成するとともに、前記2光束干渉定在波の焦点深さを変更することにより、前記と同様の反射型ホログラム層を、記録層の厚さ方向に複数層形成する行程と、
を有してなり、前記材料は、反射型ホログラム層の一部分の消衰係数kが、その他の部分の消衰係数kに比較して大きくされて、吸収コントラスト層が形成されていることを特徴とする光記録媒体の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記記録層を形成する工程は、記録用レーザ光の波長に吸収を有するモノマーを用いてフォトポリマーを作成する行程と、このフォトポリマーをディスク状に形成する工程と、を含むことを特徴とする光記録媒体の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記モノマーを用いてフォトポリマーを作成する行程の前に、モノマーに、熱分解し易い成分因子を修飾若しくは、熱分解し易い色素を導入する行程を有することを特徴とする光記録媒体の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記反射型ホログラム層の形成時に、前記2光束干渉定在波によって、前記モノマーを重合し移動させて、層内に吸収コントラスト層を形成することを特徴とする光記録媒体の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記吸収コントラスト層を、前記反射型ホログラム層形成のレーザ光と同一波長又は異なる波長のレーザ光を用いてポストキュアして固定化することを特徴とする光記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−258422(P2009−258422A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107896(P2008−107896)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】